特許第6038080号(P6038080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6038080-電気自動車用充放電装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038080
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】電気自動車用充放電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20161128BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H02J7/00 A
   H02J7/00 P
   B60L11/18 C
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-125177(P2014-125177)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-5388(P2016-5388A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】私市 広康
【審査官】 田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−207871(JP,A)
【文献】 特開2013−85459(JP,A)
【文献】 特開2013−27236(JP,A)
【文献】 特開2012−29483(JP,A)
【文献】 特開2001−16859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12、7/00−13/00、
15/00−15/42
H02J7/00−7/12、7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換して電気自動車の蓄電池に充電を行う充電回路と、
前記蓄電池に蓄えられた直流電力を交流電力に変換して放電を行う放電回路と、
を備え、
前記充電回路の出力容量を前記放電回路の出力容量よりも大きくする、
電気自動車用充放電装置。
【請求項2】
前記充電回路および前記放電回路は、前記蓄電池と接続する接続切換手段を備える、
請求項1に記載の電気自動車用充放電装置。
【請求項3】
前記充電回路の充電動作を制御する制御回路、を備え、
前記充電回路を、前記充電回路の出力容量よりも容量が小さい複数の小容量の充電回路で構成する場合、
前記制御回路は、充電可能な電力量に基づいて、動作させる前記小容量の充電回路の数を決定する、
請求項1に記載の電気自動車用充放電装置。
【請求項4】
前記小容量の充電回路は、前記蓄電池と接続する接続切換手段を備える、
請求項3に記載の電気自動車用充放電装置。
【請求項5】
前記放電回路の放電動作を制御する制御回路、を備え、
前記放電回路を、前記放電回路の出力容量よりも容量が小さい複数の小容量の放電回路で構成する場合、
前記制御回路は、使用電力量に基づいて、動作させる前記小容量の放電回路の数を決定する、
請求項1,3または4に記載の電気自動車用充放電装置。
【請求項6】
前記小容量の放電回路は、前記蓄電池と接続する接続切換手段を備える、
請求項5に記載の電気自動車用充放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車用充放電装置について、交流電力を直流電力に変換するモードと直流電力を交流電力に変換するモードを持つ双方向の回路を備える技術が、下記特許文献1において開示されている。
【0003】
電気自動車用充放電装置は、極力短時間で電気自動車の蓄電池の充電を完了させるため、出力の大きなものが必要となる。例えば、電気自動車の蓄電池の容量が24kWhの場合、電気自動車用充放電装置の充電出力が3kWでは空の状態から満充電まで8時間かかるが、充電出力が6kWでは4時間、充電出力が12kWでは2時間で充電が完了する。
【0004】
一方、電気自動車の蓄電池に蓄えられた直流電力を交流電力に変換して使用する放電動作の場合、エアコン、テレビ、照明、冷蔵庫などを使った場合でも3kW以下の電力で済む。電気自動車用充放電装置は、1つの回路で充電、放電を兼ねているので、例えば、充電出力を12kWで設計した場合、自動的に放電時の出力容量も12kWとなる。電気自動車用充放電装置は、放電動作では、住宅内の負荷に合わせて出力を絞って動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−27826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術によれば、回路の効率は最大出力時が最も大きく、出力を絞ると効率が低下する。これは、最大出力に合わせて高効率となるように、回路を構成するトランス、スイッチング素子、リレー等の部品を選定した設計のため、出力を絞った場合、回路に流れる電流は減るので回路の抵抗分に起因する損失は減るものの、リレーの駆動電力、トランスの鉄損など電流に依存しない損失の割合が多くなる。そのため、放電動作では充電動作に対して電力変換の効率が低下する、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、充電動作および放電動作の各動作において高効率で電力変換可能な電気自動車用充放電装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、交流電力を直流電力に変換して電気自動車の蓄電池に充電を行う充電回路と、前記蓄電池に蓄えられた直流電力を交流電力に変換して放電を行う放電回路と、を備え、前記充電回路の出力容量を前記放電回路の出力容量よりも大きくする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、充電動作および放電動作の各動作において高効率で電力変換できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一般的な電力変換器の効率カーブを示す図である。
図2図2は、実施の形態1の電気自動車用充放電装置の構成例を示す図である。
図3図3は、実施の形態2の電気自動車用充放電装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる電気自動車用充放電装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
まず、一般的な電力変換器の特性について簡単に説明する。図1は、一般的な電力変換器の効率カーブを示す図である。横軸は最大出力に対する出力[%]を示し、縦軸は効率[%]を示す。効率は最大出力時が最も大きく、出力を絞ると効率が低下する。例えば、最大出力12kWの場合、出力12kWでは出力100%より効率90%のため、12/0.9−12の計算式より、約1.3kWの損失が生じる。ここで、最大出力12kWの25%である3kWまで出力を絞ると効率は70%まで低下するので、3/0.7−3の計算式より、損失は約1.3kWとなる。このように、電力変換器では、出力を絞ると、出力に対する損失の比率が大きくなるため、効率が低下することになる。そのため、電力変換器は、出力の大きい状態で動作することが望ましい。
【0013】
つづいて、本実施の形態の電気自動車用充放電装置について説明する。図2は、本実施の形態の電気自動車用充放電装置2の構成例を示す図である。電気自動車用充放電装置2は、電力の授受を行うパワー用の電力線4および情報の授受を行う信号線5を介して電気自動車1と接続している。また、電気自動車用充放電装置2は、住宅3と接続している。電気自動車用充放電装置2は、住宅3を介して商用電力系統6から交流電力の供給を受けることができる。
【0014】
電気自動車1は、動力源となる蓄電池であるリチウム電池1aと、電気自動車用充放電装置2と電気自動車1との間で、各種情報の通信を行う情報通信装置1bと、を備える。
【0015】
住宅3は、電気自動車用充放電装置2の操作パネル2dと、住宅3と商用電力系統6とを切り離すリレー2eと、住宅内各種家電機器3a〜3dと、を備える。
【0016】
電気自動車用充放電装置2は、充電回路2aと、放電回路2bと、制御回路2cと、制御電源生成回路2fと、を備える。
【0017】
充電回路2aは、商用電力系統6の交流電力を直流電力に変換して、電気自動車1のリチウム電池1aを充電する。
【0018】
放電回路2bは、電気自動車1のリチウム電池1aの直流電力を交流電力に変換して、住宅3内の住宅内各種家電機器3a〜3dに交流電力を供給することで放電を行う。
【0019】
制御回路2cは、電気自動車用充放電装置2の動作を制御する。制御回路2cは、リレー2eの商用電力系統6側の電圧を検出する。検出電圧が商用電力系統6の正常な交流電圧および周波数の範囲、例えば、交流電圧200V±20V、周波数50Hz±2.5Hzの場合、制御回路2cは、リレー2eをオンにして住宅3と商用電力系統6とを接続し、住宅3内の冷蔵庫、エアコン、テレビ等の住宅内各種家電機器3a〜3dを商用電力系統6の電力で動作させる。また、制御回路2cは、電気自動車1から信号線5を介してリチウム電池1aの残容量の情報を受信する。リチウム電池1aが満充電でない場合、制御回路2cは、充電回路2a内のリレーである接続切換手段をオンさせるとともに、スイッチング素子、トランスで構成された充電回路2aのスイッチング素子を動作させて、商用電力系統6からの交流電力を直流電力に変換させ、電気自動車1のリチウム電池1aを充電する。
【0020】
制御電源生成回路2fは、商用電力系統6または電気自動車1のリチウム電池1aの電力から制御電源を生成する。電気自動車用充放電装置2は、制御電源生成回路2fからの電力により動作する。
【0021】
停電となって商用電力系統6からの給電が停止した場合、電気自動車用充放電装置2では、制御回路2cは、操作パネル2dに停電になったことを表示する。また、制御回路2cは、信号線5を介して得た情報から、電気自動車1が接続され、かつ、リチウム電池1aに住宅3内に電力を供給できるだけの残容量がある場合、操作パネル2dに、使用者に対してリチウム電池1aから住宅3内に電力を供給するか否かの指示を促す表示をする。
【0022】
停電時に使用者が在宅しており、使用者によって住宅3内への電力供給指示が操作パネル2dで行われた場合、制御回路2cは、リレー2eを開放して住宅3を商用電力系統6から切り離す。制御回路2cは、充電回路2aを停止し、充電回路2a内の接続切換手段も開放する。制御回路2cは、放電回路2b内のリレーである接続切換手段をオンにするとともに、スイッチング素子、トランスで構成された放電回路2bのスイッチング素子を動作させて、電気自動車1のリチウム電池1aに蓄えられた直流電力を交流電力に変換し、住宅内各種家電機器3a〜3dを動作させる。
【0023】
ここで、本実施の形態では、電気自動車用充放電装置2において、充電回路2aについては最大出力12kWとして接続切換手段、スイッチング素子、トランスを選定する。一方、放電回路2bについては最大出力3kWとして接続切換手段、スイッチング素子、トランスを選定する。すなわち、電気自動車用充放電装置2では、充電回路2aの最大出力である出力容量を、放電回路2bの最大出力である出力容量よりも大きくする。
【0024】
図1に示す電力変換器のケースにおいて、従来では、例えば、最大出力12kWでは効率90%であるため、約1.3kWの損失が生じる。3kWまで出力を絞ると効率は70%まで低下するので、損失は約1.3kWとなる。
【0025】
本実施の形態では、放電回路2bについて、最大出力3kWで効率が最大となる接続切換手段、スイッチング素子、トランスの部品を選定する。トランスの鉄損は、トランスの大きさに応じて大きくなるので、3kW対応に合わせてトランスを小さくできるので鉄損を低減できる。また、接続切換手段も3kW対応にすることで、12kW対応の大電流用よりもオン状態を保つ駆動電力を低減できる。放電回路2bについて、3kW出力時に合わせて部品選定することで、3kW出力時の効率を90%にできる。これにより、電気自動車用充放電装置2では、3/0.9−3の計算式より、放電回路2bの損失を約0.3kWに抑えることができるため、電気自動車1のリチウム電池1aの電力を効率良く住宅3内に供給することができる。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電気自動車用充放電装置2では、電気自動車1のリチウム電池1aとの間で電力を充放電する構成として、充電用の充電回路2a、放電用の放電回路2bを別々に設け、充電回路2aの最大出力である出力容量を放電回路2bの最大出力である出力容量よりも大きくすることとした。これにより、電気自動車用充放電装置2では、充電動作および放電動作において、それぞれの動作について高効率で電力変換でき、損失を低減して電力を有効利用することができる。
【0027】
なお、充電回路2aの最大出力を12kW、放電回路2bの最大出力を3kWとして説明したが、一例であり、最大出力の大きさはこれに限定するものではない。電気自動車用充放電装置2では、実際の使用状況に応じて、充電回路2aの最大出力、放電回路2bの最大出力を適宜設定することが可能である。
【0028】
実施の形態2.
図3は、本実施の形態の電気自動車用充放電装置2Aの構成例を示す図である。電気自動車用充放電装置2Aは、最大出力12kWの充電回路として、最大出力12kWよりも容量が小さい複数の小容量の充電回路であって、最大出力3kW毎に4分割した充電回路2a1〜2a4を備え、最大出力3kWの放電回路として、最大出力3kWよりも容量が小さい複数の小容量の放電回路であって、最大出力1.5kW毎に2分割した放電回路2b1,2b2を備える。また、住宅3では、屋根に発電量が8kWの太陽電池7が設置され、太陽電池7からの直流電力を交流電力に変換して住宅3内に供給するパワーコンディショナ8が設けられている。その他の構成は図2に示す実施の形態1と同様のため説明を省略する。
【0029】
電気自動車1のリチウム電池1aへの充電を行う場合、制御回路2cは、パワーコンディショナ8から太陽電池7の発電情報を取得する。天気が良く発電量が多い場合、制御回路2cは、全ての充電回路2a1〜2a4を動作させて、太陽電池7による太陽光発電の電力と商用電力系統6の電力とを合わせて12kWで電気自動車1のリチウム電池1aへの充電を行う。雨、夜間等で発電量が無い場合、制御回路2cは、充電回路2a1のみを動作させて、電力会社との契約電力を越えないように3kWで電気自動車1のリチウム電池1aへの充電を行う。制御回路2cは、太陽電池7による太陽光発電量に応じて、さらに充電回路2a2〜2a4を動作させて充電を行う。制御回路2cは、充電可能な電力量に基づいて、動作させる充電回路の数を決定する。
【0030】
一方、停電時において、電気自動車1のリチウム電池1aの電力を用いて放電を行う場合、制御回路2cは、放電回路2b1,2b2を動作させて、同時に動作を開始して、規定された交流電圧を出力する。例えば、放電回路2b1,2b2の各々の出力電力が0.7kW以下の場合、制御回路2cは、放電回路2b2の動作を停止して、放電回路2b1のみで1.4kWの出力を行う。出力電力が1.4kWを越えた場合、制御回路2cは、放電回路2b2を動作させて2つの放電回路を駆動する。このように、制御回路2cは、負荷電力に応じて、すなわち使用電力量に基づいて、動作させる放電回路の数を決定し、1つまたは2つの放電回路の駆動を行う。
【0031】
本実施の形態では、電気自動車用充放電装置2Aにおいて、充電回路を小ブロックに分けて、それぞれの小ブロックにおいて最大定格時に効率が最大となる接続切換手段、スイッチング素子、トランスを選定する。同様に、電気自動車用充放電装置2Aにおいて、放電回路を小ブロックに分けて、それぞれの小ブロックにおいて最大定格時に効率が最大となる接続切換手段、スイッチング素子、トランスを選定する。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電気自動車用充放電装置2Aでは、複数の充電回路および複数の放電回路を備え、充電時の出力、放電時の出力に応じて、1台のみまたは複数台を同時駆動とすることとした。これにより、充電時の電力を太陽光発電と商用電力系統6から得ており、天候が悪く、太陽光発電からの電力が少ない等、日射量の変化で充電電力が大きく変わる場合、また、住宅3内の負荷変動で放電出力が変わる場合において、状況に応じて電力損失の少ない運転が可能となる。
【0033】
なお、本実施の形態では、充電回路および放電回路をそれぞれ小ブロックに分けて複数台備える構成としたが、これに限定するものではない。電気自動車用充放電装置では、例えば、充電回路として充電回路2a、放電回路として放電回路2b1〜2b2を備えてもよく、充電回路として充電回路2a1〜2a4、放電回路として放電回路2bを備えてもよく、一方の回路を1台で構成し、他方の回路を複数台で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明にかかる電気自動車用充放電装置は、電気自動車の蓄電池の充放電に有用であり、特に、電力の有効利用に適している。
【符号の説明】
【0035】
1 電気自動車、1a リチウム電池、1b 情報通信装置、2,2A 電気自動車用充放電装置、2a 充電回路、2b 放電回路、2c 制御回路、2d 操作パネル、2e リレー、2f 制御電源生成回路、3 住宅、3a〜3d 住宅内各種家電機器、4 電力線、5 信号線、6 商用電力系統、7 太陽電池、8 パワーコンディショナ。
図1
図2
図3