(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038097
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 29/02 20060101AFI20161128BHJP
B43K 24/08 20060101ALI20161128BHJP
B43K 7/12 20060101ALI20161128BHJP
G06F 3/03 20060101ALI20161128BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
B43K29/02 D
B43K24/08 B
B43K7/12
G06F3/03 400F
G06F3/044 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-220965(P2014-220965)
(22)【出願日】2014年10月30日
(62)【分割の表示】特願2011-16107(P2011-16107)の分割
【原出願日】2011年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-57328(P2015-57328A)
(43)【公開日】2015年3月26日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118315
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 博道
(74)【代理人】
【識別番号】100120488
【弁理士】
【氏名又は名称】北口 智英
(72)【発明者】
【氏名】澤 幸儀
【審査官】
櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−271348(JP,A)
【文献】
特開2003−341203(JP,A)
【文献】
特開昭56−154096(JP,A)
【文献】
特開2011−093164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 5/17
7/12
21/00−21/26
24/00−24/02
24/04−24/18
27/00−27/12
29/02
G06F 3/03
3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の先端側に筆記先端が設けられ、かつ、後端側にゴム弾性を有する材料で形成されたタッチペンを搭載した筆記具であって、
前記軸筒内には、前記筆記先端が先端に装着されたボールペンリフィルが収容されており、
前記軸筒の表面のうち、少なくとも前記軸筒の後端側はスリーブとして形成され、前記タッチペンは前記スリーブと接続され、
前記タッチペンと前記筆記先端とは一体の機構により同時に出没可能に形成され、前記一体の機構はノック機構であって、前記筆記先端は、該ノック機構の前後方向への移動を伴う操作により前記軸筒の前記先端より出没可能に形成されているとともに、
前記ノック機構の後端には前記筆記先端が軸筒内に没入している状態において前記タッチペンを被覆するとともに前記スリーブに対して前後移動可能に形成されている被覆部材が連接されており、
前記ノック機構の前方への移動により前記筆記先端が前記軸筒の前記先端より突出する際に、前記被覆部材も該ノック機構と連動して前方へ移動することで前記タッチペンが該被覆部材から露出するように形成されていることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記ボールペンリフィルに収容されるインクは熱変色性インクであり、前記ゴム弾性を有する材料は熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項3】
前記ボールペンリフィルに収容されるインクは消しゴム消去性インクであり、前記ゴム弾性を有する材料は消しゴムであることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明
は筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶パネルの表面に直接触れることによって操作可能な電子機器が種々提供されている。そのような液晶パネルはタッチパネルと称される。
タッチパネルの原理には様々なものがある。たとえば、液晶パネル表面に加えられた圧力を感知する、いわゆる感圧式と称されるものがある。
この方式の
際、液晶パネル表面に直接触れないで済むように、いわゆるタッチペンという道具を用いることがある。このようなタッチペンは通常、筆記具様の軸及び先端を有するものの、液晶パネルの破損を防ぐため、プラスチック等の比較的柔らかい材質で先端を丸めて形成されているものであ
る。
【0003】
ところで、紙面に筆記する用途を有する筆記具の筆記先端は、インク等が滲出する構造であったり、尖った芯が突出していたりするものである。よって、筆記具の筆記先端は、タッチペンとして用いるには、インク等によるタッチパネルの汚損又は尖った先端による破損のおそれがあることから適しているとはいえない。すなわち、筆記具とタッチペンとは全く別個の構造として形成される必要がある。しかし、筆記具での筆記を行いつつ同時にタッチパネル式の電子機器を使用する場面は多々生ずるものであるから、筆記具、ボールペンとタッチペンとを同一の軸に備えることで利便性を向上させたいという要望は確実に存在する。
【0004】
そこで、タッチペンとボールペンとを組み合せた技術が以下の特許文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3117583号
【特許文献2】特開平6−28087
【特許文献3】特開平7−225643
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び特許文献2記載の先行技術は、タッチペンとボールペンとの組み合わせであるが
、タッチペン部分はキャップ式であり使用時にキャップを取り外しする手間やキャップ紛失の恐れがある。
さらに、特許文献3記載の先行技術は、タッチペンとボールペンとを組み合せたノック式ボールペンであり、ノック機構を前後方向にスライドしてどちらか一方のみを繰り出す機構である。しかし、切り替えする際は繰り出し動作が必要であることと、タッチペンもボールペンもいずれも使用しない際には収納のための切り替えレバーを正確に中心にセットしない限りいずれか一方が外に出たままの状態となり収納効果が十分に発揮できない場合がある。
【0007】
そこで本発明は
、筆記先端とタッチペンとの出没を容易に行うことのできる筆記具を提供すること
を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記
の課題に鑑み、本発
明は、軸筒20の先端側に筆記先端12が設けられ、かつ、後端側に導電性を備え
たタッチペン30を搭載した筆記具10であって、
前記軸筒20内には、前記筆記先端12が先端に装着されたボールペンリフィル11が収容されており、前記軸筒20の表面のうち、少なくとも前記
軸筒20の後端
側はスリーブ23として形成さ
れ、前
記タッチペン30は前記スリーブ23と接続され
、前記タッチペン30と前記筆記先端12とは一体の機構により同時に出没可能に形成され、前記一体の機構はノック機構であって、前記筆記先端12は、該ノック機構の前後方向への移動を伴う操作により前記軸筒20の前記先端より出没可能に形成されているとともに、前記ノック機構の後端には前記筆記先端12が軸筒20内に没入している状態において前記タッチペン30を被覆するとともに前記スリーブ23に対して前後移動可能に形成されている被覆部材40が連接されており、前記ノック機構の前方への移動により前記筆記先端12が前記軸筒20の前記先端より突出する際に、前記被覆部材40も該ノック機構と連動して前方へ移動することで前記タッチペン30が該被覆部材40から露出するように形成されていることを特徴とする。
なお、本発明においては、筆記具の長軸方向に対し、筆記先端12側を先端とし、その反対側を後端とする。また、この先端に向かう方向を前方とし、後端に向かう方向を後方とする。
【0009】
すなわち、本第1の発明においては、軸筒20の先端に筆記先端12が設けられ、後端
にタッチペン30が設けられている。
筆記先端12とは、筆記具において筆記面、たとえば紙面に直接接触する部分をいう。この筆記先端12としては、ボールペン、シャープペンシル、フェルトペン、マーカーペン等、様々な筆記具のものが想定される。
タッチペン30とは、
ゴム弾性を有する材質で筆記先端のような形状に成形されたものをい
う。
【0010】
本発明における軸筒20においては
、タッチペン30が位置す
る後端側部分22の表面部分をスリーブ23と称する。
【0011】
【0012】
本発
明に係
るタッチペン30を搭載した筆記具10は
、タッチペン30と前記筆記先端12とは一体の機構により同時に出没可能に形成されていることを特徴とする。
ここでこの一体の機構としては、公知のノック機構、あるいは軸筒20を捻ることによる繰り出し機構等、様々なものが可能である。いずれの場合にも、一体の機構を操作することによって、筆記先端12
とタッチペン30とが同時に突出して両方とも使用可能となり、また使用後はその一体の機構を逆方向に操作することによって両方とも収納されることとなっている。
【0013】
ここで、この一体の機構としてノック機構を採用する場合、前記筆記先端12は、該ノック機構の前後方向への移動を伴う操作により前記軸筒20の前記先端より出没可能に形成されているとともに、前記ノック機構の後端には前記筆記先端12が軸筒20内に没入している状態において前
記タッチペン30を被覆するとともに前記スリーブ23に対して前後移動可能に形成されている被覆部材40が連接されており、前記ノック機構の前方への移動により前記筆記先端12が前記軸筒20の前記先端より突出する際に、前記被覆部材40も該ノック機構と連動して前方へ移動することで前
記タッチペン30が該被覆部材40から露出するように形成されていることが望ましい。
【0014】
具体的には、前記スリーブ23には、その後端から長手方向に、少なくとも前記ノック機構の前記前後方向の移動に要する長さを有するガイドスリット24が設けられ、前記被覆部材40は、後端が開放するとともに先端に底面42を有し、かつ、前
記タッチペン30を収容可能な容積を有する略円筒状に形成され、前記被覆部材40の側面先端側には、前記ガイドスリット24内に前後方向へ移動可能に挿入されるノック用突起41が設けられているとともに、前記被覆部材40の前記先端の底面42には、前記スリーブ23の後端が挿入される挿通スリット43が設けられていることがさらに望ましい。
このように形成することで
、ノック機構による前後方向の移動による操作をこの両者の接触と干渉することなく実行することが可能となっている。
【0015】
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
すなわち、本発
明によると
、筆記先端とタッチペンとの出没を容易に行うことのできる筆記具を提供することが可能となり、また、未使用時ではタッチペンは被覆部材で覆われているので、タッチペン部分の無用な汚損及び破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る
、タッチペンを搭載した筆記具における未使用時の状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る
、タッチペンを搭載した筆記具における使用時の状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る
、タッチペンを搭載した筆記具におけるスリーブを正面図(A)、側面図(B)、斜視図(C)、底面図(D)、平面図(E)及びA−A断面図(F)で示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る
、タッチペンを搭載した筆記具における被覆部材を正面図(A)、側面図(B)、平面図(C)、底面図(D)及び側面断面図(E)で示す。
【
図5】本発明の実施形態に係る
、タッチペンを搭載した筆記具における未使用時(A)及び使用時(B)の状態を側面断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)実施形態
本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態に係る
、タッチペン30を搭載した筆記具10は、未使用状態では
図1に示すような外観を呈している。軸筒20は、ポリカーボネート製であり、その先端側部分21はポリカーボネートの材質が露出している。またその後端側部分22には、ステンレス鋼製のスリーブ23が接合されている。軸筒20の先端側部分21の先端には先軸25が螺合されている。スリーブ23の後端部分には前後方向に切り欠かれたスリットであるガイドスリット24が形成されている。また、スリーブ23の後端部分を覆うようにして、被覆部材40が設けられている。被覆部材40の側面には外方へ突出するノック用突起41が形成されている。このノック用突起41は、ガイドスリット24内に前後方向へ移動可能に挿入されている。これらスリーブ23及び被覆部材40の詳細については後述する。この
図1に示す未使用状態においては、ボールペンとしての筆記先端12は軸筒20の先端側部分21内に収納されているとともに
、タッチペン30は被覆部材40により被覆されており、いずれも外部からは視認できない。
【0019】
この
図1の状態から、ノック用突起41をガイドスリット24に沿って前方へ移動させると、
図2に示す使用状態へ移行する。すなわち、筆記先端12が先軸25から突出するとともに
、タッチペン30が被覆部材40から露出する。
スリーブ23は、
図3(A)〜(E)に示すように、中空円筒形のステンレス鋼であり、後述の
図5に示すように、軸筒20の後端側部分22を被覆することとなっている。スリーブ23には上述の通りガイドスリット24(
図3(A)、(C)参照)が形成されている。スリーブ23の後端部分、すなわち、このガイドスリット24を有する部分の断面は、
図3(F)に示すように、ガイドスリット24部分を欠いた円弧状を呈している。
【0020】
被覆部材40は、
図4に示すように、先端側に底面42を有し、後端側が開放した略円筒状に形成されている。底面42の先端側には、後述のノック棒51と接続するための接続突起44が形成されている。また、外周面には上述の通りノック用突起41が外方へ突出するように形成されている。さらに、底面42には、
図4(D)に示すように、スリーブ23後端部分の断面とほぼ同一形状の挿通スリット43が形成されている。この挿通スリット43には、スリーブ23後端部分が挿通自在となっている。
本発明に係る
、タッチペン30を搭載した筆記具10は、
図5(A)の側面断面図に示すように、軸筒20内に、筆記先端12が先端に装着されたボールペンリフィル11が収容されている。また、軸筒20内の先端側には、スプリング止め26が挿入されている。ボールペンリフィル11の後端部分は回転子50によって保持されている。回転子50の後端にはノック棒51が接続され、この後端には前記した被覆部材40の接続突起44(
図4参照)が圧入され接続されている。回転子50の先端側にはスプリング52が挿入されている。このスプリング52の先端は、前記スプリング止め26に当接し支持されている。これら、回転子50、ノック棒51、スプリング52及び図示を省略した軸筒20内周面のカム溝によって従来公知のカーンノック機構が構成されている。
【0021】
一方、同じく
図5(A)に示すように、軸筒20の先端側部分21の先端は先述の通り先軸25が螺合されているとともに、軸筒20の後端側部分22はスリーブ23で被覆されている。スリーブ23の後端部分は、被覆部材40の底面42に設けられている挿通スリット43(
図4(D)参照)を通り、該被覆部材40の内部空間に挿入されている。その状態でスリーブ23の後端には、先端側が閉鎖した略円筒状の口金31が装着され、さらにその口金31の内部空間に、端部を斜めに削いだペン芯形状
のタッチペン30が挿入されている。この口金31はステンレス鋼製であり、また
、タッチペン30は
熱可塑性エラストマーで形成されてい
る。
【0022】
図5(A)は、
図1と同様に未使用時の状態を表しており、筆記先端12は先軸25内に位置しているとともに
、タッチペン30は被覆部材40の内部に完全に被覆され外部からは視認不能となっている。この状態から、ノック用突起41を、ガイドスリット24に沿って前方へ移動させると、回転子50がスプリング52を圧縮しつつ、前方へ移動し、図示を省略した軸筒20内周面のカム溝と係合することで、
図5(B)に示す、
図2と同様の使用時の状態になり、先端から筆記先端12が突出した状態を保つこととなる。このとき、被覆部材40は、ノック棒51及び回転子50と連動して、ガイドスリット24に沿って前方へ移動する。しかし、被覆部材40の内部に位置す
るタッチペン30は口金31を介してスリーブ23に固定されているため、被覆部材40の移動には追従せずに、被覆部材40の後端から露出した状態を保つこととなっている。
【0023】
この状態で、筆記先端12を下向きに、軸筒20の先端側部分21を手指にて保持すれば、通常のボールペンとして筆記が可能であ
る。
一方
、タッチペン30を下向きに、スリーブ23側を手指にて保持すれば
、タッチパネルの操作が可能となる。
【0024】
この
図5(B)に示す使用状態から、さらにノック用突起41を先端方向へ押圧すると、回転子50と図示を省略した軸筒20内周面のカム溝との係合が解かれ、スプリング52の復元力により回転子50、ノック棒51及びこれらに連動して被覆部材40が後方へ押し戻され、
図5(A)に示す未使用状態へ戻ることとなる。
(2)その他
上記の実施の形態の他、本発明には、以下に示すような変形例も可能である。
スリーブ23と軸筒20は一体に形成することも可能であ
る。
【0025】
ノック用突起41は、クリップ状に形成してもよい。
また、先軸25は軸筒20とは別体の部品として形成されているが、軸筒20と一体に形成されることとしてもよい。
なお、ボールペンリフィル11に収容されるインクを、公知である熱変色性インク又は消しゴム消去性インクとしてもよい。このとき、後端に装着されるタッチペン部分を、上記のインクに応じて熱可塑性エラストマー又は消しゴムで形成されたゴム弾性を有する材料とすることによって感圧式タッチペンや消せるノック式ボールペンとして形成することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は
、タッチペンを備えたボールペン等の筆記具に利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 筆記具 11 ボールペンリフィル 12 筆記先端
20 軸筒 21 先端側部分 22 後端側部分
23 スリーブ 24 ガイドスリット 25 先軸
26 スプリング止め
30
タッチペン
31 口金
40 被覆部材 41 ノック用突起 42 底面
43 挿通スリット 44 接続突起
50 回転子 51 ノック棒 52 スプリング