特許第6038132号(P6038132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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▶ スウェディッシュ オーファン バイオビトラム インターナショナル アクチエボラグの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038132
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ニチシノンを含む液体薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/122 20060101AFI20161128BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A61K31/122
   A61K47/12
   A61K9/10
   A61K47/38
   A61K47/10
   A61K47/14
   A61K47/34
   A61P1/16
   A61P13/00
   A61P25/16
   A61P25/24
   A61P25/02
   A61P13/12
   A61P43/00 111
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-516952(P2014-516952)
(86)(22)【出願日】2012年6月20日
(65)【公表番号】特表2014-517067(P2014-517067A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】SE2012050681
(87)【国際公開番号】WO2012177214
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年3月27日
(31)【優先権主張番号】1150585-6
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】513322925
【氏名又は名称】スウェディッシュ オーファン バイオビトラム インターナショナル アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】スベンソン ルナート
(72)【発明者】
【氏名】シデン ハンズ
【審査官】 渡部 正博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/054273(WO,A1)
【文献】 特表2008−504354(JP,A)
【文献】 特表2007−529440(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/181292(WO,A1)
【文献】 遠藤 文夫,高チロシン血症 tyrosinemia,日本臨床(別冊)領域別症候群シリーズ34 先天異常症候群−辞典− (下),2001年 7月28日,p773-775
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/48
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有効量の微粒子化された2-(2-ニトロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル)-1,3-シクロヘキサンジオン(ニチシノン)の懸濁液;及び
(b)pH2.5〜3.5、好ましくはpH3.0のクエン酸緩衝液
を含む、経口投与に適した液体薬学的製剤。
【請求項2】
ニチシノンの量が、1〜10mg/ml、好ましくは4mg/mlである、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
懸濁剤、甘味料、保存料、界面活性剤、及び香味料からなる群から選択された、一つ以上の薬学的に許容される成分をさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項4】
懸濁剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項3記載の製剤。
【請求項5】
懸濁剤が、1〜20mg/ml、好ましくは5mg/mlの量のヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項4記載の製剤。
【請求項6】
甘味料がグリセロールである、請求項3記載の製剤。
【請求項7】
甘味料が、100〜500mg/ml、好ましくは500mg/mlの量のグリセロールである、請求項6記載の製剤。
【請求項8】
保存料が、メチルパラベン及び/またはプロピルパラベンである、請求項3記載の製剤。
【請求項9】
保存料が、1〜2mg/ml、好ましくは1.4mg/mlの量のメチルパラベン、及び0.1〜0.2mg/ml、好ましくは0.14mg/mlの量のプロピルパラベンである、請求項8記載の製剤。
【請求項10】
保存料が、0.2〜5mg/ml、好ましくは1mg/mlの量の安息香酸ナトリウムである、請求項3記載の製剤。
【請求項11】
界面活性剤が、ポリソルベート80である、請求項3記載の製剤。
【請求項12】
界面活性剤が、0.1〜20mg/ml、好ましくは0.10〜0.15mg/mlの量のポリソルベート80である、請求項11記載の製剤。
【請求項13】
(a)ニチシノン(4mg/ml);
(b)クエン酸一水和物(9mg/ml);
(c)無水クエン酸三ナトリウム(2.1mg/ml);
(d)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(5mg/ml);
(e)グリセロール(500mg/ml);
(f)メチルパラベン(1.4mg/ml);
(g)プロピルパラベン(0.14mg/ml);及び
(h)ポリソルベート80(0.14mg/ml)
を含む、請求項1〜9、11、または12のいずれか一項記載の製剤。
【請求項14】
(a)ニチシノン(4mg/ml);
(b)クエン酸一水和物(9mg/ml);
(c)無水クエン酸三ナトリウム(2.1mg/ml);
(d)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(5mg/ml);
(e)グリセロール(500mg/ml);
(f)安息香酸ナトリウム(1.0mg/ml);及び
(g)ポリソルベート80(0.14mg/ml)
を含む、請求項1〜7または10〜12のいずれか一項記載の製剤。
【請求項15】
香味料をさらに含む、請求項13または14記載の製剤。
【請求項16】
チロシン血症、パーキンソン病、うつ病、下肢静止不能症候群、及びアルカプトン尿症から選択される医学的状態の処置に使用するための、請求項1〜15のいずれか一項記載の製剤。
【請求項17】
遺伝性チロシン血症I型(HT-1)の処置に使用するための、請求項16記載の製剤。
【請求項18】
小児患者の遺伝性チロシン血症I型(HT-1)の処置に使用するための、請求項17記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-(2-ニトロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル)-1,3-シクロヘキサンジオン(ニチシノン)を活性成分として含む薬学的組成物に関する。この処方は、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)の阻害が望ましい障害及び疾患、例えば、遺伝性チロシン血症I型の処置に有用である。
【背景技術】
【0002】
ニチシノンまたはNTBCとしても公知の化合物、2-(2-ニトロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル)-1,3-シクロヘキサンジオンは、除草剤として最初に開示された(米国特許第5,006,158(特許文献1); 米国特許第4,695,673(特許文献2); 米国特許第5,668,089(特許文献3))。
【0003】
ニチシノンは、商品名オルファディン(登録商標)で、まれな小児疾患である、遺伝性チロシン血症I型(HT-1)の治療のために使用されている。HT-1は、アミノ酸チロシンを分解する能力がないことに起因する遺伝的代謝障害である。肝不全および肝がんに至るため、HT-1の子供は、肝臓移植を受けなければ20代まで生存するのはまれである。
【0004】
例えば、米国特許第5,550,165(特許文献4)に開示されているように、ニチシノンは、チロシン分解経路におけるフマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH)の上流酵素である、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)の拮抗阻害剤である。HT-1の患者の正常なチロシン代謝を阻害することによって、ニチシノンは、分解中間体であるマレイルアセト酢酸およびフマリルアセト酢酸の蓄積を防ぐ。HT-1の患者において、これらの分解中間体は、有害な代謝物であるスクシニルアセトンおよびスクシニルアセト酢酸に変換され、それらは、観察される肝毒性および腎毒性の原因となる。
【0005】
さらに、ニチシノンは、例えば、パーキンソン病(WO2006/090117(特許文献5));うつ病(WO2008/020150(特許文献6));下肢静止不能症候群(WO2010/054273(特許文献7));及びアルカプトン尿症(Sunwanarat, P. et al., Metabolism 54:719-728,2005(非特許文献1))のような他の障害の治療にも有用であると述べられてきた。ニチシノンの使用はまた、患者の微生物の感染に続く、ファゴリソソーム融合を増強するための方法に開示されてきた(米国特許公開第2010-0227936(特許文献8))。
【0006】
薬物の経口投与は、その簡便さから治療の好ましいルートの一つである。薬物は錠剤またはカプセルの形状で一般に投与されるが、そのような投与は、例えば、治療対象に用量を細かく適合させなければならない時には、より好ましくないかもしれないし、たとえば、小児薬または動物薬の場合には、より不便かもしれない。そこで、液体用量形態は、好都合な代替となりうる。
【0007】
したがって、小児患者への投与に適合し、固体薬学的組成物の弱点を克服する、安定的な液体ニチシノン組成物が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,006,158
【特許文献2】米国特許第4,695,673
【特許文献3】米国特許第5,668,089
【特許文献4】米国特許第5,550,165
【特許文献5】WO2006/090117
【特許文献6】WO2008/020150
【特許文献7】WO2010/054273
【特許文献8】米国特許公開第2010-0227936
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sunwanarat, P. et al., Metabolism 54:719-728,2005
【発明の概要】
【0010】
発明の開示
本発明によれば、微粒子化されたニチシノンの懸濁液を含み、pHが約3の液体薬学的製剤が、安定性の増加のような、驚くべき有利な性質を持つことが示された。したがって、本発明は、以下:
(a) 微粒子化された有効量の2-(2-ニトロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル)-1,3-シクロヘキサンジオン(ニチシノン)の懸濁液;及び
(b)pH2.5〜3.5、好ましくはpH3.0のクエン酸緩衝液
を含む、経口投与に好適な液体薬学的製剤に関連する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ニチシノンの「有効量」なる用語は、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼを阻害する有効量であると理解されるべきである。好ましくは、ニチシノンの量は、1〜10mg/ml、より好ましくは、4mg/mlである。
【0012】
ニチシノンは、構造的類似体を製造するために既知の、有機化学の伝統的な製法によって得られうる。したがって、例えば、ニチシノンは、米国特許第5,550,165に開示されているように、アセトンシアンヒドリン、および好適な塩基、例えばトリエチルアミンの存在下、2-ニトロ-4-トリフルオロメチルベンゾイルクロライドを、シクロヘキサン-1,3-ジオンと反応させることにより容易に得られ得る。最初の2-ニトロ-4-トリフルオロメチルベンゾイルクロライドそれ自体は、Reagents for Organic Synthesis(J Wiley and Sons, 1967; Vol.1, pp.767-769)に記載されているように、例えば、塩化チオニルまたは塩化オキサリルと反応させることによって、対応する安息香酸から得られ得、一般に特別な精製をせずに使用される。同様に、2-ニトロ-4-トリフルオロメチル安息香酸は、例えば、Haupstein et al.によって、J.Amer.Chem. Soc., 1954, 76, 1051に記載されたように、または、Chemistry of Carboxylic Acid and Esters (J Wiley and Sons, 1969; S. Patai 編)及びSurvey of Organic Synthesis (J Wiley and Sons, 1970; C.A.Buehler 及びD.F. Pearson)に記載された一般的な方法の一つによって、得られうる。
【0013】
好ましくは、本発明の製剤は、懸濁剤、甘味料、保存料、界面活性剤、及び香味料からなる群より選択される、一つ以上の薬学的に許容される構成要素をさらに含む。
【0014】
好適な懸濁剤は、例えば、1〜20mg/ml、好ましくは5mg/mlの量のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0015】
好適な甘味料は、許容される味になる量のグリセロールである。グリセロールの量は、好ましくは100〜500mg/mlであり、より好ましくは500mg/mlである。
【0016】
本発明の製剤は、好ましくは、メチルパラベン、プロピルパラベンおよび安息香酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一つの保存料を含む。好ましくは、保存料は、メチルパラベンを1〜2mg/ml、より好ましくは1.4mg/ml;プロピルパラベンを0.1〜0.2mg/ml、より好ましくは0.14mg/ml;及び安息香酸ナトリウムを0.2〜5mg/ml、より好ましくは、1.0mg/mlである。
【0017】
本発明の製剤は、好ましくは、例えば、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート、通常の商品ブランド名は、Alkest TW 80(商標)及びツイーン 80(商標)を含む)、のような界面活性剤を含む。ポリソルベート80の量は、ニチシノン粒子を、製造中にニチシノンの分散を容易にするのに十分な程度湿潤させ、かつ、最終製品の保管中のニチシノン粒子のいかなる凝集をも避ける程度であるべきである。好ましくは、本発明の製剤は、ポリソルベート80を、0.1〜20mg/ml、より好ましくは0.10〜0.15mg/ml含み、例えば、約0.135mg/ml含む。
【0018】
本発明の製剤は、好ましくは、イチゴフレーバーのような香味料を含む。フレーバーの量は、製剤の許容される味を達成するのに十分な量であるべきであり、好ましくは0.2〜1.1mg/ml、より好ましくは0.7mg/mlである。
【0019】
特に好ましい形態では、本発明の製剤は以下を含む:
(a)ニチシノン(4mg/ml);
(b)クエン酸一水和物(9mg/ml);
(c)無水クエン酸三ナトリウム(2.1mg/ml);
(d)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(5mg/ml);
(e)グリセロール(500mg/ml);
(f)メチルパラベン(1.4mg/ml);
(g)プロピルパラベン(0.14mg/ml);及び
(h)ポリソルベート80(0.14mg/ml)。
【0020】
別の特に好ましい形態では、本発明の製剤は以下を含む:
(a)ニチシノン(4mg/ml);
(b)クエン酸一水和物(9mg/ml);
(c)無水クエン酸三ナトリウム(2.1mg/ml);
(d)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(5mg/ml);
(e)グリセロール(500mg/ml);
(f)安息香酸ナトリウム(1.0mg/ml);及び
(g)ポリソルベート80(0.14mg/ml)。
【0021】
さらに好ましい製剤の形態は、以下のような香味料を含む:
(h)イチゴフレーバー(0.7mg/ml)。
【0022】
本発明の製剤は、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)の阻害が好ましい医学的障害及び疾患の処置に有用である。そのような状態の例は、遺伝性チロシン血症1型(HT-1)、パーキンソン病、うつ病、下肢静止不能症候群、及びアルカプトン尿症を含む。
【0023】
本発明による製剤は、特に小児用で有用である。特に、体重がおよそ3.5〜40kgの範囲の、新生児から8〜10歳の子供に好適である。したがって、一日の用量1mg/kgは、1.75mgを2回〜20mgを2回の範囲の用量に対応する。4mg/mlであれば、対応する0.44〜5mlを一日2回投与すると、許容される用量が達成されるであろう。経口注射器が、この範囲の正確な服用のための投与ディスペンサーとして好適である。
【実施例】
【0024】
実施例1:ニチシノンの微粒子化
実験室規模のエアジェットミル、2インチ認定モデル、Sturtevant Inc.を、スイスのBachem社から得たニチシノンを微粒子化するのに使用した。ミルは、並行流(すなわち、空気と薬物がミルチェンバーの中で同じ方向に送られる)で操作した。粉砕されていない薬剤は、送給される材料をミルチェンバーに引き入れるために空気を用いる、Venturi送給システムであるSyncron(登録商標)Magnet Feeder model F-TO-Cを用いてミルに送られた。製品フィルターバッグをミルの出口に取り付け、排気と粉砕された薬物を集めた。ミル粉砕の条件は、下記のように設定した。
・摩砕エア:乾燥窒素ガス
・摩砕圧力:90psi
・送給圧力:85psi
・室内条件:室温
【0025】
5gのAPIを実験室規模の微粒子化装置を通過させ、得られた材料を回収した(3.7g)。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、粉末X線回折測定法(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)及び偏光顕微鏡(PLM)によって、粒子サイズ直径(PSD)、アッセイ、および純度に関して/を用いて、材料を分析した。微粒子化で得られたPSDの結果を、表Iに示す。
【0026】
(表 I)
【0027】
実施例2:保存料としてメチルパラベンおよびプロピルパラベンを含む、微粒子化したニチシノンの経口懸濁液の調製
表IIに示すように、本発明の製剤を、標準的な製法に従って調製した。
【0028】
(表II)
【0029】
実施例3:保存料として安息香酸ナトリウムを、香味料としてストロベリーアロマを含む、微粒子化したニチシノンの経口懸濁液の調製
表IIIに示すように、本発明の製剤を、標準的な製法に従って調製した。
【0030】
(表III)
【0031】
実施例4:比較のためのニチシノン溶液の調製
表IVに示すニチシノン溶液を、標準的な製法に従って調製した。
【0032】
(表IV)
【0033】
実施例5:欧州薬局方(Ph Eur 5.1.3)及び米国薬局方(USP<51>)に従った微生物負荷研究による保存料の量の最適化
異なる量の保存料の結果を、下記表V及び表VIに示す。
【0034】
(表V)保存料として異なる量のメチルパラベンおよびプロピルパラベンを含む、実施例2に従って調製された微粒子化されたニチシノンの経口懸濁液
NI=増加なし
【0035】
(表VI)保存料として異なる量の安息香酸ナトリウムを含む、実施例3に従って調製された微粒子化されたニチシノンの経口懸濁液
NI=増加なし
【0036】
結果は、本発明に従った上記すべての製剤が、欧州薬局方(Ph Eur)及び米国薬局方(USP)による保存料効果に関する定められた要件を満たしていることを示しており、保存料なしの製剤が、基本的な製剤に自己保存性があること示すことが含まれる。
【0037】
実施例6:安定性試験
実施例2に従って調製された微粒子化されたニチシノン経口懸濁液のサンプル、及び実施例4に従って調製されたニチシノンを、12か月間、+5℃、+25℃、及び+40℃それぞれで、安定性のために置いた。ニチシノンと分解生成物である6-(トリフルオロメチル)-3,4-ジヒドロ-1H-キサンテネン(xanthenene)-1,9(2H)-ジオン(オキソテトラヒドロキサンテノン)の濃度を、紫外線検出付HPLCで追跡した。結果は表VII〜表Xに示され、ニチシノンの、表示濃度に対するパーセントとして表されている(表示量に対する割合(%))。
【0038】
(表VII)実施例2に従って調製された微粒子化されたニチシノンの経口懸濁液
【0039】
(表VIII)実施例2に従って調製された微粒子化されたニチシノンの経口懸濁液(ndは検出されないことを表す)
【0040】
(表IX)実施例4に従って調製されたニチシノン溶液
【0041】
(表X)実施例4に従って調製されたニチシノン溶液(ndは検出されないことを表す)
【0042】
結果は、本発明に従った製剤(表VII 及び表VIII)が、比較のための溶液(表IX 及び表X)より、すべての貯蔵条件のもとで、より安定であることを示している。比較のための溶液において、主な分解生成物であるオキソテトラヒドロキサンテノンは、二次的分解生成物にさらに分解する。結果として、参照溶液でのニチシノンと、分解生成物の間の物質収支を達成することは不可能である。
【0043】
実施例7:オキソテトラヒドロキサンテノンの安定性
実施例6の主な分解生成物である、オキソテトラヒドロキサンテノンの安定性研究を、実施例6に記載の条件と類似の条件で行う。クエン酸緩衝液pH3.0中またはリン酸緩衝液pH6.8中のオキソテトラヒドロキサンテノン(OTHX)81μg/mlの試料を、6か月間、+5℃、+25℃、及び+37℃それぞれで、安定性のために置いた。OTHXの濃度及び、二次的分解生成物である1,3-シクロヘキサンジオン(CHD)及び4-(トリフルオロメチル)サリチル酸(TSA)を、LC-MSによって分析した。結果は下記表XIに示され、OTHXの初期濃度に対する割合(%)として表されている。OTHXの初期濃度と比較したCHD+OTHX+TSAの総回収率として表される物質収支は、μg/mlで表されたMmOTHX/(MmCHD+MmTSA)×(CHDconc+TSAconc)+OTHXconcから計算され、ここで、MmOTHX、MmCHD及びMmTSAはそれぞれ、282g/mol、202g/mol及び206g/molに相当する分子量である。物質収支の結果は、OTHXの初期濃度に対する%として表され、表XIIに示されている。
【0044】
(表XI)実施例7に従って調製されたオキソテトラヒドロキサンテノン溶液の安定性
【0045】
(表XII)物質収支
【0046】
結果は、本発明に従った製剤が、二次的分解生成物の形成に関しても、驚くほど安定であることを示している。結果はほぼ100%の物質収支を示し、LC-MS法によって二次的分解生成物の大半を検出かつ決定できることがわかる。