(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038145
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】遮蔽部材及び少なくとも1つの遮熱及び振動遮断固定装置を備えた遮蔽装置
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20161128BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20161128BHJP
F16B 5/04 20060101ALI20161128BHJP
F16F 1/32 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
B60R13/08
F16B5/06 B
F16B5/04 C
F16F1/32
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-523317(P2014-523317)
(86)(22)【出願日】2012年8月1日
(65)【公表番号】特表2014-528863(P2014-528863A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】EP2012065048
(87)【国際公開番号】WO2013017625
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月28日
(31)【優先権主張番号】61/513,867
(32)【優先日】2011年8月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/608,822
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/554,686
(32)【優先日】2012年7月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509016830
【氏名又は名称】エルリングクリンガー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】フリーダウ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ベル,ボブ
【審査官】
谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−119923(JP,U)
【文献】
独国実用新案第202006013527(DE,U1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0067952(US,A1)
【文献】
特開2010−025348(JP,A)
【文献】
特開2005−133594(JP,A)
【文献】
特表2012−519626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
F16B 5/04
F16B 5/06
F16F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽部材(2)と、遮蔽装置(1)を、対応する固定用ピースに固定するとともに固定部材を受ける少なくとも1つの固定用鳩目(4)とを備え、前記固定用鳩目(4)が前記遮蔽装置(1)の固定用開口部(3)において可動支持される遮蔽装置において、
前記固定用鳩目(4)は、軸方向(100)において遮蔽部材(2)に対して弾性支持されるとともに、摩擦力が作用すると、少なくとも1つの径方向(101)において、前記固定用開口部(3)において前記遮蔽部材(2)に対して移動可能となるように、弾性をもって構成された連結部材(5)によって支持され、摩擦力を発生させるために、前記連結部材(5)の径方向外側領域が、弾性プレストレスが作用した状態で、遮蔽部材(2)の対向する外側(14、15)のスライドゾーン(20)と協働し、
前記スライドゾーン(20)が、前記固定用開口部(3)の近傍の、前記遮蔽部材(2)の板金面から突出する隆起ボス部から構成され、
前記連結部材(5)の径方向外側領域が、前記遮蔽部材(2)の対向する外側(14、15)において、前記スライドゾーン(20)と、直接に、または少なくとも1つの中間層を介して間接的に接当することによって協働することを特徴とする遮蔽装置。
【請求項2】
前記連結部材(5)が、前記固定用鳩目(4)の溝(12)において、バネアーム(9)の径方向内端部(10)で支持される2つのバネワッシャー(6、7)から構成されることを特徴とする請求項1に記載の遮蔽装置。
【請求項3】
前記隆起ボス部が前記固定用開口部(3)周りの実質的に凸凹状のボス部であることを特徴とする請求項1または2に記載の遮蔽装置。
【請求項4】
前記隆起ボス部が前記固定用開口部(3)周りに配設されたドーム状のボス部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項5】
前記固定用開口部(3)が、前記固定用鳩目(4)が少なくとも1つの径方向(101)において移動できるような楕円形の穴であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項6】
バネワッシャー(6、7)が径方向外側リング(8)を有しており、組み付け状態において、前記径方向外側リング(8)が前記スライドゾーン(20)に当たって、バネのプレストレスが作用した一対のトングのように、前記遮蔽部材(2)を保持することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項7】
前記連結部材(5)の少なくとも1つの径方向外側領域と、前記遮蔽部材(2)の前記対向する外側(14、15)の前記スライドゾーン(20)との間に、前記中間層が位置することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項8】
前記中間層が円形の円盤状中間部材(24)として構成されるとともに、前記中間部材(24)が、前記固定部材を収容するために前記固定用鳩目(4)の穴(21)と芯合わせされている開口部を備えることを特徴とする請求項6に記載の遮蔽装置。
【請求項9】
前記中間層がステンレス鋼またはバネ鋼から構成されることを特徴とする請求項6または7に記載の遮蔽装置。
【請求項10】
前記中間層の厚さdが、0.01mm≦d≦0.5mmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項11】
耐摩耗コーティングが、前記遮蔽部材(2)の外側(14、15)及び/または前記中間層及び/または前記バネワッシャー(6、7)に施されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項12】
前記スライドゾーン(20)及び/または立体形状の前記ボス部が、前記固定部材(2)の異なる固定箇所からは異なる軸方向間隔(a)で設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項13】
前記固定用鳩目(4)が、かしめによって互いに接合している少なくとも2つのリング部材(16a、16b)から構成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項14】
バネアーム(9)が前記径方向外側のバネリング(8)から内方に延び、端部において互いに接当していることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項15】
バネアーム(9)が溝(12)の規定縁部(13)に当たっていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項16】
前記固定用鳩目(4)が前記固定用開口部(3)の近傍、ほぼ前記遮蔽部材(2)の同一平面に位置するとともに、2つの同一のバネワッシャー(6、7)が前記連結部材(5)を形成するために用いられることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項17】
前記連結部材を形成するために、バネワッシャー(6、7)を、バネアーム(9)の形状に関して、異ならせて構成することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項18】
前記遮蔽部材(2)が、アルミニウムまたは鋼鉄製の遮蔽板であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【請求項19】
前記遮蔽部材(2)が多層構造であり、複数の遮蔽板で構成されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部による、遮蔽部材及び少なくとも1つの遮熱及び振動遮断固定装置を備えた遮蔽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の遮蔽装置は、国際公開公報WO2010/102656A1(特許文献1)から公知である。この公知技術は、ワイヤメッシュ型の遮断部材を提案しており、これは、遮蔽部材の固定用開口部に達する突出カラー部を備えている。カラー形状スリーブとして構成されたスリーブが、この遮断部材に支持されている。遮蔽装置を固定するネジは、スリーブを介して挿入される。
【0003】
振動抑制は、バッファー態の局所圧縮部材として機能するワイヤメッシュによって行われ、固定箇所(スリーブ)に対する遮蔽部材の微小移動が可能である。同時に、ワイヤメッシュ構造によって、遮蔽部材と、対応する固定用ピースとのあいだの熱伝導を確実に低減するものでなければならない。遮断部材が、遮蔽部材を固定している間一定量圧縮されなければならないというのは不都合である。これによって、ワイヤメッシュはその弾性圧縮性を失う。さらに、ワイヤメッシュを遮蔽部材に取り付ける際に、遮蔽部材に固定装置が必要となるため、製造コストが増大する。
【0004】
また、提案されている遮断部材、特に固定用鳩目は、しっかりと固定されていないため、遮断部材が確実に遮蔽部材にプレインストールされ、組み立てが完了するまでそこから外れないように、特別な工程が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報WO2010/102656A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、振動と熱の両方に有効、特に遮熱及び/または音響遮蔽部材に有効で、確実に機能するとともに、製造が簡単な遮蔽装置用遮断部材を提供することにある。
【0007】
さらに、遮蔽装置は、単に、可動範囲内で一定またはほぼ一定である限定的変位力を作用させることによって、遮蔽部材に対して、少なくとも径方向で自由に動くことができるように支持された固定装置を備えていなければならない。同時に、振動が遮断されるとともに軸方向の公差を補償する遮蔽部材の固定が可能でなければならない。
【0008】
本発明の別の目的によると、遮蔽装置の特に好適な実施例は、遮蔽部材の特定の固定箇所における振動及び熱によるストレスがある場合に容易に適合できるものである必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、請求項1に記載された特徴を備えた遮蔽装置によって達成される。特に、これらの目的はまた、従属請求項に記載された特徴によっても達成される。
【0010】
従って、本発明は、遮蔽装置を、固定部材を収容する固定用鳩目を備えた対応する固定用ピースに固定する少なくとも1つの固定装置を有する遮蔽部材を備えた遮蔽装置であって、固定用鳩目が遮蔽装置の固定用開口部において可動支持されているものに関する。本発明による遮蔽装置は、固定用鳩目が弾性をもって構成された連結部材によって支持され、軸方向で遮蔽部材に対して弾性支持されるとともに、摩擦力が作用すると、少なくとも1つの径方向において、固定用開口部内で、遮蔽部材に対して移動することができるようになっており、摩擦力を発生させるために、連結部材の径方向外側領域が遮蔽部材の両面にあるスライドゾーンと、弾性的にプレストレスが作用した状態で、協働するという特徴を有する。
【0011】
本件においては、連結部材と遮蔽部材の対向する外側のスライドゾーンとの協働は、直接の、つまりじかの接当により起こる。この点において、直接接当とは、スライドゾーンに対する連結部材の径方向外側領域の接触接当であると理解される。減摩材の層を介在させる場合も、本発明のじかの直接接当、つまりじかの直接協働であると理解される。また、中間層の介在によって、つまり間接的に、連結部材の径方向外側領域を、弾性プレストレスがある状態で、遮蔽部材の対向する外側にあるスライドゾーンと協働させることも可能である。この場合の中間層は、連結部材とスライドゾーンとのじかの直接接当が生じないように構成される。このような中間層の一例は、薄片状の金属ディスクであり、連結部材と、遮蔽部材の対向する外側にあるスライドゾーンの間に位置している。
【0012】
特に好適な実施例においては、連結部材は、固定用鳩目の溝において、バネアームの径方向内端部で支持される2つのバネワッシャーから構成される。この目的のため、固定用鳩目が径方向に延びる円周溝を備えていることが好ましい。
【0013】
遮蔽装置の別の実施例においては、スライドゾーンは固定用開口部の近傍の隆起領域から構成されている。固定用開口部の直近においてスライドゾーンを隆起領域として構成するため、連結部材の構成部品が、遮蔽部材の全面ではなく、遮蔽部材の外側に、局所的に限定された状態で当たっている。一方、このように接当領域を小さくすることにより、遮蔽板から連結部材、つまり固定用鳩目及び対応する固定用ピースへの熱伝導が低減する。また、隆起領域、例えば、実質的に凹凸状のボス部または実質的にドーム状のボス部としての形状を用いることによって、遮蔽部材と連結部材の間の熱伝導接当領域に影響を与えることができる。
【0014】
本発明の別の実施例においては、固定用開口部が楕円形の穴であって、固定用鳩目が少なくとも1つの径方向において移動できるとともに、それに直交する径方向においては、好ましくは動くことができない、あるいはわずかにだけ動くことができるようになっている。
【0015】
別の実施例によると、バネワッシャーが、外側周囲に径方向に延びるリングを有しており、組み付け状態において、この径方向外側リングがスライドゾーン、例えば遮蔽部材の隆起領域に当たることによって、バネのプレストレスが作用した一対のトングのように、固定用鳩目に対して遮蔽部材を保持する。
【0016】
本発明の別の実施例においては、連結部材の少なくとも1つの外側領域と、遮蔽部材の対向する外側のスライドゾーンとの間に、中間層が位置している。特に、この中間層は、バネワッシャーの少なくとも一方と、これに対応する遮蔽部材の外側との間に位置する。中間層を用いることによって、摩擦力によって生じる摩耗、特に遮蔽部材の摩耗を大幅に低減することができる。これは、中間層によって、遮蔽部材との接当領域が大きくなり、連結部材によって遮蔽部材に作用するバネ力の影響を少なくすることにより摩耗を低減するためである。
【0017】
好ましくは、中間層は、円形の円盤状、特にリング状、特に好ましくは円形リング状の中間部材で構成される。この中間部材は、固定部材を収容するために、あるいは固定部材が通過できるように構成された開口部を有している。ステンレス鋼、特に材料記号1.4301または1.4310のステンレス鋼、またはバネ鋼から構成される中間層を用いることが特に好都合であることがわかっている。特にアルミニウムからなる遮蔽部材では、これらの材料が、遮蔽部材の摩耗を低減するという点で特に好都合である。また、他の材料、またはコーティングを施した材料から構成される中間層を用いることもできる。
【0018】
中間層は厚さdを有しており、0.01mm≦d≦0.5mm、特に好ましくは0.05mm≦d≦0.1mmである。このように厚みの小さい(0.05mm≦d≦0.1mm)薄片状の中間部材は、十分に、遮蔽部分の摩耗を効果的に低減することがわかっている。
【0019】
中間部材は、スライドゾーンが遮蔽部材の外側の隆起領域から構成されている場合に用いられることが好ましい。1つのバネワッシャーに対して1つの中間層を用いることによって、遮蔽部の両外側の摩耗を低減することができるため、特に好都合である。
【0020】
特に好都合な改変例においては、摩擦による摩耗を低減するために、中間層以外に、あるいは中間層に代えて、遮蔽部材の外側及び/または中間層及び/またはバネワッシャーに、耐摩耗コーティングが施されている。この耐摩耗コーティングはMoS
2コーティングであることが好ましい。しかしながら、グラファイトや他の減摩材料を用いることも可能である。
【0021】
別の実施例によると、スライドゾーンを構成する2つの、例えば隣接する隆起領域の間の軸方向間隔aが、遮蔽部材の固定箇所によって異なる。従って、特に簡単な方法で、個々の対象となる固定箇所において、振動及び熱によるひずみ状態に関して、遮蔽板の形状を対応させて構成し、個別に適応させることが可能である。よって、ある1つの固定箇所の軸方向距離aを他の固定箇所と異ならせることによって、他の固定箇所と比べてその1つの固定箇所でのバネのプレストレス力を増大させることができる。しかしながら、1つの同じ固定箇所において異なる間隔aを有する隆起領域を設けて、例えば、1つの固定箇所の周方向において異なるプレストレスを作用させた連結部材を形成することも、当然可能である。これによって、例えば、バネのプレストレス力が増大した、つまり、結果として生じる摩擦力が増大した方向における軸方向可動性が達成され、別の径方向においてより低いまたはより高い摩擦力レベルを設定することができる。
【0022】
当然ながら、これは、バネ材の異なる構成または立体形状またはバネ剛性によって、1つの固定箇所周りの周方向において間隔aが同じ場合でも達成することができる。
【0023】
固定用鳩目が、かしめによって互いに接合している少なくとも2つのリング部材から構成されていると好都合である。
【0024】
固定用鳩目を遮蔽部材に対して確実に位置決めするためには、バネワッシャーのバネアームが径方向外側のバネリングから内方に延び、端部、特に固定用鳩目の溝内部において互いに接当していると好都合である。
【0025】
これに関し、バネアームが溝の規定縁部、特に径方向外側の規定縁部に当たって、固定用鳩目が、遮蔽部材内において、遊びなしに、特にガタつきなく支持されていることが特に好都合である。
【0026】
固定用鳩目が、固定用開口部の近傍、ほぼ遮蔽部材の面に位置するとともに、2つの同一のバネワッシャーが連結部材を形成するために用いられると好都合である。
【0027】
当然ながら、固定用鳩目が遮蔽部材からオフセットするよう位置させることも可能である。この場合は、例えば、断面で段差のある立体形状を有する2つの異なるバネ部材を用いることが必要となる。
【0028】
遮蔽装置、及び特に遮蔽装置の固定部材を、それぞれの固定箇所において、振動及び熱ひずみ状態に個々に適合させるために、連結部材を形成するためのバネワッシャーを、その立体形状に関し、特に、バネアームの形状に関して、また、材料の厚さ、バネの剛性、及び/またはバネアームの長さに関して、異ならせて任意に構成することにより、上述したように、振動及び/または熱ひずみパターンに適合させた固定箇所を形成するために所望の可変性及び可撓性を許容すると好都合である。
【0029】
さらに、この構成によって、例えば、遮蔽部材に対する軸方向弾性支持及び/または軸方向弾性可撓性を、一方向においてはより強硬に、反対方向ではより柔軟に構成することが可能になる。
【0030】
本発明による遮蔽装置を、特定に作用する機械及び/または熱ストレス状態に適合させるために、各固定箇所における振動解析/熱ひずみ解析に応じて、スライドゾーンの立体形状及び/または寸法aを適合させると好都合である。このような振動解析は、例えば、コンピュータ支援シミュレーションによって行うことができる。これは、実質的に、予想される熱ひずみに対しても、同様に適用される。
【0031】
遮蔽部材に関して、アルミニウムまたは鋼鉄製の遮蔽板を、必要に応じて単一層または多層で用いることが好都合であることがわかっている。
【0032】
本発明の重要な利点として、固定用鳩目が、軸方向において、弾性プレストレスが作用した状態で、また、1つまたは複数の径方向において摩擦力を作用させた状態で、遮蔽部材に対して支持されることにより、設計自由度が増大し、遮蔽部材を、異なるひずみ状態に容易に適合させることが可能になる。
【0033】
また、固定用鳩目が固定用開口部において径方向に移動する際、常に一定のまたはほぼ一定の力で移動すると好都合である。ワイヤメッシュを用いた従来技術による実施例では、鳩目がゼロ位置から離れるにつれて、解消すべき力が増大し続けるように、鳩目の動きがワイヤメッシュを弾性圧縮するようになっている。
【0034】
本発明の別の重要な利点は、本発明による固定箇所を形成するために、単純な標準構成部品(径方向内方に突出したバネアームを備えたバネワッシャー)及び単純に曲げられたまたは打ち抜かれた部品を用いることができるということである。これによって、輸送や保管などの費用を削減することができる。
【0035】
上述したように、本発明の別の重要な利点は、例えばスライドゾーン(特にお互いからの間隔a)の簡単な形状適合によって、連結部材に異なるバネのプレストレス力を達成し、遮蔽板に対する固定用鳩目の懸下剛性の選択範囲を広くすることができるということである。
【0036】
他の利点は、本発明による遮蔽構造は、製造段階で、その固定箇所に関して予め組み付けることができ、弾性的に及び/または可動的に懸下された固定用鳩目の構成部品を失うことがないということである。本発明の遮蔽装置が、例えば保守点検や修理のために分解された場合でも、固定箇所の個々の部品を紛失する危険性はない。
【0037】
さらに、本発明による遮蔽構造によって、固定用鳩目を、遮蔽部材の楕円形の穴に容易に支持することができ、例えば、対応する固定用ピースの組み付け公差により良好に適合させることが可能になる。本発明による固定用鳩目を、楕円形穴または拡張丸穴のいずれにおいても、遮蔽部材内で支持することにより、固定用鳩目が、一定の力を作用させることにより、広い範囲で移動することができるように支持される。
【0038】
本発明の実施例を、図面を参照しながら、以下により詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明による遮蔽装置の実施例の固定用鳩目を備えた固定装置の断面斜視図である。
【
図3】本発明による遮断装置の遮蔽部材の固定用開口部周囲の領域の実施例の平面図である。
【
図4】本発明による遮蔽装置の別実施例の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明による遮蔽装置1(
図1)は、例えば遮熱及び/または音響遮蔽部材などの遮蔽部材2を備えている。遮蔽部材2の固定用開口部3には、固定用鳩目4が設けられており、連結部材5によって遮蔽部材2に機械的に連結されている。
【0041】
連結部材5は、第1バネワッシャー6及び第2バネワッシャー7を備えている。第1バネワッシャー6及び第2バネワッシャー7はそれぞれ、径方向外側円周バネリング8を備えており、そこから多数のバネアーム9が、中心軸Mに向かって径方向内側に延出している。バネアーム9はそれぞれ、その径方向内端部10に自由端10aを有している。バネワッシャー6、7の少なくとも自由端10aは、それぞれの径方向内端部10の領域において互いに接当している。バネアーム部材11は、バネアーム9の自由端10aを、第1または第2バネワッシャー6、7の各バネリング8に連結している。
【0042】
自由端10aとバネアーム部材11の少なくとも一部とは、固定用鳩目4の径方向溝12の内部に位置している。
【0043】
径方向溝12の溝縁部13は、溝12を周方向で規定している。バネアーム部材11は、好ましくはその径方向中央部周辺領域において、溝縁部13と接当して、そこで支持されている。
図1に示すように、バネワッシャー6及びバネワッシャー7のバネリング8は、それぞれ、遮蔽部材2の第1外面14及び第2外面15に当たって、全領域にわたり、あるいは、線状に接当することで、これらの外面14、15に支持されている。
【0044】
第1外面14及び第2外面15に対するバネリング8の支持領域は、間隔aをもって互いに離れて位置しているため、バネワッシャーのプレストレスが生じ、バネワッシャーは、一端において外面14、15に対して支持されるとともに、他端においては径方向内端10において互いに支持される一方、バネアーム部材11の領域においては、溝縁部13に対して当たっている。固定用鳩目4をこのように支持することよって、軸方向100にバネのプレストレスが作用するとともに、摩擦力によって径方向101に作用する支持力が生じる。径方向101において固定用鳩目4の可動支持部に作用する摩擦力は、それぞれのバネリング8と外面14、15の間に発生する摩擦力によって付与される。
【0045】
図1による実施例における固定用鳩目4は、2つのリング部材16a、16bからなり、これらは、その径方向外側の円周部周りに延びる溝12を規定している。リング部材16aはかしめ用カラー部17を備えており、これは、組み付け状態では、塑性変形可能に傾斜部18に重なるため、定位置にかしめられる。
【0046】
図1による実施例では、外面14、15はスライドゾーン20を形成しており、この領域に沿って、バネワッシャー6、7の径方向外側のバネリングが径方向101に沿って摺動することができる。
【0047】
本件の場合、固定用開口部3は、固定用鳩目4が径方向に、例えば、すべての径方向101において、約+/−1.5mm移動できるように、径が調整された丸穴である。固定用鳩目4によって遮蔽装置1を固定する従来の固定部材は、例えばM6サイズのネジを有しており、この目的のために設けられた固定用鳩目4の穴21に挿入されて、対応する固定用ピース(図外)に螺合されるようになっている。
【0048】
当然ながら、固定用開口部3を楕円形の穴の形態で実施することも可能であり、任意の径方向101において、その任意の径方向101に直交する径方向においてより大きく移動できるようにしてもよい。
【0049】
本発明においては、特に、スプリングワッシャー6、7のバネリング8が、スライドゾーンに対して、その全領域にわたり、あるいは線状に接当することにより摺動することができる結果、一対のトングのように、固定用鳩目4を遮蔽部材2に対して位置固定するという利点がある。固定作用は、外面14、15に直交する方向において、バネのプレストレスが作用する状態で生じるため、固定用鳩目4の任意の移動範囲内で、一定またはほぼ一定の摩擦力が発生する。
【0050】
固定用鳩目4は、軸方向100において、遮蔽部材2に対して弾性的にわずかに移動可能である。
図1では、固定用鳩目4が軸方向100において上方向に移動すると、第1バネワッシャー6のバネのプレストレスまたはひずみがより強くなり、第2バネワッシャー7にかかるストレスが一時的に解放される。
【0051】
固定装置は全体として、固定用鳩目4、連結部材5、特に間隔aを置いたスライドゾーン20からなり、どのような場合にも固定用鳩目4が遊びのない状態で、つまり、軸方向100及び径方向101の両方において、バネのプレストレスが作用した状態で支持されるように構成されているため、好都合である。このことにより、ガタつき音が防止される。
【0052】
遮蔽部材2は、
図1にごく概略的に示している。以下に、間隔aが必要に応じてどのように予め設定されるかを、
図2、
図3、
図3aを参照しながら説明する。
【0053】
図2は本発明による遮蔽装置1の一部の分解図である。固定用開口部3を外囲する領域において、遮蔽部材2は固定用開口部3を外囲する隆起ボス部23を有し、これは、遮蔽部材2の板金面から、例えば第1外面14及び第2外面15に向かって交互に突出するよう構成されている。これにより、円周部に分配配置され、第1外面14と反対側の第2外面15からわずかに突出するスライドゾーン20が形成される。これらのスライドゾーン20は、第1バネワッシャー6及び第2バネワッシャー7のバネリング8を支持するよう機能する。これによって、例えば厚さ0.3mm〜1.5mmのアルミニウムシートからなる単一層の特に薄い遮蔽部材2において、バネワッシャー6、7にプレストレスを付与する有効間隔aを特に簡単な方法で大きくすることが可能になる。従来の間隔aの値は例えば1.5mm〜3.5mmであるが、これらの寸法は、用途や望ましいバネのプレストレスの種類に応じて広範囲で適合させることができる。本発明はまた、各層が0.1mmという非常に薄いシート/膜を備える2層または多層の遮蔽装置にも使用することができるので好都合である。
【0054】
ボス部22、23は、例えば、
図2に示す隆起状であってもよいし、
図3に示すノブ状であってもよい。さらに、スライドゾーン20は、
図2及び
図3に示すように、ボス部22、23に形成された小さい平坦な支持面であってもよい。しかしながら、ボス部22、23をドーム状に構成して、バネワッシャー6、7のアーチ型支持面を形成することも可能である。これによって、連結部材5を介して生じる遮蔽板2から固定用鳩目4への熱伝導がわずかで済むように、ドーム状ボス部22の限定された箇所のみでバネリング8が支持されるようになっている。
【0055】
隆起状、ドーム状、凹凸状などに関わらず、ボス部22、23を設けることによって、固定用開口部3を外囲する領域を局所的に強固にするという利点が得られる。このことにより、振動抵抗が増大して、固定用鳩目4を外囲する隣接領域において遮蔽部材2の材料にクラックが形成されるのを確実に防止することができる。さらに、本発明の装置は、固定用鳩目4を対応する固定用ピースに螺合する際に必要となる全体の押圧力から遮蔽部材2を保護する。これにより、例えば、修理などの日常的な作業状況で生じるような、不適当な締付トルクが作用した場合でも、固定用開口部3近傍における遮蔽部材2の機械的な過負荷を確実に防止することができる。
【0056】
その結果、本発明による固定装置を備えた本発明による遮蔽装置では、大きな機械的ストレス、特に振動ストレスに耐えることができるとともに、固定用鳩目4が弾性プレストレスで支持されることによって、ガタつきなく構成され、実際に長期にわたりガタつきが生じないという遮蔽構造が実現される。
【0057】
対応する固定用ピース(図外)に対する遮蔽部材2の振動支持は、例えば、強固に固定された遮蔽部材の自然振動によって生じる可能性のあるノイズレベルを大幅に低減させる。
【0058】
さらに、固定構造を展開する際に設計自由度が得られるが、これは、特に、適切な皿バネを選択すること、及び/または、固定用開口部の領域における遮蔽部材の形状を適切に選択することによって、確実に設計自由度が大きくなるためである。
【0059】
本発明による遮蔽装置はまた、安価であり、特に、量産されている製作容易な部品で製造することができる。
【0060】
本発明の別の実施例では、バネワッシャー6、7またはスライドゾーン20の形状の振動構造を利用して、固定箇所特有の振動や熱伝導挙動を調整することができる。ひとつの遮蔽装置1内で、複数の異なる構成の固定箇所を設けることができる。従って、例えば、1つの固定箇所のバネのプレストレスを高くするとともに、第2の固定箇所のバネのプレストレスを低くして、局所的に生じる振動ストレスに最適に適合させることが可能になる。
図1による実施例においては、バネウォッシャー6、7とスライドゾーン20との間に線接当が生じる。上述したように、このような線接当または特定箇所における接当によって、遮蔽部材2から固定用鳩目4への熱伝導が大幅に低減される。
【0061】
本発明の別の重要な利点は、固定用鳩目4が、可動範囲内で一定またはほぼ一定であるわずかな、特に限定的な移動力で、遮蔽部材2に対して移動することができるということである。別の利点は、特にボス部22を設けた実施例において、固定用開口部を外囲する領域の強度が高いということである。
【0062】
特に、アルミシート製の遮蔽部材2において、固定用鳩目4を特に好都合な方法で遮蔽部材2に取り付ける際に、ここで提案されている設計原理を利用することができ、クラックが形成されるリスクを大幅に低減することができるということがわかっている。しかしながら、もちろん、鋼鉄製の遮蔽部材2を用いることや、単一層または多層の遮蔽板を用いることも可能である。この点に関し、テキスタイルなどの絶縁材を2つの遮蔽部材層の間に設けることは有用である。絶縁材層は、ボス部が配置されている固定用開口部を外囲する領域において切り取られていることが好ましい。
【0063】
図4は、本発明による遮蔽装置の別実施例を示している。この実施例もまた、遮蔽部材2を備えている。遮蔽部材2の固定用開口部3は固定用鳩目4を有している。固定用鳩目4は、本実施例ではカップ状に構成されている2つのリング部材16a、16bからなる。特に、リング部材16aはS字断面形状であり、リング部材16bはL字断面形状である。このリング部材16a、16bの態様は他のすべての特徴の影響を受けないため、
図1に示すリング部材16a、16bに代えて用いることもできる。
【0064】
使用時に他方のリング部材16bを収納する一方のリング部材16aは、使用時に第2バネワッシャー7が当たる面と、使用時にリング部材16bの第1端面S
1が当たる第2端面S
2との間に第1高さh
1を有している。リング部材16bは、使用時に第1バネワッシャー6が当たる面と、第1端面S
1との間に第2高さh
2を有している。
【0065】
使用時には、ネジによって付与される力により、端面S
1とS
2とは軸方向に互いに当たり合っており、リング部材16a、16bは、軸方向100においてその圧縮端部に達する。従って、高さh
1とh
2との差によって、バネワッシャー6、7によって付与されるバネ力が直接決まり、高さh
1及び/またはh
2を適合させることによってバネ力を変えることができる。2つのリング部材16a、16bは、例えば、スナップ式連結または締付け動作によって互いに連結することができる。
【0066】
図4に示す実施例のバネワッシャー6、7は、同様に、
図1に示すバネワッシャー6、7と異なる。しかしながら、
図4に示すバネワッシャー6、7を、
図1の実施例に示すバネワッシャー6、7の代わりに用いることも可能である。このバネワッシャー6、7の態様は、本発明による遮蔽装置の他のすべての特徴の影響を受けない。
【0067】
図4に示す実施例のバネワッシャー6、7は、本実施例の連結部材5を構成するとともに、径方向外側の円周バネワッシャー8を備えており、そこから多数のバネアーム9が、中心軸Mに向かって径方向内側に延出している。
図4による実施例では、スプリングワッシャー6、7の自由端10aは、組み付け状態では互いに接当せず、スプリングワッシャー6、7の自由端10は互いに離れている。
図4に示す実施例のスプリングワッシャー6、7は、
図1に示す実施例のスプリングワッシャー6、7よりもかなり平坦に構成されている。
【0068】
第1バネワッシャー6と第2外面15のスライドゾーン20の間には、本実施例ではほぼリング状の中間部材24として構成される中間層が設けられている。第2バネワッシャー7と第1外面14のスライドゾーン20との間には、別の中間部材24が設けられている。
【0069】
図1に示す実施例にも、中間層、特に中間部材24が設けられており、この場合、リング形中間部材24の内径D
1は、固定用開口部3の直径D
2よりも大幅に大きくなるよう選択される必要がある。これは、中間部材24が径方向で中心軸Mに向かって、バネワッシャー6、7が接当する箇所に達しないことが有利なためである。
【0070】
リング部材16a、16b、バネワッシャー6、7、中間部材24、固定用開口部3が同心で並ぶゼロ位置において、固定用鳩目4は径方向101において径方向の遊びRを有し、これは、固定用開口部3の直径D
2とリング部材16bの外径D
3の差によって設定される。好ましくは、固定用開口部3の直径D
2は、遮蔽部材2及びリング部材16a、16bがゼロ位置において径方向101でオーバーラップするように選択される。スライドゾーン20の径方向への拡張は、ゼロ位置におけるスライドゾーン20のバネワッシャー6、7の接当点に基づいて、少なくとも、中心軸Mへ向かったり離れたりする径方向の遊びRに対応するようになっている。使用時には、固定用鳩目4は、中心軸に向いた遮蔽部材2の縁部がリング部材16bに接当するように、遮蔽部材2に対して十分に移動する。その後、バネワッシャー6、7及び中間部材24は、スライドゾーンで摺動する。これが、上述したスライドゾーン20の実施例の利点であり、バネワッシャー6、7及び/または中間部材24がスライドゾーン20からすべり落ちないようにすることが可能になるのである。
【0071】
図5は、遮蔽部材2、中間部材24、バネワッシャー6、7、リング部材16a、16bからなる組み合わせの分解図であり、ネジによって遮蔽装置1を対応する固定用ピース(図外)に固定することができる。遮蔽部材2は固定用開口部3の近傍に隆起領域を備えており、スライドゾーン20を構成している。バネワッシャー6、7は中間部材24によってスライドゾーン20と協働するため、摩擦力が発生する。
【符号の説明】
【0072】
1 遮蔽装置
2 遮蔽部材
3 固定用開口部
4 固定用鳩目
5 連結部材
6 第1バネワッシャー
7 第2バネワッシャー
8 バネリング
9 バネアーム
10 径方向内端部
10a 自由端
11 バネアーム部材
12 径方向溝
13 溝縁部
14 第1外面
15 第2外面
16a、16b リング部材
17 かしめ用カラー部
18 傾斜部
20 スライドゾーン
21 穴
22 ボス部
23 ボス部
24 中間部材
100 軸方向
101 径方向
a 間隔
d 厚さ
D
1 内径
D
2 直径
D
3 外径
h
1 第1高さ
h
2 第2高さ
M 中心軸
R 径方向遊び
S
1 第1端面
S
2 第2端面