特許第6038162号(P6038162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6038162接着促進剤を含有するポリ(メタ)アクリルイミド系膨張コポリマーの製造法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038162
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】接着促進剤を含有するポリ(メタ)アクリルイミド系膨張コポリマーの製造法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/236 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   C08J9/236CEY
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-536166(P2014-536166)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公表番号】特表2014-530929(P2014-530929A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】EP2012068885
(87)【国際公開番号】WO2013056947
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年8月26日
(31)【優先権主張番号】102011085026.0
(32)【優先日】2011年10月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009128
【氏名又は名称】エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ビューラー
(72)【発明者】
【氏名】アーニム クラーツ
(72)【発明者】
【氏名】イナ ピオトロヴスキ
(72)【発明者】
【氏名】カイ ベアンハート
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−323715(JP,A)
【文献】 特開平07−088876(JP,A)
【文献】 特開昭47−012436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−42
B29C 67/20−24
B29C 44/00−60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(メタ)アクリルイミドと接着促進剤もしくは接着促進剤混合物と任意の助剤とから発泡成形体を製造するための一段法において、以下の工程:
− ポリ(メタ)アクリルイミドからのプラスチック成形体を粉砕する工程、
− 前の工程で得られた粉砕物を接着促進剤で被覆する工程、
− 被覆された粉砕物を金型に充填する工程、
− 任意に助剤を添加する工程、
− 金型を加熱する工程、
− 金型を発泡温度未満に冷却する工程、
− 発泡成形体を離型する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ポリ(メタ)アクリルイミドと接着促進剤もしくは接着促進剤混合物と任意の助剤とから発泡成形体を製造するための二段法において、以下の工程:
− ポリ(メタ)アクリルイミドからのプラスチック成形体を粉砕する工程、
− 粉砕物を予備発泡させる工程、
− 前の工程で得られた粉砕物を接着促進剤で被覆する工程、
− 被覆された粉砕物を金型に充填する工程、
− 任意に助剤を添加する工程、
− 金型を加熱する工程、
− 金型を発泡温度未満に冷却する工程、
− 発泡成形体を離型する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
接着促進剤として、ポリアミドを使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
接着促進剤として、ポリ(メタ)アクリレートを使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
接着促進剤として、ポリアミドを粉砕物に対して1質量%〜20質量%の量で使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
接着促進剤として、ポリアミドを粉砕物に対して1質量%〜15質量%の量で使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
接着促進剤として、ポリアミドを粉砕物に対して1質量%〜10質量%の量で使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
接着促進剤として、ポリ(メタ)アクリレートを粉砕物に対して1質量%〜20質量%の量で使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
接着促進剤として、ポリ(メタ)アクリレートを粉砕物に対して1質量%〜15質量%の量で使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
接着促進剤として、ポリ(メタ)アクリレートを粉砕物に対して1質量%〜10質量%の量で使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な粒界密着性を有するメタクリル化合物系及びアクリル化合物系の膨張コポリマーの製造法、並びにそうして得られた発泡体コアへのプラスチック及び/又は金属及び/又は繊維−プラスチック−複合体からの種々のカバー層の密着性に関する。
【背景技術】
【0002】
ROHACELL(R)は、多方面に使用可能な発泡材の一つであり、Evonik Roehm GmbH社より市販されている。
【0003】
DE2726260号(Roehm GmbH社)には、高温時にも卓越した機械的特性を有するポリ(メタ)アクリルイミド発泡体(PMI発泡体)の製造法が記載されている。発泡体の製造は注型法で行われ、即ち、モノマーと必要な添加物とが混合され、チャンバ内で重合が行われる。第二の工程で、加熱によりポリマーの発泡が行われる。DE2726260号に記載されている発泡体の欠点は、その細孔構造が粗いことである。発泡剤を変えることによって、孔サイズを著しく低下させることがすでに可能となっている。
【0004】
より小さな細孔を有するPMI発泡体の製造は、不溶性核剤を使用することにより成功している(DE10212235.0号、Roehm GmbH社)。しかしながら、注型法で不溶性核剤を使用すると、必然的に製造の際に著しく煩雑になる。重合すべきコモノマー混合物の密度は、わずか約0.8g/cm3である。核剤として該当する物質、例えば二酸化ケイ素、硫化亜鉛、塩化ナトリウム又は塩化カリウムは、モノマー混合物より密度が高いため、すぐに沈殿してしまう。均一な細孔構造を有する発泡体が得られるのは、核剤の沈殿が抑制される場合のみである。そのためには、モノマー混合物に、例えばアエロジルやカーボンブラックといった沈殿防止剤や、例えば可溶性高分子ポリマーなどの増粘剤を添加し、これらを手間をかけて核剤と一緒に混合物に混入させる必要がある。
【0005】
さらに、EP532023号(Roehm GmbH社)にはPMI系微孔質発泡体が記載されている。しかしながら、同文献に記載されている方法は種々の重大な欠点を有している。重合の際に比較的高濃度の開始剤が使用されるため、生じるポリマーが有する重量平均分子量は、注型法での製造にも関わらずわずか50〜500kDaの範囲内である。さらに、配合物には架橋剤が添加されない。こういった理由から、生じる発泡体は耐熱変形性が低く、クリープ挙動が劣悪である。
【0006】
微孔質発泡材は公知であり、ROHACELL(R)の名称でEvonik Roehm GmbH社より市販されている。微孔性は、発泡剤を変えることや不溶性核剤を添加することにより達成され得る。しかしながら、発泡剤を変えることで達成された微孔性が常に十分であるとは限らない点が問題である。微孔質材料は、不溶性核剤の使用によっても製造され得るが、この不溶性核剤は沈殿防止剤の使用を必要とするため、これによって製造時のコスト増加が避けられない。
【0007】
ポリメチル(メタ)アクリレート又はそのコポリマーと第一級アミンとの反応によって、耐熱変形性の高いポリ(メタ)アクリルイミドが得られる。この重合類似イミド化の多数の例の代わりに、以下のものが挙げられる:US4246374号(Rohm&Haas)、EP216505A2号(Rohm&Haas)、EP860821号(Saint Gobian Vitrage)。ここで、高い耐熱変形性は、アリールアミンの使用によって(JP05222119A2号、Mitsubishi Rayon)、又は特定のコモノマーの使用によって(EP561230号(BASF AG)、EP577002A1号(BASF AG))達成可能である。しかしながら、これらの反応で得られるのはいずれも発泡体ではなく硬質ポリマーであり、発泡体を得るためにはこの硬質ポリマーを別個の第二の工程で発泡させる必要がある。
【0008】
ポリ(メタ)アクリルイミド発泡材は、長い間公知である(例えばDE−C2726260号(Roehm GmbH)を参照のこと)。この発泡材は、耐熱変形性が高く、圧縮強さが高く、かつ軽量であるため、例えば層材料又は発泡材複合体のためのコア材料として幅広く用いられている(DE−C2822885号(Roehm GmbH)、DE−A3304882号(Roehm GmbH)、US−A4316934号(Roehm GmbH)を参照のこと)。
【0009】
DE3630930号(Roehm GmbH)には、上記のメタクリル酸とメタクリロニトリルとからのコポリマーボードを発泡させるためのもう一つの方法が記載されている。ここで、このボードはマイクロ波界を用いて発泡体にされるため、この方法を以下でマイクロ波法と称する。この場合、発泡させるべきボード又は少なくともその表面を、材料の軟化点に達するまで予め加熱するか、又は材料の軟化点を上回って加熱する必要があることに留意すべきである。こういった条件下では、必然的に、外側の加熱によって軟化した材料の発泡も生じるため、発泡プロセスはマイクロ波界の影響のみによって制御可能であるわけではなく、付随する外部からの熱によっても同時に制御されねばならない。従って、発泡を促進させるために、通常の一段式の熱風法にマイクロ波界が追加されている。しかしながら、マイクロ波法は煩雑すぎるため実地には馴染まないことが判明し、今日まで使用されていない。
【0010】
WO90/2621号(Roehm GmbH)には、メタクリル酸とメタクリロニトリルとからの発泡体が記載されており、その際、コモノマーとしてのアクリルアミドによって、重合の際に早期に沈殿物が生じることが妨げられている。生じた発泡体は極めて均質であり、生成物は内部応力を有していない。
【0011】
DE19717483号(Roehm GmbH)には、モノマー混合物に対して1〜5質量%のMgOが混合されているポリメタクリルイミド発泡材の製造法が記載されている。サーモメカニカル特性が明らかに改善された発泡体が得られる。
【0012】
DE19925787号(Roehm GmbH)には、ROHACELL(R)からの発泡体とカバー層との積層によるスピーカー膜の製造法が記載されている。このカバー層は、強度向上の役割を担うものである。積層は、プレス中で、160℃を上回る温度で0.4MPaを上回る圧力で行われる。上に積層されたカバー層を除くプラスチック発泡成形体単独のメカニカル特性については、何ら言及されていない。
【0013】
DE19606530号(Roehm GmbH)には、ポリメタクリルイミド発泡材への難燃剤の添加が記載されている。
【0014】
EP356714号(Roehm GmbH)には、アリルメタクリレートで架橋されている機械的に安定なPMI発泡体が記載されている。ラジカル発生剤として、例えばアゾ−ビス−イソブチロニトリルが使用されており、重合すべき混合物には導電性粒子0.1質量%〜10質量%が添加される。この極めて硬質の発泡体も、極めてわずかな破断伸びを示すに過ぎない。JP2006045532号に開示されている金属塩でイオン的に架橋されているPMI発泡体についても、同様のことが言える。
【0015】
架橋剤を含有する微孔質発泡材も同様に公知であり、EP1678244号(Roehm GmbH)に記載されている。この微孔質材料は、5.5%までの破断伸びを示し得る。微孔性は、発泡剤を変えることや不溶性核剤を添加することにより達成され得る。微孔質材料は、不溶性核剤の使用によって製造され得るが、この不溶性核剤は沈殿防止剤の使用を必要とするため、これによる製造時のコスト増加は避けられない。総じて、5.5%を上回る引張強さを有する細孔質発泡体は記載されていない。
【0016】
EP1175458号(Roehm GmbH)には、等温運転方式での厚いスラブの製造が記載されている。これは、少なくとも4つの異なる開始剤の使用により達成されている。記載されている比較的高温で活性である開始剤は、115℃〜125℃で1時間の半減期を有しており、特に熱処理の際には作用するものの、発泡の際には作用しない。
【0017】
例えばCN100420702C号には、メタクリル酸とアクリロニトリルとをベースとする発泡体が記載されている。
【0018】
また、高温で分解し、60℃〜100℃ないし100℃〜140℃で1時間の半減期を有する少なくとも2つの開始剤をさらに使用することができる。しかしながらこの方法は、発泡させるべき系、又は酸を含有する系への転用が不可能である。
【0019】
DE1817156号(Roehm GmbH)には、メタクリロニトリルとメタクリル酸とホルムアミドとからの混合物、発泡材としての尿素又はモノメチルホルムアミドからの、ボード状の発泡性成形材料の製造が記載されており、この製造は、メタクリロニトリルとメタクリル酸とからの混合物を、柔軟なコードで封止されている2枚のガラス板の間で重合させることにより行われるものである。さらに、例えばtert−ブチルペルピバレートとベンゾイルペルオキシドとからの二成分系混合物としてのラジカル発生剤が添加されている。発泡性成形材料として、プラスチック成形体、例えば緻密なプラスチック成形体の粉砕により得られた造粒物や、ビーズ重合により得られたビーズの発泡が行われる。記載されているのは接着促進剤を使用しない多段の発泡法であって、発泡体の機械的もしくは化学的特性については言及されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の課題は、メタクリル化合物系及びアクリル化合物系のコポリマーの新規のインモールド発泡法を提供することであった。特に、この方法により特に良好な粒界密着性を有する発泡体が得られることが望まれていた。
【0021】
特に本発明の課題は、得られる発泡体コアにプラスチック及び/又は金属及び/又は繊維−プラスチック−複合体からのカバー層が極めて良好に密着することを特徴とする、上記発泡体の製造法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題は、ポリ(メタ)アクリルイミドと接着促進剤もしくは接着促進剤混合物と任意の助剤とから発泡成形体を製造するための新規の方法において、以下の工程:
− ポリ(メタ)アクリルイミドからのプラスチック成形体を粉砕する工程、
− 前の工程で得られた粉砕物を接着促進剤で被覆する工程、
− 被覆された粉砕物を金型に充填する工程、
− 任意に助剤を添加する工程、
− 金型を加熱する工程、
− 金型を発泡温度未満に冷却する工程、
− 発泡成形体を離型する工程
を含むことを特徴とする方法により解決された。
【0023】
ここで、本発明によれば、一段法と二段法の2つの方法のバリエーションが存在する。
【0024】
ここで、一段法は以下の工程を含む:
− ポリ(メタ)アクリルイミドからのプラスチック成形体を粉砕する工程、
− 前の工程で得られた粉砕物を接着促進剤で被覆する工程、
− 被覆された粉砕物を金型に充填する工程、
− 任意に助剤を添加する工程、
− 金型を加熱する工程、
− 金型を発泡温度未満に冷却する工程、
− 発泡成形体を離型する工程。
【0025】
二段法は以下の工程を含む:
− ポリ(メタ)アクリルイミドからのプラスチック成形体を粉砕する工程、
− 粉砕物を予備発泡させる工程、
− 前の工程で得られた粉砕物を接着促進剤で被覆する工程、
− 被覆された粉砕物を金型に充填する工程、
− 任意に助剤を添加する工程、
− 金型を加熱する工程、
− 金型を発泡温度未満に冷却する工程、
− 発泡成形体を離型する工程。
【0026】
ここで、好ましくは、接着促進剤としてポリアミドを使用することができる。これは特に、粉砕物に対して1質量%〜20質量%、好ましくは1質量%〜15質量%、特に好ましくは1質量%〜10質量%の量で使用される。
【0027】
同様に好ましくは、接着促進剤としてポリ(メタ)アクリレートを使用することができる。これは特に、粉砕物に対して1質量%〜20質量%、好ましくは1質量%〜15質量%、特に好ましくは1質量%〜10質量%の量で使用される。
【0028】
接着促進剤を用いたコポリマー粉砕物からの発泡材部品の製造における本質的な利点は、以下の通りである:
− 粉砕物を接着促進剤と一緒に金型(工具)へ容易に計量供給することができる。
− 接着促進剤が即座に溶融することで、粉砕物を相応する金型の箇所に(例えば斜面に)配置することができる。
− 発泡体コアにおいて、粒界(結合継ぎ目)間の密着力が確立される。
− 発泡体コアに、金型表面の厳密でかつ平滑な像形成が行われる。
− 発泡体コアとカバー層の相応するマトリックス(例えば熱可塑性、熱硬化性又は金属性)との間に、最適化された密着性が確立される。
【0029】
膨張性のメタクリル系及びアクリル系のポリマー粉砕物と接着促進剤とから均質な発泡体を製造するためには、まず最初に、工具容積に対して所望の密度が達成されるように、相応するポリマーからの粉砕物を秤量する。その後、この粉砕物を、固体の接着促進剤、又は液体の接着促進剤、又は固体の接着促進剤と液体の接着促進剤とからの混合物と混合することによって、この粉砕物を接着促進剤で覆う。接着促進剤は、粉砕粒を部分的もしくは表面全体的に覆い、この粉砕粒の周囲に多少なりとも閉じた層を形成する。
【0030】
粉砕物の粒度は、1.5mm〜5mm、好ましくは2mm〜4mm、極めて特に好ましくは2.5mm〜3.5mmである。粒度の測定は、5mm、3mm、1.5mm及び1mmの目開きの篩を用いた篩分けにより行われる。
【0031】
粉砕物の製造は、例えばカッティングミル中で行われる。このカッティングミルは、垂直的な配置で、それぞれ2つのステータ−及びロータカッターを備えている。ロータの回転数は50rpmであり、モータの電力は1.5kWである。カッティングミル(製造元:Siemens、132S型)の場合、処理量は例えば約1kg/h〜1.5kg/hである。
【0032】
例えば、粉末状の接着促進剤の添加量は、粉砕物の1質量%〜20質量%、好ましくは粉砕物の1質量%〜15質量%、極めて特に好ましくは粉砕物の1質量%〜10質量%である。溶融状態の接着促進剤によって、溶融すべきポリマー粒子が互いにすべり合い、かつ金型の壁部に接してすべることが可能となる。
【0033】
その後、固体混合物が金型内に均一に撒かれる。金型は任意の複雑性を有するものであってよいが、その際、約3mm未満の厚さでは十分な発泡が不可能であることに留意すべきである。
【0034】
その後、金型が閉鎖され、炉、加熱可能なプレス中で、又はその他の方法で加熱される。その際、加熱されたポリマーが発泡し、接着促進剤が溶融する。発泡させるべきポリマーの周囲に接着促進剤からの層が生じ、それにより、発泡の際に粒界が合体する。
【0035】
ポリマー
(メタ)アクリル酸という用語は、メタクリル酸、アクリル酸又はこれら双方からの混合物を指す。(メタ)アクリロニトリルという用語は、メタクリロニトリル、アクリロニトリル又はこれら双方からの混合物を指す。例えばアルキル(メタ)アクリレートという用語についても、同様のことが言える。この用語は、メタクリル酸、アクリル酸又はその双方からの混合物のアルキルエステルを指す。
【0036】
注型ポリマーを製造するに当たり、まず最初に、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリロニトリルとを好ましくは2:3〜3:2のモル比で主成分として含むモノマー混合物が製造される。さらに、例えばアクリル−もしくはメタクリル酸のエステル、スチレン、マレイン酸もしくはイタコン酸ないしその無水物、又はビニルピロリドンといった、さらなるコモノマーを使用することができる。ここで、このコモノマーの割合は、2つの主成分の30質量%以下、好ましくは10質量%以下であることが望ましい。例えばアリルアクリレートのような架橋性モノマーを少量併用することができる。しかしながらその量は、好ましくはせいぜい0.05質量%〜2.0質量%であることが望ましい。
【0037】
共重合用の混合物は、さらに発泡剤を含有しており、この発泡剤は、約150〜250℃の温度で分解もしくは蒸発し、その際に気相を形成するものである。
【0038】
重合は、好ましくはスラブ金型中で行われる。例えば厚さ80mmまでの層状の平面スラブを製造する場合には、モノマー混合物は、縁部でそれぞれ封止されていて一種の平面チャンバを形成している2枚のガラス板の間に存在している。この平面チャンバは、所望の重合温度に調節されている水浴により包囲されている。
【0039】
重合は、十分に、又は広い範囲にわたって、等温条件下に、即ち一定の水浴温度で実施されてよい。多くの場合、重合の開始から終了まで水浴温度を一定に保持することが可能である。しかしながら場合により、重合の一部をより高温で行うために、水浴温度をまず最初に長時間一定に保持し、所定の時間後に高めることもできる。
【0040】
この、より高温で行われる次の重合段階においても、水浴温度を一定に保持することができる。
【0041】
水浴温度の選択は、重合チャンバの厚さと、重合時に使用される配合物とに依存する。ここで一般には、製造すべきボードが厚いほど、重合温度、ひいては水浴温度をより低い値へとシフトすることが好ましい。
【0042】
配合物及び厚さに適した温度は、その都度単純な予備試験によって最適化され得る。
【0043】
当然のことながら、温度は、チャンバの厚さ及び配合物に対して、上で挙げた限度の範囲内で、重合の間に重合混合物が望ましくない温度となることなく、重合の際に放出される熱が十分な程度で排出され得るように調節される。周囲の水浴により制御される重合工程が終了した後に、加熱棚中での熱処理が実施される。熱処理は一般に80〜130℃の温度で行われ、その際、すでに説明した通り、38℃から出発して、好ましくは重合温度から出発して、均一な、もしくは段階的に上昇する温度レジームが設定され得る。この熱処理棚における最終重合には、一般に10〜1000時間で十分である。
【0044】
発泡剤
発泡剤(C)として、以下の化合物又はそれらからの混合物が使用可能である:ホルムアミド、ギ酸、尿素、イタコン酸、クエン酸、ジシアンジアミド、水、モノアルキル尿素、ジメチル尿素、5,5’−アゾ−ビス−5−エチル−1,3−ジオキサン、2,2’−アゾ−ビス−イソ酪酸ブチルアミド、2,2’−アゾ−ビス−イソ酪酸−N−ジエチルアミド、2,2’,4,4,4’,4’−ヘキサメチル−2,2’−アゾペンタン、2,2’−アゾ−ビス−2−メチル−プロパン、ジメチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、アセトンシアンヒドリンカーボネート、オキシ−イソ酪酸メチルエステル−カーボネート、N−メチルウレタン、N−エチルウレタン、N−tert−ブチルウレタン、ウレタン、シュウ酸、マレイン酸、オキシ−イソ酪酸、マロン酸、シアンホルムアミド、ジメチルマレイン酸、メタンテトラカルボン酸テトラエチルエステル、オキサミド酸−n−ブチルエステル、メタントリカルボン酸トリメチルエステル、メタントリカルボン酸トリエチルエステル、並びに3〜8個の炭素原子からの一価アルコール、例えばプロパノール−1、プロパノール−2、ブタノール−1、ブタノール−2、tert−ブタノール及びイソ−ブタノール。
【0045】
開始剤
開始剤として、ラジカル重合可能な化合物及び開始剤系が使用される。公知の化合物クラスは、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキソジスルフェート、ペルカーボネート、ペルケタール、ペルオキシエステル、過酸化水素及びアゾ化合物である。開始剤の例は、過酸化水素、ジベンゾイルペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキソジカーボネート、ジラウリルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオクタノエート、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルネオデカノエート、tert−アミルペルピバレート、tert−ブチルペルピバレート、tert−ブチルペルベンゾエート、リチウム−、ナトリウム−、カリウム−及びアンモニウムペルオキソジスルフェート、アゾイソブチロニトリル、2,2−アゾビスイソ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾ−ビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、及び4,4’−アゾビス(シアノ吉草酸)である。
【0046】
同様に好適なものは、レドックス開始剤である(H. Rauch-Puntigam, Th. Voelker, Acryl- und Methacrylverbindungen, Springer, Heidelberg, 1967、又はKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, Vol.1, 第286頁以下, John Wiley & Sons, New York, 1978)。時間及び温度に関して異なる分解特性を有する開始剤及び開始剤系を組み合わせることが有利である場合がある。好ましくは、開始剤は、モノマーの全質量に対して0.01質量%〜2質量%、特に好ましくは0.15質量%〜1.5質量%の量で使用される。
【0047】
重合は、好ましくは塊状重合の変法、例えばいわゆるチャンバ法により行われるが、これに限定されるものではない。
【0048】
ポリマーの分子量の重量平均
【化1】
は、好ましくは106g/モルを上回り、特に3×106g/モルを上回るが、これに制限されるものではない。
【0049】
さらに、前駆体は慣用の添加物を含有してよい。これには、とりわけ帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、着色剤、難燃剤、流動性向上剤、フィラー、光安定剤及び有機リン化合物、例えばホスファイト又はホスホネート、顔料、耐候剤及び可塑剤が含まれる。
【0050】
好ましい添加物のもう一つのクラスは、発泡材の静電気帯電を防止する伝導性粒子である。これには、とりわけ金属−及びカーボンブラック粒子が含まれ、これらは、EP0356714A1号に記載されているように10nm〜10mmの範囲内の寸法を有する繊維として存在していてもよい。
【0051】
極めて特に好ましく使用可能なポリ(メタ)アクリルイミド発泡材の一つは、例えば以下の工程により得ることができる:
1.以下のものからなる組成物のラジカル重合によるポリマーボードの製造:
(a)メタクリル酸とメタクリロニトリルとの合計に対して、メタクリロニトリル20質量%〜60質量%、メタクリル酸80質量%〜40質量%、及び場合により他の単官能性ビニル系不飽和モノマー20質量%まで、
(b)ホルムアミドもしくはモノメチルホルムアミドと、例えばイソプロパノールのような分子中に3〜8個の炭素原子を有する一価の脂肪族アルコールとからの発泡剤混合物0質量%〜15質量%、
(c)以下のものからなる架橋剤系
(c.1)分子中に少なくとも2個の二重結合を有するラジカル重合性ビニル系不飽和化合物0.005質量%〜5質量%、及び
(c.2)モノマー混合物中に溶解した酸化マグネシウム0.1質量%〜5質量%
(d)開始剤系
(e)慣用の添加物。
【0052】
2.この混合物を、寸法50cm×50cm、厚さ2.2cmの2枚のガラス板から縁部を封止して形成されたチャンバ内で、30℃〜45℃で数日間重合させる。次いで、このポリマーを、40℃〜130℃に達する熱処理プログラム下に約20hおいて最終重合させ、ポリ(メタ)アクリルイミドを得る。次に続く発泡を、200℃〜250℃で数時間行う。
【0053】
ポリ(メタ)アクリルイミドのための任意の添加物
さらに、混合物に慣用の添加物を添加することができる。好適な量は、モノマー混合物に対して例えば0質量%〜20質量%、0質量%〜10質量%、又は0質量%〜5質量%である。
【0054】
慣用の添加物は、上記のモノマー、架橋剤、発泡剤又は開始剤とは異なるものである。
【0055】
これにはとりわけ、帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、着色剤、流動性向上剤、フィラー、光安定剤及び有機リン化合物、例えばホスファイト又はホスホネート、顔料、離型剤、耐候剤及び可塑剤が含まれる。考え得るさらなる添加物は難燃剤である。部分的に酸化アンチモンを含有するハロゲン含有難燃剤に加えて、リン含有化合物も使用可能である。リン含有化合物は、燃焼時の煙ガス毒性が低いために好ましい。リン化合物には、とりわけ、ホスファン、ホスファンオキシド、ホスホニウム化合物、ホスホネート、ホスファイト及び/又はホスフェートが含まれる。これらの化合物は有機及び/又は無機の性質のものであってよく、例えば、リン酸モノエステル、ホスホン酸モノエステル、リン酸ジエステル、ホスホン酸ジエステル及びリン酸トリエステル、並びにポリホスフェートであってよい。
【0056】
接着促進剤
原則的に、接着促進剤は液体であっても固体であってもよく、固体の接着促進剤同士の混合物、固体の接着促進剤と液体の接着促進剤とからの混合物、及び液体の接着促進剤同士の混合物も使用可能である。
【0057】
例えば、ホットメルト接着剤又は反応性接着剤を使用することができ、その際、接着促進剤は、種々のポリアミド(PA)型(例えば、PA6(Evonik Degussa GmbH 社から市販されているVestamelt(R)型)、PMMA(例えばEvonik Roehm GmbH社より市販されているDegalan(R) BM310)、PMMI(Evonik Roehm GmbH社より市販されているAcrymid(R) TT50(Acrymid(R) TT50は、耐熱変形性の高いポリ(n−メチルメタクリルイミド)である))又は、硬化剤(Evonik Roehm GmbH社より市販されているVestamin(R)(Vestamin(R)は、脂肪族及び脂環式アミンをベースとする架橋剤である)))をベースとしたものであってよい。場合により、接着促進剤は上記成分の混合物からなっていてもよい。
【0058】
接着促進剤の溶融温度は、120℃〜255℃、好ましくは120℃〜250℃、極めて特に好ましくは120℃〜245℃である。
【0059】
接着促進剤又は接着促進剤混合物の量は、ポリ(メタ)アクリルイミドポリマーに対して、1質量%〜20質量%、好ましくは1質量%〜15質量%、極めて特に好ましくは1質量%〜10質量%である。
【0060】
場合により、さらに慣用の離型助剤及び/又は離型剤が使用されてもよく、金型には付着防止被覆が備えられていてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0061】
実施
金型内で発泡させた材料の製造
以下のパラメータを全ての発泡工程で用いた:
− 圧力pは、約3〜4MPaであり、金型の固定及び閉鎖に利用した。
− 温度Tは、約240℃〜250℃であった。
− 発泡時間は約1と1/2時間であり、予備発泡させた材料の場合には約30分であった。
【0062】
圧縮試験
圧縮試験をDIN EN ISO 844により行った。
【0063】
試験体を金型内で発泡させ、次いで必要な試験寸法50mm×50mm×50mmに切断する。試験体のコンディショニングを125℃で2時間行う。圧縮強さを試験するため、Zwick/Roell社製の試験装置Z030型を使用する。
【0064】
材料特性に基づき、金型内で発泡させた材料については10%ひずみでの圧縮応力を求め、ROHACELL(R)については圧縮強さを求めた。これは、この場合セル面に明らかな破断が生じるためである。
【0065】
引張試験
DIN EN ISO 527−2に準拠して、引張試験を行った。
【0066】
この規格とは異なり、試験体の製造を、金型内で発泡させたボードの機械加工により行った。試験体(1B型)は、ROHACELL(R)ボード材と、金型内で発泡させたボードとからフライス盤により切断したものであり、厚さ10mmを有する。試験体のコンディショニングを125℃で2時間行う。引張強さの試験のために、Zwick/Roell社製の試験装置Z030型を使用する。
【0067】
結果
本発明による材料は、同じ密度で、ROHACELL(R) RIMAの圧縮強さの約50%に達する。
【0068】
接着促進剤VESTAMELT(R)(使用した粉砕物に対して5質量%)によって、圧縮強さが15%改善され、接着促進剤DEGALAN(R) BM310(使用した粉砕物に対して5質量%)によって、圧縮強さが8%改善される。
【0069】
本発明による材料は、ROHACELL(R) RIMAの引張強さの約30%及び破断伸びの15%に達する。弾性率は、ROHACELL(R) RIMA 110の値の約85%である。
【0070】
接着促進剤VESTAMELT(R)(使用した粉砕物に対して5質量%)によって、引張強さ及び破断伸びは約35%増加し、弾性率は約5%増加し、接着促進剤DEGALAN(R) BM310(使用した粉砕物に対して5質量%)により、引張強さ、弾性率及び破断伸びは5%未満改善される。
【0071】
二段発泡
プロセス時間を最小化するために、すでに予備発泡させた粉砕物を用いて、金型を完全に発泡させる試験を行った。従って、種々の予備発泡温度、例えば170℃〜190℃、及び種々の予備発泡時間、例えば60分〜90分、並びに、金型内での完全発泡に関して種々の温度、例えば230℃〜250℃、及び種々の時間、例えば10〜40分で試験した。
【0072】
一段発泡との違いは、本質的に、粉砕物をIMFプロセスの前にすでに予備発泡させる点にある。そのために、キャビティに必要な計算された量の粉砕物を、予備加熱した強制通風炉内で175℃〜185℃の温度で約1時間貯蔵する。発泡プロセスの開始により、この粉砕物は体積が2〜3倍に膨張する。その際、白色ないし黄色の変色が生じる。予備発泡させた材料を、粉砕物の場合に行ったのと同様にキャビティ内に分配する。プロセス時間以外は一段発泡の場合と同じ条件で発泡体を製造する。予備発泡によりプロセス時間は短縮される。完成発泡のために、発泡時間t=20〜30分をかける。一段プロセスの場合と同様に冷却を行う。
【0073】
二段発泡によって、とりわけサイクル時間の低減が可能となり、それにより材料をより長時間にわたって中間貯蔵することができるようになり、さらに発泡体コアを製造するためのサイクル時間がより短くなることが保証される。
【0074】
本発明により得られる発泡成形体は、宇宙飛行体、航空機、船舶及び地上車両を製造するための材料成分として好適である。