【実施例】
【0015】
次に、上記特徴を有する好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、本明細書中、「下方」とは、アイロンにおいてかけ面を有する方向(
図1によれば下方)を意味し、「上方」とは、前記「下方」に対する逆方向を意味する。
また、「前方」とは、アイロンが通常の用い方で把持された場合において、その前方となる方向(
図1によれば右方向)を意味し、「後方」とは、前記「前方」に対する逆方向を意味する。特に、図示例のアイロン1では、
図3に示すように、通常の用い方で把持部11が手で把持された際に、該手の親指p及び人差し指iが位置する方向が前記「前方」となり、小指chが位置する方向が前記「後方」となる。また、図示例のアイロン1では、一端から他端まで横幅が徐々に狭くなる略V字状又は略三角形状の輪郭を有しており、前記「前方」は、前記横幅が徐々に狭くなってゆく方向(
図2(b)によれば右方)である。
また、「左右」とは、先端を前方へ向けたアイロン1を上方側から平面視して(
図4参照)、大面積部21aを横方向に二分割する中心線C(仮想線)を設けた場合に、該中心線Cを境(基準)にした一方側と他方側(
図4によれば左側と右側)を意味する。
また、「横幅」とは、前記中心線Cに略直交する方向の幅を意味する。
【0016】
このアイロン1は、把持部11を有するアイロン本体10と、該アイロン本体10の下側でかけ面21を下方へ向けたベース板20とを備える。このアイロン1を用いてアイロンがけする際には、把持部11が手で把持され、かけ面21が対象物aに押し付けられる(
図3参照)。
【0017】
アイロン本体10は、合成樹脂材料等により成形され、内部には、スチームを発生させるための水を貯溜するタンク(図示せず)や、該タンク内の水を加熱するヒータ(図示せず)等が設けられる。
アイロン本体10の外側部分には、把持部11や、スチームを発生させるためのスチームボタン12、前記ヒータに電源を供給するための電源コード(図示せず)、前記ヒータの温度を調整するための温度調整ツマミ(図示せず)、電源及び温度状態等に応じて点灯又は消灯するパイロットランプ(図示せず)等が設けられる。
【0018】
把持部11は、アイロンがけの際に作業者等が手で把持する部位である。この把持部11は、アイロン本体10上部側の貫通孔13の上側に配置され、前後方向へ長尺な略軸状に形成される。
この把持部11は、
図3に示すように、親指p及び人差し指iが前側に位置し、小指chが後側に位置するようにして手で握られることを想定している。
なお、把持部11は。手で把持することが可能な構成であればよく、図示例以外の形状とすることが可能である。
【0019】
スチームボタン12は、アイロンがけ作業のモード切換(すなわち、スチームとドライとの切換)を行う押しボタンスイッチである。このスチームボタン12は、例えば、押し込まれた状態又は突出した状態でドライとなり、前記と逆の状態でスチームとなるように構成される。
【0020】
また、ベース板20は、アイロン本体10の下部側に、かけ面21を下方へ向けるようにして設けられている。
このベース板20は、熱伝導性の比較的高い金属材料を、ダイキャスト等の金型鋳造により所定形状に成形してなる。
このベース板20の上面側には、スチーム発生室(図示せず)が設けられ、該スチーム発生室で発生するスチームは、後述するスチーム噴出孔22を通ってベース板20の下方側へ噴出する。
そして、このベース板20の下面は、布等のアイロンがけ対象物aに押圧されるかけ面21となっている。このかけ面21には、対象物aに対する摩擦抵抗の軽減や耐腐食性の向上等のために、フッ素樹脂等のコーティングが施されている。
【0021】
かけ面21は、後部側に位置する大面積部21aと、該大面積部21aよりも前側に位置し且つ面積及び横幅の小さい小面積部21bとに区画される。
【0022】
大面積部21aは、比較的広い面積の平坦面状に形成され、
図2(b)に示す一例によれば、前方へ向かって徐々に横幅が狭くなる左右対称形状である。
この大面積部21aには、スチーム噴出孔22を設けていない。
【0023】
小面積部21bは、大面積部21aよりも前側において、前方へゆくにしたがって徐々に横幅が狭くなる平面視略三角形状であって、且つ、大面積部21aに対し前方斜め上方へ傾く傾斜平坦面状に形成される。そして、大面積部21aに連続して前方へ延びる仮想平面と、小面積部21bとの角度αは、約1〜20度に設定される(
図2(a)参照)。なお、前記角度範囲の上限を超えた場合には、アイロンがけの作業性が著しく低するおそれがある。
この小面積部21bには、複数のスチーム噴出孔22が設けられる。これらスチーム噴出孔22は、
図2(b)に示すように、小面積部21bの略三角形状の輪郭に沿って複数配設されるとともに、小面積部21bの中央部近傍にも複数配設される。
【0024】
また、小面積部21bは、その前端寄りにおける両側部のうち、その一方の側部のみに切欠部23を有する。すなわち、かけ面21の前端寄りは、切欠部23により左右非対称な形状となる。
【0025】
切欠部23は、滑らかな凹曲線状の輪郭を有し、その曲率や、凹みの深さ、幅等は、
図4に示すように、衣類等に用いられる平均的な径のボタンa1の外周部に嵌り合うように適宜に設定される。
【0026】
次に、上記構成のアイロン1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
先ず、
図3(a)に示すように、大面積部21aの全面をアイロンがけの対象物aに接触させた状態では、小面積部21bが、前方斜め上方へ傾斜して対象物aから離れる。
把持部11を手で握り持ち、
図3(b)に示すように、大面積部21aを対象物aから引き離すとともに、前側に位置する小面積部21bを対象物aに接触させれば、小面積部21bを衣類等の要部に対し局部的に強く押し付けることができ、衣類の襟回りや、袖回り、ポケット回り、ボタン回り等、細かな要部を効率的にアイロンがけすることができる。
【0027】
また、
図3(a)に示す初期状態では、対象物aに接しない小面積部21bのスチーム噴出孔22からスチームが噴出し、このスチームが、対象物aの表面に沿って徐々に拡散する。したがって、この後、大面積部21a又は小面積部21bを用いて、対象物aにおけるスチームが当てられた比較的広範囲な面を効率的にアイロンがけすることができる。
また、対象物a上にアイロン1を載置した初期状態(
図3(a)参照)では、スチーム噴出孔22の出口側の縁が対象物aに接触しないため、対象物aにスチーム噴出孔22の跡が付いたり、スチーム噴出孔22の汚れが対象物aに転写したり、スチーム噴出孔22内に対応する狭い範囲のみスチームが当たったりするのを防ぐことができる。
【0028】
また、例えば、
図4に示すように、対象物aにおけるボタンa1の周りをアイロンがけする場合には、切欠部23によりボタンa1を逃がすようにして、対象物aにおけるボタンa1近傍をアイロンがけすることができ、ボタンa1にベース板20が当たってボタンa1が損傷等するのを防ぐことができる。
また、前記アイロンがけの際、ベース板20における切欠部23を有さない部分(
図4によれば前端側の右側部分)に蓄積される熱が、切欠部23側へ伝導するため、仮に左右両側に切欠部を設けた場合と比較し、側部からの放熱が少なく熱伝導が良好であり、ひいては、アイロンがけ作業を効率的に行うことができる。
また、対象物aにおけるポケット回り、襟回り、袖回り等をアイロンがけする場合にも、切欠部23を各要部の輪郭に沿わせて、アイロンがけを効率的に行うことができる。
【0029】
なお、上記実施例によれば、特に好ましい一例として、小面積部21bを平坦面状に形成したが、他例としては、小面積部21bを、凸曲面状に形成することも可能である。
【0030】
また、上記実施例によれば、かけ面21を前方へ行くにしたがって連続的に徐々に横幅が狭くなるように形成したが、他例としては、かけ面21を前方へ向かって段状に横幅が狭くなるようにすることも可能である。
【0031】
また、上記実施例によれば、切欠部23を凹曲線状に形成したが、他例としては、切欠部23を、曲線を有さない凹字状や、V字状、その他の凹形状とすることが可能である。
【0032】
また、上記実施例によれば、切欠部23を小面積部21bにおける一方の側部のみに単数設けたが、他例としては、切欠部23を小面積部21bにおける一方の側部のみに複数設けることも可能である。
【0033】
また、図示例によれば、右利きの作業者が使い易いように、かけ面21の左側部のみに切欠部23を設けたが(
図4参照)、他例としては、左利きの作業者が使い易いように、かけ面21の右側部のみに切欠部23を設けるようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施例によれば、特に好ましい一例として、スチーム噴出孔22を小面積部21bのみに設けたが、他例としては、スチーム噴出孔22を大面積部21aにも設けたり、全てのスチーム噴出孔22を省いてドライ専用のアイロンを構成したりすることも可能である。