(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038251
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ペンタクロロプロパンの気相フッ素化による2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/25 20060101AFI20161128BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20161128BHJP
B01J 27/132 20060101ALI20161128BHJP
B01J 37/26 20060101ALI20161128BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
C07C17/25
C07C21/18
B01J27/132 X
B01J37/26
!C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-163033(P2015-163033)
(22)【出願日】2015年8月20日
(62)【分割の表示】特願2013-534394(P2013-534394)の分割
【原出願日】2010年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-26161(P2016-26161A)
(43)【公開日】2016年2月12日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ボネ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ピガモ,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンドランジャ, ロラン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥセ, ニコラ
【審査官】
緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−227675(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/013796(WO,A1)
【文献】
特開平09−194404(JP,A)
【文献】
特開昭59−108726(JP,A)
【文献】
特開平10−180104(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/015317(WO,A1)
【文献】
特表2013−523734(JP,A)
【文献】
特許第5833660(JP,B2)
【文献】
特表2009−522365(JP,A)
【文献】
特表2010−528043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
B01J 27/132
B01J 37/26
C07C 21/18
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンおよび1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンをCrベースの触媒および酸素の存在下で、ペンタクロロプロパン(240)に対する酸素の比率を0.05〜15モル%、にして、気相触媒フッ素化して製品の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造し、生じた副生成物を分離することを特徴とする方法。
【請求項2】
ペンタクロロプロパン(240)に対する酸素の比率を0.5〜10モル%〜にする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Ni−Crを含む触媒の存在で実施する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
触媒がフッ素化アルミナ、フッ素化クロミナ(Chromia)、フッ素化活性炭またはグラファイトカーボンの中から選択される担体上に担持されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
触媒がNi、Co、Zn、Mnまたはこれらの混合物の中から選択される共触媒をさらに含み、この共触媒がフッ素化触媒の1〜10重量%の量で存在する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フッ素化触媒をフッ素含有化合物で活性化する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記フッ素含有化合物がフッ化水素であり、活性化を10バール以上の圧力で行う請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンが1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン異性体を40モル%まで含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1〜20バールの圧力で実行する請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
200〜450℃の温度で実行する請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
6〜100秒の接触時間で実行する請求項〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
HF:240のモル比を3:1〜150:1にする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
p−メトキシフェノール、t−アミルフェノール、リモネン、d,l−リモネン、キノン、ヒドロキノン、エポキシ樹脂、アミンおよびこれらの混合物の中から選択される重合抑制剤を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
連続法である請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC 240db)のおよび/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC 240aa)を気相で触媒フッ素化して製品2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO 1233xf)を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾン層保護のためのモントリオールプロトコルによってクロロフルオロカーボン(CFC)の使用は禁止された。クロロフルオロカーボンの代わりにオゾン層への影響がより少ない化合物、例えばハイドロフルオロカーボン、HFC、例えばHFC−134aが用いられるようになった。しかし、これらの化合物は温室効果ガスとなる。従って、ODE(オゾン減損ポテンシャル)が低く且つGWP(地球温暖化ポテンシャル)が低いものを開発するというニーズが存在する。ハイドロフルオロカーボン(HFC)はオゾン層に影響を及ぼさない化合物の重要な候補物質と認定されたが、それでも相対的に高いGWP値を示し、さらに低いGWP値を示す化合物を見つけるというニーズが存在している。ヒドロフルオロオレフィン(HFO)はODEおよびGWP値が非常に低い代替物であると考えられている。
【0003】
このHFO化合物、特にプロピレンの製造方法がいくつか開発されている。2つの混合物:1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)および1233xf(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)が特に望まれている。
【0004】
特許文献1(米国特許公開第US2009/0240090号明細書)には1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC 240db)を無酸素状態で気相反応させて製品の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO 1233xf)を製造する方法が記載されている。この特許の実施例3ではフッ素化したCr
2O
3から成る触媒を使用する。得られた製品の1233xfを次いで液相反応で製品の2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)に変換する。
【0005】
特許文献2(国際特許公開第WO2009/015317号公報)には1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン(1230xa)、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(240db)または2,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(1230xf)のような塩素化物を触媒上で少なくとも一種の安定化剤の存在下に気相でHFと反応させる方法が開示されている。この方法で2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(1233xf)が得られる。しかし、出発材料として240dbを用いた実施例はない。安定化剤は触媒寿命を改善するとされている。また、定期的な再生が考慮されている。
【0006】
特許文献3(国際特許公開第WO2005/108334号公報)の実施例3では240dbを5モル過剰なHFの存在下に50gの1/8インチCr
20
3触媒ベッドを有する貫通反応装置に250〜400℃で約5〜50秒の接触時間で通して、244db(2−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン)を得ている。次いで、244dbをCr
2O
3触媒(50g)上を425〜550℃の温度で25〜30秒の接触時間で通して脱塩化水素化して製品の1234ze(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)にする。
【0007】
特許文献4(英国特許公開第GB−A−1091103号公報)にはクロムフッ素化触媒の製造方法が開示されている。この触媒を使用してフッ素化可能な多数の化合物が示されており、その中にペンタクロロプロパンも言及されているが、好ましい化合物ではないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公開第US2009/0240090号明細書
【特許文献2】国際特許公開第WO2009/015317号公報
【特許文献3】国際特許公開第WO2005/108334号公報
【特許文献4】英国特許公開第GB−A−1091103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、化合物の1233xfを製造するための方法に対するニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、触媒および酸素の存在で、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンまたは/および1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンを気相で触媒フッ素化して製品の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンにする方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記はその具体例である:
(1)ペンタクロロプロパン(240)に対する酸素の比率は0.05〜15モル%、好ましくは0.5〜10モル%である。
(2)Ni-Crを含む触媒、好ましくはその担持された触媒の存在下で本発明方法を実行する。
(3)触媒はフッ素化アルミナ、フッ素化クロミナ(Chromia)、フッ素化活性炭またはグラファイトカーボンの中から選択される担体上に担持されている。
(4)触媒はNi、Co、Zn、Mnまたはこれらの混合物の中から選択される共触媒、好ましくはニッケルの共触媒をさらに含み、この共触媒が好ましくはフッ素化触媒の約1〜10重量%の量で存在する。
(5)フッ素化触媒がフッ素含有化合物、好ましくはフッ化水素で、好ましくは10バール以上の圧力で活性化される。
(6)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン異性体を40モル%まで含む。
(7)本発明方法は1〜20バール、好ましくは3〜15バール、より好ましくは5〜10バールの圧力で実行する。
(8)本発明方法は200〜450℃、好ましくは300〜430℃、より好ましくは320〜420℃の温度で実行する。
(9)本発明方法は6〜100秒、好ましくは10〜80秒、より好ましくは15〜50秒の接触時間で実行する。
(10)HF:240のモル比は3:1〜150:1、好ましくは4:1〜70:1、より好ましくは5:1〜50:1にする。
(11)重合抑制剤、好ましくはp−メトキシフェノール、t−アミルフェノール、リモネン、d,l−リモネン、キノン、ヒドロキノン、エポキシ樹脂、アミンおよびこれらの混合物の中から選択される重合抑制剤を含む。
(12)本発明方法を連続法で実施する。
【0012】
本発明はさらに、本発明方法の段階で得られる製品、特に、主として1233xfと不純および/または未反応の出発材料および/または副生成物とを含む混合物にも関する。
【0013】
本発明は240db(および/または240aa)の気相の触媒フッ素化によって1233xfが得られ、酸素を240と一緒に共供給(cofed)して触媒寿命が改善できるように反応を実施するようにプロセス条件を選択することができるという発見に基づいている。
【0014】
240aaの一部が所望製品に変換され、243タイプと考えられる副生成物は他の反応で有効に使用できる。従って、出発材料の240aaが完全に所望の1233xfに変換されない場合でも、得られた製品は価値を有する。
【0015】
本発明で使われる触媒が例えば遷移金属酸化物またはその誘導体を含む金属またはこの金属のハロゲン化物またはオキシハライドをベースにした触媒である。触媒は例えばFeCl
3、クロムオキシフルオライド、酸化クロム(必要に応じてフッ素化されていてもよい)、フッ化クロムおよびこれらの混合物である。他の可能な触媒はカーボン担持触媒、アンチモンベースの触媒、アルミニウムベースの触媒、(AlF
3およびAl
2O
3およびアルミナのオキシフルオライドおよびフッ化アルミニウム)である。一般的に使用できる触媒とクロムオキシフルオライド、フッ化アルミニウムおよびオキシフルオライドおよびCr、Ni、Zn、Ti、V、Zr、Mo、Ge、Sn、Pb、Mgのような金属を含む担持または非担持触媒である。また、特許文献5の第7頁、第1〜5行目、第28〜32行目、特許文献6のパラグラフ[0022]、特許文献7の第9頁第22行目〜第10頁第10行目、特許文献8のクレーム1を参照することができる。これらの内容は本明細書の一部を成す。
【特許文献5】国際特許公開第WO−A−2007/079431号公報
【特許文献6】欧州特許公開第EP−A−939071号公報
【特許文献7】国際特許公開第W02008/054781号公報
【特許文献8】国際特許公開第WO2008/040969号公報
【0016】
使用前に触媒は活性化する。一般には特許文献9に記載のように高圧、一般には約10バール以上の圧力(一般には気相プロセスで使用される圧力より高い圧力)下でHFで活性化する。この特許文献の内容は本願明細書の一部を成す。これ以外の他の適切な条件も適している。
【特許文献9】米国特許第US−A−7485598号明細書
【0017】
好ましい実施例ではクロムとニッケルを含む混成触媒である特定の触媒を使用する。金属元素に対するCr:Niのモル比は一般に0.5〜5の間、好ましくは0.7〜2の間で、1に近い。触媒は重量で0.5〜20%のクロムと、0.5〜20%、好ましくは2〜10%の間のニッケルを含むことができる。
【0018】
金属は金属の形か、酸化物、ハロゲン化物またはオキシハライドを含むその誘導体の形にすまれ、触媒金属の賦活によって得られる。金属の賦活は必要ではないが、好ましい。
【0019】
担体はアルミニウムにするのが好ましい。他の担体、例えばアルミナ、活性アルミナまたはアルミニウム誘導体を使用することもできる。これらの誘導体例えば特許文献10に記載のアルミニウム、アルミニウム・ハロゲン化物およびハロゲン化物酸化物を含み、また、後述する賦活方法で得られる。
【特許文献10】米国特許第US−P−4902838号明細書
【0020】
触媒は賦活した、または、賦活していな担体上に賦活した、または、賦活していないクロミウムおよびニッケルを有する。触媒に関しては特許文献11、特にその第4頁第30行目〜第7頁第16行目を参照できる。このとの内容は本願明細書の一部をなす。
【特許文献11】米国特許公開第W02009/118628号明細書
【0021】
さらに、触媒は好ましくは担持されていない表面積の大きなCrベースの触媒にすることができる。この触媒は必要に応じて一種以上の共触媒、例えばCo、Zn、Mn、MgおよびNi塩を低レベルで含むことができる。好ましくは共触媒はニッケルである。他の好ましい共触媒はZnであり、他の好ましい共触媒はMgである。表面積の大きなCrベースの触媒は特許文献12の第4、6頁に記載されている。
【特許文献12】国際特許公開第W02009/158321号公報
【0022】
本発明方法は連続法で行うのが好ましい。
【0023】
本発明のフッ素化方法は、240dbを主として1233xfから成るフッ素化製品に変換するのに十分な条件下で、反応帯域中で気相で240dbをHFと接触させることを含む。
【0024】
本発明方法は一般にHF:240のモル比を3:1〜150:1、好ましくは1:1〜4:70、より好ましくは5:1〜50:1にして実行される。本発明方法一般に1〜20バール、好ましくは3〜1バール、より好ましくは5〜10バールの圧力で実行される。本発明方法は一般に200〜450℃、好ましくは300〜430℃、より好ましくは320〜420℃の温度、実行される。反応装置のベッドの温度は実質的に均一にするか、流路に沿って減少または増加するように流れ方向に調節することができる。
【0025】
接触時間(反応物と共供給物との全流速で触媒容積を割ったもの、運転圧力および温度で調節)は一般に6〜100秒、好ましくは10〜80秒まで、より好ましくは15〜50秒である。
【0026】
酸素の共供給物は触媒寿命を延すために使われ、ペンタクロロプロパンの1分子当たり酸素または塩素の量を一般に0.05〜15モル%、好ましくは0.5〜10モル%にする。酸素は酸素含有ガス、例えば空気、純粋酸素または酸素/窒素混合物の形で導入できる。
【0027】
重合抑制剤は触媒寿命を延すために用いることができる。その量は一般に約50〜1000ppm、好ましくは100〜500ppmにすることができる。重合抑制剤はp−メトキシフェノール、t−アミルフェノール、リモネン、d,l−リモネン、キノン、ヒドロキノン、エポキシ樹脂、アミンおよびこれらの混合物にすることができる。好ましい重合抑制剤はp−メトキシすることで、特許文献13(その内容は本願明細書の一部をなす)で説明されているように、クロロオレフィンの重合を制御することができ、触媒の寿命を延長することができる。
【特許文献13】米国特許第US5714651号明細書
【0028】
反応物は反応装置の同じ位置、異なる位置または反応装置に沿って配置した複数の供給位置から供給できる。好ましい供給システムは反応装置の底からガス状の反応物を吹込む方法である。
【0029】
再循環は反応装置の入口または反応装置の中間段階に行うことができ、好ましくは反応装置の入口に行う。また、反応装置を出た流れの一部を再循環することもできる。
【0030】
反応はハロゲンを含む反応用の専用反応装置で実行される。この種の反応装置は当業者に公知であり、例えばHastelloy(登録商標)、Inconel(登録商標)、Monel(登録商標)またはフッ素共重合体をベースにしたライニングをしたものが含まれる。反応装置には必要に応じて熱交換手備えることができる。
【0031】
最終製品は公知の任意手段、例えスクラビング、洗浄、抽出、デカンテーション、好ましくは蒸留によって容易に回収できる。また、蒸留によって更に精製することができる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
使用した設備は管状オーブンで取り囲んだINCONEL(登録商標)合金600製の内径が19mmの管状反応装置から成る。この反応装置は圧力計および温度制御装置を備えている。反応物はヒーターで予め蒸発させ、気相にして反応装置の頂部からで洗浄し、低極性毛細管コラムを備えた気相クロマトグラフィでオンライン分析した。クロマトグラフ分析はコラムCP Sil 8CB(寸法50m*0.32mm*5μm)を使用して実行した。オーブン温度は70℃で10分間、それから10℃/分の速度で250℃まで上げるようにプログラミングした。
【0033】
xiを材料の初期モル量、xfを材料の全モル利卯とすると、転化率(%)は(xi−xf)/xi*100になる。生成物の選択性はこの生成物の回収されたモル量と反応した生成物のモル量の合計と比から計算される。モル比率のHF(MR HF)はHFのモル流速と1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンのモル流速との比と定義される。
【0034】
実施例1
A1F
3に担持させた79.4cm
3のNi−Cr触媒を用いて上記反応装置で240db(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)のフッ素化を実行した。使用した触媒はフッ化アルミナ上に担持させたNi/Cr原子比=1の混成ニッケル/クロム触媒で、これはニッケルと無水クロム(CrO
3)の溶液を含浸させ、含浸および乾燥後に固体を320℃〜390℃の間の温度で、沸化水素酸および窒素との混合物(窒素中の酸の濃度は5〜10体積%)で処理して作った。
【0035】
反応装置に無水HFを15g時、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを4.5g/時の速度で86時間、大気圧下に連続的に供給した。従って、接触時間は7.4秒であり、る、240に対するHFのモル比は36である。反応温度は340℃で、酸素の量は240dbに対して約4モルである。結果は[表1]に示した。
【0036】
実施例2
65.9のモル%の240dbすなわち1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと、34.9モル%の240aaすなわち1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンと混合物を実施例1に記載の方法でフッ素化した。反応装置には16g/時で無水のHと、約5.1g/時で1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンとを大気圧下に連続的に供給した。従って、接触時間は6.9秒であり、上記モル比率は34であり、反応温度は340℃にした。1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンの全モル数に対する酸素量は約4モル%である。結果[表1]に示した。
【0037】
実施例3、4
[表1]に示す異なる温度で実施例2の操作を繰り返した。
【表1】
【0038】
実施例1では86時間後にも非活性化が見られない。また、きわめて高い選択性が続くことも注目に値する。