【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/光トランスペアレント伝送技術の研究開発(λリーチ)課題イ 波長/サブ波長適応制御技術に関する研究」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
OTN信号の双方向の信号交換を行う空間スイッチにOTN信号処理を行う複数のOTN信号処理部が接続された光通信用クロスコネクト装置において、前記複数のOTN信号処理部が非同期によるOTN信号処理を行い、前記複数のOTN信号処理部のうちの信号伝送を行う第1のOTN信号処理部と第2のOTN信号処理部がそれぞれ、任意の形式のクライアント信号とOTN信号との間の変換処理を行う処理、およびOTU信号をLO−ODU信号とHO−ODU信号の間で変換する処理、のいずれか一方を行い、前記第1と第2のOTN信号処理部の間、または前記第1および第2のOTN信号処理部のうちの通信端側となる方と前記光通信用クロスコネクト装置との通信相手先の光通信用クロスコネクト装置の通信端側のOTN信号処理部との間で、一方でOTN信号のスキュ処理を行い他方で該スキュ処理に対するデスキュ処理を行うと共に信号伝送のクロックを共有することを特徴とする光通信用クロスコネクト装置における信号処理方法。
【背景技術】
【0002】
光ネットワークはその発展過程において信号速度毎に多様な信号フレームが標準化されてきた。下記非特許文献1に記載のSONET/SDH(Synchronous Optical Network/Synchronous Digital Hierarchy)方式では150Mbps信号を収容するSTM(Synchronous Transport Module)−1に始まり、以降、4倍毎の伝送速度に対応したSTM−4(600Mbps),STM−16(2.4Gbps),STM−64(10Gbps)信号が標準的に用いられてきた。SONET/SDH方式では、固定フレーム長のデータに対して送信する情報を収納するペイロード領域と伝送情報ヘッダが付与された構成となっている。これらの信号は主として電気信号で交換され、その際には同じ階梯の信号同志を交換する。その際、SONET/SDHにおいてはデータ伝送に用いるクロックを全ノードで同期させることにより、交換される信号間におけるデータ速度の不整合を防いでいる。
【0003】
一方で、光伝送路における信号雑音比耐力の向上のために誤り訂正情報を付与する下記非特許文献2記載のOTN(Optical Transport Network)方式が近年は主流となっている。
図9にOTN方式におけるフレーム構成を示す。(a)にODU(Optical-channel Data Unit)フレーム、(b)にOTU(Optical-channel Transport Unit)フレームを示す。OTN方式においては、送信する情報を収納するペイロード領域(OPU:Optical-channel Payload Unit)に、伝送情報ヘッダを追記したODU(Optical-channel Data Unit)とODUヘッダ領域とヘッダ領域を共有し、さらに(前方)誤り訂正パリティ情報(FEC:Forward Error Correction)を付与したOTUが定義されている。OH(Overhead)は制御情報(保守オーバーヘッド)、FA(Frame Alignment)はフレームアライメントを示す。
【0004】
OTN方式ではその伝送速度に応じて、ODU1/OTU1(2.5Gbps)、ODU2/OTU2(10Gbps)、ODU3/OTU3(40Gbps)、ODU4/OTU4(100Gbps)、といった伝送レートが現在のところ規定されている。
【0005】
光ネットワークにおいてはこれらの信号が混在することが可能なように各伝送フレームは下位の速度の伝送フレームを多重収容できるように階梯構造が設計されている。例えば、STM(Synchronous Transport Module)−4は4つのSTM−1信号を収容可能であるし、OTU4信号は10のOTU2信号を収容可能である。
【0006】
図10にOTU3にODU2信号を収容する場合の例を示す。OTU3のペイロード領域(OPU3)は4つのODTU(Optical Channel Data Tributary Unit)23または16のODTU3.tsを用いて構成され、前者の場合には、各ODTU23とOTU2を1対1対応で割り付けを行い、後者の場合には、図示のようにODU2信号を4逆多重した信号(TS)を4つのODTU3.tsに割り付ける。
【0007】
これらの信号はすべての階梯において同じフレーム長、フレーム構成を有するが、上位の階梯信号(HO−ODU)は下位の階梯信号(LO−ODU)のヘッダ部分をも伝送することが可能なように、信号の伝送速度自体は下位の階梯の伝送速度の整数倍とはならない。また、OTNではLO−ODUk、HO−OTUjとして伝送される各光パスはG.709記載のジッタ規定を逸脱しない範囲で動作するため、同じ階梯同士でもそのクロックは必ずしも同期していない。
【0008】
近年の伝送速度は100Gbpsにも到達しているため、これらの信号を交換する装置に対しては、回路規模が増大する傾向があり、さらには装置内の信号伝送に堪えるために低速信号に並列化を行った場合においても装置そのものの大規模化を防ぐために並列信号伝送そのものが高速化し、並列信号間でのスキュ補償が課題となる。さらには固定長の伝送フレームが連続して送信される状況下で多様な信号速度が入り混じるため、これらの信号のクロック整合のとれた装置構成が求められる。
【0009】
下記特許文献1に提示されている構成によれば、交換されるLO−ODUk信号は装置システムのODTU4.ts単位で分割され、装置システム共通のクロックで動作する共通フレームへと非同期収容される。信号交換は、装置に装置システム共通のクロックで動作する時分割方式のスイッチによる共通フレーム群のクロスコネクトによって実現される。クロスコネクトされた信号は、信号交換装置より出力されるHO−ODUj信号への多重を行う時点で共通フレームからHO−ODUj信号のODTUj.tsまたはODTUjkへの信号載せ替えが行われる。ここでHO−ODUj信号は上述のようにjの値により伝送レートが異なるため、信号載せ替えは非同期収容回路での載せ替えとなる。
【0010】
下記特許文献1の方式では様々なHO−ODUj信号入出力に対して、ODTU4.ts単位での信号交換が可能となる反面、実現のためには時分割クロスコネクトのための非同期信号の収容回路がクロスコネクトの前後に必要であり、時分割実現のためにクロスコネクト部でのフレーム同期が必要である。さらに、交換先HO−ODUjの収容部にて同一のLO−ODUk信号を搭載した共通フレーム間の同期がとれるような設計、また、クロスコネクトのためのインタフェースの統一、等が必要といった高度な回路実装技術が要求される。
【0011】
これらの信号交換装置における課題とは別に、現在の光ネットワーク上では1光パスあたりの光伝送容量が増大しており、伝送されるHO−ODUjの伝送容量すべてを使い切らない場合が散在し、結果として未使用のODTU領域が散在している。これら未使用の領域を用いることでより、光ネットワークにおいてより効率的な伝送容量を達成することが可能であるが、伝送されるべき光パスの容量が各断片パスの容量に比較して大きい場合にはこれらの断片パスを利用することができない。信号を複数のパスに分割する場合では光パス間での動作クロックが非同期である点と、光パス間での伝送遅延の違いによって発生するパス間のスキュを吸収する方法が課題となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明は、LO−ODUk単位での回線交換を実現する装置において、装置内スキュ、ODUj種別ごとのレートの違い、収容時のクロックの違いによる非同期の解決、およびODUjを交換するためのインタフェースの違いの解決を、簡素で安価に実現可能な構成を提供する、また、ライン信号処理を含んだ光パスでのスキュに対応し、クロック速度および光伝送インタフェースの種別(速度)に無関係にクロック速度、光伝送インタフェース形式(種別)、速度を問わず複数の光パスに分散したクライアント信号の伝送を行うための構成を提供することにある。
【0020】
この発明では、光通信におけるOTN信号を交換する光通信用クロスコネクト装置において、クライアント信号収容部と、信号を交換するための空間スイッチと、ライン信号処理部を備え、クライアント信号収容、ライン信号収容において非同期収容を用い、クライアント信号収容部とライン信号処理部のインタフェースにMLD部を設ける構成とすることで、装置内スキュが補償され、クロック速度および光伝送インタフェースの種別(速度)に無関係にLO−ODU単位での非同期信号交換を容易に実現できる。
【0021】
以下、この発明による光通信用クロスコネクト装置等を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0022】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る光通信用クロスコネクト装置の構成を示している。
図1の光通信用クロスコネクト装置において、それぞれ同一の構成を有する複数のクライアント信号収容部100−A,100−Bは、通信装置からの電気信号または光信号を電気信号に変換した信号である、任意の形式のクライアント信号(群)10−A,10−BをそれぞれLO−ODU信号に収容してN並列信号(Nは1以上の整数)20−A,20−Bとして出力する。また、空間スイッチ200からのM’並列信号(M’は1以上の整数)21−A,21−Bからクライアント信号を抽出してクライアント信号(群)11−A,11−Bとして出力する。
【0023】
同様にそれぞれ同一の構成を有する複数のライン信号処理部300−A,300−Bは、入力されたM並列信号(Mは1以上の整数)30−A,30−BをそれぞれODU多重してHO−OTU信号である電気信号40−A,40−Bとして出力する。また、入力される電気信号41−A,41−BをそれぞれODU多重分離してN’並列信号(N’は1以上の整数)31−A,31−Bとして出力する。
【0024】
スイッチ部である分配機能を有する空間スイッチ200は、クライアント信号収容部100−A,100−BからのN並列信号群20−A,20−Bの各信号の方路を切り替えてM並列信号30−A,30−Bとしてライン信号処理部300−A,300−Bに出力し、またライン信号処理部300−A,300−BからのN’並列信号群31−A,31−Bの各信号の方路を切り替えてM’並列信号21−A,21−Bとしてクライアント信号収容部100−A,100−Bに出力する。
【0025】
複数の電気・光信号変換部(E/O)400−A,400−Bは、ライン信号処理部300−A,300−Bからの電気信号40−A,40−Bをそれぞれ電気・光変換して光信号50−A,50−Bとして送出し、また複数の光・電気信号変換部(O/E)410−A,410−Bは、
図1の光通信用クロスコネクト装置を1つのノードとした場合の、光通信ネットワークの他ノード(図示省略)からの光信号51−A,51−Bをそれぞれ光・電気変換して電気信号41−A,41−Bとして送出する。
【0026】
なお、本実施の形態としてクライアント信号収容部、ライン信号処理部、電気・光信号変換部、光・電気信号変換部は、接続する信号群の説明のために2個ずつで記載しているが、この発明はそれに限るものではなく、それぞれ少なくとも1つを備える構成となる。
【0027】
まず、クライアント信号を収容して光伝送路に送出する際の動作を説明する。クライアント信号収容部(100)においてLO−OTN収容部(OTN(LO))101は入力されたクライアント信号(10)をITU−T G.709勧告記載のLO−ODU信号にAMP(Asynchronous Mapping Procedure)、BMP(Bit Mapping Procedure)またはGMP(Generic Mapping Procedure)による非同期収容を用いて収容し、OTUk信号またはODUk信号として送信MLD部102に出力する。送信MLD部(EG-MLD)102は必要に応じて入力された信号をMLD(Multi Lane Distribution:マルチレーン分配)により、スキュ処理の施されたN並列信号(20)(MLD信号または第1のMLD信号とする)に変換した後に空間スイッチ200へと出力する。Nは1以上の整数であるが、Nが1の際には並列化を行わないため、Nが1の際には送信MLD部102は実装を省略することも可能であるし、送信MLD部102を実装した際場合でも送信MLD部102で処理を行わないことも可能である。
【0028】
本実施の形態の一例として、クライアント信号(10)としてSTM−256信号(40Gbps)を収容する場合には、例えばLO−OTN収容部101はクライアント信号をODU3信号に収容し、OTU3フレーム化した後、またはODU3フレームの状態で送信MLD部102にて、
図2に示すG.709記載のOTL(Optical Channel Transport Lane)3.4によるFAS(Frame-Alignment Signal)信号処理等のスキュ処理を施した後に、4並列信号として空間スイッチ200へと出力する形態をとることが可能である。
図2の(a)はOTU3、(b)はODU3に関する、それぞれOTL3.4によるFAS信号処理によるスキュ処理を示す。
【0029】
空間スイッチ200では複数のクライアント信号収容部100−A,100−Bから合計2×N本の信号であるN並列信号20−A,20−Bを受信し、それぞれの並列信号を用途に応じて適切な方路に対応するライン信号処理部300−Aまたは300−Bに信号群であるM並列信号30−A,30−Bとして出力する。
【0030】
受信MLD部(ING-MLD)301は、空間スイッチ200で交換されライン信号処理部(300)に入力されたM並列信号(30)のうち、送信MLD部102においてスキュ処理信号処理を施されたN並列信号(20)には該スキュ処理信号を用いてデスキュ処理を行い、LO−ODUk信号として回復する。なお、Nが1の際には並列化を行わないため、受信MLD部301は省略することも可能である。回復したLO−ODUk信号はODU多重部(ODUMUX)302に入力される。
【0031】
ライン信号処理部(300)の詳細を
図3に示す。入力されるM本の信号であるM並列信号(30)はチャネル数x(xは1以上の整数)の並列信号で構成される。各チャネルにはそれぞれ異なるクライアント信号収容部(100−A,100−B,…)に対応する受信MLD処理部301−1,301−2,…,301−xが設けられ、受信MLD処理部301−1,301−2,…,301−xは、空間スイッチ200で交換され出力されたそれぞれM1,M2,…,Mx並列信号(30−1,30−2,…,30−x)を受信する。クライアント信号処理部100−Aより出力されたN並列信号20−Aは並列信号30−1,30−2,…,30−xのいずれかに割り当てられており、その他のチャネルには異なるクライアント信号収容部(100)から出力された信号が割り当てられる。チャネル30−nで受信可能な並列信号数Mnは、対応するクライアント信号収容部(100)より出力される並列信号数Nnと同数かそれ以上である。それぞれの受信MLD処理部301−1,301−2,…,301−xにて回復したLO−ODUk信号はODU多重部302に入力される。ODU多重部302では入力されたLO−ODUk信号をITU−T G.709勧告記載のGMP等を用いてHO−ODUj信号に非同期収容する(j≧k)。
【0032】
j=kかつLO−ODUkのクロックとHO−ODUjのクロックを同一とする時にはODU多重部302を省略することも可能である。
j=kかつLO−ODUkのクロックとHO−ODUjのクロックが同一で無い場合には、OPUk信号の非同期載せ替えを行う。
HO−ODUj信号はHO−OTU収容部(OTU(HO))303にてOTUjフレーム化され電気・光信号変換部(E/O)(400)へと送出され、光信号(50)として光ファイバにて対向するノードに伝送される。ここで、異なるライン信号処理部300−Aおよび300−Bより電気・光信号変換部400−A,400−Bを通じて送出された光信号50−A、50−Bは異なる波長か、あるいは異なる方路へと送出される。
【0033】
次に、光信号(51)に相当するライン信号を受信してクライアント信号(11)を送出する場合の動作を説明する。ライン信号処理部(300)は他ノードからの光信号(51)を光・電気信号変換部(O/E)410を通じて電気信号(41)として受信する。OTUフレーム受信部(De-OTU(OH))313にて送信側で施したHO−OTUjフレームからHO−ODUj信号を抽出し、ODU多重分離部(ODUDMUX)312にてHO−ODUj信号からLO−ODUk信号の多重分離を行う。多重分離されたLO−ODUk信号は送信MLD部(EG-MLD)311において必要に応じて入力された信号をMLDにより、スキュ処理の施されたN’並列信号(31)(MLD信号または第2のMLD信号とする)に変換された後に空間スイッチ200へと出力する。
【0034】
なお送信MLD部311では
図3に示すように、ODU多重分離部312にて多重分離されたLO−ODUk信号を、対応する送信MLD処理部311−1,311−2,…,311−x’にてN’1,N’2,…,N’x’並列信号(31−1,31−2,…,31−x’)として空間スイッチ200へ出力する。並列信号31−1,31−2,…,31−x’間は必ずしも同期がとられてはいない。
すなわち、ODU多重分離部312ではチャネル数x’(x’は1以上の整数)の信号としてLO−ODUk信号への多重分離が行われ、送信MLD部311から出力されるN’本の信号であるN’並列信号(31)はチャネル数x’の並列信号で構成される。各チャネルにはそれぞれ異なるクライアント信号収容部(100−A,100−B,…)に対応する送信MLD処理部311−1,311−2,…,311−x’が設けられ、送信MLD処理部311−1,311−2,…,311−x’は、ODU多重分離部312で多重分離された信号のそれぞれ対応するチャネルの信号をスキュ処理し、並列信号(31−1,31−2,…,31−x’)を空間スイッチ200へと送信する。
【0035】
空間スイッチ200では複数のライン信号処理部300−A,300−Bから合計2×N’本の信号であるN’並列信号31−A,31−Bを受信し、それぞれの並列信号を用途に応じて適切な方路に対応するクライアント信号収容部100−Aまたは100−BにM’並列信号21−A,21−Bとして出力する。したがってライン信号処理部300より出力される並列信号31−1,31−2,…,31−x’はそれぞれいずれかのクライアント信号部(100)への入力であるM’並列信号(21)に割り当てられる。クライアント信号収容部100で受信可能な並列信号数M’nは、対応するチャネル31−nより出力される並列信号数N’nと同数かそれ以上である。
【0036】
空間スイッチ200で交換され、クライアント信号収容部(100)に入力されたM’並列信号(21)のうちの送信MLD部311でスキュ処理信号処理を施したN’並列信号は、受信MLD部(ING-MLD)112において該スキュ処理信号を用いてデスキュ処理を行い、LO−ODUk信号として回復する。回復したLO−ODUk信号からクライアント信号がクライアント信号抽出部(De-OTU(LO))111にて抽出され、クライアント信号11として出力される。
【0037】
ここで光受信信号である光信号51−A,51−Bは異なるノードからの受信を行うために、空間スイッチ200に入力されるN’並列信号(データ)31−A,31−Bの速度は一般的には非同期となっている。送信MLD部311から送信先である受信MLD部112にクロックを送信する、または受信MLD部112にクロックデータリカバリ(CDR)機能を具備することで受信MLD部は受信したデータ速度に応じて信号を回復することが可能となる。
【0038】
これは送信MLD部102と受信MLD部301との間でも同様であり、送信MLD部102から送信先である受信MLD部301にクロックを送信する、または受信MLD部301にクロックデータリカバリ(CDR)機能を具備することで受信MLD部は受信したデータ速度に応じて信号を回復することが可能となる。
【0039】
空間スイッチ200は単純に信号路を切り替える機能を担いクロック動作を行わない。従って、内部を通過する信号は特定のシステムクロックに対して同期を必要としないので、送信MLD部102,311と受信MLD部301,112との間のインタフェースに関してはその種別、速度を問わない。例えばOTL4.10信号(11.3Gbps)とOTU2信号(10.7Gbps)およびSFI(Serdes Framer Interface)5.1信号(2.6Gbps)が空間スイッチに対して入出力される状態でも空間スイッチ200は正常に動作し、各信号はクロック不整合によりデータが損失することは無い。また、ODU収容に際してはG.709勧告に定められた規定さえ満たしていれば自由なクロックでの収容、抽出が可能であり、クライアント信号収容部、ライン信号処理部を含めてシステム全体を統括する共通クロックを必要としない。
【0040】
このように、空間スイッチを使用すると共に、クライアント信号収容部およびライン信号処理部にスキュ補償を含むMLD処理機能を搭載し、さらにライン信号処理部にHO/LOでのODU非同期収容機能を搭載することにより、装置内スキュが補償され、クロック速度および光伝送インタフェースの種別(処理速度)に無関係に非同期信号通信を行う構成が可能となる。また、空間スイッチ200はシンプルな信号切り替えスイッチでよく、簡素で安価な装置構成が実現される。
【0041】
空間スイッチ200は送信側(102−301間)と受信側(311−112間)とで別々の空間スイッチを用いてスイッチ容量を向上させることも可能であるし、または同一の空間スイッチを用いることで部品点数を小さくすることも可能である。後者の場合には、空間スイッチ200において、ライン信号処理部300−Aからの出力31−Aのうち一部またはすべてを他のライン信号処理部(300−B)への入力30−Bに接続する、またはクライアント信号収容部100−Aからの出力20−Aのうち一部またはすべてを他のクライアント信号収容部への入力21−Bに接続することによって、ライン信号同士、あるいはクライアント信号同士でLO−ODUk信号のクロスコネクト機能を実現することが可能である。すなわち、空間スイッチ200を介してライン信号処理部間(300−A−300−B)、クライアント信号収容部間(100−A−100−B)での信号伝送も同様に行える。
【0042】
さらに上記では、空間スイッチの一方に、種々の形式のクライアント信号とOTU(OTN)信号との間の変換処理を行うクライアント信号収容部、他方にOTU信号をLO−ODUとHO−ODUの間で変換するライン信号処理部、を接続したものを説明したが、両側がクライアント信号収容部、または両側がライン信号処理部を接続したものであってもよい。すなわち、クライアント信号収容部またはライン信号処理部からなるOTN信号処理部(100,300)を空間スイッチに複数接続した構造におけるOTN信号処理部間の信号伝送において、同様の効果を奏する。
【0043】
ライン信号処理部(300)間(300−A−300−B)の信号伝送を行う際の動作を説明する。
図4にはこの動作を説明するための図を示す。ライン信号処理部300−Aからライン信号処理部300−Bへの送信の状態を示し、ライン信号処理部300−Aは送信側のみ、ライン信号処理部300−Bは受信側のみが示されている。ライン信号処理部300−Aは他ノードからの光信号(51−A)を光・電気信号変換部(O/E)410−A(
図1参照)を通じて電気信号(41−A)として受信する。OTUフレーム受信部(De-OTU(OH))313にて送信側で施したHO−OTUjフレームからHO−ODUj信号を抽出し、ODU多重分離部(ODUDMUX)312にてHO−ODUj信号からLO−ODUk信号への多重分離を行う。多重分離されたLO−ODUk信号は送信MLD部(EG-MLD)311において、必要に応じて入力された信号をMLDにより、スキュ処理の施されたN'並列信号31−A(MLD信号または第2のMLD信号とする)に変換された後に空間スイッチ200へと出力される。
【0044】
空間スイッチ200ではライン信号処理部300−BのチャネルB−mへの並列入力信号30−B−mとして、ライン信号処理部300−AのチャネルA−nより空間スイッチ200へと出力された並列出力信号31−A−nを出力する。ライン信号処理部300−BのチャネルB−mへ入力されたN'並列信号31−Aはライン信号処理部300−Bの受信MLD処理部301−B−m(301−2)にてLO−ODUk信号として回復し、ライン信号処理部300−Bの他のチャネルに入力された信号とともに、ODU多重部302にてHO−ODUj信号に非同期収容される(j≧k)。HO−ODUjはHO−OTU収容部(OTU(HO))303にてOTUjフレーム化され電気・光信号変換部(E/O)400−B(
図1参照)へと送出され、光信号50−Bとして光ファイバにて対向するノードに伝送される。
【0045】
クライアント信号収容部(100)間(100−A−100−B)の信号伝送を行う際の動作を説明する。クライアント信号収容部100−AにおいてLO−OTN収容部(OTN(LO))101は入力されたクライアント信号10−AをITU−T G.709勧告記載のLO−ODU信号に非同期収容を用いて収容し、OTUk信号またはODUk信号として送信MLD部102に出力する。送信MLD部102は必要に応じて入力された信号をMLDにより、スキュ処理の施されたN並列信号20−Aに変換した後に空間スイッチ200へと出力する。空間スイッチ200ではクライアント信号収容部100−Bへの並列入力信号21−Bとして、クライアント信号収容部100−Aより空間スイッチ200へと出力された並列出力信号20−Aを出力する。クライアント信号収容部100−Bに入力された並列信号21−Bは、受信MLD部112において該スキュ処理信号を用いてデスキュ処理を行い、LO−ODUk信号として回復する。回復したLO−ODUk信号からクライアント信号がクライアント信号抽出部(De-OTU(LO))111にて抽出され、クライアント信号11−Bとして出力される。
【0046】
なお、ライン信号処理部(300)間(300−A−300−B)の信号伝送の際には、ライン信号処理部300−Aの送信MLD部311とライン信号処理部300−Bの受信MLD部301との間、およびライン信号処理部300−Bの送信MLD部311とライン信号処理部300−Aの受信MLD部301との間で信号伝送のクロックを共有する。またクライアント信号収容部(100)間(100−A−100−B)の信号伝送の際にも同様に、信号伝送を行う送信MLD部102と受信MLD部112の間でそれぞれに信号伝送のクロックを共有する。
【0047】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係る光通信用クロスコネクト装置の構成を示している。
図5の光通信用クロスコネクト装置において、クライアント信号収容部100は、クライアント信号10をLO−ODU信号に収容してN並列信号(Nは2以上の整数)20として出力する。また、空間スイッチ200からのN並列信号21からクライアント信号を抽出してクライアント信号11として出力する。
【0048】
複数のライン信号処理部300a−A,300a−Bは、入力されたN’並列断片信号30−AおよびN’’並列断片信号30−Bを(N=N’+N’’)、それぞれODU多重してHO−OTU信号として出力する。また、入力される電気信号41−A,41−BをそれぞれODU多重分離してN’並列信号31−A,N’’並列信号31−Bとして出力する。
【0049】
スイッチ部である空間スイッチ200は、クライアント信号収容部100からのN並列信号20の各信号の方路を切り替えてN’並列断片信号30−AおよびN’’並列断片信号30−Bとしてライン信号処理部300a−A,300a−Bに出力する。またライン信号処理部300a−A,300a−BからのN’並列信号31−A,N’’並列信号31−Bの各信号の方路を切り替えてN並列信号21としてクライアント信号収容部100に出力する。
【0050】
複数の電気・光信号変換部(E/O)400−A,400−Bは、ライン信号処理部300a−A,300a−Bからの電気信号40−A,40−Bをそれぞれ電気・光変換して光信号50−A,50−Bとして送出し、また複数の光・電気信号変換部(O/E)410−A,410−Bは、他ノード(図示省略)からの光信号51−A,51−Bをそれぞれ光・電気変換して電気信号41−A,41−Bとして送出する。
【0051】
なお、本実施の形態としてクライアント信号収容部は1個、ライン信号処理部、電気・光信号変換部、光・電気信号変換部は、それらに伝送される信号群の説明のために2個ずつで記載しているが、実施の形態1同様にこの発明はそれに限るものではない。
【0052】
上記実施の形態1では、空間スイッチ200の両側のクライアント信号収容部(100)とライン信号処理部(300)の間でスキュ処理と該スキュ処理に対するデスキュ処理をしていた。本実施の形態ではライン信号処理部(300)側ではスキュ処理を行わず、
図5に示す構成を有する例えば送信側となるノードのクライアント信号収容部(100)の出力と、同じ構成を有する通信相手の受信側の他のノードのクライアント信号収容部(100)への入力の間(例えばの上りと下り)でスキュ処理と該スキュ処理に対するデスキュ処理が行われる。
【0053】
図6には上述の、それぞれ通信ノードを構成する2つの光通信用クロスコネクト装置が通信可能に接続されている状態での動作を説明するための図を示す。
図6では、上側と下側の光通信用クロスコネクト装置がそれぞれ
図5に示す構成を有し、上側の光通信用クロスコネクト装置が送信側ノードになり、下側の光通信用クロスコネクト装置が受信側ノードになっている状態を示している。動作に無関係な部分は図示が省略されている。そして、上側の送信側ノードのクライアント信号収容部100−Aの送信MLD部102と下側の受信側ノードのクライアント信号収容部100−AAの受信MLD部112との間で、スキュ処理と該スキュ処理に対するデスキュ処理、およびクロックの共有が行われる。
【0054】
また本実施の形態では、
図1に示した実施の形態1のように、複数のクライアント信号収容部(100−A,100−B,…)を備えていてもよく、以下では複数のクライアント信号収容部が接続されている構成を前提に説明を行う。
【0055】
まず、クライアント信号を収容して光伝送路に送出する際の動作を説明する。実施の形態1同様に、クライアント信号収容部100においてLO−OTN収容部101は入力されたクライアント信号10をLO−ODU信号に収容しODUk信号として送信MLD部102に出力する。送信MLD部102は入力されたODUk信号をスキュ処理の施したN並列信号20(MLD信号または第1のMLD信号とする)に変換した後に空間スイッチ200へと出力する。
【0056】
空間スイッチ200ではクライアント信号収容部100からのN本の信号であるN並列信号20を受信し、N並列信号20のN本の信号をライン信号処理部300a−AにN’本の並列断片信号30−A、ライン信号処理部300a−BにN’’本の並列断片信号30−Bとして分配(N=N’+N’’)し、出力する。
【0057】
空間スイッチ200で分配され、ライン信号処理部300a−Aに入力されたN’並列断片信号30−Aは、ODU多重部302−Aに入力され、ITU−T G.709記載のODUflex等によりHO−ODUjのODTUトリビュタリスロット領域に直接非同期マッピングされる。
【0058】
本実施の形態におけるライン信号処理部(300a)のクライアントから光通信ネットワークへの信号の信号処理側の詳細を
図7に示す。破線で示した受信MLD処理部301−2は、
図1の実施の形態1のように受信MLD部301を設けた場合に、分配された一部の並列信号(例えばN2並列信号)に受信MLD処理部を設けた場合を示す。
【0059】
なお、光通信ネットワークからクライアント側への信号処理側は、OTUフレーム受信部313、ODU多重分離部312と、ODU多重分離部312で多重分離された一部の並列信号に送信MLD処理部(311)を設けたものとなる。
【0060】
ライン信号処理部(300a)は本実施の形態においても異なるクライアント信号収容部からのLO−ODUk信号をMLDとして受信する機能を持ち、ODTUj.tsトリビュタリスロットを適切に振り分けることで並列断片信号の直接マッピングとLO−ODUjを多重する機能とが共存する。
【0061】
図8に本実施の形態における、複数のクライアント信号収容部からの信号を収容する場合のODTU領域の振り分けの一例を示す。ライン信号処理部(300a)にてODTU4.tsトリビュタリスロットの総数が80であるHO−OTU4に対して、クライアント信号収容部Aからの4本のOTL3.4並列信号のうち3本の信号を収容し(
図8のA−1〜A−3に相当)、クライアント信号収容部BからのLO−OTU3信号を収容し(
図8のB)、クライアント信号収容部CからのOTL3.4並列信号のうち2本の信号を収容し(
図8のC)、クライアント信号収容部DからのODU2信号を収容(
図8のD)する。
【0062】
OTL3.4の4並列信号にてODU3信号を伝送する場合、並列信号1本あたりに対して必要なODTU4.tsの数は8である。従って断片並列信号を3本入力するクライアント(A)に対してスロット1から24までを割り当てる。また、LO−ODU3を伝送するのに必要なスロット数は32であるのでスロット25から56までをクライアントBからの信号に割り当てる。
【0063】
クライアントCに対してはOTL3.4の4並列信号のうち2本を割り当てるので必要なスロット数16に対してスロット57から72までを割り当てる。LO−ODU2を伝送するのに必要なスロット数は8であるので、クライアントDに対してはスロット73から80までを割り当てる。
【0064】
このようにして、ライン信号処理部(300a)はODTUj.tsトリビュタリスロットを適切に振り分けることで並列断片信号の直接マッピングとLO−ODUjを多重する機能とを共存させることが可能となる。
【0065】
このようにしてODU多重を行い、ODU多重部302より出力されたHO−ODUj信号はHO−OTU収容部303にてOTUjフレーム化され電気・光信号変換部400−Aへと送出され、光信号50−Aとして光ファイバにて光通信ネットワークの対向するノードに伝送される。ここで、異なるライン信号処理部300a−A,300a−Bより電気・光信号変換部400−A,400−Bを通じて送出された光信号50−A、50−Bは異なる光パスとして送出される。ここでODU多重に際して非同期マッピングを行うために、ライン信号処理部300a−A,300−B間から送信されるHO−OTUj信号はj≧kを満たしていれば異なる種別であってよい。
【0066】
次に、ライン信号を受信してクライアント信号を送出する場合の動作を説明する。受信ノードも送信ノードと同様に
図5に示す構成を有する。上述のようにして送信ノードから光伝送路で送信された光信号50−Aは受信ノードでは光信号51−Aとしてライン信号処理部300a−Aにて受信され、送信ノードから光伝送路で送信された光信号50−Bは受信ノードでは光信号51−Bとしてライン信号処理部300a−Bにて受信される。ライン信号処理部(300a)は他ノードからの光信号(51)を光・電気信号変換部(410)を通じて電気信号41として受信する。OTUフレーム受信部313にて送信側で施したHO−OTUjフレームからHO−ODUj信号を抽出し、ODU多重分離部312にてHO−ODUj信号から各並列信号(および多重されたLO−ODUk信号)の多重分離を行う。多重分離された各並列信号(MLD信号または第2のMLD信号とする)は空間スイッチ200へと出力される。光信号51−Bを受信したライン信号処理部300a−Bでの動作も同様である。
【0067】
送信ノードでライン信号処理部300a−Aへの入力(30−A)に割り当てられた並列断片信号30−Aの信号の数はN’であり、受信ノードでライン信号処理部300a−Aからの出力(31−A)として出力される並列断片信号31−Aの信号の数はN’である。
同様に、送信ノードでライン信号処理部300a−Bへの入力(30−B)に割り当てられた並列断片信号30−Bの信号の数はN’’であり、受信ノードでライン信号処理部300a−Bからの出力(31−B)として出力される並列断片信号31−Bの数はN’’である。受信ノードの空間スイッチ200では並列断片信号31−Aに含まれる信号と並列断片信号31−Bに含まれる信号の合計N’+N’’=N本の信号を受信ノードのクライアント信号収容部100(
図6では100−AA)へとN並列信号21として出力する。
【0068】
受信ノードのクライアント信号収容部100へと入力されるN並列信号21は送信ノードの送信MLD部102にてスキュ処理が施されたN並列信号であり、受信ノードの受信MLD部112にてデスキュ処理を行い、LO−ODUj信号として回復される。回復したLO−ODUk信号からクライアント信号がクライアント信号抽出部111にて抽出され、クライアント信号11として出力される。
【0069】
このように、MLD処理機能を搭載したクライアント信号収容部100と、HO/LOでのODU非同期収容機能を搭載したライン信号処理部300aと、スイッチ機能である空間スイッチ200を設けることにより、ライン信号処理を含んだ光パスでのスキュに対応し、クロック速度および光伝送インタフェースの種別(処理速度)に無関係に複数の光パスに分散したクライアント信号の伝送を行うことが可能となる。また、スイッチ機能として空間スイッチを用い、ライン信号処理部にもMLD処理機能を搭載することで、装置内をOTUkの状態でMLD伝送するLO−ODUk信号とODUkの状態でMLD伝送するLO−ODUk信号とを共存させることが可能となる。
【0070】
本実施の形態の説明として、光パスが送信ノードと受信ノードを接続する形態で説明を行ったが、中間ノードの空間スイッチ200において、ライン信号処理部300a−Aからの出力(31−A)のうち抽出されたN’並列信号すべてを単一の他のライン信号処理部への入力30に接続する、またはN’並列信号を複数の他のライン信号処理部への入力30に分散して接続することによって光パスを変更ないし光パスをさらに分散してN’並列断片信号の伝送を行うことも可能である。すなわち、空間スイッチ200を介してライン信号処理部(300)間、クライアント信号収容部(100)間での信号伝送も同様に行える。
【0071】
また本実施の形態の場合は、信号送信するノードである光通信用クロスコネクト装置間において、送信側の光通信用クロスコネクト装置のクライアント信号収容部100の送信MLD部102と、受信側の光通信用クロスコネクト装置のクライアント信号収容部100の受信MLD部112の間で、それぞれに信号伝送のクロックを共有する。
【0072】
この発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、これらの可能な組み合わせを全て含むことは云うまでもない。
【0073】
なおこの発明による光通信用クロスコネクト装置およびその信号処理方法は、多くの分野の光通信システムに適用可能である。