特許第6038322号(P6038322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038322
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂を硬化させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20161128BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20161128BHJP
   C08F 4/32 20060101ALI20161128BHJP
   C07C 251/08 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K5/29
   C08F4/32
   !C07C251/08
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-526973(P2015-526973)
(86)(22)【出願日】2013年8月14日
(65)【公表番号】特表2015-531018(P2015-531018A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】EP2013066951
(87)【国際公開番号】WO2014027007
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】12180827.3
(32)【優先日】2012年8月17日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/693,807
(32)【優先日】2012年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】コーズ,フレデリック,ウィレム,カレル
(72)【発明者】
【氏名】タルマ,オーク,ジェラルドゥス
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−167737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を硬化させるための方法であって、
前記樹脂を
(i)構造
【化5】
(式中、
y=0または1、z=1〜4、およびy+z≧2であり、
Xは独立してO、S、P、NH、N−R1、およびN−OHから選択され、
R1は直鎖または分岐、環式、二環式もしくは三環式の炭素数が2〜18のアルキレン基、炭素数が6〜12のアリーレン基、および炭素数が2〜18のアラルキレン基から選択され、
R2〜R5は個別に水素、直鎖または分岐の炭素数が1〜18のアルキル基、炭素数が3〜12のシクロアルキル基、炭素数が6〜12のアリール基、炭素数が6〜18のアラルキル基、炭素数が1〜6のアルコキシ基、およびアリールオキシ基から選択され、
前記R基のそれぞれはO、S、Si、PまたはN含有置換基で場合により置換されていてもよく、
R4およびR5、R3およびR4、R2、R5ならびにR1およびR3は場合により環を形成していてもよい)
の1種または複数のイミン、および
(ii)過酸化物
と接触させるステップを含む、方法。
【請求項2】
Xが酸素原子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R5が水素である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
R4が水素である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
R2およびR3がアルキル基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1種または複数のイミンが、ポリアミンと3−オキソアルカン酸アルキルエステルとの反応生成物である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
3−オキソアルカン酸アルキルエステルがアセト酢酸エチルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポリアミンがイソホロンジアミンである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
ポリアミンと3−オキソアルカン酸アルキルエステルとが熱硬化性樹脂に個別に添加され、その結果1種または複数のイミンがその場で形成される、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
熱硬化性樹脂への添加に先立ち、ポリアミンと3−オキソアルカン酸アルキルエステルとを反応させて1種または複数のイミンを形成する、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
過酸化物がケトン過酸化物および有機ヒドロペルオキシドから選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
過酸化物がメチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソプロピルケトンペルオキシド、またはメチルイソブチルケトンペルオキシドである、請求項11に記載の方法
【請求項13】
前記樹脂を、前記1種または複数のイミンと、樹脂100重量部当たりイミン0.5から2重量部の量で接触させる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記樹脂を、前記過酸化物と、樹脂100重量部当たり過酸化物1から2重量部の量で接触させる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂を硬化させるための方法に関する。このような樹脂は従来、酸化剤(例えば、過酸化物)と、促進剤(accelerator)としての可溶性遷移金属イオン錯体とを含む酸化還元系を使用して硬化させている。促進剤は、低温での酸化剤の活性を高め、その結果として硬化速度を上げる働きをする。
【背景技術】
【0002】
典型的な促進剤は、遷移金属の塩または錯体を含む。この目的で最も頻繁に使用される遷移金属は、コバルトである。しかし、法律では、コバルトの毒性を考慮し、その量を削減することが求められている。
【0003】
結果として、Co非含有促進剤の提供が切望されている。そうしたCo非含有促進剤系を開示する文献の例が、WO2008/003492、WO2008/003793、およびWO2008/003500である。これらの文献による促進剤系でCoの代わりに使用されている金属は、Mn、Cu、Fe、およびTiである。
【0004】
しかし、金属非含有促進剤系が提供できれば更に望ましい。
【0005】
そのような系は、過去、US4,042,646に記載されており、ヒドロペルオキシ(−OOH)基を含有する過酸化物と組み合わせてβ−アミノ−α,β−不飽和ケトンを促進剤として使用している。
【0006】
しかし、この促進系は、商業的応用に至る道筋を見いだせてはいない。それは、性能が不十分であるためである可能性が高い。
【発明の概要】
【0007】
こうした金属非含有系は、以下に示す構造(I)を有するイミンの使用により、更に改良が可能であることが見いだされた。従って、本発明は、熱硬化性樹脂を硬化させるための方法であって、
前記樹脂を、(i)構造(I)
【0008】
【化1】
(式中、
y=0または1、z=1〜4、およびy+z≧2であり、
Xは独立してO、S、P、NH、N−R1、およびN−OHから選択され、
R1は直鎖または分岐、環式、二環式もしくは三環式の炭素数が2〜18のアルキレン基、炭素数が6〜12のアリーレン基、および炭素数が2〜18のアラルキレン基から選択され、
R2〜R5は個別に水素、直鎖または分岐の炭素数が1〜18のアルキル基、炭素数が3〜12のシクロアルキル基、炭素数が6〜12のアリール基、炭素数が6〜18のアラルキル基、炭素数が1〜6のアルコキシ基、およびアリールオキシ基から選択され、
前記R基のそれぞれはO、S、Si、PまたはN含有置換基で場合により置換されていてもよく、
R4およびR5、R3およびR4、R2およびR5、ならびに/またはR1およびR3は場合により環を形成していてもよい)
の1種または複数のイミン、および(ii)過酸化物と接触させるステップを含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好適な実施形態において、構造(I)におけるXは酸素原子である。
【0010】
より好ましくは、1種または複数のイミンは、ポリアミンと3−オキソアルカン酸アルキルエステルとの反応生成物である。
【0011】
適するポリアミンとしては、ジアミン、トリアミン、およびテトラアミンが挙げられる。適するジアミンの例は、イソホロンジアミン、トリシクロドデカンジアミン、1,6−ジアミノ−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,3−メチレンシクロヘキサン、1,3−シクロヘキシルジアミン、1,4−シクロヘキシルジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,3−ブタンジアミンおよび1,4−ブタンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、1,4−ペンタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,3−ヘキサンジアミン、1,4−ヘキサンジアミン、1,5−ヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(Dytek A)、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,3−キシリレンジアミン、1,4−キシリレンジアミン、1,3−ベンゼンジアミン、1,4−ベンゼンジアミン、ジアニリンメタン、ジアニリンエーテル、ジアニリンスルホン、1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジアミノ−3−オキサペンタン、α,ω−ポリグリコールジアミン類(ジェファーミン(Jeffamine)類)、α,ω−ポリプロポキシジアミン類(ジェファーミン類)、ならびにα,ω−テトラヒドロフリルジアミン類である。
【0012】
適するトリアミンの例は、トリス(2−アミノエチル)アミン、4−(アミノメチル)オクタン−1,8−ジアミン、およびポリオキシプロピレントリアミン(ジェファーミン(登録商標)T−403)である。
【0013】
適するテトラアミンは、ペンタエリトリトール−テトラミンである。
【0014】
好適なポリアミンは、イソホロンジアミン(1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン)である。
【0015】
適する3−オキソアルカン酸アルキルエステルの例は、3−オキソブタン酸のアルキルエステルである。好適な3−オキソブタン酸のアルキルエステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、およびベンジルエステルである。3−オキソブタン酸のエチルエステル(即ち、アセト酢酸エチル)が最も好適な3−オキソアルカン酸アルキルエステルである。この最も好適な3−オキソアルカン酸アルキルエステルを使用すると、構造(I)(式中、R3はメチル、R2はエチル、R4およびR5は水素である)のイミンが生じる。
【0016】
最も好適なイミンは、イソホロンジアミンとアセト酢酸エチルとの反応生成物である。
【0017】
1種または複数のイミンは、ポリアミンと3−オキソアルカン酸アルキルエステルとを、構造(I)を有する1種または複数の生成物が形成されるような比で反応させることによって合成することができる。一般に、この反応では、構造(I)によるイミンの混合物が形成される。ポリアミンの種類によっては、様々なモル比を使用することができる。ジアミンを使用する場合、ポリアミン:3−オキソアルカン酸アルキルエステルのモル比は1:2と2:1の間が適しており、1:1に近いモル比が好ましい。トリアミンを使用する場合、1:3と3:1の間のモル比が適しており、1:1に近いモル比が好ましい。テトラアミンを使用する場合、1:4と4:1の間のモル比が適しており、1:1に近いモル比が好ましい。
【0018】
1種または複数のイミンは、本発明による方法において、その使用に先立って合成することができる。この事前合成は、ポリアミンと3−オキソアルカン酸アルキルエステルとの、好ましくは、溶媒の存在下での反応を伴う。これは発熱反応である。反応後、水を除去することができる。
【0019】
あるいは、ポリアミンと3−オキソアルカン酸アルキルエステルとを個別に熱硬化性樹脂に添加する。そうすると、その場(in-situ)でイミンが形成される。事前合成との主な違いは、このその場(in-situ)での方法では、形成された水が除去されないことである。
【0020】
イミンまたはイミンの混合物は、本発明による方法において、樹脂100重量部に対して好ましくは0.01から10重量部(pbw)、より好ましくは0.1から5pbw、最も好ましくは0.5から2pbwの量で使用する。
【0021】
本発明の方法において使用する過酸化物は、好ましくは、有機ヒドロペルオキシド、ケトン過酸化物、またはこれらの混合物である。ケトン過酸化物は、式
【0022】
【化2】
(式中、Rはアルキル基、好ましくは、メチルであり、Rはアルキル基、好ましくは、エチル、イソプロピル、またはイソブチルである)
または、式
【0023】
【化3】
(式中、RおよびRはアルキル基、好ましくは、メチルであり、RおよびRはアルキル基、好ましくは、エチル、イソプロピル、またはイソブチルである)
を有する。
【0024】
第1の式は、いわゆる4型ケトン過酸化物を示しており、第2の式は、いわゆる3型ケトン過酸化物を示している。両型とも、一般に過酸化水素に加えて過酸化物配合物中に存在している。
【0025】
過酸化物は、本発明の方法においては、樹脂100重量部に対して好ましくは0.1から10重量部(pbw)、より好ましくは0.5から5pbw、最も好ましくは1〜2pbwの量で使用される。
【0026】
本発明の方法に従って硬化させるのに適した熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル(UP)樹脂、ビニルエステル樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、およびこれらの組合せ、例えば、UP樹脂とエポキシ樹脂との組合せ、または異なるUP樹脂の組合せが挙げられる。好適な樹脂は、(メタ)アクリレート樹脂、UP樹脂、およびビニルエステル樹脂である。本出願の文脈において、「不飽和ポリエステル樹脂」および「UP樹脂」という用語は、不飽和ポリエステル樹脂とエチレン性不飽和単量体化合物との組合せを意味する。「(メタ)アクリレート樹脂」という用語は、アクリレートまたはメタクリレート樹脂とエチレン性不飽和単量体化合物との組合せを意味する。上記のように定義するUP樹脂およびアクリレート樹脂は、一般によく見られるものであり、市販されている。
【0027】
本発明の方法によって硬化させるのに適したUP樹脂は、いわゆるオルト樹脂、イソ樹脂、イソnpg樹脂、およびジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂である。こうした樹脂の例は、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、アリル樹脂、ビニル樹脂、およびエポキシ系樹脂、ビスフェノールA樹脂、テレフタル酸樹脂、ならびにハイブリッド樹脂である。
【0028】
ビニルエステル樹脂としては、例えば、メタクリレート、ジアクリレート、ジメタクリレート、およびこれらのオリゴマーをベースとするアクリレート樹脂が挙げられる。
【0029】
アクリレート樹脂としては、アクリレート、メタクリレート、ジアクリレートおよびジメタクリレート、ならびにこれらのオリゴマーが挙げられる。
【0030】
不飽和のポリエステルまたはビニルエステル樹脂は、モノマーを含有していてもよい。適するモノマーの例は、エチレン性不飽和単量体化合物、例えば、スチレン、およびα−メチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエン、インデン、ジビニルベンゼン、ビニルピロリドン、ビニルシロキサン、ビニルカプロラクタム、スチルベン、更には、フタル酸ジアリル、ジベンジリデンアセトン、アリルベンゼン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸、ジアクリレート、ジメタクリレート、アクリルアミド、酢酸ビニル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、光学的用途に用いられるアリル化合物(例えば(ジ)エチレングリコールジアリルカルボナート)、クロロスチレン、tert−ブチルスチレン、tert−ブチルアクリレート、ジメタクリル酸ブタンジオール、ならびにこれらの混合物である。適する(メタ)アクリレート反応性希釈剤の例は、PEG200ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよびその異性体、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PPG250ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(ビス)マレイミド、(ビス)シトラコンイミド、(ビス)イタコンイミド、およびこれらの混合物である。
【0031】
樹脂におけるエチレン性不飽和モノマーの量は、不飽和ポリエステルまたはビニルエステル樹脂の重量に対して好ましくは、少なくとも0.1wt%、より好ましくは少なくとも1wt%、最も好ましくは少なくとも5wt%である。エチレン性不飽和モノマーの量は、好ましくは、50wt%以下、より好ましくは40wt%以下、最も好ましくは35wt%以下である。
【0032】
本発明による方法は、過酸化物とイミン(複数可)とを樹脂に接触させるステップを伴う。これらの化合物は、互いに対し、順序を問わず添加することができる。一実施形態において、イミン(複数可)を用いて樹脂を予め促進化させ、直後に、または数日、数週間もしくは数カ月後に過酸化物を添加することによって硬化を実行することができる。過酸化物とイミンとを(ほぼ)同時に添加することも可能である。
【0033】
使用されるイミン(複数可)が室温で固体である場合、樹脂への添加に先立ってイミン(複数可)を溶融させるか、適する溶媒に溶解させることが好適である。適する溶媒の例は、ホワイトスピリット(white spirit)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、リン酸ジブチル、リン酸トリエチル、メチルエチルケトン、エチルプロキシトールである。
【0034】
過酸化物は、好ましくは、適する鈍感剤(phlegmatizer)中に希釈された樹脂に添加する。これらの配合物に使用可能な鈍感剤は従来のタイプのものであり、好ましくは、アルカノール、シクロアルカノール、アルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、環式エーテル置換アルコール、環式アミド、エステル、ケトン、芳香族溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、およびこれらの混合物から選択される。
【0035】
本発明の方法において存在してもよいその他の化合物は、アルカリまたはアルカリ土類金属化合物、リン含有化合物、1,3−ジケトン、窒素含有塩基、および還元剤である。
【0036】
1,3−ジケトンの例は、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、およびジベンゾイルメタン、ならびにアセト酢酸塩、例えば、ジエチルアセトアセトアミド、ジメチルアセトアセトアミド、ジプロピルアセトアセトアミド、ジブチルアセトアセトアミド、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、およびアセト酢酸ブチルである。
【0037】
アルカリまたはアルカリ金属化合物の例は、アルカリまたはアルカリ金属のカルボン酸塩、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の2−エチルヘキサン酸塩、オクタン酸塩、ノナン酸塩、ヘプタン酸塩、ネオデカン酸塩、およびナフテン酸塩である。好適なアルカリ金属はKである。
【0038】
リン含有化合物の例は、式P(R)および式P(R)=O(式中、各Rは独立して水素、炭素数1から10のアルキル、および炭素数1から10のアルコキシ基から選択される)を有するリン化合物である。好ましくは、少なくとも2つのR基がアルキル基またはアルコキシ基から選択される。適するリン含有化合物の具体例は、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート(TEP)、ジブチルホスファイト、およびトリエチルホスフェートである。
【0039】
窒素含有塩基の例は、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、またはN,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)などの第三級アミン、1,2−(ジメチルアミン)エタンなどのポリアミン、ジエチルアミンなどの第二級アミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、またはモノエタノールアミンなどのエトキシ化アミン、およびビピリジンなどの芳香族アミンである。
【0040】
還元剤の例は、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(SFS)、グルコースおよびフルクトースなどの還元糖、シュウ酸、ホスフィン、亜リン酸塩、有機または無機亜硝酸塩、有機または無機亜硫酸塩、有機または無機硫化物、メルカプタン、およびアルデヒド、ならびにこれらの混合物である。アスコルビン酸は、本明細書ではL−アスコルビン酸およびD−イソアスコルビン酸が含まれ、好適な還元剤である。
【0041】
遷移金属化合物、例えば、Co、Cu、Mn、V、またはFe化合物を樹脂に添加することは可能であるが、本発明の方法はこうした化合物の非存在下で実施することが好適である。これら金属の1種または複数が存在する場合、好ましくは、樹脂1kg当たり0.02から10mmol、より好ましくは樹脂1kg当たり0.10から5mmol、最も好ましくは樹脂1kg当たり少なくとも0.25から2mmolの量(金属として計算)で存在する。
【0042】
上記「その他の化合物」および場合による遷移金属化合物は、樹脂に個別に添加することができ、または、前記化合物および場合による溶媒とは別に構造(I)の1種または複数のイミンを更に含む促進剤溶液の形態で添加することができる。
【0043】
こうした促進剤溶液は、これらの化合物と、場合による溶媒と、事前合成したイミンとを混合することによって調製することができる。あるいは、ポリアミンと3−オキソアルカン酸アルキルエステルとを前記化合物および場合による溶媒に添加し、前記促進剤溶液中で1種または複数のイミンをその場(in-situ)で形成することができる。
【0044】
本発明の方法において存在してもよい、場合による添加剤は、フィラー、繊維、顔料、ラジカル阻害剤、難燃剤、および増進剤(promoter)である。
【0045】
好適な実施形態において、方法はフィラーおよび/または強化繊維の存在下で実施される。強化繊維の例は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維(例えば、Twaron(登録商標))、および天然繊維(例えば、ジュート、ケナフ、工業用大麻、亜麻(リネン)、ラミーなど)である。フィラーの例は、石英、砂、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、胡粉(chalk)、水酸化カルシウム、粘土、二酸化チタン、および石灰である。
【0046】
難燃剤には、ハロゲン含有難燃剤およびリン含有難燃剤の両方が含まれる。ラジカル阻害剤の例としては、2−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリス−ジメチルアミノメチルフェノール、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−メチレン、ジ−p−クレゾール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、カテコール、4−t−ブチルカテコール、4,6−ジ−t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール(TEMPOL)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン(TEMPON)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−カルボキシル−ピペリジン(4−カルボキシ−TEMPO)、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチル−3−カルボキシルピロリジン(3−カルボキシ−PROXYL)、アルミニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、フェノチアジン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0047】
樹脂、過酸化物、およびイミンを互いに接触させる際、これらの化合物を混合し、分散させる。硬化プロセスは、−15℃から250℃までの任意の温度で実施することができる。好ましくは、プロセスは、ハンドレイアップ、スプレーアップ、フィラメント巻回、樹脂トランスファー成形、コーティング(例えば、ゲルコートおよび標準的なコーティング)、ボタン製造、遠心鋳造、波板または平面パネル、裏装システム、化合物注入による台所用シンクなどの用途において一般に使用される周囲温度で実施する。ただし、プロセスは、SMC、BMC、引抜成型技法などにも用いることができ、その場合、180℃以下、より好ましくは150℃以下、最も好ましくは100℃以下の温度が用いられる。
【0048】
硬化組成物は、後硬化処理に付して硬度を更に最適化することができる。こうした後硬化処理は一般に、40〜180℃の範囲の温度で30分から15時間実施される。
【0049】
硬化組成物は、海洋用途、化学的固着、屋根葺き、建設、裏装、配管およびタンク、床張り、風車羽根、積層体などを含む様々な用途で利用法が見いだされる。
【実施例】
【0050】
以下の実施例では、下記の材料を使用した。
Palatal P6−オルトフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂(DSM Resinsより)
Butanox(登録商標)P50−メチルイソプロピルケトンペルオキシド(フタル酸ジメチル中50wt%;AkzoNobelより)
Butanox(登録商標)M50−活性酸素含有量8.9wt%のメチルエチルケトンペルオキシド(フタル酸ジメチル中50wt%;AkzoNobelより)
Trigonox(登録商標)233−メチルイソブチルケトンペルオキシド(イソドデカン中50wt%;AkzoNobelより)
IPDA−イソホロンジアミン
EAA−アセト酢酸エチル
参照用イミン−エチル−3−(n−ブチルアミノ)−2−ブテノアート
【0051】
EEA(0.572mol)をジエチルエーテル(200ml)に溶解させた。IPDA(0.572mol)を数回に分けて添加した。混合物の温度が35℃に上昇し、この温度を加熱によって2時間維持した。室温まで冷却した後、ジエチルエーテル(100ml)を添加し、続いて硫酸ナトリウムを添加した。混合物を一晩乾燥させた。固形物をろ過によって除去し、揮発性物質を真空下で除去すると、透明な油として以下に示すイミン混合物が160g(99%)得られた。
【0052】
【化4】
【0053】
表1に挙げた樹脂100phr、促進剤1phr、および過酸化物2phrを混合することによって硬化性組成物を調製した。促進剤は、IPDAとEAAとの反応生成物混合物、または参照用イミンであった。この参照用イミンは、US4,042,646によるイミンである。
【0054】
組成物を20℃で硬化させた。
【0055】
組成物の硬化をプラスチック工業会(Society of Plastic Institute)の方法(分析方法F/77.1;Akzo Nobel Polymer Chemicalsより入手可能)によって分析した。この方法は、ピーク発熱、ピーク到達時間、およびゲル化時間の測定を伴う。
【0056】
この方法に従い、樹脂、過酸化物、および促進剤を含む混合物20gを試験管に注ぎ入れ、筺体を介して熱電対を試験管の中央に配置した。次いで、ガラス試験管を20℃に維持した環境制御室に入れ、時間−温度曲線を測定した。曲線から、以下のパラメーターを計算した。
ゲル化時間(GT)=実験開始から浴温より5.5℃高くなるまでを分単位で測定した時間
ピーク発熱到達時間(TTP)=実験開始からピーク発熱に達した瞬間までの時間
ピーク発熱(PE)=到達した最高温度
【0057】
Shore D硬度を標準的な方法ASTM D2240によって判定した。
【0058】
最終的な硬化樹脂の色も評価した。
【0059】
結果を表1に記載する。
【0060】
【表1】
【0061】
これらのデータによると、本発明によるイミンは、参照用イミンよりも良好な硬化挙動を生じ、様々な過酸化物と組み合わせて使用することができる。