特許第6038366号(P6038366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6038366船外機のエンジン制御装置および船外機のエンジン制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6038366
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】船外機のエンジン制御装置および船外機のエンジン制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/10 20060101AFI20161128BHJP
   F02D 41/34 20060101ALI20161128BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20161128BHJP
   B63H 21/21 20060101ALI20161128BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F02D41/10 335S
   F02D41/34 G
   F02D29/02 C
   B63H21/21
   B63H20/00 803
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-28773(P2016-28773)
(22)【出願日】2016年2月18日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】小迫 孝徳
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−313398(JP,A)
【文献】 特開昭63−306256(JP,A)
【文献】 特開昭58−27840(JP,A)
【文献】 特開昭63−113161(JP,A)
【文献】 特開昭60−104732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00−45/00
F02D 29/00−29/06
B63H 1/00−25/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの運転状態を検出するセンサ群の出力に基づき、所定のクランク角で燃料を噴射する同期噴射と、加速判定時に前記クランク角とは非同期に燃料を噴射する非同期噴射とを実施するコントロールユニットを備え、単レバーでスロットルとシフトを制御する機構を備えた船外機のエンジン制御装置において、
前記コントロールユニットは、
第1の所定時間ごとのスロットル開度の検出値から、今回値と前回値の差分である第1のスロットル開度変化量を算出し、前記第1のスロットル開度変化量があらかじめ設定された第1の所定値以上となった場合に、加速開始と判定する加速開始判定処理部と、
前記加速開始判定処理部で前記加速開始と判定された場合に、第2の所定時間ごとのスロットル開度の検出値から、今回値と前回値の差分である第2のスロットル開度変化量を算出し、前記第2のスロットル開度変化量があらかじめ設定された第2の所定値以上となった場合に、前記非同期噴射を実施する非同期噴射開始判定処理部と
を有し、
前記第2の所定時間は、前記第1の所定時間より大きい値としてあらかじめ設定され、前記第2の所定値は、前記第1の所定値より大きい値としてあらかじめ設定される
船外機のエンジン制御装置。
【請求項2】
前記非同期噴射開始判定処理部は、前記加速開始判定処理部により前記加速開始と判定された時刻を時刻tとし、前記時刻tよりも前記第1の所定時間だけ前の時刻を時刻tとした場合に、前記時刻tで検出した前記スロットル開度の検出値を前回値とし、前記時刻tから前記第2の所定時間経過後の時刻tで検出した前記スロットル開度の検出値を今回値とすることで、前記加速開始判定処理部により前記加速開始と判定された後の初回の前記第2のスロットル開度変化量を算出する
請求項1に記載の船外機のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記加速開始判定処理部は、前記エンジンが停止状態である場合、または、前記エンジンの回転速度があらかじめ設定された第3の所定値以上である場合には、加速が必要でない状態であると判断し、加速開始判定を禁止する
請求項1または2に記載の船外機のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記非同期噴射開始判定処理部は、前記非同期噴射を実施した後に、あらかじめ設定された非同期噴射禁止時間が経過するまでは、次回の非同期噴射を禁止する
請求項1から3のいずれか1項に記載の船外機のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記非同期噴射開始判定処理部は、
急加速時の最大噴射量とエンジン温度とが関連付けられたマップ1と、加速の割合と前記第2のスロットル開度変化量とが関連付けられたマップ2とがあらかじめ記憶された記憶部を有しており、
前記非同期噴射を実施する際の非同期噴射量を、エンジン温度に基づいて前記マップ1から抽出した前記最大噴射量と、算出した前記第2のスロットル開度変化量に基づいて前記マップ2から抽出した前記加速の割合とを乗算することで算出する
請求項1から4のいずれか1項に記載の船外機のエンジン制御装置。
【請求項6】
エンジンの運転状態を検出するセンサ群の出力に基づき、所定のクランク角で燃料を噴射する同期噴射と、加速判定時に前記クランク角とは非同期に燃料を噴射する非同期噴射とを実施するコントロールユニットを備え、単レバーでスロットルとシフトを制御する機構を備えた船外機のエンジン制御装置において、前記コントロールユニットにおいて実行される船外機のエンジン制御方法であって、
あらかじめ設定された第1の所定時間ごとにスロットル開度の検出値を取得するとともに、今回値と前回値の差分である第1のスロットル開度変化量を算出する第1ステップと、
前記第1ステップで算出された前記第1のスロットル開度変化量が、あらかじめ設定された第1の所定値以上となった場合に、加速開始と判定する第2ステップと、
前記第2ステップにより前記加速開始と判定された場合に、前記第1の所定時間よりも大きい値としてあらかじめ設定された第2の所定時間を用いて、前記第2の所定時間ごとにスロットル開度の検出値を取得するとともに、今回値と前回値の差分である第2のスロットル開度変化量を算出する第3ステップと、
前記第3ステップで算出された前記第2のスロットル開度変化量が、前記第1の所定値よりも大きい値としてあらかじめ設定された第2の所定値以上となった場合に、前記非同期噴射を実施する第4ステップと
を有する船外機のエンジン制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機のような単レバーでスロットルとシフトを制御するシステムに適用され、クランク角と非同期に燃料を噴射する船外機のエンジン制御装置および船外機のエンジン制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加速時に空燃比を最適に制御するために、クランク角とは非同期に燃料を噴射する加速時非同期噴射制御方式に関する従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1は、所定時間毎のスロットル開度変化量を算出し、前回のスロットル開度変化量が所定値以下で、今回のスロットル開度変化量が所定値以上の場合に、非同期噴射を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−47957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
船外機のような単レバーでスロットルとシフトを制御するシステムでは、レバー操作により、シフト駆動後にスロットル開度が変化する。従って、操作者がシフトのみ駆動する(すなわち、シフトインする)ためにレバーを操作した場合であっても、スロットル開度が変化することがある。
【0005】
スロットル開度変化の緩急に相当する加速度合に応じて非同期噴射を実施する場合において、特許文献1のような従来技術では、所定時間を長くすると、以下のような問題がある。すなわち、従来技術は、スロットル開度変化量を計算するインターバルに相当する所定時間を長くすると、スロットル開度が変化を開始するタイミングにより、急加速をした場合であっても、緩加速と誤判定してしまうおそれがある。
【0006】
そして、緩加速と誤判定された場合には、空燃比がリーン化する課題がある。従って、特許文献1のような従来技術は、このような課題を回避するためには、所定時間を短く設定する必要がある。
【0007】
一方、船外機のような単レバーでスロットルとシフトを制御するシステムにおいて、所定時間を短くした場合には、シフトイン動作でのスロットル開度変化をとらえ、非同期噴射を実施し、空燃比がリッチ化する課題がある。
【0008】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、加速度合に応じて空燃比を適切に制御するとともに、シフトイン動作でのスロットル開度変化による非同期噴射を防止することができる船外機のエンジン制御装置および船外機のエンジン制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る船外機のエンジン制御装置は、エンジンの運転状態を検出するセンサ群の出力に基づき、所定のクランク角で燃料を噴射する同期噴射と、加速判定時にクランク角とは非同期に燃料を噴射する非同期噴射とを実施するコントロールユニットを備え、単レバーでスロットルとシフトを制御する機構を備えた船外機のエンジン制御装置において、コントロールユニットは、第1の所定時間ごとのスロットル開度の検出値から、今回値と前回値の差分である第1のスロットル開度変化量を算出し、第1のスロットル開度変化量があらかじめ設定された第1の所定値以上となった場合に、加速開始と判定する加速開始判定処理部と、加速開始判定処理部で加速開始と判定された場合に、第2の所定時間ごとのスロットル開度の検出値から、今回値と前回値の差分である第2のスロットル開度変化量を算出し、第2のスロットル開度変化量があらかじめ設定された第2の所定値以上となった場合に、非同期噴射を実施する非同期噴射開始判定処理部とを有し、第2の所定時間は、第1の所定時間より大きい値としてあらかじめ設定され、第2の所定値は、第1の所定値より大きい値としてあらかじめ設定されるものである。
【0010】
また、本発明に係る船外機のエンジン制御方法は、エンジンの運転状態を検出するセンサ群の出力に基づき、所定のクランク角で燃料を噴射する同期噴射と、加速判定時にクランク角とは非同期に燃料を噴射する非同期噴射とを実施するコントロールユニットを備え、単レバーでスロットルとシフトを制御する機構を備えた船外機のエンジン制御装置において、コントロールユニットにおいて実行される船外機のエンジン制御方法であって、あらかじめ設定された第1の所定時間ごとにスロットル開度の検出値を取得するとともに、今回値と前回値の差分である第1のスロットル開度変化量を算出する第1ステップと、第1ステップで算出された第1のスロットル開度変化量が、あらかじめ設定された第1の所定値以上となった場合に、加速開始と判定する第2ステップと、第2ステップにより加速開始と判定された場合に、第1の所定時間よりも大きい値としてあらかじめ設定された第2の所定時間を用いて、第2の所定時間ごとにスロットル開度の検出値を取得するとともに、今回値と前回値の差分である第2のスロットル開度変化量を算出する第3ステップと、第3ステップで算出された第2のスロットル開度変化量が、第1の所定値よりも大きい値としてあらかじめ設定された第2の所定値以上となった場合に、非同期噴射を実施する第4ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の所定時間間隔ごとに加速の初期段階でスロットル開度変化量をとらえることで加速開始を判定し、加速開始が判定された後は、第1の所定時間間隔よりも長い第2の所定時間間隔ごとにスロットル開度変化量を算出し、非同期噴射の要否を判定する構成を備えている。この結果、スロットル開度変化量に応じて非同期噴射開始判定を行う際に、所定時間を短くする必要がなく、加速度合に応じて空燃比を適切に制御するとともに、シフトイン動作でのスロットル開度変化による非同期噴射を防止することができる船外機のエンジン制御装置および船外機のエンジン制御方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1に係る船外機のエンジン制御装置の構成図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る船外機のエンジン制御装置における非同期噴射のタイミングチャートである。
図3図2中の四角で囲った部分を拡大したタイミングチャートである。
図4】本発明の実施の形態1におけるコントロールユニットで実行される加速開始判定処理の一連動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態1におけるコントロールユニットで実行される非同期噴射開始判定処理の一連動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の船外機のエンジン制御装置および船外機のエンジン制御方法の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る船外機のエンジン制御装置の構成図である。吸気温センサ1は、エンジンの吸入空気の温度を計測する。スロットルボディ2に設けられたスロットル弁3は、操船席に配置されたレバー4に応動して開閉する。また、ギアボックス5は、レバー4によるシフト操作に応じて、シフトリンク機構(図示せず)を経てシフト位置(前進/中立/後進)が設定される。
【0015】
スロットルポジションセンサ6は、スロットル弁3の開度を計測する。吸気圧センサ7は、スロットル弁3の下流の吸入空気圧力を計測する。エンジン温度センサ8は、エンジンの壁面温度を計測する。クランク角センサ9は、クランク位置を計測する。
【0016】
コントロールユニット10は、クランク角センサ9で計測されたクランク位置の情報から、同期噴射時間を算出し、所定のクランク角で同期噴射信号を燃料噴射装置11に出力する。さらに、コントロールユニット10は、スロットル弁3の開度変化に応じて非同期噴射信号を生成し、燃料噴射装置11に出力する。
【0017】
次に、図1のような構成を備えた本実施の形態1に係る船外機のエンジン制御装置の動作について、タイミングチャートおよびフローチャートを参照しながら、詳細に説明する。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態1に係る船外機のエンジン制御装置における非同期噴射のタイミングチャートである。また、図3は、図2中の四角で囲った部分を拡大したタイミングチャートである。まず始めに、図2図3のタイミングチャートを用いて、本実施の形態1における船外機のエンジン制御手法について説明する。
【0019】
コントロールユニット10により実行されるプログラムは、あらかじめ設定された第1の所定時間aごとに実行されるメイン処理と、あらかじめ設定された第2の所定時間bごとに実行される割り込み処理で構成されている。
【0020】
ここで、メイン処理を実行する間隔である第1の所定時間aは、例えば5msと設定することができる。また、割り込み処理は、メイン処理の倍数で行うものとし、割り込み処理を実行する間隔である第2の所定時間bは、例えば、20msと設定することができる。
【0021】
図2および図3で示すように、コントロールユニット10は、操船者のレバー4による操作に基づいて変化するスロットル開度の状態を、メイン処理による第1の所定時間aごとに検出する。
【0022】
スロットル弁3は、全閉から全開までが、約90degで動作する。そして、コントロールユニット10は、第1の所定時間aごとに検出したスロットル開度から、前回値から今回値へのスロットル開度変化量ΔTHを算出する。さらに、コントロールユニット10は、算出したスロットル開度変化量ΔTHが、第1の所定値以上となった場合には、加速開始判定ありと判定する。
【0023】
ここで、第1の所定値は、加速の初期段階を検出するためにあらかじめ設定されるデータであり、一例として、0.2degを設定することができる。また、図3では、加速開始判定あると判断された時刻をt、tよりも第1の所定時間aだけ前にメイン処理を実行した時刻をtとして表している。
【0024】
コントロールユニット10は、時刻tにおいて加速開始判定ありと判定した場合には、時刻tを起点として、第2の所定時間bごとに検出したスロットル開度から、スロットル開度変化量ΔTHAを算出する。さらに、コントロールユニット10は、算出したスロットル開度変化量ΔTHAが、第2の所定値以上となり、かつ、非同期噴射禁止時間が経過している場合に、非同期噴射開始判定ありと判定する。
【0025】
ここで、第2の所定時間bおよび第2の所定値は、加速度合を検出するためのデータである。そして、第2の所定値は、第1の所定値よりも大きい値としてあらかじめ設定されるデータであり、一例として、1.5degを設定することができる。なお、図2図3では、非同期噴射開始判定ありと判定した時刻をtとして表している。
【0026】
また、非同期噴射禁止時間は、時刻tを起点として、例えば、50msとして設定することができる。そして、コントロールユニット10は、非同期噴射開始判定ありと判定した場合には、図2に示すように、時刻tにおいて、非同期噴射を実施するとともに、非同期噴射禁止時間をセットする。
【0027】
非同期噴射禁止時間は、時刻t後、順次減算されていき、この非同期噴射禁止時間が経過しない間は、コントロールユニット10が次回の非同期噴射を行うことができないようになっている。すなわち、非同期噴射禁止時間は、スロットル開度変化量ΔTHAにより連続で非同期噴射を実施した場合に、空燃比がリッチ化するのを防止するためのデータとして設定される。
【0028】
さらに、コントロールユニット10は、エンジンが停止状態で加速の必要がない状態、あるいは回転速度が第3の所定値以上の値であり、加速の必要がない状態では、加速開始判定を禁止する。ここで、第3の所定値としては、例えば、5000r/minを設定することができる。
【0029】
次に、上述した図2図3による動作を、フローチャートに基づいて説明する。図4は、本発明の実施の形態1におけるコントロールユニット10で実行される加速開始判定処理の一連動作を示すフローチャートである。さらに、図5は、本発明の実施の形態1におけるコントロールユニット10で実行される非同期噴射開始判定処理の一連動作を示すフローチャートである。
【0030】
まず始めに、図4を用いて、コントロールユニット10によるメイン処理により、第1の所定時間aごとにスロットル開度の変化を検出し、加速開始判定を行う一連動作について説明する。ステップS101において、コントロールユニット10は、第1の所定時間aが経過しているか否かを判断する。
【0031】
コントロールユニット10は、第1の所定時間aが経過していると判断した場合には、ステップS102に進み、第1の所定時間aをセットし、ステップS103に進む。一方、コントロールユニット10は、ステップS101で第1の所定時間aが経過していないと判断した場合には、一連処理を終了する。
【0032】
次に、ステップS103において、コントロールユニット10は、現在のスロットル開度、および第1の所定時間aだけ前の前回のスロットル開度から、スロットル開度変化量ΔTHを算出する。なお、以降の説明では、第1の所定時間aだけ前回の時刻におけるスロットル開度の値のことを、スロットル開度(前回値)と表記する。
【0033】
次に、ステップS104において、コントロールユニット10は、第1の所定時間経過後の次回の時刻でスロットル開度変化量を算出するために、現在時刻におけるスロットル開度を、スロットル開度(前回値)として設定する。
【0034】
次に、ステップS105において、コントロールユニット10は、エンジンが停止状態でない、および、回転速度が第3の所定値未満である、という2つの条件が成立しているか否かを判断する。
【0035】
そして、コントロールユニット10は、この2つの条件がともに成立していると判断した場合には、ステップS106に進む。
【0036】
一方、コントロールユニット10は、エンジンが停止状態であるか、または、回転速度が第3の所定値以上である、といういずれかの条件が成立していると判断した場合には、ステップS107に進み、加速開始判定なしとし、一連処理を終了する。
【0037】
次に、ステップS106において、コントロールユニット10は、スロットル開度変化量が第1の所定値以上であるか否かを判断する。そして、コントロールユニット10は、スロットル開度変化量が第1の所定値以上であると判断した場合には、ステップS108に進み、加速開始判定ありとし、一連処理を終了する。
【0038】
一方、コントロールユニット10は、ステップS106でスロットル開度変化量が第1の所定値未満であると判断した場合には、ステップS109に進み、加速開始判定なしとし、一連処理を終了する。
【0039】
このようにして、コントロールユニット10は、第2の所定時間よりも短い時間として設定された第1の所定時間aごとに、メイン処理による加速開始判定処理を実行することで、加速開始時刻を高精度に判定することができる。
【0040】
次に、図5を用いて、加速開始判定ありの場合に、コントロールユニット10によるメイン処理および割り込み処理により、第2の所定時間bごとにスロットル開度変化量ΔTHAを算出し、その算出結果に基づいて非同期噴射開始判定処理を実施する一連動作について説明する。
【0041】
ステップS201において、コントロールユニット10は、第1の所定時間aごとに、加速開始判定ありか否かを判断する。そして、コントロールユニット10は、加速開始判定ありと判断した場合には、ステップS202に進む。一方、コントロールユニット10は、加速開始判定なしと判断した場合には、ステップS203に進む。
【0042】
ステップS203に進んだ場合には、コントロールユニット10は、加速開始判定ありと判断する直前、すなわち、第1の所定時間前の時刻を起点として、スロットル開度変化量ΔTHAを算出するために、現在のスロットル開度を、スロットル開度A(前回値)として設定し、さらに、第2の所定時間bをセットして、ステップS202に進む。
【0043】
このステップS202の処理により、コントロールユニット10は、先の図3に示した時刻tにおけるスロットル開度をスロットル開度A(前回値)としてセットするとともに、時刻tを起点として第2の所定時間bの経過を判断することとなる。
【0044】
なお、スロットル開度A(前回値)という表記は、第2の所定時間bだけ前回の時刻におけるスロットル開度の値を意味している。また、第2の所定時間bの経過に伴うスロットル開度変化量ΔTHAのことを、図5のフローチャート内、および以下の説明では、スロットル開度変化量Aと表記している。
【0045】
そして、ステップS202において、コントロールユニット10は、第2の所定時間bが経過しているか否かを判断する。次に、コントロールユニット10は、第2の所定時間bが経過していると判断した場合には、ステップS204に進み、第2の所定時間をセットし、ステップS205に進む。
【0046】
一方、コントロールユニット10は、ステップS202で第2の所定時間bが経過していないと判断した場合には、ステップS207に進み、スロットル開度変化量Aを0に設定し、ステップS208に進む。
【0047】
ステップS205において、コントロールユニット10は、現在のスロットル開度、および第2の所定時間bだけ前の前回のスロットル開度であるスロットル開度A(前回値)から、スロットル開度変化量Aを算出する。
【0048】
次に、ステップS206において、コントロールユニット10は、第2の所定時間経過後の次回の時刻でスロットル開度変化量Aを算出するために、現在時刻におけるスロットル開度を、スロットル開度A(前回値)として設定する。
【0049】
次に、ステップS208において、コントロールユニット10は、スロットル開度変化量Aが第2の所定値以上であり、かつ、非同期噴射禁止時間が経過している、という2つの条件が成立しているか否かを判断する。
【0050】
そして、コントロールユニット10は、この2つの条件がともに成立していると判断した場合には、ステップS209に進み、非同期噴射開始判定ありとして、ステップS211に進む。
【0051】
一方、コントロールユニット10は、ステップS208で、スロットル開度変化量Aが第2の所定値未満であるか、または、非同期噴射禁止時間が経過していない、といういずれかの条件が成立していると判断した場合には、ステップS210に進み、非同期噴射開始判定なしとし、その後、一連処理を終了する。
【0052】
ステップS211に進んだ場合には、コントロールユニット10は、エンジン温度、およびスロットル開度変化量Aに基づいて、非同期噴射量を算出する。ここで、急加速時の最大噴射量は、エンジン温度と関連付けられて、マップ1としてあらかじめ設定されている。また、加速の割合は、スロットル開度変化量Aと関連付けられて、マップ2としてあらかじめ設定されている。
【0053】
そこで、コントロールユニット10は、下式(1)により、非同期噴射量を算出する。
非同期噴射量=マップ1(エンジン温度)
×マップ2(スロットル開度変化量A) (1)
【0054】
上式(1)の右辺において、「マップ1(エンジン温度)」は、エンジン温度に基づいてマップ1から抽出された急加速時の最大噴射量に相当し、「マップ2(スロットル開度変化量A)」は、スロットル開度変化量Aに基づいてマップ2から抽出された加速の割合に相当する。
【0055】
次に、ステップS212において、コントロールユニット10は、ステップS211で算出した非同期噴射量を用いて、非同期噴射を実行する。さらに、ステップS213において、コントロールユニット10は、連続的に非同期噴射を実施することを防止するための非同期噴射禁止時間をセットし、一連処理を終了する。
【0056】
このようにして、コントロールユニット10は、第1の所定時間aよりも長い時間として設定された第2の所定時間bごとに、割り込み処理による非同期噴射処理を実行することで、適切なタイミングで非同期噴射を行うことができる。
【0057】
以上説明したように、本発明によれば、第1の所定時間間隔ごとに加速の初期段階でスロットル開度変化をとらえることで加速開始を判定し、加速開始が判定された後は、第1の所定時間間隔よりも長い第2の所定時間間隔ごとに算出したスロットル開度変化量により、非同期噴射の要否を判定する構成を備えている。
【0058】
この結果、スロットル開度変化量に応じて非同期噴射開始判定を行う際に、所定時間を短くする必要がなく、加速度合に応じて空燃比を適切に制御することができるとともに、シフトイン動作でのスロットル開度変化による非同期噴射を防止することができる船外機のエンジン制御装置を得ることができる。
【0059】
さらに、加速開始と判定された後の初回の第2のスロットル開度変化量を、図3に示した時刻tを起点として正確に算出する構成を備えており、所定時間を必要以上に短くすることなく、誤判定することなく、非同期噴射タイミングを正確に判定することができる。
【0060】
さらに、一度非同期噴射を行った後は、非同期噴射禁止時間が経過しない限り、次の非同期噴射を実施しない構成を備えている。この結果、空燃比がリッチ化することを未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 吸気温センサ、2 スロットルボディ、3 スロットル弁、4 レバー、5 ギアボックス、6 スロットルポジションセンサ、7 吸気圧センサ、8 エンジン温度センサ、9 クランク角センサ、10 コントロールユニット、11 燃料噴射装置。
【要約】
【課題】加速度合に応じて空燃比を適切に制御するとともに、シフトイン動作でのスロットル開度変化による非同期噴射を防止する。
【解決手段】同期噴射と非同期噴射とを実施するコントロールユニットを備えた船外機のエンジン制御装置において、コントロールユニットは、第1の所定時間ごとのスロットル開度の検出値の変化量から加速開始か否かの判定を行い、加速開始と判定した場合には、第1の所定時間よりも長い値として設定された第2の所定時間ごとのスロットル開度の検出値の変化量から非同期噴射を実施するか否かを判定する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5