(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機と、冷媒流路切替装置と、熱源側熱交換器と、負荷側絞り装置と、負荷側熱交換器とを冷媒配管で接続した冷凍サイクルを備え、前記冷凍サイクルに冷媒が循環する空気調和装置であって、
前記熱源側熱交換器と前記負荷側絞り装置との間に設けられた第1絞り装置と、
一端が前記第1絞り装置と前記負荷側絞り装置との間に接続され、前記第1絞り装置から流出した冷媒が流れるバイパス配管と、
前記バイパス配管の他端と前記圧縮機の吸入部とに接続され、前記バイパス配管を流れる冷媒を冷却して前記圧縮機の吸入部に供給する補助熱交換器と、
前記補助熱交換器の冷媒の流出側に設けられており、前記補助熱交換器から前記圧縮機の吸入部に流入される冷媒の流量を調整する第2絞り装置と、
前記熱源側熱交換器が凝縮器もしくはガスクーラとして作用する場合と、前記熱源側熱交換器が蒸発器として作用する場合とにおいて冷媒流路を切り替えるように前記冷媒流路切替装置を制御するとともに、前記第1絞り装置及び第2絞り装置の開度を制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、前記熱源側熱交換器が凝縮器もしくはガスクーラとして作用する場合、高圧状態の冷媒が前記補助熱交換器に流入するように前記第1絞り装置及び前記第2絞り装置を制御し、
前記熱源側熱交換器が蒸発器として作用する場合、前記補助熱交換器に中圧状態の冷媒が流入するように前記第1絞り装置を制御するとともに、前記補助熱交換器において冷却された冷媒を前記圧縮機の吸入部に流入させるように前記第2絞り装置を制御するものである空気調和装置。
前記補助熱交換器における空気に接する面積がA1であり、前記熱源側熱交換器における空気に接する前記熱源側熱交換器の面積がA2であるときに、A1/(A1+A2)が0.46%以上であって5%以内になる請求項6に記載の空気調和装置。
前記バイパス配管は、一端が前記第1絞り装置と前記負荷側絞り装置との間に接続され、他端が前記補助熱交換器の流入側に接続された第1分岐配管と、一端が前記第1分岐配管に接続されており、他端が前記圧縮機の吐出側に接続された第2分岐配管とに接続されたものであり、
前記第2分岐配管には、前記バイパス配管へ流入する冷媒の流量を調整する開閉装置が設けられている
請求項1〜7のいずれか1項に記載の空気調和装置。
前記制御装置は、前記熱源側熱交換器が凝縮器もしくはガスクーラとして作用する場合、前記第2分岐配管から前記バイパス配管へ前記圧縮機から吐出された冷媒の一部が流入するように前記開閉装置を制御し、前記熱源側熱交換器が蒸発器として作用する場合、前記開閉装置を閉状態に制御するものである請求項8又は9に記載の空気調和装置。
前記制御装置は、前記熱源側熱交換器が凝縮器もしくはガスクーラとして作用する場合、前記第2分岐配管から前記バイパス配管へ前記圧縮機から吐出された冷媒の一部が流入するように前記開閉装置を制御し、前記熱源側熱交換器が蒸発器として作用する場合、前記開閉装置を閉状態に制御するものである請求項12又は13に記載の空気調和装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態1.
以下、本発明に係る空気調和装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は実施の形態1に係る空気調和装置の回路構成の一例を示す概略回路構成図である。
図1の空気調和装置100は、室外機1と室内機2とが主管5で接続された構成を有している。なお、
図1において、1台の室内機2が主管5を介して室外機1に接続されている場合を例に示しているが、室内機2の接続台数を1台に限定するものではなく、複数台接続してもよい。
【0013】
[室外機1]
室外機1は、圧縮機10と、冷媒流路切替装置11と、熱源側熱交換器12と、アキュムレーター19と、補助熱交換器40と、第1絞り装置45と、第2絞り装置42と、バイパス配管41と、が冷媒配管4で接続されており、送風機であるファン16と共に搭載されている。
【0014】
圧縮機10は、冷媒を吸入し圧縮して高温・高圧の状態にするものであり、例えば容量制御可能なインバータ圧縮機等で構成されている。圧縮機10は、例えば、密閉容器内に圧縮室を有し、密閉容器内が低圧の冷媒圧雰囲気になり、密閉容器内の低圧冷媒を吸入して圧縮する低圧シェル構造のものを使用する。
【0015】
冷媒流路切替装置11は、例えば四方弁等からなっており、暖房運転モード時における冷媒流路と冷房運転モード時における冷媒流路とを切り替えるものである。なお、暖房運転モードとは、熱源側熱交換器12が凝縮器もしくはガスクーラとして作用する場合であり、暖房運転モードとは、熱源側熱交換器12が蒸発器として作用する場合である。
【0016】
熱源側熱交換器12は、暖房運転モード時には蒸発器として機能し、冷房運転モード時には凝縮器として機能するものであって、ファン16から供給される空気と冷媒との間で熱交換を行なう。アキュムレーター19は、圧縮機10の吸入部に設けられており、暖房運転モード時と冷房運転モード時との違いによる余剰冷媒または過渡的な運転の変化に対する余剰冷媒を蓄えるものである。
【0017】
補助熱交換器40は、暖房運転モード時及び冷房運転モード時の双方において凝縮器として機能し、ファン16から供給される空気と冷媒との間で熱交換を行なうものである。ここで、熱源側熱交換器12と補助熱交換器40とは、それぞれ冷媒流路が異なる伝熱管が共通の伝熱フィンに取り付けられた構造を有している。具体的には、複数の伝熱フィンは同一方向を向くように、互いに隣り合って配置されているとともに、複数の伝熱管に伝熱フィンが多数挿入されている。そして、熱源側熱交換器12と補助熱交換器40とは、同一の伝熱フィン上に一体的に設けられており、伝熱管は互いに独立した状態になっている。そして、例えば熱源側熱交換器12は上側に配置され、補助熱交換器40は下側に配置され、隣り合う複数の伝熱フィンは共有されている。よって、熱源側熱交換器12の周囲の空気は熱源側熱交換器12と補助熱交換器40との双方に流通する。また、補助熱交換器40は、伝熱面積が熱源側熱交換器12の伝熱面積よりも小さくなるように配置されている。
【0018】
第1絞り装置45は、例えば電子式膨張弁等の開度が可変に制御可能なものからなっており、熱源側熱交換器12と負荷側絞り装置25との間に設けられている。第1絞り装置45は、第1絞り装置45と室内機2との間の冷媒の圧力を上昇させるとともに、暖房運転モード時に室内機2から流入した冷媒を膨張させるものである。
【0019】
バイパス配管41は、第1絞り装置45と熱源側熱交換器12との間に接続されており、第1絞り装置45から流出した冷媒の一部が流れるようになっている。バイパス配管41は、高圧もしくは中圧の冷媒を補助熱交換器40に流入させ、補助熱交換器40において凝縮された液冷媒を第2絞り装置42を介して、圧縮機10の吸入部に流入させる配管である。バイパス配管41は、一端が冷媒配管4における熱源側熱交換器12と室内機2との間に接続され、他端が圧縮機10とアキュムレーター19の間の冷媒配管4に接続されている。
【0020】
第2絞り装置42は、例えば電子式膨張弁等の開度が可変に制御可能なものからなっており、補助熱交換器40の流出側に設けられている。第2絞り装置42は、補助熱交換器40で凝縮された後に圧縮機10の吸入部に流入させる液冷媒の流量を調整するものである。
【0021】
さらに、室外機1には、圧縮機10から吐出される高温・高圧の冷媒の温度を検出する吐出温度センサー43が設けられている。また、室外機1には、室外機1の周囲の温度を測定する外気温度センサー46が熱源側熱交換器12の空気吸込み部に設けられている。さらに、第1絞り装置45と室内機2の間の冷媒の圧力を検出する圧力センサー44が設けられている。
【0022】
[室内機2]
室内機2は、負荷側熱交換器26及び負荷側絞り装置25を有している。負荷側熱交換器26は、主管5を介して室外機1に接続されており、空気と冷媒の間で熱交換を行ない、室内空間に供給するための暖房用空気あるいは冷房用空気を生成する。なお、負荷側熱交換器26には、図示しないファン等の送風機から室内空気が送風されるようになっている。負荷側絞り装置25は、例えば電子式膨張弁等の開度が可変に制御可能なものからなっており、減圧弁や膨張弁としての機能を有して冷媒を減圧し膨張させるものである。負荷側絞り装置25は、全冷房運転モード時において負荷側熱交換器26の上流側に設けられている。
【0023】
また、室内機2には、サーミスター等からなる入口側温度センサー31及び出口側温度センサー32が設けられている。入口側温度センサー31は負荷側熱交換器26に流入する冷媒の温度を検出するものであり、負荷側熱交換器26の冷媒の入口側の配管に設けられている。出口側温度センサー32は、負荷側熱交換器26の冷媒の出口側に設けられており、負荷側熱交換器26から流出した冷媒の温度を検出するものである。
【0024】
制御装置60は、マイコン等で構成されており、上述した各種センサーにおいて検出された検出情報及びリモコンからの指示に基づいて、圧縮機10の駆動周波数、送風機の回転数(ON/OFF含む)、冷媒流路切替装置11の切り替え、第1絞り装置45の開度、第2絞り装置42の開度、負荷側絞り装置25の開度等を制御し、後述する各運転モードを実行するようになっている。なお、制御装置60が、室外機1に設けられている場合について例示しているが、ユニット毎に設けてもよいし室内機2側に設けてもよい。
【0025】
次に、空気調和装置100が実行する各運転モードについて説明する。空気調和装置100は、各室内機2からの指示に基づいて、その室内機2で冷房運転モード及び暖房運転モードを行うようになっている。なお、
図1の空気調和装置100が実行する運転モードには、駆動している室内機2の全てが冷房運転を実行する冷房運転モード、駆動している室内機2の全てが暖房運転を実行する暖房運転モードがある。以下に、各運転モードについて、冷媒の流れとともに説明する。
【0026】
[冷房運転モード]
図2は、空気調和装置100の冷房運転モード時における冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
図2では、負荷側熱交換器26で冷熱負荷が発生している場合を例に全冷房運転モードについて説明する。なお、
図2では、冷媒の流れ方向を実線矢印で示している。
【0027】
図2において、低温・低圧の冷媒が圧縮機10によって圧縮され、高温・高圧のガス冷媒になって吐出される。圧縮機10から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、冷媒流路切替装置11を介して熱源側熱交換器12に流入する。そして、熱源側熱交換器12でファン16から供給される室外空気に放熱しながら高圧の液冷媒になる。熱源側熱交換器12から流出した高圧冷媒は、全開開度に設定された第1絞り装置45を介して室外機1から流出し、主管5を通り、室内機2へ流入する。
【0028】
室内機2において、高圧冷媒は、負荷側絞り装置25で膨張させられて、低温・低圧の気液二相状態の冷媒になる。気液二相状態の冷媒は、蒸発器として作用する負荷側熱交換器26に流入し、室内空気から吸熱することにより、室内空気を冷却しながら、低温・低圧のガス冷媒になる。この際、負荷側絞り装置25の開度は、入口側温度センサー31において検出された温度と出口側温度センサー32において検出された温度との差として得られるスーパーヒート(過熱度)が一定になるように制御装置60により制御される。負荷側熱交換器26から流出したガス冷媒は、主管5を通って再び室外機1へ流入する。室外機1に流入した冷媒は、冷媒流路切替装置11及びアキュムレーター19を通って、圧縮機10へ再度吸入される。
【0029】
(全冷房運転モードにおけるインジェクションの必要性と効果概要)
空気調和装置100の冷凍サイクルに使用される冷媒が、例えばR32等のようなR410A冷媒(以下、R410Aという)よりも圧縮機10の吐出温度が高温になる冷媒である場合、冷凍機油の劣化や圧縮機10の焼損を防ぐために、吐出温度を低下させる必要がある。そこで、全冷房運転モード時においては熱源側熱交換器12側から流出した高圧の液冷媒の一部がバイパス配管41を介して補助熱交換器40に流入し、補助熱交換器40において過冷却液になった冷媒が第2絞り装置42を介して圧縮機10の吸入部に流入するようになっている。
【0030】
このとき、制御装置60は、バイパス配管41から補助熱交換器40へ高圧状態の冷媒が流入するように第1絞り装置45及び第2絞り装置42を制御する。すると、高圧の液冷媒は、補助熱交換器40においてファン16から供給される室外空気に放熱しながら高圧の過冷却液になり、第2絞り装置42を介して圧縮機10の吸入部に流入する。これにより、圧縮機10の吐出冷媒の温度を低下させることができ、空気調和装置100を安全に使用できるようになる。
【0031】
(第2絞り装置42の制御)
冷房運転モード時における制御装置60による第2絞り装置42の制御について説明する。制御装置60は、吐出温度センサー43において検出された圧縮機10の吐出温度に基づいて第2絞り装置42の開度を制御するようになっている。すなわち、圧縮機10の吐出温度は、第2絞り装置42の開度(開口面積)を大きくし、補助熱交換器40から圧縮機10の吸入部に流入させる過冷却された液冷媒量を増加させると低下する。一方、第2絞り装置42の開度(開口面積)を小さくして、補助熱交換器40から圧縮機10の吸入部に流入させる過冷却された液冷媒量を減少させると圧縮機10の吐出温度は上昇する。
【0032】
そこで、制御装置60は、吐出温度センサー43において検出された圧縮機10の吐出温度が圧縮機10の焼損や冷凍機油の劣化する吐出温度しきい値以下(例えば115℃以下)である場合、第2絞り装置42が全閉状態になるように制御する。すると、補助熱交換器40からバイパス配管41を介して圧縮機10の吸入部に流入する冷媒の流路が遮断される。なお、吐出温度しきい値は、圧縮機10の吐出温度の限界値に応じて設定される。
【0033】
一方、吐出温度が吐出温度しきい値よりも大きくなった場合、制御装置60は第2絞り装置42を開き、補助熱交換器40において過冷却された冷媒が圧縮機10の吸入部に流れるように制御する。この際、制御装置60は、吐出温度が吐出温度しきい値以下になるように第2絞り装置42の開度(開口面積)を調整する。例えば制御装置60には、吐出温度と第2絞り装置42との開度とが関連づけされたテーブルもしくは数式が記憶されており、吐出温度に基づいて第2絞り装置42の開度を制御する。すると、アキュムレーター19から流出した低圧・低温のガス冷媒と補助熱交換器40において過冷却された液冷媒とが混合し、高乾き度の低圧の気液二相状態の冷媒が圧縮機10の吸引部から吸引されることになる。
【0034】
(冷房運転モード時のインジェクションの動作及び効果)
このように、圧縮機10の吸入エンタルピが減少した状態の冷媒が圧縮機10の吸引部に流入することにより、圧縮機10の吐出温度の過昇を抑制することができる。このため、冷凍機油の劣化を抑制し、圧縮機10が破損することを防ぐことができる。よって、特殊な構造の圧縮機を使用せず安価な圧縮機を使用した場合であっても、システムの信頼性を確保することができる。また、圧縮機10の吐出温度の過昇を抑制することにより、圧縮機10を増速することが可能になり、暖房能力を確保でき、ユーザーの快適性を低減させてしまうことを抑制できる。
【0035】
さらに、冷房運転モード時において、制御装置60は、熱源側熱交換器12から流出した高圧の冷媒の一部を補助熱交換器40において過冷却することにより、第2絞り装置42に流入する冷媒は確実に液冷媒の状態になる。このため、第2絞り装置42に二相状態の冷媒が流入するのを防ぐことができ、第2絞り装置42での騒音発生を防ぐとともに、第2絞り装置42による圧縮機10の吐出温度の制御が不安定になるのを防ぐことができる。
【0036】
[全暖房運転モード]
図3は、空気調和装置100の暖房運転モード時における冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
図3では、負荷側熱交換器26で温熱負荷が発生している場合を例に全暖房運転モードについて説明する。なお、
図3では、冷媒の流れ方向を実線矢印で示している。
【0037】
図3において、低温・低圧の冷媒が圧縮機10によって圧縮され、高温・高圧のガス冷媒になって吐出される。圧縮機10から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、冷媒流路切替装置11を通り、室外機1から流出する。室外機1から流出した高温・高圧のガス冷媒は主管5を通り、負荷側熱交換器26で室内空気に放熱することにより、室内空間を暖房しながら液冷媒になる。負荷側熱交換器26から流出した液冷媒は、負荷側絞り装置25で膨張させられて、中温・中圧の気液二相状態の冷媒になり、主管5を通って再び室外機1へ流入する。室外機1へ流入した中温・中圧の気液二相状態の冷媒は第1絞り装置45を介し、低温・低圧の気液二相状態の冷媒になり、熱源側熱交換器12に流入し、熱源側熱交換器12で室外空気から吸熱しながら、低温・低圧のガス冷媒になり、冷媒流路切替装置11及びアキュムレーター19を介して圧縮機10へ再度吸入される。
【0038】
(暖房運転モード時におけるインジェクションの必要性と効果概要)
ここで、上述した冷房運転モードと同様、暖房運転モードにおいても例えばR32等のような圧縮機10の吐出温度が高温になる冷媒である場合、冷凍機油の劣化や圧縮機10の焼損を防ぐために、吐出温度を低下させる必要がある。そこで、暖房運転モード時においても負荷側絞り装置25側から流出した中温・中圧の気液二相状態の冷媒の一部が、バイパス配管41を介して補助熱交換器40に流入するようになっている。
【0039】
具体的には、暖房運転モード時において、制御装置60は、補助熱交換器40に中圧状態の冷媒を流入させるように第1絞り装置45を制御する。さらに、制御装置60は、圧縮機10の吸入部の流路または圧縮機10の圧縮室内に補助熱交換器40において冷却された冷媒を流入させるように、第1絞り装置45及び第2絞り装置42を制御する。すると、補助熱交換器40において、冷媒はファン16から供給される室外空気に放熱しながら中圧の過冷却液になり、第2絞り装置42を介して圧縮機10の吸入部に流入する。これにより、圧縮機10の吐出冷媒の温度を低下させることができ、安全に使用できるようになる。
【0040】
(第2絞り装置42の制御)
暖房運転モード時における制御装置60による第2絞り装置42の制御について説明する。制御装置60は、吐出温度センサー43において検出された圧縮機10の吐出温度に基づいて第2絞り装置42の開度を制御するようになっている。すなわち、圧縮機10の吐出温度は、第2絞り装置42の開度(開口面積)を大きくし、補助熱交換器40から圧縮機10の吸入部に流入させる過冷却された液冷媒量を増加させると低下する。一方、第2絞り装置42の開度(開口面積)を小さくして、補助熱交換器40から圧縮機10の吸入部に流入させる過冷却された液冷媒量を減少させると圧縮機10の吐出温度は上昇する。
【0041】
そこで、制御装置60は、吐出温度センサー43において検出された圧縮機10の吐出温度が圧縮機10の焼損や冷凍機油の劣化する吐出温度しきい値以下(例えば115℃以下)である場合、第2絞り装置42が全閉状態になるように制御する。すると、補助熱交換器40からバイパス配管41を介して圧縮機10の吸入部に流入する冷媒の流路が遮断される。なお、吐出温度しきい値は、圧縮機10の吐出温度の限界値に応じて設定される。
【0042】
一方、暖房運転モード時に、例えば室外機1が設置されている環境の温度が低温であり、かつ、室内機2が設置されている環境の温度が高温である場合、圧縮機10の吐出部の高圧と、圧縮機10の吸入部の低圧の比である圧縮比が高くなり、圧縮機10の吐出温度が過剰に上昇する。そして、吐出温度が吐出温度しきい値よりも大きくなった場合、制御装置60は第2絞り装置42が開き、補助熱交換器40を流通した冷媒が圧縮機10の吸入部に流れるように制御する。この際、制御装置60は、吐出温度が吐出温度しきい値以下になるように第2絞り装置42の開度(開口面積)を調整する。例えば制御装置60には、吐出温度と第2絞り装置42との開度とが関連づけされたテーブルもしくは数式が記憶されており、吐出温度に基づいて第2絞り装置42の開度を制御する。
【0043】
すると、補助熱交換器40において、ファン16から供給される空気と、空気温度よりも高い飽和温度である中圧の気液二相状態の冷媒との間で熱交換が行われ、過冷却された中圧の液冷媒が第2絞り装置42を介して圧縮機10の吸入部に流入させる。このとき、アキュムレーター19から流出した低圧・低温のガス冷媒と、補助熱交換器40において冷却された液冷媒とが混合して高乾き度の低圧の気液二相状態の冷媒になる。つまり、圧縮機10の吸入エンタルピが減少した状態の冷媒が圧縮機10に流入されることになり、圧縮機10の吐出温度の過昇を抑制することができるため、冷凍機油の劣化を抑制し、圧縮機10が破損することを防ぐことができる。
【0044】
(第1絞り装置45の制御)
暖房運転モードにおいて、補助熱交換器40に流入させる中圧・中温の気液二相状態の冷媒を冷却させるためには、室外機1が設置されている環境の温度よりも、中圧・中温の気液二相状態の冷媒の飽和温度を上昇させる必要がある。そこで、制御装置60は、第1絞り装置45の上流側の冷媒を中圧状態にし、補助熱交換器40に中圧状態の冷媒を流入させるように、第1絞り装置45を制御する。
【0045】
第1絞り装置45の開度(開口面積)が小さい場合、第1絞り装置45から流出する冷媒量が減少し、負荷側絞り装置25と第1絞り装置45との間の冷媒配管4内の冷媒量が増加する。よって、補助熱交換器40に流入させる中圧・中温の気液二相状態の冷媒の圧力は上昇する。一方、第1絞り装置45の開度(開口面積)が大きい場合、第1絞り装置45から流出する冷媒量が増加し、負荷側絞り装置25と第1絞り装置45との間の冷媒配管4内の冷媒量が減少する。よって、補助熱交換器40に流入させる中圧・中温の気液二相状態の冷媒の圧力は低下する。
【0046】
そこで、制御装置60は、圧力センサー44の検出値から負荷側絞り装置25を流出した中温・中圧の気液二相状態の冷媒の飽和温度を算出し、算出した中温・中圧の気液二相状態の冷媒の飽和温度が、室外機1の周囲温度の測定結果である外気温度センサー46の検出値よりも十分に大きくなるように、第1絞り装置45の開度(開口面積)を調整する。例えば、制御装置60は、圧力センサー44の検出値から算出される飽和温度と外気温度センサー46検出値との差が、温度差しきい値(たとえば過冷却が十分にとれる10℃以上)に近づくように、第1絞り装置45の開度を調整する。
【0047】
(暖房運転モード時のインジェクションの効果)
このように、暖房運転モードにおいて、室内機2から室外機1に流入する中圧・中温の冷媒の一部を補助熱交換器40において過冷却液にして圧縮機10の吸入部に流入させ、圧縮機10の吐出温度上昇を抑制する方式をとることにより、圧縮機10から吐出された全ての高圧・高温のガス冷媒を室内機2に供給することが可能になる。よって、特殊な構造の圧縮機を使用せず安価な圧縮機を使用した場合であっても、システムの信頼性を確保することができる。また、圧縮機10の吐出温度の過昇を抑制することにより、圧縮機10を増速することが可能になり、暖房能力を確保でき、ユーザーの快適性を低減させてしまうことを抑制できる。
【0048】
(補助熱交換器のサイズの選定)
第2絞り装置42の制御性を安定させるために、補助熱交換器40から流出する冷媒を確実に液化させる必要があり、そのために補助熱交換器40の伝熱面積について考慮する必要がある。ここで、暖房運転モード時において、圧縮機10の吐出温度の上昇を抑制する必要がある環境としては、室外機1が設置されている環境温度が低い環境(例えば環境温度が−10℃以下)が考えられる。この場合には、上述した第2絞り装置42の制御により、補助熱交換器40において過冷却する必要がある中圧・中温の低乾き度の冷媒の飽和温度を高くして環境温度との温度差を大きくとればよい。
【0049】
一方、冷房運転モード時において、圧縮機10の吐出温度の上昇を抑制する必要がある環境としては、室外機1が設置されている環境温度が高い環境(例えば環境温度が40℃以上)が考えられる。この環境下においては、熱源側熱交換器12において冷却された高圧・低温の冷媒温度(例えば50℃程度)と熱源側熱交換器12において冷却された冷媒をさらに補助熱交換器40において過冷却する時の冷媒と環境温度との温度差が小さい。このため、補助熱交換器40において十分に冷媒が過冷却されるためには、補助熱交換器40の伝熱面積を大きくする必要がある。
【0050】
よって、補助熱交換器40の伝熱面積は、冷房運転モードのインジェクション時に圧縮機10の吸入部に流入する過冷却液の量が最も多い条件において選定すればよい。この条件は、空気調和装置100の運転可能な環境温度に依存するが、熱源側熱交換器12において冷却される冷媒の圧力と、負荷側熱交換器26において加熱される冷媒の圧力との差が最も大きくなる条件が、圧縮機10から吐出される高圧・高温の冷媒の温度が最も上昇する条件である。
【0051】
したがって、圧縮機10から吐出される高圧・高温の冷媒の温度が最も上昇する環境下を想定して補助熱交換器40の伝熱面積を決定する。例えば、空気調和装置100の運転可能な環境温度が、室外機1が設置されている環境温度の最大値が43℃、室内機2が設置されている環境温度の最小値が15℃であると仮定した場合、この環境下が圧縮機10から吐出される冷媒の温度が最も上昇する条件であり、この条件下において補助熱交換器40の伝熱面積が決定される。
【0052】
まず、冷房運転モード時に、室外機1が設置されている環境温度最大値を43℃、室内機2が設置されている環境温度最小値を15℃とした場合の圧縮機10の吐出冷媒温度を吐出温度しきい値以下(例えば115℃以下)とするために必要になる補助熱交換器40から、圧縮機10の吸入部に流入させる必要がある過冷却液の冷媒流量(インジェクション量)は、式(1)のエネルギ保存則から算出すればよい。
【0054】
なお、式(1)において、Gr
1(kg/h)及びh
1(kJ/kg)は、アキュムレーター19から圧縮機10の吸入部に流入する低温・低圧のガス冷媒の流量及びエンタルピ、Gr
2(kg/h)及びh
2(kJ/kg)は、補助熱交換器40から第2絞り装置42及びバイパス配管41を介して圧縮機10の吸入部にインジェクションされる低温・低圧の液冷媒の流量及びエンタルピ、Gr(kg/h)及びh(kJ/kg)は圧縮機10の吸入部でそれぞれの冷媒が合流した後の合計冷媒流量及び合流後エンタルピである。
【0055】
式(1)より算出される合流後のエンタルピh(kJ/kg)は、アキュムレーター19から圧縮機10の吸入部に流入する低温・低圧のガス冷媒のエンタルピh
1(kJ/kg)よりも小さくなる。このため、補助熱交換器40から液冷媒の流入が無い場合よりも補助熱交換器40から冷媒のインジェクションがなされた場合の方が圧縮機10から吐出される冷媒の吐出温度は低下する。
【0056】
ここで、第2絞り装置42が全閉状態の場合に冷媒がエンタルピh
1(kJ/kg)から所定の圧力まで圧縮された場合と、第2絞り装置42が開いてバイパス配管41からの液インジェクションがなされた場合に冷媒が所定の圧力まで圧縮された場合とにおいて、冷媒は同等の断熱効率及び同等の押しのけ量で、同じ圧力まで圧縮されるものとする。この条件下において、圧縮機10から吐出されるガス冷媒の温度が吐出温度しきい値以下(例えば115℃以下)になる冷媒流量Gr
2が式(1)から導出される。
【0057】
次に、補助熱交換器40の熱交換量をQ1(W)、冷房運転モード時の熱源側熱交換器12の出口側の高圧・低温冷媒のエンタルピであって補助熱交換器40の入口側の冷媒のエンタルピをh
3(kJ/kg)とすると、式(2)に示す一般的なエンタルピ変化による熱交換量の式が成り立つ。
【0059】
また、補助熱交換器40が室外機1が設置されている環境の空気と接触する面積(以下、全伝熱面積と称する)をA1(m
2)、冷媒と空気の温度差による熱の伝わり易さを示す係数であって、補助熱交換器40で使用されているフィンと伝熱管外面とが設置されている環境の空気と接触する側を基準(以下管外側基準と称する)とした熱通過率をk(W/(m
2・K))、補助熱交換器40における冷媒と空気それぞれの出入口の流れ方向の温度変化を考慮した温度差である対数平均温度差をΔTm(Kまたは℃)とすると、補助熱交換器40の熱交換量Q1(W)は、一般的な熱通過による熱交換量の式(3)として表すことができる。
【0061】
ここで、管外側基準の熱通過率kは、プレートフィンチューブ熱交換器である補助熱交換器40において使用する伝熱管の仕様、フィン形状、ファン風速、冷凍サイクルの運転状態等の変化による熱伝達率の変化において変化するものである。例えば、多くの冷房運転モードの試験結果より得られている値として熱通過率k=約25(W/(m
2・K))に設定する。
【0062】
対数平均温度差ΔTm(Kまたは℃)は、補助熱交換器40の空気と熱交換する方式を向流式と仮定した場合、補助熱交換器40の伝熱管内に流入する冷媒温度をT1(Kまたは℃)、補助熱交換器40から流出する冷媒温度をT2(Kまたは℃)、補助熱交換器40に流入する空気温度をT3(Kまたは℃)、補助熱交換器40から流出する空気温度をT4(Kまたは℃)とすると、下記式(4)のように算出することができる。
【数4】
【0063】
上記式(1)〜式(4)を使用することにより、補助熱交換器40の全伝熱面積A1を算出することができる。一例として、冷媒としてR32冷媒を使用した10馬力相当の空気調和装置100について全伝熱面積A1を求める場合について説明する。この空気調和装置100において、室外機1が設置されている環境温度が約43℃、室内機2が設置されている環境温度が約15℃の条件下において、式(1)の合計冷媒流量Gr(=Gr
1+Gr
2)は約340(kg/h)になる。また、式(1)のエンタルピh
1は、圧縮機10の吸入部の飽和ガス温度を約0℃とすると、エンタルピh
1=約515(kJ/kg)になる。
【0064】
また、十分に過冷却するために、補助熱交換器40の入口側の冷媒と補助熱交換器40の出口側の液冷媒との温度差である過冷却度が約9℃になるように設定し、補助熱交換器40において、54℃の飽和液が約43℃の空気と熱交換を行い、45℃の飽和液が圧縮機10の吸入部に流出するとする。この場合、補助熱交換器40の出口のエンタルピh
2は、冷媒の飽和温度が54℃から算出される圧力と補助熱交換器40の出口の液冷媒の温度とから決まり、エンタルピh
2は約283(kJ/kg)になる。
【0065】
以上の空気調和装置100の運転可能な条件等に基づき、式(1)における合計冷媒流量Gr及びエンタルピh
1、h
2が求まる。そして、圧縮機10の断熱効率が0.6であり、熱源側熱交換器12内の冷媒の飽和温度である54℃の圧力まで冷媒が圧縮機10において圧縮される場合、圧縮機10の吐出温度を吐出温度しきい値以下(115℃以下)にするために必要な冷媒流量Gr
2は、式(1)より冷媒流量Gr
2=約12(kg/h)と算出される。
【0066】
次に、熱源側熱交換器12において冷却される冷媒の飽和温度が54℃であり、熱源側熱交換器12において54℃の飽和液になるまで冷却されるとした場合、54℃の飽和液のエンタルピh
3は約307(kJ/kg)である。よって、式(2)から冷媒流量Gr
2及びエンタルピh
2、h
3に基づき、補助熱交換器40において必要になる熱交換量Q1は約80(W)と算出される。
【0067】
上述したように、補助熱交換器40の伝熱管内に流入する冷媒の温度T1は約54(℃)、補助熱交換器40から流出する冷媒の温度T2は45(℃)、補助熱交換器40に流入する空気温度をT3は43(℃)とする。また、補助熱交換器40から流出する空気の温度T4は、補助熱交換器40における熱交換量Q1が約80(W)と小さいため、ほぼ変化しないとみなし、流入する空気温度から1℃程度上昇するとして44(℃)とする。すると、式(4)より対数平均温度差ΔTmは約4.97(℃)になる。よって、必要とされる補助熱交換器40の全伝熱面積A1は式(3)から約0.644(m
2)になる。
【0068】
R32冷媒が10馬力相当の空気調和装置100の冷媒として使用される際、熱源側熱交換器12で必要とされる全伝熱面積A2は約141(m
2)程度である。補助熱交換器40が熱源側熱交換器12の一部からなっている場合、熱源側熱交換器12の必要とされる全伝熱面積A2と補助熱交換器40の必要とされる全伝熱面積A1の和に対する、補助熱交換器40の全伝熱面積A1の比率A1/(A1+A2)=0.644/141.644は約0.46%以上になる。
【0069】
なお、所定の運転可能な条件下における10馬力相当の空気調和装置100を一例として、補助熱交換器40の全伝熱面積A1の算出を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、空気調和装置100の構成において、必要とされる冷房、暖房能力(馬力)が変化しても、室外機1と室内機2が設置されている環境温度に対する冷媒の高圧・低圧の冷媒運転状態がほぼ変わらない場合、圧縮機10の押しのけ量の変化(合計冷媒流量Gr(kg/h)の変化)のみにより、冷房、暖房能力(馬力)が変化する。このため、圧縮機10の押しのけ量の変化比率に応じて、補助熱交換器40に流入させる冷媒流量Gr
2が変化するようにし、式(2)と式(3)より補助熱交換器40の全伝熱面積A1が算出されるようにしてもよい。
【0070】
例えば、14馬力相当の空気調和装置100は、10馬力相当の空気調和装置に対し、約1.4倍の圧縮機10の押しのけ量が必要になる。よって、補助熱交換器40に流入させる冷媒流量Gr
2は、約16.8(kg/h)(=10馬力相当のGr
2である12(kg/h)×1.4)になる。補助熱交換器40の出入口の冷媒のエンタルピは10馬力相当の空気調和装置100の場合とほぼ同等とすると、式(2)より、補助熱交換器40での熱交換量Q1は約112(W)になり、式(3)より、熱通過率kと、対数平均温度差ΔTmも10馬力相当の空気調和装置100の場合とほぼ同等とみなせるため、必要とされる補助熱交換器40の全伝熱面積A1は、10馬力相当の空気調和装置の補助熱交換器40の全伝熱面積A1の約1.4倍である0.9016(m
2)になる。また、熱源側熱交換器12の必要とされる全伝熱面積A2に関しても、圧縮機10の押しのけ量の変化(合計冷媒流量Gr(kg/h)の変化)のみにより、冷房、暖房能力(馬力)が変化すると考えると、熱源側熱交換器12の必要とされる全伝熱面積A2も、10馬力相当の空気調和装置の約1.4倍必要と考えることができる。すなわち、空気調和装置100の馬力によらず、熱源側熱交換器12の必要とされる全伝熱面積A2と補助熱交換器40の必要とされる全伝熱面積A1の和に対する、補助熱交換器40の全伝熱面積A1の比率A1/(A1+A2)は約0.46%以上になる。
【0071】
熱源側熱交換器12の一部を補助熱交換器40として使用する場合、例えば、室外機1の高さ方向の制約等が生じ、熱源側熱交換器12の段数を増加させることができない状況がある。この場合に熱源側熱交換器12の一部である補助熱交換器40を過大にすると、熱源側熱交換器12の全伝熱面積A1が減少し、熱源側熱交換器12の性能が低下する。
【0072】
図4は、空気調和装置100の熱源側熱交換器12の全伝熱面積A2と補助熱交換器40の全伝熱面積A1の和に対する熱源側熱交換器12の伝熱面積比と、空気調和装置100の性能の大きさを表す指標の1つであるCOPとの関係を示すグラフである。
図4に示すように、COPの低下率を約1.5%以内に抑えるとすると、全伝熱面積の和A1+A2に対する熱源側熱交換器12の全伝熱面積A2の比率A2/(A1+A2)は約95%になる。したがって、補助熱交換器40の全伝熱面積A1の比率A1/(A1+A2)は5%以内になり、全伝熱面積の和A1+A2に対する補助熱交換器40の全伝熱面積A1の比率A1/(A1+A2)が約5%以内の大きさとする方が望ましい。ただし、補助熱交換器40が熱源側熱交換器12の一部ではなく独立して設置されている場合、比率A1/(A1+A2)を約5%以内にする必要はなく、A1/(A1+A2)が約0.46%以上であればよい。
【0073】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る空気調和装置の回路構成の一例を示す概略回路構成図であり、
図5を参照して空気調和装置200について説明する。なお、
図5において、
図1の空気調和装置100と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
図5の空気調和装置200は、熱源機である1台の室外機201と、複数台の室内機2a〜2dと、室外機201と室内機2a〜2dとの間に開閉装置を備えた中継装置3を有している。室外機201と中継装置3とは、冷媒が流通する主管5により接続され、中継装置3と複数の室内機2a〜2dとは、冷媒が流通する枝管6により接続されている。そして、室外機1で生成された冷熱あるいは温熱は、中継装置3を介して各室内機2a〜2dに流通されるようになっている。
【0075】
室外機201と中継装置3とは2本の主管5を用いて接続されており、中継装置3と各室内機2とは2本の枝管6を用いて接続されている。このように、2本の配管を用いて室外機201と中継装置3及び室内機2a〜2dと中継装置3とをそれぞれ接続することにより、施工が容易になっている。
【0076】
[室外機201]
室外機201は、実施の形態1と同様、圧縮機10と、四方弁等の冷媒流路切替装置11と、熱源側熱交換器12と、補助熱交換器40と、第1絞り装置45と、第2絞り装置42と、バイパス配管41と、アキュムレーター19とが冷媒配管4で接続され、送風機であるファン16と共に搭載されている。
【0077】
さらに、室外機201は、第1接続配管4a、第2接続配管4b、逆止弁等からなる第1逆流防止装置13a〜13dを有している。第1逆流防止装置13aは、全暖房運転モード時と暖房主体運転モード時に、第1接続配管4aから熱源側熱交換器12に、高温・高圧のガス冷媒が逆流することを防止するものである。第1逆流防止装置13bは、全冷房運転モード時と冷房主体運転モード時に、第1接続配管4aからアキュムレーター19に、高圧の液もしくは気液二相状態の冷媒が逆流することを防止するものである。第1逆流防止装置13cは、全冷房運転モード時と冷房主体運転モード時に、第1接続配管4aからアキュムレーター19に、高圧の液もしくは、気液二相状態の冷媒が逆流することを防止するものである。第1逆流防止装置13dは、全暖房運転モード時と暖房主体運転モード時に、圧縮機10の吐出側の流路から第2接続配管4bに、高温・高圧のガス冷媒が逆流することを防止するものである。
【0078】
このように、第1接続配管4a、第2接続配管4b及び第1逆流防止装置13a〜13dを設けることにより、室内機2の要求する運転に関わらず、中継装置3に流入させる冷媒の流れを一定方向にすることができる。なお、第1逆流防止装置13a〜13dが逆止弁からなる場合について例示しているが、冷媒の逆流を防止できればその構成を問わず、開閉装置や全閉機能を有する絞り装置であってもよい。
【0079】
また、
図5において、バイパス配管41は、一端が第1絞り装置45と第1逆流防止装置13cとの間の第2接続配管4bに接続され、他端が圧縮機10とアキュムレーター19との間の冷媒配管4に接続されている。すなわち、
図5の空気調和装置200においても、第1絞り装置45は熱源側熱交換器12と室内機2a〜2d(負荷側絞り装置25a〜26d)との間に設けられており、バイパス配管41は、第1絞り装置45と熱源側熱交換器12との間に接続され、第1絞り装置45から流出した冷媒が流れるようになっている。
【0080】
[室内機2a〜2d]
複数の室内機2a〜2dは、例えば同一の構成を有するものであって、それぞれ負荷側熱交換器26a〜26dと、負荷側絞り装置25a〜25dを備えている。負荷側熱交換器26a〜26dは、枝管6と、中継装置3と、主管5を介して室外機201に接続されており、図示省略のファン等の送風機から供給される空気と冷媒の間で熱交換を行ない、室内空間に供給するための暖房用空気あるいは冷房用空気を生成するものである。負荷側絞り装置25a〜25dは、例えば電子式膨張弁等の開度が可変に制御可能なものからなっており、冷媒を減圧して膨張させる減圧弁や膨張弁としての機能を有している。負荷側絞り装置25a〜25dは、全冷房運転モード時の冷媒の流れにおいて負荷側熱交換器26a〜26dの上流側に設けられている。
【0081】
また、室内機2には、それぞれ負荷側熱交換器26に流入する冷媒の温度を検出する入口側温度センサー31a〜31dと、負荷側熱交換器26から流出した冷媒の温度を検出する出口側温度センサー32a〜32dが設けられている。なお、入口側温度センサー31a〜31d及び出口側温度センサー32a〜32dは、例えばサーミスター等からなっており、検出した負荷側熱交換器26a〜26dの入口側温度及び出口側温度は制御装置60に送られる。
【0082】
なお、
図5において、4台の室内機2が中継装置3及び冷媒配管4を介して室外機201に接続されている場合について例示しているが、室内機2の接続台数を4台に限定するものではなく、2台以上接続されていればよい。
【0083】
[中継装置3]
中継装置3は、気液分離器14と、冷媒間熱交換器50と、第3絞り装置15と、第4絞り装置27と、複数の第1開閉装置23a〜23dと、複数の第2開閉装置24a〜24dと、逆止弁等の逆流防止装置である複数の第2逆流防止装置21a〜21dと、逆止弁等の逆流防止装置である複数の第3逆流防止装置22a〜22dとを有している。
【0084】
気液分離器14は、冷房負荷が大きい冷房暖房混在運転モード時において、室外機201で生成された高圧の気液二相状態の冷媒を、液とガスに分離し、液は紙面上の下側の配管に流入させて、室内機2に冷熱を供給し、ガスは紙面上の上側の配管に流入させて、室内機2に温熱を供給するものである。気液分離器14は、中継装置3の入口に設置されている。
【0085】
冷媒間熱交換器50は、例えば二重管式熱交換器やプレート式熱交換器等で構成され、全冷房運転モード時、冷房主体運転モード時、暖房主体運転モード時に、冷熱負荷が発生している室内機2の負荷側絞り装置25に供給する液もしくは気液二相状態の冷媒の過冷却度を十分に確保するために、高圧もしくは中圧冷媒と低圧冷媒とを熱交換させるものである。冷媒間熱交換器50の高圧もしくは中圧状態の冷媒の流路は、第3絞り装置15と第2逆流防止装置21a〜21dとの間に接続されている。低圧状態の冷媒の流路は、一端が第2逆流防止装置21a〜21dと、冷媒間熱交換器50の高圧もしくは中圧状態の冷媒の流路の出口側との間に接続され、他端が第4絞り装置27と冷媒間熱交換器50とを介して、中継装置3の出口側の低圧配管に導通されている。
【0086】
第3絞り装置15は、減圧弁や開閉弁としての機能を有し、液冷媒を減圧させて所定の圧力に調整し、もしくは液冷媒の流路を開閉するものである。第3絞り装置15は、例えば電子式膨張弁等の開度が可変に制御可能なものからなっており、気液分離器14から液冷媒が流出する配管上に設けられている。
【0087】
第4絞り装置27は、減圧弁や開閉弁としての機能を有し、全暖房運転モードにおいて、冷媒流路を開閉するものであり、暖房主体運転モードにおいて、室内側負荷に応じ、バイパス液流量を調整するものである。そして、第4絞り装置27は、全冷運転モード時、冷房主体運転モード時、暖房主体運転モード時に、冷媒間熱交換器50に冷媒を流出し、冷熱負荷が発生している室内機2の負荷側絞り装置25に供給する冷媒の過冷却度を調整するものである。第4絞り装置27は、例えば電子式膨張弁等の開度が可変に制御可能なものからなっており、冷媒間熱交換器50の低圧状態の冷媒の入口側の流路に設置されている。
【0088】
複数の第1開閉装置23a〜23dは、複数の室内機2a〜2d毎にそれぞれ設置台数に応じた個数分(ここでは4つ)設けられている。複数の第1開閉装置23a〜23dは、例えば電磁弁等で構成されており、それぞれ各室内機2a〜2dに供給される高温・高圧のガス冷媒の流路を開閉するものである。第1開閉装置23a〜23dは、それぞれ気液分離器14のガス側配管に接続されている。なお、第1開閉装置23a〜23dは流路の開閉を行えればよく、全閉機能を有する絞り装置であってもよい。
【0089】
複数の第2開閉装置24a〜24dは、複数の室内機2a〜2d毎にそれぞれ設置台数に応じた個数分(ここでは4つ)設けられている。複数の第2開閉装置24a〜24dは、例えば電磁弁等で構成されており、室内機2a〜2dから流出した低圧・低温のガス冷媒の流路を開閉するものである。第2開閉装置24a〜24dは、中継装置3の出口側に導通する低圧配管に接続されている。また、第2開閉装置24a〜24dは流路の開閉を行えればよく、全閉機能を有する絞り装置であってもよい。
【0090】
複数の第2逆流防止装置21a〜21dは、複数の室内機2a〜2d毎にそれぞれ設置台数に応じた個数分(ここでは4つ)設けられている。複数の第2逆流防止装置21a〜21dは、冷房運転を実施している室内機2a〜2dに高圧液冷媒を流入させるものであって、第3絞り装置15の出口側の配管に接続されている。これにより、冷房主体運転モード時と暖房主体運転モード時に、暖房運転を実施している室内機2の負荷側絞り装置25から流出した、過冷却度が十分に確保できていない中温・中圧の液もしくは気液二相状態の冷媒が、冷房運転を実施している室内機2の負荷側絞り装置25に流入することを防ぐことができる。また、第2逆流防止装置21a〜21dは、逆止弁であるかのように図示しているが、冷媒の逆流を防止できればどんなものでもよく、開閉装置や全閉機能を有する絞り装置であってもよい。
【0091】
複数の第3逆流防止装置22a〜22dは、複数の室内機2a〜2d毎にそれぞれ設置台数に応じた個数分(ここでは4つ)設けられている。複数の第3逆流防止装置22a〜22dは、冷房運転を実施している室内機2に高圧液冷媒を流入させるものであり、第3絞り装置15の出口配管に接続されている。第3逆流防止装置22a〜22dは、冷房主体運転モード時と暖房主体運転モード時に、第3絞り装置15から流出した過冷却度が十分に確保できていない中温・中圧の液もしくは気液二相状態の冷媒が、冷房運転を実施している室内機2の負荷側絞り装置25に流入することを防止している。また、第3逆流防止装置22a〜22dは、逆止弁であるかのように図示しているが、冷媒の逆流を防止できればどんなものでもよく、開閉装置や全閉機能を有する絞り装置であってもよい。
【0092】
また、中継装置3において、第3絞り装置15の入口側には入口側圧力センサー33が設けられており、第3絞り装置15の出口側には出口側圧力センサー34が設けられている。入口側圧力センサー33は、高圧冷媒の圧力を検出するものであり、出口側圧力センサー34は、冷房主体運転モード時、第3絞り装置15出口の液冷媒の中間圧力を検出するものである。
【0093】
さらに中継装置3には、冷媒間熱交換器50を流出した高圧もしくは中圧状態の冷媒の温度を検出する温度センサー51が設けられている。温度センサー51は、冷媒間熱交換器50の高圧もしくは中圧状態の冷媒の流路の出口側の配管に設けられており、サーミスター等で構成するとよい。
【0094】
図5の空気調和装置200においても、制御装置60は、各種センサーでの検出情報及びリモコンからの指示に基づいて、圧縮機10の駆動周波数、送風機の回転数(ON/OFF含む)、冷媒流路切替装置11の切り替え、第1絞り装置45の開度、第2絞り装置42の開度、負荷側絞り装置25の開度、第1開閉装置23a〜23d、第2開閉装置24a〜24d、第4絞り装置27、第3絞り装置15の開閉等を制御し、後述する各運転モードを実行するようになっている。なお、制御装置60は、ユニット毎に設けてもよく、室外機201または中継装置3に設けてもよい。
【0095】
空気調和装置200が実行する各運転モードについて説明する。この空気調和装置200は、各室内機2からの指示に基づいて、その室内機2で冷房運転あるいは暖房運転が可能になっている。つまり、空気調和装置200は、室内機2の全部で同一運転をすることができるとともに、室内機2のそれぞれで異なる運転をすることができるようになっている。
【0096】
空気調和装置200が実行する運転モードには、冷房運転モードとして駆動している室内機2の全てが冷房運転を実行する全冷房運転モード冷房負荷の方が大きい冷房暖房混在運転モードとしての冷房主体運転モードがあり、暖房運転モードとして室内機2の全てが暖房運転を実行する全暖房運転モード及び暖房負荷の方が大きい冷房暖房混在運転モードとしての暖房主体運転モードがある。以下に、各運転モードについて説明する。
【0097】
[全冷房運転モード]
図6は、空気調和装置200の全冷房運転モード時における冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
図6では、太線で表された配管が冷媒の流れる配管を示しており、冷媒の流れ方向を実線矢印で示している。なお、
図6では、負荷側熱交換器26a及び負荷側熱交換器26bでのみ冷熱負荷が発生している場合を例に全冷房運転モードについて説明する。また、
図6に示す全冷房運転モードの場合、制御装置60は、室外機201の冷媒流路切替装置11を、圧縮機10から吐出された冷媒が熱源側熱交換器12へ流入するように切り替える。
【0098】
まず、低温・低圧の冷媒が圧縮機10により圧縮され、高温・高圧のガス冷媒になって吐出される。圧縮機10から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、冷媒流路切替装置11を介して熱源側熱交換器12に流入する。そして、熱源側熱交換器12で室外空気に放熱しながら高圧液冷媒になる。熱源側熱交換器12から流出した高圧液冷媒は、第1逆流防止装置13aを通って、室外機201から流出し、主管5を通って中継装置3に流入する。
【0099】
中継装置3に流入した高圧液冷媒は、気液分離器14及び第3絞り装置15を経由し、冷媒間熱交換器50において十分に過冷却される。その後、過冷却された高圧冷媒の大部分は第2逆流防止装置21a、21b及び枝管6を経由し、負荷側絞り装置25で膨張させられ、低温・低圧の気液二相状態の冷媒になる。高圧冷媒の残りの一部は第4絞り装置27で膨張させられ、低温・低圧の気液二相状態の冷媒になる。そして、低温・低圧の気液二相状態の冷媒は、冷媒間熱交換器50において高圧液冷媒と熱交換することにより、低温・低圧のガス冷媒になり、中継装置3の出口側の低圧配管に流入する。この際、第4絞り装置27は、出口側圧力センサー34で検出された圧力を飽和温度に換算した値と、温度センサー51で検出された温度との差として得られるサブクール(過冷却度)が一定になるように開度が制御される。
【0100】
負荷側絞り装置25a、25bを流出した大部分の低温・低圧の気液二相状態の冷媒は、蒸発器として作用する負荷側熱交換器26a、26bにそれぞれ流入し、室内空気から吸熱することにより、室内空気を冷却しながら、低温・低圧のガス冷媒になる。この際、負荷側絞り装置25aは、入口側温度センサー31aで検出された温度と出口側温度センサー32aで検出された温度との差として得られるスーパーヒート(過熱度)が一定になるように開度が制御される。同様に、負荷側絞り装置25bは、入口側温度センサー31bで検出された温度と出口側温度センサー32bで検出された温度との差として得られるスーパーヒートが一定になるように開度が制御される。
【0101】
負荷側熱交換器26a、26bからそれぞれ流出したガス冷媒は、枝管6及び第2開閉装置24を経由して、冷媒間熱交換器50を流出したガス冷媒と合流し、中継装置3から流出し、主管5を通って再び室外機201へ流入する。室外機201に流入した冷媒は、第1逆流防止装置13dを通って、冷媒流路切替装置11、アキュムレーター19を経由して、圧縮機10へ再度吸入される。
【0102】
なお、冷熱負荷がない負荷側熱交換器26c及び負荷側熱交換器26dにおいては、冷媒を流す必要がなく、それぞれに対応する負荷側絞り装置25cと、負荷側絞り装置25dは閉状態になっている。そして、負荷側熱交換器26c又は負荷側熱交換器26dから冷熱負荷の発生があった場合には、負荷側絞り装置25c又は負荷側絞り装置25dが開放して冷媒が循環する。この際、負荷側絞り装置25c又は負荷側絞り装置25dの開度は、上述した負荷側絞り装置25a又は負荷側絞り装置25bと同様に、入口側温度センサー31と、出口側温度センサー32で検出された温度との差として得られるスーパーヒート(過熱度)が一定になるように開度が制御される。
【0103】
[冷房主体運転モード]
図7は、空気調和装置200の冷房主体運転モード時における冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
図7では、負荷側熱交換器26aで冷熱負荷が発生し、負荷側熱交換器26bで温熱負荷が発生している場合を例に冷房主体運転モードについて説明する。なお、
図7では、太線で表された配管が冷媒の循環する配管を示しており、冷媒の流れ方向を実線矢印で示している。
図7に示す冷房主体運転モードの場合、室外機201では、冷媒流路切替装置11を、圧縮機10から吐出された熱源側冷媒を熱源側熱交換器12へ流入させるように切り替える。
【0104】
まず、低温・低圧の冷媒が圧縮機10により圧縮され、高温・高圧のガス冷媒になって吐出される。圧縮機10から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、冷媒流路切替装置11を介して熱源側熱交換器12に流入する。そして、熱源側熱交換器12で室外空気に放熱しながら気液二相状態の冷媒になる。熱源側熱交換器12から流出した冷媒は、第1逆流防止装置13a及び主管5を通り中継装置3に流入する。
【0105】
中継装置3に流入した気液二相状態の冷媒は、気液分離器14で高圧ガス冷媒と高圧液冷媒に分離される。この高圧ガス冷媒は、第1開閉装置23b及び枝管6を経由した後に、凝縮器として作用する負荷側熱交換器26bに流入し、室内空気に放熱することにより、室内空間を暖房しながら液冷媒になる。この際、負荷側絞り装置25bは、入口側圧力センサー33で検出された圧力を飽和温度に換算した値と、入口側温度センサー31bで検出された温度との差として得られるサブクール(過冷却度)が一定になるように開度が制御される。負荷側熱交換器26bから流出した液冷媒は、負荷側絞り装置25bで膨張させられて、枝管6及び第3逆流防止装置22bを経由する。
【0106】
その後、冷媒は、気液分離器14で分離された後に第3絞り装置15において中間圧まで膨張させられた中間圧液冷媒と、第3逆流防止装置22bを通ってきた液冷媒とが合流する。この際、第3絞り装置15は、入口側圧力センサー33で検出された圧力と、出口側圧力センサー34で検出された圧力との圧力差が所定の圧力差(例えば0.3MPaなど)になるように開度が制御される。
【0107】
合流した液冷媒は、冷媒間熱交換器50において、十分に過冷却された後に、大部分は第2逆流防止装置21a及び枝管6を経由した後に、負荷側絞り装置25aで膨張させられ、低温・低圧の気液二相状態の冷媒になる。液冷媒の残りの一部は第4絞り装置27で膨張させられ、低温・低圧の気液二相状態の冷媒になる。この際、第4絞り装置27は、出口側圧力センサー34で検出された圧力を飽和温度に換算した値と、温度センサー51で検出された温度との差として得られるサブクール(過冷却度)が一定になるように開度が制御される。その後、低温・低圧の気液二相状態の冷媒は、冷媒間熱交換器50において中圧液冷媒と熱交換することにより、低温・低圧のガス冷媒になり、中継装置3の出口側の低圧配管に流入する。
【0108】
一方、気液分離器14において分離された高圧液冷媒は、冷媒間熱交換器50及び第2逆流防止装置21aを介して室内機2aに流入する。室内機2aの負荷側絞り装置25aで膨張させられた大部分の気液二相状態の冷媒は、蒸発器として作用する負荷側熱交換器26aに流入し、室内空気から吸熱することにより、室内空気を冷却しながら、低温・低圧のガス冷媒になる。この際、負荷側絞り装置25aは、入口側温度センサー31aで検出された温度と出口側温度センサー32bで検出された温度との差として得られるスーパーヒート(過熱度)が一定になるように開度が制御される。負荷側熱交換器26aから流出したガス冷媒は、枝管6、第2開閉装置24aを経由して、冷媒間熱交換器50を流出した残りの一部のガス冷媒と合流した後に中継装置3から流出し、主管5を通って再び室外機201へ流入する。室外機201に流入した冷媒は、第1逆流防止装置13dを通って、冷媒流路切替装置11、アキュムレーター19を経由して、圧縮機10へ再度吸入される。
【0109】
なお、熱負荷がない負荷側熱交換器26c及び負荷側熱交換器26dにおいては、冷媒を流す必要がなく、それぞれに対応する負荷側絞り装置25c及び負荷側絞り装置25dは閉状態になっている。そして、負荷側熱交換器26c又は負荷側熱交換器26dから冷熱負荷があった場合には、負荷側絞り装置25c又は負荷側絞り装置25dが開放して冷媒が循環する。この際、負荷側絞り装置25c又は負荷側絞り装置25dの開度は、上述した負荷側絞り装置25a又は負荷側絞り装置25bと同様に、入口側温度センサー31と、出口側温度センサー32で検出された温度との差として得られるスーパーヒート(過熱度)が一定になるように開度が制御される。
【0110】
[全暖房運転モード]
図8は、空気調和装置200の全暖房運転モード時における冷媒の流れを示す冷媒回路図である。なお、
図8では、太線で表された配管が冷媒の流れる配管を示しており、冷媒の流れ方向を実線矢印で示している。
図8では、負荷側熱交換器26a及び負荷側熱交換器26bでのみ冷熱負荷が発生している場合を例に全暖房運転モードについて説明する。また、
図8に示す全暖房運転モードの場合、室外機201では、冷媒流路切替装置11を、圧縮機10から吐出された熱源側冷媒が熱源側熱交換器12を経由させずに中継装置3へ流入するように切り替える。
【0111】
まず、低温・低圧の冷媒が圧縮機10によって圧縮され、高温・高圧のガス冷媒になって吐出される。圧縮機10から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、冷媒流路切替装置11、第1逆流防止装置13bを通り、室外機201から流出する。室外機201から流出した高温・高圧のガス冷媒は、主管5を通って中継装置3に流入する。
【0112】
中継装置3に流入した高温・高圧のガス冷媒は、気液分離器14、第1開閉装置23a、23b及び枝管6を経由した後に、凝縮器として作用する負荷側熱交換器26a及び負荷側熱交換器26bのそれぞれに流入する。負荷側熱交換器26a及び負荷側熱交換器26bに流入した冷媒は室内空気に放熱することにより、室内空間を暖房しながら液冷媒になる。負荷側熱交換器26a及び負荷側熱交換器26bから流出した液冷媒は、負荷側絞り装置25a、25bでそれぞれ膨張させられて、枝管6、第3逆流防止装置22a、22b、冷媒間熱交換器50、開状態に制御された第4絞り装置27及び主管5を通って再び室外機201へ流入する。この際、負荷側絞り装置25aは、入口側圧力センサー33で検出された圧力を飽和温度に換算した値と、入口側温度センサー31aで検出された温度との差として得られるサブクール(過冷却度)が一定になるように開度が制御される。同様に、負荷側絞り装置25bは、入口側圧力センサー33で検出された圧力を飽和温度に換算した値と、入口側温度センサー31bで検出された温度との差として得られるサブクール(過冷却度)が一定になるように開度が制御される。
【0113】
室外機201に流入した冷媒は、第1逆流防止装置13cと、第1絞り装置45で膨張させられ低温・低圧の気液二相状態の冷媒になり、熱源側熱交換器12で室外空気から吸熱しながら、低温・低圧のガス冷媒になり、冷媒流路切替装置11及びアキュムレーター19を介して圧縮機10へ再度吸入される。
【0114】
なお、熱負荷がない負荷側熱交換器26c及び負荷側熱交換器26dにおいては、冷媒を流す必要がなく、それぞれに対応する負荷側絞り装置25c及び負荷側絞り装置25dは閉状態になっている。そして、負荷側熱交換器26c又は負荷側熱交換器26dから冷熱負荷があった場合には、負荷側絞り装置25c又は負荷側絞り装置25dが開放して冷媒が循環する。この際、負荷側絞り装置25c又は負荷側絞り装置25dの開度は、上述した負荷側絞り装置25a又は負荷側絞り装置25bと同様に、入口側温度センサー31と、出口側温度センサー32で検出された温度との差として得られるスーパーヒート(過熱度)が一定になるように開度が制御される。
【0115】
[暖房主体運転モード]
図9は、空気調和装置200の暖房主体運転モード時における冷媒の流れを示す冷媒回路図である。なお、
図9では、太線で表された配管が冷媒の循環する配管を示しており、冷媒の流れ方向を実線矢印で示している。
図9では、負荷側熱交換器26aで冷熱負荷が発生し、負荷側熱交換器26bで温熱負荷が発生している場合を例に暖房主体運転モードについて説明する。
図9に示す暖房主体運転モードの場合、室外機201では、冷媒流路切替装置11を、圧縮機10から吐出された熱源側冷媒を、熱源側熱交換器12を経由させずに中継装置3へ流入させるように切り替える。
【0116】
低温・低圧の冷媒が圧縮機10によって圧縮され、高温・高圧のガス冷媒になって吐出される。圧縮機10から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、冷媒流路切替装置11、第1逆流防止装置13bを通り、室外機201から流出する。室外機201から流出した高温・高圧のガス冷媒は、主管5を通って中継装置3に流入する。
【0117】
中継装置3に流入した高温・高圧のガス冷媒は、気液分離器14、第3絞り装置15、第1開閉装置23b及び枝管6を経由した後に、凝縮器として作用する負荷側熱交換器26bに流入する。負荷側熱交換器26bに流入した冷媒は室内空気に放熱することにより、室内空間を暖房しながら液冷媒になる。負荷側熱交換器26bから流出した液冷媒は、負荷側絞り装置25bで膨張させられて、枝管6及び第3逆流防止装置22bを経由して、冷媒間熱交換器50において十分に過冷却される。その後、大部分は第2逆流防止装置21a及び枝管6を経由した後に、負荷側絞り装置25aで膨張させられ、低温・低圧の気液二相状態の冷媒になる。液冷媒の残りの一部はバイパスとしても使用する第4絞り装置27で膨張させられ、中温・中圧の二相・もしくは液冷媒になり、冷媒間熱交換器50において、液冷媒と熱交換することにより、低温・中圧のガスもしくは気液二相状態の冷媒になり、中継装置3の出口側の低圧配管に流入する。
【0118】
負荷側絞り装置25aで膨張させられた大部分の気液二相状態の冷媒は、蒸発器として作用する負荷側熱交換器26aに流入し、室内空気から吸熱することにより、室内空気を冷却しながら、低温・中圧の気液二相状態の冷媒になる。負荷側熱交換器26aから流出した気液二相状態の冷媒は、枝管6及び第2開閉装置24aを経由して、冷媒間熱交換器50を流出した残りの一部の冷媒と合流し、中継装置3から流出し、主管5を通って再び室外機201へ流入する。室外機201に流入した冷媒は、第1逆流防止装置13cを通って、第1絞り装置45で膨張させられ、低温・低圧の気液二相状態の冷媒になり、熱源側熱交換器12で室外空気から吸熱しながら、低温・低圧のガス冷媒になり、冷媒流路切替装置11及びアキュムレーター19を介して圧縮機10へ再度吸入される。
【0119】
このとき、負荷側絞り装置25bは、入口側圧力センサー33で検出された圧力を飽和温度に換算した値と、入口側温度センサー31bで検出された温度との差として得られるサブクール(過冷却度)が一定になるように開度が制御される。一方、負荷側絞り装置25aは、入口側温度センサー31aで検出された温度と出口側温度センサー32bで検出された温度との差として得られるスーパーヒート(過熱度)が一定になるように開度が制御される。
【0120】
また、第4絞り装置27は、出口側圧力センサー34で検出された圧力を飽和温度に換算した値と、温度センサー51で検出された温度との差として得られるサブクール(過冷却度)が一定になるように開度が制御される。例えば第4絞り装置27は、入口側圧力センサー33で検出された圧力と出口側圧力センサー34で検出された圧力との圧力差が所定の圧力差(例えば0.3MPaなど)になるように開度が制御される。
【0121】
なお、熱負荷がない負荷側熱交換器26c及び負荷側熱交換器26dにおいては、冷媒を流す必要がなく、それぞれに対応する負荷側絞り装置25cと、負荷側絞り装置25dは閉になっている。そして、負荷側熱交換器26cや負荷側熱交換器26dから熱負荷の発生があった場合には、負荷側絞り装置25cや、負荷側絞り装置25dを開放して、冷媒を循環させればよい。
【0122】
図5〜
図9に示す空気調和装置200であっても、
図1〜
図4に示す空気調和装置100と同様、冷房運転モード時及び暖房運転モード時において、補助熱交換器40及び第2絞り装置42を介して圧縮機10の吸引部へ冷媒のインジェクションが行われる。これにより、特殊な構造の圧縮機を使用せず安価な圧縮機を使用した場合であっても、システムの信頼性を確保することができる。また、圧縮機10の吐出温度の過昇を抑制することにより、圧縮機10を増速することが可能になり、暖房能力を確保でき、ユーザーの快適性を低減させてしまうことを抑制できる。
【0123】
また、空気調和装置200においても、必要とされる補助熱交換器40の室外機201が設置されている環境の空気と接触する面積である全伝熱面積A1(m
2)の算出方法及びサイズは、実施の形態1と同様である。
【0124】
実施の形態3.
図10は、実施の形態3に係る空気調和装置の回路構成の一例と全冷運転モード時の冷媒の流れを示す概略回路構成図である。なお、この実施の形態3では上述した実施の形態2との相違点を中心に説明するものとし、実施の形態2と同一部分には、同一符号を付している。
図10の空気調和装置300が
図5〜
図9の空気調和装置200と異なる点は、室外機301の構成である。
【0125】
空気調和装置300の室外機301は、バイパス配管41の一端が、第1分岐配管48及び第2分岐配管49に接続されており、バイパス配管41が二分岐されている。第1分岐配管48は、一端が第1絞り装置45と第1逆流防止装置13cとの間の第2接続配管4bに接続され、他端がバイパス配管41に接続されている。第2分岐配管49は、一端が第1逆流防止装置13aと第1接続配管4aとの合流部と、主管5との間の冷媒配管4に接続されており、他端がバイパス配管41に接続されている。また、第2分岐配管49には開閉装置47が設けられており、開閉装置47の動作は制御装置60により制御されている。なお、開閉装置47は流路の開閉を行えればよく、全閉機能を有する絞り装置でも構わない。
【0126】
そして、冷房運転モード時(全冷房運転モード時及び冷房主体運転モード時)において、制御装置60は、圧縮機10の吐出冷媒の温度上昇を抑制する際、第1絞り装置45が全閉状態になるとともに、開閉装置47が開状態になるように制御する。すると、熱源側熱交換器12から流出した高圧の冷媒の一部は、第2分岐配管49と、開状態に制御された開閉装置47と、バイパス配管41とを介して、補助熱交換器40に流入する。補助熱交換器40において、冷媒はファン16から供給される室外空気に放熱しながら高圧の過冷却液になり、第2絞り装置42を介して圧縮機10の吸入部に流入する。これにより、圧縮機10の吐出冷媒の温度を低下させることができる。
【0127】
一方、暖房運転モード時(全暖房運転モード時及び暖房主体運転モード時)において、制御装置60により開閉装置47は閉状態に制御され、圧縮機10の吐出冷媒の温度上昇を抑制する。なお、開閉装置47は閉状態の場合の空気調和装置300の動作および制御は、空気調和装置200と実質的に同一であり、空気調和装置300の回路構成としても空気調和装置200と同様の効果が得られる。
【0128】
図11は本発明の実施の形態3に係る空気調和装置の変形例において、全冷房運転モード時の冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
図10の室外機301において、第1分岐配管48には逆流防止装置13gが設けられている。この逆流防止装置13gは、暖房運転モード時(全暖運転モード時及び暖房主体運転モード時)に、補助熱交換器40に高圧のガス冷媒が流入する際、圧縮機10から吐出された高圧のガス冷媒が、低圧の冷媒の流路である第2接続配管4bに逆流することを防止するものである。そして、全暖房運転モード時と暖房主体運転モード時等に、開閉装置47が開くように制御され、第2分岐配管49から高圧のガス冷媒が補助熱交換器40に流入することができる回路構成になっている。
【0129】
例えば全暖房運転モードの起動時と暖房主体運転モードの起動時等において、第1絞り装置45による中圧の生成が困難な場合等に、制御装置60が開閉装置47を開状態に制御することにより、第1接続配管4aから高圧のガス冷媒を補助熱交換器40に流入させることができる。補助熱交換器40において、冷媒が過冷却液になった状態で圧縮機10の吸入部に流入させることができるため、圧縮機10の吐出温度の過昇を抑制できる効果が得られる。なお、逆流防止装置13gは、冷媒の逆流を防止できればどんなものでもよく、開閉装置や全閉機能を有する絞り装置でも構わない。
【0130】
また、第1分岐配管48に逆流防止装置13gが設置された場合について例示しているが、逆流防止装置13gの代わりに、開閉装置もしくは流路の開閉を行える全閉機能を有する絞り装置等の第1分岐配管開閉装置を設けてもよい。そして、制御装置60は、圧縮機10の吐出温度の過昇抑制が必要無い場合などに、制御装置60により第1分岐配管開閉装置と開閉装置47とは閉状態に制御され、第2絞り装置42を全閉とならないわずかな開度とするようにしてもよい。これにより、バイパス配管41と補助熱交換器40とに冷媒が寝込むことを抑制することができる。また、圧縮機10の吐出温度の過昇抑制が必要となったときに、第2絞り装置42から過剰に液冷媒が圧縮機10の吸入部に流入することを防げ、過剰な液バックによる圧縮機10の破損を防ぐことができる。
【0131】
このように、
図10及び
図11に示す空気調和装置300であっても、補助熱交換器40及び第2絞り装置42を介して圧縮機10の吸引部へ冷媒のインジェクションが行われることにより、特殊な構造の圧縮機を使用せず安価な圧縮機を使用した場合であっても、システムの信頼性を確保することができる。また、圧縮機10の吐出温度の過昇を抑制することにより、圧縮機10を増速することが可能になり、暖房能力を確保でき、ユーザーの快適性を低減させてしまうことを抑制できる。
【0132】
また、空気調和装置300においても、必要とされる補助熱交換器40の室外機201が設置されている環境の空気と接触する面積である全伝熱面積A1(m
2)の算出方法及びサイズは、実施の形態1と同様である。
【0133】
実施の形態4.
図12は、実施の形態4に係る空気調和装置の回路構成の一例と冷房運転モード時の冷媒の流れを示す概略回路構成図である。なお、この実施の形態4では上述した実施の形態との相違点を中心に説明するものとし、実施の形態1と同一部分には、同一符号を付している。
図12に示す空気調和装置400は、室外機401の構成が空気調和装置100と異なっている。
【0134】
すなわち、空気調和装置400の室外機401において、バイパス配管41の一端が、第1分岐配管48と、第2分岐配管49に二分岐されており、第1分岐配管48の一端が、第1絞り装置45と負荷側絞り装置25との間の冷媒配管4に接続され、第1分岐配管48の他端は、逆流防止装置13gを介して第2分岐配管49と合流し、バイパス配管41に接続されている。
【0135】
逆流防止装置13gは、全冷運転モード時と、冷房主体運転モード時に、補助熱交換器40に高圧のガス冷媒を流入させる際、圧縮機10から吐出された高圧のガス冷媒が、熱源側熱交換器12から流出した高圧の液もしくは気液二相状態の冷媒の流路である冷媒配管4に逆流することを防ぐものである。第2分岐配管49は、一端が圧縮機10の吐出側の流路と冷媒流路切替装置11の間の冷媒配管4に接続され、第2分岐配管49に開閉装置47を備え、第2分岐配管49の他端は、開閉装置47を介して、第1分岐配管48と合流し、バイパス配管41に接続されている。
【0136】
空気調和装置400では、冷房運転モード時に、圧縮機10の吐出冷媒の温度上昇を抑制する際、圧縮機10から吐出された高圧のガス冷媒の一部を、第2分岐配管49と、開に制御された開閉装置47と、バイパス配管41を介して、補助熱交換器40に流入させる。そして、補助熱交換器40でファン16から供給される室外空気に放熱しながら高圧の過冷却液になった冷媒が、第2絞り装置42を介して圧縮機10の吸入部に流入する。これにより、圧縮機10の吐出冷媒の温度を低下させることができる。
【0137】
一方、暖房運転モード時は、開閉装置47は閉状態に制御され、空気調和装置400のその他の動作および制御は、空気調和装置100と同様であり、空気調和装置400の回路構成としても空気調和装置100と同様の効果が得られる。なお、逆流防止装置13gは、逆止弁であるかのように図示しているが、冷媒の逆流を防止できればどんなものでもよく、開閉装置や全閉機能を有する絞り装置でも構わない。また、開閉装置47は流路の開閉を行えればよく、全閉機能を有する絞り装置でも構わない。
【0138】
また、空気調和装置400には、逆流防止装置13gを設けているが、逆流防止装置13gの代わりに、開閉装置もしくは流路の開閉を行える全閉機能を有する絞り装置等からなる第1分岐配管開閉装置を設けてもよい。そして、圧縮機10の吐出温度の過昇抑制が必要無い場合などに、第1分岐配管開閉装置と開閉装置47とが閉状態になるように制御し、第2絞り装置42を全閉とならないわずかな開度となるように制御する。これにより、バイパス配管41と補助熱交換器40とに冷媒が寝込むことを抑制できる。よって、圧縮機10の吐出温度の過昇抑制が必要となった時に、第2絞り装置42から過剰に液冷媒が圧縮機10の吸入部に流入することを防げ、過剰な液バックによる圧縮機10の破損を防ぐことができる。
【0139】
このように、
図12に示す空気調和装置400であっても、圧縮機10の吸引部へ冷媒のインジェクションが行われることにより、特殊な構造の圧縮機を使用せず安価な圧縮機を使用した場合であっても、システムの信頼性を確保することができる。また、圧縮機10の吐出温度の過昇を抑制することにより、圧縮機10を増速することが可能になり、暖房能力を確保でき、ユーザーの快適性を低減させてしまうことを抑制できる。
【0140】
また、空気調和装置400においても、必要とされる補助熱交換器40の室外機201が設置されている環境の空気と接触する面積である全伝熱面積A1(m
2)の算出方法及びサイズは、実施の形態1と同様である。
【0141】
実施の形態5.
図13は、実施の形態5に係る空気調和装置の回路構成の一例と全冷運転モード時の冷媒の流れを示す概略回路構成図である。なお、この実施の形態5では上述した実施の形態2との相違点を中心に説明するものとし、実施の形態2と同一部分には、同一符号を付している。
図13に示す、空気調和装置500の構成は、室外機501の構成が、空気調和装置200と異なっている。
【0142】
すなわち、空気調和装置500は、バイパス配管41の一端が、第1分岐配管48と、第2分岐配管49に二分岐されており、第1分岐配管48の一端が第1絞り装置45と第1逆流防止装置13cとの間の第2接続配管4bに接続され、他端が第2分岐配管49と合流し、バイパス配管41に接続されている。第2分岐配管49は、一端が圧縮機10の吐出側の流路と冷媒流路切替装置11との間の冷媒配管4に接続され、他端は、開閉装置47を介して第1分岐配管48と合流し、バイパス配管41に接続されている。なお、開閉装置47は流路の開閉を行えればよく、全閉機能を有する絞り装置でも構わない。
【0143】
空気調和装置500では、全冷房運転モード時と冷房主体運転モード時に、圧縮機10の吐出冷媒の温度上昇を抑制する際、制御装置60において第1絞り装置45が全閉状態に制御され、圧縮機10から吐出された高圧のガス冷媒の一部が第2分岐配管49と、開状態に制御された開閉装置47とバイパス配管41とを介して、補助熱交換器40に流入させるようになっている。このように、補助熱交換器40でファン16から供給される室外空気に放熱しながら高圧の過冷却液となった冷媒を、第2絞り装置42を介して圧縮機10の吸入部に流入させることにより、圧縮機10の吐出冷媒の温度を低下させることができる。
【0144】
一方、全暖房運転モード時と暖房主体運転モード時に、圧縮機10の吐出冷媒の温度上昇を抑制する際は、制御装置60において開閉装置47は閉状態に制御され、空気調和装置500のその他の動作および制御は、空気調和装置200と同様であり、空気調和装置500の回路構成としても空気調和装置200と同様の効果が得られる。
【0145】
また、空気調和装置500では、さらに、第1分岐配管48に全暖運転モード時と、暖房主体運転モード時に、補助熱交換器40に高圧のガス冷媒を流入させる際、圧縮機10から吐出された高圧のガス冷媒が、低圧の冷媒の流路である第2接続配管4bに逆流することを防ぐ逆流防止装置13gを備えている。そして、全暖房運転モード時と暖房主体運転モード時等に、制御装置60が開閉装置47を開くように制御し、第2分岐配管49から高圧のガス冷媒を補助熱交換器40に流入させることも可能な回路構成になっている。
【0146】
これにより、全暖房運転モードの起動時と暖房主体運転モードの起動時等の、第1絞り装置45において、中圧の生成が困難な場合等に、第1接続配管4aから高圧のガス冷媒を補助熱交換器40に流入させ、補助熱交換器40において、過冷却液にし、圧縮機10の吸入部に流入させることで、圧縮機10の吐出温度の過昇を抑制できる効果が得られる。なお、逆流防止装置は、冷媒の逆流を防止できればどんなものでもよく、開閉装置や全閉機能を有する絞り装置でも構わない。
【0147】
また、空気調和装置500に逆流防止装置を設ける場合は、逆流防止装置の代わりに、開閉装置もしくは流路の開閉を行える全閉機能を有する絞り装置等からなる第1分岐配管開閉装置を設けてもよい。そして、圧縮機10の吐出温度の過昇抑制が必要無い場合などに、第1分岐配管開閉装置と開閉装置47とが閉状態になるように制御し、第2絞り装置42を全閉とならないわずかな開度になるように制御することにより、バイパス配管41と補助熱交換器40とに、冷媒が寝込むことを抑制できる。よって、圧縮機10の吐出温度の過昇抑制が必要となった時に、第2絞り装置42から過剰に液冷媒が圧縮機10の吸入部に流入することを防げ、過剰な液バックによる圧縮機10の破損を防ぐことができる。
【0148】
このように、
図13に示す空気調和装置500であっても、
図5〜
図9に示す空気調和装置200と同様、冷房運転モード時及び暖房運転モード時において、補助熱交換器40及び第2絞り装置42を介して圧縮機10の吸引部へ冷媒のインジェクションが行われる。これにより、特殊な構造の圧縮機を使用せず安価な圧縮機を使用した場合であっても、システムの信頼性を確保することができる。また、圧縮機10の吐出温度の過昇を抑制することにより、圧縮機10を増速することが可能になり、暖房能力を確保でき、ユーザーの快適性を低減させてしまうことを抑制できる。
【0149】
また、空気調和装置500においても、必要とされる補助熱交換器40の室外機201が設置されている環境の空気と接触する面積である全伝熱面積A1(m
2)の算出方法及びサイズは、実施の形態1と同様である。
【0150】
なお、
図13の空気調和装置500において、実施の形態2と同様に室外機201が適用されている場合について例示しているが、
図10及び
図11に示す室外機301を適用したものであってもよい。
【0151】
本発明の実施形態は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば冷房運転モード及び暖房運転モードにおいて、吐出温度しきい値が115℃である場合について例示しているが、圧縮機10の吐出温度の限界値に応じて設定されるものであればよい。例えば圧縮機10の吐出温度の限界値が120℃の場合、吐出温度がこれを超えないように圧縮機10の動作が制御装置60により制御されている。具体的には、吐出温度が110℃を超えた場合、制御装置60は圧縮機10の周波数を低くして減速させるように制御する。したがって、上述したインジェクションを行って圧縮機10の吐出温度を下げる場合、圧縮機10の周波数を低くする温度しきい値である110℃よりも少し低い温度である100℃から110℃の間の温度(例えば105℃等)に設定することが好ましい。例えば、吐出温度が110℃で圧縮機10の周波数を低くしない場合には、インジェクションを行って下げる吐出温度しきい値が100℃から120℃の間(例えば115℃等)に設定されるようにすればよい。
【0152】
さらに、冷媒として例えばR32冷媒等のように、R32冷媒以外には、R32冷媒と、地球温暖化係数が小さく化学式がCF
3CF=CH
2で表されるテトラフルオロプロペン系冷媒であるHFO1234yf、HFO1234ze等との混合冷媒(非共沸混合冷媒)を使用してもよい。特に、冷媒としてR32を使用した場合、R410Aを使用した場合に対して、同一運転状態において、吐出温度が約20℃上昇する。このため、吐出温度を低下させる必要があり、上述したインジェクションの効果が大きい。吐出温度が高くなる冷媒を使用する場合に効果が特に大きくなる。
【0153】
また、R32冷媒とHFO1234yfとの混合冷媒においては、R32の質量比率が62%(62wt%)以上である場合に、R410A冷媒を使用した場合よりも吐出温度が3℃以上高くなる。このため、上述したインジェクションにより、吐出温度を低下させるようにする効果が大きい。また、R32とHFO1234zeとの混合冷媒においては、R32の質量比率が43%(43wt%)以上である場合に、R410A冷媒を使用した場合よりも吐出温度が3℃以上高くなる。このため、上述した空気調和装置100〜500におけるインジェクションによる吐出温度を低下させる効果が大きい。また、混合冷媒における冷媒種はこれに限るものではなく、その他の冷媒成分を少量含んだ混合冷媒であっても、吐出温度には大きな影響がなく、同様の効果を奏する。また、例えば、R32とHFO1234yfとその他の冷媒を少量含んだ混合冷媒等においても使用でき、吐出温度がR410Aよりも高くなる冷媒であれば、どんな冷媒であっても吐出温度を低下させる必要があり、同様の効果がある。
【0154】
さらに、上記実施の形態1〜5の冷媒として、CO2(R744)等の高圧側が超臨界で動作する冷媒を使用し、吐出温度を低下させる必要がある場合にも、本実施の形態の冷媒回路構成とすることにより、吐出温度を低下させることができる。
【0155】
上記実施の形態1〜5において、補助熱交換器40と熱源側熱交換器12とは、一体的に構成されている場合について例示しているが、補助熱交換器40が独立して、配置されたものであってもよい。これに限らず上側に補助熱交換器40を配置してもよい。また、補助熱交換器40がフィンの下側に形成されており、熱源側熱交換器12が伝熱フィンの上側に形成されている場合について例示しているが、補助熱交換器40が上側に形成されており、熱源側熱交換器12が下側に形成されていてもよい。
【0156】
上述の実施の形態2、3及び5の冷暖同時運転可能な空気調和装置の配管接続としては、室外機201と中継装置3の間を、2本の主管5を使用して接続した例を示しているが、これに限らず、種々の公知の手法を用いることができる。例えば、室外機1と中継装置3との間が3本の主管5を使用して接続された冷暖同時運転を実施する空気調和装置においても、上述の実施の形態2と同様に圧縮機10から吐出する高圧・高温のガス冷媒の温度の過上昇を抑制できる。
【0157】
本実施の形態の圧縮機10は、低圧シェル型の圧縮機を使用する場合を例に説明したが、例えば高圧シェル型の圧縮機を使用しても同様の効果を奏する。
【0158】
また、圧縮機10の中間圧部に冷媒を流入させる構造を有さない圧縮機を使用した場合を例に説明しているが、圧縮機の中間圧部に冷媒を流入させるインジェクションポートを備えた構造の圧縮機にも適用することができる。
【0159】
また、一般的に、熱源側熱交換器12及び負荷側熱交換器26a〜26dには、送風によって冷媒の凝縮又は蒸発を促進させる送風機が取り付けられていることが多いが、これに限るものではない。例えば負荷側熱交換器26a〜26dとして、放射を利用したパネルヒータのようなものも用いることができる。また、熱源側熱交換器12としては、水、不凍液等の液体により熱交換する水冷式のタイプの熱交換器を用いることができる。冷媒の放熱又は吸熱が行えるものであればどんなものでも用いることができる。水冷式のタイプの熱交換器を用いる場合は、例えば、補助熱交換器40として、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器などの水冷媒間熱交換器を設置し用いればよく、もしくは、制御装置60を冷却するためのファンを搭載した制御装置冷却用熱交換器を用いればよい。
【0160】
さらに、室外機1と室内機2と、または室外機1と中継装置3と室内機2の間を配管接続して冷媒を循環させる直膨式空気調和装置を例として説明を行ったが、これに限るものではない。例えば
図14に示すように、室外機1と室内機2との間に中継装置3を接続し、中継装置3内にプレート式熱交換器等の冷媒と水、ブライン等の熱媒体を熱交換させる熱交換器を負荷側熱交換器26a、26bとして備え、室内機2a〜2d側には熱交換器29a〜29dを備えたものであってもよい。そして、室外機と中継機の間Aで冷媒を循環させ、中継機と室内機2に備えられた熱交換器(負荷側熱交換器)との間Bで水、ブライン等の熱媒体を循環させて、中継装置3において冷媒と熱媒体との熱交換を行って空気調和を行う空気調和装置についても適用することができる。