特許第6038386号(P6038386)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6038386双方向非接触給電装置および双方向非接触給電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6038386
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】双方向非接触給電装置および双方向非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20161128BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20161128BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20161128BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20161128BHJP
   H02M 3/335 20060101ALI20161128BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H02J50/12
   H02J7/00 301D
   H02J7/00 S
   H02J7/00 303C
   H02M7/48 A
   H02M7/48 R
   H02M7/48 M
   H02M3/28 C
   H02M3/28 Q
   H02M3/335 E
   H02M3/155 C
   H02M3/155 P
   H02M3/155 U
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-507305(P2016-507305)
(86)(22)【出願日】2015年9月4日
(86)【国際出願番号】JP2015075159
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-58951(P2015-58951)
(32)【優先日】2015年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100088199
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 岑生
(74)【代理人】
【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(72)【発明者】
【氏名】松本 貞行
(72)【発明者】
【氏名】藪本 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝佳
【審査官】 緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−110662(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/125698(WO,A1)
【文献】 特開2014−110733(JP,A)
【文献】 特開2014−079107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00,
H02J50/00−50/90,
H02M3/00−3/44,
H02M7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他のコイルとの磁界結合によって、前記他のコイルへ送電、または前記他のコイルから受電する自己のコイルと、前記自己のコイルと直列に接続されたコンデンサとがインバータ回路における第1の入出力端に接続され、前記インバータ回路における第2の入出力端に双方向昇降圧コンバータにおける第1の入出力端が接続され、前記双方向昇降圧コンバータにおける第2の入出力端に直流電源が接続される双方向非接触給電装置であって、前記双方向昇降圧コンバータは、送電時に、前記直流電源から供給される電力を、前記直流電源の電圧以下の電圧に変換して前記インバータ回路に入力し、受電時に、前記インバータ回路から出力された電力を、前記インバータ回路の出力電圧以上の電圧に変換して前記直流電源に供給し、且つ前記インバータ回路は、帰還ダイオードを有する半導体スイッチング素子のフルブリッジ回路で構成され、前記双方向昇降圧コンバータは、受電時に、下段の昇圧動作用の半導体スイッチング素子をONにし、上段の降圧動作用の半導体スイッチング素子をOFFにした状態において、前記自己のコイルと直列に接続されたコンデンサから、前記フルブリッジ回路で構成されるインバータ回路に流れる方向の電流を正方向とし、前記自己のコイルから、前記フルブリッジ回路で構成されるインバータ回路に流れる方向の電流を負方向とした場合に、正方向に電流が流れる際には、前記フルブリッジ回路で構成されるインバータ回路の下段側の半導体スイッチング素子をON、上段側の半導体スイッチング素子をOFFにし、負方向に電流が流れる際には、前記フルブリッジ回路で構成されるインバータ回路の上段側の半導体スイッチング素子をON、下段側の半導体スイッチング素子をOFFにする制御モードを有することを特徴とする双方向非接触給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の双方向非接触給電装置を第1の双方向非接触給電装置と第2の双方向非接触給電装置として備え、前記第1の双方向非接触給電装置の自己のコイルと前記第2の双方向非接触給電装置の自己のコイルを磁気結合させたことを特徴とする双方向非接触給電システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイルによる磁界の結合を利用して、電力の送受電を行う非接触給電装置に係り、送電装置および受電装置として機能する双方向非接触給電装置および双方向非接触給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一方のコイルから他方のコイルへ、コイルが発生する磁界の結合を利用して電力を供給する非接触給電装置は、電気自動車や家電機器などへの充電手段として検討されている。近年では、コイルとコンデンサを直列あるいは並列に接続して、電力を授受するコイル間の距離が離れていても高効率で給電が行われるようになってきている。このような非接触給電は、機器への充電のための一方向の給電だけでなく、充電した機器から他の機器への放電にも利用するといった試みがなされている。
【0003】
例えば、従来の双方向非接触給電装置は、他のコイルと磁界の結合を利用して、電力の送受電を行うコイルと直列および並列にコンデンサが設けられ、直列コンデンサには並列にスイッチが、並列コンデンサには直列にスイッチが設けられている。これによりスイッチの入り切りを選択することで、コイルと直列にのみコンデンサが接続された構成や、コイルと並列にのみコンデンサが接続された構成を選択できるようになっている。そしてコイルと直列及び並列のコンデンサを接続したものが、フルブリッジインバータ回路に接続されている。フルブリッジインバータ回路は、インバータ回路からコイル側に電力を供給するときはインバータとして動作し、コイル側からインバータ回路に電力が供給されるときはダイオードブリッジとして動作する。そしてフルブリッジインバータ回路の他端は双方向昇降圧コンバータに接続され、双方向昇降圧コンバータの他端が直流電源に接続されている。双方向昇降圧コンバータは、直流電源からフルブリッジインバータ回路側へ電力を供給するときは昇圧チョッパ回路、フルブリッジインバータ回路側から直流電源へ電力を供給するときは降圧チョッパ回路として動作するように構成されている。従来の双方向非接触給電システムでは、このような構成の双方向非接触給電装置が対になって構成されている。
【0004】
そして、非接触給電を行うときは、一方の双方向非接触給電装置が送電装置、他方の双方向非接触給電装置が受電装置として動作する。送電装置として動作する場合、コイルと直列及び並列に接続されたコンデンサを選択するためのスイッチを切り替えて、コイルとコンデンサが直列に接続された構成に切り替えられる。そして双方向昇降圧コンバータは直流電源の電圧をそのままの電圧値、または必要に応じて電圧調整を行って、フルブリッジインバータ回路に入力する。直流電源からの直流電圧はフルブリッジインバータ回路によって交流に変換されて、コイルとコンデンサの直列接続に供給される。一方、受電装置として動作する場合、コイルと直列及び並列に接続されたコンデンサを選択するためのスイッチを切り替えて、コイルとコンデンサが並列に接続された構成に切り替えられる。コイルとコンデンサの並列接続が受電した電力は交流電力であり、フルブリッジインバータ回路に供給されるが、フルブリッジインバータ回路はダイオードブリッジとして動作するので、受電した交流電力が直流電力に変換され、双方向昇降圧コンバータに供給される。双方向昇降圧コンバータは受電した電力を適切な大きさの直流電圧に降圧して、負荷に供給する。充電の場合、負荷は二次電池である直流電源とすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−244635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の非接触給電装置は、コイルとインバータ回路と双方向昇降圧コンバータとを備え、コイルにはスイッチにより選択的に直列または並列にコンデンサを接続できる構成としているので、送電装置として動作する側をコイルとコンデンサの直列接続、受電装置として動作する側をコイルとコンデンサの並列接続として、受電した電力を双方向昇降圧コンバータで降圧して負荷に供給しているので、電力伝送効率が良い双方向非接触給電を実現している。
【0007】
しかし、コイルとコンデンサの接続方法をスイッチで切り替える方法は、部品数が増加し、装置の小型化に問題があるだけでなく、スイッチの寿命や信頼性に対する問題点があった。また双方向昇降圧コンバータは受電した電力を降圧して負荷に供給するといった点では役立っているが、送電装置として動作する場合、実質的には直流電源の電圧値をそのままインバータ回路に供給しているのみで、高効率な非接触給電に積極的に役立っていないといった問題点があった。すなわち実質的に受電時の降圧コンバータとしてのみ動作しているのであれば、双方向昇降圧コンバータの下段の半導体スイッチング素子が無駄であり、回路構成として最適化されていないといった問題点があった。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであって、電力伝送効率の高い双方向非接触給電装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る双方向非接触給電装置においては、他のコイルとの磁界結合によって、他のコイルへ送電、または他のコイルから受電する自己のコイルと、この自己のコイルと直列に接続されたコンデンサとをインバータ回路の第1の入出力端に接続し、インバータ回路の第2の入出力端に双方向昇降圧コンバータの第1の入出力端が接続し、双方向昇降圧コンバータの第2の入出力端に直流電源が接続される双方向非接触給電装置であって、双方向昇降圧コンバータは、送電時は、前記直流電源から供給される電力を、直流電源の電圧以下の電圧に変換してインバータ回路に入力し、受電時は、前記インバータ回路から出力された電力を、インバータ回路の出力電圧以上の電圧に変換して直流電源に供給し、且つインバータ回路は、帰還ダイオードを有する半導体スイッチング素子をフルブリッジ回路で構成され、双方向昇降圧コンバータは、受電時に、下段の昇圧動作用の半導体スイッチング素子をONにし、上段の降圧動作用の半導体スイッチング素子をOFFにした状態において、自己のコイルと直列に接続されたコンデンサから、フルブリッジ回路で構成されるインバータ回路に流れる方向の電流を正方向とし、自己のコイルから、フルブリッジ回路で構成されるインバータ回路に流れる方向の電流を負方向とした場合に、正方向に電流が流れる際には、フルブリッジ回路で構成されるインバータ回路の下段側の半導体スイッチング素子をON、上段側の半導体スイッチング素子をOFFにし、負方向に電流が流れる際には、フルブリッジ回路で構成されるインバータ回路の上段側の半導体スイッチング素子をON、下段側の半導体スイッチング素子をOFFにする制御モードで制御されるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の双方向非接触給電装置によれば、電力伝送効率が高い双方向非接触給電装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施の形態1に係る双方向非接触給電装置を示す回路図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る双方向非接触給電装置の具体的な構成を示す回路図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る双方向非接触給電装置による双方向非接触給電システムを示す回路図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る双方向非接触給電装置による他の双方向非接触給電システムを示す回路図である。
図5】この発明の実施の形態1に係る双方向非接触給電装置によるG2V給電時の双方向非接触給電システムを示す回路図である。
図6】G2V給電時の双方向非接触給電システムにおける各部電圧の実験結果を示す図である。
図7】G2V給電時の双方向非接触給電システムにおける電力伝送効率の実験結果を示す図である。
図8】この発明の実施の形態1に係るV2G給電時の双方向非接触給電システムを示す回路図である。
図9】V2G給電時の双方向非接触給電システムにおける各部電圧の実験結果を示す図である。
図10】V2G給電時の双方向非接触給電システムにおける電力伝送効率の実験結果を示す図である。
図11】この発明の実施の形態2に係る双方向非接触給電装置を示す回路図である。
図12】この発明の実施の形態2に係る双方向非接触給電装置による双方向非接触給電システムを示す回路図である。
図13】この発明の実施の形態2に係る双方向非接触給電装置による他の双方向非接触給電システムを示す回路図である。
図14】この発明の実施の形態3に係る双方向非接触給電システムにおける双方向非接触給電装置の制御状態の一部を説明するための回路図である。
図15】この発明の実施の形態3に係る双方向非接触給電システムにおける双方向非接触給電装置の制御状態の一部を説明するための回路図である。
図16】この発明の実施の形態3に係る双方向非接触給電システムにおける双方向非接触給電装置の制御状態の一部を説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳述する。なお、各図中、同一符号は、同一又は相当部分を示すものとする。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る双方向非接触給電装置を示す回路図である。双方向非接触給電装置1は、他のコイル(相手側コイルとも称す)と磁界結合して電力の授受を行う自己のコイル(自己側コイルとも称す)2と、コイル2に直列接続されたコンデンサ3と、インバータ回路4と、双方向昇降圧コンバータ5と、インバータ回路4と双方向昇降圧コンバータ5を制御する制御回路6を備えている。
【0014】
インバータ回路4は第1の入出力端41と第2の入出力端42を備えている。第1の入出力端41には交流電力が入出力され、第2の入出力端42には直流電力が入出力される。双方向非接触給電装置1が送電装置として動作するときには、第2の入出力端42に直流電力が入力され、第1の入出力端41から交流電力が出力される。一方、双方向非接触給電装置1が受電装置として動作するときには、第1の入出力端41に交流電力が入力され、第2の入出力端42から直流電力が出力される。
【0015】
双方向昇降圧コンバータ5は第1の入出力端51と第2の入出力端52を備えている。第1の入出力端51と第2の入出力端52には、ともに直流電力が入出力される。第1の入出力端51の電圧は、第2の入出力端52の電圧以下である。すなわち双方向昇降圧コンバータ5は、送電装置として動作するときには、第2の入出力端52に入力された直流電圧を降圧して、あるいはそのままの大きさの電圧で、第1の入出力端51から出力する降圧コンバータとして動作し、受電装置として動作するときには、第1の入出力端51に入力された直流電圧を昇圧して、あるいはそのままの大きさで、第2の入出力端52から出力する昇圧コンバータとして動作する。双方向昇降圧コンバータ5の第2の入出力端52には、本実施の形態の双方向非接触給電装置1の構成要素ではない直流電源7が接続される。双方向非接触給電装置1が送電装置として動作するときは、直流電源7から直流電力が入力され、受電装置として動作するときは、直流電源7に直流電力を出力する。
【0016】
インバータ回路4の第1の入出力端41にはコイル2とコンデンサ3を直列接続したものが接続され、第2の入出力端42には双方向昇降圧コンバータ5の第1の入出力端51が接続される。すなわち、インバータ回路4の第2の入出力端42の電圧と、双方向昇降圧コンバータ5の第1の入出力端51の電圧は同じ大きさの電圧になる。
【0017】
図2図1で示した双方向非接触給電装置1をより具体的に示した回路図である。なお、ここで示す回路は一例であり、同様の動作を行う回路は、図1に示す双方向非接触給電装置と同一であることは言うまでもない。
【0018】
インバータ回路4は、MOSFETやIGBTなどの半導体スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4をフルブリッジ接続したブリッジ回路で構成される。すなわち半導体スイッチング素子Q1とQ2、Q3とQ4を直列接続したものが並列接続されて構成される。そして、半導体スイッチング素子Q1とQ2の中点と、Q3とQ4の中点がともに、インバータ回路4の第1の入出力端41に接続され、半導体スイッチング素子Q1とQ3の接続点と、半導体スイッチング素子Q2とQ4の接続点がともに、インバータ回路4の第2の入出力端42に接続される。
【0019】
半導体スイッチング素子がMOSFETの場合、それぞれのMOSFETは図2に示すように帰還ダイオードを内蔵する。半導体スイッチング素子がIGBTの場合、図2のように帰還ダイオードを内蔵しているものもあるが、帰還ダイオードを内蔵していないものも存在する。帰還ダイオードを内蔵していないIGBTを用いる場合は、それぞれのIGBTの半導体スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4に並列に図2に示す方法でダイオードを設ける。
【0020】
このような構成により、インバータ回路4は、第2の入出力端42に入力された直流電力を、半導体スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4のONとOFFを制御回路6からの信号で制御することにより、交流電力に変換して第1の入出力端41から出力する。また第1の入出力端41から入力された交流電力は、半導体スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4の帰還ダイオードが構成するダイオードブリッジにより全波整流されて、直流電力に変換されて第2の入出力端42から出力される。半導体スイッチング素子がMOSFETのとき、電流が帰還ダイオードを通るタイミングで、その帰還ダイオードに対応したMOSFETをONして同期整流を行ってもよい。
【0021】
双方向昇降圧コンバータ5は、MOSFETやIGBTなどの半導体スイッチング素子Q5、Q6を直列接続した中点にリアクトルLを接続して構成される。図2に示すようにリアクトルLの他端は、第1の入出力端51に接続され、第1の入出力端51にはコンデンサC1が接続される。一方、半導体スイッチング素子Q5とQ6を直列接続したものは、第2の入出力端52に接続され、第2の入出力端52にはコンデンサC2が接続される。半導体スイッチング素子Q5とQ6が帰還ダイオードを内蔵しないIGBTの場合、IGBTの半導体スイッチング素子Q5、Q6に並列に、図2に示す方向でダイオードを設ける。半導体スイッチング素子Q5、Q6のONとOFFは制御回路6によって制御される。
【0022】
双方向非接触給電装置1が送電装置として動作するときは、双方向昇降圧コンバータ5は降圧コンバータとして動作するので、半導体スイッチング素子Q5が降圧比(第2の入出力端52に入力した電圧の大きさと、第1の入出力端51から出力される電圧の大きさの比)に応じたDuty比(ONとOFFの合計時間に対するON時間の比)で、制御回路6からの信号によりON/OFF制御される。このとき半導体スイッチング素子Q6は常時OFFであってよいが、半導体スイッチング素子Q6がMOSFETの場合、帰還ダイオードに電流が流れるタイミングで、制御回路6からの信号により半導体スイッチング素子Q6をONにして同期整流を行ってもよい。一方、双方向非接触給電装置1が受電装置として動作するときは、双方向昇降圧コンバータ5は昇圧コンバータとして動作するので、半導体スイッチング素子Q6が昇圧比(第1の入出力端51に入力した電圧の大きさと、第2の入出力端52から出力される電圧の大きさの比)に応じたDuty比で、制御回路6からの信号によりON/OFF制御される。このとき半導体スイッチング素子Q5は常時OFFであってよいが、半導体スイッチング素子Q5がMOSFETの場合、帰還ダイオードに電流が流れるタイミングで、制御回路6からの信号により半導体スイッチング素子Q5をONにして同期整流を行ってもよい。
以上のように本実施の形態の双方向非接触給電装置1は構成され、動作する。
【0023】
図3は本実施の形態の双方向非接触給電装置を2台用いた双方向非接触給電システムを示す回路図である。また図4は双方向非接触給電装置を2台用いた他の双方向非接触給電システムを示す回路図である。図3及び図4の双方向非接触給電システムは、第1の双方向非接触給電装置1aと第2の双方向非接触給電装置1bにより構成される。第1の双方向非接触給電装置1aのコイル2aと、第2の双方向非接触給電装置1bのコイル2bは、結合係数kで磁界結合している。第1の双方向非接触給電装置1aと第2の双方向非接触給電装置1bは同一の回路構成であり、図面上左右対称の構成となっている。また、インバータ回路4a、4bおよび双方向昇降圧コンバータ5a、5bは、図2に示すインバータ回路4および双方向昇降圧コンバータ5と同様に半導体スイッチング素子Q1〜Q6等によって構成されている。
【0024】
図3の双方向非接触給電システムでは、第1の双方向非接触給電装置1aの双方向昇降圧コンバータ5aの第2の入出力端には直流電源7aが接続されており、第2の双方向非接触給電装置1bの双方向昇降圧コンバータ5bの第2の入出力端には直流電源7bが接続されている。直流電源7a、7bは、例えばリチウムイオンバッテリのような充放電可能な直流電源であってよい。インバータ回路4aにはコイル2aとコンデンサ3aを直列接続したものが接続され、インバータ回路4bにはコイル2bとコンデンサ3bを直列接続したものが接続されている。
【0025】
一方、図4の双方向非接触給電システムでは、図3の直流電源7aの代わりに双方向AC/DC変換器70aが接続され、双方向AC/DC変換器70aの他端には交流電源8が接続される。双方向AC/DC変換器は第1の端子から入力された交流電力を直流電力に変換して第2の端子に出力し、第2の端子から入力された直流電力を交流電力に変換して第1の端子に出力する電力変換器である。すなわち、双方向AC/DC変換器70aの第2の端子は直流電力の入出力が行えるので、第1の双方向非接触給電装置1aからすれば直流電源と同一であり、従って、本発明で言う直流電源には図4の双方向AC/DC変換器70aのような直流電力を入出力する装置も含む。
【0026】
また図4の双方向非接触給電システムでは、図3の直流電源7bの代わりに双方向DC/DC変換器70bが接続され、双方向DC/DC変換器70bの他端にはリチウムイオンバッテリのような充放電可能な直流電源9が接続される。図4の双方向DC/DC変換器70bは、第1の端子から入力された直流電力を降圧または昇圧して電圧値を変化させて第2の端子に出力し、第2の端子から入力された直流電力を昇圧または降圧して電圧値を変化させて第1の端子に出力する電力変換器である。すなわちDC/DCコンバータである。リチウムイオンバッテリの充放電には専用の充放電装置を設けることがあるが、このような場合、本発明で言う直流電源には充放電装置、すなわち図4の双方向DC/DC変換器70bのような直流電力を入出力する装置も含む。
【0027】
第1の双方向非接触給電装置1aと第2の双方向非接触給電装置1bはそれぞれ別体の装置であるから、これらを搭載する機器は、それぞれ独立して使用可能である。コイル2aとコイル2bの結合係数kは、互いのコイルの位置関係によって変化するため、双方向非接触給電を行うためにそれぞれの双方向非接触給電装置が設置されたときの状態によって変化する。結合係数kは0〜1の係数であり、結合係数kが最も大きくなるように、それぞれの双方向非接触給電装置が設置されるのが電力伝送効率を高くするためには望ましいが、厳密に位置合わせをするのは使用者にストレスを与えるなど不都合になる場合も多く、一般的には結合係数kは最大の係数よりも小さくなる。このような結合係数kが最大の係数よりも小さい状態を「位置ずれ」と呼ぶ。これはコイル2aと2bの位置が理想的な位置からずれていることを意味する。
【0028】
次に図3の双方向非接触給電システムの動作について説明する。第1の双方向非接触給電装置1aが送電装置として動作し、第2の双方向非接触給電装置1bが受電装置として動作する場合について説明する。なお、上述のように双方向非接触給電装置1aと1bは同一の回路構成であるから、第1の双方向非接触給電装置1aを受電装置、第2の双方向非接触給電装置1bを送電装置として動作させることで、ここでの説明と逆方向の給電が行え、双方向の給電が可能になるので、第1の双方向非接触給電装置1aを受電装置、第2の双方向非接触給電装置1bを送電装置として動作させる場合の詳細な説明は省略する。
【0029】
双方向非接触給電装置1aのコイル2aと双方向非接触給電装置1bのコイル2bが結合係数kで磁界結合して給電が可能な状態に設置されると、無線通信によって互いに送受電が可能な状態であることが確認される。すると送電装置である双方向非接触給電装置1aのインバータ回路4aが、例えば85kHzなど所定のスイッチング周波数でスイッチングを開始し、インバータ回路4aの第2の入出力端に入力された直流電力を交流電力に変換して、インバータ回路4aの第1の入出力端から出力する。送電側の双方向昇降圧コンバータ5aは、第2の入出力端に直流電源7aが接続されているが、送電開始時には上段と下段の両方の半導体スイッチング素子がOFFとされており、第1の入出力端からの出力電圧は0Vとなっている。そして双方向昇降圧コンバータ5aの上段の半導体スイッチング素子がスイッチングを開始し、双方向昇降圧コンバータ5aの第1の入出力端に直流電圧が出力されるようになり、この直流電圧はインバータ回路4aの第2の入出力端に入力される。
【0030】
双方向昇降圧コンバータ5aは送電時には降圧コンバータとして動作するので、下段の半導体スイッチング素子はOFFのままであるが、上段の半導体スイッチング素子のDuty比(ON時間とOFF時間の合計に対するON時間の比率)は、送電の開始時には0から徐々に大きくしてソフトスタートさせるのがよい。このときインバータ回路4aの第1の入出力端からコイル2aに出力される電流が過大にならないように、電流を検出しながら上限値を設けて、上限値を超えるようなときは、降圧コンバータである双方向昇降圧コンバータ5aの第1の入出力端から出力される電圧が上昇しないように、双方向昇降圧コンバータ5aの上段の半導体スイッチング素子のDuty比を大きくするのを待機させるとよい。
【0031】
インバータ回路4aのDuty比も制御回路6aからの信号により制御することができるため、状況に応じてDuty比を制御しても良いが、Duty比を小さくするとインバータ回路4aの半導体スイッチング素子のスイッチング損失が増加するので、インバータ回路4aのDuty比は最大、すなわち50%とするのが最も良い。
【0032】
そして、双方向昇降圧コンバータ5aは、第2の入出力端で計測される電力、すなわち入力電力が送電電力の指示値で一定になるように、双方向昇降圧コンバータ5aの上段の半導体スイッチング素子のDuty比をフィードバック制御される。なお、送電電力の指示値とは、外部から送電装置である双方向非接触給電装置1aに指示される送電電力の値であるが、ここでいう外部は、受電装置である双方向非接触給電装置1bからの要求であったり、使用者からの指示値であったりする。すなわち送電装置である双方向非接触給電装置1aは送電すべき電力値を認識しており、双方向昇降圧コンバータ5aに入力される電力が送電すべき電力値で一定になるように制御される。
【0033】
一方、受電装置である双方向非接触給電装置1bはコイル2bがコイル2aと結合係数kで磁界結合しているので、コイル2bには交流電流が流れる。この交流電流の周波数は送電装置側のインバータ回路4aのスイッチング周波数と同一になる。コイル2bに交流電流が流れることにより、受電装置である双方向非接触給電装置1bに交流電力が非接触給電される。双方向非接触給電装置1bは受電装置であるので、インバータ回路4bの半導体スイッチング素子は全てOFFとなっており、インバータ回路4bはダイオードブリッジとして動作する。従って、コイル2bで受電した交流電力はインバータ回路4bで直流電力に変換され、インバータ回路4bの第2の入出力端から出力され、双方向昇降圧コンバータ5bに供給される。
【0034】
受電装置として動作する場合、双方向昇降圧コンバータ5bは昇圧コンバータとして動作するので、双方向昇降圧コンバータ5bの上段の半導体スイッチング素子はOFFのままである。一方、下段の半導体スイッチング素子は給電の開始時はON(Duty比100%)であり、徐々にDuty比を小さくするように制御される。送電側と受電側の両方ともコイルとコンデンサを直列に接続した非接触給電システムはイミタンス変換器の特性を有することが知られている。イミタンス変換器とは、入力電圧が一定のとき出力電流が一定になり、入力電流が一定のとき出力電圧が一定になる特性をいう。
【0035】
本実施の形態で述べる給電システムもイミタンス変換器の特性を有することから、受電コイルから後段を見たインピーダンスがZのとき、送電側のインバータ回路から見たインピーダンスはZに反比例する。すなわち給電の開始時に双方向昇降圧コンバータ5bの下段の半導体スイッチング素子をON(Duty比100%)とすることで、受電側のコイル2bから後段を見たインピーダンスZは非常に小さくなり、送電側のインバータ回路4aから見たインピーダンスはZに反比例するので、非常に大きくなる。この結果、送電側のインバータ回路4aに突如直流電圧が入力されても、大きな電流が流れるのを抑制するので安全に給電開始を行うことができる。
【0036】
そして、受電側の双方向昇降圧コンバータ5bの下段の半導体スイッチング素子のDuty比を徐々に小さくしていくことによって、受電側のコイル2bから後段を見たインピーダンスZが徐々に大きくなり、送電側のインバータ回路4aから見たインピーダンスが徐々に小さくなるので、徐々に入力される電力が大きくなっていく。このようにして非接触給電のソフトスタートが行われる。そして送電電力が、送電電力の指示値になると、双方向昇降圧コンバータ5bの第2の入出力端の電力、すなわち双方向昇降圧コンバータ5bから出力される電力が最大となるように、双方向昇降圧コンバータ5bの下段の半導体スイッチング素子のDuty比が制御される。このときの制御法には山登り法を用いることができる。このような送電側と受電側の制御を行うことにより、双方向非接触給電システム全体として最も効率が高くなる条件で給電を行うことができ、自動的に最も効率が高くなる条件で動作させることができる。
【0037】
次に双方向非接触給電システムの試作機による実験結果を用いて説明する。図5は実験に用いた双方向非接触給電システムの回路図である。図5の双方向非接触給電システムは図3の双方向非接触給電システムと同じであるが、実験では受電側のリチウムイオンバッテリである直流電源7bの代わりに、直流電源と等価抵抗が同じ抵抗器(電子負荷装置)71bを用いた。従って図5では送電側と受電側を入れ替えるときには、送電側の直流電源7aと受電側の抵抗器71bも入れ替えて行った。
【0038】
本実施の形態の双方向非接触給電装置は、双方向昇降圧コンバータの第2の入出力端に直流電源が接続されるものであるが、ここで言う「接続される」とは接続され得ることを意味し、必ず接続されていることを意味するものではない。従って、ここで示す実験のように、送電側と受電側を入れ替えるときに、電力供給源である直流電源7aと負荷である抵抗器71bを入れ替えても、本発明の双方向非接触給電装置である。すなわち双方向非接触給電装置は、送電装置にもなり受電装置にもなるが、送電装置のときに電力供給源である直流電源が備わっていないと、そもそも送電装置として機能しないので、双方向昇降圧コンバータの第2の入出力端に直流電源が接続されることが決して無いものは、本発明の双方向非接触給電装置には含まれない。
【0039】
また図5で、V1〜V4で示した記号は電圧センサなどの電圧検出手段であり、I1〜I4で示した記号は電流センサなどの電流検出手段である。電圧センサ及び電流センサで検出した電圧値と電流値は制御回路6a、6bに入力され、双方向非接触給電装置1a、1bの制御に利用される。上述の説明で、送電装置は双方向昇降圧コンバータ5aに入力される電力を一定に制御すると記載したが、これは図5の電圧センサのV1と電流センサのI1を演算して求めた電力を一定に制御することを意味している。同様に、受電装置は双方向昇降圧コンバータ5bから出力される電力が最大になるように山登り法で制御されると記載したが、これは図5の電圧センサのV3と電流センサのI3を演算して求めた電力が最大になるように山登り制御することを意味している。さらにインバータ回路4aから出力されコイル2aに流れる電流は電流センサI2によって検出され制御回路6aによって、インバータ回路4aから出力される電流が過大にならないように制御される。インバータ回路と双方向昇降圧コンバータの接続部の電圧、すなわち電圧センサのV2とV4により検出した電圧値については上述の説明では用いていないが実験結果を説明するために必要であるので記した。
【0040】
実験は一方の直流電源7aの電圧が219V一定で、他方の直流電源7bの電圧が139〜214Vまで変化するリチウムイオンバッテリを直流電源7bとして用いたシステムで、最大1kWの双方向給電を行うシステムを仮定して行った。これは電気自動車と系統電源(商用交流電源)に接続されたパワーコンディショナとの間で双方向の非接触給電を仮定したものであり、実際のシステムでは最大3kWの給電を想定しているが、実験は原理検証のためのものであり、最大1kWとした。なお、実際の実験ではパワーコンディショナの代わりに直流電源装置、リチウムイオンバッテリの代わりに抵抗器(電子負荷装置)71bを使用している。実験に用いた最大1kWの試作機は、実際の3kWのシステムと負荷の等価抵抗が同じになるように設計したものである。
【0041】
以下の説明では便宜上、給電の方向を示すために、G2V給電、V2G給電という用語を用いる。G2V給電とは、電圧が219V一定の直流電源から、電圧が139〜214Vまで変化するリチウムイオンバッテリへの給電に相当し、系統電源(Grid)から電気自動車(Vehicle)への給電であるので、Grid to Vehicleと呼び、略してG2Vと記す。図5では図面左から右への給電に相当する。一方、V2G給電とは、電圧が139V〜214Vまで変化するリチウムイオンバッテリから、電圧が219V一定の直流電源への給電に相当し、電気自動車(Vehicle)から系統電源(Grid)への給電であるので、Vehicle to Gridと呼び、略してV2Gと記す。図5では図面右から左への給電に相当する。ただし、先述のようにV2Gの給電は図5の直流電源7aと抵抗器71bを入れ替えて、直流電源7aを抵抗器71b側(右側に配置)とし、抵抗器71bを直流電源7a側(左側に配置)としている。
【0042】
G2V給電で、電圧が139〜214Vまで変化するリチウムイオンバッテリに1kWの電力で充電するときの、バッテリの等価抵抗は19.3〜45.8Ωであるから、抵抗器71bがリチウムイオンバッテリを模擬するときは、抵抗器(電子負荷装置)71bの抵抗を19.3〜45.8Ωを超える範囲で変化させた。一方、逆方向のV2G給電のときは、リチウムイオンバッテリの電圧は最小139V、最大214Vであるとして、この2つの電圧について実験を行い、受電側の電圧は219V一定であるとした。
【0043】
また逆方向のV2G給電では、受電側(電圧219V一定のGrid側)に機器が接続され、その機器が必要とする消費電力が0.167〜1kWの範囲で変化すると仮定して、送電電力(Vehicle側)を変化させた。試作機は上述の通りの制御を行うものであり、制御回路によって送電側、受電側双方の双方向昇降圧コンバータのDuty比は自動制御されている。
【0044】
図6図5で記した電圧検出手段(電圧センサ)のV1〜V4の各部電圧を示す実験結果である。コイルの位置ずれを想定して、コイル2aとコイル2bの結合係数kをk=0.23、k=0.15、k=0.1の3種類に変化させて行った。図6(a)は送電側(Grid側)の双方向昇降圧コンバータ5aの第2の入出力端の電圧V1と第1の入出力端の電圧V2を示す実験結果であり、図6(b)は受電側(Vehicle側)の双方向昇降圧コンバータ5bの第1の入出力端の電圧V4と第2の入出力端の電圧V3を示す実験結果である。送電電力、すなわち双方向昇降圧コンバータ5aの入力電力は1kW一定である。
【0045】
図6(a)に示すように電圧V1は直流電源7aの電圧であるから、全ての結合係数kにおいて219V一定であるが、双方向昇降圧コンバータ5aの電圧(出力電圧)V2は、結合係数k=0.23では負荷抵抗の大きさによって変化しているが、k=0.15とk=0.1では負荷抵抗の変化に寄らずほぼ一定となっている。ただしV2の大きさは、k=0.15とk=0.1では異なっており、k=0.15の方が大きな電圧になっている。ただし、k=0.1〜0.23のいずれの場合においても、送電側の双方向昇降圧コンバータ5aが降圧コンバータとして動作しているので、双方向昇降圧コンバータ5aは、直流電源7aから供給される電力を、直流電源7aの電圧値以下の電圧に変換して、インバータ回路4aに入力している。
【0046】
図6(b)では双方向昇降圧コンバータ5bの第2の入出力端の電圧V3、すなわち抵抗器71bに出力される電圧V3は、結合係数kの大きさにより多少の差はあるが、負荷抵抗の大きさに対してほぼ一定の関係になるように変化している。これは送電電力が1kW一定であり、負荷抵抗の大きさが決まっているから、負荷抵抗の端子電圧は、電力と抵抗値の積の平方根で定まるためである。ただし、電力は負荷抵抗の消費電力であるから、システムの損失分だけ入力電力より小さくなっており、従って、結合係数kが小さいほどシステムの損失が大きくなるので、電圧V3も結合係数kが小さいほど低くなっている。
【0047】
一方、双方向昇降圧コンバータ5bの第1の入出力端の電圧V4は、結合係数k=0.23では、第2の入出力端の電圧V3の電圧より僅かに大きくなっているが、結合係数k=0.15とk=0.1では、負荷抵抗の大きさによらずほぼ一定で、第2の入出力端の電圧V3より小さい電圧になっている。
【0048】
受電装置となるとき双方向昇降圧コンバータは昇圧コンバータとして動作するが、k=0.23のとき双方向昇降圧コンバータ5bはスイッチング動作を行っておらず、双方向昇降圧コンバータ5bの第1の入出力端に入力された直流電力が、そのまま第2の入出力端に出力される。このとき双方向昇降圧コンバータ5bの上段の半導体スイッチング素子の帰還ダイオードを通過するため、帰還ダイオードの順方向電圧の分だけ、電圧が低下する。すなわちk=0.23のときのV3とV4の差は帰還ダイオードの順方向電圧による電圧降下によるものである。しかしダイオードの順方向電圧はシステム全体の電圧からすれば非常に小さく、双方向昇降圧コンバータ5bはスイッチング動作を行っていないから、実質的には双方向昇降圧コンバータ5bに入力される電圧と出力される電圧は同一の電圧値であるとして差し支えない。これは同様に配線などの電気抵抗による電圧降下なども無視してよいことを言及するものである。
【0049】
すなわち、双方向昇降圧コンバータは入力された電圧を、入力された電圧以上の電圧に変換して出力するというときには、双方向昇降圧コンバータがスイッチング動作をしておらず、厳密にはダイオードの順方向電圧や配線の電気抵抗による電圧降下のために、双方向昇降圧コンバータの出力電圧が入力電圧より僅かに小さくなっていても、本実施の形態では「以上」に含まれるものと解釈すべきである。すなわち図6(b)の実験結果から全ての結合係数kにおいて、受電側の双方向昇降圧コンバータ5bは、インバータ回路4bから出力された電力を、インバータ回路4bの出力電圧以上の電圧に変換して直流電源であるリチウムイオンバッテリに相当する抵抗器(電子負荷装置)71bに供給している。
【0050】
図7図6で示した実験結果の実験による電力伝送効率を示した実験結果である。電力伝送効率は、図5の直流電源7aの出力電力と抵抗器71bの消費電力の比から算出したものである。全ての負荷抵抗の範囲において、k=0.1で82%以上、k=0.15で86%以上、k=0.23で88%以上を得ており、k=0.23の30〜40Ωでは90%以上を得ている。図7の実験結果が示すように本実施の形態の双方向非接触給電装置を用いることによって、電力伝送効率の高い双方向非接触給電システムを得ることができる。
【0051】
次に逆方向の給電であるV2G給電の場合の実験結果について述べる。図8は逆方向の給電を行うときの双方向非接触給電システムの回路図である。図8の回路図は図5の回路図において直流電源と抵抗器を入れ替えたものであり、その他は図5と同一である。図8では出力電圧が139V〜214Vまで変化するリチウムイオンバッテリに相当する直流電源7bから、入力電圧が219V一定のパワーコンディショナに相当する抵抗器71aへの給電を行うものである。直流電源7bの電圧値は最大値の214Vと最小値の139Vの2種類で実験を行い、抵抗器71aの消費電力は0.167kW〜1kWの範囲で変化するとした。図8のV2G給電では、第2の双方向非接触給電装置1bが送電装置として動作し、第1の双方向非接触給電装置が受電装置として動作する。
【0052】
図9は直流電源7bの電圧が214Vと139Vのときの実験結果を示す図である。実験結果は上述のG2V給電と同様に、各条件で電力伝送効率が最大となるように制御回路6aと6bが自動制御で双方向昇降圧コンバータ5aと5bのスイッチングを制御したときに得られた各部の電圧である。
【0053】
図9(a)は直流電源7bの電圧が214Vのときの送電装置である第2の双方向昇降圧コンバータ5bの第2の入出力端の電圧V3と第1の入出力端の電圧V4を示したもので、図9(b)は受電装置である第1の双方向昇降圧コンバータ5aの第1の入出力端の電圧V2と第2の入出力端の電圧V1を示したものである。図9(c)は同様に直流電源7bの電圧が134Vのときの電圧V3、V4、図9(d)は同様に直流電源7bの電圧が134Vのときの電圧V2、V1を示したものである。
【0054】
図9(a)と図9(c)は送電側の双方向昇降圧コンバータ5bの電圧(入力電圧)V3と電圧(出力電圧)V4を示すものであるが、図から分かるように、送電側の双方向昇降圧コンバータ5bは、直流電源7bから供給される電力を、直流電源7bの電圧V3以下の電圧V4に変換して出力し、インバータ回路4bに入力している。また図9(b)と図9(d)は受電側の双方向昇降圧コンバータ5aの電圧(入力電圧)V2と電圧(出力電圧)V1を示すものであるが、図から分かるように、受電側の双方向昇降圧コンバータ5aは、ダイオードブリッジとして動作しているインバータ回路4aから出力された電力を、インバータ回路4aの電圧(出力電圧)V2以上の電圧V1に変換して直流電源に相当する抵抗器71aに供給している。なお、結合係数が小さいほど、送電側の双方向昇降圧コンバータ5bではより低い電圧に変換して送電し、受電側の双方向昇降圧コンバータ5aではより高い電圧に変換して受電している。
【0055】
図10図9の実験結果で示したV2G給電のときの電力伝送効率を示したものである。直流電源7bの電圧が214Vのときの結果を実線で、139Vのときの結果を破線で示した。図10が示すように本実施の形態の双方向非接触給電装置を用いた双方向非接触給電システムによれば、V2G給電においても高い電力伝送効率で電力伝送を行うことができることが分かる。
【0056】
以上の実験結果で述べたように、本実施の形態の双方向非接触給電装置を用いた双方向非接触給電システムは、G2V給電、V2G給電の両方での非接触給電を行っており、双方向非接触給電を高い電力伝送効率で行えることが分かる。すなわち本発明の双方向非接触給電装置により電力伝送効率が高い双方向非接触給電システムを得ることができるといった効果が得られる。また特許文献1で記された双方向非接触給電装置のようにコイルに直列接続と並列接続された2個のコンデンサと、接続方法を切り替えるスイッチを設ける必要が無いので、装置を小型化でき、信頼性の高い双方向非接触給電装置を得ることができるといった効果が得られる。
【0057】
実施の形態2.
図11はこの発明の実施の形態2に係る双方向非接触給電装置を示す回路図である。本実施の形態2の双方向非接触給電装置1は、実施の形態1とはインバータ回路4が異なり、ハーフブリッジ回路によってインバータ回路4が構成されている。
【0058】
図11の双方向非接触給電装置1のインバータ回路4は、実施の形態1で示した図2の双方向非接触給電装置1のインバータ回路4と異なり、図2の半導体スイッチング素子Q3、Q4の代わりにコンデンサC3、C4が設けられている点で異なる。すなわち図11のインバータ回路4は半導体スイッチング素子Q1とQ2を直列に接続したものと、コンデンサC3とC4が直列に接続されたものが、並列に接続され、半導体スイッチング素子Q1とQ2の中点と、コンデンサC3とC4の中点が、インバータ回路4の第1の入出力端41に接続されている。このような回路構成はハーフブリッジ回路と呼ばれる。
【0059】
送電装置として動作するとき、ハーフブリッジ回路で構成されたインバータ回路4は、Duty比が最大の50%の場合、第2の入出力端42に入力された電圧の1/2の平均電圧が、第1の入出力端41から出力される。一方、受電装置として動作するときは、半導体スイッチング素子Q1、Q2はOFFであり、帰還ダイオードによって全波整流されるが、図11の構成は倍電圧整流回路の構成となっているので、第1の入出力端41に入力された平均電圧の2倍の電圧が第2の入出力端42から出力される。
【0060】
本実施の形態の双方向非接触給電装置は、送電装置として動作するときは、入力された直流電力の電圧を降圧して交流に変換してコイルに供給している。また受電装置として動作するときは、コイルで受電した交流電力を直流に変換し、昇圧して負荷に相当する直流電源に供給している。ハーフブリッジ回路は送電時には電圧を降圧する作用を行い、受電時には電圧を昇圧する作用を行うので、本発明の動作概念に合致するものである。
【0061】
このため、本実施の形態のようにインバータ回路4がハーフブリッジ回路で構成されるときには、双方向昇降圧コンバータ5での送電時の降圧比、受電時の昇圧比を大きくする必要が無く、双方向昇降圧コンバータ5のスイッチング損失を低減することができる。ただし、ハーフブリッジ回路はフルブリッジ回路に比べ、電力容量が小さくなるので、本実施の形態2の双方向非接触給電装置は、小型の双方向非接触給電装置に適している。
【0062】
図12図11で示した双方向非接触給電装置1を2台用いた双方向非接触給電システムを示す回路図である。双方向非接触給電装置1aのコイル2aと、双方向非接触給電装置1bのコイル2bが結合係数kで磁界結合することによって、双方向非接触給電装置1aから双方向非接触給電装置1bに電力を給電したり、逆に双方向非接触給電装置1bから双方向非接触給電装置1aに電力を給電したりすることができる。なお、インバータ回路4a、4bおよび双方向昇降圧コンバータ5a、5bは、図11に示すインバータ回路4および双方向昇降圧コンバータ5と同様に半導体スイッチング素子Q1、Q2、Q5、Q6等によって構成されている。
【0063】
この場合も、実施の形態1に示したように、各双方向昇降圧コンバータ5a、5bは送電時には降圧コンバータとして動作し、受電時には昇圧コンバータとして動作する。すなわち双方向昇降圧コンバータ5a、5bは実施の形態1で述べたように動作する。
【0064】
図13は実施の形態2の双方向非接触給電装置と実施の形態1の双方向非接触給電装置を用いた双方向非接触給電システムを示す回路図である。双方向非接触給電装置1aはインバータ回路4aがハーフブリッジ回路で構成されており、双方向非接触給電装置1bはインバータ回路4bがフルブリッジ回路で構成されている。なお、インバータ回路4a、双方向昇降圧コンバータ5aは、図11に示すインバータ回路4および双方向昇降圧コンバータ5と同様に半導体スイッチング素子Q1、Q2、Q5、Q6等によって構成されており、また、インバータ回路4b、双方向昇降圧コンバータ5bは、図2に示すインバータ回路4および双方向昇降圧コンバータ5と同様に半導体スイッチング素子Q1〜Q6等によって構成されている。
【0065】
図13に示すように回路構成が異なる双方向非接触給電装置を組み合わせた双方向非接触給電システムであっても、双方向の非接触給電が可能であり、この場合も上述したように、双方向昇降圧コンバータ5a、5bは、送電装置として動作するときには降圧コンバータとして動作し、受電装置として動作するときには昇圧コンバータとして動作する。
【0066】
実施の形態3.
図14図16はこの発明の実施の形態3に係る非接触給電システムにおける双方向非接触給電装置の制御状態を説明するための回路図であって、この発明の双方向非接触給電装置が有する緊急時の制御を説明したものである。各図は双方向非接触給電装置の各半導体スイッチング素子の制御状態を示している。なお、回路構成は、図3に示した実施に形態1に係る双方向非接触給電装置による双方向非接触給電システムと同様である。
【0067】
図14に示す状態は同図右側の第2の双方向非接触給電装置1bが受電動作を行っている。図14に示した矢印方向(正方向ともいう)にコイル2b、コンデンサ3b、インバータ回路4bに電流が流れているとき、フルブリッジ回路で構成されたインバータ回路4bの両レグの下段側の半導体スイッチング素子である半導体スイッチング素子Q2、Q4をON、上段側の半導体スイッチング素子である半導体スイッチング素子Q1、Q3をOFFにし、双方向昇降圧コンバータ5bの下段の昇圧動作用の半導体スイッチング素子Q6をON、上段の降圧動作用の半導体スイッチング素子Q5をOFFにする。
【0068】
また図15に示した矢印方向(負方向ともいう)に電流が流れているとき、フルブリッジ回路で構成されたインバータ回路4bの両レグの上段側の半導体スイッチング素子である半導体スイッチング素子Q1、Q3をON、下段側の半導体スイッチング素子である半導体スイッチング素子Q2、Q4をOFFにし、双方向昇降圧コンバータ5bの下段の昇圧動作用の半導体スイッチング素子Q6をON、上段の降圧動作用の半導体スイッチング素子Q5をOFFにする。
【0069】
この発明の双方向非接触給電装置は特定のタイミングにおいて上記の制御モードに移行する。この制御モードが必要な場合とその効果について説明する。
非接触給電装置においては、送電側と受電側が有線接続されていないので、問題発生時の速やかな電力遮断に課題がある。
例えば、受電側の異常時には、受電側から送電側に電力を停止するよう無線通信で要求し、受電側ではその通信を受け取った後、送電側の電力供給は停止あるいは減少される。
非接触給電装置においては送電側と受電側において無線通信を用いているので、受電側の電力遮断要求から、実際の電力遮断までの間に、受電側の回路が破損してしまう恐れがある。
また同様に送電側の異常時や通信エラーなどで、受電側に過大な電力が生じて破損してしまう恐れがある。
本実施の形態3による制御モードである保護制御モードは、双方向非接触給電装置が受電動作時に過大な電力による破損を回避するのに効果がある。
【0070】
実施の形態1で述べたように、電力の受電を行うコイルとコンデンサが直列に接続された構成のため、送電側のインバータ回路から見たインピーダンスは、受電コイルから見たインピーダンスに反比例する。したがって、受電動作時の双方向非接触給電装置において、受電を開始する時に、その双方向昇降圧コンバータの昇圧動作用の半導体スイッチング素子Q6のON時のDuty比を100%にすることにより、送電側のインバータの出力インピーダンスを大きくすることが出来る。図16にその状態を示す。
つまり、通信指令なしに、受電側の動作のみで、強制的に送電電力を下げることが出来る。
またこの動作により、バッテリへの電流の流れがなくなるので、双方向非接触給電装置後段の回路、バッテリなどへの過大な電力供給も防ぐ事ができる。
ただし、双方向昇降圧コンバータ5bの半導体スイッチング素子Q6のON動作のみの場合、送電側から引き続き電力が供給された場合、インダクタンス等のパラメータによっては、昇圧リアクトル(図2におけるリアクトルLに相当)と半導体スイッチング素子Q6に過大な電流が流れる可能性がある。
このとき流れる電流値を減少させるためには、双方向昇降圧コンバータ前段のコンデンサ(図2におけるコンデンサC2に相当)の電圧を減少させる必要があり、ダイオードブリッジとして機能しているインバータ回路からの電流流入を止める必要がある。
ここで図14図15に示したように電流の向きに合わせて、インバータ回路の半導体スイッチング素子をON・OFFすることで、インバータ回路内で電流がループするようにすることで、双方向昇降圧コンバータの方向に電流が流入するのを防ぐことが出来る。
またこのときも受電コイルからみたインピーダンスは小となるので、送電側のインバータ回路からみた出力インピーダンスは大となり、電力を強制的に減少させる効果がある。
【0071】
上記のようにインバータ回路と双方向昇降圧コンバータのスイッチング動作を組み合わせることにより、異常発生時にも送電側の電力を強制的に通信なしで減少させることができ、また過大な電圧電流による破損リスクを低減させることが出来る。
【0072】
この発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変更、省略することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、1a、1b 双方向非接触給電装置、2、2a、2b コイル、3、3a、3b コンデンサ、4、4a、4b インバータ回路、41 インバータ回路の第1の入出力端、42 インバータ回路の第2の入出力端、5、5a、5b 双方向昇降圧コンバータ、51 双方向昇降圧コンバータの第1の入出力端、52 双方向昇降圧コンバータの第2の入出力端、6、6a、6b 制御回路、7、7a、7b 直流電源
【要約】
簡単な構成で、電力伝送効率の高い双方向非接触給電装置を得る。他のコイルとの磁界結合によって電力の授受を行うコイル(2)を備え、コイル(2)とコンデンサ(3)が直列接続されインバータ回路(4)の入出力端に接続される双方向非接触給電装置(1)であって、インバー回路(4)と直流電源(7)との間に双方向昇降圧コンバータ(5)が接続されている。
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