(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の実施形態の一例を説明する。
図1に示す内視鏡リプロセッサ1は、内視鏡に対して、再生処理を施す装置である。ここでいう再生処理とは特に限定されるものではなく、水によるすすぎ処理、有機物等の汚れを落とす洗浄処理、所定の微生物を無効化する消毒処理、全ての微生物を排除もしくは死滅させる滅菌処理、またはこれらの組み合わせ、のいずれであってもよい。
【0011】
本実施形態では一例として、内視鏡リプロセッサ1が行う再生処理には、消毒液である薬液11を用いた消毒処理が含まれる。内視鏡リプロセッサ1は、制御部2、電源部3、処理槽4、薬液タンク10、濃度測定室20、および濃度計30を含む。
【0012】
制御部2は、演算装置(CPU)、記憶装置(RAM)、補助記憶装置、入出力装置および電力制御装置等を具備して構成されており、内視鏡リプロセッサ1を構成する各部位の動作を、所定のプログラムに基づいて制御する構成を有していてもよい。以下の説明における内視鏡リプロセッサ1に含まれる各構成の動作は、特に記載がない場合であっても制御部2によって制御される。
【0013】
電源部3は、内視鏡リプロセッサ1の各部位に電力を供給する。本実施形態では一例として、電源部3は、商用電源等の外部から得た電力を各部位に分配する。なお、電源部3は、発電装置やバッテリーを備えていてもよい。
【0014】
処理槽4は、開口する開口部を有する凹形状であり、内部に液体を貯留することが可能である。処理槽4内には、図示しない内視鏡を配置することができる。処理槽4の上方の開口は、蓋によって閉じることができる構成であってもよい。処理槽4内には、薬液ノズル5a、および排液口4cが設けられている。
【0015】
薬液ノズル5aは、薬液管路5を介して薬液タンク10に連通する開口部である。薬液タンク10は、薬液11を貯留する。薬液タンク10が貯留する薬液11の種類は特に限定されるものではないが、前述のように本実施形態の薬液11は消毒処理に用いられる過酢酸等の消毒液である。なお、薬液11は、洗浄処理に用いられる洗浄液等であってもよい。薬液管路5には、薬液ポンプ5bが設けられている。薬液ポンプ5bを運転することにより、薬液タンク10内の薬液11が、処理槽4内に移送される。
【0016】
排液口4cは、処理槽4内の最も低い箇所に設けられた開口部である。排液口4cは、排出管路9に接続されている。排出管路9は、排液口4cと切り替えバルブ7とを連通している。切り替えバルブ7には、回収管路8および廃棄管路9aが接続されている。切り替えバルブ7は、排出管路9を閉塞した状態、排出管路9と回収管路8とを連通した状態、または排出管路9と廃棄管路9aとを連通した状態、に切り替え可能である。
【0017】
回収管路8は、薬液タンク10と切り替えバルブ7とを連通している。また、廃棄管路9aには排出ポンプ9bが設けられている。廃棄管路9aは、内視鏡リプロセッサ1から排出される液体を受け入れるための排液設備に接続される。
【0018】
切り替えバルブ7を閉状態とすれば、処理槽4内に液体を貯留することができる。また、処理槽4内に薬液11が貯留されている時に、切り替えバルブ7を排出管路9と回収管路8とが連通した状態とすれば、薬液11が処理槽4から薬液タンク10に移送される。また、切り替えバルブ7を排出管路9と廃棄管路9aとが連通した状態とし、排出ポンプ9bの運転を開始すれば、処理槽4内の液体が廃棄管路9aを経由して排液設備に送出される。
【0019】
また、処理槽4内には、循環口4bおよび循環ノズル6aが設けられている。循環口4bと循環ノズル6aとは、循環管路6を介して連通している。循環管路6には、循環ポンプ6bが設けられている。
【0020】
循環ポンプ6bの運転を行うことにより、処理槽4内の液体は、循環口4bから吸い出された後に、循環管路6および循環ノズル6aを経由して処理槽4内に戻る。内視鏡リプロセッサ1は、処理槽4内に内視鏡を収容し、処理槽4に貯留した薬液11を循環させることによって、内視鏡に対する消毒処理等を実行する。
【0021】
薬液タンク10には、薬液導入口10a、薬液排出口10dおよび水位計10fが設けられている。薬液導入口10aは、薬液タンク10に設けられた開口部である。薬液導入口10aは、薬液供給部10bに連通している。
【0022】
薬液供給部10bは、薬液11を薬液タンク10に供給する。本実施形態では一例として、薬液供給部10bは、未使用の薬液11が貯留された薬液ボトル12と、薬液導入口10aとを連通する構成を有する。薬液ボトル12が薬液供給部10bに接続されることにより、未使用の薬液11が、薬液ボトル12から薬液供給部10bおよび薬液導入口10aを経由して、薬液タンク10内に導入される。
【0023】
薬液排出口10dは、薬液タンク10の底部に設けられた開口部である。薬液排出口10dには、薬液排出口10dを開閉する排出バルブ10eが設けられている。
【0024】
排出バルブ10eを閉状態とすれば、薬液タンク10内に薬液11を貯留することができる。また、排出バルブ10eを開状態とすれば、薬液タンク10内の薬液11を内視鏡リプロセッサから排出して、薬液タンク10内を空の状態とすることができる。ただし、薬液排出口10d、排出バルブ10eは設けられていなくてもよい。この場合、薬液管路5を通じて処理槽4に薬液を移送し、処理槽4内の薬液を排液口4cおよび廃棄管路9aを経由して排出することで薬液タンク10内を空の状態とすることができる。
【0025】
水位計10fは、薬液タンク10内に貯留されている薬液11の液面が、薬液タンク10内の所定の高さに達しているか否かを検出する。水位計10fは、制御部2に電気的に接続されており、検出結果の情報を制御部2に出力する。
【0026】
水位計10fの構成は特に限定されるものではない。水位計10fは、例えば離間して配設された一対の電極を備え、当該一対の電極間の電気的な導通の有無に基づいて、薬液11が所定の水位に達しているか否かを検出する、いわゆる電極式水位センサであってもよい。また例えば、水位計10fは、薬液11に浮くフロートの上下動に応じて開閉するスイッチの動作状態に基づいて、薬液11が所定の水位に達しているか否かを検出する、いわゆるフロート式水位センサであってもよい。
【0027】
なお、薬液タンク10は、水道水を導入して水道水と薬液とを所定の比率で混合する構成を有していてもよい。
【0028】
濃度測定室20は、薬液11を貯留する内部空間を有する。濃度測定室20には、薬液移送部22が接続されている。薬液移送部22は、薬液タンク10と濃度測定室20との間で、双方向に薬液11を移送する。また、薬液移送部22は、濃度測定室20の内部空間を密閉する。濃度測定室20内には、後述する濃度計21の測定面21aが配置されている。
【0029】
薬液移送部22の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、薬液移送部22は、導入管路22a、導入ポンプ22b、導出管路22cおよび開閉バルブ22dを含む。
【0030】
導入管路22aおよび導出管路22cは、薬液タンク10と濃度測定室20とを連通する。濃度測定室20に設けられる開口のうち、導入管路22aおよび導出管路22cに連通する開口部を除く開口は、一時的または恒久的に封止されている。
【0031】
導入ポンプ22bは、導入管路22aに設けられており、運転状態である場合に、導入管路22a内の流体を薬液タンク10から濃度測定室20へ向かう方向へ移送する。導入ポンプ22bは、いわゆる自吸式のポンプである。導入ポンプ22bは、停止状態である場合に、導入管路22a内の流体が濃度測定室20から薬液タンク10へ向かって流れることを防止する構成を有する。
【0032】
開閉バルブ22dは、導出管路22cに設けられており、導出管路22cを開閉する。開閉バルブ22dは、制御部2によって開閉動作が制御される。開閉バルブ22dは、内視鏡リプロセッサ1の電源がオフ状態である場合に、閉状態を維持するように構成されている。
【0033】
薬液タンク10内に薬液11が貯留されている状態において、開閉バルブ22dを開状態とし、導入ポンプ22bを運転することによって、薬液タンク10内の薬液11が濃度測定室20内に導入される。さらに濃度測定室20内に薬液11が導入された後も開閉バルブ22dを開状態とし、導入ポンプ22bを運転すれば、薬液11は、薬液タンク10、導入管路22a、濃度測定室20および導出管路22cを経由して薬液タンク10に戻るように循環する。
【0034】
また、導入ポンプ22bを停止状態とし、開閉バルブ22dを閉状態とすることによって、濃度測定室20内は密閉される。
【0035】
なお、開閉バルブ22dは、制御部2によって開閉動作が制御される電動式のバルブの形態に限られるものではない。例えば、開閉バルブ22dは、導出管路22c内の流体の薬液タンク10側の圧力と、濃度測定室20側の圧力との間の圧力差が所定の値を超えた場合に開状態となるリリーフバルブであってもよい。また、開閉バルブ22dは、導出管路22c内の流体が濃度測定室20から薬液タンク10へ向かって流れることを許容し、流体が薬液タンク10から濃度測定室20へ向かって流れることを防止する逆止弁であってもよい。開閉バルブ22dがリリーフバルブまたは逆止弁である場合には、導入ポンプ22bを停止状態とすれば、濃度測定室20内が密閉される。
【0036】
なお、薬液移送部22の構成は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、薬液移送部22は、薬液タンク10と濃度測定室20とを連通する単一の管路と、当該管路に設けられ管路内の流体を双方向に移送可能なポンプと、管路を開閉する開閉バルブと、によって構成されてもよい。
【0037】
また例えば、薬液移送部22は、薬液タンク10と濃度測定室20とを連通する管路と、当該管路を開閉する開閉バルブと、を備え、ポンプを用いずに薬液タンク10と濃度測定室20との間の水位差によって、薬液タンク10と濃度測定室20との間で双方向に薬液11を移送する構成を有していてもよい。
【0038】
濃度計21は、濃度測定室20内に配置される測定面21aを含む。濃度計21は、測定面21aに接している薬液11の濃度を測定する。
【0039】
濃度計21の構成は、薬液11中の特定の物質の濃度を測定可能であればよく、特に限定されるものではない。
【0040】
図2に示すように、本実施形態では一例として、測定面21aは、測定部21bの外表面の一部である。測定部21bは、開口部21cが設けられた容器状の部材である。開口部21cは、浸透膜21eによって封止されている。測定部21bの開口部21cの内部には、内容液21fが封入されている。
【0041】
測定面21aは、浸透膜21eの内容液21fと触れる領域の反対側の面である。浸透膜21eは、測定面21aに接している薬液11中の特定の物質を、内容液21f側に透過する。すなわち、内容液21f中の物質濃度は、測定面21aに接している薬液11の物質濃度に応じて変化する。
【0042】
測定部21b内には、複数の電極21dが内容液21f中において離間して配設されている。複数の電極21dは、電気ケーブル21gを介して図示しない制御装置に接続される。なお、制御装置は、測定部21bと一体に構成されていてもよい。
【0043】
濃度計21は、内容液21f中に浸漬している複数の電極21d間に生じる電位差の変化、又は複数の電極21d間に流れる電流値の変化を計測し、この計測値に基づいて測定面21aに接している薬液11の濃度を測定する。このような濃度計21における濃度測定の原理や構成は周知のものであるため、詳細な説明は省略するものとする。
【0044】
また、内視鏡リプロセッサ1は、使用者との間の情報の授受を行うユーザインターフェースを構成する、操作部13および出力部14を備える。操作部13および出力部14は、制御部2に電気的に接続されている。なお、操作部13および出力部14は、制御部2との間で無線通信を行う電子機器に備えられる形態であってもよい。
【0045】
操作部13は、例えばプッシュスイッチやタッチセンサ等の操作部材を含む。また、出力部14は、例えば画像や文字を表示する表示装置、光を発する発光装置、音を発するスピーカ、またはこれらの組み合わせ、を含む。
【0046】
次に、前述した構成を有する内視鏡リプロセッサ1の制御方法について、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
図3に示すフローは、使用者による手動操作またはタイマー制御による自動操作によって、内視鏡リプロセッサ1の電源がオン状態とされた場合に開始される。なお、使用者からの内視鏡リプロセッサ1への動作指示の入力は、操作部13を介して行われる。
【0047】
内視鏡リプロセッサ1の電源がオン状態とされた後は、まず各構成の初期化動作を実行し、そしてステップS10からS30に示すように、使用者からの指示の入力が行われるまで待機する待機状態を実行する。
【0048】
具体的には、ステップS10においては、電源オフの指示が使用者によって入力されたか否かを判定する。ステップS10において、電源オフの指示が入力されたと判定した場合には、電源オフ状態に移行し、
図3に示すフローを終了する。ステップS10において、電源オフの指示が入力されていないと判定した場合には、ステップS20に移行する。
【0049】
ステップS20においては、薬液タンク10内の薬液11を内視鏡リプロセッサ1から排出する指示が、使用者によって入力されたか否かを判定する。内視鏡リプロセッサ1から薬液11を排出する操作は、例えば、薬液タンク10内の薬液11を交換する場合や、内視鏡リプロセッサ1を比較的長期間使用しない場合に実行される。
【0050】
ステップS20において、薬液タンク10内の薬液11を排出する指示が入力されたと判定した場合には、後述するステップS200に移行し排出工程を実行する。ステップS20において、薬液タンク10内の薬液11を排出する指示が入力されていないと判定した場合には、ステップS30に移行する。
【0051】
ステップS30においては、内視鏡に対する再生処理を実行する指示が、使用者によって入力されたか否かを判定する。ステップS30において、再生処理を実行する指示が入力されたと判定した場合には、後述するステップS40に移行する。ステップS30において、再生処理を実行する指示が入力されていない判定した場合には、ステップS10に戻る。
【0052】
ステップS40では、水位計10fにより、薬液タンク10内の所定の水位まで薬液11が貯留されているか否かを確認する。ステップS40において、薬液タンク10内の所定の水位まで薬液11が貯留されていないと判定した場合(ステップS50のNO)には、ステップS60に移行する。
【0053】
ステップS60では、薬液タンク10内への薬液11の供給を使用者に対して要求する出力を、出力部14を介して実行する。ステップS60の実行後は、ステップS10に戻る。すなわち、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1では、使用者によって薬液タンク10内に所定の水位まで薬液11が供給されるまでは、内視鏡に対する再生処理は開始されない。
【0054】
また、ステップS40において、薬液タンク10内の所定の水位まで薬液11が貯留されていると判定した場合(ステップS50のYES)には、ステップS100に移行する。すなわち、薬液タンク10内に薬液11を導入する工程であるステップIが実行された後に、ステップS100に移行する。
【0055】
ステップS100では、薬液移送部22を動作させて、薬液タンク10内の薬液11を、濃度測定室20内に導入する。具体的にステップS100では、開閉バルブ22dを開状態とし、導入ポンプ22bの運転を開始する。これにより、薬液タンク10内の薬液11が、濃度測定室20内に導入される。ステップS100の実行により、濃度測定室20内に配置された濃度計21の測定面21aが、薬液11と接する。
【0056】
そして、ステップS110において、濃度計21により、薬液11の濃度測定を実行する。すなわち、ステップS100およびステップS110において、濃度測定室20に薬液11を導入して薬液11の濃度を測定する工程であるステップIIを実行する。
【0057】
次に、ステップS120において、薬液11の濃度の測定値が、所定の範囲内であるか否かを判定する。濃度の所定の範囲とは、薬液11が再生処理を実行するのに必要とされる薬効を発揮する範囲のことである。
【0058】
ステップS120において、薬液11の濃度の測定値が所定の範囲内であると判定した場合には、ステップS140に移行し、内視鏡に対する再生処理を実行する。内視鏡に対する再生処理とは、処理槽4内に薬液11を導入して薬液11中に内視鏡を浸漬する消毒処理を含む。
【0059】
消毒処理では、切り替えバルブ7を閉状態とした後に、薬液ポンプ5bを運転し、薬液11を薬液タンク10内から、内視鏡が配置されている処理槽4内へ移送する。そして、処理槽4内の所定の水位まで薬液11が貯留された後に薬液ポンプ5bを停止し、循環ポンプ6bの運転を所定時間行う。そして、循環ポンプ6bの停止後に、切り替えバルブ7を排出管路9と回収管路8とが連通した状態として、処理槽4内の薬液11を、薬液タンク10内に回収する。
【0060】
ステップS140の再生処理の終了後は、ステップS10に戻る。
【0061】
一方、ステップS120において、薬液11の濃度の測定値が所定の範囲外であると判定した場合には、ステップS130に移行する。ステップS130では、薬液タンク10内への薬液11を排出して未使用の薬液11を新たに薬液タンク10内に供給する、薬液11の交換作業の実行を使用者に対して要求する出力を、出力部14を介して実行する。ステップS130の実行後は、ステップS10に戻る。
【0062】
すなわち、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1では、濃度が所定の範囲内である薬液11が薬液タンク10内に貯留されるまでは、内視鏡に対する再生処理は開始されない。
【0063】
薬液タンク10内の薬液11の交換を実行するには、前述のように、使用者は、操作部13を介して、薬液タンク10内の薬液11を内視鏡リプロセッサ1から排出する指示を入力する。
【0064】
前述のステップS20において、薬液タンク10内の薬液11を内視鏡リプロセッサ1から排出する指示が、使用者によって入力されたと判定した場合には、ステップS200に移行する。
【0065】
ステップS200では、排出バルブ10eを開状態とし、薬液タンク10内の薬液11を、薬液排出口10dを経由して内視鏡リプロセッサ1の外部に排出する。薬液タンク10内の薬液11が排出された後に、排出バルブ10eを閉状態とする。
【0066】
ステップS200の実行後は、新たな未使用の薬液11が薬液供給部10bを経由して供給されるまで、薬液タンク10内は空の状態となる。すなわち、ステップS200において、薬液タンク10内の薬液11を内視鏡リプロセッサ1から排液して、薬液タンク10内が空となった状態を所定時間維持する工程であるステップIIIを実行する。
【0067】
また、本実施形態のステップS200では、薬液移送部22の導入ポンプ22bの運転を行い、濃度測定室20内の薬液11を、薬液タンク10内に排出する。
【0068】
次に、ステップS210において、薬液移送部22の開閉バルブ22dを閉状態とし、導入ポンプ22bを停止状態とすることにより、濃度測定室20の内部空間を密閉する。
【0069】
ステップS210の実行開始時は、濃度測定室20内から薬液11が排出された後であるが、濃度測定室20内には薬液11の蒸気や液滴等の水分が残留している状態である。そして、ステップS210を実行して濃度測定室20内を密閉することによって、濃度測定室20内の薬液11の蒸気や液滴等の水分の、濃度測定室20外への移動が防止される。
【0070】
したがって、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1では、ステップS210の実行によって、濃度測定室20内の水分量が所定値以上に維持される。言い換えれば、ステップS210の実行によって、濃度測定室20内の相対湿度が、所定値以上に維持される。
【0071】
前記所定値は特に限定されず適宜に設定することができるが、例えば相対湿度100%以上であることが好ましい。これは、相対湿度が100%以上であれば、濃度計21の測定面21aに結露が生じやすくなるためである。
【0072】
開閉バルブ22dは、前述のように、内視鏡リプロセッサ1の電源がオフ状態である場合であっても閉状態を維持する。そして、開閉バルブ22dが開状態となるのは、薬液タンク10内に薬液11が貯留された後のステップS100においてである。
【0073】
すなわち、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1では、薬液タンク10内が空となった状態を所定時間維持する工程であるステップIIIの間において、濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持する工程であるステップIVを実行する。
【0074】
以上に述べた本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の制御方法では、薬液タンク10内が空となる期間中において、濃度測定室20を密閉し、濃度測定室20内の水分が濃度測定室20外に移動することを防止する。これにより、本実施形態では、薬液11を排出して薬液タンク10内が空となる期間中においても、濃度測定室20内の相対湿度が所定値以上に維持されるため、濃度計21の測定面21aの乾燥を防止し、測定面21aを湿潤状態に保つことができる。
【0075】
例えば、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の制御方法では、薬液タンク10内の薬液11を交換した後に、待機時間を設けることなく濃度計21による薬液11の濃度測定を実行することができるため、内視鏡に対して再生処理を行うのに要する時間を短縮することができる。
【0076】
図4に、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の制御方法の変形例を示す。
図4は、ステップS210において実行される、濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持する工程(ステップIV)を説明するフローチャートである。
【0077】
本変形例の濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持する工程では、まずステップS301において、薬液移送部22の導入ポンプ22bの運転を開始する。なお、ステップS200において、導入ポンプ22bの運転が既に行われている場合には、ステップS301では導入ポンプ22bの運転状態を維持する。
【0078】
次に、ステップS302において、開閉バルブ22dを閉状態とする。そして、ステップS303において、所定の時間待機する。ステップS302およびステップS303の実行によって、密閉された濃度測定室20内に空気が導入されるため、濃度測定室20内の気圧が大気圧よりも高い陽圧となる。
【0079】
そして、ステップS304において、導入ポンプ22bを停止する。導入ポンプ22bを停止しても濃度測定室20内は密閉されているため、濃度測定室20内の気圧は陽圧に保たれる。
【0080】
このように、本変形例では、濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持する工程において、濃度測定室20内の気圧を大気圧より高くする。濃度測定室20内の気圧が高くなることによって、濃度測定室20内に残留する液体である薬液11の露点温度が高くなる。したがって、本変形例によれば、濃度測定室20内に残留する液体が蒸発しにくくなり、濃度測定室20外への水分の発散が抑制されるため、より長い期間、濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持することが可能となる。
【0081】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
図5は、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の濃度測定室20の構成を示す図である。
【0082】
図5に示すように、本実施形態の濃度測定室20内には、霧化部23が配設されている。霧化部23は、濃度測定室20内に貯留されている液体を、細かい液滴として濃度測定室20内の空気中に飛散させる。
【0083】
本実施形態では一例として、霧化部23は、いわゆるベンチュリ効果を用いた霧吹きの構成を有する。霧化部23は、濃度測定室20内に貯留されている液体を吸い上げる細管部23aと、細管部23aの上端部に空気を吹き付けて所定の速度の空気の流れを生じさせる送風部23bとを備える。
【0084】
送風部23bは、空気供給管路23cを経由して、例えば内視鏡リプロセッサ1が備えるエアコンプレッサやエアタンク等の空気を所定の圧力で送出する空気供給装置に接続される。空気供給管路23cには、濃度測定室20から空気供給管路23cへ向かう方向の空気および液体の流れを遮断する逆止弁23dが設けられている。なお、霧化部23は、濃度測定室20内に送り込んだ空気を排出する弁を備えていてもよい。
【0085】
本実施形態の霧化部23は、濃度測定室20内に所定の水位まで液体が貯留されている状態において、空気供給装置から供給される空気を細管部23aの上端部に吹き付けることによって、液体を吸い上げた後に細かい液滴として濃度測定室20内の空気中に飛散させる。また、空気供給装置からの空気の供給を停止すれば、逆止弁23dによって濃度測定室20内は密閉される。
【0086】
なお、霧化部23の構成は本実施形態に限られるものではない。例えば、霧化部23は、超音波振動子等によって濃度測定室20の内壁面を振動させることによって、濃度測定室20内に貯留されている液体を飛散させる構成であってもよい。また例えば、霧化部23は、濃度測定室20内に貯留されている液体をかき乱すことによって、液体を飛散させる構成であってもよい。
【0087】
また、本実施形態の濃度測定室20内には、水位センサ24が設けられている。水位センサ24は、濃度測定室20内に貯留されている液体の液面が、所定の水位に達しているか否かを検出する。水位センサ24は、制御部2に電気的に接続されており、検出結果の情報を制御部2に出力する。
【0088】
水位センサ24の構成は特に限定されるものではない。水位センサ24は、例えば離間して配設された一対の電極を備え、当該一対の電極間の電気的な導通の有無に基づいて、液体の液面が所定の水位に達しているか否かを検出する、いわゆる電極式水位センサであってもよい。また例えば、水位センサ24は、液体に浮くフロートの上下動に応じて開閉するスイッチの動作状態に基づいて、液体の液面が所定の水位に達しているか否かを検出する、いわゆるフロート式水位センサであってもよい。
【0089】
次に、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の制御方法について説明する。なお、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の制御方法は、ステップS210において実行される、濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持する工程(ステップIV)のみが、第1の実施形態と異なる。よって、以下では、本実施形態の濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持する工程のみを説明する。
【0090】
図6のフローチャートに示すように、本実施形態の濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持する工程では、まずステップS311において、水位センサ24により濃度測定室20内の所定の水位まで、液体を貯留する。
【0091】
ステップS311において濃度測定室20内に貯留する液体の種類は特に限定されるものではなく、薬液11であってもよいし、例えば水等の薬液11とは異なる液体であってもよい。
【0092】
例えば、濃度測定室20内に貯留する液体が薬液11である場合には、ステップS200において濃度測定室20内から薬液11を排出する際に、一部の薬液11を濃度測定室20内に残留させる。
【0093】
また例えば、濃度測定室20内に貯留する液体が水である場合には、水道施設等から供給される水を、処理槽4内に導入した後に、回収管路8、薬液タンク10および導入管路22aを経由して、濃度測定室20内に導入する。
【0094】
次にステップS312において、霧化部の運転を開始し、濃度測定室20内に貯留されている液体を、細かい液滴として濃度測定室20内の空気中に飛散させる。霧化部の運転は、連続して行われてもよいし、所定の時間ごとに間欠的に行われてもよい。
【0095】
このように、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1では、薬液タンク10内が空となった状態を所定時間維持する工程であるステップIIIの間において、濃度測定室20内に所定量の液体を貯留し、かつ液体を細かい液滴として濃度測定室20内の空気中に飛散させるステップIVを実行する。
【0096】
以上に述べた本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の制御方法では、薬液タンク10内が空となる期間中において、濃度測定室20内に液体を細かい液滴として飛散させることにより、濃度計21の測定面21aの乾燥を防止し、測定面21aを湿潤状態に保つことができる。
【0097】
例えば、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の制御方法では、薬液タンク10内の薬液11を交換した後に、待機時間を設けることなく濃度計21による薬液11の濃度測定を実行することができるため、内視鏡に対して再生処理を行うのに要する時間を短縮することができる。
【0098】
なお、本実施形態では、ステップS311において、濃度測定室20内に所定量の液体を貯留するための構成として、水位センサ24を用いているが、ステップS311において、濃度測定室20内に所定量の液体を貯留するための構成はこれに限られるものではない。
【0099】
図7に、ステップS311において、濃度測定室20内に所定量の液体を貯留するための構成の変形例を示す。
図7に示す変形例では、濃度測定室20の底面部に、下方に向かって凹形状である凹部20aが設けられている。ステップS200の濃度測定室20内から薬液11を排出する工程を実行した後に、凹部20a内には薬液11の一部が残留する。霧化部23は、凹部20a内に貯留されている薬液11を、細かい液滴として濃度測定室20内の空気中に飛散させる。
【0100】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態の変形例と同様に、濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持する工程において、濃度測定室20内の気圧を大気圧より高くしてもよい。
【0101】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0102】
本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の制御方法は、ステップS210において実行される、濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持する工程(ステップIV)のみが、第1の実施形態と異なる。よって、以下では、本実施形態の濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持する工程のみを説明する。
【0103】
図8のフローチャートに示すように、本実施形態の濃度測定室20内の水分量を所定値以上に維持する工程では、ステップS321において、濃度測定室20内の所定の水位まで、薬液11を貯留する。ステップS321において濃度測定室20内に薬液11を貯留する所定の水位とは、濃度測定室20内に配置された濃度計21の測定面21aよりも上方に位置している。
【0104】
このように、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1では、薬液タンク10内が空となった状態を所定時間維持する工程であるステップIIIの間において、濃度測定室20内に濃度計21の測定面21aよりも上方まで薬液11を貯留し、薬液11中に測定面21aを浸漬するステップIVを実行する。
【0105】
以上に述べた本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の制御方法では、薬液タンク10内が空となる期間中において、濃度計21の測定面21aを薬液11中に浸漬することにより測定面21aの乾燥を防止し、測定面21aを湿潤状態に保つことができる。
【0106】
例えば、本実施形態の内視鏡リプロセッサ1の制御方法では、薬液タンク10内の薬液11を交換した後に、待機時間を設けることなく濃度計21による薬液11の濃度測定を実行することができるため、内視鏡に対して再生処理を行うのに要する時間を短縮することができる。
【0107】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内視鏡リプロセッサの制御方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0108】
本出願は、2015年6月5日に日本国に出願された特願2015−114990号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものとする。
内視鏡リプロセッサの制御方法は、薬液タンク、濃度測定室、および前記濃度測定室に配置された濃度計を含む内視鏡リプロセッサの制御方法であって、前記薬液タンクに薬液を導入するステップIと、前記濃度測定室に前記薬液を導入して前記薬液の濃度を測定するステップIIと、前記薬液タンク内の薬液を前記内視鏡リプロセッサから排液して、前記薬液タンク内が空となった状態を所定時間維持するステップIIIと、前記ステップIIIの間、前記濃度測定室内の水分量を所定値以上に維持するステップIVと、を含む。