(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038462
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】演算増幅器のマクロモデル及びこれを用いた回路設計シミュレータ
(51)【国際特許分類】
G06F 17/50 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
G06F17/50 662G
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-33677(P2012-33677)
(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公開番号】特開2012-216187(P2012-216187A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-71503(P2011-71503)
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-71504(P2011-71504)
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134555
【弁理士】
【氏名又は名称】林田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 登
【審査官】
松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−171919(JP,A)
【文献】
特開2003−316845(JP,A)
【文献】
米国特許第06117179(US,A)
【文献】
FILSETH, E., ROULLIER, T. ,複雑になるアナログ回路の検証に動作レベル・シミュレータで対応,日経エレクトロニクス,日経BP社,1991年 2月18日,第520号,pp. 303 - 311
【文献】
KENDALL, R.,データシートの値に基づくシミュレーションが可能に:オペアンプの新・SPICEマクロモデル(1/3-3/3),EDN Japan [online],アイティメディア株式会社,2007年11月 1日,[検索日 2016.03.18],URL,http://ednjapan.com/edn/articles/0711/01/news140.html
【文献】
Analogue fault modelling and simulation for supply current monitoring,Proceedings European Design and Test Conference ED&TC 96,IEEE,1996年 3月,Pages 547 - 552,[検索日 2016.03.18],IEEE Xplore,URL,http://ieeexplore.ieee.org/xpl/articleDetails.jsp?arnumber=494354
【文献】
神崎康宏,電子回路シミュレータLTspice入門編,CQ出版社,2009年 7月 1日,第2版,pp. 29 - 46, 67 - 70
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算部と、記憶部と、操作部と、表示部と、を備えたコンピュータに実行され、前記コンピュータを回路設計シミュレータとして機能させる回路設計シミュレーションプログラムの一部品であり、前記回路設計シミュレータで用いられる演算増幅器のマクロモデルとして、前記回路設計シミュレータ上で演算増幅器の応答を模擬するように前記コンピュータを動作させるプログラムであって、
前記演算増幅器のマクロモデルは、前記演算増幅器の入力異常時や電源異常時に出力異常を発生させる制御部を有し、
前記制御部は、入力段の駆動電流を生成する電流源の両端間電圧を所定の電圧範囲内に制限することを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記電圧範囲は、電源電圧または接地電圧と周囲温度の関数として設定されることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記制御部は、異常判定に際して入力信号と電源電圧または接地電圧を監視し、前記演算増幅器の入力異常時や電源異常時には、前記演算増幅器の入力段、増幅段、及び、出力段の少なくとも一つを制御して出力異常を発生させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記制御部は、異常判定に際して周囲温度も監視することを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記演算増幅器のマクロモデルは、さらに、
電源端子と接地端子との間で前記演算増幅器の駆動電流を生成する駆動電流生成部と、
出力端子と理想接地との間で前記演算増幅器の出力電流を生成する出力電流生成部と、
前記出力電流の大きさや向きを検出する出力電流検出部と、
前記電源端子と前記理想接地との間、或いは、前記理想接地と前記接地端子との間で、前記出力電流に応じた帰還電流を生成する帰還電流生成部と、
を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記帰還電流生成部は、前記理想接地から前記出力端子に向けて前記出力電流が流れているときには、前記電源端子から前記理想接地に向けて流れる帰還電流を生成し、前記出力端子から前記理想接地に向けて前記出力電流が流れているときには、前記理想接地から前記接地端子に向けて流れる帰還電流を生成することを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
演算部と、記憶部と、操作部と、表示部と、を備えたコンピュータに実行され、前記コンピュータを回路設計シミュレータとして機能させる回路設計シミュレーションプログラムであって、
前記回路設計シミュレーションプログラムは、
メインプログラムと、
前記メインプログラムから参照されるモデルライブラリと、
を含み、
前記モデルライブラリは、前記回路設計シミュレータで用いられる前記演算増幅器のマクロモデルとして、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のプログラムを含むことを特徴とする回路設計シミュレーションプログラム。
【請求項8】
前記メインプログラムは、
前記操作部からの入力に基づいて前記回路設計シミュレータ上で回路作成を行うように前記演算部や前記表示部を機能させる回路作成モジュールと、
前記操作部からの入力に基づいて前記モデルライブラリを参照するように前記演算部や前記表示部を機能させる部品参照モジュールと、
前記操作部からの入力に基づいて回路上にプローブを設置するように前記演算部や前記表示部を機能させるプローブ設置モジュールと、
前記操作部からの入力に基づいて前記プローブが設置されたノードの波形を描画するように前記演算部や前記表示部を機能させる波形描画モジュールと、
前記操作部からの入力に基づいて前記波形の解析を行うように前記演算部や前記表示部を機能させる波形解析モジュールと、
を含むことを特徴とする請求項7に記載の回路設計シミュレーションプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の回路設計シミュレーションプログラムをコンピュータで実行させることによって実現される回路設計シミュレータ。
【請求項10】
回路設計シミュレータが、入力異常時や電源異常時に出力異常を発生させる制御部を有する演算増幅器のマクロモデルを用いて回路のシミュレーションを行う回路設計シミュレーション方法であって、
前記制御部は、入力段の駆動電流を生成する電流源の両端間電圧を所定の電圧範囲内に制限することを特徴とする回路設計シミュレーション方法。
【請求項11】
前記電圧範囲は、電源電圧または接地電圧と周囲温度の関数として設定されることを特徴とする請求項10に記載の回路設計シミュレーション方法。
【請求項12】
前記制御部は、異常判定に際して入力信号と電源電圧または接地電圧を監視し、前記演算増幅器の入力異常時や電源異常時には、前記演算増幅器の入力段、増幅段、及び、出力段の少なくとも一つを制御して出力異常を発生させることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の回路設計シミュレーション方法。
【請求項13】
前記制御部は、異常判定に際して周囲温度も監視することを特徴とする請求項12に記載の回路設計シミュレーション方法。
【請求項14】
前記演算増幅器のマクロモデルは、さらに、
電源端子と接地端子との間で前記演算増幅器の駆動電流を生成する駆動電流生成部と、
出力端子と理想接地との間で前記演算増幅器の出力電流を生成する出力電流生成部と、
前記出力電流の大きさや向きを検出する出力電流検出部と、
前記電源端子と前記理想接地との間、或いは、前記理想接地と前記接地端子との間で、前記出力電流に応じた帰還電流を生成する帰還電流生成部と、
を有することを特徴とする請求項10〜請求項13のいずれか一項に記載の回路設計シミュレーション方法。
【請求項15】
前記帰還電流生成部は、前記理想接地から前記出力端子に向けて前記出力電流が流れているときには、前記電源端子から前記理想接地に向けて流れる帰還電流を生成し、前記出力端子から前記理想接地に向けて前記出力電流が流れているときには、前記理想接地から前記接地端子に向けて流れる帰還電流を生成することを特徴とする請求項14に記載の回路設計シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路設計シミュレータで用いられる演算増幅器のマクロモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路の設計支援ツールとして、回路設計シミュレーションプログラム(例えば、SPICE[Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis]系の回路設計シミュレーションプログラム)が広く利用されている。回路設計シミュレーションプログラムは、これを実行したコンピュータを回路設計シミュレータとして機能させるためのソフトウェアである。回路設計シミュレータ上では、抵抗やキャパシタなどの受動素子モデル、トランジスタやダイオードなどの能動素子モデル、演算増幅器などのマクロモデル、電圧源、電流源、及び、配線などを適宜組み合わせてアナログ回路の作成を行い、その応答を模擬することが可能である。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1や特許文献2を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−225282号公報
【特許文献2】特開2010−272020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、現実の演算増幅器は、通常、入力信号や電源電圧が所定の正常範囲内に収まっていなければ正しく動作することができない。しかしながら、演算増幅器の従来型マクロモデルは、シミュレーション演算時の負荷低減を最優先とするために、理想的な特性を有する回路要素(理想素子、理想電源、理想接地など)を用いて構築されており、現実の演算増幅器では正常範囲外となる入力信号や電源電圧が入力された場合でも、何ら問題なく動作してしまっていた。そのため、演算増幅器の従来型マクロモデルを用いて作成されたアナログ回路のシミュレーション検証を行っても、現実の演算増幅器における入力異常(前段回路の設計ミスなど)や電源異常(電源系配線の設計ミスなど)を発見することができない、という課題があった。
【0006】
また、演算増幅器の従来型マクロモデルでは、演算増幅器の出力端子に流れる出力電流が理想接地から生成されており、電源端子と接地端子との間に流れる演算増幅器の駆動電流は、上記の出力電流と何ら関係のない一定値に設定されていた。そのため、演算増幅器の従来型マクロモデルでは、基板配線のインピーダンス等に起因する電源電圧の低下や接地電圧の浮き上がりをシミュレーション検証することができない、という課題があった。
【0007】
このように、演算増幅器の従来型マクロモデルは、現実の演算増幅器と異なる挙動を示すので、シミュレーション検証では問題がないと判断されたアナログ回路であっても、これを実際に試作した段階で問題が顕在化する、という課題があった。
【0008】
本発明は、本願の発明者により見出された上記の問題点に鑑み、シミュレーション演算時の負荷増大を抑えつつ、より実機に近い応答を模擬することが可能な演算増幅器のマクロモデル、及び、これを用いた回路設計シミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るプログラムは、演算部と、記憶部と、操作部と、表示部と、を備えたコンピュータに実行され、前記コンピュータを回路設計シミュレータとして機能させる回路設計シミュレーションプログラムの一部品であり、前記回路設計シミュレータで用いられる演算増幅器のマクロモデルとして、前記回路設計シミュレータ上で演算増幅器の応答を模擬するように前記コンピュータを動作させるものであって、前記演算増幅器のマクロモデルは、前記演算増幅器の入力異常時や電源異常時に出力異常を発生させる制御部を有する構成(第1の構成)とされている。
【0010】
なお、上記第1の構成から成るプログラムにおいて、前記制御部は、入力段の駆動電流を生成する電流源の両端間電圧を所定の範囲内に制限する構成(第2の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第2の構成から成るプログラムにおいて、前記上限値は、電源電圧と周囲温度の関数として設定される構成(第3の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第1の構成から成るプログラムにおいて、前記制御部は、異常判定に際して入力信号と電源電圧を監視し、前記演算増幅器の入力異常時や電源異常時には、前記演算増幅器の入力段、増幅段、及び、出力段の少なくとも一つを制御して出力異常を発生させる構成(第4の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第4の構成から成るプログラムにおいて、前記制御部は、異常判定に際して周囲温度も監視する構成(第5の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第4の構成から成るプログラムにおいて、前記演算増幅器のマクロモデルはさらに、電源端子と接地端子との間で前記演算増幅器の駆動電流を生成する駆動電流生成部と、出力端子と理想接地との間で前記演算増幅器の出力電流を生成する出力電流生成部と、前記出力電流の大きさや向きを検出する出力電流検出部と、前記電源端子と前記理想接地との間、或いは、前記理想接地と前記接地端子との間で、前記出力電流に応じた帰還電流を生成する帰還電流生成部と、を有する構成(第6の構成)にするとよい。
【0015】
また、本発明に係るプログラムは、演算部と、記憶部と、操作部と、表示部と、を備えたコンピュータに実行され、前記コンピュータを回路設計シミュレータとして機能させる回路設計シミュレーションプログラムの一部品であり、前記回路設計シミュレータで用いられる演算増幅器のマクロモデルとして、前記回路設計シミュレータ上で演算増幅器の動作を模擬するように前記コンピュータを動作させるものであって、前記演算増幅器のマクロモデルは、電源端子と接地端子との間で前記演算増幅器の駆動電流を生成する駆動電流生成部と、出力端子と理想接地との間で前記演算増幅器の出力電流を生成する出力電流生成部と、前記出力電流の大きさや向きを検出する出力電流検出部と、前記電源端子と前記理想接地との間、或いは、前記理想接地と前記接地端子との間で、前記出力電流に応じた帰還電流を生成する帰還電流生成部と、を有する構成(第7の構成)とされている。
【0016】
なお、上記第6または第7の構成から成るプログラムにおいて、前記帰還電流生成部は前記理想接地から前記出力端子に向けて前記出力電流が流れているときには、前記電源端子から前記理想接地に向けて流れる帰還電流を生成し、前記出力端子から前記理想接地に向けて前記出力電流が流れているときには、前記理想接地から前記接地端子に向けて流れる帰還電流を生成する構成(第8の構成)にするとよい。
【0017】
また、本発明に係る回路設計シミュレーションプログラムは、演算部と、記憶部と、操作部と、表示部と、を備えたコンピュータに実行され、前記コンピュータを回路設計シミュレータとして機能させるものであって、前記回路設計シミュレーションプログラムは、メインプログラムと、前記メインプログラムから参照されるモデルライブラリとを含み、前記モデルライブラリは、前記回路設計シミュレータで用いられる前記演算増幅器のマクロモデルとして、上記第1〜第8いずれかの構成から成るプログラムを含む構成(第9の構成)とされている。
【0018】
なお、上記第9の構成から成る回路設計シミュレーションプログラムにおいて、前記メインプログラムは、前記操作部からの入力に基づいて前記回路設計シミュレータ上で回路作成を行うように前記演算部や前記表示部を機能させる回路作成モジュールと、前記操作部からの入力に基づいて前記モデルライブラリを参照するように前記演算部や前記表示部を機能させる部品参照モジュールと、前記操作部からの入力に基づいて回路上にプローブを設置するように前記演算部や前記表示部を機能させるプローブ設置モジュールと、前記操作部からの入力に基づいて前記プローブが設置されたノードの波形を描画するように前記演算部や前記表示部を機能させる波形描画モジュールと、前記操作部からの入力に基づいて前記波形の解析を行うように前記演算部や前記表示部を機能させる波形解析モジュールと、を含む構成(第10の構成)にするとよい。
【0019】
また、本発明に係る回路設計シミュレータは、上記第10の構成から成る回路設計シミュレーションプログラムをコンピュータで実行させることによって実現された構成(第11の構成)とされている。
【0020】
また、本発明に係る回路設計シミュレーション方法は、入力異常時や電源異常時において出力異常を発生させる制御部を有する演算増幅器のマクロモデルを用いた構成(第12の構成)とされている。
【0021】
なお、上記第12の構成から成る回路設計シミュレーション方法において、前記制御部は入力段の駆動電流を生成する電流源の両端間電圧を所定の範囲内に制限する構成(第13の構成)にするとよい。
【0022】
また、上記第13の構成から成る回路設計シミュレーション方法において、前記上限値は、電源電圧と周囲温度の関数として設定される構成(第14の構成)にするとよい。
【0023】
また、上記第14の構成から成る回路設計シミュレーション方法において、前記制御部は、異常判定に際して入力信号と電源電圧を監視し、前記演算増幅器の入力異常時や電源異常時には、前記演算増幅器の入力段、増幅段、及び、出力段の少なくとも一つを制御して出力異常を発生させる構成(第15の構成)にするとよい。
【0024】
また、上記第15の構成から成る回路設計シミュレーション方法において、前記制御部は、異常判定に際して周囲温度も監視する構成(第16の構成)にするとよい。
【0025】
また、上記第12〜第16いずれかの構成から成る回路設計シミュレーション方法において、前記演算増幅器のマクロモデルは、さらに、電源端子と接地端子との間で前記演算増幅器の駆動電流を生成する駆動電流生成部と、出力端子と理想接地との間で前記演算増幅器の出力電流を生成する出力電流生成部と、前記出力電流の大きさや向きを検出する出力電流検出部と、前記電源端子と前記理想接地との間、或いは、前記理想接地と前記接地端子との間で、前記出力電流に応じた帰還電流を生成する帰還電流生成部と、を有する構成(第17の構成)にするとよい。
【0026】
また、本発明に係る回路設計シミュレーション方法は、電源端子と接地端子との間で前記演算増幅器の駆動電流を生成する駆動電流生成部と、出力端子と理想接地との間で前記演算増幅器の出力電流を生成する出力電流生成部と、前記出力電流の大きさや向きを検出する出力電流検出部と、前記電源端子と前記理想接地との間、或いは、前記理想接地と前記接地端子との間で、前記出力電流に応じた帰還電流を生成する帰還電流生成部と、を有する演算増幅器のマクロモデルを用いた構成(第18の構成)とされている。
【0027】
なお、上記第17または第18の構成から成る回路設計シミュレーション方法において前記帰還電流生成部は、前記理想接地から前記出力端子に向けて前記出力電流が流れているときには、前記電源端子から前記理想接地に向けて流れる帰還電流を生成し、前記出力端子から前記理想接地に向けて前記出力電流が流れているときには、前記理想接地から前記接地端子に向けて流れる帰還電流を生成する構成(第19の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、シミュレーション演算時の負荷増大を抑えつつ、より実機に近い応答を模擬することが可能な演算増幅器のマクロモデル、及び、これを用いた回路設計シミュレータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る回路設計シミュレータの一構成例を示すブロック図
【
図2】回路設計シミュレーションプログラムの一構成例を示すブロック図
【
図3】演算増幅器のマクロモデルの基本構成を示す図
【
図4A】演算増幅器のマクロモデルの第1実施形態(例A)を示す図
【
図4B】演算増幅器のマクロモデルの第1実施形態(例B)を示す図
【
図4C】演算増幅器のマクロモデルの第1実施形態(例C)を示す図
【
図4D】演算増幅器のマクロモデルの第1実施形態(例D)を示す図
【
図5A】演算増幅器のマクロモデルの第2実施形態(例A)を示す図
【
図5B】演算増幅器のマクロモデルの第2実施形態(例B)を示す図
【
図5C】演算増幅器のマクロモデルの第2実施形態(例C)を示す図
【
図5D】演算増幅器のマクロモデルの第2実施形態(例D)を示す図
【
図6A】演算増幅器のマクロモデルの第3実施形態(例A)を示す図
【
図6B】演算増幅器のマクロモデルの第3実施形態(例B)を示す図
【
図6C】演算増幅器のマクロモデルの第3実施形態(例C)を示す図
【
図7A】演算増幅器のマクロモデルの第4実施形態(例A)を示す図
【
図7B】演算増幅器のマクロモデルの第4実施形態(例B)を示す図
【
図7C】演算増幅器のマクロモデルの第4実施形態(例C)を示す図
【
図8】演算増幅器のマクロモデルの第5実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0030】
<回路設計シミュレータ>
図1は、本発明に係る回路設計シミュレータの一構成例を示すブロック図である。本構成例の回路設計シミュレータ10は、演算部11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、通信部15と、を有するコンピュータであり、記憶部12に格納された回路設計シミュレーションプログラム100を演算部11で実行することによって実現される。
【0031】
演算部11は、回路設計シミュレータ10の動作を統括的に制御する。例えば、演算部11は、記憶部12に格納された回路設計シミュレーションプログラム100を実行し、コンピュータを回路設計シミュレータ10として機能させるための各種演算処理を行うほか、操作部13から入力されるユーザ操作の認識処理や、表示部14に対する各種画面の表示制御などを行う。演算部11としては、CPU[Central Processing Unit]を用いることができる。
【0032】
記憶部12は、OS[Operation System]プログラムや各種ソフトウェア(回路設計シミュレーションプログラム100を含む)の格納領域として使用されるほか、ユーザが作成した各種データの格納領域や、各種ソフトウェアの作業領域としても使用される。記憶部12としては、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、或いは、USB[Universal Serial Bus]メモリなどを用いることができる。
【0033】
操作部13は、各種のユーザ操作(回路作成操作、部品参照操作、プローブ設置操作など)を受け付けて演算部11に伝達する。操作部13としては、キーボード、マウス、トラックボール、ペンタブレット、タッチパネルなどを用いることができる。
【0034】
表示部14は、演算部11の指示に基づいて各種画面(回路作成フィールド、部品パレット、波形描画ウィンドウなど)を表示する。表示部14としては、液晶ディスプレイなどを用いることができる。
【0035】
通信部15は、演算部11の指示に基づいて電気通信回線20(インターネットやLAN[Local Area Network]など)を介した情報通信を行う。例えば、通信部15は、電気通信回線20を介して、半導体装置を製造・販売するベンダ各社のサーバ30X〜30Zとの情報通信を行い、マクロモデルファイル(*.mod)などのダウンロードを行う。
【0036】
このような回路設計シミュレータ10を用いることにより、実際にアナログ回路を試作する前に、当該アナログ回路のシミュレーション検証(特性評価や動作チェックなど)を行うことが可能となる。
【0037】
<回路設計シミュレーションプログラム>
図2は、回路設計シミュレーションプログラム100の一構成例を示すブロック図である。回路設計シミュレーションプログラム100(例えばSPICE系の回路設計シミュレーションプログラム)は、コンピュータに実行され、そのコンピュータを回路設計シミュレータ10(
図1を参照)として機能させるソフトウェアである。本構成例の回路設計シミュレーションプログラム100は、メインプログラム110と、モデルライブラリ210とを含む。回路設計シミュレーションプログラム100は、光ディスク(CD−ROM、DVD−ROMなど)や半導体メモリ(USBメモリなど)といった物理メディア、或いは、インターネットなどの電気通信回線を介して譲渡ないし頒布される。
【0038】
メインプログラム110は、コンピュータを回路設計シミュレータ10として機能させるための基幹部分であり、各種モジュールプログラム(例えば、回路作成モジュール111、部品参照モジュール112、プローブ設置モジュール113、波形描画モジュール114、及び、波形解析モジュール115)の集合体として形成されている。
【0039】
回路作成モジュール111は、操作部13からの入力に基づいて回路設計シミュレータ10上で回路作成を行うように演算部11や表示部14を機能させるための要素プログラムである。ユーザが操作部13を用いて表示部14に表示された部品シンボル(抵抗、キャパシタ、トランジスタ、ダイオード、演算増幅器、電圧源、電流源、及び、配線など)を回路作成フィールドに配置すると、回路作成モジュール111は、その配置内容に応じたテキストベースのコード作成を行う。これにより、ユーザは、テキストベースのコードを直接編集することなく、任意のアナログ回路を直感的に作成することが可能となる。
【0040】
部品参照モジュール112は、操作部13からの入力に基づいてモデルライブラリ120を参照するように演算部11や表示部14を機能させるための要素プログラムである。例えば、ユーザが操作部13を用いて表示部14に表示された部品パレットから演算増幅器のシンボルを選択すると、部品参照モジュール112は、モデルライブラリ120に含まれる演算増幅器のマクロモデル123を参照する。
【0041】
プローブ設置モジュール113は、操作部13からの入力に基づいて回路図上にプローブ(電圧や電流の測定点)を設置するように演算部11や表示部14を機能させるための要素プログラムである。例えば、ユーザが操作部13を用いて表示部14に表示された回路図上の特定ノードをマウスでクリックすると、プローブ設置モジュール113は、クリックされたノードにプローブを設置する。
【0042】
波形描画モジュール114は、操作部13からの入力に基づいてプローブが設置されたノードの波形を描画するように演算部11や表示部14を機能させるための要素プログラムである。例えば、ユーザが操作部13を用いて表示部14に表示された演算増幅器の出力端子にプローブを設置したとき、波形描画モジュール114は、演算増幅器の出力波形(疑似オシロスコープ波形)を波形描画ウィンドウに表示する。
【0043】
波形解析モジュール115は、操作部13からの入力に基づいてプローブが設置されたノードの波形解析を行うように演算部11や表示部14を機能させるための要素プログラムである。波形解析モジュール115で実施することが可能な波形解析としては、過渡解析、直流解析、小信号交流解析、雑音解析などを挙げることができる。
【0044】
モデルライブラリ120は、回路設計シミュレータ10で用いられる種々のモデル(受動素子モデル121、能動素子モデル122、及び、マクロモデル123など)を含んでおり、回路設計シミュレーションプログラム10の一部品として、メインプログラム110(特に部品参照モジュール112)から参照される。受動素子モデル121は、回路設計シミュレータ10上で受動素子(抵抗やキャパシタなど)の応答を模擬するようにコンピュータを動作させるプログラムである。能動素子モデル122は、回路設計シミュレータ10上で能動素子(トランジスタやダイオードなど)の応答を模擬するようにコンピュータを動作させるプログラムである。演算増幅器のマクロモデル123は、回路設計シミュレータ10上で演算増幅器の応答を模擬するようにコンピュータを動作させるプログラムである。なお、上記各種モデル121〜123の中には、半導体装置を製造・販売するベンダ各社のサーバ30X〜30Zから電気通信回線20を介して無償でダウンロードすることが可能なものも含まれている。
【0045】
このような回路設計シミュレーションプログラムを用いることにより、汎用コンピュータ(パーソナルコンピュータやワークステーションなど)を回路設計シミュレータ10として利用することが可能となる。
【0046】
<ボイルモデル>
図3は、演算増幅器のマクロモデルの基本構成を示す図である。本構成例のマクロモデルは、ボイルモデルと呼ばれるものであり、本発明のマクロモデルもこれをベースとして構築されている。ボイルモデルでは、入力差動対として用いられるトランジスタTr1及びTr2と、クランプ素子として用いられるダイオードD1〜D5を除いて、全ての素子はリニアデバイス(抵抗R1〜R7、キャパシタC1〜C3、電圧源V1〜V8、並びに電流源I1〜I4)とされている。なお、ボイルモデルの構成や動作については、周知であるため、ここでは詳細な説明を割愛する。
【0047】
<第1実施形態>
図4Aは、演算増幅器のマクロモデルの第1実施形態(例A)を示す図である。第1実施形態(例A)のマクロモデルは、演算増幅器の入力段を形成する回路要素として、pnp型バイポーラトランジスタQ11及びQ12と、抵抗R11及びR12と、電流源I11と、電圧制御部LMT1と、を有する。
【0048】
電流源I11の第1端は、電源端子(電源電圧VPの印加端)に接続されている。電流源I11の第2端は、トランジスタQ11及びQ12のエミッタに接続されている。トランジスタQ11のコレクタは、抵抗R11の第1端に接続されている。トランジスタQ12のコレクタは、抵抗R12の第1端に接続されている。トランジスタQ11のベースは第1入力端子(入力信号IN1の印加端)に接続されている。トランジスタQ12のベースは、第2入力端子(入力信号IN2の印加端)に接続されている。抵抗R11及びR12の第2端は、いずれも接地端子(接地電圧VNの印加端)に接続されている。
【0049】
電圧制御部LMT1は、入力段の駆動電流を生成する電流源I11の両端間電圧(電源電圧VPとエミッタ電圧Vaとの差電圧)を所定の電圧範囲内に制限することにより、演算増幅器の入力異常時や電源異常時に出力異常を発生させる。なお、上記の電圧範囲を定める上限値及び下限値については、電源電圧VPと周囲温度Tの関数f(VP,T)として設定することが望ましい。周囲温度Tに応じて上記の電圧範囲をどのように変動させるのかについては、演算増幅器の回路構成や設計仕様に応じて適宜調整すればよい。また、周囲温度Tについては、回路設計シミュレータ10の基本パラメータとして入力された値を参照すればよい。
【0050】
例えば3Vの電源電圧VPに対して3.5Vの入力信号IN1またはIN2が印加された場合、トランジスタQ11及びQ12のエミッタ電圧Vaは、電源電圧VPよりも高くなろうとする。現実の演算増幅器でこのような状況が生じた場合には、電流源I11から入力段に駆動電流を流すことができなくなるので、実際にエミッタ電圧Vaが電源電圧VPよりも高くなることはない。その結果、トランジスタQ11及びQ12を正しくオン/オフさせることができなくなるので、演算増幅器は正しく動作することができなくなる。
【0051】
一方、演算増幅器の従来型マクロモデルでは、たとえエミッタ電圧Vaが電源電圧VPより高電圧であっても、理想的な特性を有する電流源I11から入力段に駆動電流を流すことができるので、演算増幅器の従来型マクロモデルは何ら問題なく動作してしまい、入力異常や電源異常を看過するおそれがあった。
【0052】
これに対して、電圧制御部LMT1を備えた第1実施形態(例A)のマクロモデルであれば、電流源I11の両端間電圧(VP−Va)が所定の電圧範囲内(VP−Va>Vth(例えば0.2V))に制限される。例えば、3Vの電源電圧VPに対して3.5Vの入力信号IN1またはIN2が印加された場合であっても、トランジスタQ11及びQ12のエミッタ電圧Vaは、VP−Vth(例えば2.8V)までしか上がらなくなる。その結果、電流源I11から入力段に駆動電流を流したとしても、トランジスタQ11及びQ12を正しくオン/オフさせることができなくなるので、演算増幅器は正しく動作することができなくなる。このような動作異常は、正に現実の演算増幅器と同様である。
【0053】
従って、第1実施形態(例A)のマクロモデルを用いてアナログ回路のシミュレーション検証を行うことにより、入力異常や電源異常を見逃すことなく、当該アナログ回路の特性評価や動作チェックなどを行うことができるので、アナログ回路の試作に要する費用や時間を削減することが可能となる。
【0054】
なお、第1実施形態のマクロモデルについては、
図4Aで示した構成以外にも、種々の変形を行うことが可能である。例えば、
図4Bで示すように、pnp型バイポーラトランジスタQ11及びQ12をPチャネル型電界効果トランジスタP11及びP12に置き換えることも可能である。また、
図4Cや
図4Dで示すように、抵抗R11及び R12に代えて、npn型バイポーラトランジスタQ13及びQ14(またはNチャネル型電界効果トランジスタN11及びN12)から成る能動負荷を接続しても構わない。
【0055】
<第2実施形態>
図5Aは、演算増幅器のマクロモデルの第2実施形態(例A)を示す図である。第2実施形態(例A)のマクロモデルは、演算増幅器の入力段を形成する回路要素として、npn型バイポーラトランジスタQ21及びQ22と、抵抗R21及びR22と、電流源I21と、電圧制御部LMT2と、を有する。
【0056】
電流源I21の第1端は、接地端子(電源電圧VNの印加端)に接続されている。電流源I21の第2端は、トランジスタQ21及びQ22のエミッタに接続されている。トランジスタQ21のコレクタは、抵抗R21の第1端に接続されている。トランジスタQ22のコレクタは、抵抗R22の第1端に接続されている。トランジスタQ21のベースは第1入力端子(入力信号IN1の印加端)に接続されている。トランジスタQ22のベースは、第2入力端子(入力信号IN2の印加端)に接続されている。抵抗R21及びR22の第2端は、いずれも電源端子(電源電圧VPの印加端)に接続されている。
【0057】
電圧制御部LMT2は、入力段の駆動電流を生成する電流源I21の両端間電圧(エミッタ電圧Vbと接地電圧VNとの差電圧)を所定の電圧範囲内に制限することにより、演算増幅器の入力異常時や電源異常時に出力異常を発生させる。なお、上記の電圧範囲を定める上限値及び下限値については、接地電圧VNと周囲温度Tの関数f(VP,T)として設定することが望ましい。周囲温度Tに応じて上記の電圧範囲をどのように変動させるのかについては、演算増幅器の回路構成や設計仕様に応じて適宜調整すればよい。また、周囲温度Tについては、回路設計シミュレータ10の基本パラメータとして入力された値を参照すればよい。
【0058】
例えば0Vの接地電圧VNに対して−0.5Vの入力信号IN1またはIN2が印加された場合、トランジスタQ11及びQ12のエミッタ電圧Vbは、接地電圧VNより低くなろうとする。現実の演算増幅器でこのような状況が生じた場合には、電流源I21から入力段に駆動電流を流すことができなくなるので、実際にエミッタ電圧Vbが接地電圧VNよりも低くなることはない。その結果、トランジスタQ21及びQ22を正しくオン/オフさせることができなくなるので、演算増幅器は正しく動作することができなくなる。
【0059】
一方、演算増幅器の従来型マクロモデルでは、たとえエミッタ電圧Vbが接地電圧VNより低電圧であっても、理想的な特性を有する電流源I21から入力段に駆動電流を流すことができるので、演算増幅器の従来型マクロモデルは何ら問題なく動作してしまい、入力異常や電源異常を看過するおそれがあった。
【0060】
これに対して、電圧制御部LMT2を備えた第2実施形態(例A)のマクロモデルであれば、電流源I21の両端間電圧(Vb−VN)が所定の電圧範囲内(Vb−VN>Vth(例えば0.2V))に制限される。例えば、0Vの接地電圧VNに対して−0.5Vの入力信号IN1またはIN2が印加された場合であっても、トランジスタQ21及びQ22のエミッタ電圧Vbは、VN+Vth(例えば0.2V)までしか下がらなくなる。その結果、電流源I21から入力段に駆動電流を流したとしても、トランジスタQ21及びQ22を正しくオン/オフさせることができなくなるので、演算増幅器は正しく動作することができなくなる。このような動作異常は、正に現実の演算増幅器と同様である。
【0061】
従って、第2実施形態(例A)のマクロモデルを用いてアナログ回路のシミュレーション検証を行うことにより、入力異常や電源異常を見逃すことなく、当該アナログ回路の特性評価や動作チェックなどを行うことができるので、アナログ回路の試作に要する費用や時間を削減することが可能となる。
【0062】
なお、第2実施形態のマクロモデルについては、
図5Aで示した構成以外にも、種々の変形を行うことが可能である。例えば、
図5Bで示すように、npn型バイポーラトランジスタQ21及びQ22をNチャネル型電界効果トランジスタN21及びN22に置き換えることも可能である。また、
図5Cや
図5Dで示すように、抵抗R21及び R22に代えて、pnp型バイポーラトランジスタQ23及びQ24(またはPチャネル型電界効果トランジスタP21及びP22)から成る能動負荷を接続しても構わない。
【0063】
<第3実施形態>
図6Aは、演算増幅器のマクロモデルの第3実施形態(例A)を示す図である。第3実施形態(例A)のマクロモデルは、入力段ST1と、増幅段ST2と、出力段ST3と、を有するほか、さらに出力制御部CTRL1を有する。なお、第3実施形態のマクロモデルにおいて、入力段ST1は、2つのpnp型バイポーラトランジスタから成る入力差動対を含んでいる。
【0064】
出力制御部CTRL1は、異常判定に際して入力信号IN1及びIN2と電源電圧VPを監視し、演算増幅器の入力異常時や電源異常時には、演算増幅器の入力段ST1を制御して出力異常を発生させる。
【0065】
例えば、例えば3Vの電源電圧VPに対して3.5Vの入力信号IN1またはIN2が印加された場合、出力制御部CTRL1は、入力異常や電源異常が生じていると判定して演算増幅器の出力信号OUTが異常値(例えばゼロ)となるように、入力段ST1の出力動作を制御する。
【0066】
なお、出力制御部CTRL1では、異常判定に際して周囲温度Tも監視することが望ましい。周囲温度Tに応じて異常判定基準をどのように変動させるのかについては、演算増幅器の回路構成や設計仕様に応じて適宜調整すればよい。また、周囲温度Tについては、回路設計シミュレータ10の基本パラメータとして入力された値を参照すればよい。
【0067】
また、第3実施形態のマクロモデルについては、
図6Aで示した構成以外にも、種々の変形を行うことが可能である。例えば、
図6Bや
図6Cで示すように、入力段ST1の出力制御に代えて、増幅段ST2や出力段ST3の出力制御を行う構成としても構わない。また、図示はしていないが、入力差動対を形成するトランジスタをpnp型バイポーラトランジスタからPチャネル型電界効果トランジスタに置き換えたり、入力差動対に接続される負荷を受動素子から能動素子に変更したりすることも任意である。
【0068】
<第4実施形態>
図7Aは、演算増幅器のマクロモデルの第4実施形態(例A)を示す図である。第4実施形態(例A)のマクロモデルは、入力段ST1と、増幅段ST2と、出力段ST3と、を有するほか、さらに出力制御部CTRL2を有する。なお、第4実施形態のマクロモデルにおいて、入力段ST1は、2つのnpn型バイポーラトランジスタから成る入力差動対を含んでいる。
【0069】
出力制御部CTRL2は、異常判定に際して入力信号IN1及びIN2と接地電圧VNを監視し、演算増幅器の入力異常時や電源異常時には、演算増幅器の入力段ST1を制御して出力異常を発生させる。
【0070】
例えば、例えば0Vの接地電圧VNに対して−0.5Vの入力信号IN1またはIN2が印加された場合、出力制御部CTRL2は、入力異常や電源異常が生じていると判定して演算増幅器の出力信号OUTが異常値(例えばゼロ)となるように、入力段ST1の出力動作を制御する。
【0071】
なお、出力制御部CTRL2では、異常判定に際して周囲温度Tも監視することが望ましい。周囲温度Tに応じて異常判定基準をどのように変動させるのかについては、演算増幅器の回路構成や設計仕様に応じて適宜調整すればよい。また、周囲温度Tについては、回路設計シミュレータ10の基本パラメータとして入力された値を参照すればよい。
【0072】
また、第4実施形態のマクロモデルについては、
図7Aで示した構成以外にも、種々の変形を行うことが可能である。例えば、
図7Bや
図7Cで示すように、入力段ST1の出力制御に代えて、増幅段ST2や出力段ST3の出力制御を行う構成としても構わない。また、図示はしていないが、入力差動対を形成するトランジスタをnpn型バイポーラトランジスタからNチャネル型電界効果トランジスタに置き換えたり、入力差動対に接続される負荷を受動素子から能動素子に変更したりすることも任意である。
【0073】
<第5実施形態>
図8は、演算増幅器のマクロモデルの第5実施形態を示す図である。第5実施形態のマクロモデルは、駆動電流生成部IDRVと、出力電流生成部IOUTと、出力電流検出部IDETと、帰還電流生成部IFBと、を有する。
【0074】
駆動電流生成部IDRVは、電源端子VPと接地端子VNとの間で、演算増幅器の駆動電流Idrvを生成する。駆動電流Idrvの電流値は、電源端子VPに印加される電源電圧と、接地端子VNに印加される接地電圧とに応じて決定される。
【0075】
出力電流生成部IOUTは、出力端子OUTと理想接地との間で、演算増幅器の出力電流Ioutを生成する。
【0076】
出力電流検出部IDETは、出力電流Ioutの大きさや向きを検出する。SPICE系の回路設計シミュレーションプログラムでは、起電圧0Vの電圧源を出力電流検出部IDETとして用いることができる。
【0077】
帰還電流生成部IFBは、電源端子VPと理想接地との間、或いは、理想接地と接地端子VNとの間で、出力電流Ioutに応じた帰還電流Ix及びIyを生成する。具体的に述べると、帰還電流生成部IFBは、理想接地から出力端子OUTに向けて出力電流Ioutが流れているときには、電源端子VPから理想接地に向けて流れる帰還電流Ixを生成し、出力端子OUTから理想接地に向けて出力電流Ioutが流れているときには、理想接地から接地端子VNに向けて流れる帰還電流Iyを生成する。
【0078】
なお、演算増幅器がA級またはB級の場合には、帰還電流Ix及びIyのいずれについても出力電流Ioutの全てを流せばよい。一方、演算増幅器がC級以上の場合、帰還電流Ixについては出力電流Ioutの一部を流せばよく、帰還電流Iyについては出力電流Ioutの全てを流せばよい。
【0079】
このように、第5実施形態のマクロモデルでは、演算増幅器の出力端子OUTに流れる出力電流Ioutに応じて、電源端子VPや接地端子VNに帰還電流Ix及びIyを流すことができる。従って、第5実施形態のマクロモデルでは、演算増幅器の駆動電流Idrvと出力電流Ioutとの間に整合性を持たせることができるので、基板配線のインピーダンス等に起因する電源電圧の低下や接地電圧の浮き上がりをシミュレーション検証することが可能となる。特に、演算増幅器を高ゲインに設計する場合には、本構成を採用することが望ましい。
【0080】
<実施形態の組み合わせ>
上記では、演算増幅器のマクロモデルに含まれる種々の構成要素のうち、入力段、増幅段、及び、出力段に関する第1〜第4実施形態と、駆動電流生成部及び出力電流生成部に関する第5実施形態と、を個別に説明したが、第1〜第4実施形態のいずれかと第5実施形態とを任意に組み合わせることも可能である。このような構成とすることにより、シミュレーション演算時の負荷は多少大きくなるものの、より実機に近い応答を模擬することが可能となる。
【0081】
<その他の変形例>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、CAE[Computer Aided Engineering]、回路設計、モデリングなどの分野で好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 回路設計シミュレータ(コンピュータ)
11 演算部
12 記憶部
13 操作部
14 表示部
15 通信部
20 電気通信回線(インターネット)
30X、30Y、30Z サーバ
100 回路設計シミュレーションプログラム
110 メインプログラム
111 回路作成モジュール
112 部品参照モジュール
113 プローブ設置モジュール
114 波形描画モジュール
115 波形解析モジュール
120 モデルライブラリ
121 受動素子モデル
122 能動素子モデル
123 マクロモデル
Tr1、Tr2 Pチャネル型電界効果トランジスタ
R1〜R7 抵抗
D1〜D5 ダイオード
C1〜C3 キャパシタ
V1〜V8 電圧源
I1〜I4 電流源
Q11、Q12、Q23、Q24 pnp型バイポーラトランジスタ
Q13、Q14、Q21、Q22 npn型バイポーラトランジスタ
P11、P12、P21、P22 Pチャネル型電界効果トランジスタ
N11、N12、N21、N22 Nチャネル型電界効果トランジスタ
R11、R12、R21、R22 抵抗
I11、I21 電流源
LMT1、LMT2 電圧制御部
CTRL1、CTRL2 出力制御部
ST1 入力段
ST2 増幅段
ST3 出力段
IDRV 駆動電流生成部
IOUT 出力電流生成部
IDET 出力電流検出部
IFB 帰還電流生成部