特許第6038504号(P6038504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038504
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20161128BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20161128BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   E02F9/00 Q
   F01N3/08 B
   F01N3/28 301C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-143419(P2012-143419)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-5697(P2014-5697A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年8月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 祐貴
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/139177(WO,A1)
【文献】 特開2001−279724(JP,A)
【文献】 特開2008−240676(JP,A)
【文献】 特開2008−291828(JP,A)
【文献】 特開2002−371831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F01N 3/08
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
旋回フレームの前部にブーム取り付け用のブーム支持ブラケットが設けられる上部旋回体と、
前記旋回フレームの右前部の工具箱付近における前記ブーム取り付け用のブーム支持ブラケットの外側に配置され、液体還元剤が貯留され、深さに応じて断面積が異なる形状である液体還元剤用タンクと、を備える建設機械において、
前記液体還元剤用タンクの側面と平行に直線的に移動することで、前記液体還元剤用タンク内の液体還元剤の液面レベルを検出する液面レベル検出センサと、
前記建設機械の姿勢を検出する姿勢検出センサと、
前記液面レベル検出センサから得られる情報を処理する処理装置とを備え、
前記処理装置は、前記液面レベル検出センサにより検出された液面レベルと、前記姿勢検出センサにより検出された姿勢と、前記液体還元剤用タンクの形状との関係に基づいて、前記液体還元剤用タンク内の液体還元剤の残量を算出することを特徴とする、建設機械。
【請求項2】
前記処理装置は、算出した液体還元剤の残量が所定基準を下回った場合に、建設機械の動作を抑制する、請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体還元剤が貯留される液体還元剤用タンクを備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジンを搭載した油圧ショベル等の建設機械では、高次の排ガス規制に対応すべく、ディーゼルエンジンの排気系に排ガス処理装置が設置され、ディーゼルエンジンからの排ガスは、排気管の下流側に設けたNOx還元触媒を通って大気中に放出される。
【0003】
従来、此種排ガス処理装置としては、尿素水溶液(液体還元剤)を用いた尿素選択還元型のNOx処理装置が多く採択され、尿素水溶液は金属製の液体還元剤用タンクに貯留されている。また、液体還元剤用タンクは液体還元剤供給パイプにより排気管に接続され、液体還元剤供給ポンプにより液体還元剤用タンク内の尿素水溶液を排気管に供給できるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−20936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に、この種の建設機械では、その動作中、液体還元剤用タンク内の液体還元剤の残量(液面レベル)はセンサにより監視されている。
【0006】
しかしながら、傾斜地等で作業する場合などで建設機械の姿勢が変化すると、液体還元剤用タンク内の液体還元剤の液面レベルが当該姿勢の変化に起因して変化するので、正確な液体還元剤の残量を算出するのが困難である。
【0007】
そこで、本発明は、建設機械の姿勢の影響を低減する態様で精度良く液体還元剤の残量を算出することができる建設機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、下部走行体と、
旋回フレームの前部にブーム取り付け用のブーム支持ブラケットが設けられる上部旋回体と、
前記旋回フレームの右前部の工具箱付近における前記ブーム取り付け用のブーム支持ブラケットの外側に配置され、液体還元剤が貯留され、深さに応じて断面積が異なる形状である液体還元剤用タンクと、を備える建設機械において、
前記液体還元剤用タンクの側面と平行に直線的に移動することで、前記液体還元剤用タンク内の液体還元剤の液面レベルを検出する液面レベル検出センサと、
前記建設機械の姿勢を検出する姿勢検出センサと、
前記液面レベル検出センサから得られる情報を処理する処理装置とを備え、
前記処理装置は、前記液面レベル検出センサにより検出された液面レベルと、前記姿勢検出センサにより検出された姿勢と、前記液体還元剤用タンクの形状との関係に基づいて、前記液体還元剤用タンク内の液体還元剤の残量を算出することを特徴とする、建設機械が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建設機械の姿勢の影響を低減する態様で精度良く液体還元剤の残量を算出することができる建設機械が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】建設機械の一例として油圧ショベルを示す側面図である。
図2】上部旋回体の後部を上面視で概略的に示す平面図である。
図3】液体還元剤用タンク70の設置状態を概略的に示す斜視図である。
図4】液体還元剤用タンク70内の尿素水溶液(液体還元剤)の残量を算出するための構成例を示す図である。
図5】建設機械が傾斜地で前傾となって作業している状態を模式的に示す図である。
図6】建設機械の姿勢(傾斜)が変化すると液面レベルセンサ82の検出値が示す距離が変化する原理を示す説明図である。
図7】処理装置80により実行されてよい尿素水溶液の残量に応じた建設機械の動作抑制制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0012】
図1は、建設機械の一例として油圧ショベルを示す側面図である。
【0013】
図1に示すように、下部走行体1上には上部旋回体2が旋回可能に装架され、上部旋回体2の前方一側部にキャブ3が設けられている。また、上部旋回体2の前方中央部にブーム4が俯仰可能に枢着され、該ブーム4の先端部にはアーム5が上下回動可能に連結されているとともに、該アーム5の先端部にバケット6が上下回動可能に取り付けられている。尚、掘削アタッチメントは、ブレーカや破砕機等のような他のアタッチメントであってもよい。
【0014】
図2は、上部旋回体の後部を上面視で概略的に示す平面図である。
【0015】
図2に示すように、上部旋回体2の後部にはエンジンルーム7が形成され、該エンジンルーム7内にはディーゼルエンジン8が設置されている。また、ディーゼルエンジン8の前方側(図2における手前側)には冷却ファン12が設けられているとともに、該冷却ファン12の前方にはラジエータ等を含む熱交換機ユニット13が設置されている。
【0016】
更に、ディーゼルエンジン8には排気管9が接続され、該排気管9の下流側には、高次の排ガス規制に対応すべく、排ガス処理装置10が設置されている。排ガス処理装置10としては、尿素水溶液(液体還元剤)を用いた尿素選択還元型のNOx処理装置が採択されている。
【0017】
図3は、液体還元剤用タンク70の設置状態を概略的に示す斜視図である。
【0018】
図3に示すように、前記上部旋回体2の旋回フレーム14の前部には左右一対のブーム取り付け用のブーム支持ブラケット17L,17Rが立設されている。ブーム支持ブラケット17L,17Rは、ブームフートピン(図示せず)を通すための穴172L,172Rをそれぞれ備える。ブームフートピンは、穴172L,172Rに幅方向Wに通され、ブーム4を回転可能に保持する。
【0019】
ブーム支持ブラケット17Lの外側であって、後方には燃料タンク18及びサンプタンク19が直列に配置されている。また、燃料タンク18の前側には、液体還元剤用タンク70が配置される。従って、図示の例では、前から液体還元剤用タンク70、燃料タンク18及びサンプタンク19が順に隣接して配置されている。尚、燃料タンク18及びサンプタンク19の順序は任意である。燃料タンク18及びサンプタンク19は、幅方向に横並びに配置されてもよい。液体還元剤用タンク70内には尿素水溶液が貯留されている。更に、液体還元剤用タンク70は液体還元剤供給パイプ(図示せず)を介して、排ガス処理装置10に接続されている。
【0020】
図4は、液体還元剤用タンク70内の尿素水溶液(液体還元剤)の残量を算出するための構成例を示す図である。
【0021】
処理装置80は、コンピューターにより構成される。処理装置80は、建設機械の制御を行う制御装置の一部であってもよい。尚、建設機械の制御方法は、ネガコン制御やポジコン、ロードセンシング等、任意であってよい。
【0022】
処理装置80には、液体還元剤用タンク70内の尿素水溶液の液面レベルを検出するセンサ82(以下、「液面レベルセンサ82」という)が接続される。液面レベルセンサ82の検出原理は任意であり、静電容量式、光学式等であってもよい。液面レベルセンサ82は、フロートレベルセンサであってもよい。
【0023】
処理装置80には、建設機械の姿勢(傾斜)を検出する傾斜センサ84が接続される。傾斜センサ84は、傾斜検出原理は任意であり、加速度センサを利用したものであってもよいし、水平面に対する液体の傾斜角度を検出するものであってもよい。また、傾斜センサ84は、建設機械のピッチ方向の傾斜(横方向の軸まわりの傾斜)を検出するものであってもよいし、建設機械のピッチ方向の傾斜及びロール方向の傾斜(前後方向の軸まわりの傾斜)を検出する2軸型であってもよい。
【0024】
処理装置80は、液面レベルセンサ82により検出された液面レベルを、傾斜センサ84により検出された傾斜に応じて補正する。これは、図5及び図6に模式的に示すように、傾斜地等で作業する場合などで建設機械の姿勢(傾斜)が変化すると、液面レベルセンサ82の検出値が示す距離が、建設機械の傾斜がゼロのときの正規の距離L0図6(B)参照)とは異なる距離L図6(A)参照)へと変化するためである。尚、図5では、建設機械が傾斜地で前傾となって作業している状態が示されているが、後傾になる場合や、左右に傾斜する場合もある。
【0025】
処理装置80は、液面レベルセンサ82の検出値が示す距離Lを、傾斜センサ84により検出された傾斜により補正するが、この補正方法は多種多様である。例えば、補正式(換算式)を用いてもよい。換算式は、液体還元剤用タンク70の形状と傾斜の関係から予め導出することができる。また、液面レベルセンサ82の検出値が示す距離Lと、傾斜センサ84により検出された傾斜と、液体還元剤用タンク70内の尿素水溶液の残量との関係を示すマップを用意し、このマップを利用して尿素水溶液の残量を算出してもよい。
【0026】
このように本実施例によれば、液面レベルセンサ82の検出値が、傾斜センサ84により検出された傾斜により補正されるので、建設機械の姿勢の影響を低減する態様で精度良く尿素水溶液の残量を算出することができる。尚、図6(A)に示したような傾斜に起因した正規の距離L0からのずれは、特に液体還元剤用タンク70が図6に示すような異形(深さに応じて断面積が急変する形状)であるときに顕著に現れる。従って、本実施例は、このような異形の液体還元剤用タンク70に対して好適である。特に、図3等に示すように液体還元剤用タンク70が建設機械右前部の工具箱付近に配置される場合には、空間的制約等から、必要な容量を確保するために液体還元剤用タンク70が異形となりやすくなる。但し、液体還元剤用タンク70が、直方体や立方体のような、深さに応じて断面積が略一定である形状(即ち異形で無い場合)であっても、液面レベルセンサ82を液体還元剤用タンク70の中央部に設置できない場合には同様のずれは発生するので(ずれ量は低減されるものの)、本実施例は適用可能である。
【0027】
図7は、処理装置80により実行されてよい尿素水溶液の残量に応じた建設機械の動作抑制制御の一例を示すフローチャートである。図7に示す処理ルーチンは、建設機械の動作中に所定周期毎に繰り返し実行されてよい。
【0028】
ステップ700では、処理装置80は、液面レベルセンサ82及び傾斜センサ84からの最新の検出値を取得する。尚、液面レベルセンサ82及び傾斜センサ84からの最新の検出値は、必ずしも同一周期で取得される必要はない。
【0029】
ステップ702では、処理装置80は、上記ステップ700で取得した液面レベルセンサ82の検出値を、上記ステップ700で取得した傾斜センサ84の検出値に基づいて補正し、尿素水溶液の残量(補正した残量)を算出する。尚、尿素水溶液の残量は、容積で表されてもよいし、液体還元剤用タンク70の全容積に対する比率で表されてもよいし、表現方法は任意である。
【0030】
ステップ704では、処理装置80は、上記ステップ702で算出した尿素水溶液の残量が、所定の基準値よりも多いか否かを判定する。尚、上記ステップ702で算出した尿素水溶液の残量は、フィルタ処理(過去所定周期分の複数のサンプルの平均等)を受けた上で、所定の基準値と比較されてもよい。所定の基準値は、排ガスを適切に浄化するのに必要な尿素水溶液の必要最小量に対応してもよい。上記ステップ702で算出した尿素水溶液の残量が、所定の基準値よりも多い場合は、そのまま終了する。他方、上記ステップ702で算出した尿素水溶液の残量が、所定の基準値以下の場合は、ステップ706に進む。
【0031】
ステップ706では、処理装置80は、建設機械の動作抑制を実行する。建設機械の動作抑制は、例えば各種のアクチュエータ(例えばブーム4等を駆動するためのアクチュエータ)に圧油を供給するポンプの吐出流量を制限することや、エンジン回転数を制限することにより実現されてもよい。
【0032】
このようにして図7に示す処理によれば、建設機械の姿勢に応じて補正して得られた尿素水溶液の残量に基づいて、建設機械の動作抑制を実行するので、信頼性の高い態様で動作抑制を行うことができる。
【0033】
尚、図7に示す処理において、建設機械の動作抑制は段階的に実行されてもよい。例えば、上記ステップ702で算出した尿素水溶液の残量が、所定の第1基準値よりも小さいが所定の第2基準値よりも大きい場合は、ポンプの吐出流量を制限するのみとし、上記ステップ702で算出した尿素水溶液の残量が所定の第2基準値よりも小さい場合は、エンジンを停止することとしてもよい。
【0034】
また、図7に示す処理では、上記ステップ700で取得した液面レベルセンサ82の検出値を、上記ステップ700で取得した傾斜センサ84の検出値に基づいて補正して得られる尿素水溶液の残量を、所定の基準値と比較しているが、等価的に、上記ステップ700で取得した液面レベルセンサ82の検出値から得られる尿素水溶液の残量を、上記ステップ700で取得した傾斜センサ84の検出値に基づいて補正した所定の基準値と比較してもよい。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 キャブ
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 エンジンルーム
8 ディーゼルエンジン
9 排気管
10 排ガス処理装置
12 冷却ファン
13 熱交換機ユニット
14 旋回フレーム
17L,17R ブーム支持ブラケット
172L,172R 穴
18 燃料タンク
19 サンプタンク
70 液体還元剤用タンク
80 処理装置
82 液面レベルセンサ
84 傾斜センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7