(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1実施形態による洗濯乾燥機について
図1〜
図6を参照して説明する。
図1において、外箱1の内部には水槽2が配設され、その水槽2の内部にはドラム3が配設されている。水槽2及びドラム3は、共に一端部が閉塞された円筒状を成している。この場合、水槽2及びドラム3により、衣類の洗い(洗剤洗い及びすすぎ洗い)、脱水、乾燥に用いる槽が構成される。そして前記ドラム3の内部は、衣類が収容される収容室3aを構成している。
【0009】
これら水槽2及びドラム3は、前側、即ち、
図1中、左側の端面部にそれぞれの開口部4,5を有している。このうち、ドラム3の開口部5は、衣類が出し入れされ、その開口部5は水槽2の開口部4に囲繞されている。開口部4は、外箱1の前面部に形成された衣類出し入れ用の開口部6に、ベローズ7を介して連結されている。外箱1の開口部6には扉8が開閉可能に設けられている。
【0010】
ドラム3は、開口部5の周囲に、例えば液体封入形の回転バランサ9が設けられ、周側部、つまり、ドラム3の胴部のほぼ全域に孔10が形成されている(
図1に一部のみ図示)。この孔10は、洗濯時及び脱水時に通水孔として機能し、乾燥時には通風孔として機能する。ドラム3の周側部の内面には複数のバッフル11が該ドラム3の内方に突出して設けられている。ドラム3の後側の端面部には、その中心と同心となる環状配置により複数の温風導入口12が形成されている。
【0011】
水槽2には、前側の端面部の上部、つまり、開口部4より上方の部分に温風出口13が形成され、後側の端面部の上部に、温風導入口12の回転軌跡に対向させて温風入口14が形成されている。水槽2の底部には排水口15が設けられている。この排水口15には、水槽2外で排水弁16が接続され、更に、排水弁16に排水ホース17が接続されて、これらにより水槽2内の水を機外に排出できるようにしている。
【0012】
水槽2の背面部には洗濯機モータ18が取り付けられており、これの回転軸19を水槽2内に挿通させて、その先端部に、ドラム3の後側の端面部の中心部が取り付けられている。これにより、ドラム3は、水槽2に同軸状で回転可能に支持されている。即ち、ドラム3は、洗濯機モータ18により直接回転駆動される構成で、洗濯機モータ18によるダイレクトドライブ方式が採用されている。
【0013】
なお、水槽2は、複数のサスペンション20(
図1に、1つのみ図示)を介して外箱1に弾性支持されている。その支持形態は、水槽2の軸方向が、前後となる横軸状かつ、前上がりの傾斜状をなしている。さらに、この水槽2に支持されたドラム3も、同形態となっている。洗濯機モータ18は、この場合アウターロータ形のブラシレスDCモータで構成されており、ドラム3を回転させる駆動手段として機能するようになっている。
【0014】
水槽2の下方、即ち、外箱1の底面上には、台板21が配置され、この台板21上に通風ダクト22が配置されている。通風ダクト22は、前端部の上部に吸風口23を有している。この吸風口23には、水槽2の温風出口13が、還風ダクト24及び接続ホース25を介して接続されている。なお、還風ダクト24は、水槽2の開口部4の左側を迂回するように配管されている。
【0015】
通風ダクト22の後端部には、循環用送風機26のケーシング27が連設されている。このケーシング27の出口部28は、接続ホース29及び給風ダクト30を介して、水槽2の温風入口14に接続されている。なお、給風ダクト30は、前記洗濯機モータ18の左側を迂回するように配管されている。ここで、還風ダクト24、接続ホース25、通風ダクト22、循環用送風機26のケーシング27、接続ホース29、給風ダクト30により、水槽2の温風出口13と温風入口14とが接続されて、循環風路31が構成されている。この循環風路31は、水槽2内と連通しているとともにドラム3内とも連通している。なお、循環用送風機26は、この場合、遠心ファンであり、ケーシング27の内部に遠心羽根車32を有するとともに、その遠心羽根車32を回転させるモータ33をケーシング27の外部に有している。循環用送風機26は、ドラム3内の空気を、循環風路31を通して循環させる送風手段を構成している。この循環用送風機26の運転により循環風路31内に矢印Aで示す循環空気流が形成される。
【0016】
そして、循環風路31中、通風ダクト22の内部において、収容室3aの空気出口側である温風出口13側には蒸発器34が配設されている。又、循環風路31中、通風ダクト22の内部において、当該蒸発器34より前記循環空気流の下流側には凝縮器35が配設されている。これらの蒸発器34及び凝縮器35は、いずれも詳しくは図示しないが、冷媒流通パイプに伝熱フィンを細かいピッチで多数配設して成るフィン付きチューブ形のもので、熱交換性に優れており、それらの伝熱フィンの各間を、通風ダクト22内の前述の循環空気流(循環風)が通るようになっている。
【0017】
蒸発器34及び凝縮器35は、圧縮機36、及び、特には電子式の制御弁からなる絞り弁(減圧手段)43(
図2参照)とともに温風供給手段たるヒートポンプ37を構成するもので、このヒートポンプ37においては、冷媒管路37aによって、圧縮機36、凝縮器35、絞り弁43、除湿手段たる蒸発器34の順にこれらを閉ループに接続しており(冷凍サイクル)、圧縮機36が作動することによって冷媒を循環させるようになっている。
【0018】
前記ヒートポンプ37の能力(乾燥能力)は、圧縮機36の回転数や循環用送風機26の回転数により決定されるものである。
なお、外箱1の内上部には、洗濯乾燥機の制御に必要な電源系の制御部38及び表示系の制御部39と、水槽2内に給水するための給水弁40、給水ケース41、及び給水ホース42が配設されている。そして、循環風路31の内部には、温風出口13と蒸発器34との間に位置して、前記収容室3aから出て前記蒸発器34を通過する前の空気の温度を検出する蒸発器通過前空気温度センサとしての前側空気温度センサ44が配置されている。又、前記蒸発器34には、
図2に示すように、冷媒入口側の蒸発器温度を検出する蒸発器入口温度センサ45が設けられている。
この蒸発器入口温度センサ45が検出する冷媒入口側の蒸発器34の温度は蒸発器34を通過した空気の温度と略等価である。つまり、この蒸発器入口温度センサ45を、蒸発器34を通過した空気の温度を検出する温度センサとして使用している。
【0019】
図3に制御系の機能ブロック図を示すが、制御装置47は、前記制御部38,39(
図1参照)を含むもので、例えばマイクロコンピュータやRAM、ROM等で構成されている。この制御装置47は、予め記憶された制御プログラムを実行することで、洗濯乾燥機の運転全般を制御する制御手段47aとして機能する。この制御手段47aには、前記収容室3aから出て前記蒸発器34を通過する前の空気の相対湿度情報を取得する蒸発器通過前空気相対湿度情報取得手段としての前側空気相対湿度情報取得手段47b、前記蒸発器34を通過して前記凝縮器35を通過する前の空気の相対湿度情報を取得する蒸発器通過後空気相対湿度情報取得手段としての後側空気相対湿度情報取得手段47c、衣類重量検出手段47d、必要除湿量検出手段47e、乾燥率増加値算出手段47f、乾燥制御手段47g、絶対湿度割出手段47hが含まれる。
【0020】
さらに制御装置47には記憶手段として不揮発性メモリ51が内蔵されていている。この不揮発性メモリ51には、後述するが、乾燥率増加値の変化パターンである基準データS(
図5(a)参照)、当該基準データSに対応する蒸発器通過前空気相対湿度データI(
図5(b)参照)と、蒸発器通過後空気相対湿度データJ(
図5(c)参照)が記憶されている。さらにこの不揮発性メモリ51には、基準データSに対する制御用許容値Skなどが記憶されている。この制御用許容値Skは、当該基準データSに対する制御用の上限値及び下限値たるものである。
【0021】
前記制御装置47には、洗濯乾燥機の運転に係る操作をユーザーがするための操作手段たる操作部53から各種操作信号が入力される。そして、その操作結果や現在の運転状況、及び異常表示などを含めた各種表示が、例えば液晶ディスプレイからなる表示手段たる表示部54に表示される。また、制御装置47には、水槽2内の水位を検知するように設けられた水位センサ48から、水位検知信号が入力される。そして、制御装置47には、前側空気温度センサ44や、蒸発器入口温度センサ45から温度検知信号が入力されるとともに、洗濯機モータ18の回転を検知するように設けられたモータ回転センサ49、圧縮機36の回転を検知するように設けられた圧縮機回転センサ50から、回転検知信号がそれぞれ入力される。
【0022】
制御装置47における衣類重量検出手段47dとしての機能について述べる。この衣類重量検出手段47dは、ドラム3内に収容された衣類の重量を検出するための機能であり、その衣類重量の検出は種々の方法を用いて行うことができる。洗濯機モータ18のモータ電流値、例えばベクトル制御におけるq軸電流値は、ドラム3内に投入された衣類の重量と密接な関係にある。従って、洗濯機モータ18を所定回転数、例えば75rpmで回転したときの、このようなモータ電流値を、電流センサ55で検知することにより、洗濯負荷量を検出することができる。
【0023】
そして、制御装置47は、各種の入力信号並びにあらかじめ記憶された制御プログラムに基づいて、水槽2内(ドラム3内)に給水するように設けた給水弁40と、ドラム3駆動用の洗濯機モータ18、水槽2内(ドラム3内)から排水するように設けた排水弁16、圧縮機36、循環用送風機26、及び絞り弁43を、駆動回路52を介して駆動制御する。
【0024】
ここで、前記不揮発性メモリ51に記憶された、前記基準データS、蒸発器通過前空気相対湿度データI(蒸発器通過前空気相対湿度情報)、蒸発器通過後空気相対湿度データJ(蒸発器通過後空気相対湿度情報)、制御用許容値Skについて説明する。
前記基準データSには、複数のデータがあり、
図5(a)ではそのうちの例えば二つのデータを示している。
図5(a)のデータ線S1は、衣類が含む水分量つまり必要除湿量がH1であるとき、乾燥行程の開始から所定目標時間TE1(後述する乾燥行程の予測所要時間TE)で衣類を所定目標乾燥率K1(例えば102%)とさせるための乾燥率増加値の時間的な変化パターンである。
【0025】
この場合、乾燥行程の開始時点での必要除湿量は、衣類量や脱水率などによってまちまちであるため、上記基準データSは夫々必要除湿量に対応して設定されている。例えば
図5(a)における別のデータ線S2は、前記必要除湿量H1より多い必要除湿量H2に応じた基準データであり、この場合、所定目標時間は上記TE1より若干長いTE2となる。但し、目標乾燥率は、この実施形態では、同じ乾燥の仕上がりを得るために同じ所定目標乾燥率K1としている。
上記必要除湿量は、最小レベル範囲、やや少ないレベル範囲、中程度レベル範囲、やや多いレベル範囲、最大レベル範囲といったように、複数段階(この場合5段階)に区分けして設定しても良い。この場合5つの基準データを記憶している。
【0026】
ここで、前記乾燥率増加値とは、次のことをいう。乾燥行程において、所定時間ti間隔ごとに乾燥率Kxを算出するが(後述する)、今回の算出乾燥率Kxから前回の乾燥率Kx´を差し引いた値(ΔK)が、乾燥率増加値である。つまり今回の乾燥率Kxが前回の乾燥率Kx´に対してどれだけ増加したかを示す値である。
ΔK=Kx−Kx´ ・・・(1)
従って、実乾燥運転での任意の時間での乾燥率増加値ΔKが、当該時間での上記基準データS(S1やS2)が示す乾燥率増加値SΔKの前記上限値としての(SΔK+Sk)と下限値としての(SΔK−Sk)との間を順守するように制御すれば、所定目標時間到達時点で所定目標乾燥率(もしくはこれに極めて近い乾燥率)となることが分る。
【0027】
又、前記基準データSに対応する蒸発器通過前空気相対湿度データIについて説明する。この蒸発器通過前空気相対湿度データIは、
図5(b)の例えばデータ線I1やI2で示されている。この蒸発器通過前空気相対湿度データIにおける蒸発器通過前空気相対湿度とは、
図2において、循環空気流が蒸発器34を通過する前(地点Pi辺り)の空気相対湿度をいうものであり、データ線I1は、必要除湿量がH1であるときに、前記データ線S1に対応する空気相対湿度の基準変化を示している。データ線I2は、必要除湿量がH2であるときに、前記データ線S2に対応する空気相対湿度の基準変化を示している。これらデータ線I1やI2は予め実験的に求められている。この蒸発器通過前空気相対湿度データIは基準データSと同数設けられている。
【0028】
又、前記基準データSに対応する蒸発器通過後空気相対湿度データjについて説明する。この蒸発器通過後空気相対湿度データJは、
図5(c)の例えばデータ線j1やj2で示されている。この蒸発器通過後空気相対湿度データJにおける蒸発器通過後空気相対湿度とは、
図2において、循環空気流が蒸発器34を通過後で凝縮器35通過前(地点Pj辺り)の空気相対湿度をいうものであり、データ線J1は、必要除湿量がH1であるときに、前記データ線S1に対応する空気相対湿度の基準変化を示している。データ線J2は、必要除湿量がH2であるときに、前記データ線S2に対応する空気相対湿度の基準変化を示している。これらデータ線J1やJ2は予め実験的に求められている。この蒸発器通過後空気相対湿度データJも基準データSと同数設けられている。
【0029】
前記絶対湿度割出手段47hは、次の式(周知)を用いて絶対湿度(容積絶対湿度)eを計算により算出する(割り出す)。
まず、空気温度をt[℃]、飽和水蒸気圧をEとすると、
E = 6.11 × 10( 7.5 × t / ( 237.3 + t )) ・・・(2)
相対湿度をRHとすると、測定空気の(現在の)水蒸気圧(水蒸気分圧) Epは、
Ep = E × RH / 100 ・・・(3)
容積絶対湿度eは
e = 217 × Ep / T ・・・(4)
T : 気温 [K]
ここで
図6には空気温度に対する飽和水蒸気量を示しており、空気温度が低くなるほど、飽和水蒸気量が低くなることが分る。蒸発器34を通過前の空気の温度は高く、通過後の空気温度は低いため、蒸発器34を通過後の飽和湿度量も低くなる。従って、蒸発器34の通過後では、絶対湿度としては極めて低いが、空気温度が低いから相対湿度としては
図5(c)にデータ線JIやJ2で示すように、乾燥開始から終了まで80〜90%と高い。これに対して、蒸発器34を通過前の空気温度は乾燥開始から終了まで高く、これに対して衣類水分量が減少してゆくから、絶対湿度は低くなり、もって相対湿度は
図5(b)に示すように順次低くなる。
【0030】
なお、上述の
図6の関係を絶対湿度データとして記憶し、空気温度と空気相対湿度とから、当該絶対湿度データに基づいて絶対湿度を割り出すようにしても良い。
前記制御装置47の制御手段47aの制御内容(前側空気相対湿度情報取得手段47b、後側空気相対湿度情報取得手段47c、衣類重量検出手段47d、必要除湿量検出手段47e、乾燥率増加値算出手段47f、乾燥制御手段47g、絶対湿度割出手段47hが含まれる)について
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
制御装置47の制御に基づいて行われる例えば洗濯乾燥運転(洗濯行程及び乾燥行程を含む)について説明する。なお、洗濯行程は、洗剤洗い行程、すすぎ洗い行程、脱水行程を含む。
ユーザーが衣類をドラム3内に収容し、全自動コースである洗濯乾燥運転を選択して運転を開始すると、
図4に示すように、ステップR1で、前述した衣類重量検出手段47dにより、乾布状態の衣類の重量を検出する。この検出重量をWa[g]とする。次のステップR2では、この検出重量Waに基づいて洗濯乾燥運転終了までの所要時間TAを予測し、表示部54にこの予測終了時間TAを表示する。この予測終了時間TAは、洗剤洗い行程の予測所要時間TBと、すすぎ洗い行程の予測所要時間TCと、脱水行程の予測所要時間TDと、乾燥行程の予測所要時間である目標時間TEとを含む。
【0032】
次のステップR3では、ソフトタイマーをスタートする。そして、次のステップR4では、洗剤洗い行程を前記予測所要時間TBで実行する。この洗剤洗い行程では、給水弁40から給水ケース41及び給水ホース42を経て水槽2内に給水する動作(給水初期に洗剤が自動投入される)が行われる。続いて、洗濯機モータ18が作動されることにより、ドラム3が低速で正逆両方向に交互に回転される。
【0033】
次のステップR5ではすすぎ洗い行程を、前記予測所要時間TCで、上述の洗剤洗い行程と同様の動作(但し洗剤投入はない)により実行する。
次のステップR6では、脱水行程を、前記予測所要時間TDで実行する。この脱水行程では、水槽2内の水を排出した後、ドラム3を高速で一方向に回転させる動作が行われる。これにより、ドラム3内の衣類は遠心脱水される。なお、この脱水行程では脱水開始当初にアンバランス回転検知動作が実行されるが、アンバランス回転が発生しなければ前記予測所要時間TDで脱水行程が終了するが、アンバランス回転が発生するとアンバランス修正処理が実行されるため、その分脱水行程の前記予測所要時間TDが延長されることになる。但し、洗濯乾燥運転の予測終了時間TAからみれば前記延長の時間は極めて小さく、当該予測終了時間TAを変更する必要性はほとんどない。従って、脱水行程終了時点における洗濯乾燥運転の残り時間は乾燥行程の実行時間TEとして差支えがない。
【0034】
次のステップR7では、衣類重量検出手段47dにより、衣類の重量を再度検出する。
このときの検出重量をWb[g]とする。
次のステップR8では、
今回の検出重量Wbから最初の検出重量Waを差し引くことで、必要除湿量H[g](衣類に含まれる水分量)を算出(検出)する。そして、このステップR8では、この必要除湿量Hと、乾燥行程の目標時間TEに応じた基準データSを取り込む。
【0035】
次のステップR9では、乾燥行程を開始する。この乾燥行程は、次のことを行う。ドラム3を低速で正逆両方向に回転させるとともに、循環用送風機26のモータ33を予め設定された回転数で駆動する。すると、遠心羽根車32の送風作用で、
図1に実線矢印Aで示すように、循環空気流が発生する。すなわち、水槽2内の空気が温風出口13から還風ダクト24及び接続ホース29を経て通風ダクト22内に流入する。また、この時に、ヒートポンプ37の圧縮機36を予め定められた回転数で駆動する。これにより、ヒートポンプ37に封入された冷媒が圧縮されて高温高圧の冷媒となり、その高温高圧の冷媒が凝縮器35に流れて、通風ダクト22内の空気と熱交換する。その結果、通風ダクト22内の空気が加熱され、反対に、冷媒の温度は低下して液化される。この液化された冷媒が、次に、絞り弁43を通過して減圧された後、蒸発器34に流入し、気化する。それにより、蒸発器34は通風ダクト22内の空気を冷却する。蒸発器34を通過した冷媒は圧縮機36に戻る。
【0036】
これらにより、水槽2内から通風ダクト22内に流入した空気は、蒸発器34で冷却されて除湿され、その後に凝縮器35で加熱されて温風化される。そして、その温風が接続ホース25、給風ダクト30を経て、温風入口14から水槽2内に供給され、更に、温風導入口12からドラム3内に供給される。ドラム3内に供給された温風は衣類の水分を奪った後、温風出口13から還風ダクト24及び接続ホース29を経て通風ダクト22内に流入する。このように、蒸発器34と凝縮器35を有する通風ダクト22とドラム3との間、即ち、循環風路31を空気が循環することにより、ドラム3内の衣類が乾燥される。従って、この場合、ドラム3内である収容室3aは乾燥室として機能する。
【0037】
次のステップR10では、所定時間間隔である時間tiごとに、前側空気温度センサ44による検出温度Qaと、蒸発器入口温度センサ45による検出温度Qbとを取り込み、さらに、前記不揮発性メモリ51に記憶された蒸発器通過前空気相対湿度データIからこの時点での前側空気相対湿度Ixを取り込む(前側空気相対湿度情報取得手段47b)と共に、蒸発器通過後空気相対湿度データJからこの時点での後側空気相対湿度Jxを取り込む(後側空気相対湿度情報取得手段47c)。
【0038】
そして、ステップR11で、前述の検出温度Qa、検出温度Qb、空気相対湿度Ix、空気相対湿度Jxから、次のようにして、前述した乾燥率増加値ΔKを算出する(乾燥率増加値算出手段47f)。
【0039】
まず、前述の検出温度Qa、空気相対湿度Ixを用いて、前述した式(2)〜(4)から、この時点での蒸発器34通過前の空気(前側空気)の絶対湿度e(この前側空気の絶対湿度をeaという)を求める。この場合(2)式のtにQaを代入し、(3)式のRHにIxを代入して、当該絶対湿度eaを求める。
同様にして、前述の検出温度Qb、空気相対湿度Jxを用いて、前述した式(2)〜(4)から、この時点での蒸発器34通過後の空気(後側空気)の絶対湿度e(この後側空気の絶対湿度をebという)を求める。
【0040】
そして、上述の前側空気の絶対湿度eaと、後側空気の絶対湿度ebと、積算通風量とに基づいて、所定時間ti間隔での除湿量増加値Hn(今回の除湿量から前回の除湿量の増加分)を算出する。
Hn=(ea−eb)×f
ここで、fは時間tiでの積算通風量、この積算通風量fは前記循環用送風機26のモータ33の回転数と時間tiとの積で求まる。
【0041】
そして、上記今回求めた除湿量増加値Hnを算出タイミング(取り込みタイミング)ごとに加算していくと、この時点までの積算除湿量HNが求められる。
HN=「今回の除湿量増加値Hn」+「これまでの除湿量増加値の合計」
この積算除湿量HNと前述の重量検出結果Wbとから、この時点での衣類の重量Wb´が求められる。
【0042】
Wb´=Wb−HN
このWb´からこの時点での乾燥率Kxが求められる。
Kx=(Wa/Wb´)/100[%]
そして、この時点での乾燥率Kxとし、前回の乾燥率をKx´とすると乾燥率増加値ΔKを前述の式(1)から求める(乾燥率増加値算出手段47f)。
【0043】
このようにして乾燥率増加値ΔKを求めた後、ステップR12に移行する。このステップR12では、この洗濯乾燥運転の経過時間が前述の予測終了時間TAに達したか否かを判断し、達していなければ、ステップR13に移行する。
そして、ステップR13では、この時点での乾燥率増加値ΔKに対して、前記基準データSにおけるこの時点での乾燥率増加値SΔKを読み込み、前記乾燥率増加値ΔKが当該乾燥率増加値SΔKに対して前記制御用許容値Sk以上上回っているか否かを判断する。つまり、
ΔK>=SΔK+Sk であるか否かを判断する。
【0044】
このステップR13で、前記乾燥率増加値ΔKが当該乾燥率増加値SΔKに対して前記制御用許容値Sk以上上回っていると判断されたときには、ステップR14に移行して、圧縮機36の能力である回転数を予め設定された回転数まで低下させると共に、循環用送風機26の能力であるモータ33の回転数を予め設定された回転数まで低下させる。
上記ステップR13で「NO」と判断されれば、ステップR15に移行する。このステップR15で、この時点での乾燥率増加値ΔKが前記基準データSの乾燥率増加値SΔKに対して前記制御用許容値Sk以上下回っているか否かを判断する。つまり、
ΔK=<SΔK−Sk であるか否かを判断する。
【0045】
ここで乾燥率増加値ΔKが前記基準データSの乾燥率増加値SΔKに対して前記制御用許容値Sk以上下回っていると判断されると、ステップR16に移行して、前述の圧縮機36の回転数を予め設定された回転数まで高めると共に、循環用送風機26の能力であるモータ33の回転数を予め設定された回転数まで高める。
【0046】
上述したステップR10〜ステップR16の制御により除湿量の変化ひいては乾燥率増加値ΔKの変化が前記基準データS(S1やS2)に合致するように収束する。従って、前述の予測終了時間TAに達した時点で、目標乾燥率K1に達することになる。この結果、前述のステップR12でこの洗濯乾燥運転の経過時間が前述の予測終了時間TAに達したと判断されたときには、上述の目標乾燥率K1の乾燥状態となる。すなわち、当初の予測終了時間TAで且つ過不足のない目標乾燥率K1で洗濯乾燥運転を実行できる。
【0047】
又、乾燥行程のみについていえば、当初予測された乾燥行程の目標時間TEで且つ目標乾燥率K1で乾燥行程を終了できる。
上述した実施形態においては、乾燥行程の開始前に、必要除湿量検出手段47eにより衣類に対する必要除湿量Hを検出し、乾燥率増加値算出手段47fにより、乾燥行程の実行時に、逐次、所定時間ti間隔での衣類の除湿量増加値Hnを、前側空気温度センサ44の検出温度Qa及び前側空気相対湿度Ixと、蒸発器入口温度センサ45の検出温度Qb及び後側空気相対湿度Jxと基づいて算出し、この算出した除湿量増加値Hnから前記所定時間ti間隔での衣類の乾燥率増加値ΔKを逐次算出する。そして乾燥制御手段47gにより、前記算出した任意時間の乾燥率増加値ΔKが、前記検出した必要除湿量Hに応じた基準データSが示す乾燥率増加値SΔKより制御用許容値Sk以上上回ったときにヒートポンプ37の能力を下げ、任意時間の乾燥率増加値ΔKが、基準データSが示す乾燥率増加値SΔKより制御用許容値Sk以上下回ったときにヒートポンプ37の能力を上げるようにした。
【0048】
この実施形態によれば、乾燥行程において、ヒートポンプ37の能力を、逐次、乾燥率増加値ΔKが衣類の必要除湿量Hに応じて設定された基準データSが示す乾燥率増加値SΔKに合致するように、制御することができ、乾燥行程を、当初予測された乾燥行程の目標時間TEで且つ目標乾燥率K1で終了できる。つまり、衣類を当初予定された乾燥率に当初予定された過不足のない乾燥行程目標時間で確実に乾燥終了させることができる。
【0049】
又、上記実施形態によれば、蒸発器34通過後の空気温度を検出する温度センサとして、蒸発器34の入口温度を検出する蒸発器入口温度センサ45を用いたから、次の効果がある。すなわち、蒸発器34の下流側は、凝縮器35との間のスペースがあまり大きくなく、当該スペース部分に空気温度センサを設置することが困難で、組付性も悪い。しかも、当該スペース部分に空気温度センサを設けると、近くに存在する凝縮器35の温度を検出するおそれもある。これに対処するために、この蒸発器入口温度センサ45が検出する冷媒入口側の蒸発器34の温度が蒸発器34を通過した空気の温度と略等価であることに着目し、この蒸発器入口温度センサ45を、蒸発器34を通過した空気の温度を検出する温度センサとして使用することで、上記組付性の悪化を防止できると共に凝縮器35の温度を検出するおそれもない。
【0050】
なお、スーパーヒート処理を行って圧縮機36の回転数を制御する場合では、この蒸発器入口温度センサ45を有効に利用できる。すなわち、スーパーヒート処理は、蒸発器の入口冷媒温度と出口冷媒温度との差に応じて圧縮機の回転数を所定に制御する処理であり、蒸発器の入口冷媒温度を検出するセンサとして上述の蒸発器入口温度センサ45を有効に利用できる。
【0051】
又、上記実施形態によれば、不揮発性メモリ51に、基準データSに対応する蒸発器通過前空気相対湿度データIと蒸発器通過後空気相対湿度データJとを記憶し、蒸発器通過前空気相対湿度情報取得手段としての前側空気相対湿度情報取得手段47bは、不揮発性メモリ51から蒸発器通過前空気相対湿度情報としての蒸発器通過前空気相対湿度データIを取得し、後側空気相対湿度情報取得手段47cは、不揮発性メモリ51から蒸発器通過後空気相対湿度情報として蒸発器通過後空気相対湿度データJを取得するようにしたから、蒸発器通過前空気相対湿度を検出する前側空気湿度センサ及び蒸発器通過後空気相対湿度を検出する後側空気相対湿度センサを設けずに済む。なお、前記蒸発器通過後空気相対湿度を検出する後側空気相対湿度センサを設ける場合には、蒸発器34と凝縮器35との間のスペースに設けることが考えられるが、前述したように当該スペースは狭いから前記後側空気相対湿度センサの組付けに苦慮する。しかしこの実施形態では、当該後側空気湿度センサに代えて前記蒸発器通過後空気相対湿度データJを用いるから、後側空気湿度センサを用いずに済み、組付けに苦慮することがない。
【0052】
又、上記実施形態においては、衣類の重量を検出する衣類重量検出手段47dと、表示手段としての表示部54とを備え、洗い、脱水、乾燥の各行程を連続して行う洗濯乾燥運転を実行する場合に、洗い行程の初期に前記衣類重量検出手段47dにより乾布状態の衣類の重量Waを検出し、この重量検出結果に応じて乾燥行程の前記目標時間TEを含む洗濯乾燥運転終了時間TAを予測し当該予測終了時間TAを前記表示部54に表示し、必要除湿量検出手段47eが、脱水行程の終了時に衣類重量検出手段47dにより衣類の重量Wbを検出し、この重量検出結果Wbと前記乾布状態での重量検出結果Waとから必要除湿量Hを検出するようにした。
この実施形態によれば、目標時間TEで乾燥行程を確実に終了できるから、洗濯乾燥運転を表示部54に表示された予測終了時間TAで確実に終了でき、信頼性の高い洗濯乾燥機を提供できる。
【0053】
次に
図7及び
図8は第2実施形態を示しており、次の点が第1実施形態と異なる。不揮発性メモリ51に蒸発器通過前空気相対湿度データIは記憶していない。この蒸発器通過前空気相対湿度データIに代えて、収容室3aから出て蒸発器34を通過する前の空気の相対湿度を検出する蒸発器通過前空気相対湿度センサとして前側空気相対湿度センサ61を地点pi近傍に設けている。そして、前記前側空気相対湿度情報取得手段47bは、前記前側空気相対湿度センサ61による検出相対湿度を蒸発器通過前空気相対湿度情報として取得するようにしている。
この第2実施形態によれば、蒸発器通過前空気相対湿度の実際値を取得することができ、乾燥率増加値の算出精度を向上させることできる。又、上記前側空気相対湿度センサ61はスペースに余裕がある蒸発器34前側(上流側)地点に設けるため、センサ61の組付けに苦慮することもない。
【0054】
なお、実施形態の洗濯乾燥機は次のように変更しても良い。脱水行程では脱水開始当初にアンバランス回転検知動作が実行され、アンバランス回転が発生しなければ前記予測所要時間TDで脱水行程が終了するが、アンバランス回転が何度も発生するとアンバランス修正処理が何度も実行されるため、その分脱水行程の前記予測所要時間TDが無視できない程度延長されることがある。この場合、その延長された時間をTDaとしたとき、乾燥行程の目標時間TEを(TE−TDa)に変更するようにしても良い。この場合、基準データSとしては、予め、この(TE−TDa)で目標乾燥率K1とする基準データをさらに記憶し、この基準データに基づいてヒートポンプの能力を制御するようにすれば良い。
【0055】
以上説明した実施形態の洗濯乾燥機によれば、乾燥行程において、ヒートポンプの能力を、逐次、乾燥率増加値が衣類の必要除湿量に応じて設定された基準データが示す乾燥率増加値に合致するように、制御することができ、乾燥行程を、当初予測された乾燥行程の目標時間で且つ目標乾燥率で終了できる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変更は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。