特許第6038553号(P6038553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038553
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】腐食環境捕捉器およびタービン
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20161128BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20161128BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20161128BHJP
   F01D 5/30 20060101ALI20161128BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20161128BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G01N1/10 C
   G01N17/00
   F01D25/00 P
   F01D25/00 Q
   F01D5/30
   C02F1/28 F
   C02F1/42 A
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-194742(P2012-194742)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-52195(P2014-52195A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山内 博史
(72)【発明者】
【氏名】池田 光晴
(72)【発明者】
【氏名】桜井 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】江藤 昌文
(72)【発明者】
【氏名】小林 新一
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−329567(JP,A)
【文献】 特開平05−118204(JP,A)
【文献】 特開平07−098311(JP,A)
【文献】 特開2002−131261(JP,A)
【文献】 米国特許第04509332(US,A)
【文献】 特表2003−525113(JP,A)
【文献】 特開2012−163559(JP,A)
【文献】 実開平06−049981(JP,U)
【文献】 特開平03−269234(JP,A)
【文献】 特開2011−012550(JP,A)
【文献】 特開2003−106947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/10−1/22
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータディスクと当該ロータディスクの外周部に嵌合される動翼とを有し、流体の持つエネルギーを前記ロータディスクの回転エネルギーに変換するタービンに曝される外部環境流体を捕捉する腐食環境捕捉器であって、
前記動翼または前記ロータディスクに着脱自在に装着され、前記ロータディスクと前記動翼との隙間に流入した外部環境流体を導入する開口部および当該開口部を介して外部環境流体に連通する収容空間が形成された捕捉器本体と、
前記収容空間内に設けられ、前記開口部から前記収容空間に流入した外部環境流体を捕捉する内部捕捉体とを有することを特徴する腐食環境捕捉器。
【請求項2】
請求項記載の腐食環境捕捉器において、前記収容空間と外部とを連通させて前記収容空間の内圧を外部に排出する細孔を有することを特徴とする腐食環境捕捉器。
【請求項3】
請求項記載の腐食環境捕捉器において、前記収容空間内の内圧を外部に排出し、外部から前記細孔を介して前記収容空間に流入する流体を阻止する逆止弁を有することを特徴とする腐食環境捕捉器。
【請求項4】
請求項記載の腐食環境捕捉器において、前記捕捉器本体は、前記ロータディスクと前記動翼に貫通した状態で装着されることを特徴とする腐食環境捕捉器。
【請求項5】
請求項4記載の腐食環境捕捉器において、前記収容空間と外部とを連通させて前記収容空間の内圧を外部に排出するスロットを有することを特徴とする腐食環境捕捉器。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の腐食環境捕捉器において、前記内部捕捉体は、イオン交換樹脂、親水性樹脂、多孔質体から選ばれる少なくとも1種類以上からなることを特徴とする腐食環境捕捉器。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の腐食環境捕捉器において、前記内部捕捉体はカチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂またはこれらが混じった混床型のイオン交換樹脂であって、前記カチオン交換樹脂は強酸性型、弱酸性型またはこれらの混合式であり、前記アニオン交換樹脂は強塩基性、弱塩基性またはこれらの混合式であることを特徴とする腐食環境捕捉器。
【請求項8】
流体の持つエネルギーを回転体に伝達して回転エネルギーに変換するタービンであって、
外周部に複数の動翼が嵌合されたロータディスクと、
前記動翼または前記ロータディスクに着脱自在に装着され、前記ロータディスクと前記動翼との隙間に流入した外部環境流体を導入する開口部および当該開口部を介して外部環境流体に連通する収容空間が形成された捕捉器本体と、
前記収容空間内に設けられ、前記開口部から前記収容空間に流入した外部環境流体を捕捉する内部捕捉体とを有することを特徴するタービン。
【請求項9】
請求項記載のタービンにおいて、前記捕捉器本体を前記ロータディスクに貫通させて前記動翼に装着し、前記捕捉器本体により前記動翼を前記ロータディスクに固定することを特徴とするタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントにおけるタービン等の構造物が曝される外部環境流体を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントや化学プラントに使用される発電機器、化学機器および配管等の構造物は、酸化性雰囲気や高熱雰囲気等の腐食性流体に曝される。これらの構造物に使用される金属類は、貴金属を除いて、自然界のみならず、酸化性雰囲気等の腐食性流体に曝されると、腐食されたり、酸化されたりする宿命にある。ステンレス鋼を代表とする耐食金属は、下地金属と環境雰囲気との間に緻密な酸化皮膜、つまり不動態皮膜が生成されるので、耐食性に富むが、酸性、塩基性の環境や海水等の塩化物環境等においては、必ずしも耐食性を維持できるわけではない。
【0003】
そのため、金属を用いた構造物は使用される腐食環境と製品寿命を想定したうえで、当該金属の腐食速度を調査あるいは試験して求め、機械強度を確保できる厚みに腐食代を加味して設計するのが一般的である。この設計方法は、腐食環境が予め把握できていることが前提となるが、腐食環境が時間とともに変化したり、あるいは使用方法や使用環境が定まらない場合には、腐食環境を事前に知り、それを想定することが困難である。このような場合には、腐食モニタや環境モニタを製品とともに併用することで、当該構造物の腐食信頼性を維持するように努めている。腐食反応は電気化学反応であるので、多くの腐食モニタリングの手法が提案されている。例えば、特許文献1には、腐食反応の分極抵抗に基づいて腐食電流を求める手法が記載されている。また、環境モニタは腐食モニタと表裏一体の関係にあるので、環境モニタについても多くの手法が提案されている。例えば、特許文献2には、腐食電流と腐食電位の計測値から被測定物の腐食環境の変化を推測する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−220717号公報
【特許文献2】特開2004−28818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した腐食モニタおよび環境モニタはいずれも腐食反応を検知するための手段として電気信号を用いている。そのため、電源とリード線を必要としており、これらを設置することが不可能な被測定対象に対しては、適用が困難である。例えば、発電プラントにおける蒸気タービンにおいて最も腐食損傷が懸念される場所としては、動翼がロータディスクに嵌合する動翼の嵌合部に発生する応力腐食割れや腐食疲労がある。この嵌合部におけるロータディスクとの間の隙間は半密閉系であるため、嵌合部に塩化物や硫酸塩をはじめとする各種化学物質が蓄積する傾向が強いことから、単純に蒸気タービンに供する蒸気に含まれる化学物質を把握するだけでは、嵌合部の隙間の腐食環境つまり腐食性流体を正確に知ることはできなかった。また、蒸気中の化学物質の量が通常の分析手段では検知不能なほど微量であっても、年単位の長時間の運転により僅かずつでも嵌合部の隙間に化学物質が溜まり続けることが知られている。
【0006】
この化学物質が腐食性の強い塩化物であった場合には、嵌合部の隙間に接する動翼やロータディスクが腐食されやすくなり、最悪の場合には応力腐食割れや腐食疲労を誘発する可能性が想定される。もしも、嵌合部の腐食環境を知ることができれば、環境を種々変化させて実験室的に求めた応力腐食割れの発生時間、破断や割れの発生回数と、応力振幅の関係とを、実機の環境に照らし合わせることによって、実機の正確な余寿命診断が可能となる。これにより、腐食損傷による構造物の損傷や破壊を未然に防ぐことが可能になるだけでなく、定期検査時の点検項目や処置方法の決定、通常運転時の水質管理の基準の決定等について、広範囲に渡った技術的対処方法をとることができるようになる。その結果、発電プラントにおける機器等の構造物の信頼性が確保され、安定した電力等を供給することができる。
【0007】
しかし、これまでに開発された腐食モニタおよび環境モニタにおいては、リード線を必要とする電気的な計測が中心であるため、蒸気タービンのような回転体に適用することはできなかった。蒸気タービンの動翼の嵌合部の状態を知るためには、定期検査毎に動翼をタービンロータから取り外して嵌合部を調べることも可能であるが、その方法では抜いた動翼の破壊を伴うので、経済的な負担が大きかった。
【0008】
一方、発電プラントや化学プラントにおける構造物としての配管においても、電気的な計測を行って腐食環境を検出するには、電極が設けられた絶縁具を配管に取り付ける必要があり、腐食モニタリングのために配管を加工する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、電気的手段を用いることなく、構造物の腐食環境を把握することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
腐食環境捕捉器は、ロータディスクとロータディスクの外周部に嵌合される動翼とを有し、流体の持つエネルギーをロータディスクの回転エネルギーに変換するタービンに曝される外部環境流体を捕捉するために、動翼またロータディスクに着脱自在に装着される捕捉器本体を有し、捕捉器本体には、ロータディスクと動翼との隙間に流入した外部環境流体を導入する開口部と外部環境流体に連通する収容空間が形成されている。収容空間内には、開口部から収容空間に流入した外部環境流体を捕捉する内部捕捉体が設けられている。
【0011】
タービンは、外周部に複数の動翼が嵌合されたロータディスクを有し、動翼またはロータディスクには捕捉器本体が着脱自在に装着される。捕捉器本体には、外部環境流体を導入する開口部と外部環境流体に連通する収容空間が形成されている。収容空間内には、開口部から収容空間に流入した外部環境流体を捕捉する内部捕捉体が設けられており、動翼とロータディスクとの間の隙間内に入り込んだ外部環境流体は内部捕捉体に捕捉される。
【発明の効果】
【0012】
実施形態の腐食環境捕捉器においては、外部環境流体に曝される構造物に着脱自在に装着される捕捉器本体には、外部環境流体が流入する開口部と、開口部に連通する収容空間とが形成されており、収容空間には外部環境流体を吸着捕捉する内部捕捉体が装着されている。これにより、構造物が曝される外部環境流体が内部捕捉体に捕捉されるので、内部捕捉体に吸着された化学成分を分析することにより、電気的または電気化学的手段により腐食環境をモニタすることなく、構造物の腐食環境を知ることができる。腐食環境捕捉器を回転体や高温に曝される構造物にも装着することができるので、リード線や電源を設置することができない構造物の腐食環境を把握することができる。
【0013】
実施形態のタービンにおいては、腐食環境捕捉器が装着されたタービンを運転させると、実際にタービンが稼働されている状態のもとで、ロータディスクが曝される外部環境流体を内部捕捉体により捕捉することができるので、稼働状態のもとでのロータディスクの腐食環境を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】腐食環境捕捉器の一例を示す断面図である。
図2図1の分解図である。
図3】腐食環境捕捉器が取り付けられた蒸気タービンの一部を示す斜視図である。
図4図3におけるA−A線断面図である。
図5】他の形態としての腐食環境捕捉器の封止栓を示す拡大断面図である。
図6】他の形態の腐食環境捕捉器が取り付けられた蒸気タービンを示す断面図である。
図7】さらに他の形態の腐食環境捕捉器が取り付けられた蒸気タービンの一例を示す断面図である。
図8図7に示された腐食環境捕捉器の一部省略拡大断面図である。
図9】腐食環境捕捉器が取り付けられた配管を示す断面図である。
図10】他の形態の腐食環境捕捉器が取り付けられた配管を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1および図2に示される腐食環境捕捉器10の捕捉器本体11は、六角穴付きの頭部を有するねじ部材により形成されており、雄ねじ12が形成されたねじ部13と、このねじ部13の基端部に一体に設けられた頭部14とを有し、頭部14には六角穴15が設けられている。捕捉器本体11は、ねじ部13により、発電プラントや化学プラント等のように、外部環境流体に曝される構造物に着脱自在に装着される。捕捉器本体11を構造物に装着したり、構造物から取り外したりする際には、六角穴15に嵌合される図示しない工具により捕捉器本体11を回転操作する。
【0016】
捕捉器本体11の内部には、六角穴15の底面とねじ部13の先端面とを連通させる貫通孔16が形成されている。貫通孔16の基端部側の開口部17には、封止栓18がねじ止めされ、この封止栓18により貫通孔16の開口部17は閉塞される。貫通孔16の先端部側の開口部21には、止め栓22がねじ止めされる。貫通孔16と開口部21との間の段部には多孔質部材23が突き当てられ、多孔質部材23は止め栓22により固定される。この多孔質部材23は貫通孔16の先端部に配置されており、止め栓22により捕捉器本体11に対して着脱自在となっている。貫通孔16のうち封止栓18と多孔質部材23との間の部分は、収容空間24となっており、この収容空間24は、止め栓22に形成された連通孔25により外部に連通している。これにより、捕捉器本体11が構造物に装着されると、構造物が曝される腐食性流体等の外部環境流体が連通孔25から収容空間24内に導入される。収容空間24には、物理吸着性や化学吸着性を有し、導入された外部環境流体を吸着する内部捕捉体26が収納される。
【0017】
多孔質部材23としては、SUS316L鋼製の発泡金属を使用することができる。ただし、これに限られず、細線を寄り合わせた部材や、炭素質の多孔体を用いることもできる。粉末冶金も多孔性があり、多孔質部材23として適用することが可能であるが、粉末冶金は、空隙率が低く、液体等の外部環境流体の浸入速度が遅くなるので、長時間に渡って腐食環境を測定する場合や圧力変動が激しい場合に適用される。内部捕捉体26としては、イオン交換樹脂、親水性樹脂、多孔質体から選ばれる少なくとも1種類以上からなり、流体の吸着性を有する材料により形成される。これらの材料のうちいずれか、またはこれらの混合物から、構造物の使用条件や使用環境に応じて、最適な材料が内部捕捉体26として選択される。
【0018】
図1および図2に示される捕捉器本体11の雄ねじ12はM10のメートルねじ、頭部14の外径は20mm、封止栓18はM3のねじ、止め栓22はM6のねじにより形成されている。図1に示される腐食環境捕捉器10を組み立てるには、開口部17に封止栓18をねじ止めした状態のもとで、収容空間24内に内部捕捉体26を収納する。次いで、多孔質部材23を開口部21に配置し、止め栓22を開口部21にねじ止めする。止め栓22には、上述のように、連通孔25が形成されているので、腐食環境捕捉器10が構造物に装着されると、構造物に曝される液体や気体等の流体、つまり外部環境液や外部環境ガスは、連通孔25と、通気性ないし通液性を有する多孔質部材23とを通じて収容空間24内に設置された内部捕捉体26に吸着つまり捕捉される。
【0019】
腐食環境捕捉器10を構造物に装着すると、構造物が実際に可動している状態のもとで、構造物に曝されることになる腐食性流体つまり外部環境流体が内部捕捉体26に捕捉される。腐食環境捕捉器10は、ねじ部13により構造物に対して着脱自在つまり取り外し自在に装着されるので、腐食環境捕捉器10を構造物から取り外して、内部捕捉体26を捕捉器本体11から取り出すと、内部捕捉体26には構造物が作動していたときに構造物に曝された流体が吸着されているので、内部捕捉体26に含まれる各種化学種を分析することによって、構造物が曝される腐食性流体の環境を把握することができる。
【0020】
図3および図4は腐食環境捕捉器10が装着された蒸気タービン30を示す。蒸気タービン30は、流体の持つ熱エネルギーを回転体に伝達して回転体の運動エネルギーつまり回転エネルギーに変換し、動力を発生するために発電プラントに使用される。図示するように、蒸気タービン30はロータディスク31を有しており、ロータディスク31には、ロータと呼ばれる円柱状の単軸にディスクと呼ばれる円盤を嵌め込んだ形態、およびロータとディスクとが一体となった形態がある。ロータディスク31の外周部には複数の動翼32が円周方向に連続して嵌合して取り付けられる。ロータディスク31の外周部には、通常、ツリー型やフォーク型の嵌合部33が設けられ、動翼32にはロータディスク31の嵌合部33に嵌合される嵌合部34が設けられている。動翼32とロータディスク31とを嵌合させることにより、動翼32はロータディスク31の遠心力に耐えられるようにロータディスク31に取り付けられる。ロータディスク31の外周部には、1つの動翼32が径方向外方からロータディスク31に挿入し得るように、嵌合部33が設けられておらず、切り欠かれた部分が設けられている。したがって、その切り欠かれた部分からそれぞれの動翼32をロータディスク31の外周部に組み付けた後に、円周方向に動翼32をずらし移動することにより、全ての動翼32がロータディスク31の外周部に配置される。ロータディスク31の切り欠かれた部分に対応する動翼32は図示しないピンによりロータディスク31に固定される。
【0021】
ロータディスク31の嵌合部33と動翼32の嵌合部34との両方の嵌合面の間には、通常の1mm以下の嵌合隙間が存在する。このため、蒸気タービンの運動により嵌合面との間の隙間に水蒸気に含まれる不純物が蓄積することがあり、ロータディスク31の嵌合部33と動翼32の嵌合部34とに蓄積した不純物が腐食損傷の原因となることがある。
【0022】
嵌合面の腐食環境を知るために、図3および図4に示されるように、図1および図2に示された腐食環境捕捉器10が複数の動翼32のうち少なくもといずれか1つに着脱自在に装着される。腐食環境捕捉器10はその先端の開口部21が嵌合部33に面し、これ連通するように動翼32に装着される。開口部21が嵌合部に連通するようになっていれば、腐食環境捕捉器10をロータディスク31に装着するようにしても良い。
【0023】
このように、腐食環境捕捉器10が装着された状態のもとで、蒸気タービン30が運転されると、蒸気タービン30の冷起動時に、加熱および加圧された蒸気は常温にある蒸気タービン30に接触し、熱を奪われて凝縮する。凝縮した水は連続して配置された動翼32の間の境目から嵌合部33に向かって進行し、嵌合面の隙間を埋める。嵌合面内の水の一部は腐食環境捕捉器10の開口部21に到達し、収容空間24内に充填された内部捕捉体26に吸収される。このとき、蒸気中に塩化ナトリウムなどの化学種が存在したり、蒸気タービン30の表面に塩類が析出したりすると、凝縮した水はこれらの不純物を溶解して嵌合部33にまで運ばれて、最終的に内部捕捉体26に捕捉される。
【0024】
以上が冷起動時の挙動であるが、これ以外の状態でも同様の状況が発生する。例えば、蒸気が乾燥域と湿り域の境界にある部位に腐食環境捕捉器10を設置すると、負荷の変動により凝固と乾燥とを繰り返す。この過程で、嵌合部33の隙間内に不純物が蓄積し、次第に腐食環境が悪化すると言われる。嵌合部33の水の不純物濃度が高くなると、濃度に応じて内部捕捉体26により捕捉される不純物量も変化する。
【0025】
腐食環境捕捉器10は、ねじ部13により動翼32に着脱自在に装着されるので、蒸気タービン30の定期検査時のように蒸気タービン30が停止したときに、腐食環境捕捉器10を動翼から取り外し、内部捕捉体26を捕捉器本体11から取り出すと、内部捕捉体26に含まれる不純物を分析することによって、動翼32に曝される外部環境流体としての蒸気の腐食環境を把握することができる。不純物量の分析は、イオンクロマトグラフや原子吸光分析機、誘導結合高周波プラズマ発光分析機等で行うことができる。この分析の結果、嵌合部33におけるある特定の元素あるいは化学種が所定の濃度に達していたときには、事前に求めておいた腐食損傷の発生時間と化学種の濃度の関係に照らし合わせることにより、蒸気タービン30の余寿命を推定することができる。
【0026】
例えば、内部捕捉体26を分析した結果、嵌合部33における塩化物イオン濃度が100ppbであると求められた場合には、3.5NiCrMoV低合金鋼を用いたロータディスク31が応力腐食割れを発生する時間は、蒸気に含まれる酸素濃度、運転温度、材料の耐力およびロータディスク31に負荷される応力に応じて、数1,000から数10,000時間の間にあるとされる。塩化物イオン濃度がこの腐食環境捕捉器10によって求められると、酸素濃度、運転温度、材料の耐力および応力は測定可能ないし計算可能なファクタであるので、数1,000から数10,000時間の間にあるとされる応力腐食割れの発生時間をさらに狭い時間範囲まで絞り込むことができる。これにより、より高精度で蒸気タービン30の余寿命を推定することができる。
【0027】
図5は他の形態としての腐食環境捕捉器の封止栓を示す拡大断面図である。
【0028】
図3および図4に示される腐食環境捕捉器10は、捕捉器本体11の先端部に設けられた開口部21から外部環境流体を収容空間24に流入するようにしているが、嵌合部33,34の隙間の水が収容空間24の内圧よって内部に充分に侵入しない場合がある。これを避けるために、図5に示されるように、封止栓18には収容空間24を外部に連通させる連通孔35が形成されている。この連通孔35は内部捕捉体26が外部に抜け出ることがない内径サイズとなった細孔により形成されている。封止栓18に連通孔35を設けると、内部の収容空間24の内圧が高くならないので、嵌合部33,34の間の隙間に流入した水が容易に収容空間24内に流入して内部捕捉体26に到達するようになる。一方、封止栓18に連通孔35を設けると、封止栓18側から収容空間24へ侵入する水が発生する場合がある。それを避けるために、封止栓18に球体からなる逆止弁36が設けられている。この逆止弁36には、封止栓18の端部に取り付けられたストッパ37と逆止弁36との間に配置されたばね部材38により弁座面39に向けて連通孔35を閉じる方向のばね力が加えられている。この逆止弁36は、収容空間24から連通孔35を介して外部に流出する流体流れを許容し、外部から連通孔35を介して収容空間に流体が流入するのを阻止する。逆止弁の形状としては、球体に限られず、バタフライ型としても良い。さらには、封止栓18側が嵌合部33,34の間の隙間の圧力よりも低圧となるようにしても良い。
【0029】
図5に示されるように、連通孔35を封止栓18に設けるようにした形態においては、逆止弁36を設けることなく、腐食環境捕捉器10の設置場所を選択することにより、封止栓18からの水の浸入を避けるようにしても良い。ロータディスク31の蒸気入口側と蒸気出口側とでは、差圧が発生するので、腐食環境捕捉器10をロータディスク31の蒸気出口側に設置すれば、自ずと、収容空間24の方が封止栓18側の圧力よりも高くなるので、逆止弁36を設けることなく、封止栓18側からの水が浸入することはない。
【0030】
図6は他の形態の腐食環境捕捉器が取り付けられた蒸気タービンを示す断面図である。この腐食環境捕捉器10は、頭部14が動翼32の内部に組み込まれ、頭部14の端面は動翼32の外面よりも外方には突出していない。その他の構造は図4に示された腐食環境捕捉器10と同様である。このように、頭部14の端面を動翼32の外面から突出させないようにすると、蒸気タービン30の運転時に、外部に突出した頭部14による流体の流れの発生を防止できる。
【0031】
図7はさらに他の形態の腐食環境捕捉器が取り付けられた蒸気タービンの一例を示す断面図であり、図8図7に示された腐食環境捕捉器の一部省略拡大断面図である。
【0032】
この腐食環境捕捉器10は、内部に貫通孔16が設けられた中空ピンにより捕捉器本体11が形成されている。この中空ピンからなる捕捉器本体11は、ロータディスク31と動翼32とを貫通しており、この捕捉器本体11は動翼32をロータディスク31に固定する機能を有している。捕捉器本体11の両端部には封止栓18a,18bが取り付けられ、それぞれの封止栓18a,18bはねじ止めされている。貫通孔16により形成される収容空間24は、捕捉器本体11に連通孔として形成されたスリット41により外部に連通している。捕捉器本体11が蒸気タービン30に装着されると、スリット41は嵌合部33,34の間の隙間に連通状態となる。これにより、スリット41を介して嵌合部33,34の間の隙間から水が収容空間24内に流入するようになっている。収容空間24内には内部捕捉体26が充填されており、内部捕捉体26はメッシュ状の金網42内に収容されている。金網42に代えて、多孔質部材からなる筒体を貫通孔16内に組み込むようにしても良い。このように、捕捉器本体11を中空ピンにより形成するようにしても、図4に示した腐食環境捕捉器10と同様に外部環境流体を内部捕捉体26により捕捉することができる。
【0033】
捕捉器本体11の一端部外周にはカシメ部43が設けられており、捕捉器本体11をロータディスク31と動翼32とを貫通させた状態のもとで、このカシメ部43をハンマー等により塑性変形させると、捕捉器本体11を蒸気タービン30に固定することができる。捕捉器本体11を取り外すときには、捕捉器本体11の他端部を工具を用いて軸方向に衝撃力を加えることになる。このように、捕捉器本体11の着脱構造としては、上述したねじ結合に限られない。
【0034】
図3および図4は、腐食環境捕捉器10を蒸気タービン30に設置して、蒸気タービンが運転しているときに蒸気タービン30が曝される外部環境流体を把握するために、腐食環境捕捉器10が使用されているが、タービン以外にも、ポンプや発電機の回転軸や軸受、および火炉中のチューブ等のように回転体や高温に曝され、リード線や電源を設置することが不可能な構造物についても、外部環境を検出することができる。
【0035】
外部環境を検出するために、必ずしも運転している状態のもとで腐食環境捕捉器10を使用することが必須とはされない。蒸気タービン30が停止されているときでも、嵌合部33,34の隙間内に蓄積した不純物は抜け出ることが少ないため、タービン停止時に予め動翼32に形成された取付孔に腐食環境捕捉器10を差し込んで腐食性流体を捕捉することができる。そのときには、動翼32相互間の隙間から強制的に水を供給することで、嵌合部33,34の間に蓄積していた不純物を溶かし込むと、内部捕捉体26に液体が到達し、内部捕捉体26により不純物が取り込まれる。これを分析することにより、不純物の量を知ることができる。
【0036】
さらに、外部環境流体が曝される構造物としては、可動部に限られず、配管内を流れる流体に含まれる不純物を知ることができる。
【0037】
図9は腐食環境捕捉器が取り付けられた配管45を示す断面図である。この配管45つまりチューブは発電プラントや化学プラント等のように腐食性流体を案内するために使用される。配管45の内部には矢印Fで示すように、蒸気や液体が流れるようになっており、配管45内を流れる蒸気や液体が構造物としての配管45に曝される外部環境流体つまり腐食性流体となる。配管45には分岐管部46が設けられており、分岐管部46をジョイント部としてこのジョイント部には図1および図2に示した腐食環境捕捉器10が装着される。
【0038】
捕捉器本体11はその先端部が配管45の内部に露出するように分岐管部46に装着される。配管45内を流れる流体は、配管45内に開口した開口部21の連通孔25から流体の圧力変動差ないし速度変動差、拡散、または多孔質部材23や内部捕捉体26の表面張力ないし毛細管現象により、時間とともに次第に収容空間24内に満たされることになる。
【0039】
外部環境流体を検出するときには、配管45内の流体の流れを停止させた状態のもとで、腐食環境捕捉器10を分岐管部46から取り外し、内部捕捉体26を収容空間24から取り出す。内部捕捉体26は流体が流れていたときの流体の水質状態を保っているため、内部捕捉体26に含まれている各種化学種を分析することにより、流体の環境を知ることが可能となる。これは、収容空間24が単純な空間であると、流体の流れが停止して減圧されたり、別の流体に置き換わったりし、収容空間24内に溜まった流体が外部に漏出して消失することになる。収容空間24内には内部捕捉体26が装着されているので、外部環境流体が内部捕捉体26により確実に捕捉される。
【0040】
図10は、他の形態の腐食環境捕捉器が取り付けられた配管を示す断面図である。この分岐管部46には連通孔47を開閉する開閉弁48が配置されており、配管45内に流体を流した状態のもとでも、腐食環境捕捉器10を分岐管部46から取り外すことができる。図10に示される腐食環境捕捉器10の止め栓22には、腐食環境捕捉器10が配管45に取り付けられたときに、球体からなる開閉弁48を弁座面49から離すための中空突起51が取り付けられており、中空突起51には連通孔47と収容空間24とを連通させるスリット52が形成されている。分岐管部46に取り付けられたストッパ53と開閉弁48との間には、開閉弁48を弁座面49に押し付ける方向にばね力を加えるためのばね部材54が装着されている。この開閉弁48は、捕捉器本体11が分岐管部46に装着されたときには配管45内と収容空間24とを連通孔47とを介して連通させ、捕捉器本体11が分岐管部46から取り外されたときには連通孔47を閉じる。これにより、配管45内に流体を流した状態のもとでも、腐食環境捕捉器10を配管45から取り外すことができる。なお、開閉弁48の形状としては、腐食環境捕捉器10を配管45に装着したときに配管45内の流体と収容空間24とが連通し、腐食環境捕捉器10を取り外したときに連通孔47を閉じる構造であれば、図示した球体に限られず、バタフライ型等の他の形状としても良い。
【0041】
内部捕捉体26としては、腐食環境捕捉器10が装着される構造物に応じて最適な材料が選択される。例えば、硫化水素は高強度鋼の水素型応力腐食割れの感受性を高める環境因子であり、内部捕捉体26として多孔質体の代表格である活性炭を選べば、硫化水素を選択的に捕捉することができる。一方、塩化物イオンは炭素鋼をはじめとする多くの金属にとって腐食を促進させる化学種であるが、活性炭は塩化物イオンを捕捉する機能が低い。そこで、活性炭に代えて、イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂)を内部捕捉体26として選べば、塩化物イオンを捕捉することができる。これは、イオン交換樹脂の固定イオンとして水酸化物イオンを選ぶと、水酸化物イオンに対する他のアニオンの選択係数が高いため、僅かな塩化物イオンでも容易にイオン交換樹脂に取り込むことができるからである。また、一旦捕捉した塩化物イオンは、高pHの水に曝さない限り、イオン交換樹脂から全量が抜け出ることがなく、活性炭と比較すると捕捉効率が高い。
【0042】
次に、内部捕捉体26として使用することができるイオン交換樹脂について説明する。イオン交換樹脂には、捕捉するイオンの陰陽で2つのタイプに分けられる。つまり、陰イオン(アニオン)交換樹脂と、陽イオン(カチオン)交換樹脂とに分けられる。それぞれについては、イオン交換基の解離の強弱により、強塩基性、弱塩基性イオン交換樹脂と、強酸性、弱酸性イオン交換樹脂とに分けられる。陰イオン交換樹脂は、周囲の陰イオンを取り込んで、もともとの陰イオン交換樹脂に固定していた陰イオンと交換してこれを吐き出す。同様に、陽イオン交換樹脂は周囲の陽イオンを取り込む。
【0043】
強酸性、強塩基性は、弱酸性、弱塩基性に比較すると、解離度が大きいため、広い範囲のpHで動作し、交換容量も高いが、再生には相当量の薬剤が必要なこと、また耐酸化性が低いため、耐久性には劣る。弱酸性、弱塩基性は再生し易いが、捕捉したイオンが水を通しただけで放出される傾向がある。このように、固定基の解離性によってイオンの捕捉挙動が異なるため、目的に応じて内部捕捉体26の材質を選択することになる。
【0044】
例えば、強酸性や強塩基性は、イオンを捕捉する力が強い性質を利用し、環境流体中の僅かなイオン濃度であっても捕捉する目的に使用される。一方で、イオン交換樹脂が破瓜つまり貫流点に達するまで環境流体中のイオンを捕捉し続けるようにする。その結果、求めたい対象環境に含まれるイオン濃度の情報が得られるというよりも、イオンの量に関する情報が得られる傾向となる。
【0045】
弱酸性や弱塩基性の場合は、解離度が低いため、固定イオンと対イオンおよび環境流体中のイオンとの間で平衡反応が形成され、イオン交換樹脂に取り込まれるイオンの量は環境流体中のイオン濃度に依存する。したがって、弱酸性や弱塩基性はイオン濃度の情報を得る指標となる。このように、対象とするイオンと求めるべき化学量に応じてイオン交換樹脂の種類が選択される。環境流体によっては、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とが混じった形態の混床型としても良い。この場合には、アニオンとカチオンの両者を捕捉することが可能となる。さらには、強酸性または強塩基性イオン交換樹脂と弱酸性または弱塩基性交換樹脂とを混合しても良い。内部捕捉体26に含まれるイオンを分析する際には、再生液のpHや選択係数を適切に選ぶことによって、弱酸性または弱塩基性イオン交換樹脂によるイオン濃度の情報と、強酸性または強塩基性イオン交換樹脂のイオン量の情報を得ることが可能となる場合がある。
【0046】
さらに、未知の陰イオンを含む環境流体を対象とした腐食環境捕捉器10としては、陰イオンを捕捉するために、内部捕捉体26として強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることができる。強塩基性陰イオン交換樹脂を選ぶため、腐食環境捕捉器10を構成する各種部材を、SUS316Lオーステナイト系ステンレス鋼とする。各種部材を耐食合金鋼とするのは、各種構成部材から溶出するイオンによる汚染を防止できるだけでなく、機械強度や耐熱性においても耐食合金鋼が優れるためである。
【0047】
このように、内部捕捉体26として使用することができるイオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂またはこれらが混じった混床型のイオン交換樹脂であって、カチオン交換樹脂は強酸性型、弱酸性型またはこれらの混合式であり、アニオン交換樹脂は強塩基性、弱塩基性、またはこれらの混合式である。
【0048】
次に、配管内を流れる外部環境流体の腐食環境を腐食環境捕捉器10により検出した具体例について説明する。
【0049】
内部捕捉体26は、一般に市販されている中性塩基交換容量0.8meq/mL−R(1mLの陰イオン交換樹脂当たり、1.3m当量molをイオン交換)以上のゲル型陰イオン交換樹脂を使用し、実際の使用にあたっては水酸化ナトリウムを用いてOH型に置換し、再生率を95%まで高めて使用した。
【0050】
このように調整した図1の腐食環境捕捉器10を、図9に示した疑似ボイラシステムの給水用の配管45に設置した。図9に示した配管45には、通常、疑似ボイラの給水用の純水が流通しているが、熱交換器からの微小なリークによりppbからppmオーダーに薄まった塩水が混入することや、水質調整されていない補給水からの供給があり、不純物濃度を必ずしもボイラ材料や配管材料において腐食の加速がない濃度に維持できないことがある。腐食環境捕捉器10を100℃付近の温度にあるボイラ入口の給水配管に、半年間設置した後に、腐食環境捕捉器10の内部捕捉体26に含まれる陰イオン成分を調べた。成分分析にはイオンクロマトグラフを用いた。その手順は次の通りである。
【0051】
腐食環境捕捉器10の捕捉器本体11を配管45から取り外し、捕捉器本体11から封止栓18と止め栓22と多孔質部材23とを外し、一方の開口部から捕捉器本体11内に純水を供給して内部捕捉体26をビーカーに排出させる。水分を除去した後、3mol/Lの濃度の水酸化ナトリウム水溶液に一昼夜放置して、内部捕捉体26に取り込まれた陰イオンを溶離させる。上澄み液をイオンクロマトグラフ分析器に供し、リテンションタイム(保持時間)に対する電気伝導率等のピーク位置の関係からイオン成分を定性する。分析の結果、海水成分である塩化物イオンと硫酸イオンが検出された。このことから、疑似ボイラの給水には海水成分が混入していると推定することができた。
【0052】
以上の分析例は、定性分析による環境流体中の腐食加速因子の存在を知ることができる例である。これに加えて、内部捕捉体26に含まれるイオン成分を定量分析すれば、イオン交換樹脂中の固定イオンと環境中のイオンとの間で平衡を形成するので、平衡定数が分かれば、環境中の各イオンの濃度も推定することができる。
【0053】
上述した場合では、100℃前後の給水配管に腐食環境捕捉器10を設置して外部環境流体を検出したが、この腐食環境捕捉器10の利点は、通常の電気信号を用いた腐食モニタと異なり、比較的高温に設置できる点が挙げられる。なぜならば、腐食環境捕捉器10の構造材料を金属とすることができることに加えて、イオン交換樹脂が温度100℃程度前後の耐熱性を有しているからである。より高い温度での測定が必要な場合には、食塩電解や固定高分子形の燃料電池で使用されているフッ素系の電解質、例えば、パーフルオロスルホン酸を用いることができる。また、ガラス転移点は100℃程度と低いが、分解点は300℃前後であるので、強度を必要としない目的であれば、200℃の高温でも動作可能である。このように、耐熱性においても、上述した腐食環境捕捉器10は大きな利点を有し、従来では計測ができなかった場所の構造物における外部環境流体の情報を入手することができる。
【0054】
上述した具体例における内部捕捉体26はイオン交換樹脂を使用したが、腐食環境捕捉器10が使用される条件によっては、ポリビニルアルコール等に代表される親水性樹脂を内部捕捉体26として用いることができる。親水性樹脂は、化学吸着ではないので、イオン交換樹脂と比較すると、捕捉能力は劣るが、外部環境流体の腐食成分の濃度が高い、そして環境の変化が少ない等の条件によっては、親水性樹脂の吸水作用により、外部環境流体を捕捉し、保持する機能を有する。内部捕捉体26としては、通気性や通液性を有するとともに吸着性を有する部材であれば、さらに、粉末冶金つまり焼結金属や、繊維状の細線を寄り合わせた部材等を使用することができる。
【0055】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、発電プラントを構成する蒸気タービンや配管に限られることなく、腐食性流体等の外部環境流体に曝される構造物の腐食環境を検出する場合であれば、本発明の腐食環境捕捉器を適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10…腐食環境捕捉器、11…捕捉器本体、12…雄ねじ、13…ねじ部、14…頭部、15…六角穴、16…貫通孔、17…開口部、18…封止栓、18a…封止栓、18b…封止栓、21…開口部、22…止め栓、23…多孔質部材、24…収容空間、25…連通孔、26…内部捕捉体、30…蒸気タービン、31…ロータディスク、32…動翼、33…嵌合部、34…嵌合部、35…連通孔、36…逆止弁、37…ストッパ、38…ばね部材、39…弁座面、41…スリット、42…金網、43…カシメ部、45…配管、46…分岐管部、47…連通孔、48…開閉弁、49…弁座面、51…中空突起、52…スリット、53…ストッパ、54…ばね部材。
図1
図2
図3
図4
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図10