特許第6038588号(P6038588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6038588加湿装置、加湿装置を備えたガスタービン及びその改造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038588
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】加湿装置、加湿装置を備えたガスタービン及びその改造方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 3/30 20060101AFI20161128BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20161128BHJP
   F02C 7/08 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F02C3/30 B
   F02C7/00 D
   F02C7/08 B
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-229412(P2012-229412)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-80921(P2014-80921A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】明連 千尋
(72)【発明者】
【氏名】荒木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】秋山 陵
(72)【発明者】
【氏名】川村 康太
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−174542(JP,A)
【文献】 特開平07−060107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 3/30
F02C 7/00
F02C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮して吐出する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された空気と燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器で生成された燃焼ガスにより駆動されるタービンと、前記タービンから排出された排気ガスを前記圧縮機から前記燃焼器に供給される圧縮空気と熱交換する再生熱交換器とを備えたガスタービン設備に設けられ、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気に湿分を供給する加湿装置であって、
前記圧縮空気の主流方向に向かって断面積を拡大させる拡大部と、液滴を噴霧する噴霧装置と、噴霧された前記液滴を蒸発させる噴霧部と、前記噴霧部で発生したドレンを回収するドレン回収孔とを備え、
前記拡大部の下流側かつ前記噴霧装置の上流側に、流路全体を覆うように配置され、流れを主流方向に整流する整流装置を備え、
前記整流装置は多数の孔を持つ多孔板であり、
前記噴霧装置の下流側から前記噴霧装置および前記多孔板を見た場合に前記噴霧装置と前記多孔板の孔が重なる総面積が、前記多孔板の孔の総面積の50%未満であることを特徴とした加湿装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加湿装置において、
前記拡大部の上流側の断面形状が円形状であって、
前記拡大部下流側および前記噴霧部の断面形状が円形状であることを特徴とした加湿装置。
【請求項3】
請求項1に記載の加湿装置において、
前記拡大部の上流側の断面形状が円形状であって、
前記拡大部下流側および前記噴霧部の断面形状が長方形形状であることを特徴とした加湿装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の加湿装置において、
前記噴霧装置として液体を高圧で噴霧する1流体ノズルを備えることを特徴とした加湿装置。
【請求項5】
請求項に記載の加湿装置において、
前記多孔板の中心側に位置する孔の直径が、前記多孔板の外周側に位置する孔の直径より小さいことを特徴とする加湿装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の加湿装置において、
前記多孔板の孔の総面積が、前記多孔板の流れ方向断面積の50%未満となることを特徴とした加湿装置。
【請求項7】
請求項に記載の加湿装置において、
前記噴霧装置が複数のノズルヘッダを有し、前記ノズルヘッダに複数の1流体ノズルが設けられていることを特徴とした加湿装置。
【請求項8】
請求項1からのいずれかに記載の加湿装置において、
前記拡大部の広がり角θが20deg以上となることを特徴とした加湿装置。
【請求項9】
空気を圧縮して吐出する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された空気と燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器で生成された燃焼ガスにより駆動されるタービンと、前記タービンから排出された排気ガスを前記圧縮機から前記燃焼器に供給される圧縮空気と熱交換する再生熱交換器とを備えたガスタービン設備であって、
前記圧縮機で圧縮した圧縮空気に湿分を供給する加湿装置として、請求項1からのいずれかに記載の加湿装置を備えたことを特徴とするガスタービン設備。
【請求項10】
空気を圧縮して吐出する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮される空気と燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器で生成される燃焼ガスにより駆動されるタービンと、前記タービンから排出された排気ガスを前記圧縮機から前記燃焼器に供給される圧縮空気と熱交換する再生熱交換器と、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気に湿分を供給する加湿装置とを備えたガスタービン設備の改造方法であって、
前記加湿装置を請求項1からのいずれかに記載の加湿装置に置き換えることを特徴とするガスタービン設備の改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加湿装置や加湿装置を備えたガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題に対する関心の高まりから、火力発電設備に対してより一層の性能向上が求められている。その中でもガスタービンは比較的単体の効率が高く、かつ熱サイクルの改良(例:蒸気タービンと組み合わせたコンバインドサイクル)によって50%以上という高い発電効率を達成可能であるため、CO2削減の一端を担うことを期待されている。
【0003】
上記のガスタービンの熱サイクルの改良は継続して行われてきているが、その中の1つにHAT(Humid Air Turbine)サイクルがある。HATサイクルは圧縮機吐出空気とタービン排ガスを再生熱交換器で熱交換する再生サイクルの一種で、圧縮機と再生熱交換器の間に加湿装置を設けて再生熱交換器での回収熱量増加を図ると共に、タービン側の流量を増加させて出力増加を図るのが特徴である。さらにHATサイクルには圧縮機途中に中間冷却器も設けられており、圧縮動力の低減による性能向上効果も加わるため、通常のシンプルサイクル(ガスタービン単体)に比べて大幅な性能向上を達成可能である。ただしHATサイクルは加湿装置の水消費量が大きい点や圧縮機に中間冷却器を設置する必要がある点等の欠点もある。
【0004】
なお近年、これらのHATサイクルの欠点を解消したサイクルとしてAHAT(Advanced Humid Air Turbine)システムが提案されている。AHATシステムはHATサイクルの中間冷却器の代わりに圧縮機吸気部に液滴を噴霧する加湿器を設け、かつ再生熱交換器排ガス側下流にエコノマイザと水回収装置を設けたシステムである。このような構成とすることで、HATサイクルに比べて消費水量が少なくなるため、低コストで高効率化を達成することができる。
【0005】
ここで、AHATシステムを含めたHATサイクルの性能は、加湿装置の性能に大きく左右される。具体的には、流入した圧縮機吐出空気をいかに飽和近くまで加湿できるが重要となる。このため、加湿装置としては多数の孔を持った充填物を備え、充填物表面に水を供給して加湿する増湿塔を用いることが多い。一方、増湿塔より加湿性能は劣るものの、安価な構成で加湿が可能な液滴噴霧型の加湿装置を用いることもある。
【0006】
液滴噴霧型の加湿装置を用いる場合、多量の液滴噴霧と蒸発時間の確保を両立させる必要がある。その手段の1つとして、加湿装置を流れ方向断面積を拡大させる拡大部と液滴を噴霧する噴霧部から構成し、拡大部下流に噴霧装置を設けることが考えられる。この場合拡大部によって噴霧部の流れ方向断面積が増加するため、噴霧量の増加および主流速度減少による蒸発時間の確保を両立させることが可能となる。ただし拡大部における広がり角(流れ方向距離と拡大部幅の増加量がなす角)が大きいと、流れに剥離が生じて噴霧部の外周側で流れが逆流する恐れがある。逆流が生じると噴霧液滴が噴霧装置に付着しやすくなり、加湿装置で発生するドレン量が増加して加湿装置の性能が低下するため、実用上好ましくない。
【0007】
ここで前述の加湿装置のように拡大部と噴霧装置を持つ場合の逆流抑制構造が、特許文献1に記載されている。特許文献1は固体の溶液や分散液の乾燥用の噴霧乾燥器に関する技術を開示しており、拡大部の上流部に直胴部と噴霧装置を設置し、かつ噴霧装置上流に整流装置を用いる構造とすることで噴霧溶液に対する逆流を抑制している。ただし特許文献1の構造はHATサイクル用の加湿装置向けのものでないため、そのままではHATサイクル向けに適用できない。
【0008】
また特許文献2には、拡大部と噴霧装置を持つ加湿装置の逆流抑制構造が記載されている。特許文献2は空調装置における加湿装置に関する特許であり、拡大部外周側の流れの乱れを抑制するため、拡大部の内周側に独立した流路を設け、内周側に金網や多孔板等の抵抗を付与するなどして外周部の流速を増加させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO2007/114468号公報
【特許文献2】特開2010−19453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
乾燥器である特許文献1の構造をHATサイクル用の加湿装置として用いる場合、いくつかの問題がある。まず噴霧部が拡大部の上流側に存在するため、HATサイクルの性能向上に必要な噴霧量を確保できない可能性が高い。また特許文献1では拡大部の広がり角の範囲として5度以上20度以内を想定しているが、前述の加湿装置における拡大部の流れ方向距離はコストの観点から短いほど好ましい(拡大部は蒸発時間の確保に寄与しないため)。このため低コスト化を達成するには、特許文献1の広がり角よりも大きい方が望ましい。さらに特許文献1には整流装置の詳細が記載されていないが、広がり角が大きい場合でも適用可能とするには整流装置の形状をチューニングしないと逆流が抑制できない可能性がある。
【0011】
特許文献2の構造をHATサイクル用の加湿装置として用いる場合も、いくつかの問題がある。まず内周側の独立した流路を保持するための支持部材が必要となるが、その支持部材が流れの乱れを誘起する可能性がある。さらにHATサイクルでは作動流体の温度が高く温度変化も大きいため、支持部材に大きな熱応力が発生しやすい。このため、特許文献2のように内周側に独立した流路を設けることは難しく、信頼性の確保が困難になると考えられる。また特許文献2では内周側流路に設置する金網や多孔板の流れ方向位置は任意としており、内周側を通過する流れの拡大部出口における逆流は想定されていない。一方HATサイクルに適用する場合、良好な性能を実現するには多量の空気を十分に加湿する必要があり、拡大部の広がり角が大きくなる。そのため、特許文献2の構造を適用した場合、外周側の剥離を抑制する代わりに内周側流路の拡大部出口で大きな剥離領域を生じる可能性がある。
【0012】
そこで本発明は、HATサイクルへの適用に好適な加湿装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、圧縮空気の流れ方向に向かって断面積を拡大させる拡大部と、液滴を噴霧する噴霧装置と、噴霧された前記液滴を蒸発させる噴霧部と、前記噴霧部で発生したドレンを回収するドレン回収孔とを備え、前記拡大部の下流側かつ前記噴霧装置の上流側に、流路全体を覆うように配置され、流れを主流方向に整流する整流装置を備え、前記整流装置は多数の孔を持つ多孔板であり、前記噴霧装置の下流側から前記噴霧装置および前記多孔板を見た場合に前記噴霧装置と前記多孔板の孔が重なる総面積が、前記多孔板の孔の総面積の50%未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、HATサイクルへの適用に好適な加湿装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施例に関する加湿装置の概略図。
図2】本発明の第一実施例の加湿装置を含むガスタービンのサイクル構成図。
図3】本発明の第一実施例における加湿装置の流れ方向断面図。
図4】本発明の第一実施例における加湿装置の下流側断面から上流側を見た場合の 矢視図。
図5】本発明の第二実施例における加湿装置の流れ方向断面図。
図6】本発明の第三実施例における加湿装置の流れ方向断面図。
図7】本発明の第一実施例における加湿装置の下流側断面から上流側を見た場合の 矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
以下に示す本発明の各実施例の構成では、拡大部を通過後に整流装置が存在するため、拡大部通過時に剥離によって逆流が発生しても、噴霧部では大幅に逆流が抑制される。このため、噴霧部で発生するドレン量を大幅に抑制し、加湿装置の性能を向上させることが可能となる。さらに各実施例の構造は拡大部の広がり角が20deg以上と大きい場合にも適用可能なため拡大部の流れ方向距離を小さくすることが可能であり、かつ内周部に独立した流路を設ける必要がないため、低コスト化することができる。
【0018】
(実施例1)
図1に本実施例における加湿装置の概略図を、図2に本実施例の加湿装置を含むガスタービンのサイクル構成図を示す。まず図2において、本実施例のガスタービンサイクルは圧縮機2、燃焼器3、タービン4および軸5から構成されるガスタービン本体1に加え、軸5に接続されて電力を発生する発電機6、再生熱交換器7、および加湿装置8によって構成されている。圧縮機2を通過した吐出空気は配管21によって加湿装置8に供給される。加湿装置8を通過した湿り空気は配管22を経由して再生熱交換器7に流入し、タービン4を通過した排気ガスと熱交換して高温湿り空気となり、その後配管23を経由して燃焼器3に流入する。
【0019】
燃焼器3では燃料が噴射されて高温・高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスはタービン4を駆動した後排ガスとなって再生熱交換器7に流入し、最終的には煙突(図示せず)を経由して大気へと放出される。また加湿装置8への給水は給水装置30から供給配管31を経由して行われる。供給された給水の一部は加湿装置8からドレンとして排出される。このドレンはドレン配管32を経由して供給配管31に戻り、再び加湿装置8での噴霧水として使用される。
【0020】
なお図2は本発明の加湿装置を適用可能なガスタービンサイクルとしての必要最小限のサイクル構成のみを示している。実用上はHATサイクルのように圧縮機2の途中に中間冷却器が設けられたり、AHATシステムのように圧縮機2の入口に噴霧冷却器が、再生熱交換器排ガス側出口にミストエリミネータと水回収器が設けられたりすることが多いが、そのようなサイクル構成にも当然本発明は適用可能である。同様にドレン配管32の途中にも水処理装置が設けられる場合でも、本発明は適用可能である。
【0021】
加湿装置8は、圧縮機吐出空気を供給する配管21と接続された導入部81、流れの減速と噴霧領域の確保を目的とした拡大部82、液滴を噴霧・蒸発させる噴霧部83、流れを整流する整流装置84、液滴を噴霧する噴霧装置85、およびドレン回収孔86から構成される。噴霧装置85は水供給配管31と、ドレン回収孔86は排水配管32とそれぞれ接続されており、ドレンを回収しつつ液滴噴霧によって主流を加湿している。また拡大部82の広がり角θとしては約30度を想定している。なおコストの観点からも、実用上は拡大部における広がり角が20deg以上であることが望ましい。
【0022】
なお本実施例では噴霧部83は直接加湿装置8と再生熱交換器7をつなぐ配管22と接続されているが、配管22の径低減のため噴霧部83の下流部に流れ方向断面積を減少させる縮小部を備えていても問題ない。また再生熱交換器7への噴霧液滴流入を抑制するため、噴霧部83の下流にミストエリミネータを備えた構造となっていても問題ない。
【0023】
図3には、本実施例における加湿装置8の整流装置84(A-A部)における流れ方向断面図を示す。一般的に配管21の断面は円形状となっているため、本実施例では噴霧部83および整流装置84の断面形状として円形状を想定している。断面形状を円形状とすることで、主流に淀みが発生することを抑制できる。また整流装置84の具体的構造としては多数の孔87を備えた多孔板を想定している。本実施例では、多孔板の孔径は全域で同一である。孔の配置は本実施例では同心円状を想定しているが、孔の配置によって流れの対象性を阻害する配置でなければ、他の配置方法(三角形配置等)でも問題ない。なお本実施例では、多孔板の断面積に占める孔の合計面積の比率(開孔率)は約40%を想定している。
【0024】
次に図4には、本実施例における加湿装置8の噴霧装置85の下流側断面(B-B部)から上流側を見た場合の矢視図を示す。本実施例では図4に示す通り、噴霧装置85として複数本のノズルヘッダと各ノズルヘッダに複数本設置された噴霧ノズルからなる形状を想定している。噴霧ノズルの形状としては高圧水を噴霧する1流体ノズルを想定している。
ノズル形状については空気と水を混合して噴霧する2流体ノズルを用いることも可能である。
【0025】
但し、2流体ノズルは高圧空気を圧縮機出口部等から別途供給する必要があるため、1流体ノズルを用いた場合に比べてガスタービンの全体性能が低下する傾向にある。また、本実施例のように十分な加湿を行うために複数の噴霧ノズルを備える場合、この傾向はより顕著となる。このため、噴霧ノズルとしては1流体ノズルを用いるのが望ましい。また図4には整流装置84の孔87の位置も併記している。噴霧装置85の配置としては、噴霧装置85と整流装置84の孔87が重なる総面積を整流装置84の孔87の総面積の50%未満とするのが望ましい。
【0026】
ここで、本実施例におけるガスタービンサイクルおよび加湿装置8の具体的な動作について説明する。まず本実施例におけるガスタービン1は、吸込流量120kg/s、圧力比16、燃焼温度として1300℃を想定している。圧縮機2を通過した吸込空気は圧力約1.5MPa、温度約420℃の空気となり、配管21を経由して加湿装置8へと流入する。加湿装置8では圧力約7MPa、温度約40℃の高圧水が噴霧装置85より噴霧部83に供給され、噴霧液滴の蒸発によって約200℃まで空気が冷却される。
【0027】
冷却された湿り空気は再生熱交換器7で圧力約0.1MPa、温度約500℃の排ガスと熱交換され、約330℃の湿り空気となって燃焼器3に流入し、その後タービン4へと流入してタービン4を駆動する。タービン通過後の排ガスは前述の通り再生熱交換器7で加湿装置8を通過した湿り空気との熱交換によって熱回収され、約370℃の排ガスとなって最終的に放出される。
【0028】
次に、加湿装置8内部における流れの詳細について説明する。配管21および導入部81における平均流速としては約50m/sを想定している。拡大部82に流入した流れは断面積増加に伴い減速し、拡大部82の出口では平均流速約4m/sとなって整流装置84および噴霧部83に流入する。なお整流装置84を通過時には約0.0005MPaの圧力損失が生じる。噴霧部83を通過する空気に対し、噴霧装置から平均径約30μmの液滴が供給され、液滴蒸発によって主流空気を冷却した後下流側の配管22に流入する。主流を浮遊する噴霧液滴の大半が蒸発するよう、滞留時間としては約1.5秒を想定している。
【0029】
本実施例では拡大部82の広がり角θが大きいため、拡大部出口の外周側には大きな剥離領域が生じる。この際に整流装置84がないと、外周側の剥離領域は噴霧装置85まで到達し、噴霧装置85の一部の領域で流れ方向上流側の流れが生じる。これによって噴霧ノズルから噴霧された液滴が噴霧装置85に戻って付着してしまい、多量のドレンが生成されてしまう可能性がある。
【0030】
解析によって発生ドレン量を予測したところ、整流装置84がない場合は約45%の噴霧液滴がドレン化するが、整流装置84を追加することで約30%程度までドレン化率を低減することが可能となるという結果が得られた。つまり、本実施例の構造を採用することで、加湿装置8の性能が向上すると考えられる。一方圧力損失は整流装置84があるため増加するが、圧縮機出口〜燃焼器入口間で生じる圧力損失の0.7%以下と十分小さいため、圧力損失の増加によるガスタービン性能低下はほとんどないと考えられる。
【0031】
さらに本実施例では、噴霧装置85と整流装置84の孔87とが重なる総面積を整流装置84の孔87の総面積の50%未満とすることで、整流装置84の孔87と噴霧装置85を流れ方向に対してなるべく重ならないように配置している。このような配置は、整流装置84の孔87と噴霧装置85が流れ方向に関してほぼ重なっているケースに比べ、加湿性能に関して2つのメリットがある。1つは多孔板を通過した圧縮機吐出空気が整流装置にぶつかることで発生する噴霧装置周辺の局所的な逆流を抑制することが出来る点である。
【0032】
もう1つは、ノズルから噴霧された粗大液滴と主流流速の関係に関連している。ノズルから噴霧された液滴は円錐形状を形成するが、粗大液滴は円錐の外縁部に位置することが多い。この際粗大液滴周辺の流速が小さいと、粗大液滴が蒸発するのに十分な主流の質量流量が確保されず、未蒸発液滴同士の衝突等で更なる粗大液滴が生じて蒸発量の低減とドレン発生量の増加を招く可能性がある。本実施例のように孔87と噴霧装置85とがなるべく重ならないように配置することで、噴霧時の形成される円錐の外縁部を流速の大きい流れが通過することになるため、上記の蒸発量低減と発生ドレン量増加を抑制することが可能となる。
【0033】
特に、本実施例のように、複数本のノズルヘッダとそれぞれのノズルヘッダに複数本の噴霧ノズルが設けられた噴霧装置85に対し、噴霧装置85と整流装置84の孔87とが重なる総面積を整流装置84の孔87の総面積の50%未満とすることで、上述の通り発生ドレン量を低減しつつ、より均一な水噴霧により良好な加湿性能を達成することができる。
【0034】
以上をまとめると、本実施例は、拡大部82の下流側かつ噴霧装置85の上流側に、流れを主流方向に整流する整流装置84を、流路全体を覆うように設置することにより、拡大部82で発生した逆流等の乱れが噴霧部に至ることを抑制することができ、ドレン発生量の少ない、HATサイクルへの適用に好適な加湿装置を実現できる。
【0035】
また整流装置84の孔87と噴霧装置85を流れ方向に対してなるべく重ならないように配置することで、噴霧装置周辺での局所的な逆流の抑制も可能となる。同時に噴霧時に発生する粗大液滴の存在する領域を流速の大きい主流が通過することで、粗大液滴が蒸発するのに十分な質量流量を確保し、未蒸発液滴同士の衝突による蒸発量低下やドレン発生も抑制できる。 具体的には、噴霧装置の下流側から噴霧装置および多孔板を見た場合に噴霧装置と多孔板の孔が重なる総面積を多孔板の孔の総面積の50%未満となるように配置することで、多孔板を通過した圧縮機吐出空気が整流装置にぶつかることで発生する噴霧装置周辺の局所的な逆流を抑制することが可能となる。
【0036】
また特許文献1に比べると噴霧装置を拡大部82の通過後に設置しているため、大流量の噴霧が可能となっている。かつ、拡大部の角度を20deg以上とした場合にも適用できるため、加湿装置の全長を短くして低コスト化が達成できる。さらに特許文献2に比べて内周側に独立した流路を設けておらず、かつ拡大部出口に多孔板を固定しているため、低コスト化と拡大部出口での剥離抑制を両立した構造とすることが可能となる。
【0037】
(実施例2)
図5に本実施例における加湿装置8の整流装置84(A-A部)における流れ方向断面図を示す。実施例1との相違は、整流装置84の中心側に位置する孔88の直径を、外周側に位置する孔87の直径に比べて小さくしている点である。なお図3と重複する機器については番号を同一とし、詳細な説明は省略する。
【0038】
実施例1の構造は整流装置84によって噴霧部83での剥離と噴霧装置85に対する上流側への流れを抑制するものの、それでも噴霧部83の外周部近傍では若干の逆流が発生し、解析結果によれば噴霧量の30%程度のドレンが発生する。外周部で上流側への流れが発生する理由としては、流量配分が適正化されてない点が考えられる。拡大部82で発生する剥離領域は主に外周側であるため、拡大部82出口における主流の質量流量は中心部に近いほど多く、外周側になるにつれて小さくなる。
【0039】
実施例1の構造では整流装置84の孔87の径は全て同一としていたため、整流装置84を通過しても流量配分の適正化が十分ではなく、中心部に比べて外周側の流量が相対的に少なくなる。この場合、整流装置84の中心部を通過した流れは噴霧部83で径方向(この場合外周側)に拡散し、拡散時に噴霧装置85に対する上流側への流れを誘起する。
これによって、ドレン発生量の低減が阻害されている可能性がある。
【0040】
そこで本実施例では、整流装置84の中心側に位置する孔88の直径を外周側に位置する孔87の直径より小さくする構造とした。一般に孔の径が小さいほど通過時の圧力損失が大きくなるため、中心部に比べて外周側の方が主流空気は流れやすくなる。これによって中心部に偏っていた流量配分が適正化され、噴霧部83の外周側で前述の上流側への流れを低減することが可能となる。解析結果によれば、中心側の孔88の径を外周側の孔87の径の約85%とすることで噴霧液滴のドレン化率を30%程度から5%程度まで低減させることが可能となる。
【0041】
なお本実施例では実施例1に比べて整流装置全体の開孔率(整流装置の断面積に対する孔全体の面積比)が低下するため、圧力損失が0.0002MPa程度増加する。ただし実施例1同様、整流装置84で生じる圧力損失は圧縮機出口〜燃焼器入口間で生じる圧力損失に比べて十分小さいため、圧力損失の増加によるガスタービン性能低下はほとんどないと考えられる。
【0042】
以上をまとめると、本実施例では、整流装置の構造として多孔板を用い、かつ中心側に位置する孔の直径を外周側に位置する孔の直径より小さくすることで、剥離によって圧縮機吐出空気が供給されにくくなる噴霧部外周側にもより均一に主流が供給されるようになる。このため、単純に全域の孔の直径を同一とした場合に比べ、外周部での蒸発が促進され加湿装置の性能を向上させることが可能となる。
【0043】
したがって、本実施例は実施例1と比べ、わずかな構造変更でさらにドレン発生量を低減する加湿装置を提供可能だといえる。
【0044】
(実施例3)
図6に本実施例における加湿装置8の整流装置84(A-A部)における流れ方向断面図を示す。実施例1との相違は、拡大部82の下流部から噴霧部83にかけての流れ方向の断面形状を円形状ではなく長方形形状(正方形形状)としている点である。なお図3と重複する機器については番号を同一とし、詳細な説明は省略する。
【0045】
図7には本実施例における加湿装置8の噴霧装置85の下流側断面(B-B部)から上流側を見た場合の矢視図を示す。図7から、本実施例の構造は実施例1に比べて噴霧装置85の配置について2つのメリットがある。まず1つ目は、整流装置84の孔87を空間的に等間隔に配置したとき、孔を格子状に配置することができる点である。これにより、噴霧装置85の位置を適切に選ぶことで、図7のように整流装置84の孔87と噴霧装置85を流れ方向に対して全く重ならないように配置することが可能となり、前述の噴霧装置85での局所的な逆流や未蒸発液滴の集合による蒸発量低下などの問題がより起きにくくすることが可能となる。
【0046】
またもう1つは、噴霧液滴の空間的対称性が維持されやすい点である。一般に噴霧装置85の形状は、図4図7のように直線形状の管に複数のノズルがついているタイプが多い。このタイプの噴霧装置85を用いる場合、噴霧部83の断面形状が実施例1のような円形状だと、外周側近傍のノズル配置を空間的に等間隔とすることが難しくなり、外周側では蒸発量に偏差が生じやすくなる。この蒸発量の偏差によって局所的に未蒸発液滴が集合し、ドレン量が増加する可能性がある。これに対し本実施例では噴霧部83の断面形状が長方形形状なので、直線形状の噴霧装置85を用いた場合に噴霧液滴の空間的対称性を維持するのが容易となり、ドレン量が低減されると考えられる。
【0047】
また断面形状が長方形形状になると、加湿装置8の内部が曲面でなくなるため、メンテンナンス時の作業性も向上する。具体的には、噴霧装置85の噴霧ノズルの交換等が、実施例1に比べて容易になると考えられる。
【0048】
以上をまとめると、本実施例は実施例1と比べドレン発生量の低減だけでなく、メンテナンス性も向上する加湿装置を提供可能だといえる。
【0049】
なお本実施例における整流装置84に対しても、実施例2で示した孔径の比率変更を適用することができる。その場合、本実施例よりもさらにドレン発生量を低減した加湿装置を提供することが可能となる。
【0050】
以上に示した各実施例の形態によれば、再生熱交換器を備えた再生サイクル型ガスタービンにおいて、回収熱量増加を目的として圧縮機〜再生熱交換器間に設置される加湿装置に関するものである。本発明の適用先はHATサイクル全般であるが、既存の再生サイクル型ガスタービンに対する改造方法としても適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ガスタービン
2 圧縮機
3 燃焼器
4 タービン
5 軸
6 発電機
7 再生熱交換器
8 加湿装置
21、22、23 空気配管
30 給水ポンプ
31、32 水配管
81 導入部
82 拡大部
83 噴霧部
84 整流装置
85 噴霧装置
86 ドレン回収孔
87、88 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7