特許第6038620号(P6038620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6038620ガスタービン冷却翼およびガスタービン冷却翼の補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038620
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ガスタービン冷却翼およびガスタービン冷却翼の補修方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/18 20060101AFI20161128BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20161128BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20161128BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20161128BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20161128BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F01D5/18
   F01D9/02 102
   F01D25/00 X
   F01D25/12 E
   F02C7/00 D
   F02C7/18 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-265908(P2012-265908)
(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-111901(P2014-111901A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 学
(72)【発明者】
【氏名】田川 久人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 康広
(72)【発明者】
【氏名】樋口 眞一
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−214707(JP,A)
【文献】 特開2003−056301(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0175714(US,A1)
【文献】 特開2001−200704(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1126135(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18, 5/30, 9/00,11/00,25/00
F02C 7/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前縁から後縁まで延びた背側部分および腹側部分の翼壁で形成された、作動媒体より低温の冷却媒体を通風する中空部分を有した翼形部を備えたガスタービン冷却翼において、
前記翼形部の後縁より上流側の背側部分および腹側部分の前記翼壁に設けられた、前記冷却媒体の一部を前記作動媒体中へ噴出する冷却孔と、
前記冷却媒体の一部を前記翼形部の後縁から前記作動媒体中へ噴出するための、前記中空部分から前記後縁へ貫通した後縁冷却孔とを備え、
背側部分および腹側部分の前記翼壁に設けられた前記冷却孔および後縁冷却孔が翼高さ方向に複数設けられ、
複数の前記後縁冷却孔同士を区画する隔壁部分を有し、
前記隔壁部分が形成される翼高さ位置における翼高さ方向に対して垂直な断面上に、前記冷却孔が配置されていることを特徴としたガスタービン冷却翼。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン冷却翼において、冷却媒体を通風する中空部分と後縁冷却孔の接続位置を始点としたコード方向距離が、ガスタービン冷却翼の翼コード方向長さに対して10%以内となる位置に、前記冷却孔が設けられていることを特徴としたガスタービン冷却翼。
【請求項3】
請求項1に記載のガスタービン冷却翼において、背側部分の翼壁に設けられた前記冷却孔の設置位置が、腹側部分の翼壁に設けられた前記冷却孔の設置位置よりも、ガスタービン冷却翼の翼コード方向において前縁側にあることを特徴としたガスタービン冷却翼。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のガスタービン冷却翼において、前記隔壁部分に、隣接する後縁冷却孔間を翼高さ方向に貫通する流路が設けられていることを特徴とするガスタービン冷却翼。
【請求項5】
前縁から後縁まで延びた背側部分および腹側部分の翼壁で形成された中空の翼形部と、前記翼形部の中空部分に通風された作動媒体より低温の冷却媒体の少なくとも一部を前記翼形部の後縁から前記作動媒体中へ噴出するための、前記中空部分から前記後縁へ貫通した後縁冷却流路と、前記後縁冷却流路内部に設けられた複数の突起物とを備えたガスタービン冷却翼の補修方法であって、
前記ガスタービン冷却翼の損傷した部分を溶接補修する工程と、
前記溶接補修する工程で溶接補修した箇所において、前記冷却媒体の一部を前記翼形部の後縁から前記作動媒体中へ噴出するための、前記中空部分から前記後縁へ貫通した後縁冷却孔を翼高さ方向に複数設ける後縁冷却流路の復元工程と、
前記後縁冷却流路の復元工程で設けた複数の前記後縁冷却孔同士を区画する隔壁部分が形成される翼高さ位置における翼高さ方向に対して垂直な断面上であって、前記翼形部の後縁より上流側の背側部分または腹側部分の少なくとも一方の前記翼壁に、前記冷却媒体の一部を前記作動媒体中へ噴出するための冷却孔を設ける工程とを有することを特徴としたガスタービン冷却翼の補修方法。
【請求項6】
請求項5に記載のガスタービン冷却翼の補修方法において、前記冷却孔を、冷却媒体を通風する中空部分と後縁冷却孔の接続位置を始点としたコード方向距離が、ガスタービン冷却翼の翼コード方向長さに対して10%以内となる位置に追加することを特徴としたガスタービン冷却翼の補修方法。
【請求項7】
請求項5に記載のガスタービン冷却翼の補修方法において、前記翼形部の後縁より上流側の背側部分および腹側部分の前記翼壁に前記冷却孔を追加する場合に、前記背側部分の翼壁の冷却孔追加位置が、前記腹側部分の翼壁の冷却孔追加位置よりも前記前縁側にあることを特徴としたガスタービン冷却翼の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却孔を設けたガスタービン冷却翼、およびガスタービン冷却翼の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2005−069236号公報(特許文献1)がある。特許文献1の図11には、後縁吹き出し冷却孔とその近傍のフィルム冷却孔が、同一の横断面上に設置されたガスタービン冷却翼が記載されている。また、特許文献1の図29には、後縁ピンフィン冷却流路とその近傍にフィルム冷却孔を配置したガスタービン冷却翼が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−069236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図11に記載のガスタービン冷却翼の後縁吹き出し冷却孔は、翼高さ方向に冷却孔を隔てた隔壁を有している。この隔壁部分は、十分な強度を確保するため、翼高さ方向および横方向にある程度の肉厚が必要である。その結果、この隔壁部分は、周囲の高温ガスからの加熱に対して、後縁吹き出し冷却孔による十分な冷却効果が得られず、材料許容温度を超えてしまう可能性がある。
【0005】
また、ガスタービン冷却翼は、高温運転で一定期間使用した後に、溶接補修して再利用されるのが一般的である。特許文献1の図29に記載のガスタービン冷却翼を再利用するために溶接補修する場合、後縁冷却流路に設けられたピンフィンは、形状が複雑なために、高温運転前と同じ形状に復元することは困難である。このため、特許文献1に記載のタービン冷却翼の再利用時には、ピンフィンが高温運転前と同一形状とならないことにより、後縁部分の冷却性能が高温運転前に比べて低下する可能性がある。そして、冷却性能が低下することで十分な冷却効果が得られず、材料許容温度を超えてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みなされたものであり、その目的は、十分な冷却性能を確保できるガスタービン冷却翼およびガスタービン冷却翼の補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明は、複数の前記後縁冷却孔同士を区画する隔壁部分を有し、前記隔壁部分が形成される翼高さ位置における翼高さ方向に対して垂直な断面上に、前記冷却孔が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、十分な冷却性能を確保できるガスタービン冷却翼およびガスタービン冷却翼の補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係るガスタービン冷却翼の外観図の例である。
図2図1図4図9および図10のA−A横断面図である。
図3図1のB1−B1横断面図の例である。
図4】本発明の実施例2に係るガスタービン冷却翼の外観図の例である。
図5図4のB2−B2横断面図の別の例である。
図6】本発明の実施例3に係るガスタービン冷却翼の外観図の例である。
図7図4の翼後縁部の拡大図である。
図8図4のC−C縦断面図の例である。
図9】本発明の実施例4に係るガスタービン冷却翼の外観図の例である。
図10】本発明の実施例5に係るガスタービン冷却翼の外観図の例である。
図11図10のB3−B3横断面図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例について図面を用いて説明する。なお、ここで挙げた実施例は軸流ガスタービンを例に挙げて説明するが、類似構造を有する半径流タービンなどにも本発明は適用可能である。
【0011】
以下に示す本発明のガスタービン冷却翼に係る実施例は、翼内部に作動媒体より低温の冷却媒体を通風する内部冷却翼であって、冷却媒体の一部を作動媒体中へ噴出するためのフィルム冷却孔を背側および腹側部分に備え、かつ、冷却媒体の一部を後縁から作動媒体中へ噴出するための後縁冷却孔も備え、そのいずれの冷却孔も翼高さ方向に複数設けられたガスタービン冷却翼において、後縁冷却孔が設けられていない翼高さ方向に対して垂直な断面上にのみ、背側および腹側部分のフィルム冷却孔を設けた冷却構造を特徴として備えている。
【0012】
また、以下に示す本発明のガスタービン冷却翼の補修方法に係る実施例は、翼内部に作動媒体より低温の冷却媒体を通風する内部冷却翼であって、冷却媒体の一部を翼後縁から作動媒体中へ噴出する後縁冷却流路内部に、伝熱促進リブやピンフィンを設置したガスタービン冷却翼を、一定期間使用した後に補修する際において、冷却媒体の一部を翼後縁から作動媒体中へ噴出するための後縁冷却孔を翼高さ方向に複数加工したうえで、この後縁冷却孔が設けられていない翼高さ方向に対して垂直な断面上にのみ、翼後縁より上流側の背側部分および腹側部分に、フィルム冷却孔を追加することを特徴とする補修方法である。
【0013】
そして、以下に示す本発明の各実施例のガスタービン冷却翼では、後縁吹き出し冷却孔の隔壁部と同一横断面上の背側および腹側部分の後縁近傍の上流にフィルム冷却孔を設けているので、後縁吹き出し冷却孔の隔壁部を適切に冷却できる。
【0014】
また、伝熱促進リブやピンフィンを有した複雑な形状の後縁冷却流路を備えたガスタービン冷却翼を、高温運転で一定期間使用した後に溶接補修する際、後縁は翼高さ方向に隔壁で隔てられた単純な形状の冷却孔しか形成できないため、高温運転前の複雑な形状の後縁冷却流路に比べて、特に隔壁部が高温になり冷却性能が低下する。しかし、以下に示す本発明の各実施例のガスタービン冷却翼の補修方法を用いれば、補修後は、後縁吹き出し冷却孔の隔壁部と同一横断面上の背側および腹側部分の後縁近傍の上流にフィルム冷却孔が設けられる。そのため、ガスタービン冷却翼を高温運転で一定期間使用した後に再利用する際にも、高温運転前と同等の冷却性能を維持できる。
【実施例1】
【0015】
本実施例では、後縁吹き出し冷却孔の隔壁部を適切に冷却するガスタービン冷却翼1の例を説明する。
【0016】
図1は、本実施例のガスタービン冷却翼の外観図の例であり、図2および図3は、本実施例のガスタービン冷却翼1の翼形部(羽根部)10の横断面図である。図2は、図1のA−A横断面図である。図3は、図1のB1−B1横断面図の例である。このガスタービン冷却翼1は、定置形や航空機ガスタービンで使用され、高温ガスを作動媒体として運転される。翼形部10は前縁(入口縁)14から後縁(出口縁)13まで延びた背側部分11および腹側部分12の翼壁で形成されている。なお、前縁14及び後縁13の延びる方向(例えば図1の上下方向)を本願では翼高さ方向と呼称する。
【0017】
また、翼形部10の内部には、支持リブで仕切られた第一および第二冷却流路21、22が設けられており、第二冷却流路22は後縁13へ貫通した後縁冷却流路23と繋がっている。作動媒体である高温ガスよりも低温の冷却媒体(本実施例では空気とする)を、第一および第二冷却流路21、22へ供給することにより、背側部分11および腹側部分12が冷却される。第二冷却流路22へ供給された冷却空気は、後縁冷却流路23を通過する際、背側部分11および腹側部分12の後縁側を主に冷却した後、後縁13より作動媒体中へ噴出される。
【0018】
後縁冷却流路23は、単一の円孔流路を翼の高さ方向に複数個並べた単純な構造により形成されているので、後縁13から放電加工などの貫通孔を加工する方法で比較的容易に製作できる。また、図2に示す後縁冷却流路23が存在する翼の横断面上では、後縁冷却流路23により翼後縁部分13は十分冷却される。
【0019】
一方で、この後縁冷却流路23は、従来の熱伝達を促進するための伝熱促進リブやピンフィンを設けた冷却流路と異なり、図3の翼後縁部分に示すように、翼高さ方向に後縁冷却流路23を隔てて複数の後縁冷却孔に区画する隔壁を有している。この隔壁部分は、十分な強度を確保するため、翼高さ方向および横方向にある程度の肉厚が必要である。その結果、この隔壁部分は、周囲の高温ガスからの加熱に対して、図2の横断面上に示す後縁冷却流路23による十分な冷却効果が得られず、材料許容温度を超えてしまう可能性がある。
【0020】
そこで本実施例では、図3に示すように、少なくとも後縁冷却流路23の冷却効果が不十分となる隔壁部分が形成される翼高さ位置における翼高さ方向に対して垂直方向の横断面上に、背側および腹側部分のフィルム冷却孔31を設けている。これにより、フィルム冷却による冷却効果を得ることができるので、材料許容温度以下に維持することができる。なお、図2にはフィルム冷却孔31を図示していないが、図2に示した翼高さ方向断面においても、フィルム冷却孔31を設けても良い。
【実施例2】
【0021】
本実施例では、後縁吹き出し冷却孔の隔壁部を実施例1より最適に冷却するガスタービン冷却翼1の例を説明する。
【0022】
図4は、本実施例のガスタービン冷却翼の外観図の例であり、図2および図5は、本実施例のガスタービン冷却翼1の翼形部(羽根部)10の横断面図である。図2図4のA−A横断面図であり、図5図4のB2−B2横断面図の例である。図4図2および図5のガスタービン冷却翼1の翼形部(羽根部)10のうち、既に説明した図4図2および図5に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0023】
このガスタービン冷却翼1は、実施例1と同様に、少なくとも後縁冷却流路23の冷却効果が不十分となる翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分13には、翼高さ方向に対して垂直方向の横断面上において、背側および腹側部分のフィルム冷却孔32を設けている。ただし、フィルム冷却孔による冷却効果は、下流方向への距離が長くなるに連れて低下していく傾向にある。そのため、フィルム冷却孔をあまり上流側に設置した場合、翼後縁部13の位置では、十分な冷却効果が得られない可能性がある。具体的には、翼コード方向長さの10%を過ぎた辺りから、十分な冷却効果が得られない可能性が高くなる。
【0024】
このため、本実施例では、より最適に翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分13を冷却できるように、フィルム冷却孔32の位置があまり上流側(前縁14側)にならないように設定している。すなわち、第二冷却流路22と後縁冷却流路23の接続位置を始点としたコード方向距離51が、ガスタービン冷却翼1の翼コード方向長さ52に対して10%上流側となる位置にフィルム冷却孔32を設けている。
【0025】
本実施例のように、第二冷却流路22と後縁冷却流路23の接続位置を始点としたコード方向距離51が、ガスタービン冷却翼1の翼コード方向長さ52に対して10%以内となる位置にフィルム冷却孔32を配置することにより、冷却対象である翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分13を、フィルム冷却孔32から翼コード方向長さ52に対して10%以内の範囲に含むことができる。そのため、冷却対象である翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分13の冷却に必要な冷却性能を確実に維持する事ができる。このように、本実施例の構成によれば、翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分13を、より確実に材料許容温度以下に維持することができる。
【実施例3】
【0026】
本実施例では、後縁吹き出し冷却孔の隔壁部を適切に冷却するため、後縁吹き出し冷却孔の隔壁部に、後縁吹き出し冷却孔間を貫通する連通孔を設けたガスタービン冷却翼1の例を説明する。
【0027】
図6は、本実施例のガスタービン冷却翼の外観図の例であり、図7は、図6の後縁部分の拡大図であり、図8は、図6のC−C縦断面図である。
【0028】
図6図7および図8のガスタービン冷却翼1の翼形部(羽根部)10のうち、既に説明した図6図7および図8に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0029】
このガスタービン冷却翼1は、実施例1と同様に、少なくとも後縁冷却流路23の冷却効果が不十分となる翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分13には、翼高さ方向に対して垂直方向の横断面上において、背側および腹側部分のフィルム冷却孔31を設けている。
【0030】
これに加え、このガスタービン冷却翼1は、図8に示すように、隣接する後縁冷却流路24の間を翼高さ方向に貫通し、後縁冷却流路24を翼高さ方向隔壁部分13で連通させる流路25を設けている。このため、本実施例では、翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分13への冷却効果は、フィルム冷却孔31から得られる冷却効果に加えて、後縁冷却流路間を貫通する流路25から得られる冷却効果も相乗されることになる。この結果、翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分13を、より確実に材料許容温度以下に維持することができる。なお、この後縁冷却流路間を貫通する流路25は、流れ方向に複数個設けても良い。
【0031】
図8に示した後縁冷却流路の形状は、製造性の面でも有利である。即ち、精密鋳造により成型する際、後縁冷却流路間を貫通する流路25の存在により、鋳造用の中子強度を増大させることができる。これにより、精密鋳造の歩留が向上する効果が得られる。
【0032】
なお、本実施例と、フィルム冷却孔31を最適な位置に設けた実施例2のフィルム冷却孔32とを組み合わせて実施することで、翼後縁部13に対する冷却効果をより向上することも可能である。
【実施例4】
【0033】
本実施例では、ガスタービン冷却翼1を一定期間の高温運転後、再利用するため溶接補修する場合において、後縁吹き出し冷却孔の隔壁部を適切に冷却するための補修方法の例を説明する。
【0034】
図9は、本実施例の補修方法を施した後のガスタービン冷却翼の外観図の例であり、図2図3および図5は、本実施例の補修方法を施した後のガスタービン冷却翼1の翼形部(羽根部)10の各横断面図である。図9図2図3および図5のガスタービン冷却翼1の翼形部(羽根部)10のうち、既に説明したそれぞれの図に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0035】
ガスタービン冷却翼1を一定期間の高温運転後、再利用する際、後縁冷却流路内に設けられた突起物であるピンフィンや伝熱促進リブは、形状が複雑なために、高温運転前と同じ形状に復元することは困難である。例えば特許文献1に記載のタービン冷却翼を、設計寿命を全うした後に再利用するためには、運転寿命に応じて損傷した部分を肉盛溶接して再度加工を施すなどの補修工程が必要になる。したがって、内部冷却流路の復元は、外部からの加工によるため、ピンフィンや伝熱促進リブといった突起物が高温運転前と同一形状とならず、図9に示したような単一の円孔流路を翼の高さ方向に複数個並べた単純な構造により形成された後縁冷却流路23で復元される場合が多い。この場合、補修前には存在しなかった翼高さ方向に冷却孔を隔てた隔壁が、補修後には形成されてしまうので、翼後縁部分13の冷却性能が高温運転前に比べて低下する可能性がある。
【0036】
この対策として、高温運転前には、ピンフィンや伝熱促進リブによる翼後縁部の冷却効果が十分であったためにフィルム冷却孔が設けられていなかった場合であっても、図3のガスタービン冷却翼の横断面図に示すように、少なくとも後縁冷却流路23の冷却効果が不十分となる翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分13には、翼高さ方向に対して垂直方向の横断面上において、背側および腹側部分の翼後縁部13の近傍にフィルム冷却孔31を、ガスタービン冷却翼1を補修する際に追加して設ける方法が有効である。
【0037】
この補修方法を用いれば、冷却効果が不十分となる可能性がある翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分13には、背側および腹側部分に追加して設けたフィルム冷却孔31からの冷却効果が得られるので、ガスタービン冷却翼1を補修して再利用する際も材料許容温度以下に維持することができる。
【0038】
なお、補修時に設けるフィルム冷却孔を、実施例2で示した最適な位置に設けたフィルム冷却孔32とすることで、翼後縁部13に対する冷却効果をより向上することも可能である。
【0039】
また、本実施例は、実施例3に示した後縁吹き出し冷却孔の隔壁部に、後縁吹き出し冷却孔間を貫通する連通孔25を設けたガスタービン冷却翼に対しても適用できる。
【実施例5】
【0040】
本実施例では、ガスタービン冷却翼1を一定期間の高温運転後、再利用するため溶接補修する場合において、後縁吹き出し冷却孔の隔壁部を適切に冷却するための補修方法の実施例4とは別の例を説明する。
【0041】
図10は、本実施例の補修方法を施した後のガスタービン冷却翼の外観図の例であり、図2および図11は、本実施例の補修方法を施した後のガスタービン冷却翼1の翼形部(羽根部)10の各横断面図である。
【0042】
図10図2および図11のガスタービン冷却翼1の翼形部(羽根部)10のうち、既に説明したそれぞれの図に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。また、実施例4と同様な部分については説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0043】
ガスタービン冷却翼1を一定期間の高温運転後、再利用するために補修する場合、補修後には翼後縁部分13において、補修前には存在しなかった翼高さ方向に冷却孔を隔てた冷却効果が低い隔壁が形成されてしまう。そこで、この隔壁部分を冷却する手段が必要になる。
【0044】
この対策として、実施例4では、図3あるいは図5のガスタービン冷却翼の横断面図に示すように、少なくとも後縁冷却流路23の冷却効果が不十分となる翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分13には、翼高さ方向に対して垂直方向の横断面上において、背側および腹側部分の両方にフィルム冷却孔31あるいは32を追加して設けた。
【0045】
しかし、背側については、下流に行くにつれて作動媒体の圧力が低下していくので、フィルム冷却効果が腹側に比べてより下流まで高いまま持続する。そこでこの特性を活かし、腹側に比べてより上流にフィルム冷却孔30を設けている場合が多い。これを考慮に入れ、ガスタービン冷却翼1の補修時に敢えて背側にはフィルム冷却孔31を追加して設けず、追加して設けるフィルム冷却孔33を腹側のみとした補修方法が、本実施例である。これにより、翼後縁部13近傍のフィルム冷却孔33が腹側のみで済むため、補修後の再利用時のガスタービン翼冷却空気流量を実施例4に比べて減少することができる。
【0046】
ただし、補修前の既設フィルム冷却孔が、背側部分11の前縁14側に設けられていたとしても、少なくとも後縁冷却流路23の冷却効果が不十分となる翼後縁部分における翼高さ方向隔壁部分に設けられていなければ、同じ背側部分11の前縁14側付近にフィルム冷却孔31を追加して設ける必要がある。
【0047】
なお、後縁吹き出し冷却孔の隔壁部を、隔壁が存在する断面の背側および腹側翼壁に設けたフィルム冷却孔31によって適切に冷却するガスタービン冷却翼1においても、背側のフィルム冷却孔の位置を、腹側フィルム冷却孔より前縁14寄りに設けても良い。このように構成することで、背側部分の翼壁をより広範囲にわたって効率よく冷却する事ができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ガスタービン冷却翼
10 翼形部(羽根部)
11 背側部分
12 腹側部分
13 後縁冷却流路間の隔壁を含む翼後縁(出口縁)部分
14 翼前縁(入口縁)
21 第一冷却流路
22 第二冷却流路
23 後縁冷却流路
24 翼高さ方向に貫通する流路を設けた後縁冷却流路
25 後縁冷却流路間を貫通する流路
30 背側フィルム冷却孔(補修の場合は既設および追加孔)
31 最適位置のフィルム冷却孔(補修の場合は追加孔)
32 フィルム冷却孔(補修の場合は追加孔)
33 腹側フィルム冷却孔(補修の場合は追加孔)
51 第二冷却流路と後縁冷却流路の接続位置を始点とした前縁側のコード方向距離
52 翼コード方向長さ
111 背側部分の外側表面
112 腹側部分の外側表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11