特許第6038638号(P6038638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038638
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/02 20060101AFI20161128BHJP
   B43K 23/08 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B43K29/02 Z
   B43K9/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-281762(P2012-281762)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-124810(P2014-124810A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】岩間 満
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3173390(JP,U)
【文献】 特開2009−126102(JP,A)
【文献】 実開平1−132777(JP,U)
【文献】 実開昭60−106783(JP,U)
【文献】 特開2009−61630(JP,A)
【文献】 特開2002−362082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 1/12
B43K 5/00−21/26
B43K 23/08−24/18
B43K 27/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変色性インキが吐出可能なペン先と、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低磨耗性の弾性材料からなる摩擦体とを備えた熱変色性筆記具であって、前記筆記具が、軸部材と、該軸部材の端部に突設した摩擦体と、前記軸部材に装着させて前記摩擦体を被覆するカバーとを有し、前記カバーを前記軸部材に回転しながら前進させて係合し、前記カバーの底部に前記摩擦体の端部である摩擦部を当接させることにより当該カバーの回り止めとする構造の熱変色性筆記具。
【請求項2】
熱変色性インキが吐出可能なペン先と、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低磨耗性の弾性材料からなる摩擦体とを備えた熱変色性筆記具であって、前記筆記具が、軸部材と、該軸部材の端部に突設した摩擦体と、前記軸部材に装着させて前記摩擦体を被覆するカバーとを有し、前記カバーの底部に前記摩擦体と摺接して当該摩擦体の汚れを拭き取る払拭体を配設し、前記カバーを前記軸部材に回転しながら前進させて係合し、前記カバーの払拭体に前記摩擦体の端部である摩擦部を当接させることにより当該カバーの回り止めとする構造の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性筆記具に関する。詳細には、熱変色性インキが吐出可能なペン先と、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低磨耗性の弾性材料からなる摩擦体とを備えた熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱変色性インキを用いて紙面に筆記した筆跡を、摩擦した際の摩擦熱で熱変色させる摩擦体付きの熱変色性筆記具は知られており、例えば特許文献1には、可逆熱変色性インキを内蔵させた筆記具の軸胴の後端部や筆記具用キャップの頂部に摩擦体を設けた構造が記載されており、筆記具で筆記した熱変色性インキによる筆跡を、その筆記具に設けた摩擦体で熱変色できる構造が開示されている。
【0003】
また、特許文献1に記載された筆記具では、弾性材料からなる摩擦体が常に外部へ突出した状態になっており、見た目に安っぽく見え、その上、非使用時に摩擦体に付着した埃や手垢等で摩擦時に紙面を汚す場合があった。そこで特許文献2では、使用時においては摩擦体がキャップから突出し、非使用時においては摩擦体をキャップに設けた出没孔へ没入させる構造が提案されている。しかしながら特許文献2の構造では、摩擦体が没入した状態にあっても、摩擦体の端部が出没孔より外部へ露出してしまう構造であることから摩擦部が汚れてしまう虞があった。
【0004】
ところで、軸筒の後端部に消しゴムを設けたシャープペンシルなどの筆記具では、消しゴムの汚れを防止すると共に、消しゴムが露出することによるデザインの低下を防止するために、非使用時には消しゴムを被覆するカバーを装着して、筆記具の見栄えが悪くならないようにすることが一般的である。この様な筆記具の中でも、特に高級な筆記具では、軸筒とカバーとを螺合により装着させる構造を採用することが多い。したがって、この構造を前述の摩擦体を備えた熱変色性筆記具に採用することも可能ではあるが、軸筒にカバーを螺合で装着させる構造では、螺合状態が少しでも緩んでしまうと、カバーが途端に外れやすくなって脱落してしまい、カバーを紛失してしまうことで筆記具の見栄えがかえって悪くなるという問題が存在している。
【0005】
尚、前述した消しゴムを被覆するカバーの螺合状態を緩み難くする方法としては、例えば先行文献3や先行文献4で開示された構造が存在する。先行文献3の構造では、カバー(尾冠)の内方に弾性体であるOリングを配設することで、カバーを軸筒に螺合した際に、軸筒の後端部がOリングに接して緩みを防止できる構造になっている。また先行文献4の構造では、大キャップに突起を設けると共に、大キャップの端部に螺合する小キャップに前記大キャップの突起に対応する凸部を設け、小キャップを大キャップに螺合する際に、小キャップの凸部が大キャップの突起を乗り越えて緩みが防止できる構造になっている。しかしながら先行文献3の構造では、Oリングという別部材が必要であり、カバーの内部にOリングを装着し難いという問題があった。また先行文献4の構造では、大キャップの外側面および小キャップの内側面に対し、突起や凸部を形成する必要があり、大キャップや小キャップを樹脂材にて射出成形する以外の方法、例えば金属材の切削加工等では成形が困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−148744号公報
【特許文献2】特開2009−126102号公報
【特許文献3】特開2009−61630号公報
【特許文献4】特開2002−362082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の問題点を解決するものであって、非使用時、摩擦体が汚れることを回避できる熱変色性筆記具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
「1.熱変色性インキが吐出可能なペン先と、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低磨耗性の弾性材料からなる摩擦体とを備えた熱変色性筆記具であって、前記筆記具が、軸部材と、該軸部材の端部に突設した摩擦体と、前記軸部材に装着させて前記摩擦体を被覆するカバーとを有し、前記カバーを前記軸部材に回転しながら前進させて係合し、前記カバーの底部に前記摩擦体の端部である摩擦部を当接させることにより当該カバーの回り止めとする構造の熱変色性筆記具。
2.熱変色性インキが吐出可能なペン先と、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低磨耗性の弾性材料からなる摩擦体とを備えた熱変色性筆記具であって、前記筆記具が、軸部材と、該軸部材の端部に突設した摩擦体と、前記軸部材に装着させて前記摩擦体を被覆するカバーとを有し、前記カバーの底部に前記摩擦体と摺接して当該摩擦体の汚れを拭き取る払拭体を配設し、前記カバーを前記軸部材に回転しながら前進させて係合し、前記カバーの払拭体に前記摩擦体の端部である摩擦部を当接させることにより当該カバーの回り止めとする構造の熱変色性筆記具。」である。
【0009】
摩擦体を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等があげられる。尚、本発明における摩擦体は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料で構成する必要があり、これにより摩擦体を摩擦に用いても摩擦体の形状が変化しないので、摩擦体とカバーの底部との当接の関係や、摩擦体とカバーに配設した払拭体との当接の関係が変化しない構造となる。
【0010】
摩擦体を被覆するカバーは、その形状を半球形状や筒形状など任意の形状に成形することが可能であり、軸部材へ装着する側が開口してその反対側に底部を有した形状とすればよい。尚、カバーの底部は完全に閉塞していなくてもよく、カバーの一部に通気孔を設け、キャップを飲み込んでも一時的に空気流通を確保できる構造としてもよい。この場合の通気孔は、筆記具を筆箱や筆立に収容する際において、指や埃が触れ難く、摩擦体の摩擦部の汚れを防止できる位置や大きさに形成する必要がある。また、カバーを構成する材料は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂等)、あるいは真鍮やステンレス等の金属を用いることができる。
【0011】
摩擦体と摺接する払拭体は、スポンジやブラシあるいはフェルトなど表面に起伏があると共に、カバーを軸部材に回転しながら前進させて係合する際に、摩擦体に圧接された払拭体が徐々に弾性変形するものがよい。払拭体としてスポンジを用いる場合には、独立気泡型で気泡同士がつながっていない構造よりも、連続気泡型で気泡同士が連なった構造の方が、払拭体の内部にまで摩擦体に付着した汚れを吸収しやすくなり好ましい。払拭体としてブラシを用いる場合には、柔軟な布材あるいはカバーの内面形状に沿って形成した樹脂材に天然繊維や合成繊維からなる毛を植毛した構造や、カバーの底部に対して天然繊維や合成繊維からなる毛を直接植毛した構造にすることができる。尚、カバーを軸部材に回転させながら前進させて係合する際において払拭体と摩擦体とを摺接させるためには、カバーの底部に対して払拭体が動かないように固定されていることが好ましく、カバーと払拭体とを別体で成形する場合には、カバーに対して払拭体を接着剤や両面テープなどで固着すればよい。
【0012】
軸部材とカバーとの関係は、例えば、軸部材の端部に雄螺子部を形成すると共にカバーに雌螺子部を形成したり、あるいは軸部材またはカバーに突起を形成すると共に軸部材またはカバーに螺旋溝や傾斜溝を形成して、軸部材に対してカバーを回転しながら前進させることで係合させることができ、且つ摩擦体がカバーの底部または払拭体と当接することで、カバーと軸部材とが相対的に離間するよう弾発されると共に、カバーと軸部材との回転方向における係止状態により、軸部材とカバーとが離間する直線方向への弾発力を抑制して、カバーの脱落を防止できる構造とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱変色性筆記具は、非使用時、摩擦体が汚れることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施例の熱変色性筆記具の姿図である。(実施例1〜3)
図2】軸部材からカバーを外した状態の端面図である。(実施例1)
図3】軸部材からカバーを外した状態の姿図である。(実施例1)
図4】軸部材にカバーを装着した状態の端面図である。(実施例1)
図5】軸部材にカバーを装着した状態の姿図である。(実施例1)
図6】軸部材からカバーを外した状態の端面図である。(実施例2)
図7】軸部材からカバーを外した状態の姿図である。(実施例2)
図8】軸部材にカバーを装着した状態の端面図である。(実施例2)
図9】軸部材にカバーを装着した状態の姿図である。(実施例2)
図10】軸部材からカバーを外した状態の端面図である。(実施例3)
図11図11は、軸部材にカバーを装着した状態の端面図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明における熱変色性筆記具の実施例1〜3について説明を行う。尚、説明を分かりやすくするために、図面中の同様の部材、同様の部分については同じ番号を付してある。またペン先側を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。
【0016】
図1に示すように筆記具1は、前軸2と後軸3とで軸部材4を構成し、低摩耗性のスチレン系エラストマーからなる摩擦体5を、端部の摩擦部5aが軸部材4の後端部3aに設けた後端開口部3bから突出した状態となるよう圧入して固設してある。また、軸部材4の後端部3aにはカバー6(16,26)が装着できるようにしてあり、前軸2に対して後軸3を回転させることで、軸部材4の内部に収容した筆記体のペン先7を前端開口部2aから出没できる構造としてある。尚、筆記具1は、図示しないが筆記体の内部に収容した熱変色性インキをペン先7により紙面へ筆記することができ、その書いた筆跡を摩擦体5の摩擦部5aで摩擦して摩擦熱で熱変色を可能とした構造である。
【0017】
次に、図2図5を用いて実施例1について詳述を行う。実施例1のカバー6は、軸部材4へ装着する前方側に開口部6aを設け、その反対側となる後方を半球形状に形成してある。また、開口部6aの内面には雌螺子部6bを形成してあり、軸部材4の後端部3aに形成した雄螺子部3cへ螺合により装着することができる。
【0018】
実施例1では、軸部材4の雄螺子部3cにカバー6の雌螺子部6bを螺合して装着することにより、非使用時における摩擦体5をカバー6で被覆して摩擦部5aの汚れを防止することができ、カバー6の底部60に対して摩擦体5の摩擦部5aが当接することで、摩擦体5の弾力でカバー6と軸部材4とが相対的に離間するよう弾発されると共に、軸部材4とカバー6との回転方向における係合状態(螺合)で軸部材4とカバー6とが離間する直線方向への弾発力が抑制されることにより、カバー6の脱落を防止できるものとなった。
【0019】
次に、図6図9を用いて実施例2について詳述を行う。実施例2のカバー16は、底部60に、連続気泡型の発泡ウレタンスポンジを払拭体8として接着剤(図示せず)で固着してある。他の点は、前述の実施例1と同様のため説明は省略する。
【0020】
実施例2では、軸部材4の雄螺子部3cにカバー16の雌螺子部6bを螺合して装着することにより、非使用時における摩擦体5をカバー16で被覆して摩擦部5aの汚れを防止することができ、カバー16に固着した払拭体8に対して摩擦体5の摩擦部5aが当接することで、スポンジである払拭体8の弾力でカバー16と軸部材4とが相対的に離間するよう弾発されると共に、軸部材4とカバー16との回転方向における係合状態(螺合)で軸部材4とカバー16とが離間する直線方向への弾発力が抑制されることにより、カバー16の脱落を防止できるものとなった。また、軸部材4にカバー16を螺合する際においては、摩擦体5の摩擦部5aが払拭体8を圧接しながら摺接するので、摩擦体5の使用時に摩擦部5aに付着した汚れを、払拭体8により除去することができた。
【0021】
次に、図10図11を用いて実施例3について詳述を行う。実施例3のカバー26は、底部60に、基布9aにナイロン製の毛束9bを植毛したブラシを払拭体9として接着剤(図示せず)で固着してある。他の点は、前述の実施例1と同様のため説明は省略する。
【0022】
実施例3では、軸部材4の雄螺子部3cにカバー26の雌螺子部6bを螺合して装着することにより、非使用時における摩擦体5をカバー26で被覆して摩擦部5aの汚れを防止することができ、カバー26に固着した払拭体9に対して摩擦体5の摩擦部5aが当接することで、ブラシである払拭体9の弾力でカバー26と軸部材4とが相対的に離間するよう弾発されると共に、軸部材4とカバー26との回転方向における係合状態(螺合)で軸部材4とカバー26とが離間する直線方向への弾発力が抑制されることにより、カバー26の脱落を防止できるものとなった。また、軸部材4にカバー26を螺合する際においては、摩擦体5の摩擦部5aが払拭体9の毛束9bを圧接しながら摺接するので、摩擦体5の使用時に摩擦部5aに付着した汚れを、払拭体9により除去することができた。
【符号の説明】
【0023】
1…筆記具、2…前軸、2a…前端開口部、
3…後軸、3a…後端部、3b…後端開口部、3c…雄螺子部、
4…軸部材、5…摩擦体、5a…摩擦部、
6,16,26…カバー、6a…開口部、6b…雌螺子部、60…底部、
7…ペン先、8…払拭体(スポンジ)、
9…払拭体(ブラシ)、9a…基布、9b…毛束。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11