(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、断熱したい壁面に真空断熱パネルを取り付けると、真空断熱パネルの厚み方向に放熱を防止するが、真空断熱パネルの外周部に隙間があると、熱が対流で壁面と真空断熱パネルとの間の隙間から放出され、断熱効果が損なわれる。
【0003】
このため、外周部の隙間を防止する方法として、耐熱テープを貼るなどの方法もある。しかし、高温になる場合または加熱が繰り返される場合には、粘着性が低下し、耐熱テープが壁面から剥離してシール機能が損なわれ、やはり隙間が生じる。
【0004】
特に、真空断熱パネルの場合、断熱性能が優れているため、真空断熱パネル本体の加熱される側と加熱されない側で温度差が生じ、反りが発生するため、大きな隙間が生じる。
【0005】
例えば、特許文献1には、断熱性の枠体を介して壁面に取り付けられる真空断熱パネル本体が記載されている。また、特許文献2には、コア材を内部に封止する封止用溶接ラインの外側に位置する離隔領域に取り付けられた取付け部を介して壁面に取り付けられる真空断熱パネル本体が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の真空断熱パネル本体では、真空断熱パネル本体を直接、高温の壁面に接触させるため、壁面に接触する金属板材が部分的に加熱される。これにより、真空断熱パネル本体の壁面側が熱変形をし、真空断熱パネル本体の壁面と反対の大気側が熱変形をしないことで生じる反りが大きくなる。従って、真空断熱パネル本体と枠体との間に隙間が生じ、この隙間から放熱することにより、断熱性が損なわれていた。
【0007】
特許文献2に記載の真空断熱パネル本体では、複数の取付け部を介して壁面に取り付けるため、施工性が悪かった。また、真空断熱パネル本体と壁面との間に隙間が生じ、この隙間から放熱することにより、断熱性が損なわれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、取付面からの放熱量を削減すると共に、施工性を向上できる真空断熱パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
取付面に取り付けられた真空断熱パネル本体と、
前記真空断熱パネル本体との間に配設され、前記真空断熱パネル本体を前記取付面から離間させて、前記真空断熱パネル本体と前記取付面との間に略密閉された空気断熱層を形成するシール部材と、
を備えた。
【0011】
取付面と真空断熱パネル本体との間にシール部材を配設することで、取付面と真空断熱パネル本体との間を密封し、放熱を防止して、取付面からの放熱量を削減できる。また、真空断熱パネル本体の取付面側が熱変形をし、真空断熱パネル本体の取付面と反対の大気側が熱変形をしないことで反りが生じても、真空断熱パネル本体と取付面との間に隙間が生じるのを防ぎ、断熱性を向上できる。シール部材により、真空断熱パネル本体を取付面から離間させることで、取付面と真空断熱パネル本体との間に空気断熱層を設け、取付面の断熱効果を高めることができる。
【0012】
前記真空断熱パネル本体に外周部を折り曲げた辺部折返部が設けられ、
前記シール部材が前記辺部折返部に挟持されていることが好ましい。
【0013】
辺部折返部を設けることで、真空断熱パネル本体の反りの量を低減できる。また、予め、辺部折返部にシール部材を挟み込むことで、真空断熱パネル本体にシール部材を一体化できる。従って、例えば、取付面と真空断熱パネル本体との間をシールするためのテープを別途、用意する必要がなく、現場での施工性が向上する。
【0014】
前記シール部材が、前記真空断熱パネル本体の外周部に沿った断面視U字形状に形成されることが好ましい。
これにより、真空断熱パネル本体が熱により反っても、シール部材が取付面に圧接し、取付面と真空断熱パネル本体との間に隙間が生じるのを防止できる。
【0015】
前記シール部材が、前記真空断熱パネル本体の外周部から、前記真空断熱パネル本体の前記取付面側の面に沿って延びることが好ましい。
これにより、確実に真空断熱パネル本体を取付面から離間することができる。
【0016】
前記真空断熱パネル本体と前記シール部材とが係止手段を介して前記取付面に取り付けられることが好ましい。
これにより、前記真空断熱パネル本体と前記シール部材とを確実に前記取付面に取り付けることができる
【0017】
前記シール部材が弾性を有する部材であることが好ましい。
これにより、真空断熱パネル本体の反り量が増大しても、シール部材は真空断熱パネル本体の反りに合わせて変形するので、取付面と真空断熱パネル本体との間に隙間が生じるのを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の真空断熱パネルでは、放熱量を削減すると共に、施工性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0021】
図1および
図2に示すように、本発明に係る真空断熱パネル1は、真空断熱パネル本体10とシール部材27とを備えている。
【0022】
この真空断熱パネル本体10は、一対の対向配置された第1および第2金属板材11A,11Bを接合して形成された、肉厚が1〜20mm程度の平面視正方形状の薄型パネル形状である。
【0023】
第1および第2金属板材11A,11Bの間に形成される収容部12には、熱伝導度が低いコア材31A〜31Cと、輻射伝熱を防止するための金属箔38A,38Bと、封止後に発生したガスを吸引して真空度を維持するためのゲッター(図示せず)とが配設される。
【0024】
収容部12は、外周に一対の金属板材11A,11Bを接合する封止部13,14A,15(
図3参照)を設けることにより密封されると共に、真空排気されている。
【0025】
各金属板材11A,11Bは肉厚0.1〜0.5mmの薄いステンレス(SUS304)板により形成される。本実施形態では、肉厚は0.1mmである。なお、金属板材11A,11Bとしてステンレス(SUS304)を使用しているが、他のステンレス材および違う金属材料を使用してもよい。
【0026】
以下に、金属板材11A,11Bの加工構成について、
図3を参照して説明する。なお、
図3は第1金属板材11Aを示し、第2金属板材11Bは、後述する排気部21が形成されていない点でのみ異なる。
【0027】
接合前の金属板材11A,11Bは略正方形状であり、第1封止部13と、第2封止部14A,14Bと、第3封止部15(15A,15B)と、排気部21と、排気通気溝22とが形成されている。第1封止部13と第2封止部14A,14Bと第3封止部15Aとは各辺縁に対して所定間隔をあけて内側に位置し、隣り合う封止部はそれぞれ互いに直交している。第3封止部15Bは排気部21側の第2封止部14Bよりも内側に第2封止部14Bと平行に位置している。第1封止部13と第2封止部14A,14Bと第3封止部15Aとは真空排気前に封止され、第3封止部15Bは真空排気後に封止される。なお、封止は、シーム溶接などの抵抗溶接またはTIG溶接やレーザ溶接、MIGブレージングなどによって行われる。
【0028】
第2封止部14Bと第3封止部15Bとの間には排気部21が設けられている。この排気部21は、第1金属板材11Aのみに形成され、第2金属板材11Bには形成されていない。排気部21の近傍には、排気部21の真空引き用の通路である排気通気溝22が形成されている。この排気通気溝22は、第1金属板材11Aと第2金属板材11Bとの対向面のうち、少なくともいずれか一方に形成した凸部、凹部またはその両方により構成されている。
【0029】
接合後の金属板材11A,11Bの四方の各辺には、
図2(A)に示すように、封止部15よりも外側にフランジ部18が形成されている。このフランジ部18を、
図2(B)に示すように、シール部材27の一方側28aを挟み込むように断面視U字形状に折り返すことで、辺部折返部24が形成される。この辺部折返部24は、金属板材11A,11Bの全周にわたって、封止部13,14A,15の外側に形成されている。
【0030】
金属板材11A,11Bは、コア材31A〜31Cと封止部13,14A,15との間に傾斜部33を有している。傾斜部33は、金属板材11A,11Bをコア材31A〜31Cの外周部に沿って折れ曲がって変形しており、互いに向かって傾斜するように形成されている。傾斜部33とコア材31A〜31Cとの間には、断面視で外形が三角形状の空隙部34が形成されている。
【0031】
コア材31A〜31Cは、正方形状または4方の角を面取りした略正方形状であり、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の織布又は不織布、あるいは、マイカ板、セラミックウール、セラミックボード等が使用される。コア材31A〜31Cの外周部は、封止部13,14A,15の内側に位置する。即ち、辺部折返部26,27を折り曲げた状態で、第1および第2金属板材11A,11Bの内側縁より内側に位置する寸法設定である。
【0032】
図2(A)に示すように、金属箔38A、38Bはコア材31A〜31Cと略同一寸法または小さい寸法で形成される。これら金属箔38A、38Bは、コア材31A〜31Cの間に挟み込んだ状態で配設される。具体的には、下方からコア材31A、金属箔38A、コア材31B、金属箔38B、コア材31Cの順番で積層する。そして、例えば治具を貫通させ、各コア材31A〜31Cの繊維を部分的に絡ませることにより一体化し、一体的に配置可能としている。
【0033】
シール部材27は、例えば断熱性能を有することが望ましいので、高温使用ではガラスウール又はセラミックウールからなり、低温使用ではゴム若しくはスポンジなどの弾性を有する材料からなる帯状のシートである。
ただし、上記材料に限定されず、真空断熱パネル本体10に使用している金属材料より薄いステンレス材料でもよい。
【0034】
シール部材27は、
図2(B)に示すように、金属板材11A,11Bの全周にわたって、辺部折返部24に挟み込まれている。なお、
図1に示すように、辺部折返部24に挟み込まれたシール部材27の長さL1は、真空断熱パネル本体10の各辺の長さL2から辺部折返部24の折り返された長さL3を引いた値に等しい。従って、真空断熱パネル本体10の角部では、シール部材27が各辺の辺部折返部24の側縁25から露出している。これにより、真空断熱パネル本体10の全周にわたり、シール部材27を辺部折返部24に沿って折り畳めるように構成している。
【0035】
図2(C)に示すように、一方側28aが辺部折返部24に挟み込まれたシール部材27は断面視U字形状に折り畳まれる。他方側28bは、真空断熱パネル本体10が取り付けられる取付面である壁面5と辺部折返部24との間に配設され、壁面5と辺部折返部24との間を密封している。
【0036】
次に、真空断熱パネル本体10の製造方法について説明する。
【0037】
図2(A)に示すように、第2金属板材11Bを配置し、その上に一体化したコア材31A〜31C、金属箔38A、38Bおよびゲッターを配置する。ついで、コア材31C上に第1金属板材11Aを配置した後、封止部13,14A,14B,15Aに沿って金属板材11A,11Bを接合して収容部12を密封する。この状態で、排気部21に周知の排気装置を接続し、収容部12を予め規定した真空度になるように真空排気する。
【0038】
真空排気された収容部12と外部(大気圧)との圧力差により、金属板材11A,11Bはコア材31A〜31Cの外周部に沿って変形して折れ曲がり、傾斜部33が形成される。また、傾斜部33とコア材31A〜31Cとの間には空隙部34が形成される。
【0039】
規定の真空度に達し、リークが無いことを確認すると排気部21を封止する。ついで、第3封止部15Bに沿って排気部21の内側を接合して収容部12を封止した後、切断線17に沿って金属板材11A,11Bを切断する。また、必要に応じ、金属板材11A,11Bの各角を切断(面取り)してもよく、または、各角を内側に折り曲げてもよい。
【0040】
そして、金属板材11A,11Bの封止部13,14A,15よりも外側のフランジ部18をシール部材27の一方側28aを挟み込むように断面視U字形状に折り曲げ、辺部折返部24を形成する。辺部折返部24を設けることで、真空断熱パネル本体10の壁面5側が熱変形をし、真空断熱パネル本体10の壁面5と反対の大気側が熱変形をしないことで生じる反りの量を低減できる。また、予め、金属板材11A,11Bの全周にわたって、辺部折返部24にシール部材27を挟み込むことで、真空断熱パネル本体10にシール部材27を一体化できる。従って、例えば、壁面5と真空断熱パネル本体10との間をシールするためのテープを別途、用意する必要がなく、現場での施工性が向上する。
【0041】
上記方法で形成された複数の真空断熱パネル本体10を、
図4に示すように、取付け治具50を介して壁面5に取り付ける。この取付け治具50は、
図6に示すように、基板51と、支持腕52と、位置決め用溝53と、固定板54とを備えている。支持腕52は、基板51の表面との間で真空断熱パネル本体10を厚さ方向および鉛直方向に支持する。位置決め用溝53は、基板51の裏面側で真空断熱パネル本体10を厚さ方向および鉛直方向に位置決めする。固定板54は、基板51の両外側に位置し、円形孔55を有している。固定板54は、円形孔55に挿通するねじ(図示せず)を介して壁面5に固定される。
【0042】
壁面5に固定された取付け治具50の支持腕52および基板51の間と位置決め用溝53とに真空断熱パネル本体10を挿通する。このとき、
図5に示すように、隣接する真空断熱パネル本体10を辺部折返部24およびシール部材27の周縁部同士が当接するように位置決めする。
【0043】
同時に、
図2(C)に示すように、シール部材27を辺部折返部24を挟み込むように断面視でU字形状に折り畳む。そして、壁面5と辺部折返部24との間にシール部材27の他方側28bを介在させて、真空断熱パネル本体10を壁面5に取り付ける。壁面5と真空断熱パネル本体10との間をシール部材27で密封することで、壁面5と真空断熱パネル本体10との間から放熱するのを防止し、放熱量を削減できる。また、シール部材27が弾性を有するので、真空断熱パネル本体10が壁面5の熱により反っても、真空断熱パネル本体10と壁面5との間に隙間が生じるのを防ぎ、断熱性を維持できる。
【0044】
更に、シール部材27の厚さL4は、真空断熱パネル本体10と壁面5との間隔L5よりも厚いため、真空断熱パネル本体10と壁面5との間には空気断熱層29が形成されている。この空気断熱層29は、壁面5と真空断熱パネル本体10とシール部材27とで囲まれ、略密閉されている。これにより、壁面5の断熱効果を高めることができる。また、真空断熱パネル本体10が熱により反っても、真空断熱パネル本体10は空気断熱層29を介して、壁面5と所定の間隔を空けて配置されているので、壁面5と接触することによる負荷が掛からない。
【0045】
なお、本発明の真空断熱パネル本体10は前記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0046】
前記実施形態では、シール部材27をU字形状に折り畳んだが、これに限定されない。例えば、
図7に示すように、一方側28aが辺部折返部24に挟み込まれたシール部材27の他方側28bを第1金属板材11Bの外表面に沿って延ばす構成を採用してもよい。このとき、シール部材27の他方側28b先端は、コア材31A〜31Cの外周部よりも内方に位置し、他方側28bの端部とコア材31A〜31Cとが重なっている。これにより、真空断熱パネル本体10を壁面5に取り付けると、他方側28bが真空断熱パネル本体10と壁面5との間に介在する。従って、真空断熱パネル本体10と壁面5とを離間し、これらの間に空気断熱層29を確実に設けることができる。
【0047】
前記実施形態では、シール部材27を辺部折返部24に挟み込んだが、これに限定されない。例えば、クリップ等の留め具を用いて、シール部材27を辺部折返部24に取り付けてもよく、または、辺部折返部24を設けず、例えば、ホッチキスやリベットなどでシール部材27を真空断熱パネル本体10に取り付けてもよい。
【0048】
前記実施形態では、取付け治具50により、真空断熱パネル本体10を壁面5に取り付けたが、これに限定されない。例えば、
図8に示すように、真空断熱パネル本体10の封止部13,14A,15よりも外側に位置する角部に取付け用孔43を形成する。また、シール部材27の取付け用孔43に対応する位置に貫通孔44を設ける。そして、
図9に示すように、ビス(係止手段)45をこれら取り付け孔43および貫通孔44を挿通させ、壁面5にねじ込み、真空断熱パネル本体10を壁面5に固定してもよい。なお、係止手段としてビスではなく、フックや釘、リベットなどを用いてもよい。これにより、真空断熱パネル本体10の全周をより確実に壁面5に密封して、真空断熱パネル本体10を壁面5に取り付けることができる。