(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038770
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】氷蓄熱ユニット
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20161128BHJP
F24F 1/68 20110101ALI20161128BHJP
F24F 1/56 20110101ALI20161128BHJP
【FI】
F24F5/00 102K
F24F1/68
F24F1/56
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-271542(P2013-271542)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124971(P2015-124971A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2015年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 誠義
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−270984(JP,A)
【文献】
特開2009−266634(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02354684(EP,A1)
【文献】
特開2004−263977(JP,A)
【文献】
特開平08−313015(JP,A)
【文献】
特開2002−310458(JP,A)
【文献】
特開2009−103368(JP,A)
【文献】
特開平07−280302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/58
F24F 1/60
F24F 1/68
F24F 5/00
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機の室外機と、
室外機で生成された熱を蓄える氷蓄熱槽と、
室外機と氷蓄熱槽を接続する配管及び配線と、
を有し、据付現場以外の場所で一体化された氷蓄熱ユニットにおいて、
室外機と氷蓄熱槽を上部に載せて固定するとともに、配管及び配線を支持する架台と、
室外機と氷蓄熱槽の外側を取り囲むように、架台の上部に立設される複数のパネルと、
を有し、
架台はパネル固定用の骨組みを有していない平面状であり、
各パネルは架台に対して着脱可能であり、かつ、自立するようにそれぞれ固定される、
ことを特徴とする氷蓄熱ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の氷蓄熱ユニットにおいて、
氷蓄熱ユニットが複数台あり、互いに隣接して設けられ、
氷蓄熱ユニットは、氷蓄熱ユニット同士が隣接する隣接部におけるパネルが架台から取り外されて構成される、
ことを特徴とする氷蓄熱ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の氷蓄熱ユニットにおいて、
室外機と氷蓄熱槽は、メンテナンススペースを介して架台上に配置され、
隣り合う氷蓄熱ユニットは、互いのユニットの室外機同士、そして互いのユニットの氷蓄熱槽同士がそれぞれ隣り合うように設けられる、
ことを特徴とする氷蓄熱ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の氷蓄熱ユニットにおいて、
パネルは、氷蓄熱ユニットに人が近接することを防ぐ保護用パネル、氷蓄熱ユニットから発生する音を遮蔽する遮音パネル、または点検扉付きパネルを含む、
ことを特徴とする氷蓄熱ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は氷蓄熱ユニットに関し、特に、室外機と、氷蓄熱槽と、室外機と氷蓄熱槽を接続する配管及び配線とを有し、屋外に設置される氷蓄熱ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、夏期の夜間には氷、冬期の夜間にはお湯をそれぞれ生成して蓄え、昼間の冷暖房に活かす氷蓄熱空調システムが知られている。この氷蓄熱空調システムには、室外機と、この室外機に対応する室内機とを有する空気調和機に、熱を蓄える氷蓄熱槽を組み合わせたものがある。
【0003】
室外機と氷蓄熱槽は、学校、オフィスビル、工場等の建物の屋外に設置される。このような状況で、人が室外機及び氷蓄熱槽に接近して事故が発生してしまうことを防ぐため、室外機と氷蓄熱槽の外周を囲うように保護用フェンスを配置する例がある。また、夜間に運転する室外機及び氷蓄熱槽から発生する音が、騒音として周辺の住環境を悪化させてしまうことを抑制するため、室外機と氷蓄熱槽の周囲に遮音パネルを配置する例がある。
【0004】
下記特許文献1には、室外機と、氷蓄熱槽と、室外機と氷蓄熱槽を接続する配管及び配線と、これらを保持する多機能フレームとを有し、屋外に設置される氷蓄熱ユニットが記載されている。氷蓄熱ユニットは、このユニットから発生する音を遮蔽する遮音パネルと、このユニットに人が近接することを防ぐ保護用フェンスとを有し、遮音パネルと保護用フェンスが多機能フレームに取り付けられる。そして、氷蓄熱ユニットは、工場などの据付現場以外の場所で組み立てられ、据付現場に搬入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−270984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のような氷蓄熱ユニットにおいては、据付現場以外の場所で、室外機と氷蓄熱槽とこれらの周囲のパネルやフェンスとが組み付けられて一体化されるので、現場施工の省力化及び短工期化を実現することができる。
【0007】
しかしながら、据付現場において、機器廻りの作業スペースを確保するために、パネルやフェンスを多機能フレームから一時的に取り外さなければならず、その作業に手間がかかるという問題がある。また、上記特許文献1の氷蓄熱ユニットにおいては、パネルやフェンスが架台に配置される柱材及び梁材などの骨組みに固定されている。このような構成では、パネルやフェンスを一時的に多機能フレームから取り外しただけでは、骨組みが室外機と氷蓄熱槽の周囲に残ってしまうため作業性が改善しない。骨組みも一時的に取り外すことが考えられるが、組み付け時に柱材の垂直及び梁材の水平を調整する必要があり、とても手間がかかってしまう。
【0008】
本発明の目的は、据付現場以外の場所で一体化された氷蓄熱ユニットを据付現場において配置する場合、簡易な構造で、現場施工の省力化及び短工期化を実現することができる氷蓄熱ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、空気調和機の室外機と、室外機で生成された熱を蓄える氷蓄熱槽と、室外機と氷蓄熱槽を接続する配管及び配線と、を有し、据付現場以外の場所で一体化された氷蓄熱ユニットにおいて、室外機と氷蓄熱槽を上部に載せて固定するとともに、配管及び配線を支持する架台と、室外機と氷蓄熱槽の外側を取り囲むように、架台の上部に立設される複数のパネルと、を有し、
架台はパネル固定用の骨組みを有していない平面状であり、各パネルは架台に対して着脱可能
であり、かつ、自立するようにそれぞれ固定されることを特徴とする。
【0010】
また、氷蓄熱ユニットが複数台あり、互いに隣接して設けられ、氷蓄熱ユニットは、氷蓄熱ユニット同士が隣接する隣接部におけるパネルが架台から取り外されて構成されることを特徴とする。
【0011】
また、室外機と氷蓄熱槽は、メンテナンススペースを介して架台上に配置され、隣り合う氷蓄熱ユニットは、互いのユニットの室外機同士、そして互いのユニットの氷蓄熱槽同士がそれぞれ隣り合うように設けられることを特徴とする。
【0012】
また、パネルは、氷蓄熱ユニットに人が近接することを防ぐ保護用パネル、氷蓄熱ユニットから発生する音を遮蔽する遮音パネル、または点検扉付きパネルを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の氷蓄熱ユニットによれば、据付現場以外の場所で一体化された氷蓄熱ユニットを据付現場において配置する場合、簡易な構造で、現場施工の省力化及び短工期化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る氷蓄熱ユニットの構成を示す平面図である。
【
図2】
図1のA方向から見た氷蓄熱ユニットの側面図である。
【
図4】複数の氷蓄熱ユニットが隣接して配置された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る氷蓄熱ユニットの実施形態について、図を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る氷蓄熱ユニットの構成を示す平面図であり、
図2は、
図1のA方向から見た氷蓄熱ユニットの側面図である。なお、
図2は、正面に位置するパネルを取り外した状態を示す。
【0016】
氷蓄熱ユニット10は、室外機12と、室外機12で生成された熱を蓄える氷蓄熱槽14と、室外機12と氷蓄熱槽14を接続する配管16及び配線18とを有する。
【0017】
室外機12は、冷暖房を行う空気調和機の室外機であり、冷媒が流れる配管を介して1台又は複数台の室内機(図示せず)に接続される。
【0018】
氷蓄熱槽14は、室外機12に対してメンテナンススペースを介して配置される。すなわち、氷蓄熱槽14は、室外機12に対して所定の間隔を空けて配置される。氷蓄熱槽14は、熱を蓄える蓄熱材(例えば水)と、この蓄熱材と冷媒との熱交換を行う熱交換器とを収容する容器である。
【0019】
夏期の夜間における冷房蓄熱運転時には、氷蓄熱槽14内の熱交換器で液体の冷媒が気化し、その際に生じる吸熱作用により、氷蓄熱槽14内の水が冷やされて氷になり蓄熱される。一方、冬期の夜間における暖房蓄熱運転時には、氷蓄熱槽14内の熱交換器で気体の冷媒が液化し、その際に生じる放熱作用により、氷蓄熱槽14内の水が暖められて温水(お湯)になり蓄熱される。
【0020】
また、氷蓄熱ユニット10は、室外機12と氷蓄熱槽14を上部に載せて固定する架台20と、室外機12と氷蓄熱槽14の外側を取り囲む複数のパネル22とを有する。
【0021】
架台20は、溝型鋼などの鋼材からなり、例えば溶融亜鉛メッキ処理が施され、耐腐食性を有する。
図1においては、架台20の構成が省略されている。よって、架台20の構成については、
図3を用いて説明する。
図3は、架台20とパネル22の構成を示す図である。
【0022】
架台20は、
図3に示されるように、複数の鋼材を組み合わせて構成され、氷蓄熱ユニット10の外周枠を形成する外周枠架台20aと、外周枠架台20aの内側に所定の間隔を空けて設けられる内部架台20bとを有する。外周枠架台20aはパネル22を支持する。内部架台20bは、室外機12と、氷蓄熱槽14と、配管16及び配線18とを支持する。
【0023】
パネル22は、
図3に示されるように、外周枠架台20aの上部に立設され、
図1に示されるように、室外機12と氷蓄熱槽14の外周を10枚で囲む。パネル22の数10枚は一例であり、他の枚数であってもよい。パネル22は、氷蓄熱ユニット10に人が近接することを防ぐ保護用パネルであり、金網22aと、金網22aの周囲を取り囲み補強する外枠22bとを有する。外枠22bは山形鋼などの鋼材からなる。金網22aと外枠22bは、例えば溶融亜鉛メッキ処理が施され、耐腐食性を有する。また、パネル22は、
図1の破線に示されるように、開閉機構がある点検扉付きとすることもできる。
【0024】
このように構成される氷蓄熱ユニット10は、工場などの据付現場以外の場所(オフサイト)で組み立てられる。具体的には、複数の鋼材を、溶接またはボルト締結などで組み合わせて架台20を作成し、この架台20の上に、室外機12と氷蓄熱槽14をボルト・ナット締結で固定する。そして、室外機12と氷蓄熱槽14間を、配管16及び配線18で接続するとともに、配管16及び配線18を、ブラケット(図示せず)を介して架台20に支持する。最後に、架台10の上に複数のパネル22を取り付けて、氷蓄熱ユニット10が一体化される。
【0025】
オフサイトで組み立てられ一体化された氷蓄熱ユニット10は、据付現場に運搬され、
図2に示されるように、屋外の基礎24上に据え付けられる。具体的には、架台20と基礎24が、アンカーボルト及びナットにより締結されて固定される。このように、氷蓄熱ユニット10がオフサイトで組み立てられて据付現場に搬入されるので、据付現場における作業を省略することができ、工期の短縮を図ることができる。
【0026】
本実施形態の氷蓄熱ユニット10においては、各パネル22が架台20に対して着脱可能にそれぞれ固定されることを特徴とする。このような構成により、据付現場において、作業スペースを確保するために、パネル22を必要な枚数分だけ一時的に取り外すことができる。そして、作業後に、取り外した各パネル22を架台20にそれぞれ取り付けることで、原状復帰が可能になる。
【0027】
従来技術においては、パネルが柱材及び梁材などの骨組みに固定されていたので、パネルを一時的に取り外しただけでは、骨組みが室外機と氷蓄熱槽の周囲に残ってしまうため作業性が改善しなかった。そして、骨組みも一時的に取り外そうとすると、組み付け時に柱材の垂直及び梁材の水平を調整する必要があり、とても手間がかかっていた。
【0028】
しかし、本実施形態の氷蓄熱ユニット10によれば、上述のように、各パネル22が架台20に対して着脱することができる構成になっているので、作業スペースの確保及び原状復帰が容易になり、現場施工の省力化及び短工期化を実現することができる。
【0029】
パネル22は、上述のように、金網22aと、金網22aの周囲を取り囲み、金網22aを補強する外枠22bとを有し、外枠22bは例えば山形鋼である。このように構成されるパネル22は、外周枠架台20aに対してボルト・ナットにより締結される。具体的には、外周枠架台20aの上面と、この上面に対向する外枠22bの面とにそれぞれボルト穴が複数形成され、これらのボルト孔にボルトを通してナットで締め付けることにより、パネル22が外周枠架台20aに自立するように固定される。このように、ボルト・ナット締結によりパネル22が直接に架台20に固定されているので、据付現場においてパネル22を必要に応じて適宜取り外すことができ、また作業後に容易に取り付けることができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、1枚のパネル22が架台20に自立するように配置される場合について説明したが本発明はこの構成に限定されない。作業終了後に、隣接するパネル22同士を連結するように固定することができる。具体的には、対向する外枠22bの面にボルト穴が複数形成され、これらのボルト孔に対してボルトを通してナットで締め付けることにより、隣接するパネル22が連結される。この構成により、複数のパネル22が一体化されるので構造上の強度が増し、風や地震などによるパネル22の振れが防止される。さらに、強度の向上を図るため、据付作業終了後に、振れ止めの鋼材を、対向するパネル22上部に橋渡しするように設けてもよい。
【0031】
次に、据付現場において、複数の氷蓄熱ユニット10を互いに隣接するように設置する場合について、
図4を用いて説明する。
図4は、複数の氷蓄熱ユニット10が隣接して配置された状態を示す平面図である。
【0032】
本実施形態の氷蓄熱ユニット10は複数台あり、これらの氷蓄熱ユニット10を互いに隣接するようにして連続的に配置することができる。
図4には、4台の氷蓄熱ユニット10が、隣接する氷蓄熱ユニット10の室外機12同士そして氷蓄熱槽14同士がそれぞれ隣り合うように連続的に配置される。なお、本発明は氷蓄熱ユニット10の数4台に限定されず、複数台であれば4台以外の数であっても良い。
【0033】
そして、このように連続的に氷蓄熱ユニット10が配置される構成においては、氷蓄熱ユニット10同士が隣接する隣接部におけるパネル22(
図4に示す破線)が架台20から取り外されて構成される。この構成により、作業スペース及びメンテナンススペースを確保することができる。また、隣接部分のパネル22を取り外したとしても、他のパネル22は自立式であるため構造的な影響を与えない。
【0034】
本実施形態の氷蓄熱ユニット10によれば、各パネル22が架台20に対してそれぞれ着脱可能に固定される構成になっているので、複数の氷蓄熱ユニット10を連続的に配置する場合、据付現場において隣接部に位置するパネル22を取り外すだけで、各氷蓄熱ユニット10を容易に連結することができる。
【0035】
本実施形態においては、パネル22が、氷蓄熱ユニット10に人が近接することを防ぐ保護用パネルである場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。パネル22を、氷蓄熱ユニットから発生する音を遮蔽する遮音パネルとすることができる。この場合、金網22aが、吸音材又は防音材に置き換わる。氷蓄熱ユニット10においては、夜間に室外機12と氷蓄熱槽14が運転するので、これらの機器から発生する音が周囲の住民に迷惑となってしまう。よって、室外機12と氷蓄熱槽14の外側に遮音パネルを設けることにより、運転音が遮音されるので、住民の不快感が抑制される。なお、遮音パネルは、氷蓄熱ユニット10の周囲の住宅などを考慮して、その取り付け面、高さ、遮音等級が決定される。よって、パネル22が、保護用パネルと遮音パネルとを含むように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 氷蓄熱ユニット、12 室外機、14 氷蓄熱槽、16 配管、18 配線、20 架台、22 パネル、24 基礎。