【文献】
平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック−原理とノウハウ−,丸善株式会社,2008年,pp.17-23,37-40,45-51,57-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2θに関して約10.1°および約12.9°において特徴的なピークを含む粉末X線回析パターンを有する、N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアの結晶多形(I)。
前記粉末X線回析パターンが、2θに関して、約6.4°、約10.1°、約12.6°、約12.9°、約13.6°、約14.2°、約14.7°、約15.3°、約15.4°、約15.8°、約17.0°、約17.6°、約18.9°、約20.9°、約22.4°、約22.8°、および約28.7°から選択される少なくとも5の特徴的なピークを含む、請求項2の多形。
組成物中の全N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアのうちの少なくとも約50重量%が、前記多形として存在する、請求項8の組成物。
組成物中の全N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアのうちの少なくとも約70重量%が、前記多形として存在する、請求項8の組成物。
組成物中の全N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアのうちの少なくとも約90重量%が、前記多形として存在する、請求項8の組成物。
組成物中の全N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアのうちの少なくとも約97重量%が、前記多形として存在する、請求項8の組成物。
治療剤が、喘息、アレルギー性喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、皮膚障害、アトピー性皮膚炎、乾癬、眼炎、脳虚血、または自己免疫性疾患を処置するために用いられる、請求項15の固体組成物。
溶媒が、DMSO、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ヘキサン、ペンタン、エチルアセテート、ジクロロメタン、またはクロロホルムである、請求項18または請求項19の方法。
(a)N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアを溶媒と組み合わせて混合物を形成すること、および
(b)約50℃またはそれより高い温度において、前記多形を形成するために好適な時間にわたり、前記多形を形成するために好適な条件下において、加熱すること、
を含む方法により調製される、請求項1または請求項2の多形。
(a)N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアを溶媒と組み合わせて混合物を形成すること、
(b)前記混合物の濾過、
(c)約55℃またはそれより高い温度において、前記多形を形成するために好適な時間にわたり、前記多形を形成するために好適な条件下において、加熱すること、ならびに
(d)濾過および乾燥、
を含む方法により調製される、請求項1または請求項2の多形。
それを必要とする哺乳動物において、喘息、アレルギー性喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、皮膚障害、アトピー性皮膚炎、乾癬、眼炎、脳虚血、または自己免疫性疾患を処置する方法であって、前記哺乳動物にN−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアの結晶多形の有効量を投与することを含む、前記方法。
【発明の概要】
【0005】
発明の要旨
一側面において、本発明は、N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレア(RPL-554)の多形形態を提供する。その特有の安定性特性の結果として、この多形は、高度に純粋なN−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアを、その最も熱力学的に安定な多形形態において提供する。
【0006】
別の側面において、本発明は、化合物N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアを、99重量%より高いN−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアからなる結晶性固体の形態において提供し、
少なくとも95%は、N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアの熱力学的に安定な多形(I)の多形形態におけるものであり、前記多形(I)は、
単結晶解析により得られる以下の構造的パラメーターを有する:
【化2】
【0007】
別の側面において、本発明は、2θに関して約10.1°および約12.9°において特徴的なピークを含む粉末X線回析パターンを有する、N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアの結晶多形(I)を提供する。
【0008】
ある態様において、前記粉末X線回析パターンは、2θに関して約15.3°および約17.6°における特徴的なピークをさらに含む。
別の態様において、前記粉末X線回析パターンは、2θに関して、6.4°、約10.1°、約12.6°、約12.9°、約13.6°、約14.2°、約14.7°、約15.3°、約15.4°、約15.8°、約17.0°、約17.6°、約18.9°、約20.9°、約22.4°、約22.8°および約28.7°から選択される少なくとも5の特徴的なピークを含む。
【0009】
ある態様において、多形は、実質的には
図1において示されるような粉末X線回析パターンを有する。
他の態様において、多形は、約248℃において最大値を示す示差走査熱量測定のトレースを有する。
多様な態様において、多形は、実質的には
図4において示されるような示差走査熱量測定のトレースを有する。
【0010】
別の側面において、本発明は、本明細書において記載される多形を含む固体組成物を提供する。
一態様において、本発明は、組成物中の全N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアの少なくとも約50重量%が、前記多形として存在する、前記組成物を提供する。
他の態様において、本発明は、組成物中の全N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアの少なくとも約70重量%が、前記多形として存在する、前記組成物を提供する。
【0011】
他の態様において、本発明は、前記組成物中の全N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアの少なくとも約90重量%が、前記多形として存在する、組成物を提供する。
他の態様において、本発明は、前記組成物中の全N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアの少なくとも約97重量%が、前記多形として存在する、組成物を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、上記の多形および薬学的に受容可能なキャリアを含む前記組成物を提供する。
ある態様において、固体組成物は、多形、および1または2以上のさらなる化合物を含む。
さらなる態様において、さらなる化合物は、既知の治療剤である。
【0013】
ある態様において、治療剤は、喘息、アレルギー性喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、皮膚障害、アトピー性皮膚炎、乾癬、眼炎、脳虚血、または自己免疫性疾患を処置するために用いられる。
他の態様において、本発明は、治療剤が喘息またはCOPDを処置するために用いられる固体組成物を提供する。
【0014】
ある側面において、本発明は、本発明の多形を調製するための方法を提供し、該方法は、
(a)N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアを溶媒と組み合わせて混合物を形成すること、
および
(b)約50℃またはそれより高い温度において、前記多形を形成するために好適な時間にわたり、前記多形を形成するために好適な条件下において、加熱すること、
を含む。
【0015】
ある側面において、本発明は、本発明の多形を調製するための方法を提供し、該方法は、
(a)N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアを溶媒と組み合わせて混合物を形成すること、
(b)前記混合物の濾過、
(c)約55℃またはそれより高い温度において、前記多形を形成するために好適な時間にわたり、前記多形を形成するために好適な条件下において、加熱すること、ならびに
(d)濾過および乾燥、
を含む。
【0016】
ある態様において、溶媒は、DMSO、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ヘキサン、ペンタン、エチルアセテート、ジクロロメタン、またはクロロホルムである。さらなる態様において、溶媒はDMSOまたはエタノールである。
別の態様において、前記混合物は、約50℃またはそれより高い温度において約24〜96時間にわたり維持される。さらなる態様において、前記混合物は、約50℃またはそれより高い温度において約72時間にわたり維持される。他の態様において、前記混合物は、約55℃またはそれより高い温度において約24〜96時間にわたり維持される。多様な態様において、前記混合物は、約55℃またはそれより高い温度において約72時間にわたり維持される。
他の態様において、前記混合物は、25〜50℃において真空乾燥される。さらなる態様において、前記混合物は、40℃において真空乾燥される。
【0017】
別の態様において、本発明は、
(a)N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアを溶媒と組み合わせて混合物を形成すること、および
(b)約50℃またはそれより高い温度において、前記多形を形成するために好適な時間にわたり、前記多形を形成するために好適な条件下において、加熱すること、
を含む方法により調製された、上記の多形を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、
(a)N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアを溶媒と組み合わせて混合物を形成すること、
(b)前記混合物の濾過、
(c)約55℃またはそれより高い温度において、前記多形を形成するために好適な時間にわたり、前記多形を形成するために好適な条件下において、加熱すること、ならびに
(d)濾過および乾燥、
を含む方法により調製された、上記の多形を提供する。
【0019】
別の側面において、本発明は、喘息、アレルギー性喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、皮膚障害、アトピー性皮膚炎、乾癬、眼炎、脳虚血、または自己免疫性疾患を、その必要を有する哺乳動物において処置する方法を提供し、該方法は、前記哺乳動物に、N−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレアの結晶多形の有効量を投与することを含む。
一態様において、哺乳動物はヒトである。
【0020】
RPL554の非晶質形態は、より安定性が低く、様々な程度において、ある条件下において、多様な多形形態へと変態し得、保存中に変態し得る。それはまた、純度ならびに不純度のプロフィールに関して必要とされるcGMP規格に適合する非晶質形態をラージスケールで製造することを、より必要とする。非晶質形態は、したがって、特定の処方適用のためのRPL554の再現可能な均一な微粉化乾燥固体粉末の開発において困難を提示する。一方、結晶多形形態Iは、ラージスケールcGMPにおいて、医薬品有効成分(API)としての固体RPL554を提供するために、より一貫した再現可能なプロセスにおいて、より容易に製造することができる。結晶多形形態I生成物のための精製および単離のプロセスは、ラージスケールcGMPによる製造により適している。上記の利点は、必要とされるcGMP規格に適合する生成物のバッチを提供することをもたらす。本発明の一側面において示されるように、結晶多形形態Iは、RPL554の最も熱力学的に安定な多形形態であり、また、最長の保存期間を有することが期待される。この利点は、安定な結晶多形形態IをAPIとして含む任意の市販のRPL554薬物製品の潜在的な保存期間へと、さらに拡大するはずである。さらに、結晶多形形態Iは、特定の医薬処方適用のためのRPL554の再現可能な均一な微粉化乾燥固体粉末の開発により適している。
【0021】
結晶形態(形態Iと指定)において提示されるN−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレア(RPL554)の研究は、当該材料が、変化に対する弾性が非常に高いこと、および、行われた研究の限度内において、形態Iが、既知の当該材料のうち最も安定な多形形態であったことを示した(実験を参照)。
【0022】
一連の実験が、当該化合物の新たな純粋な多形の存在を発見するために適用され、これらは、貧溶媒添加(Anti-solvent addition);飽和溶液の研究;スラリー熟成;幾何学的再結晶化(Formal rectystallisation);混合溶媒の研究;および水系の結晶化である。
【0023】
非晶質相の生成が達成され、これはまた研究の一部において用いられ、変化を誘導した僅かな実験を除き、形態Iが優位であったという同様に決定的な結果を得た。スモールスケールにおいて変化を誘導した場合において、形態(純粋および混合)を完全に特徴づけ、この変化が溶媒和に起因するものであるのか非溶媒和物に起因するものであるのかを決定するために、結晶化をスケールアップする試みがなされた。殆どの場合において、かかる結晶化を繰り返すために必要とされるプロセスの変数の繊細な性質および系の全体的な安定性に起因して、形態Iが返された。主要な例外は、当該材料についての分解周期内において主要な融点の後に、形態Iとの混合物として潜在的により高い融解期が観察されたDMSOである。DMSOは、このスケールアップの前に2つの他の改変された相を返し、これらは各々異なっているが最終的により安定性が低い形態および/または溶媒和物であった可能性が高いものを代表したこともまた重要であった。
【0024】
先の報告は、融解物をクラッシュ冷却(crash cooling)することにより非晶質材料を生成し得ることを示唆した。DCMからの急速な蒸発は強力な方法を提供するが、一方、融解物をクラッシュ冷却することは、単純に分解をもたらす(XRPDによれば非晶質であるが、HPLC分析によれば生成物の<20%である)。
【0025】
社内(in-house)で製造された当該プロセスにより誘導された材料が非晶質であったか結晶性であったかは歴史的に知られていなかったため、これらの材料の両方について、指針として役立てるために、可溶性試験を繰り返し、非晶質相が、より可溶性が高いことを証明した。
【0026】
最終的に、形態Iが熱力学的に有利な相として示され、さらに、結晶性または非晶質材料のいずれかの操作は、単離された材料の改変された物理学的提示(例えば、粉末に対して、より大きな結晶性側面)を参照して、首尾よく達成されることが示された。
【0027】
この材料の発達(progression)の間に重要なことは、加圧が、XRPDおよびDSCにより示されるように非晶質材料であると推定されたものの生成をもたらしたことであった。この材料の熱プロフィールは、顕著な発熱性の結晶化およびその後の融解吸熱を示し、これは形態Iのものに非常に近かった。このことは、より多くの材料を用いて繰り返すこと、および吸熱イベントの後の生成物を単離してXRPDおよびHPLCによりチェックすることにより、検証することができた。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
結晶形態(形態Iと指定)において提示されるN−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレア(RPL554)の研究は、当該材料が、変化に対する弾性が非常に高いこと、および、行われた研究の限度内において、形態Iが、既知の当該材料の最も安定な多形形態であったことを示した(実験を参照)。このことを試験するために、かかる研究内における非晶質材料の使用を含む一連の実験を行った。いずれの相も、製造の際に、変化を誘導した僅かな実験を除き、形態Iが優位であったとことを示した。スモールスケールにおいて変化を誘導した場合において、形態(純粋および混合)を完全に特徴づけ、この変化が溶媒和に起因するものであるのか非溶媒和物に起因するものであるのかを決定するために、結晶化をスケールアップする試みがなされた。殆どの場合において、かかる結晶化を繰り返すために必要とされるプロセスの変数の繊細な性質および系の全体的な安定性に起因して、形態Iが返された。主要な例外は、当該材料についての分解周期内において主要な融点の後に、形態Iとの混合物として潜在的により高い融解期が観察されたDMSOである。
【0035】
先の報告は、融解物をクラッシュ冷却することにより非晶質材料を生成し得ることを示唆した。DCMからの急速な蒸発は強力な方法を提供するが、一方、融解物をクラッシュ冷却することは、単純に分解をもたらす(XRPDによれば非晶質であるが、HPLC分析によれば生成物の<20%である)。
社内で製造された当該プロセスにより誘導された材料が非晶質であったか結晶性であったかは歴史的に知られていなかったため、これらの材料の両方について、指針として役立てるために、可溶性試験を繰り返した。
【0036】
最終的に、形態Iが熱力学的に有利な相として示され、さらに、結晶性または非晶質材料のいずれかの操作は、単離された材料の改変された物理学的提示(例えば、粉末に対して、より大きな結晶性側面)を参照して、首尾よく達成されることが示された。このことに基づいて、単一結晶分析に好適な材料を増大させることを目的として、ならびに、得られた高品質粉末のデータを用いて行われるインデックス付けおよび単位格子精密化を補完するために、3回の試験的結晶化を開始した。
【0037】
X線粉末回析は、目的の医薬製品の特徴(fingerprint)を得るために理想的なツールである。理想的には、粉末のデータを、ユニークなXRPDによるユニークな結晶形態と関連付ける。3Dから2Dへの結晶学的情報の劣化が原因で、典型的なXRPDは、2つのシータ値において回析ピークのオーバーラップを観察する。この要因に起因して、粉末パターンをインデックス付けすること(データを単位格子パラメーターに関連付けすること)は、近年にわたり大きな進歩が達成されているにも関わらず、困難な工程であり続けている。
【0038】
本明細書において提示されるデータは、RPL554の正確な単位格子パラメーターに潜在的に関連する。ソフトウェア中のアルゴリズムにより、単位格子のセッティングの性能指数(figures of merit)を伴う出力を可能にする。これらの値が高いほど、正確な単位格子を得る上でのチャンスが高くなる。
【0039】
X線粉末回析(XRPD)PANalytical X’Pert PRO:X線粉末回析パターンは、PANalytical回析計において、CuKα照射(45kV、40mA)θ−θゴニオメーター、収束ミラー、発散スリット(1/2’’)、両方の入射(incident)におけるソラースリット(soller slit)、および発散ビーム(4mm)、およびPIXcel検出器を用いて収集した。データ収集のために用いられたソフトウェアは、X’Pert Data Collector、バージョン2.2fであり、データは、X’Pert Data Viewer、バージョン1.2dを用いて提示した。
【0040】
受け取った粉末をそのまま用いて、試料を環境条件下において透過フォイルXRPDかけて分析した。約2〜5mgの試料を、ポリイミド(カプトン、厚み12.7μm)フィルム上で支持された96位置の試料プレート上にマウントした。連続的スキャンにより範囲3〜40°2θにおいて、データを収集した(0.146°2θ/sの速度)。
【0041】
示差走査熱量測定(DSC):DSCデータは、PerkinElmer Pyris 4000 DSCにおいて収集した。機器を、エネルギーおよび温度のカリブレーションのために、認証されたインジウムを用いて検証した。ミリグラムmgにおいて予め決定された量の試料を、ピンホールを開けたアルミニウム皿中に置き、典型的には20℃・min
−1において30℃から350℃まで、または実験の必要に応じて変化させて、加熱した。機器の制御およびデータ分析は、Pyris Software v9.0.1.0174であった。
【0042】
熱−重量測定分析(TGA):TGAデータを、20ポジションオートサンプラーを備えたPyris 1 TGAにおいて収集した。機器を、認証されたインジウムを用いてカリブレーションした。ミリグラムにおいて予め決定された量の試料を、予め重量測定されたアルミニウム炉上にロードし、40℃・min
−1において環境温度から400℃まで加熱した。試料上に20ml・min
−1における窒素パージを維持した。機器の制御およびデータ分析は、Pyris Software v9.0.1.0174であった。
【0043】
重量測定蒸気吸着:IGAsorp Systems Software V6.50.48により制御されたHiden Isochema水分吸着分析器(モデルIGAsorp)を用いて、吸着等温線を得る。試料を、機器制御により定温(25℃)において維持した。乾燥および湿潤窒素の流れを混合することにより湿度を制御し、全体の流量は250ml・min
−1とした。相対湿度含有量について、3つのカリブレーションされたRotronicの塩溶液(10−50−88%)を測定することにより、機器を検証した。試料の重量変化を、湿度の関数として、微量天秤(正確性+/−0.005mg)によりモニタリングした。予め決定された量の試料を、環境条件下において、タールを塗布したメッシュのステンレススチールのバスケット中に置いた。全実験サイクルは、定温(25℃)および10〜90%の範囲にわたる10%RHインターバルにおいて(各湿度レベルについて90分)、2回のスキャン(吸着および脱着)からなった。この型の実験は、研究された試料が予めよく決定された湿度範囲のセットにわたって水分を吸収する(か、またはしない)能力を示す筈である。
【0044】
核磁気共鳴(NMR)
1H:オートサンプラーを備えDRX400コンソールにより制御されるBruker 270MHz機器において、NMRスペクトルを収集した。Delta NMR Processing & Control Softwareバージョン4.3を用いて、実験を自動化した。他に記されない限りにおいて、試料はd6-DMSO中で調製した。分析は、ACD/Specmanager 7.11を用いて行った。
【0045】
HPLCによる熱力学的水溶性:十分な化合物をHPLCグレードの水中に懸濁して、親化合物の≧20mg・ml
−1の最大最終濃度を得ることにより、水溶性を決定した。懸濁液を、25℃で24時間平衡化した。懸濁液を、次いで、フィルターを通して、HPLCバイアル中へ濾過した。濾過物を、次いで、適切な倍数で希釈した。アセトニトリル:水=(1:1)中の0.5mg・ml
−1の標準溶液を参照したHPLCにより、定量を実行した。異なる容積の標準物、希釈および未希釈の試料溶液を注入した。可溶性を、標準物注入における第1のピークと同じ保持時間において見出されたピークの積分により決定されるピーク面積を用いて計算した。
【0046】
分析は、UV検出器(DADまたはVWD)を備えたAgilent 1100シリーズの液体クロマトグラフィーにおいて、254nmにおいて、データ処理のためのChemstation Rev.B.01.03ソフトウェアを用いて行った。HPLCによる化学的純度の決定。
【0047】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、1または2以上の薬学的に受容可能なキャリアと一緒に処方された、本発明の多形の治療有効量を含む。本明細書において用いられる場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の不活性な固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材料または任意の型の処方助剤を意味する。本発明の医薬組成物は、ヒトまたは他の動物に、経口で、直腸で、非経口で、大槽内で、膣内で、腹腔内で、局所で(粉末、軟膏または滴下剤によるものとして)、口腔内で、または経口もしくは鼻用スプレーとして投与することができる。薬物投与の他の経路として、定量噴霧式吸入器(MDI)もしくはネブライザーからの本発明の医薬組成物の溶液または懸濁液からの医薬の吸入、あるいは、一般に賦形剤と混合された本発明の多形の治療有効量を含む粉末の薬物または本発明の医薬組成物の、乾燥粉末吸入器(DPI)からの吸入が挙げられる。
【0048】
経口投与のための液体投与形態として、薬学的に受容可能な乳液、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体投与形態は、例えば、水、アルコールまたは他の溶媒などの当該分野において一般的に用いられる不活性な希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルボナート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリソルベート、ジメチルホルムアミド、油脂類(特に、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、モノ−またはジ−グリセリド、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物などの可溶化剤および乳化剤を含んでもよい。不活性な希釈剤のほかに、経口組成物はまた、湿潤化剤などのアジュバント、乳化剤および懸濁剤、抗酸化剤、甘味料、香味剤、および芳香剤を含んでもよい。液体投与形態はまた、ゼラチンカプセル中に封入されていてもよく、ここで、本発明の化合物は、例えば、1または2以上の可溶化剤(例えば、ポリソルベート80ならびにモノおよびジグリセリド)ならびに他の好適な賦形剤(例えば、パルミチン酸アスコルビルなどの抗酸化剤、または甘味料もしくは香味剤)を含む薬学的に受容可能なキャリア中に溶解していてもよい。
【0049】
注射可能製剤、例えば、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液は、当該分野に従って、好適な分散剤または湿潤化剤および懸濁剤を用いて、処方することができる。無菌の注射可能な製剤はまた、非毒性の非経口で受容可能な希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能溶液、懸濁液または乳液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用することができる受容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー溶液、U.S.P.、および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の、硬化油が、溶媒または懸濁媒として便利に用いられる。この目的のために、合成のモノ−またはジグリセリドを含む任意の無菌の硬化油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能物の調製において用いられる。
【0050】
薬物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが、しばしば望ましい。これは、水溶性が低い結晶または非晶質の材料の液体懸濁液の使用により達成することができる。薬物の吸収の速度は、したがって、その溶解の速度に依存し、これは同じく結晶のサイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口投与された薬物形態の吸収の遅延は、油性のビヒクル中に薬物を溶解または懸濁することにより達成される。即時放出形態もまた本発明により企図される。
【0051】
直腸または膣投与のための組成物は、好ましくは坐剤であり、これは、本発明の化合物を、環境温度において固体であるが体温においては液体であり、したがって直腸または膣腔において融解して活性化合物の多形を放出する、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤用ロウなどの好適な非刺激性の賦形剤またはキャリアと混合することにより、調製することができる。
【0052】
類似の型の固体組成物もまた、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる軟質または硬質の充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いることができる。
活性な多形はまた、上記のような1または2以上の賦形剤を用いたマイクロカプセル化形態であってもよい。
【0053】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒の固体投与形態は、腸溶性コーティング、徐放性コーティングおよび製薬の分野において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。かかる固体投与形態において、活性化合物を、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1の不活性な希釈剤と混合することができる。かかる投与形態はまた、通常の実施におけるもののように、不活性な希釈剤の他に、さらなる物質、例えば、打錠用潤滑剤、ならびにステアリン酸マグネシウムおよび微小質セルロースなどの他の打錠用助剤を含んでもよい。カプセル、錠剤および丸剤の場合、投与形態はまた緩衝化剤を含んでもよい。
【0054】
好ましくは、本発明の多形は固体分散体において処方され、ここで当該多形は、薬学的に受容可能な親水性ポリマーを含むマトリックス中に分子的に分散することができる。マトリックスはまた、薬学的に受容可能な界面活性剤を含んでもよい。本発明の多形を処方するための好適な固体分散技術として、限定されないが、融解押出、噴霧乾燥または溶媒蒸発が挙げられる。
【0055】
本発明の多形の局所または経皮のための投与形態として、軟膏、ペースト剤、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー剤、吸入剤または貼付剤が挙げられる。有効成分は、無菌条件下において、薬学的に受容可能なキャリア、および、必要である場合は任意の必要な保存剤または緩衝化剤と混合される。眼用処方物、点耳剤、眼軟膏、粉末および溶液もまた、本発明の範囲内であるものとして企図される。
【0056】
軟膏、ペースト剤、クリームおよびゲルは、本発明の多形に加えて、動物性または植物性脂、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物などの賦形剤を含んでもよい。
【0057】
粉末およびスプレー剤は、本発明の多形に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含んでもよい。スプレー剤は、さらに、塩化フッ化炭化水素などの通例の噴霧剤を含んでもよい。
【0058】
経皮貼付剤は、身体への多形の制御された送達の付加的な利点を有する。かかる投与形態は、多形を、適切な媒体中に溶解または分配することにより製造することができる。吸収促進剤もまた、皮膚を超えての多形の流動を増大させるために用いることができる。速度は、速度制御膜を備えることにより、または化合物をポリマーのマトリックスもしくはゲル中に分配することのいずれかにより、制御することができる。
【0059】
生物学的活性
別の側面において、本発明は、本発明の多形、および獣医学的または薬学的に受容可能なキャリアもしくは希釈剤を含む、多形組成物を提供する。好ましくは、組成物は、ヒトの医薬のための医薬組成物である。別の側面において、本発明の組成物は、獣医用医薬のための組成物である。
【0060】
本発明の多形化合物は、PDE阻害剤であり、したがって、モルモットから単離された気管の電場刺激による収縮の阻害により示されるような気管支拡張薬活性、およびPHA(フィトヘマグルチニン)により刺激されたヒト単核細胞における研究において説明されるような抗炎症活性などの、有益な薬理学的特性を所有する。in vitroおよびin vivoのデータは、当該化合物が、モルモットにおいて直接的に肺中へ乾燥粉末として吸入された場合におけるヒスタミンに誘導される気管支痙攣に対する持続的な保護効果により示されるような、長期の作用を有することを示す。本発明は、したがってまた、特に喘息、アレルギー性喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸促迫症候群(ARDS)および嚢胞性線維症を含む呼吸器障害を罹患する患者の、急性、慢性、または予防的な処置に関する。それらはまた、アトピー性皮膚炎および乾癬などの皮膚障害において、あるいは、眼炎、またはcAMPの細胞内濃度の増大が有益であると考えられる脳虚血もしくは自己免疫性疾患を含む任意の他の疾患において、局所的に用いることができる。
【0061】
1または2以上の化合物多形は、1または2以上の非毒性の薬学的におよび/または獣医学的に受容可能なキャリアおよび/または希釈剤および/またはアジュバントおよび/または噴霧剤、ならびに、所望される場合、他の有効成分と組み合わされて存在してもよい。好適なキャリアまたは希釈剤は、当該分野において公知である(例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients(1994年)、第2版、A. Wade/PJ Weller編、The Pharmaceutical Press、American Pharmaceutical Association)。
【0062】
別の側面において、本発明は、医薬において用いるための化合物多形を提供する。本発明の多形化合物は、ホスホジエステラーゼのアイソザイムの阻害剤として有用である。本発明の化合物の多形または組成物は、当該化合物または組成物が有用である任意の疾患を予防または処置するために用いることができるが、特に、cAMPの細胞内濃度を上昇させることが望ましい疾患を予防または処置するために用いることができる。化合物が有用である疾患の例として、特に喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、アレルギー性喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎および嚢胞性線維症を含む呼吸器疾患が挙げられる。それらはまた、アトピー性皮膚炎および乾癬などの皮膚障害において、あるいは、眼炎、またはcAMPの細胞内濃度の増大が有益であると考えられる脳虚血もしくは自己免疫性疾患を含む任意の他の疾患において、局所的に用いることができる。
【0063】
本発明のこの側面は、ヒトの処置に特に関連性があるが、また、一般的な獣医学産業、特にイヌおよびネコなどの家庭の動物ならびにウマ、ブタ、ウシ、ヒツジなどの家畜にも適用可能である。
【0064】
約0.02mg〜約200mg程度の投与量レベルを1日3回まで服用することは、上記の状態の処置において有用である。とりわけ、約0.2mg〜約20mgの範囲の投与量を1日3回まで服用することが効果的である。しかし、特定の投与レジメンが、診察する医師により最終的に決定され、用いられる医薬、年齢、体重、症状の重篤度および/または適用されているもしくは適用されることになる処置の重篤度、医薬の投与の方法、有害な反応および/または他の禁忌症などの要因を考慮する。
【0065】
本発明のこの側面による医薬は、患者に、他の活性剤と一緒に与えられてもよく、これは、例えば、本発明の異なる化合物もしくは多形、または他の化合物であってもよい。例として、β2−アドレナリン受容体アゴニスト、外用糖質コルチコイドステロイド、キサンチン誘導体、抗ヒスタミン化合物、ロイコトリエンアンタゴニスト、ロイコトリエン合成の阻害剤、および/またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
別の側面によれば、本発明は、III/IV型ホスホジエステラーゼアイソザイム(PDE3/4)の阻害剤の製造における本発明の多形の使用を提供する。本発明は、気管支拡張薬および/または抗喘息薬、および/または慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防もしくは処置のための医薬の製造における、本発明の多形の使用を包含する。
【0067】
本発明はまた、哺乳動物における、ホスホジエステラーゼアイソザイム阻害剤および/または気管支拡張薬が有益であると期待される疾患の処置または予防のための方法に関し、該方法は、前記哺乳動物に、有効な非毒性の量の本発明の多形を投与することを含む。本発明は、哺乳動物において喘息および/または慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置または予防する方法を包含する。
【0068】
用語「対象」とは、本明細書において用いられる場合、哺乳動物を指す。対象は、したがって、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、モルモットなどを指す。好ましくは、対象はヒトである。対象がヒトである場合、対象は、患者または健常者のいずれかである。
【0069】
本明細書において用いられる場合、用語「薬学的に受容可能な塩」とは、本発明の方法により形成された化合物の塩であって、徹底した医学的判断の範囲内において、適切でない毒性、刺激、アレルギー応答などを有することなく、ヒトおよび下等動物の組織と接触しての使用に好適であって、妥当な利益/危険性の比と釣り合うものを指す。薬学的に受容可能な塩は、当該分野において周知である。例えば、S. M. Bergeらは、J. Pharmaceutical Sciences, 66: 1-19 (1977)において、薬学的に受容可能な塩を詳細に記載する。塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製の間にin situで調製しても、または遊離の塩基官能基を好適な有機酸と反応させることにより別に調製してもよい。薬学的に受容可能な塩の例として、限定されないが、非毒性の酸付加塩、あるいは、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸により、または酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸により、あるいは、イオン交換などの当該分野において用いられる他の方法を用いて形成されたアミノ基の塩が挙げられる。他の薬学的に受容可能な塩として、限定されないが、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩として、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩などが挙げられる。さらなる薬学的に受容可能な塩として、適切である場合は、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、ならびに、ハライド、ヒドロキシド、カルボン酸、硫酸、リン酸、硝酸、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、スルホナートおよびアリールスルホナートなどの対イオンを用いて形成したアミンのカチオンが挙げられる。
【0070】
本発明により想定される置換基および変数の組み合わせは、安定な化合物の形成をもたらすもののみである。用語「安定な」とは、本明細書において用いられる場合、製造を可能にするために十分な安定性を所有し、本明細書において詳説される目的(例えば、対象への治療的または予防的投与)のために有用であるために十分な期間にわたって化合物の完全性を維持する、化合物を指す。
【0071】
本明細書において記載される化合物は、1または2以上の非対称中心を有し、したがって、鏡像異性体、ジアステレオマー、および、絶対立体化学に関して(R)−もしくは(S)−として、またはアミノ酸については(D)−もしくは(L)−として定義され得る他の立体異性体形態を生じる。本発明は、全てのかかる可能な異性体、ならびにそれらのラセミ体および光学的に純粋な形態を含むことを意味する。光学異性体は、それらの対応する光学的に活性な前駆体から、上記の手順により、またはラセミ混合物を分割することにより、調製することができる。分割は、分割剤の存在下において、クロマトグラフィーにより、または結晶化の繰り返しにより、または当業者に公知のこれらの技術の幾つかの組み合わせにより、行うことができる。分割についてのさらなる詳細は、Jacquesら、
Enantiomers, Racemates, and Resolution(John Wiley & Sons、1981年)において見出すことができる。本明細書において記載される化合物がオレフィン二重結合または他の幾何学的非対称を含み、他に特定されない場合、当該化合物は、EとZとの両方の幾何異性体を含むことが意図される。同様に、全ての互換異性体形態もまた、含まれることが意図される。本明細書において現れる任意の炭素−炭素二重結合の立体配置は、単に便宜上のものであり、文章がそう記述しない限りにおいて、特定の立体配置を指定することは意図されず、したがって、本明細書においてtransとして任意に示される炭素−炭素二重結合は、cis、transまたは任意の比率におけるこの2つの混合物であってよい。
【0072】
合成された化合物を、カラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィーまたは再結晶化などの方法により、反応混合物から分離してさらに精製することができる。当業者により理解されるとおり、本明細書における式の化合物の合成のさらなる方法は、当業者には明らかである。さらに、所望の化合物を得るために、多様な合成段階を交替の順番または順序で行うことができる。さらに、本明細書において詳しく説明される溶媒、温度、反応期間などは、単に説明を目的とするものであり、当業者は、反応条件のバリエーションが、所望の本発明の架橋大環状生成物を生成することができることを理解するであろう。本明細書において記載される化合物を合成する上で有用な合成化学変態および保護基の方法論(保護および脱保護)は、当該分野において公知であり、例えば、R. Larock、
Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers (1989);T.W. GreeneおよびP.G.M. Wuts、
Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、John Wiley and Sons (1991);L. FieserおよびM. Fieser、
Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons (1994);ならびにL. Paquette編、
Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons (1995)、ならびにこれらの続版において記載されるものを含む。
【0073】
本発明の化合物は、選択的な生物学的特性を増強するために、本明細書において説明される任意の合成手段を介して多様な官能基を付加することにより修飾することができる。かかる修飾は、当該分野において公知であり、所与の生物システム(例えば血液、リンパ系、中枢神経系)中への生物学的浸透性を増大するもの、経口でのアベイラビリティーを増大するもの、注射による投与を可能にするために溶解度を増大するもの、代謝を改変するもの、および排出の速度を改変するものを含む。
【0074】
本明細書における任意の変数の定義における化学基のリストの列記は、任意の単一の基または列記された基の組み合わせとしてのその変数の定義を含む。本明細書における変数の態様の列記は、任意の単一の態様、または任意の他の態様もしくはその部分との組合せとしての態様を含む。
【0075】
例
本発明の化合物および方法は、以下の例との関連においてより理解されるであろう。以下の例は、単に説明として意図されるものであり、本発明の範囲を限定することは意図されない。開示される態様に対する多様な変更および修飾が、当業者には明らかであり、本発明の化学構造、置換基、誘導体、処方および/または方法に関するものなどを限定することなく含む変更および修飾が、本発明の精神および添付の請求の範囲から解離することなく行われ得る。
【0076】
例1
約50mgのN−{2−[(2E)−2−(メシチルイミノ)−9,10−ジメトキシ−4−オキソ−6,7−ジヒドロ−2H−ピリミド[6,1−a]−イソキノリン−3(4H)−イル]エチル}ウレア(RPL554)を、0.5mlのDMF中に70℃で溶解した。透明な黄色の溶液を、窒素を通気しながら約30℃まで4日間かけて非常にゆっくりと冷却した。最初のバッチの材料は、結晶性の性質を有する濃縮溶液(liquor)(約0.4ml)中に観察された。このプロセスを2回繰り返すことにより、単一結晶解析に好適な材料が、約0.2mlの容積の濃縮溶液中に得られた。
【0077】
単一結晶データを、定温(123K)において、異なる波長(0.71073Å)において測定した。直接比較をもたらすであろう写真を得るために、波長の値の手動調整が必要であった。多様な調整の後で得られた
図1は、RPL554 070638についてXRPDを介して(上)測定されたデータと、単一結晶データから誘導されたシュミレーションされたXRPD(Copy of onyx2010a、下)との分割オーバーレイ(split overlay)を示す。
2θ範囲における(5〜13°2θ)より近接しての精査(
図2)は、観察されたデータとシュミレーションされた粉末パターンとの間の類似性を明らかに示す。
【0078】
ソフトウェア中のアルゴリズムは、透過XRPDにより測定された観察されたデータ(RPL554 070638)と、単一結晶解析から誘導された数値とを数的に比較する。単一結晶分析から誘導された重要なデータを、以下に列記する:
【化3】
【0079】
比較のために適用されたソフトウェアは、測定されたファイル(RPL554 070638)を読み、単一結晶データから抽出された単位格子のパラメーター入力を促した。Pawley精密化(アルゴリズム)は、次いで数値を返すが、ソフトウェアはまた、この数値を結果の図式表示により説明する。RPL554についての測定値と理論値との間の適合度の数値は、2.9であった。この値は、データの質を表わす。値が低い程、データは優良であり、通常、10未満の値は肯定的なヒットであると考えられる。
【0080】
RPL554についての数値は、123Kにおいて測定された単一結晶から得られたものと良好な一致を得た。したがって、単一結晶データは、社内のRPL554について収集された粉末データとの優れた一致を提供し、したがって、既知の熱力学的に有利な多形(形態I)についての結晶学的プロフィールを代表するものである。
【0081】
例2.出発材料
9.0gのRPL554のex-GMPストックの試料を得、現在の参照データセットとして用いるために、XRPD(
図3および表1)およびDSC(
図4)により分析した。
【表1】
【0082】
この時点における陽子NMRおよびHPLCなどの他の研究は、結果が以前に収集されていたため、プロジェクトの開始にとって重要ではなかった。一連の一般的な有機材料を用いて当該材料に対して溶解度の研究を行うことも、同様に、先の研究が当該材料の挙動の強力な指標をもたらしていたために不必要であった。RPL554の他の形態の存在についての検討の開始が優先事項であった。
【0083】
当該材料は、既知であるように、単一の吸熱について246℃で融解を開始する結晶であって、熱分解の他には、顕著なその後の再結晶化または転移を有さない。約4.2%の初期の重量減少は、TGAにより記述されており、これは融解吸熱に対応し、これは溶媒に関連するものではない(全フラグメンテーションに先立つアンモニアの減少である可能性がある)。参照データを得ていることから、当該材料を用いた実験は、非晶質材料がその後に生成されることを目的として開始した。この時点において、上記のデータを、形態Iと称する。
【0084】
RPL554を生成するためのプロセスが、現在の形態における材料を供給すること、および、その純度を改善するために用いられるアルコールからのスラリーが、その結晶化度を増強するか、または、より重要なことには、非晶質材料を結晶形態へ変換することが推測される。
【0085】
例3.貧溶媒添加
貧溶媒添加は、非晶質材料、新たな多形、およびまた混合相を得る周知の方法である。このことを考慮して、DMSO中のRLP554のストック溶液を製造した。この溶媒中で当該材料が妥当な溶解度を有すし、これはまた広い混和性を有するため、DMSOを選択した。
【0086】
実験条件(CG1099):
300mgのRPL554を、熱いDMSO(2mlのストック溶液)中に溶解し、この溶液のうち0.15mlを、激しく撹拌しながら、室温において、多様な溶媒(1.0ml)を含む12本の冷たい試験管に少しずつ加えた。殆どすべての場合において、即時に沈殿が観察された。単離は、40℃における真空中での濾過および乾燥により行った。結果を以下の表2に詳説する:
【0088】
固体を返した試料の全てを、一旦45℃において真空乾燥し、XRPDにより分析したところ、形態Iが返されていたことが示された。顕著な例外は、ジオキサン、DCMおよびヘプタンであった。ジオキサンおよびDCMを静置して蒸発させ、最終的に形態Iを得た。
【0089】
ヘプタンは、いずれも有色の溶液である2層が形成され、これらが、振盪および静置時間を延長したことにより次第に油浸したことにおいて、より興味深かった。約24時間後、不透明な油中に固体が形成したので、混合物をデカントし、45℃で真空乾燥した。不運なことに、非晶質材料が形成されたことが期待された一方で、形態Iが観察された。しかし、実験の繰り返しが必要であったことが考慮されたが、沈殿性の油の形成後に割り当てられる時間をより短くした。これもやはり、2つの透明な層を形成し、次第に沈殿性のDMSO層を生じ、これをデカントし、湿ったものおよび乾燥したものを両方分析した(それぞれ、CG1110AwetおよびCG1110A2)。DMSO濃縮液をまた、固体へと減少させ、これを真空乾燥した(CG1110B2)。結果を
図5において示す。これは、全ての試料が実質的に開始材料(CG1099SM)と同一であったことを示した。
【0090】
例4.飽和溶液
飽和溶液は、これまでのところ、新たな多形の純粋な相を得る最良の方法である。したがって、既知の量のRPL554の形態Iを、時間をかけて溶解またはスラリー化して、温度における飽和溶液を得、その後、ポリッシュ・フィルター濾過して、あらゆる形態の記憶(form memory)(種(seed))を取り除いた。制御された冷却を用いて、結晶化を促進した。
【0091】
実験(JN376):
24種の溶媒を、30mgのRPL554の形態Iの存在下において、45℃で撹拌して、最初の懸濁液を得る。懸濁液を45℃で4.5時間にわたり加熱して、その後、予め加温された試験管中へ加熱濾過し、これを次いでゆっくりと蒸発させて、その後45℃で真空乾燥して分析した。エントリーAおよびB(表3中)は、24時間の蒸発を助けるために、窒素下で35℃で加温したことに注意する。
【0093】
表から、実験の多くは、実験を可能にするために十分な量の材料を溶解せず、乾燥の後で試験管の底部に少量の油または粉末のいずれかを返したことが観察される。しかし、このことにも関わらず、多数の実験は、XRPD分析が収集されることを可能にする粉末の形態において材料を返した。元の濃縮溶液から成長する幾何学的結晶を示した最も成功した実験を収集し、一つのみのエントリーが、何らかの関連する形態変化を示した(DMSO)。
【0094】
DMSOエントリーの結果を以下に示す(
図6および7)。材料は、形態Iに対する何らかの類似性を示す一方で、XRPDに基づいて、新たな多形が存在し、好ましい配向を可能にすると考えられる。材料のDSC分析は、はるかに低い主な吸熱の開始を伴う形態変化のより明確な指標を与える。TGAおよびNMR分析のためには不十分な材料が存在した。本発明者らは、これが、より安定性の低いRPL554の形態であると理解している。
【0095】
例5.スラリー熟成
現在の結晶固体にストレスを与えて形態変態させるために、24×のスラリー熟成を行った。かかる作業のために最も効果的な方法は、長時間の加熱/冷却周期を利用することであり、これをRPL554の形態Iに対して供した。
【0096】
実験(CG1100):
およそ20mgの材料を、ガラス試験管中で約30容積の溶媒中で撹拌し、20℃および50℃の定温期間(8時間)の間を循環させた。4日間の循環の後で、固体を濾過し、45℃で真空乾燥し、その後XRPDにより分析した。全ての結果を出発材料、RPL554(形態I)と比較した。表4を参照。
【0098】
全ての試料が、出発材料と比較した場合に、同じXRPDプロフィールを示した。このことは、RPL554の形態Iが、変化に対して極めて弾性が高く、当該化合物の熱力学的に最も安定な形態である可能性が非常に高かったことを示している(
図8)。
【0099】
例6.混合溶媒再結晶化
溶解度プロフィールは、混合溶媒系の存在により著しく改変され得ること、およびこれらの傾向を予測することが非常に困難であることから、多様な系を用いる一連の再結晶化を計画した。このことは、新たな多形の発見につながる形態変化を誘導するための別の好適な方法であると考えられた。
【0100】
研究中、ジオキサンおよびクメン(通常のDMF、DMSOおよびテトラリン以外に)が、RPL554を溶解することにおいてある程度の有効性を示したことに注目した。これらの溶媒は、各々の溶媒とRPL554とのポリッシュ・フィルター濾過された溶液を採用し、次いでこれらを高温で一連の多様な型の既知の貧溶媒と混合し、溶液を維持し、次いでゆっくりと冷却する、幾つかの初期の試験の基礎を形成した。
【0101】
実験(PF87):
100mgのRPL 554を用いたストック溶液を、5mlの主な溶媒中で固体を撹拌して、溶解を改善するために50℃で加熱することにより、調製した。溶解を改善するために、追加の1ml(必要であればさらに多く)の共溶媒を添加して、最終ストック混合物を形成させた。試料を50℃で30分間撹拌し続けた。予熱された温かい試験管(50℃)に、ストック溶液を添加し、その後、表において示される2mlの貧溶媒を添加し、試料を撹拌し続け、蒸発させた。試料を濾過して、一晩真空オーブン中で50℃において乾燥させ、その後XRPDにより分析した(表5を参照)。
【0102】
【表5】
実験PF87において列記された全ての実験は、形態Iを返し、これは、RPL554の熱力学的安定性のさらなる証拠としての役割を果たす。
【0103】
例7.混合水性系における結晶化試験
水性の基剤を有する一連の混合溶媒結晶化を、実験PF86において検証した。
実験(PF86):
DMSO中のRPL554(形態I)の高温ストック溶液(1ml、15mg.ml
−1)を、表6において示すとおり水と混合した高温の溶媒の溶液(1:1、v/v、1ml)に添加した(50℃)。溶液を、その温度において48時間撹拌し続け、冷却し、濾過し、次いで、オーブン中で一晩乾燥させた(40℃)。XRPDによる分析を行い、出発材料と比較した。
【0104】
【表6】
このシリーズの実験についての結果(
図9)もまた、形態Iが優位であったことを示した。
【0105】
例8.非晶質材料の生成
RPL554の形態Iを245℃まで加熱して融解物を急速に冷却することにより非晶質材料を生成する歴史的な実験的証明が存在するので、この方法の繰り返しを行い(TGAベース)、同じ透明で黄色のガラス様材料を生成した。この試料をその後XRPDにより分析して、非晶質であることを示した(
図10を参照)。
この材料を、次いで、ガラス転移、および可能である場合には何らかの再結晶化を観察するために、DSC装置にかけた。結果を
図11において示す。
【0106】
提案されるガラス転移は、約120℃において観察され得、幾何学的再結晶化は観察されない。温度における安定性が潜在的問題であることが知られているため(TGAの観察)、この実験を行う一方で、試料をLC分析に供した。クロマトグラムは、複数のピークが存在し、当該材料の26%のみが出発材料であるRPL554であったことを示した。この結果は、より感受性の高い実験範囲によりクラッシュ冷却を行う必要があること、またはこの方法が無効であったことのいずれかを示した。分解を回避することによって純度に関してより良好なプロフィールを返すことを目的として、より低い温度(240℃)において実験を繰り返した。LC分析は、非常に低い純度および多様な二次生成物の同様のプロフィールを返した。したがって、この様式においては非晶質材料が生成されないであろうことが明らかであった。
【0107】
次いで非晶質相を生成するための多数の他の試みを行い、初めに、物理的操作(粉砕、加圧)、次いで、DCMおよびクメンなどの溶媒からの希釈溶液の急速蒸発を行った。この実験において、粉砕した試料(すり鉢とすりこぎ)は、非常に制電性が高く、XRPD分析のためにカプトンプレートに移すことができなかった。試料は、しかし、DSC皿へは首尾よく移された。観察された融点は参照材料よりも低く、このことは形態変化の可能性を示していた。このことをさらに検証するためには、この実験の繰り返しが必要であろう。しかし、非晶質相は、このアプローチからは得られなかった(
図12)。
【0108】
加圧(100KN):10mgのRPL554を、加圧ディスクシステムに一晩置き、厚み0.1mm未満の微細で均一なディスクを形成した。当該ディスクを、穏和に粉砕して、XRPDにより分析した(
図13)。
【0109】
加圧した材料と出発形態(CG1099F参照を用いた)とのXRPDによる比較は、結晶材料を圧縮することにより、非晶質相を生成したことを示す。これらの観察の後で、熱分析(DSC)を行い、当該材料が非晶質であったことを証明した(
図14)。
【0110】
非晶質材料からの転位は、75℃におけるTgにより示され、これは次いで、およそ131℃において結晶化し、その後242.6℃および262.7℃において連続して融解した。第1の吸熱は、参照材料よりも僅かに低いようであり、潜在的に異なる形態に関連し得た(純度の比較は、新たな形態を指定する前に行うべき賢明な研究であろう)。第2の溶解物もまた、異なる結晶体であるものと考えられ得たが、これは、この材料についての分解領域にあることを強調しなければならない。
【0111】
急速な溶媒蒸発:RPL554-070638を含むフラスコを、大容量のDCM中で、室温において完全に溶解した(290ml、2.0g)。溶媒を、次いで、RPL554-070638を完全に溶解したまま、原材料がゆっくり沈殿することおよび形態Iの存在を回避して、温度において急速に取り除いた。HPLC分析は高い化学的純度を示し、陽子NMRは微量の残留DCMを示した。
【0112】
最初のバッチのXRPDは非晶質相を示し(JN376E)、これはDSCにより確認された(
図15)。加熱プロセスは大きな発熱を誘導し、152℃における結晶化と、少々抑制されるが、その後の予測された形態Iの融解物についての吸熱とを表わす。このバッチと、加圧から誘導された非晶質材料との間のわずかな差異に留意する(最初の発熱の温度および主要な融解の後のプロフィールにおける主要な差異)。
【0113】
少量の非晶質材料を首尾よく単離して、技術を、飽和溶液およびスラリーでの作業において用いるためのグラム単位の材料にスケールアップした。このバッチについての参照XRPDプロフィール(JN376F)を、
図16において示す。
【0114】
例9.非晶質材料による飽和溶液
示したとおり、飽和溶液は、新たな多形の純粋な相を得る最も優れた方法である。このことを目的として、非晶質材料を採取し、より高い全出発濃度を得ることを目的として、飽和溶液を用いてJN376において研究を行った。
【0115】
実験(PF89):
24種の溶媒を、45℃において、30mgのRPL554(JN376F)の存在下において撹拌し、結晶相よりも初期の(より濃縮された)懸濁物を得た。溶解度を増大するため、懸濁液を4.5時間の期間にわたり加熱した。各々の試験管を、材料の完全な溶解について検査した。固体が残っている場合、既知の溶媒の追加の1mlを、完全に溶解するまで加えた。各々の試験管を評価し、その後、予温した試験管中へ高温濾過し、これを次いでゆっくりと蒸発させた。蒸発を補助するために、試験管を24時間窒素下に置いたことに留意する。この実験の結果を、以下の表(表7)において示す:
【0117】
表から、実験の一部は、分析を可能にするためには不十分な量の材料を溶解したか、または、乾燥の後で試験管の底部に油もしくは非晶質の粉末のいずれかを返したことを観察することができる。しかし、このことにも関わらず、多数の実験が、XRPD分析を収集することを可能にする材料を粉末の形態において返した。幾何学的結晶が母濃縮溶液から増加するところを示した最も成功した幾つかの実験を収集したところ、1つのみのエントリーが、何らかの関連する形態変化を示した(PF89A4、DMSO)。
【0118】
DMSOエントリーについての結果を、以下に示す。材料は形態Iに対して幾つかの類似を示す一方で、XRPDに基づいて、新たな、好ましい配向を可能にする多形が存在すると考えられる。材料のDSC分析により、主要な吸熱の開始がはるかに低い形態変化のより明らかな指標が得られた。材料は、TGAおよびNMRのためには不十分であった。この結果を、さらなる調査のためにスケールアップしたが、この材料が、同じではなく、JN376A4として、RPL554に対して改変されたプロフィールを示したことは重要である(DMSOからの飽和溶液、
図6および7)。このことは、溶媒和の相対的なレベルに起因すると考えられた。
【0119】
収集した分析の理解を助けるために、および、RPL554について予測された単位格子パラメーター(指標実験)から高品質のモデル情報が得られていた事実により、新たな相を、この理論的データと比較した。
【0120】
数値的分析は、材料の大部分が形態Iであり、一部のピークは当てはまらないことを示す。このことは、試料が2つの形態の混合物であって、一方が潜在的に溶媒和生成物であったことの強力な証拠を示した。結果は完全には報告されていないが、形態Iが全ての場合において観察され、ここでXRPDプロフィールにおいて若干の変化が注目された点は間違いない。
【0121】
例10.自動化実験(拡大した貧溶媒研究)
貧溶媒添加研究において用いた溶媒の範囲を拡大するために、および、かかる溶媒の混合を、貧溶媒の使用を介したクラッシュ冷却の代わりに、温度において行うために、実験を開始した(CG1099)。
【0122】
実験(PF85):
既定の量のRPL554(1.5g)および20mlのDMSOを、試験管に添加し、溶解を改善するために、50℃まで加熱した。200μlのストック溶液を、加熱したウェル中に置いた(50℃)。200μlの列記した溶媒(以下の表)をウェルに添加し、72時間にわたり撹拌し、その後単離した。試料を、次いで、XRPD分析のために、カプトンプレート上に移した。結果を処理して、出発材料RPL554と比較した(表8)。出発材料からXRPDが不十分であった場合、融点を定義するために熱分析を行った(材料が可能にする場合は)。
【0126】
表に集計された結果、特に収集されたDSCトレースにより示されるものから、一部の潜在的に新しいまたは混合された相を、より広範な貧溶媒ライブラリーから単離したことが観察され得る。XRPDパターンは、ピークの強度に起因して、最初は異なるように見られ得る一方で、好ましい配向の効果が存在し得るので、より深い分析が必要であり得る(自動化実験から移した結晶の視覚的観察により、好ましい配向が可能であると考えられた)(結果は示さず)。かかる分析はまた、新たなXRPDパターンと、指標から予測された形態Iのパターンとの数値的比較によっても提示した。目的は、真の新たな相の存在、または結果が実際には最初の試料からの混合物であったか否かについて、なるべく多くの質的データを得ることであった。
【0127】
平行実験PF85について、結果を、結果は、RPL554が異なる結晶形態を示す能力についての幾らかの相対的に重要な情報を提供した。組み合わせた分析ツール(XRPD/DSC)により、RPL554の形態Iの他に少なくとも5の結晶形態が潜在的に存在することが明らかとなったが、これらは大部分混合物であったと考えられる。新たな相の証拠を返した可能性が最も高く、スケールアップのために選択した実験は、以下である(他の系がこれらの結果を複製した場合もあることに留意する):
【化4】
【0128】
上記の5の形態と、計算されたRPL554の形態Iのパターンとの数値的比較
RPL554の潜在的に新たな多形および計算された形態Iのプロフィールに関するデータ(データは示さず)。この研究のために、見出された単位格子パラメーターへの照会を行い、RPL554の形態Iをインデックスづけすることを試みた。ソフトウェア中のアルゴリズムは、単位格子パラメーター、この場合は形態Iに関するものの入力を可能にする。ソフトウェアは、次いでプロフィールを計算し、これにより、ユーザーは測定されたデータと視覚的に比較することが可能になる。このアプローチは、新たな形態の存在、および/または形態Iとの共在(混合)の確認を補助する。上記の殆どの場合において、結果は、形態Iが存在し、D10についての可能性を例外として、主に新たな純粋な相よりも寧ろ混合物が提示されたことであった。上記の候補の全てを、スケールアップの標的とした。
【0129】
例11.潜在的な新たな形態のスケールアップ
新たなおよび/または混合された形態のより多くの材料を生成するために、一連のスケールアップ実験を開始した。この方法において、より詳細な研究を行い得、スラリーのクロスオーバーを試みた。かかるスケールアップは、特に、スモールスケールにおいてより安定性の低い形態が誘導されている場合は、自明ではあり得ないことに留意すべきである(プロセスの繊細さは、スケールアップが困難であることを意味する)。
【0130】
実験(PF90およびJN386):
RPL554のストック溶液を、高温のDMSO中で調製した。溶液を、ポリッシュ・フィルター濾過し、1.75ml(約200mgの含有量)を容積(4ml)の高温溶媒(55℃)へ添加した。潜在的に新たな多形を生成する条件を模倣するために、試料を撹拌し続け、長時間をかけてゆっくりと蒸発させた。沈殿後に、試料を濾過し、40℃において真空乾燥し、その後XRPDにより分析した。以下の表(表9)は、RPL554についてのスケールアップ実験を要約する。
【0132】
入手した材料により、溶媒和がXRPDプロフィールの差異(例えば、形態Iの相と溶媒和物との混合物)によるものか否か、または、それが非溶媒和の形態の混合物によるものか否かを決定するためのTGAなどの分析が適用可能となった。例えばエチルアセテートの場合、プロセスをスケールアップすることにより、形態Iが返され、したがって、元のXRPDプロフィールにおけるより顕著な差異は、形態Iと、より安定性の低い形態であって最も安定な多形へと転換されたものとの混合物に起因した可能性が高いことが観察され得る(DSCにおいて存在する融点吸熱がより低く、分解相内に存在しないことは、このことを支持する)。同じコメントは、粘性物質およびDMSOを返した酢酸を除き、混合物を返した全ての他の溶媒について真実である。この場合、形態I、および、次第に最も安定性の高い形態へ転換するであろうより安定性の低い形態の存在を確認するために十分な材料が利用可能であった。これは、PF98A4およびJN376A4においてDMSOから同定されたより安定性の低い形態とは異なり、この溶媒は、主要な形態に対して多数の変化を提供したが、スケールアップの後で、形態Iがなお主要な成分であったことに留意すべきである。
【0133】
分析(
図18および19)は、DMSOに関するスケールアップ実験に関する。
XRPDデータが、再度、形態Iに属さないピークの存在を明らかに示す。熱分析において示されたように、形態Iが大部分において存在する(246.1℃において融解が開始する)一方で、融点がより高い化合物(261℃において開始する)が共在する。重量分析は、試料中の遊離のDMSOの存在を示し、これは、TGAにおいて試料をRTから100℃まで加熱した場合窒素流下において蒸発する。このことは融点がより高い化合物における溶媒の包含とは関係し得ない。全ての遊離のDMSOは加熱により消失すると思われるが、TGA曲線は、100℃と200℃との間で、ゆっくりとした、しかし安定した重量減少を示し、これは、「含まれる」DMSOに関連し得るが、純粋な相を単離することなくしては、この推定を行うことは困難である。陽子NMRは、期待されたように、試料中のDMSOの存在を示す。
【0134】
結論として、RPL554についてのスケールアップ実験は、形態Iが、特権的、かつまた動力学的により有利であり続けることを示す。観察された混合相の大部分が形態Iに最終的に転換する可能性が高い。
【0135】
例12.水溶性
非晶質材料および形態Iを入手し、両方の試料を、そのまま、25℃における純水中での水溶性の研究に供した。結晶または非晶質の材料が、先の合成計画の間に最初に社内で単離されたか否かが未知であったため、この実験を行った。
【0136】
実験:
20mgの候補の懸濁液を、純水(1ml、pH7)と混合した。懸濁液を、25℃において24時間平衡化した。懸濁液を、次いで、HPLCバイアル中に濾過し、濾過物を、次いで、適切な倍率で希釈し、HPLCにより、標準物溶液を参照して定量を実行した。
【0138】
予測されたように、非晶質相は、殆ど不溶性であったが、この基本的な試験において形態Iよりは可溶性が高いことが証明された。不運なことに、いずれの試料も、XRPDによる再分析のために効果的に濾過して単離するためには細かすぎたが、形態Iがかかるスラリーから生じることは既知である。
【0139】
例13.X線データ:RPL554の単一結晶に関する関連パラメーター
RPL554についてのX線データは、表10〜15および
図20〜22において見出すことができる。
【表10】
【0152】
本願を通して引用される全ての参考文献(学術文献、発行された特許、公開された特許出願、および同時継続の特許出願を含む)は、本明細書により、その全体において参考として本明細書において明示的に組み込まれる。他に定義されない限りにおいて、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、当業者に一般的に知られる意味と一致する。
【0153】
当業者は、慣用的な実験のみを用いて、本明細書において記載される本発明の具体的な態様の多数の均等物を理解するか、またはそれを確認することができるであろう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲により包含されることを意図される。