(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乾燥装置は、外周面に形成された複数の環状突起部を有する第3のサポートロールを備え、前記第3のサポートロールの前記環状突起部に前記第1の面又は前記第2の面の前記スラリー未塗布部を接触させた状態で前記集電体を前記第3のサポートロールによって前記乾燥装置内を搬送することにより、前記乾燥工程が行われる請求項1〜4いずれか1項記載の電極の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
発明者らは、乾燥工程に入る前に集電体の両面にスラリーを塗布する製造方法において、集電体の斜めシワの発生の抑制について鋭意研究を続けた結果、次のような知見を得た。
【0019】
即ち、例えばアルミニウムや銅などの薄い金属箔を搬送する場合、搬送の進行方向すなわち長さ方向に張力を加えると金属箔は平面を形成するが、平面状の金属箔はその幅方向からの圧縮応力を支えることが出来ず、搬送装置上の何らかの原因によって生じる極僅かな幅方向圧縮応力によって斜めシワが発生する。一方で、金属箔を平面ではなく横断面からみて蛇行させるように搬送路を設計すると、横方向からの圧縮応力に格段に強くなる。これは、例えば、平面状の薄い金属箔に端面から力を加えると、極小さい力でも金属箔の中央が盛り上がるのに対して、円柱状に捲回した金属箔に円柱軸に平行に力を加えても座屈するまで変形しないことによって確かめることができる。
【0020】
これは、集電体にスラリーを塗布するその瞬間に置いて、集電体が平面ではなく円の一部を構成する形状となるように集電体の搬送経路を設定すれば良いことを示唆する。発明者らは、第2のサポートロールの形状と、第1,第2のサポートロールと第1,第2のダイヘッドの配置を改良することによって、塗布の均一性が改善されることを見出したのである。
【0021】
第1の実施形態の電極の製造方法を
図1〜
図8を参照して説明する。
図1に示すように、塗工装置40は、第1のダイヘッド41と、第1のサポートロール42と、第2のダイヘッド43と、第2のサポートロール44とを有する。第2のサポートロール44の後段には、搬送用ローラ45が配置されている。長尺状の集電体Cは、第1のサポートロール42、次に第1のダイヘッド41、次いで第2のダイヘッド43、次に第2のサポートロール44を通過するように搬送される。集電体Cを間に挟んだ一方の空間に第1のダイヘッド41が配置され、かつ他方の空間に第2のダイヘッド43が配置されている。このため、集電体Cが第1のダイヘッド41を通過することにより第1の面にスラリーが塗布され、集電体Cが第2のダイヘッド43を通過することにより第2の面にスラリーが塗布される。
【0022】
第1,第2のダイヘッド41,43は、スラリー供給装置(図示しない)からスラリー供給を受ける液溜め部46と、液溜め部46に連通したダイスリット47と、ダイスリット47の先端に設けられた複数のスラリー吐出口48とをそれぞれ有する。スラリー吐出口48の数は、集電体Cに塗布するスラリーの列数に応じて変更することができるため、1つまたは複数にすることができる。
図1の場合、スラリー吐出口48の数は、複数である。第1,第2のダイヘッド41,43のスラリー吐出口48と集電体Cとの間には、隙間があり、その隙間にスラリーを供給することにより、集電体Cの表面にスラリーが塗布される。第1のダイヘッド41のスラリー吐出口48から供給されるスラリーと集電体Cの第1の面が接する第2の位置をP
2とし、第2のダイヘッド43のスラリー吐出口48から供給されるスラリーと集電体Cの第2の面が接する第3の位置をP
3とする。
【0023】
第1のサポートロール42は、第1のダイヘッド41の前段に配置され、かつ第1のダイヘッド41と集電体Cを間に挟んで反対側に位置している。第1のサポートロール42は、芯金49と、芯金49を被覆する表層50とを有する。表層50の外周に、突起部が設けられていない。第1のサポートロール42と集電体Cの第
2の面とが接する第1の位置P
1と第2の位置P
2との距離L
1は、0より大きい値を持つ。換言すれば、第1の位置P
1は、第2の位置P
2と同じ平面にない。
【0024】
第2のサポートロール44は、第2のダイヘッド43の後段に配置され、かつ第2のダイヘッド43と集電体Cを間に挟んで反対側に位置している。第2のサポートロール44の回転軸Yは、第1のサポートロール42の回転軸Yと平行に配置される。
図2に示すように、第2のサポートロール44は、芯金22と、芯金22上に形成された表層23と、表層23の外周面に形成された複数の突起部24とを有する。突起部24は、それぞれ、表層23の外周面を円環状に被覆している。突起部24の間には間隔Wが設けられている。間隔Wは、集電体に塗布するスラリーの幅に応じて変更される。第2のサポートロール44と集電体Cの第2の面とが接する第4の位置P
4と第3の位置P
3との距離L
2は、0より大きい値を持つ。換言すれば、第4の位置P
4は、第3の位置P
3と同じ平面にない。
【0025】
図1に示すように、第2のダイヘッド43の後段には、乾燥装置としての乾燥炉51が配置されている。乾燥炉51内には、
図5に示すように、複数のサポートロール52が配置されている。各サポートロール52は、芯金22と、芯金22上に形成された表層23と、表層23の外周面に形成された複数の突起部24とを有する。突起部24は、それぞれ、表層23の外周面を円環状に被覆している。突起部24の間には間隔Wが設けられている。間隔Wは、集電体上のスラリー塗布部の幅に応じて変更される。
【0026】
スラリーは、例えば、活物質を含む電極材料を有機溶媒または水に分散させてスラリー状にすることにより調製される。活物質は、特に限定されるものではないが、例えば、非水電解質電池の正極活物質あるいは負極活物質を挙げることができる。
【0027】
集電体Cには、例えば、金属または合金からなる箔状のシートを用いることができる。集電体Cは、第1の面と、第1の面の反対側に位置する第2の面とを有する。
【0028】
次いで、塗工工程について説明する。集電体供給装置(図示しない)から長尺状の集電体Cを第1のサポートロール42上に供給する。スラリー供給装置から液溜め部46に供給されたスラリーは、ダイスリット47を通過した後、スラリー吐出口48を通して集電体Cの第1の面に供給される。
図6に示すように、スラリーは、集電体Cの第1の面に、スラリー塗布部Sとスラリー未塗布部Cとが集電体Cの搬送方向Xと直交する方向Aに交互に配置されるように塗布される。
【0029】
第1のダイヘッド41で第1の面にスラリーが塗布された集電体Cは、搬送ロール45によって第2のダイヘッド43に搬送される。集電体Cの第2の面には、スラリーが全く塗布されていない。第2の面は、第2のダイヘッド43と対向している。第2のダイヘッド43において、スラリー供給装置から液溜め部46に供給されたスラリーは、ダイスリット47を通過した後、スラリー吐出口48を通して集電体Cの第2の面に供給される。スラリーは、集電体Cの第2の面のうち、第1の面のスラリー塗布部と対応する箇所に塗布される。よって、集電体Cの両面に、スラリー塗布部とスラリー未塗布部とが集電体Cの搬送方向Xと直交する方向に交互に配置されるように塗布される。
【0030】
第1の位置P
1と第2の位置P
2が同じ平面になく、第1の位置P
1の高さが第2の位置P
2の高さと異なる。また、第3の位置P
3と第4の位置P
4が同じ平面になく、第3の位置P
3の高さが第4の位置P
4の高さと異なる。その結果、第1のダイヘッド41、第1のサポートロール42、第2のダイヘッド43及び第2のサポートロール44が上下方向に互い違いに配置されるため、第1のサポートロール42から第2のサポートロール44まで集電体Cを上下方向に蛇行させながら搬送することができる。その結果、搬送中に集電体Cに斜めシワが発生するのを抑えることができるため、集電体Cの第1の面及び第2の面にスラリーを均一に塗布することができる。
【0031】
第2のダイヘッド43を通過した集電体Cは、第2のサポートロール44に搬送される。
図4に示すように、集電体Cの第2の面のスラリー未塗布部Cが、第2のサポートロール44の突起部24上に配置される。また、集電体Cの第2の面のスラリー塗布部Sは、第2のサポートロール44の突起部24間に配置されている。集電体Cは、その長手方向(集電体Cの搬送方向)Xに張力が加わった状態で第2のサポートロール44の突起部24と接する。このため、集電体Cの第2の面のスラリー塗布部Sは、表層23から浮いた状態になっており、集電体Cのスラリー塗布部Sと表層23との間に空間が存在する。
【0032】
よって、乾燥させる前のスラリー塗布部の表面にロールを接触させずに、集電体を搬送することができるため、集電体の両面にスラリーを塗布した後、乾燥を行うことが可能となる。
【0033】
次いで、スラリー塗布部Sとスラリー未塗布部Cが両面に形成された集電体Cを、乾燥炉51に搬送する。集電体Cは、サポートロール52によって搬送されることで乾燥炉51を通過する。集電体Cは、乾燥炉51に入っても相当距離は表面が濡れており、その表面をロール等で支持することができない。サポートロール52の突起部24に集電体Cの第1の面または第2の面のスラリー未塗布部が接触しているため、集電体Cの搬送を安定化することができる。サポートロール52を使用する代りに、集電体Cに下から風を送ることで集電体Cの表面に直接触れることなく集電体を搬送することが可能である。この場合、集電体Cを浮上させるのに必要な風速の早い風は、スラリー塗布部の表面を急速に乾燥させてしまい、スラリー塗布部表面のヒビ割れ等の不良の原因になる恐れがある。よって、サポートロール52を使用することがより好ましい。
【0034】
上記塗工工程及び乾燥工程によって、
図7に示すように、両面に活物質含有層29が複数列形成された集電体Cを得ることができる。その後、活物質含有層29を圧縮するためにプレス成形を施した後、集電体Cと活物質含有層29との境界Zに沿って裁断することにより、
図8に示す電極30を得る。得られた電極30では、集電体Cの一方の長辺を除き、活物質含有層29が形成されている。活物質含有層29が非形成の長辺は、集電タブ31として機能する。なお、プレス成形を行う前に裁断を行うことも可能である。
【0035】
第1の位置P
1と第2の位置P
2との距離L
1が(1)式を満たすか、第3の位置P
3と第4の位置P
4との距離L
2が(2)式を満たすことが望ましい。より好ましいのは、(1)式及び(2)式の双方を満足することである。
【0036】
1mm≦L
1≦300mm (1)
1mm≦L
2≦300mm (2)
距離L
1又は距離L
2を1mm以上にすることによって、集電体の搬送経路が平面に近くならないため、搬送中の集電体に斜めシワが発生するのを抑えることができる。距離L
1又は距離L
2が大きいほうが、斜めシワ発生を抑制する効果が高くなるものの、距離が大きすぎると、装置の高さ方向の設置空間が大きくなりすぎるため、単位空間当たりの生産効率が低下する恐れがある。よって、距離L
1又は距離L
2は、1mm以上300mm以下にすることが好ましい。
【0037】
第2のサポートロール44は、下記(3)式を満たすことが望ましい。
【0038】
0.1≦(r−R)≦10 (3)
但し、
図3に示すように、rは突起部24の外径(mm)で、Rは突起部24の内径(mm)である。Rは第2のサポートロール44の表層23までの半径と等しい。
【0039】
(r−R)を0.1mm以上にすることによって、第2のサポートロール44の表層23の外周面と集電体Cのスラリー塗布部との間に十分な隙間を取ることができるため、塗布量の均一性を高くすることができる。しかし、(r−R)が大きくなる程、第2のサポートロール本体の直径が相対的に細くなり、強度が不足する恐れがある。(r−R)を10mm以下にすることによって、第2のサポートロール本体の強度を十分なものとすることができる。(r−R)のより好ましい範囲は、0.2≦(r−R)≦5である。
【0040】
第2のサポートロール44は、下記(4)式を満たすことが望ましい。
【0041】
5≦h≦50 (4)
但し、
図2に示すように、hは、第2のサポートロール44の回転軸Yと平行な、突起部24の幅(mm)である。Hは、第2のサポートロール44の回転軸Yと平行な方向の長さ(mm)である。
【0042】
hを5mm以上にすることによって、突起部24の集電体を支持する面積を十分に確保することができるため、集電体Cが突起部24に押し付けられる圧力によって突起部24の縁付近の集電体Cにシワや折り目が付くのを抑えることができる。よって、hを5mm以上にすることによって、製造不良を少なくすることができる。但し、hが大きすぎると、塗布できる電極の幅が狭くなってしまい、塗工装置の有効幅が狭くなって生産効率が低下する恐れがあるため、hは50mm以下であることが好ましい。hのより好ましい範囲は、10≦h≦40である。
【0043】
集電体Cのスラリー未塗布部Cは、第2のサポートロール44の突起部24と下記(5)式を満たすように接することが望ましい。
【0044】
0.01≦θ≦0.5 (5)
但し、θは、
図1に示すように、第2のサポートロール44の回転軸Yから見た端面における、第2のサポートロール44の突起部24に集電体Cのスラリー未塗布部Cが接している部分の円弧(回転軸Yを中心とする)の長さに対応する円周角(ラジアン)である。
【0045】
θを0.01ラジアン以上にすることによって、集電体Cを突起部24に押し付ける圧力を十分なものにすることができるため、集電体Cが突起部24から浮き上がるのを抑えることができる。その結果、集電体Cに十分な大きさの張力が加わるため、集電体Cのスラリー塗布部Sを表層23から浮いた状態で保持することができ、集電体Cのスラリー塗布部Sが表層23に付着するのを回避できる。また、θを0.5ラジアン以下にすることによって、集電体Cが突起部24に押し付けられる圧力によって突起部24の縁付近の集電体Cにシワや折り目が付くのを抑えることができるため、製造不良を少なくすることができる。θのより好ましい範囲は、0.02≦θ≦0.3である。
【0046】
第1のダイヘッド41、第1のサポートロール42、第2のダイヘッド43及び第2のサポートロール44の配置は、
図1に示すものに限定されず、例えば、
図9に示すように変更することができる。
【0047】
図9の(a)に示す配置では、集電体Cよりも上方の空間に第1のサポートロール42、第1のダイヘッド41及び第2のサポートロール44が配置されている。一方、集電体Cよりも下方の空間に第2のダイヘッド43が配置されている。集電体Cよりも上方の空間に第1のサポートロール42及び第1のダイヘッド41が配置されている場合、例えば
図10に示すように、第1のサポートロール42と集電体Cの第1の面とが接する第1の位置P
1を、第1のダイヘッド41のスラリー吐出口48から供給されるスラリーと集電体Cの第1の面が接する第2の位置P
2よりも上方に配置することにより、第1の位置P
1を第2の位置P
2と同一平面にない配置にすることができる。この場合、第1の位置P
1と第2の位置P
2との距離L
1は、0より大きい値を持つ。
【0048】
図9の(b)に示す配置では、集電体Cよりも上方の空間に第1のサポートロール42及び第1のダイヘッド41が配置されている。一方、集電体Cよりも下方の空間に第2のダイヘッド43及び第2のサポートロール44が配置されている。この場合、例えば
図11に示すように、第2のダイヘッド43のスラリー吐出口48から供給されるスラリーと集電体Cの第2の面が接する第3の位置P
3を、第2のサポートロール44と集電体Cの第2の面とが接する第4の位置P
4よりも上方に配置することにより、第3の位置P
3を第4の位置P
4と同一平面にない配置にすることができる。この場合、第3の位置P
3と第4の位置P
4との距離L
2は、0より大きい値を持つ。
【0049】
図9の(c)に示す配置では、集電体Cよりも上方の空間に第1のサポートロール42、第2のダイヘッド43及び第2のサポートロール44が配置されている。一方、集電体Cよりも下方の空間に第1のダイヘッド41が配置されている。
【0050】
図9の(d)に示す配置では、集電体Cよりも上方の空間に第1のサポートロール42及び第2のダイヘッド43が配置されている。一方、集電体Cよりも下方の空間に第1のダイヘッド41及び第2のサポートロール44が配置されている。
【0051】
図9の(e)に示す配置は、
図1と同じものである。
【0052】
図9の(f)に示す配置では、集電体Cよりも上方の空間に第1のダイヘッド41が配置されている。一方、集電体Cよりも下方の空間に第1のサポートロール42、第2のダイヘッド43及び第2のサポートロール44が配置されている。
【0053】
図9の(g)に示す配置では、集電体Cよりも上方の空間に第2のダイヘッド43及び第2のサポートロール44が配置されている。一方、集電体Cよりも下方の空間に第1のサポートロール42及び第1のダイヘッド41が配置されている。
【0054】
図9の(h)に示す配置では、集電体Cよりも上方の空間に第2のダイヘッド43が配置されている。一方、集電体Cよりも下方の空間に第1のサポートロール42、第1のダイヘッド41及び第2のサポートロール44が配置されている。
【0055】
図9の(a)〜(h)に示す配置の内、より好ましいのは、(d)または(e)の配置である。理由は、第1のサポートロール42、第1のダイヘッド41、第2のダイヘッド43、第2のサポートロール44がこの順番で集電体Cを挟んで互い違いに並んでいるために、集電体の横断面から見たときに集電体がより蛇行するように搬送路を設計しやすい。その結果、集電体に搬送方向と直交する方向から圧縮応力が加わった場合に斜めシワが発生し難く、その結果として塗布量がより均一となるからである。
【0056】
以上説明した第1の実施形態では、第1のサポートロール、第1のダイヘッド、第2のダイヘッド及び第2のサポートロールの順番に集電体を通過させることにより、集電体の第1の面及び第2の面に活物質を含むスラリーを塗布する。集電体の第1の面及び第2の面には、それぞれ、スラリー塗布部とスラリー未塗布部とが交互に形成される。集電体の第1の面
又は第2の面と第1のサポートロールとが接する第1の位置と、集電体の第1の面と第1のダイヘッドから供給されるスラリーとが接する第2の位置との距離L
1が0より大きく、かつ集電体の第2の面と第2のダイヘッドから供給されるスラリーとが接する第3の位置と、集電体のスラリー未塗布部と第2のサポートロールとが接する第4の位置との距離L
2が0より大きい。その結果、第1のサポートロールから第2のサポートロールまで集電体を端面と平行な方向に蛇行させながら搬送することができる。これにより、搬送中に集電体に斜めシワが発生するのを抑えることができるため、集電体の第1の面及び第2の面に塗布されるスラリー量の均一性を高めることができる。
【0057】
また、集電体の両面にスラリーを塗布した後、外周面に形成された複数の環状突起部を有する第2のサポートロールの環状突起部上に集電体のスラリー未塗布部を配置し、この状態で集電体を第2のサポートロールによって乾燥装置に搬送するため、集電体のスラリー塗布部を第2のサポートロールと接触させずに搬送することができる。従って、第1の面及び第2の面双方にスラリーを塗布した後、第1の面及び第2の面のスラリー塗布部を乾燥させることが可能となる。よって、集電体に塗布するスラリーの均一性が向上され、かつ作業効率に優れる電極の製造方法を提供することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によれば、正極と、負極と、非水電解質とを備える電池の製造方法が提供される。正極及び負極のうち少なくとも一方の電極は、第1の実施形態に係る方法で製造される。正極及び負極の製造に用いられるスラリー及び集電体を説明する。
【0059】
正極用スラリーは、正極活物質、導電剤及び結着剤を含む電極材料を適当な溶媒に懸濁させることにより調製される。溶媒としては例えばNメチルエチルピロリドンが挙げられる。正極活物質、導電剤、結着剤の総量と溶媒の重量比は50:50から80:20が望ましい。
【0060】
正極活物質には、一般的なリチウム遷移金属複合酸化物を使用することができる。例えば、LiCoO
2、Li
1+a(Mn,Ni,Co)
1-aO
2(0.0<a<0.2)、Li
1+bNi
1-cM
cO
2(0.0<b<0.2, 0.0<c<0.4, MはCo, Al, Feから選ばれる1つ以上)、Li
1+dMn
2-d-eM’
eO
4(M’はMg, Al, Fe, Co, Niから選ばれる1つ以上)、LiMPO
4(MはFe,Co,Ni)などである。
【0061】
導電剤は、集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑えることができる。導電剤には、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の炭素質物を挙げることができる。
【0062】
結着剤は、正極活物質と導電剤を結着させることができる。結着剤には、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム等が挙げられる。
【0063】
正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比については、正極活物質は80重量%以上95重量%以下、正極導電剤は3重量%以上18重量%以下、結着剤は2重量%以上17重量%以下の範囲にすることが好ましい。正極導電剤については、3重量%以上であることにより上述した効果を発揮することができ、18重量%以下であることにより、高温保存下での正極導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤については、2重量%以上であることにより十分な電極強度が得られ、17重量%以下であることにより、電極の絶縁体の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
【0064】
正極集電体は、アルミニウム箔若しくはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金箔が好ましい。
【0065】
負極用スラリーは、例えば、負極活物質、導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁させることにより調製される。溶媒としては例えばNメチルエチルピロリドンが挙げられる。負極活物質、導電剤、結着剤の総量と溶媒の重量比は50:50から80:20が望ましい。
【0066】
負極活物質としては、例えばチタン含有金属複合酸化物を使うことができ、リチウムチタン酸化物、酸化物合成時はリチウムを含まないチタン系酸化物などを挙げることができる。
【0067】
リチウムチタン酸化物としては、例えばスピネル構造を有するLi
4+xTi
5O
12(0≦x≦3)や、ラムステライド構造を有するLi
2+yTi
3O
7(0≦y≦3)が挙げられる。
【0068】
チタン系酸化物としては、TiO
2、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物などが挙げられる。TiO
2はアナターゼ型で熱処理温度が300〜500℃の低結晶性のものが好ましい。TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO
2−P
2O
5、TiO
2−V
2O
5、TiO
2−P
2O
5−SnO
2、TiO
2−P
2O
5−MeO(MeはCu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)などを挙げることができる。この金属複合酸化物は、結晶相とアモルファス相が共存もしくは、アモルファス相単独で存在したミクロ構造であることが好ましい。このようなミクロ構造であることによりサイクル性能が大幅に向上することができる。中でも、リチウムチタン酸化物、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物が好ましい。
【0069】
導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
【0070】
結着剤は、負極活物質と導電剤を結着させることができる。結着剤には、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム等が挙げられる。
【0071】
負極活物質、負極導電剤及び結着剤の配合比については、負極活物質は70重量%以上96重量%以下、負極導電剤は2重量%以上28重量%以下、結着剤は2重量%以上28重量%以下の範囲にすることが好ましい。負極導電剤量が2重量%未満であると、負極層の集電性能が低下し、非水電解質二次電池の大電流特性が低下する。また、結着剤量が2重量%未満であると、負極層と負極集電体の結着性が低下し、サイクル特性が低下する。一方、高容量化の観点から、負極導電剤及び結着剤は各々28重量%以下であることが好ましい。
【0072】
負極集電体には、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔等を挙げることができる。好ましい負極集電体は、1.0Vよりも貴である電位範囲において電気化学的に安定であるアルミニウム箔、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金箔である。
【0073】
第2の実施形態の方法で製造される非水電解質電池の一例を
図12、
図13に示す。
図12に示す電池は、密閉型の角型非水電解質電池である。非水電解質電池は、外装缶1と、蓋2と、正極出力端子3と、負極出力端子4と、電極群5とを備える。
図12に示すように、外装缶1は、有底角筒形状をなし、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄あるいはステンレスなどの金属から形成される。
【0074】
図13に示すように、偏平型の電極群5は、正極6と負極7がその間にセパレータ8を介して偏平形状に捲回されたものである。正極6は、例えば金属箔からなる帯状の正極集電体と、正極集電体の集電体露出部からなる正極集電タブ6aと、少なくとも正極集電タブ6aの部分を除いて正極集電体に形成された正極活物質含有層6bとを含む。一方、負極7は、例えば金属箔からなる帯状の負極集電体と、負極集電体の集電体露出部からなる負極集電タブ7aと、少なくとも負極集電タブ7aの部分を除いて負極集電体に形成された負極活物質含有層7bとを含む。
【0075】
このような正極6、セパレータ8及び負極7は、正極集電タブ6aが電極群の捲回軸方向にセパレータ8から突出し、かつ負極集電タブ7aがこれとは反対方向にセパレータ8から突出するよう、正極6及び負極7の位置をずらして捲回されている。このような捲回により、電極群5は、
図13に示すように、一方の端面から渦巻状に捲回された正極集電タブ6aが突出し、かつ他方の端面から渦巻状に捲回された負極集電タブ7aが突出している。
【0076】
電解液(図示しない)は、電極群5に含浸されている。矩形板状の蓋2は、外装缶1の開口部に例えばレーザでシーム溶接される。蓋2は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄あるいはステンレスなどの金属から形成される。蓋2と外装缶1は、同じ種類の金属から形成されることが望ましい。
【0077】
図12に示すように、蓋2の外面の中央付近に安全弁9が設けられている。安全弁9は、蓋2の外面に設けられた矩形状の凹部9aと、凹部9a内に設けられたX字状の溝部9bとを有する。溝部9bは、例えば、蓋2を板厚方向にプレス成型することにより形成される。注液口10は、蓋2に開口され、電解液の注液後に封止される。
【0078】
蓋2の外面には、安全弁9を間に挟んだ両側に正負極出力端子3,4が絶縁ガスケット(図示しない)を介してかしめ固定されている。負極活物質に炭素系材料を使用するリチウムイオン二次電池の場合、正極出力端子3には、例えば、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が使用され、負極出力端子4には、例えば、銅、ニッケル、ニッケルメッキされた鉄などの金属が使用される。また、負極活物質にチタン酸リチウムを使用する場合は、上記に加え、負極出力端子4にアルミニウムあるいはアルミニウム合金を使用してもかまわない。
【0079】
正極リード11は、一端が、正極出力端子3にかしめ固定あるいは溶接によって電気的に接続され、かつ他端が正極集電タブ6aに電気的に接続されている。負極リード12は、一端が、負極出力端子4にかしめ固定あるいは溶接によって電気的に接続され、かつ他端が負極集電タブ7aに電気的に接続されている。正負極リード11,12を正負極集電タブ6a,7aに電気的に接続する方法は、特に限定されるものではないが、例えば超音波溶接やレーザ溶接等の溶接が挙げられる。
【0080】
このように、正極出力端子3と正極集電タブ6aとが正極リード11を介して電気的に接続され、負極出力端子4と負極集電タブ7aとが負極リード12を介して電気的に接続されることにより、正負極出力端子3,4から電流を取り出せるようになる。
【0081】
正負極リード11,12の材質は、特に指定しないが、正負極出力端子3,4と同じ材質にすることが望ましい。例えば、出力端子の材質がアルミニウム又はアルミニウム合金の場合は、リードの材質をアルミニウム、アルミニウム合金にすることが好ましい。また、出力端子が銅の場合は、リードの材質を銅などにすることが望ましい。
【0082】
ここで、セパレータ及び非水電解質について説明する。
【0083】
(セパレータ)
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンからなる多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であり、安全性向上の観点から好ましい。また中でも、セルロースからなる多孔質フィルムは空隙率が同じ厚さの他の材質のセパレータに比べてより多くの電解質を含むことができるために電解質中のLiイオン伝導度が相対的に高くでき、大電流を流す必要のある高出力型の非水電解質電池には最もこのましい。
【0084】
(非水電解質)
非水電解質としては、電解質を有機溶媒に溶解することにより調整される液状非水電解質、液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質等が挙げられる。
【0085】
液状非水電解質は、電解質を0.5mol/l以上2.5mol/l以下の濃度で有機溶媒に溶解することにより、調製される。
【0086】
電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミトリチウム[LiN(CF
3SO
2)
2]等のリチウム塩、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF
6が最も好ましい。
【0087】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等の鎖状カーボネートや、テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)等の環状エーテルや、ジメトキシエタン(DME)、ジエトエタン(DEE)等の鎖状エーテルや、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)等の単独若しくは混合溶媒を挙げることができる。
【0088】
高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0089】
なお、非水電解質として、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、無機固体電解質等を用いてもよい。
【0090】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃〜25℃)で液体として存在しうる化合物を指す。常温溶融塩としては、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩等が挙げられる。なお、一般に、非水電解質電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に、4級アンモニウム骨格を有する。
【0091】
高分子固体電解質は、電解質を高分子材料に溶解し固体化し調製する。
【0092】
無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する固体物質である。
【0093】
図12及び
図13では、電池の外装部材に外装缶を用いた例を説明したが、外装部材として用いることが可能なものは外装缶に限らず、例えば、ラミネートフィルム製容器を使用することができる。ラミネートフィルムは、金属層と金属層を被覆する樹脂層とからなる多層フィルムである。軽量化のために、金属層はアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、金属層を補強するためのものであり、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより成形する。
【0094】
電池の形状は、
図12及び
図13に示す角型電池に限らず、例えば、扁平型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型等が挙げられる。なお、無論、携帯用電子機器等に積載される小型電池の他、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池にも実施形態の電池は適用可能である。
【0095】
以上説明した第2の実施形態によれば、正極または負極を、第1の実施形態の方法で製造するため、スラリー塗布量の均一性が向上された正極または負極を製造することができる。その結果、大電流で充電放電を繰返した後の容量劣化の少ない非水電解質電池を得ることができる。
【実施例】
【0096】
以下に実施例を説明するが、実施形態の主旨を超えない限り、実施形態は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
【0097】
(実施例1)
正極活物質LiCoO
2、正極導電剤としてアセチレンブラックと黒鉛、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)をNメチルエチルピロリドンに分散させて正極スラリーを作った。スラリーを塗布する支持体ともなる正極集電体には厚さ20μm、幅600mmのアルミニウム箔を使った。
【0098】
第1のサポートロールは半径35mmの円柱状であった。
【0099】
第2のサポートロールには、芯金と、芯金を被覆する金属製表層と、表層の外周面に形成された環状突起部とを有するものを使用した。環状突起部の内径(表層までの半径)Rが35mmで、環状突起部の外径rが36mmで、(r−R)の値は1mmであった。第2のサポートロールの全長Hが800mmであった。突起部は4つ設けた。各突起部の幅hは20mmであった。突起部の同士の間隔は総て150mmの等間隔とした。
【0100】
第1,第2のサポートロール及び第1,第2のダイヘッドは、
図1に示すように配置し、距離L
1及び距離L
2をそれぞれ10mmにした。
【0101】
第1のダイヘッドを用いて集電体の第1の面に幅145mmでスラリーを塗工した。次いで、第2のダイヘッドを用いて集電体の第2の面に第1の面のスラリー塗布部と重なる箇所に幅145mmでスラリーを塗工した。集電体の両面に、スラリー塗布部とスラリー未塗布部とが集電体の搬送方向と直交する方向に交互に配置されるように塗布された。
【0102】
両面にスラリーが塗布された集電体を、第2のサポートロールに抱き角度θが0.2ラジアンとなるように接触させ、乾燥炉に搬送した。この際、集電体の第2の面のスラリー未塗布部を、第2のサポートロールの突起部24と接触させた。
【0103】
集電体の第1の面及び第2の面のスラリー塗布部を、
図5に示す乾燥炉を用いて乾燥させた。次いで、第1の面及び第2の面の塗布量の分布を調べたところ、
図14に示すような分布になっていた。
【0104】
乾燥工程後、プレス成形及び裁断工程を行うことにより、正極を得た。得られた正極と、負極と、非水電解液と、セパレータとをアルミニウム含有ラミネートフィルム製容器に密封して非水電解質電池を製造した。そして、5時間率の電流で1000回の充放電を繰返した。最初の放電容量を100とした時、1000回目の放電容量は80であった。
【0105】
(実施例2〜9)
(r−R)、h、L
1、L
2及びθの値を下記表1に示すように変更すること以外は、実施例と同じようにして正極及び非水電解質電池の製造を行い、実施例と同様な条件で充放電を行った。最初の放電容量を100とした時の1000回目の放電容量を下記表1に示す。
【0106】
(比較例)
図16に示す塗工装置及び乾燥装置を用いること以外は、実施例1と同様にしてスラリーの塗工を行った。
図16に示すように、第1のダイヘッド41とバックアップロール53とからなるダイコーター、搬送ロール45、サポートロール54、第2のダイヘッド43をこの順番で配置した。バックアップロール53及びサポートロール54は、それぞれ、芯金49と、芯金49を被覆する表層50とを有する。表層50の外周に、突起部が設けられていない。バックアップロール53及びサポートロール54の半径は200mmであった。集電体Cの第1の面にダイコーターによってスラリーが塗布された後、集電体Cは搬送ロール45、次いでサポートロール54を通過し、第2の面にスラリーが第2のダイヘッド43によって塗布された。
【0107】
集電体の第1の面及び第2の面のスラリー塗布部を、
図5に示す乾燥炉を用いて乾燥させた。次いで、第1の面及び第2の面の塗布量の分布を調べたところ、
図15に示すような分布になっていた。
図15を実施例1についての塗布量の分布を示す
図14の結果と比較すると、比較例の塗布量の分布が実施例1よりも著しく不均一であることがわかる。
【0108】
乾燥工程後、プレス成形及び裁断工程を行うことにより、正極を得た。得られた正極を用いて実施例1と同様にして非水電解質電池を製造した。実施例と同じ条件で充放電を繰り返したところ、最初の放電容量を100とした時、1000回目の放電容量は65であった。実施例に比べて1000回目の放電容量は小さくなっており、劣化がより進んだことがわかる。
【表1】
【0109】
表1から明らかなように、実施例1〜9の方法によると、大電流で充電放電を繰返した後の容量劣化を少なくすることができる。これに対し、集電体の搬送経路を平面とした比較例によると、大電流で充電放電を繰返した後の容量劣化が実施例1〜9に比して大きかった。
【0110】
以上説明した少なくとも一つの実施形態の電極の製造方法によれば、第1のサポートロール、第1のダイヘッド、第2のダイヘッド及び第2のサポートロールの順番に集電体を通過させることにより、集電体の第1の面及び第2の面に活物質を含むスラリーを塗布する。このような方法において、集電体の第1の面
又は第2の面と第1のサポートロールとが接する第1の位置と、集電体の第1の面と第1のダイヘッドから供給されるスラリーとが接する第2の位置との距離L
1が0より大きく、かつ集電体の第2の面と第2のダイヘッドから供給されるスラリーとが接する第3の位置と、集電体のスラリー未塗布部と第2のサポートロールとが接する第4の位置との距離L
2が0より大きいため、第1のサポートロールから第2のサポートロールまで集電体を端面と平行な方向に蛇行させながら搬送することができる。これにより、搬送中に集電体に斜めシワが発生するのを抑えることができるため、集電体の第1の面及び第2の面のスラリー塗布量の均一性を向上することができる。また、第2のサポートロールの外周面に複数の環状突起部が形成されているため、スラリー塗布部の乾燥を集電体の両面同時に行うことができる。これにより、作業効率を高めることができる。よって、作業効率に優れ、かつスラリー塗布量の均一性が向上された電極の製造方法を提供することが可能となる。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 第1のサポートロールにより集電体を第1のダイヘッドに搬送する工程と、
前記集電体の第1の面に、活物質を含むスラリーを、スラリー塗布部とスラリー未塗布部とが前記集電体の搬送方向と直交する方向に交互に配置されるように前記第1のダイヘッドを用いて塗布する工程と、
前記集電体の第2の面に前記スラリーを、スラリー塗布部とスラリー未塗布部とが前記集電体の搬送方向と直交する方向に交互に配置されるように第2のダイヘッドを用いて塗布する工程と、
外周面に形成された複数の環状突起部を有する第2のサポートロールの前記環状突起部上に前記集電体の前記第1の面または前記第2の面の前記スラリー未塗布部を配置し、前記集電体を前記第2のサポートロールによって乾燥装置に搬送する工程と、
前記集電体の前記第1の面及び前記第2の面の前記スラリー塗布部を前記乾燥装置で乾燥させる工程と
を備え、かつ下記(1)式及び(2)式を満たす、電極の製造方法。
0<L1 (1)
0<L2 (2)
但し、L1は、前記集電体の前記第1の面と前記第1のサポートロールとが接する第1の位置と、前記集電体の前記第1の面と前記第1のダイヘッドから供給される前記スラリーとが接する第2の位置との距離で、L2は、前記集電体の前記第2の面と前記第2のダイヘッドから供給される前記スラリーとが接する第3の位置と、前記集電体の前記第1の面または前記第2の面の前記スラリー未塗布部と前記第2のサポートロールとが接する第4の位置との距離である。
[2] 距離L1が1mm≦L1≦300mmを満たし、かつ距離L2が1mm≦L2≦300mmを満たす、[1]記載の電極の製造方法。
[3] 前記第2のサポートロールが下記(3)式を満たす、[2]記載の電極の製造方法。
0.1≦(r−R)≦10 (3)
但し、rは前記環状突起部の外径(mm)で、Rは前記環状突起部の内径(mm)である。
[4] 前記第2のサポートロールが下記(4)式を満たす[2]記載の電極の製造方法。
5≦h≦50 (4)
但し、hは前記環状突起部の幅(mm)である。
[5] 前記集電体の前記第1の面または前記第2の面の前記スラリー未塗布部は、前記第2のサポートロールの前記環状突起部と下記(5)式を満たすように接する[2]記載の電極の製造方法。
0.01≦θ≦0.5 (5)
但し、θは、前記第2のサポートロールの前記環状突起部に前記スラリー未塗布部が接している部分の円弧の長さに対応する円周角(ラジアン)である。
[6] 前記乾燥装置は、外周面に形成された複数の環状突起部を有する第3のサポートロールを備え、前記第3のサポートロールの前記環状突起部に前記第1の面又は前記第2の面の前記スラリー未塗布部を接触させた状態で前記集電体を前記第3のサポートロールによって前記乾燥装置内を搬送することにより、前記乾燥工程が行われる請求項[3]〜[5]いずれかに記載の電極の製造方法。
[7] 正極、負極及び非水電解質を備える非水電解質電池の製造方法であって、
前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方の電極を、[1]〜[6]いずれかに記載の方法で製造する非水電解質電池の製造方法。