特許第6038863号(P6038863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038863
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】治療剤の送達のためのMEMSデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20161128BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20161128BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A61M5/142 524
   A61F9/007 170
   A61M37/00 560
【請求項の数】9
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-243800(P2014-243800)
(22)【出願日】2014年12月2日
(62)【分割の表示】特願2009-500481(P2009-500481)の分割
【原出願日】2007年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-83146(P2015-83146A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2014年12月2日
(31)【優先権主張番号】60/781,969
(32)【優先日】2006年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510090748
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ サザン カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】メン,エリス
(72)【発明者】
【氏名】タイ,ユー−チョン
(72)【発明者】
【氏名】フマヤン,マーク エス.
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル,ラジャ
(72)【発明者】
【氏名】ロー,ロナリー
(72)【発明者】
【氏名】サイ,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】クワハラ,ケンリック
(72)【発明者】
【氏名】リー,ポー−イン
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー,ダミエン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ポー−ジュイ
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特公平06−093915(JP,B2)
【文献】 特開平03−041967(JP,A)
【文献】 特表2003−501156(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/002878(WO,A2)
【文献】 国際公開第01/066173(WO,A1)
【文献】 特開2005−052656(JP,A)
【文献】 特表2001−518880(JP,A)
【文献】 特表2006−526449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61F 9/007
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の眼に埋め込まれることになる埋め込み型デバイスであって、
前記患者の眼に投与されるべき液体を収容するための薬物チャンバと、
前記チャンバと流体連通するカニューレと、
前記薬物チャンバに隣接した電解チャンバであって、その中に第1および第2の電極が配された電解チャンバと、
前記第1および第2の電極に電流を印加し、該第1および第2の電極と通電可能な作動流体からガスを生成する回路構成と、
前記薬物チャンバと前記電解チャンバとの間に配された柔軟性の波形膜であって、圧力の増減とともに伸縮するように構成され、前記電解チャンバ内での前記ガスの発生により、前記膜が伸張され液体が前記薬物チャンバから前記カニューレ内へ流されるようにし、且つ前記電解チャンバ内の前記ガスの再結合により前記膜が収縮して液体が前記薬物チャンバから前記カニューレ内へ流されることを停止する、膜とを備え、
前記膜が、一連の、半径方向に同心の波形状を有し、その半径方向に同心の波形状が、(a)圧力の増加により、実質的に平らな形状から膨張した形状への前記膜の膨張、及び(b)圧力の減少により、前記膨張した形状から前記実質的に平らな形状への前記膜の収縮を促進する、埋め込み型デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の埋め込み型デバイスであって、
前記膜はパリレン(登録商標)である、埋め込み型デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の埋め込み型デバイスであって、
前記第1の電極および前記第2の電極は、ともに平面状である、埋め込み型デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の埋め込み型デバイスであって、
前記第1の電極および前記第2の電極は、互いに噛み合わされている、埋め込み型デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の埋め込み型デバイスであって、さらに、
電流を印加することで前記一対の電解電極を動作させるためのワイヤレス動作式回路構成を備える、埋め込み型デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の埋め込み型デバイスであって、さらに、
前記回路構成に電力供給するためのワイヤレス充電式電池を備える、埋め込み型デバイス。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の埋め込み型デバイスであって、
前記回路構成は、前記一対の電解電極に印加される電流を制御し、それにより圧力生成の時間的なパターンを制御し、投与量および放出を制御する、埋め込み型デバイス。
【請求項8】
請求項5〜7の何れかに記載の埋め込み型デバイスであって、さらに、
フィードバック制御のためのセンサを備える埋め込み型デバイス。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の埋め込み型デバイスであって、
前記液体は薬物を含む、埋め込み型デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本出願は、2007年3月14日に出願され「Provisional Patent Report: Implantab le MEMS Ocular Drug Delivery System(仮特許報告:埋め込み型MEMS眼薬送達システム)」と題された米国仮特許出願第60/781,969号の利益を主張するものである。該仮出願は、引用によってその全体を本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
[連邦支援R&Dに関する記述]
本明細書に記載された発明に通じる研究は、米国政府の支援を受けており、ゆえに、米国政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、概して、治療剤を患者に送達するためのデバイスおよび方法に関し、より具体的には、埋め込みデバイスによる治療剤の送達に関する。
【0004】
医学的治療は、体の特定部分への治療剤(例えば薬剤、薬物)の投与をしばしば必要とする。薬物を系統的に送達する医療行為においては、長らく、静脈注射が主力であった。しかしながら、疾病のなかには、よりアクセス実現困難な解剖領域または解剖部分への薬物の投与を必要とする場合がある。
【0005】
眼は、アクセスを制約される解剖領域の典型例である。糖尿病網膜症や黄斑変性症などの眼病変は、血管系と流体連通しない硝子体液への薬物の投与によって、最も良く治療される。このような投与は、薬物をそれが必要とされる場所に直接送達するのみならず、重要なことに、薬物およびその不可避な副作用への体のその他の部分の曝露を最小限に抑える。
【0006】
患者の体への(例えば眼の硝子体液への)注射は、医学的にふさわしい一方で、薬物のボーラス投与を送達する。しかしながら、多くの場合、薬物のボーラス投与は望ましくない。例えば、薬物は、体に最適に投与される最大濃度を制限する濃度依存性の副作用をしばしば有する。特定の薬物は、濃度が所定期間にわたって閾値を超える場合にのみ治療効果を発揮する。このような薬物の場合は、ボーラス注射の濃度が時間とともに指数関数的に減衰するゆえに、反復注射によって、体内において所望の薬物濃度を維持する必要があるであろう。反復注射は、受診を繰り返す費用および不便を課すのみならず、注射自体の不快感もともなう。また、眼内治療に関しては、反復投与は、感染、大出血、または網膜剥離を通じて眼が損傷されるリスクを増大させる。
【0007】
これらの問題は、治療および/または予防維持のために薬物の長期投与を必要とする慢性疾患の場合にとりわけ深刻である。糖尿病などのその他の慢性病は、現在では、治療剤を時間をかけて徐々に送達するデバイスによって治療されており、これは、反復ボーラス投与に関連した「鋸歯」パターンを回避する、または少なくとも軽減する。
【0008】
特定の実施形態において、治療剤を患者に送達するための埋め込み型デバイスが提供される。該デバイスは、治療剤を含む液体を含有するように構成されたリザーバを含む。デバイスは、さらに、リザーバと流体連通するカニューレを含み、該カニューレは、患者と流体連通するように構成された出口を有する。デバイスは、さらに、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な可動要素を含む弁を含む。可動要素は、オリフィスを穿たれ、液体は、可動要素が第1の位置にあるときはオリフィスを通って出口へ流れ、可動要素が第2の位置にあるときはオリフィスを通って出口へ流れない。
【0009】
特定の実施形態において、治療剤を患者に送達するための埋め込み型デバイスが提供される。該デバイスは、治療剤を含む液体を含有するように構成されたリザーバを含む。デバイスは、さらに、リザーバと流体連通するカニューレを含む。該カニューレは、患者と流体連通するように構成された出口を有する。デバイスは、さらに、第1の電極および第2の電極を含み、これら第1の電極および第2の電極の少なくとも1つは平面状である。デバイスは、さらに、第1および第2の電極を通電させる材料を含む。第1の電極と第2の電極との間に印加される電圧は、材料からガスを生成し、該ガスは、リザーバから出口へと液体を流れさせる。
【0010】
特定の実施形態において、患者に治療剤を送達するための埋め込み型デバイスを製造する方法が提供される。該方法は、複数の構造層を形成することを含む。方法は、さらに、液体を含有するように構成されたリザーバと、該リザーバと流体連通するカニューレとを形成するために、複数の構造層を接合することを含み、該カニューレは、患者と流体連通するように構成された出口を有する。
【0011】
特定の実施形態において、患者に治療剤を送達するための方法が提供される。該方法は、患者の中または上に埋め込まれるデバイスを提供することを含む。該デバイスは、治療剤を含む液体を含有するリザーバを含む。デバイスは、さらに、リザーバと流体連通するカニューレを含み、該カニューレは、患者と流体連通する出口を有する。デバイスは、さらに、第1の電極、第2の電極、ならびに第1および第2の電極を通電させる材料とを含む。方法は、さらに、材料からガスを生成するために、第1の電極と第2の電極との間に第1の電圧を印加することを含み、ガスは、リザーバから出口へ液体を流れさせる。方法は、さらに、ガスから材料を生成するために、第1の電極と第2の電極との間に第2の電圧を印加することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した代表的な薬物送達デバイスを形成する3枚の層の分解図を示している。
図2】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した組み立てされた代表的な薬物送達デバイスを示している。
図3】代表的な薬物送達デバイスを眼の中に埋め込むための代表的な位置を示している。
図4】(i)20ゲージの標準針、(ii)30ゲージのノンコアリング針、および(iii)30ゲージのコアリング針を使用した穿刺後におけるポリジメチルシロキサンの断面図の光学顕微鏡像を示している。
図5図2に描かれたデバイスの断面図を示している。
図6A】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した代表的な弁の動作の断面図を示している。
図6B】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した代表的な弁の動作の断面図を示している。
図7】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した組み立てされた弁の一実施形態の顕微鏡写真である。
図8】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった代表的な弁の動作を示した一連の顕微鏡写真である。
図9】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した組み立てされた眼内薬物送達デバイスの一例を示している。
図10】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用を用いた代表的デバイスを概略的に示している。
図11】代表的なデバイスの基層を示しており、一体化された薬物送達カニューレおよび電解用電極が示されている。
図12A】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、リザーバキャップの隣りの基層および組み立てされたリザーバの一例をそれぞれ示している。
図12B】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、リザーバキャップの隣りの基層および組み立てされたリザーバの一例をそれぞれ示している。
図13A】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した代表的な電解式マイクロポンプを概略的に示している。
図13B】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した代表的な電解式マイクロポンプを概略的に示している。
図14A】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した代表的な電解式マイクロポンプの上面図および切断側面図を示している。
図14B】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した代表的な電解式マイクロポンプの上面図および切断側面図を示している。
図15A】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した薬物リザーバおよびポンプチャンバの一連の切断図を示している。
図15B】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した薬物リザーバおよびポンプチャンバの一連の切断図を示している。
図15C】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した薬物リザーバおよびポンプチャンバの一連の切断図を示している。
図15D】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した薬物リザーバおよびポンプチャンバの一連の切断図を示している。
図16A】薬物リザーバ、カニューレ、弁、ポンプ、詰め替え口、および縫合タブをともなう薬物送達システムの一例の様々な図を示している。
図16B】薬物リザーバ、カニューレ、弁、ポンプ、詰め替え口、および縫合タブをともなう薬物送達システムの一例の様々な図を示している。
図16C】薬物リザーバ、カニューレ、弁、ポンプ、詰め替え口、および縫合タブをともなう薬物送達システムの一例の様々な図を示している。
図16D】薬物リザーバ、カニューレ、弁、ポンプ、詰め替え口、および縫合タブをともなう薬物送達システムの一例の様々な図を示している。
図16E】薬物リザーバ、カニューレ、弁、ポンプ、詰め替え口、および縫合タブをともなう薬物送達システムの一例の様々な図を示している。
図16F】薬物リザーバ、カニューレ、弁、ポンプ、詰め替え口、および縫合タブをともなう薬物送達システムの一例の様々な図を示している。
図16G】薬物リザーバ、カニューレ、弁、ポンプ、詰め替え口、および縫合タブをともなう薬物送達システムの一例の様々な図を示している。
図16H】薬物リザーバ、カニューレ、弁、ポンプ、詰め替え口、および縫合タブをともなう薬物送達システムの一例の様々な図を示している。
図16I】薬物リザーバ、カニューレ、弁、ポンプ、詰め替え口、および縫合タブをともなう薬物送達システムの一例の様々な図を示している。
図17】本明細書において説明される特定の実施形態に適合した、リザーバ上の注入口の1タイプの内部構造を示している。
図18A】シリコンマスクを製造するためおよび型取りされたポリジメチルシロキサン層を作成するための代表的なプロセスフローを示している。
図18B】シリコンマスクを製造するためおよび型取りされたポリジメチルシロキサン層を作成するための代表的なプロセスフローを示している。
図18C】シリコンマスクを製造するためおよび型取りされたポリジメチルシロキサン層を作成するための代表的なプロセスフローを示している。
図18D】シリコンマスクを製造するためおよび型取りされたポリジメチルシロキサン層を作成するための代表的なプロセスフローを示している。
図18E】シリコンマスクを製造するためおよび型取りされたポリジメチルシロキサン層を作成するための代表的なプロセスフローを示している。
図18F】シリコンマスクを製造するためおよび型取りされたポリジメチルシロキサン層を作成するための代表的なプロセスフローを示している。
図18G】シリコンマスクを製造するためおよび型取りされたポリジメチルシロキサン層を作成するための代表的なプロセスフローを示している。
図18H】シリコンマスクを製造するためおよび型取りされたポリジメチルシロキサン層を作成するための代表的なプロセスフローを示している。
図18I】シリコンマスクを製造するためおよび型取りされたポリジメチルシロキサン層を作成するための代表的なプロセスフローを示している。
図18J】シリコンマスクを製造するためおよび型取りされたポリジメチルシロキサン層を作成するための代表的なプロセスフローを示している。
図18K】シリコンマスクを製造するためおよび型取りされたポリジメチルシロキサン層を作成するための代表的なプロセスフローを示している。
図19A】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19B】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19C】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19D】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19E】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19F】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19G】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19H】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19I】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19J】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19K】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19L】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図19M】本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプ作用のための電極と一体型のカニューレとを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製造するための、代表的なプロセスフローを示している。
図20】ブタの眼におけるデバイスの生体外試験を示しており、電気分解式に推進される、前房内への染色脱イオン水の送達が示されている。
図21A】除核されたブタの眼の中に埋め込まれた代表的デバイスについて、約30nL/分のマイクロピペットにおいて水蒸発速度を較正された蒸発補正後における、電流制御による流れ送達を示している。
図21B図21Aの代表的なデバイスの低流量動作を示している。
図21C図21Aの代表的なデバイスについて、流れ送達データから計算されたポンプ効率を示している。
図21D図21Aの代表的なデバイスにおいて観測された代表的なガス再結合を示している。10分間にわたって50マイクロアンペアの電流が印加され、次いでオフにされた。
図22】電流パルスを使用した250nLのボーラス送達を示している。
図23】生理的背圧下における流動性能を示している(平均±標準誤差、n=4)。
【0013】
別段の定めのない限り、本明細書において使用される技術的用語は、当業者にとって、「McGraw-Hill Dictionary of Scientific and Technical Terms, 6th edition(マグローヒル科学技術用語大辞典第6版)」に明記された意味を非限定的に含む最も広範な意味を有するものとする。
【0014】
生体内持続放出インプラントは、新しい有望な技術である。大部分は、最小限の挿入手術を用いる。これらのインプラントには、サイズと反復使用との間にトレードオフがある。小サイズのデバイスは、快適さを提供するが、薬物の含有量に限りがあるので、交換が必要となる。大サイズのデバイスは、交換を必要とせず、その代わりに詰め替え可能である。慢性の眼疾患(例えば緑内障)に対する特定の薬品治療は、眼への反復投与の送達を必要とする。このようなデバイスは、また、眼の空間的制約ゆえに、小サイズであることが有利である。したがって、本明細書において説明される特定の実施形態では、眼のための薬物送達システムにおいて、サイズが小さいことと、リザーバが詰め替え可能であることとを有利に組み合わせている。
【0015】
眼のための薬物送達デバイスには、特に厳しい要件がある。疑いもなく、このようなデバイスは、どれも、眼の中におけるその存在の不快性を最小にするために、できるだけ小さく製造することが有利である。他方で、デバイスは、薬物の供給が枯渇して、デバイスを交換または詰め替えしなければならなくなるまでの時間を最長にするために、できるだけ多量の薬物を保持していることが有利である。これらの互いに相反する要件は、眼内に薬物を送達するための実用的な詰め替え可能デバイスを設計するという課題を大幅に複雑化する。また、眼内への投薬治療などの一部の応用では、さらに深刻な問題が提起される。反復注射は、デリケートな眼組織を容易に損傷させ、その結果、大出血、感染、および白内障を引き起こす可能性がある。また、体には、単純に注射によって到達することが不可能な領域がある。
【0016】
したがって、患者の体に薬物を送達するためのデバイスであって、特定の実施形態では、サイズは小さいものの交換を必要とすることなく十分な量の薬物をより長い期間にわたって送達することができるような、デバイスが必要とされている。本明細書において説明される特定の実施形態は、サイズが小さいと同時に詰め替え可能であり、したがって、交換ではなくその場での詰め替えによって薬物の溶液などの流体をより長い期間にわたって供給することができるような、埋め込み型薬物送達デバイスを提供することによって、この必要性に応じている。本明細書において説明される特定の実施形態は、詰め替えのために針で刺すことができる自己再封性の上層と、針の穿刺に抵抗することによって詰め替えプロセス中における不慮の負傷から眼を保護する下層と、を有するリザーバをともなったデバイスを提供する。
【0017】
本明細書において説明される特定の実施形態は、詰め替え可能リザーバと、カニューレと、弁と、を含む埋め込み型眼内薬物送達システムを提供する。詰め替え可能リザーバは、送達されるべき流体を保持し、カニューレは、その流体を標的部位に向けて方向付け、弁は、流体がいつ送達されるかを制御して逆流を阻止する。特定の実施形態のカニューレは、眼へのその挿入を促進するために、先細にされている。一般に、流体は、1つまたは複数の薬物を含有している。本明細書において使用される「薬物」という用語は、当業者にとって、製剤原料、薬剤、治療剤、およびこのような物質を含有する流体を非限定的に含む最も広義な意味を有するものとする。
【0018】
図1および図2は、本明細書において説明される特定の実施形態に適合した代表的なデバイス5の分解図および組み立て図をそれぞれ概略的に示している。デバイス5は、治療剤を含む液体を含有するように構成されたリザーバ100を含む。デバイス5は、さらに、リザーバ100と流体連通するカニューレ110を含む。カニューレ110は、患者と流体連通するように構成された出口115を有する。デバイス5は、さらに、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な可動要素を含む弁120を含む。可動要素は、オリフィス40を穿たれている。液体は、可動要素が第1の位置にあるときはオリフィス40を通って出口115へ流れる。液体は、可動要素が第2の位置にあるときはオリフィス40を通って出口115へ流れない。
【0019】
図3は、本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、眼に埋め込まれる代表的デバイス5を概略的に示している。図3のデバイス5は、眼の結膜にあてがわれ、カニューレ110は、挿入され眼の後房内に達する。より完全に後ほど説明されるように、特定の実施形態のリザーバ100は、リザーバ100のための注射口として機能する第1の壁10の針穿刺可能部分を含む。デバイス5は、カニューレ110および弁120を通じて後房に流体を投与する。弁120は、この実施形態では、後房に挿入されるカニューレ110の端117またはその近くに位置している。その他の特定の実施形態では、デバイス5は、水晶体によって後房から隔てられた眼の前房に流体を投与するために使用することができる。その他の特定の実施形態では、デバイス5は、体のその他の部分に埋め込まれる(例えば、化学療法を提供するために、脳のクモ膜下腔内の空間に埋め込まれる、またはインスリンの分泌を促す材料(例えばたんぱく質、ウィルスベクターなど)を提供するために、β細胞に隣接するグルコースに上手く応答しない脾臓内に埋め込まれる)。特定の実施形態において、デバイス5は、有利に詰め替え可能である。このような特定の実施形態では、リザーバ100は、針(不図示)によって一般に穿刺可能な第1の壁10を含み、それによって、針を通したリザーバ100の詰め替えを可能にしている。特定の実施形態の第1の壁10の少なくとも一部は、針によって穿刺可能でなおかつ針の除去に際して自身を再封するソフトプラスチック材料を含み、それによって、第1の壁10の自己封止部分を提供している。自己封止材料は、複数回の穿刺に耐えることができるリザーバ詰め替え部分を有利に提供し、二重に適合性である。本明細書において説明される特定の実施形態に適合したこのような材料の例は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリロニトリルのコポリマー、ポリ塩化ビニルのコポリマー、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリ酪酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、セルロース、ゼラチン、シリコーンゴム、および多孔質ゴムを非限定的に含む。
【0020】
図4は、第1の壁10用の材料としてのポリジメチルシロキサン(PDMS)の安定性を示した一連の顕微鏡写真である。3本の異なる種類の針、すなわち(i)20ゲージのノンコアリング針と、(ii)30ゲージのノンコアリング針と、(iii)30ゲージのコアリング針とがPDMSの板に挿入され、走査電子顕微鏡法および光学顕微鏡法を使用して穿刺部位が観察された。先の鋭い標準20ゲージ針および30ゲージノンコアリング針は、抜針後に、PDMSが穿孔を自己封止することを可能にした。しかしながら、30ゲージコアリング針は、抜針後に、PDMSの中に道筋を残した。標準であれノンコアリングであれ、小直径の針における穿刺のメカニズムは、PDMS材料を除去するのではなくPDMS材料を裂いて移動させることによって、PDMSが穿孔を再封することを可能にしていると考えられる。25ゲージ針による複数回に及ぶ穿刺の後、PDMSの構造的完全性が観測された。表1は、大気条件下で実施された試験について、壁の厚さと漏損との間の関係を示している。漏損は、目視によって決定された。
【0021】
【表1】
【0022】
特定の実施形態の詰め替え可能リザーバ100は、様々な薬物含有流体に使用することができる。いくつかのケースでは、詰め替え前にリザーバ100から全ての残留流体を除去すること、例えばデバイス5をパージすることが望ましいであろう。このような特定の実施形態では、第1の壁10の自己封止部分に針またはシリンジを挿入し、残留する全ての流体をリザーバから除去し、第1の壁10の自己封止部分に挿入された針またはシリンジを通じて新しい薬物含有流体をリザーバ100に詰めることによって、流体を変更することができる。パージは、必要に応じ、パージ流体の注射および除去のサイクルを通じてなすことができる。
【0023】
特定の実施形態において、詰め替え可能リザーバ100は、投与される一生分の薬物供給を保持するほど大きい必要がないので、リザーバ100の持つ詰め替え可能特性は、そうでない場合よりもデバイス5を小さくすることを有利に可能にする。さらに、デバイス5の小サイズ特性は、埋め込みおよび日常使用の両方にとって、デバイス5の侵襲性を有利に低減させる。
【0024】
特定の実施形態において、リザーバ100の持つ詰め替え可能特性は、医師が、変化する患者のニーズに合わせて治療計画を加減すること、および医薬における新しい進歩を活用することを有利に可能にする。特定の実施形態において、詰め替え可能なリザーバ100は、必要な詰め替え回数を減らすために、少なくとも1か月分の薬物供給(例えば6ヶ月分の供給)を有利に格納する。
【0025】
特定の実施形態において、詰め替え可能なリザーバ100は、第1の壁10と、針によって一般に穿刺不可能な第2の壁50と、を含む多層構造を含む。例えば、特定の実施形態の第1の壁10は、針で刺された後に漏れることのない非薬物浸透性の柔軟性のポリマー(例えばシリコーン)層を含み、第2の壁50は、より柔軟性が低く、より機械的に強固な材料(例えばポリマーもしくは複合材など、より剛性の材料)を含む層、または第1の壁10の作成に使用されたのと同じ材料をより厚くした層を含む。デバイス5が眼の中または上に埋め込まれるような特定の実施形態では、第2の壁50は、眼の強膜に隣接するように配置され、第2の壁50の持つ高い機械的強度は、リザーバ100の詰め替えのために第1の壁10を穿刺するために使用される針の一撃を有利に制限することによって、眼を不慮の穿刺から保護する。特定の実施形態において、リザーバ100は、より完全に後ほど説明されるように、第1の壁10および第2の壁50を互いに接合するまたは1枚もしくは複数枚の介在層に接合することによって形成される。特定の実施形態において、リザーバ100は、第1の壁10と第2の壁50との間の潜在的接触面積を低減させるとともにリザーバ100が完全に潰れることのないようにする一体型の機械的サポート構造60を含む。例えば、機械的サポート構造60は、第1の壁10および第2の壁50の少なくとも一方から伸びる1つまたは複数の突起(例えば支柱)を含むことができる。その他の機械的サポート構造もまた、本明細書において説明される各種の実施形態に適合する。
【0026】
特定の実施形態において、カニューレ110は、細長い第1の部分70と、カニューレ110を通る管腔72を画定する壁30とを含む。特定の実施形態において、カニューレ110は、カニューレ110が潰れて管腔72を閉塞させることのないように、カニューレ110の管腔72の中に、1つまたは複数の一体型の機械的サポート構造74を含む。例えば、機械的サポート構造74は、カニューレ110の第1の部分70の内側表面からカニューレ110の壁30に向かって伸びる1つまたは複数の突起(例えば支柱)を含むことができる。特定の実施形態の機械的サポート構造74は、第1の部分70の内側表面から壁30に達する高さと、管腔72の全幅に満たない幅とを有する。その他の機械的サポート構造もまた、本明細書において説明される各種の実施形態に適合する。
【0027】
特定の実施形態において、カニューレ110は、患者に挿入されるように構成されるとともに出口115を含む、端117を含む。特定の実施形態において、カニューレ110の端117は、眼への挿入を促進するために、先細にされている。その他の特定の実施形態では、端117は、眼への容易な挿入を有利に可能にする丸みを帯びた角を有する。特定の実施形態のカニューレ110の外径は、25ゲージ針の外径より小さい、またはそれに等しい。その他の特定の実施形態のカニューレ110の外径は、1ミリメートル未満(例えば0.5ミリメートル)である。デバイス5が眼の中または上に埋め込み可能であるような特定の実施形態において、カニューレ110の外径は、挿入部位における縫合の必要性を排除しそれによって眼の完全性を維持するのを助けるのに十分な小ささである。
【0028】
特定の実施形態において、カニューレ110は、カニューレ110の中に流体を流れさせる印加圧力の大きさではなくカニューレ110の中を流体が流れる持続時間に投与量が依存するように、一定流量を有利に維持する、1つまたは複数の流れ調整構造(例えば弁)を含む。このような特定の実施形態は、より正確な投与量制御を可能にするという点で有利である。特定の実施形態において、リザーバ100は、カニューレ110の1つもしくは複数の流れ調整構造に代わって、またはそれに加えて、1つまたは複数のこのような流れ調整構造を含んでいる。
【0029】
特定の実施形態において、カニューレ110は、リザーバ100をともなう各種の動作(例えばパージ、洗浄、詰め替えなど)の最中にリザーバ100を体(例えば眼)から有利に隔離する1つまたは複数の流体流れ隔離構造(例えば弁)を含む。このような特定の実施形態は、リザーバ100と患者の体との間における流体の交換を(いずれの方向でも)有利に阻止する。特定の実施形態において、リザーバ100は、カニューレ110の1つもしくは複数の流体流れ隔離構造に代わって、またはそれに加えて、1つまたは複数のこのような流体流れ隔離構造を含んでいる。
【0030】
特定の実施形態において、弁120は、患者に挿入可能でなおかつ出口115を含むカニューレ110の端またはその近くに配置される。特定の実施形態における弁120は、デバイス5から患者の体(例えば眼)内への、望ましくない薬物の拡散を有利に阻止する。特定の実施形態において、カニューレ110の端117またはその近くにある弁120は、患者の体からカニューレ110内への材料の逆流を有利に阻止する。
【0031】
図5は、本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった代表的な弁120の断面図を概略的に示している。図5の断面図は、図2の破線によって示された平面内である。図6Aおよび図6Bは、本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、第1および第2の位置にある代表的な弁120の断面図を概略的に示している。弁120は、弁座80と、オリフィス40を穿たれた可動要素122とを含む。特定の実施形態の可動要素122は、カニューレ110の壁30の軟性部分を含む。壁30の軟性部分は、壁30の部分が弁座80に接触しない第1の位置(図6Bに概略的に示される)と、壁30の軟性部分が弁座80に接触してオリフィス40を塞ぐ第2の位置(図6Aに概略的に示される)との間で移動可能である。液体は、壁30の軟性部分が第1の位置にあるときはオリフィス40を通って流れることができるが、壁30の軟性部分が第2の位置にあるときはオリフィス40を通って流れない。
【0032】
特定の実施形態の弁座80は、図5図6A、および図6Bに概略的に示されるように、カニューレ110の内側表面から可動要素122(例えば壁30の軟性部分)に向かって伸びる突起(例えば支柱)を含む。特定の実施形態において、突起は、上述されたカニューレ110内の1つまたは複数の一体型機械的サポート構造とほぼ同じである。
【0033】
特定の実施形態において、壁30の部分は、図6Aおよび図6Bに概略的に示されるように、カニューレ110内の流体によって壁30の軟性部分に印加される圧力に応答し、第2の位置から第1の位置へ移動する。例えば、リザーバ100の1つまたは複数の壁に印加される指圧は、カニューレ110に流体を流れさせ、その流体の圧力によって弁120を開かせることができる。特定の実施形態において、弁120は、カニューレ110の中の流体圧力がカニューレ110の外側の流体圧力より大きい所定の閾値を超えたときにのみ開く。特定の実施形態の弁120は、カニューレ110の中の流体圧力がカニューレ110の外側の流体圧力に等しい、またはそれ未満であるときは、体液がデバイス5へ逆流するのを阻止するために、閉じた状態に有利にとどまる。
【0034】
図7は、カニューレ110の端117またはその近くに位置する組み立てされたデバイス5の弁120の代表的な実施形態の顕微鏡写真を示している。図8は、本明細書において説明される特定の実施形態に適合したデバイス5からの染色液体の送達を示した一連の顕微鏡写真である。図9は、デバイス5を埋め込み部位(例えば眼)に固定するための1つまたは複数の縫合タブを有するデバイス5を示した顕微鏡写真である。
【0035】
図10は、本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった別の代表的なデバイス200を概略的に示している。デバイス200は、治療剤を含む液体を含有するように構成されたリザーバ300を含む。デバイス200は、さらに、リザーバ300と流体連通するカニューレ310を含む。カニューレ310は、患者と流体連通するように構成された出口315を有する。デバイス200は、さらに、第1の電極320と第2の電極330とを含む。第1の電極320および第2の電極330の少なくとも1つは、平面状である。デバイス200は、さらに、第1および第2の電極320、330を通電させる材料340を含む。第1の電極320と第2の電極330との間に印加された電圧は、材料340からガスを生成する。このガスは、リザーバ300から出口315へと液体を流れさせる。特定の実施形態において、第1および第2の電極320,330は、液体をリザーバ300からカニューレ310を経て出口315へと流れさせる電解式ポンプとして機能する。
【0036】
電解式ポンプは、流体(例えば薬物含有液体)を1つの位置から別の位置へと分配する圧力を生成するために、電気化学的に生成されたガスを使用する。例えば、水溶性の電解質に浸漬された2つの電極(通常は金、パラジウム、または白金である)の両端への適切な電圧の印加は、ピストン、膜、またはその他のトランスデューサに圧力を印加するために使用することができる酸素ガスおよび水素ガスを生成する。水の電気分解は、白金などの触媒の存在下において、急速にかつ可逆的に生じる。このような触媒は、電圧を印加されていない状態では、水素と酸素とを再結合させて水を再形成する触媒作用がある。本明細書において説明される特定の実施形態において、デバイスは、薬物をリザーバからカニューレを経て患者へと押し出すために、電気化学的に生成されたガスを使用する。このような特定の実施形態では、電解式ポンプの使用が、薬物送達の電子制御を有利に促進する。
【0037】
電解式ポンプは、薬物送達に関していくつかの利点を提供する。それらの低温、低電圧、および低電力の動作は、それらを生体内における長期的動作に良く適したものにする。眼の応用の場合は、電解式ポンプは、熱の生成がごくわずかという点で有利であり、また、高い応力ひずみ関係も実現することができる。さらに、電解式ポンプは、ポンプへの印加電圧(したがって圧力生成の時間的パターン)を制御するためのマイクロエレクトロニクスを使用するのに良く適しており、これは、デバイスを、ボーラス投与モードおよび/または連続投与モードのいずれでも動作可能にする。高周波伝送/受信もまた、マイクロエレクトロニクス回路構成のワイヤレス給電および制御を可能にしてポンプを動作させるために使用することができる。
【0038】
外部と流体連通するチャンバ内における電気分解は、作動流体をチャンバから追い出すガスを生成する。印加電圧の極性の逆転は、プロセスを逆転させ、それによってチャンバをその元の状態に回復させることができる。この逆のプロセスは、小さなトリクル充電によって阻むことができ、したがって、このデバイスは、小電力で適所に保持することが可能である(すなわち、デバイスはラッチ可能である)。
【0039】
図11は、本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった代表的なデバイス200の第1の部分350の図である。第1の部分350は、本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった代表的なデバイス200の、カニューレ310、第1の電極320、および第2の電極330を含む。図11のデバイス200の場合、材料340は、患者に投与されるべき薬物も含んでいる。特定の実施形態において、カニューレ310は、パリレン(登録商標)を含み、ポンプ出口317を通じてリザーバ300と流体連通している。図11の第1の電極320および第2の電極330は、互いに噛み合わされている。このような構成は、材料340が第1の電極320および第2の電極330の両方を通電させることを有利に保証することができる。
【0040】
図12Aおよび図12Bは、デバイス200の第1の部分250およびデバイス200の第2の部分260の写真である。第2の部分260は、第1の部分250の上に搭載可能であり、それによって、両者の間に、第1の電極320および第2の電極330を内部に配されたリザーバ300を形成する。特定の実施形態の第2の部分260は、上述のように、反復穿刺を自己封止する液体非浸透性でかつ気体非浸透性の材料(例えばシリコーン)を含む。
【0041】
図13Aおよび図13Bは、本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、電解式ポンプを用いた別の代表的なデバイス200の、第1の部分250の水平断面図および垂直断面図をそれぞれ概略的に示している。第1の部分250は、サポート層305と、第1の電極320と、第2の電極330とを含む。第1および第2の電極320,330は、サポート層305の上方にあり、第1の電極320および第2の電極330の少なくとも一方は、平面状である。
【0042】
特定の実施形態のサポート層305は、液体非浸透性でかつ気体非浸透性であり、また、このような特定の実施形態では、サポート層305の上に導電性材料がないと第1の電極320と第2の電極330tが互いに電気的に絶縁されるように、電気的に絶縁性でもある。第1の電極320および第2の電極330は、第1の電極320と第2の電極330との間に電圧差を印加する電圧源(不図示)と通電するように構成される。
【0043】
図13Aおよび図13Bに概略的に示されるように、特定の実施形態において、第1および第2の電極320,330は、平面状であり、互いに同一平面上にある。特定の実施形態において、第1の電極320および第2の電極330の少なくとも一方は、電極によって画定される平面内に伸張部すなわちフィンガを有するようにパターン形成される。例えば、図13Aによって概略的に示されるように、第1の電極320は、細長く、略円状の周縁に沿って伸びており、この第1の電極320の略円状の周縁の中心に向かって放射状の伸張部322が伸びている。特定の実施形態の第2の電極330は、細長い中心部分332を有しており、そこから略垂直に伸張部334が伸びている。特定の実施形態において、伸張部334は、図13Aによって概略的に示されるように、第1の電極320の略円状の周縁内に、略円状の周縁を画定している。第1の電極320および第2の電極330のその他の形状および構成もまた、本明細書において説明される各種の実施形態に適合する。
【0044】
特定の実施形態の第1の部分250は、さらに、液体非浸透性でかつ気体非浸透性の外壁360を含む。より完全に後ほど説明されるように、外壁360は、対応するデバイス200の第2の部分260の壁に接合されるように構成される。
【0045】
特定の実施形態の第1の部分250は、さらに、第1の電極320と第2の電極330との間に第1の構造370を含む。図13Aに概略的に示されるように、特定の実施形態において、第1の構造370は、サポート層305から略垂直に伸びる略円状の壁を含む。特定の実施形態の第1の構造370は、1本または複数の流体通路372を有しており、より完全に後ほど説明されるように、液体は、これらの通路を通って第1の電極320の上方の第1の領域380と第2の電極330の上方の第2の領域385との間を流れることができる。特定の実施形態において、第1の構造370は、第1の領域380と第2の領域385との間に、液体浸透性ではあるが気体非浸透性である障壁を含む。
【0046】
特定の実施形態において、第1の部分250は、さらに、第1の電極320の上方の第2の構造374と、第2の電極330の上方の第3の構造376とを含む。図13Bによって概略的に示されるように、特定の実施形態において、第2の構造374は、サポート層305と、外壁360と、第1の構造370と、第2の構造374とが第1の電極320を含む第1の領域380を画定するように、第1の構造370および外壁360に機械的につながれる。図13Bによって概略的に示されるように、特定の実施形態において、第3の構造376は、サポート層305と、第1の構造370と、第3の構造376とが、第2の電極330を含む第2の領域385を画定するように、第1の構造370に機械的につながれる。
【0047】
特定の実施形態において、第2の構造374および第3の構造376の少なくとも1つは、軟性であり、液体非浸透性でかつ気体非浸透性である。例えば、第2の構造374および第3の構造376の少なくとも1つは、柔軟膜(例えば波形のパリレン薄膜)を含む。第2の構造374および第3の構造376の少なくとも1つは、対応する第1の領域380および/または第2の領域385における圧力の増減とともに伸縮するように構成される。このような特定の実施形態では、第2の構造374および第3の構造376は、ともに、図13Bによって概略的に示されるように、同じ柔軟膜の一部を含んでいる。
【0048】
特定の実施形態において、薬物を方向付けるためのパリレンカニューレと同じ基板の上に、相互に噛み合わされた1対の電極が作成される。電解反応は、送達されるべき薬物を含有するチャンバと同じチャンバ内、または薬物リザーバに隣接する別個の電解用チャンバ内のいずれかで生じることができる。後者の場合、作動流体、すなわち電解質は、電解用チャンバの内部に封入されている。
【0049】
図14Aおよび図14Bは、本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった、第1の部分250および第2の部分260を含む代表的なデバイス200の、上面図および垂直断面図をそれぞれ概略的に示している。特定の実施形態の第2の部分260は、デバイス200の第1の部分250の対応部分に接合されるように構成された液体非浸透性の壁を含む。図14Aおよび図14Bによって概略的に示されるように、特定の実施形態の第2の部分260は、第2の部分260と、第2の構造374と、第3の構造376とが薬物を含有するように構成されたリザーバ390を画定するように、第1の部分250の外壁360に接合される。
【0050】
特定の実施形態のデバイス200は、さらに、1つまたは複数の出口115をともなうカニューレ110を含む。カニューレ110は、1つまたは複数の出口115が患者の体(例えば眼)と流体連通するように配置されるように構成される。特定の実施形態において、カニューレ110は、パリレンを含み、図14Bによって概略的に示されるように、リザーバ390と流体連通する管腔を中に通されなおかつ1つまたは複数の出口115をともなった略細長い形状を有する。
【0051】
特定の実施形態において、第1の領域380および第2の領域385は、十分な電圧を印加されたときにガスを発生させる材料390を含有している。例えば、特定の実施形態において、材料390は、印加電圧によって水素ガスと酸素ガスとに電気分解される水を含む。図14Bによって概略的に示されるように、特定の実施形態において、第2の構造374および第3の構造376は、液体非浸透性でかつ気体非浸透性である柔軟膜を含み、第1の電極320において生成されたガスは、第1の領域380の中の圧力を増大させることによって、第2の構造374をリザーバ390に向かってたわませる。さらに、第2の電極330において生成されたガスは、第2の領域385の中の圧力を増大させることによって、第3の構造376をリザーバ390に向かってたわませる。第2の構造374および第3の構造376の少なくとも1つのたわみは、(例えば治療剤を含有した)液体を、リザーバ390からカニューレ110を経て1つまたは複数の出口115へと流れさせる。
【0052】
特定の実施形態において、デバイス200は、第1の電極320において生成されたガスを、第2の電極330において生成されたガスと混じらないように有利に制限する。図14Bによって概略的に示されているように、材料390が水を含む場合、一方の電極(例えば第1の電極320)において生成された水素ガスは、通常、第1の領域380内に制限され、他方の電極(例えば第2の電極330)において生成されたガスは、通常、第2の領域385内に制限される。第1および第2の電極320,330の一方または両方において生成されたガスは、第1のチャンバ300または第2のチャンバ330の一方または両方の体積を増大させ、電解用チャンバの膜360を膨張させることによって、液体をリザーバ300からカニューレ110を経て流れさせる。
【0053】
図15A〜15Dは、図14Aおよび図14Bの代表的なデバイス200の様々な図を概略的に示している。図15Aは、第1の電極320、第2の電極330、第2の部分260、およびカニューレ110をともなうデバイス200の上面図を概略的に示している。図15Bは、第1の電極320、第2の電極330、第2の部分260、カニューレ110、第2の構造374、および第3の構造376を示した部分切断上面図を概略的に示している。図15Bに示されるように、第2の構造374および第3の構造376は、デバイス200の第1の部分250に広がる膜の一部である。図15Cは、第1の領域380、該第1の領域380の中の第1の電極320、第2の領域385、該第2の領域385の中の第2の電極330、第1の構造370、および外壁360の一部、ならびに第2の部分260およびカニューレ110の一部を示したさらなる部分切断上面図を概略的に示している。図15Dは、材料390も薬物も含有しておらず、なおかつ図14Bによって概略的に示された満たされたデバイス200に対応する、デバイス200の垂直断面図を概略的に示している。
【0054】
図16は、注射針420を収容するように構成された注入口410を含む代表的なデバイス200の様々な図を概略的に示している。注入口410は、特定の実施形態ではデバイス200の第1の部分250の一部である一方で、その他の特定の実施形態ではデバイス200の第2の部分260の一部である。注入口410は、デバイス200が埋め込まれた状態でのデバイス200の詰め替えを促進するために、デバイス200のリザーバと流体連通している。また、図16によって概略を示されたデバイス200は、デバイス200を患者の体(例えば眼の表面)に固定するための縫合タブ400を含む。
【0055】
図17は、本明細書において説明される特定の実施形態に適合した代表的な注入口410の内部構造を概略的に示している。注射針420は、針注入ガイド510を通して注入口表面500を貫通することによって、注入玄関520へのアクセスを得る。玄関520への流体の注射は、液体を、注入口弁530を経てリザーバ540内へと到らせる。
【0056】
デバイス200は、特定の実施形態では内蔵電池(不図示)によって電力供給される一方で、その他の特定の実施形態では外部電源(不図示)によって電力供給される。特定の実施形態では、電池および外部電源の両方が使用される。例えば、電力は、ワイヤレス方式で再充電可能であるが、より小型の、一週間分の電力を蓄えるための電池を使用すれば、デバイスを小さくなおかつ低侵襲性に有利に維持することが可能である。
【0057】
外部電源は、ワイヤまたはワイヤレス手段(例えば高周波トランスミッタ/レシーバ)を使用してデバイス200に電気的につなぐことができる。外部電源の使用によって内蔵電池の使用を回避すれば、デバイス200を、より小さくしたがってより低侵襲性に有利に作成することができる。また、デバイス200の動作をワイヤレス方式で制御する(例えばオンオフする)ことによって、携帯用のトランスミッタを、必要時にデバイスに電力供給するためにデバイスと通信する信号を送信するようにプログラムすることができる。例えば、必要とされる薬物が少量である場合は、より少ない電力が伝送され、より少量の薬物が押し出される。外部電源投入器には、例えば、薬物を押し出しすぎないようにインプラントを制限するために、何らかの閾値カットオフが設けられる。ワイヤレス電力は、インプラントに組み込まれたコイルおよび外部のトランスミッタを使用して、誘導的電力供給のプロセスを通じてなされる。
【0058】
特定の実施形態において、デバイス200は、デバイス200の動作を制御するための集積回路を含む。このような特定の実施形態に適合した集積回路の例は、埋め込み型の医学的応用においてより一般的になった、単一チップの特定用途向け集積回路(ASIC)および特定用途向け標準製品(ASSP)を非限定的に含む。このような特定の集積回路は、例えば電池の寿命を延ばすことによって侵襲的交換手順間の時間を長くするために、可能な限り電力消費を有利に少なくする。ASICは、このインプラントにおける主要なチップであり、その現行の低電力実施形態に対してさらなる特徴を追加するのに有用である。特定の実施形態において、デバイスは、投与量および放出を制御するためのマイクロエレクトロニクス、フィードバック制御のためのセンサ、デバイスを適所に保持するためのアンカー構造、空になったときのリザーバを潰れないように維持するためのサポート、フィルタリング構造、より正確な流れ制御のための追加の弁、圧力が薬物送達に及ぼす悪影響を排除するための流れ調整器、およびプログラム可能な遠隔測定インターフェースを含むことができる。
【0059】
特定の実施形態において、デバイスは、液体を含有するように構成されたリザーバと、該リザーバと流体連通するカニューレと、を形成するために互いに接合される複数の構造層を含む。カニューレは、患者と流体連通するように構成された出口を有する。例えば、デバイスは、図1および図2によって概略的に示されるように、別々に作成され次いで互いに接合される、ポリジメチルシロキサンなどの二重に適合性のポリマからなる3枚の個別層を含むことができる。この構造例において、下層は、リザーバ、カニューレ、および弁の輪郭を定めるデバイスの基部を形成する。この下層は、より完全に後ほど説明されるように、カニューレおよびリザーバを潰れないように機械的に支えるとともに弁用の弁座を提供する支柱を含有している。中間層は、カニューレと、弁の可動部分とを形成する。上層は、リザーバの上側半分を形成する。
【0060】
このような特定の実施形態では、構造層の少なくとも1つが、リソグラフィプロセス(例えばソフトリソグラフィ)を使用して形成される。図18A〜18Kは、本明細書において説明される特定の実施形態にしたがった代表的なリソグラフィプロセスを概略的に示している。図18Aによって概略的に示されるように、基板(例えばシリコンウエハ)が用意される。図18Bによって概略的に示されるように、基板の上に、(例えば基板の上に感光性の液体を回転塗布することによって)フォトレジスト層が形成される。適切なフォトレジストは、当業者に周知であり、ジアゾナフトキノン、フェノールホルムアルデヒド樹脂、および例えばSU−8として知られるポリマなどの各種のエポキシベースのポリマを、非限定的に含む。図18Cによって概略的に示されるように、フォトレジスト層は、基板の第1の部分は覆うが基板の第2の部分は覆わないようにパターン形成される。例えば、フォトレジストを塗布されたウエハの上にマスクを通して紫外線を当てることによって、そのマスクのパターンをフォトレジスト層に転写することが可能である。紫外線に曝露された部分のフォトレジスト層を取り除くには、周知のフォトレジスト現像技術によるウエハ処理を使用することができる。リソグラフィ技術の分野の当業者ならば、本明細書において説明される特定の実施形態にしたがってパターン形成フォトレジスト層を形成するのに適した材料およびプロセスステップを選択することができる。
【0061】
図18Dによって概略的に示されるように、パターン形成フォトレジスト層によって覆われていない部分の基板は(例えば反応性イオンによるディープエッチングによって)エッチングされ、それによって、フォトレジスト層によって保護された部分のシリコンウエハが手付かずで残される。図18Eによって概略的に示されるように、パターン形成フォトレジスト層は除去される。例えば、アセトンなどの溶媒による洗浄後には、フォトレジスト層を除去することができ、そして、あらゆる残留フォトレジストを除去するために酸素プラズマの使用を通じてウエハ全体を洗浄することができる。図18Fによって概略的に示されるように、シリコンウエハからのPDMS層の除去を促進するために、基板の上に、離型層(例えば広く用いられているp−キシレンのポリマであるパリレン)が形成される。その他の実施形態では、その他の材料を離型層として使用することができる。図18Gによって概略的に示されるように、離型層の上に、構造層(例えばPDMSシリコーン)が形成される。例えば、PDMSは、シリコンウエハの上に注ぐことが可能であり、室温での放置または(例えば45分間に及ぶ75℃への)加熱よる加速のいずれかによって硬化される。図18Hによって概略的に示されるように、構造層は、基板から除去され、そうして、図18Iによって概略的に示される構造層が提供される。特定の実施形態において、成形されたPDMS層は、構造層の複数のコピーを含み、構造層の各コピーは、その他のコピーから分離される。図18Jによって概略的に示されるように、構造層から余分な材料が除去され、そうして、図18Kによって概略的に示されるような、その他の構造との組み立ての用意が整った構造層が提供される。
【0062】
個々の構造層は、特定の実施形態では、1枚または複数の構造層の表面を約1分間にわたって酸素プラズマで処理することによって組み立ておよび接合することができる。ただし、時間は重要でない。酸素プラズマは、ポリジメチルシロキサンの表面を疎水性から親水性へと変化させる。
【0063】
特定の実施形態において、底層および中間層は、接合されるべき側面をプラズマに向けた状態でプラズマチャンバ内に入れられる。ひとたび表面が処理されると、これら2つの部品は、任意の極性液体(例えばエタノールや水)の力を借りて位置揃えすることができる。液体は、反応性の親水性表面を保ち、これは、2枚の層の位置揃えのための時間を長くとることを可能にする。また、液体は、そうでなければ粘着性となるであろう表面を滑らかにするので、位置揃えの操作を容易にすることもできる。2層の組み立て品は、次いで、頂層とともにチャンバの中に戻され、処理および位置揃えの手順が繰り返される。組み立て完成品は、次いで、接合を強化するために、(100℃で45分間にわたって)焼くことができる。接合されたシリコーンは、SEMおよび光学観測のもとで均一に見えた。加圧N2による試験は、接合されたシリコーン組み立て品が少なくとも25psiの圧力に耐えることを示した。
【0064】
特定の実施形態において、オリフィス40は、例えば、小径のコアリング針を、後ほどカニューレの上側表面を形成することになるシリコーンゴムシートに挿入することによって作成される。この特徴の生成には、その他の方法も使用可能である。コアリング針は、材料を除去してオリフィスを形成する。特定の実施形態の弁座80は、カニューレ110の底から突き出して、通路の高さだけ延びてカニューレの頂部に達する支柱である。組み立て中、オリフィス40は、弁座80の上に中心合わせされ、その上に載ることによって弁を形成する。この構成では、弁は、「ノーマルクローズ(通常閉)」であると称され、流体を通さない。特定の値(クラッキング圧)を超えるカニューレ110内の流体圧力は、弁を開かせ、図6Aおよび図6Bによって概略的に示されるように、流体を弁座80と可動要素122との間の間隙を通ってデバイスから出て行かせる。
【0065】
図19A〜19Mは、電解式ポンプを含むデバイスを形成するための代表的なプロセスを概略的に示している。図19A〜19Mが、電解式ポンプを用いるデバイスを形成するための代表的なプロセスを概略的に示している一方で、本明細書において説明される特定の実施形態にしたがえば、その他の方法を使用することも可能である。
【0066】
図19Aによって概略的に示されるように、剥き出しのシリコン基板が用意され、図19Bによって概略的に示されるように、シリコン基板の上に、誘電体層(例えば厚さが約4000Åの熱二酸化シリコン層)が成長される。このシリコン酸化物層は、基板および電解用電極を電気的に絶縁する。
【0067】
図19Cによって概略的に示されるように、(例えばデポジションされリソグラフィによってパターン形成された)誘電体層の上に、(例えば厚さが200Å/2000ÅのTi/Ptでそれぞれ作成された)電解用電極が形成される。誘電体層は、誘電体層の一部を除去して基板の一部を露出させるために、XeF2によるパターン形成および簡単なエッチングを施される。このプロセスは、図19Dによって概略的に示されるように、露出したシリコン表面を粗面化することもできる。図19Eによって概略的に示されるように、基板の上に、第1の犠牲フォトレジスト層(例えば厚さが5μm)を回転塗布およびパターン形成することができる。第1の犠牲フォトレジスト層は、製造プロセスの終わりに、カニューレを、それを支えているシリコン基板から容易に解放させることができる。図19Fによって概略的に示されるように、第1の犠牲層の上に、薬物送達カニューレの底壁となる第1の構造層(例えば厚さが7.5μmのパリレン層)を、デポジションおよびパターン形成することができる。図19Gによって概略的に示されるように、第1の構造層の上には、第2の犠牲層(例えば回転塗布およびパターン形成をされる、厚さが25μ mのフォトレジスト層)を形成することができる。図19Hによって概略的に示されるように、第2の犠牲層の上に、カニューレの底壁および側壁となる第2の構造層(例えば厚さが7.5μmのパリレン)を、デポジションすることができる。第1および第2の構造層は、次いで、図19Iおよび図19Jによって概略的に示されるように、パターン形成することができる。例えば、図19Iによって概略的に示されるように、基板の上に、不要なパリレンを除去するための(厚さがそれぞれ200Å/2000Åの)Cr/Auエッチングマスク層を、デポジションおよびパターン形成することができる。パリレンは、図19Jによって概略的に示されるように、Cr/Auマスキング層の使用を通じて酸素プラズマ内でパターン形成することができる。図19Kによって概略的に示されるように、基板の上に、第3の構造層(例えば厚さが70μmのSU−8フォトレジスト層)を回転塗布およびパターン形成することができる。SU−8層は、カニューレを支え、薬物のリザーバが基層に取り付けられるときにカニューレが潰れないようにする。次いで、図19Lによって概略的に示されるように、犠牲フォトレジスト層は、それらをアセトンに溶解させることによって除去される。図19Mによって概略的に示されるように、カニューレは、粗面化されたシリコン基板の表面から剥がされ、カニューレ真下のシリコン基板を折り取られることによって、自立したカニューレを形成することができる。
【0068】
特定の実施形態において、デバイスは、デバイスの本体を眼の頂部に取り付け、カニューレを眼の前部または後部に挿入させることによって埋め込まれる。デバイスは、縫合またはアイタックなどの現行の眼科技術の使用を通じて眼に固定される。特定の実施形態において、デバイスを使用する方法は、第1および第2の電極を通電させる材料からガスを生成するために、第1の電極と第2の電極との間に第1の電圧を印加することを含む。ガスは、リザーバからの液体を、リザーバからデバイスの出口へ流れさせる。特定の実施形態において、方法は、さらに、ガスから材料を生成するために、第1の電極と第2の電極との間に第2の電圧を印加することを含む。このように、デバイスは、ガスから材料を再生可能であるような可逆方式で使用されることによって、デバイスに材料を詰め替える必要性を回避している。特定の実施形態において、材料は水を含み、ガスは水素ガスおよび酸素ガスを含む。特定の実施形態において、第1の電圧と第2の電圧とは、符号が反対である。
【0069】
実施例
眼の前部および後部の両方の組織への標的化送達を可能にする軟性のパリレン経強膜カニューレを有するデバイスが、以下において説明される。眼の薬物療法に適した流量(pL/分からμL/分)を提供するために、電気化学駆動式の薬物送達デバイスの実演が行われた。標的量250nLの正確な送達を実現するために、連続薬物送達モードおよびボーラス薬物送達モードの両方が実施された。緊急手術の研究のためにカプセル化パッケージング技術が開発され、ブタの眼において予備の生体外薬物送達実験が実施された。
【0070】
眼の治療のための調合薬は、角膜、強膜、および血液網膜関門などの眼の生理的保護障壁を突き抜けて、毛様体、網膜、および眼角などの到達困難な標的眼内組織に達することが有利である。
【0071】
小型化されたMEMSデバイスを用いれば、ボーラスモードまたは連続モードのいずれによる正確な送達も可能である。小型化された効率的な薬物送達システムを作成するためのMEMS製造の利点は、内部組織への標的化送達が可能であること、長期使用のために詰め替え可能であること、および患者のコンプライアンスに取り組むために自動化されることにある。
【0072】
水の電気分解は、液体から気体への相変態を結果として引き起こし、この代表的デバイスにおいて薬物送達を推進するために用いられる作動を提供する。電気分解の最終結果は、反応に使用される水のおよそ千倍の大きさへの体積膨張に寄与する酸素ガスおよび水素ガスの生成である。このガス発生プロセスは、たとえ加圧環境(例えば200MPa)下においても進行する。ガス生成をしたがってポンプ作用を推進するためには、ポンプの速度および量とのその直接的相関性ゆえに電流制御が有用である。反応を推進するために電流が使用される場合、大気圧における論理的なポンプ速度(m3/sで表されるq論理)は、q論理=0.75(I/F)Vmで与えられる。ここで、Iは、アンペアで表される電流であり、Fは、ファラデー定数、Vmは、摂氏25度および大気圧におけるガスのモル体積である。生成されるまたは投与される論理的なガス体積(m3で表されるV論理)は、V論理=q論理/tで与えられる。ここで、tは、電流が印加される継続時間(秒で表される)である。ポンプとしての電解アクチュエータの効率(η)は、η=V実験/V論理で定めることができる。ここで、V実験は、生成された水素ガスおよび酸素ガスの実際の体積である。電気化学システムにおける効率は、電極(材料、表面積、幾何形状、および表面状態)、質量移動(移送モード、表面濃度、および吸着)、外部(温度、圧力、および時間)、溶液(電気活性種のバルク濃度、その他の種の濃度、および溶媒)、ならびに電気(電位、電流、電気量)を含む数々のパラメータによって影響を及ぼされる。
【0073】
電解式ポンプは、電解質の中に浸漬された、互いに噛み合わされた2つのプラチナ電極からなる。この電極の幾何形状は、発熱を下げる働きをする溶液内の電流経路を低減させることによって、ポンプ効率を向上させる。生成されたガスは、密閉されたリザーバ内の内部圧力を増大させ、これが、薬物をカニューレを経て眼内へと送達する。電気分解は、可逆プロセスであり、印加信号がオフにされたときに停止することによって、水素と酸素とを徐々に水へと再結合させることを可能にしている。
【0074】
図11図12A、および図12Bに示されたデバイスを使用すると、押し出された薬物が、ポンプにつながれた小さな口を通して軟性の経強膜カニューレに入る一方で、生成されたガスは、リザーバの内部に囚われたままである。カニューレの材料として、その機械的強度、二重の適合性、および一体化の容易性ゆえにパリレンが選択された。インプラントの構築に適した材料は、USP Class VI材料であり、MEMS材料として定評がある。ポンプ/カニューレ部分は、シリコン微細加工を使用して製造され、リザーバ部分は、シリコンゴムをマスタ鋳型で鋳造することによって製造された。
【0075】
ポンプおよびカニューレのチップの製造プロセスは、熱酸化シリコン基板(5000オングストローム)から開始された。3krpmでLOR 3B(マサチューセッツ州、ニュートンのMIcroChem Corp.)が、次いで、3krpmでAZ 1518(ニュージャージー州、ブランチバーグのAZ Electronic Materials)が、回転塗布された。相互噛み合い式の電極を画定するために、Ti−Pt(200/2000オングストローム)が電子ビーム蒸着され、ST−22フォトレジスト剥離液(コネティカット州、ダンベリーのATMI)内でのリフトオフによってパターン形成された。カニューレの実装面積を画定するために、第2のリソグラフィ工程が実施された(3krpmでAZ 1518)。酸化物層は、下のSiを露出させるために、緩衝HF酸を使用してエッチングされた。フォトレジストは、剥ぎ取られ、次いで、露出されたSiは、2サイクルのXeF2エッチングによって粗面化された。基板からのカニューレの解放を促進するために、第1の犠牲フォトレジスト層(2.75krpmで回転塗布され、5ミクロンの厚さの層にハードベークされたAZ 4620)が施された。カニューレの底部を形成する第1のパリレンC層(7.5ミクロン)がデポジションされ、次いで、厚さ2000オングストロームのCrエッチングマスクが熱蒸着された。リソグラフィ(500rpmでAZ 4620)に続いて、CRは、CR−7(カリフォルニア州、フリーモントのCyanteck)の中でエッチングされ、フォトレジストは剥ぎ取られた。パリレン層は、次いで、酸素プラズマの中でパターン形成され、Crエッチングマスクは、Cr−7を使用して取り除かれた。チャネルの高さを画定するために、第2のフォトレジスト犠牲層がデポジションされた(AZ 4620が450rpmで回転塗布され、厚さ25ミクロンの層にハードベークされた)。カニューレを完成させるために、7.5ミクロンの第2のパリレン層がデポジションされた。パリレン/フォトレジスト/パリレンのサンドイッチ構造からカニューレを画定するために、エッチングマスクとしてTi/Au(200/2000オングストローム)がデポジションされた。エッチングマスクは、パターン形成され(425rpmでAZ 4620が回転塗布された)、先ずAuエッチャントTFA(マサチューセッツ州、ダンバーズのTransene Company,Inc.)で、次いで10%HFでエッチングされた。最後に、サンドイッチ構造は、酸素プラズマの中でエッチングされ、マスキング層は、剥ぎ取られた(AuエッチングTFAおよび10%HF)。エッチングに続いて、ウエハ全体が、5%HFへの浸漬および酸素プラズマへの曝露によって洗浄された。SU−8 2200(マサチューセッツ州、ニュートンのMicroChem Corp.)が2200rpmで回転塗布され、その結果、ポストベーク後に厚さ70ミクロンの層になった。犠牲フォトレジストは、摂氏40度のアセトン溶液に1日溶解させることによって取り除かれた。個々のカニューレは、それらを基板から手で優しく持ち上げることによって解放された。最後に、個々のダイが分離され、各カニューレの下に残留するシリコンが擦り落としおよび折り取りによって取り除かれた。
【0076】
電解アクチュエータおよびカニューレを含有するポンプチップは、薬物リザーバおよび電気配線と組み合わされた。組み立て後の最終製品が、図12Aおよび図12Bに示されている。電気配線は、Ohmex−AG導電性エポキシ樹脂(マサチューセッツ州、ダンバーズのTransene Company,Inc.)を使用して電極接触パッドに接合された。エポキシ樹脂は、真空のもと、摂氏150度で15時間にわたって硬化された。次いで、ポンプチップおよびリザーバは、上述されたように、シリコーンソフトリソグラフィに基づくカプセル化技術を使用して組み立てられた。
【0077】
眼球の湾曲した輪郭にぴたりと嵌るようにパッケージを成形するために、直径17.5mmのステンレス鋼球をもとにシリコーンスペーサ(ミシガン州、ミッドランドのDow CorningのSylgard 184)が型取りされた。この部分的に硬化したシリコーンの層(塩基対硬化剤の比が10:1)は、摂氏65度で、20分間にわたって硬化された。球は除去され、結果得られた凹みはワックスで満たされた。シリコーンリザーバは、従来方式で機械加工されたアクリル製の型をもとにして型取りされ、摂氏65度で20分間にわたって部分的に硬化された。この型は、内のり寸法が6mm×6mm×1.5mmのリザーバを生成する。シリコーンリザーバは、チップおよびスペーサに対して位置合わせされ、次いで、パリレンカニューレは、脱イオン水の中に浸漬された。これは、カプセル化工程中におけるシリコーンゴムによる塗布を阻止するマスクとして機能する。こうして、シリコーンゴムの疎水性が活かされる。積層体は、シリコーンプレポリマの中に浸漬され、室温で24時間にわたって硬化された。組み立てプロセスを完了させるために、デバイスから過剰なシリコーン材料が除去された。
【0078】
電解式ポンプの性能を調査するために、連続送達、ボーラス送達、ポンプ効率、ガス再結合、および背圧を調べる実験が行われた。これらの試験のために、レーザ加工によってアクリル製の特注の試験装置が作成された(コロラド州、ゴールデンのEpilogのMini/Helix 8000)。この実験設備は、試験固定具の出力口に取り付けられた較正されたマイクロピペット(Becton, Dickinson and CompanyのAccu−Fill 90)から流量データを収集するためのコンピュータ制御式CCDカメラ(カナダ、オタワのPixeLINKのPL−A662)で構成された。試験は、電解質として脱イオン水を使用して実施された。電気分解は、連続送達動作のために、定電流条件(50μAから1.25mA)のもとで開始された。効率と、水素および酸素から水への再結合と、の間の関係が調査された。
【0079】
ボーラス送達もまた、検査された。1秒、2秒、および3秒にわたり、一定の電流パルス(0.5mA、1.0mA、および1.5mA)が印加された。平均投与量を得るために、反復試行が実施された(n=4)。通常の眼圧(IOP)は、5〜22mmHgの範囲にわたる(15.5±2.6mmHg(平均±標準偏差))。この範囲の外側の値は、緑内障の特徴である異常な眼圧(>22mmHg)に対応する。したがって、これは、ポンプ性能を、これらの生理的に適切な条件に合わせて特徴付けるのに有用である。実験設備は、マイクロピペットの出口に取り付けられた水柱を含むように変更された。水柱の高さを調節することによって、薬物送達デバイスに対して背圧が印加された。正常なIOP(20mmHg)および異常なIOP(0mmHgおよび70mmHg)に対応する背圧に関してデータが収集された。
【0080】
薬物送達デバイスの試作品が、除核されたブタの眼に埋め込まれた。デバイスの生体内実演の準備には、除核されたブタの眼内における予備の生体外手術モデリングが有用である。電気的接続の詰まりおよび整合性をチェックするために、手術実験に先立って、各手術デバイスの動作が試験された。薬物リザーバは、染色された脱イオン水で満たされ、次いで、手で押圧された。これは、リザーバから流体を追い出すのに十分な圧力を生成する。電解式ポンプの動作を確認するために、ポンプを外部電源につなぐこと、および電解式ポンプ作用によってリザーバから流体を押し出すことによる、第2の試験が行われた。手術調査のために、除核されたブタの眼が準備され、(角膜と強膜との間において)輪部切開がなされた。カニューレは、切開を通して前房に埋め込まれた(図20)。除核されたブタの眼は、注射ラインの使用によって、15mmHgに加圧された。1分間にわたって定電流(0.5mA)が印加された。デバイスは、実験後に外科的に取り除かれた。
【0081】
電解式ポンプは、5μAから1.25mAの駆動電流を使用して、pL/分からμL/分の範囲の流量で動作された(図21Aおよび図21B)。最高流量は1.25mAに対する7μL/分で、最低流速は5μAで438pL/分であった。これらのデータセットは、ともに、試験中における流体の蒸発を相殺するように補正される。眼の薬物送達には、約2μL/分より小さい流量が好まれる。これは、眼の中で自然に発生する流量と一致する。すなわち、眼の毛様体は、成年の場合、2.4±0.6μL/分の房水を生成する。電流が減少するにつれ、24〜49%の範囲にわたるポンプ効率もまた、減少したことが観察された(図21C)。電解駆動式のポンプの効率は、競合する、水素ガスと酸素ガスとからの水への再結合によって影響される。この効果は、再結合反応に触媒作用する働きをするプラチナ電解用電極への曝露によって、さらに高められる。図21Dには、印加電流がオフにされた後の再結合の効果を示した典型的な累積量曲線が示されている。測定された再結合速度は、62nL/分であった。
【0082】
ボーラス送達モードもまた、評価された(図22)。所望の投与計画が1投与あたり250nLである場合は、この量は、印加電流の大きさによって決定される短い持続期間にわたってポンプを駆動することによって得ることができる。例えば、1.0mAの駆動電流は、250nLを2.36秒で投与するのに対して、1.5mAの電流の場合は、パルス時間を1.75秒に設定することができる。眼の正常動作のもとでは、薬物送達デバイスは、眼のIOPに相当する背圧を受ける。卓上実験によると、ポンプは、正常および異常なIOP相当背圧の範囲にわたり、十分な薬物流量を供給できたことを示された(図23)。流量は、試験された背圧範囲にわたり、正常なIOPと比べて30%変化した。
【0083】
初期の手術結果は、除核されたブタの眼において、期待できる結果を示した。手術実験後のデバイス除去に続く角膜の手術後実験は、虹彩の上方、カニューレの突先の位置の近くにおいて、小さな青い点の存在を明らかにした。これは、眼の中に染料が送達されたことを示している。
【0084】
上述の説明は、例示のみを目的としており、いかなるかたちによる限定も意図していない。上述の詳細な説明は、本発明の特徴を各種の実施形態に応用して説明してきたが、本発明の範囲は、上記の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。
【0085】
以下においては、本発明の種々の構成要件の組み合わせからなる例示的な実施形態を示す。
1.治療剤を患者に送達するための埋め込み型デバイスであって、
前記治療剤を含む液体を含有するように構成されたリザーバと、
前記リザーバと流体連通するカニューレであって、前記患者と流体連通するように構成された出口を有するカニューレと、
第1の位置と第2の位置との間で移動可能な可動要素を含む弁であって、前記可動要素は、オリフィスを穿たれ、前記液体は、前記可動要素が前記第1の位置にあるときは前記オリフィスを通って前記出口へ流れ、前記可動要素が前記第2の位置にあるときは前記オリフィスを通って前記出口へ流れない、弁と、
を備えるデバイス。
2.上記1に記載のデバイスであって、
前記リザーバは、針によって一般に穿刺可能な第1の壁を含み、それによって、前記針を通した前記リザーバの詰め替えを可能にする、デバイス。
3.上記2に記載のデバイスであって、
前記第1の壁は、前記針の除去に際して自身を再封する、デバイス。
4.上記2に記載のデバイスであって、
前記リザーバは、さらに、前記針によって一般に穿刺不可能な第2の壁を含む、デバイス。
5.上記1に記載のデバイスであって、
前記カニューレは、前記患者に挿入可能でなおかつ前記出口を含む端を含む、デバイス。
6.上記5に記載のデバイスであって、
前記カニューレの前記端は、先細にされている、デバイス。
7.上記5に記載のデバイスであって、
前記弁は、前記カニューレの前記端にある、デバイス。
8.上記1に記載のデバイスであって、
前記可動要素は、前記カニューレの壁の軟性部分を含む、デバイス。
9.上記8に記載のデバイスであって、
前記弁は、弁座を含み、前記壁の前記部分は、前記可動要素が前記第1の位置にあるときは前記弁座と接触せず、前記壁の前記部分は、前記可動要素が前記第2の位置にあるときは前記弁座と接触する、デバイス。
10.上記1に記載のデバイスであって、
前記弁は、前記カニューレ内に弁座を含み、前記弁座は、前記カニューレの内側表面から前記可動要素に向かって伸びる突起を含む、デバイス。
11.上記1に記載のデバイスであって、
前記可動要素は、前記カニューレ内の流体によって前記可動要素に印加される圧力に応答し、前記第2の位置から前記第1の位置へ移動する、デバイス。
12.治療剤を患者に送達するための埋め込み型デバイスであって、
前記治療剤を含む液体を含有するように構成されたリザーバと、
前記リザーバと流体連通するカニューレであって、前記患者と流体連通するように構成された出口を有するカニューレと、
第1の電極および第2の電極であって、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも1つは平面状である第1の電極および第2の電極と、
前記第1および第2の電極を通電させる材料であって、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される電圧は、前記材料からガスを生成し、前記ガスは、前記リザーバから前記出口へ前記液体を流れさせる、材料と、
を備えるデバイス。
13.上記12に記載のデバイスであって、
前記第1の電極および前記第2の電極は、ともに平面状である、デバイス。
14.上記13に記載のデバイスであって、
前記第1の電極および前記第2の電極は、互いに同一平面上にある、デバイス。
15.上記14に記載のデバイスであって、
前記第1の電極および前記第2の電極は、互いに噛み合わされている、デバイス。
16.上記12に記載のデバイスであって、
前記第1の電極および前記第2の電極は、金、パラジウム、またはプラチナを含む、デバイス。
17.上記12に記載のデバイスであって、
前記材料は、水を含み、前記ガスは、水素ガスおよび酸素ガスを含む、デバイス。
18.患者に治療剤を送達するための埋め込み型デバイスを製造する方法であって、
複数の構造層を形成することと、
液体を含有するように構成されたリザーバと、前記リザーバと流体連通するカニューレとを形成するために、前記複数の構造層を接合することであって、前記カニューレは、前記患者と流体連通するように構成された出口を有する、ことと、
を備える方法。
19.上記18に記載の方法であって、
前記複数の構造層を形成することは、リソグラフィプロセスを使用して少なくとも1枚の構造層を形成することを含む、方法。
20.上記19に記載の方法であって、
前記リソグラフィプロセスは、
基板を用意することと、
前記基板上にパターン形成フォトレジスト層を形成することであって、前記フォトレジスト層は、前記基板の第1の部分を覆い、前記基板の第2の部分を覆わない、ことと、
前記基板の前記第2の部分をエッチングすることと、
前記パターン形成フォトレジスト層を除去することと、
前記基板上に離型層を形成することと、
前記離型層上に前記構造層を形成することと、
前記基板から前記構造層を除去することと、
を含む、方法。
21.上記20に記載の方法であって、
前記離型層は、パリレン(登録商標)を含む、方法。
22.上記20に記載の方法であって、
前記構造層は、ポリジメチルシロキサンを含む、方法。
23.上記18に記載の方法であって、
少なくとも1枚の構造層は、第1の電極および第2の電極を含み、前記少なくとも1枚の構造層を形成することは、
基板を用意することと、
前記基板の上に誘電体層を形成することと、
前記誘電体層の上に前記第1の電極および前記第2の電極を形成することと、
前記基板の一部を露出させるために前記誘電体層の一部を除去することと、
前記基板の前記露出した一部の上に第1の犠牲層を形成することと、
前記第1の犠牲層の上に、前記カニューレの底壁として機能する第1の構造層を形成することと、
前記第1の構造層の上に第2の犠牲層を形成することと、
前記第2の犠牲層の上に、前記カニューレの頂壁および側壁として機能する第2の構造層を形成することと、
前記第1の構造層および前記第2の構造層をパターン形成することと、
前記誘電体層の上に、前記リザーバの一部として機能する第3の構造層を形成することと、
前記第1および第2の犠牲層を除去することと、
前記第1および第2の構造層の下の前記基板の一部を除去することと、
を含む、方法。
24.上記23に記載の方法であって、
前記第1の構造層および前記第2の構造層は、パリレン(登録商標)を含む、方法。
25.患者に治療剤を送達する方法であって、
前記患者の中または上に埋め込まれるデバイスを提供することであって、前記デバイスは、
前記治療剤を含む液体を含有するリザーバと、
前記リザーバと流体連通するカニューレであって、前記患者と流体連通する出口を有するカニューレと、
第1の電極、第2の電極、ならびに前記第1および第2の電極を通電させる材料と、
を含む、ことと、
前記材料からガスを生成するために、前記第1の電極と前記第2の電極との間に第1の電圧を印加することであって、前記ガスは、前記リザーバから前記出口へ前記液体を流れさせる、ことと、
前記ガスから前記材料を生成するために、前記第1の電極と前記第2の電極との間に第2の電圧を印加することと、
を備える方法。
26.上記25に記載の方法であって、
前記材料は、水を含み、前記ガスは、水素ガスおよび酸素ガスを含む、方法。
27.上記25に記載の方法であって、
前記第1の電圧と前記第2の電圧は、符号が反対である、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図10
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
図16H
図16I
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
図18G
図18H
図18I
図18J
図18K
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図19G
図19H
図19I
図19J
図19K
図19L
図19M
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図21B
図21C
図21D
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図9
図11
図12A
図12B
図20