(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038877
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】衝撃を吸収するための補強ストリップを備える航空機用シート
(51)【国際特許分類】
B64D 11/06 20060101AFI20161128BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
B64D11/06
B60N2/42
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-501564(P2014-501564)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公表番号】特表2014-510668(P2014-510668A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】EP2012055345
(87)【国際公開番号】WO2012130809
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月6日
(31)【優先権主張番号】1100937
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1101840
(32)【優先日】2011年6月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513181621
【氏名又は名称】エクスプリシート
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン・ジャコブ・サーダ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−シャルル・マルセル・サミュエリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・テジェドール
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03744843(US,A)
【文献】
特開平07−069110(JP,A)
【文献】
特開2005−306159(JP,A)
【文献】
特開2004−315984(JP,A)
【文献】
特開平06−262994(JP,A)
【文献】
特開2003−313759(JP,A)
【文献】
特開平06−299435(JP,A)
【文献】
特開2001−253314(JP,A)
【文献】
特開平08−091171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 11/06
B60N 2/00 − 2/72
B60R 21/02 − 21/04
B60R 22/00 − 22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用シートであって、
前記航空機用シートの構造体の機械的強度を確保する骨組み(1)と、
前記航空機用シートのバックレスト(2)およびシート部分(3)を形成する2つの可撓性パーツと
を備える航空機用シートにおいて、
前記航空機用シートが、航空機の激しい衝撃時に背後のシートに位置する乗客の頭部の揺動を吸収するために、前記バックレスト(2)の背後に配置された、エネルギー吸収性布帛から作製された補強ストリップ(4)と、前記航空機の激しい下方衝撃時にシート上に位置する前記乗客の身体を緩衝するために、前記シート部分(3)の下に配置された、エネルギー吸収性布帛から作製された第2の補強ストリップと、を備えること、ならびに
前記補強ストリップ(4)は、前記バックレスト(2)よりも変形可能であり、抵抗性が高いこと、及び/又は前記第2の補強ストリップは、前記シート部分(3)よりも変形可能であり、抵抗性が高いこと
を特徴とするシート。
【請求項2】
前記骨組み(1)は、前記バックレスト(2)の中央に空隙を有することを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記バックレスト(2)は、前記補強ストリップ(4)が変形するための空間を構成するために凹状後面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート。
【請求項4】
前記補強ストリップ(4)は、前記バックレスト(2)に対して若干後方に設置されて位置することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシート。
【請求項5】
前記第2の補強ストリップは、前記シート部分(3)の若干下方に位置することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート。
【請求項6】
前記補強ストリップ(4)は、前記バックレスト(2)よりも変形可能である布帛を構成するように成形された高引張強度糸を含む布帛から構成されること、及び/又は前記第2の補強ストリップは、前記シート部分(3)よりも変形可能である布帛を構成するように成形された高引張強度糸を含む布帛から構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のシート。
【請求項7】
前記補強ストリップ(4)及び/又は前記第2の補強ストリップの前記エネルギー吸収性布帛は、単糸(10)構造の編成品から構成されることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項8】
前記編成品は、ジャージステッチタイプのものであることを特徴とする請求項7に記載のシート。
【請求項9】
前記編成品は、平行な複数の糸(20)から構成されることを特徴とする請求項7又は8に記載のシート。
【請求項10】
前記補強ストリップ(4)及び/又は前記第2の補強ストリップの前記エネルギー吸収性布帛は、緯糸(40)および経糸(50)で織られることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項11】
ほぼ同一の破断強度を有する緯糸(40)および経糸(50)が使用されることを特徴とする請求項10に記載のシート。
【請求項12】
前記緯糸(40)および前記経糸(50)を構成するために使用される糸が、実際には、高引張強度を有する糸(62)ではあるが弛緩した糸により囲まれたぴんと張った弾性糸(60)から構成されることを特徴とする請求項10または11に記載のシート。
【請求項13】
ぴんと張った前記弾性糸(60)は、ポリアミドから作製されることを特徴とする請求項12に記載のシート。
【請求項14】
前記補強ストリップ(4)及び/又は前記第2の補強ストリップの前記エネルギー吸収性布帛は、ポリエーテルイミド繊維、ポリエーテルケトン繊維、高分子量ポリエチレン繊維、メタアラミド繊維およびパラアラミド繊維、天然繊維、ならびにポリアミド繊維を含む群の一部を形成する材料から作製された糸から構成されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般航空機、民間用航空機、ヘリコプター、または軍用航空機のための、航空機客室備品の製造の分野に属する。より詳細には、本発明は、航空機用シートの製造に関し、この航空機用シートは、1人または複数の乗客を支持し、背後のシートに位置する乗客に対する衝撃(前方衝撃)またはシート部分の水平面における乗客に対する衝撃(下方衝撃)を吸収する手段を備える。
【背景技術】
【0002】
航空機のシートの体積は、年々増加する輸送乗客数に応じるための最大の関心事となっている。シートの単位体積を削減することにより、2列シート同士の間の間隔を縮小し、航空機内部に収容可能な乗客数を増加させることが可能となり、それどころか、各乗客に割り当てられるまたは物品に対して割り当てられる空間を拡大することが可能となる。航空機がよりうまく具合に満席になると、一航空路における乗客の一定の流れにおいて、便数を削減することが可能となり、したがって、燃料の節減により、温室効果ガスの排出が低下する。
【0003】
シートの体積を削減することによって、輸送される乗客の安全性を低下させてはならない。航空機用シートに関する安全基準は、特に耐衝撃性に関しては徹底されている。
【0004】
衝撃時の抵抗性および乗客の緩衝性に関するものであるこの制約により、長きにわたり、金属構造体および変形可能クッションを使用して乗客向けに意図された航空機用シートが製造されてきた。多数の金属パーツから構成される構造体は、特に衝撃時における抵抗性を有する。しかし、これらの構造体は、高密度であり、シートが非常に高重量になる。シート部分およびバックレストの水平面に位置する変形可能クッションは、乗客の良好な緩衝を可能にする。しかし、これらもまた、非常に高密度であり、シートの総重量を増加させる。
【0005】
このタイプのシートの複雑性により、その製造の際に、そのメンテナンスの際に、または種々のパーツのモニタリングに関して、複数の問題が生じる。航空機用シートを構成するパーツ数が増加するほど、前記シートのロジスティックプロセスおよび製造プロセスは、より複雑になり費用もかさむ。これらの種々のパーツ同士を共に固定する固定具は、安全基準を満たすためにしばしば金属であり(通常、ステンレス鋼から作製される)、シートがより高重量になる。最後に、各パーツが安全基準を満たさなければならないというシートのコンセプトに関して、パーツ数の削減により、実施すべき試験が、したがってシートの認可に要する合計時間が限定される。したがって、パーツ数の削減により、シートの体積および重量の削減が可能となる。
【0006】
さらに、前記シートは、歴史的に見て、重量および価値に関して非常に費用のかかる機能を統合したものであり、現行の客室の構成にもはや適合するものではない。例えば、バックレストの傾斜は、シート列同士の間の空間が削減された場合には、もはや使用不可能である。
【0007】
可撓性のバックレストと組み合わされた軽量のシート骨組みにより、これらの不利点を解消することが可能である。このシートの形状は、航空乗客輸送における力の基準を考慮するために、特に可撓性のバックレストによるおよび任意選択でシート部分による乗客の快適性と、骨組みの機械的強度とを組み合わせる。これは、骨組みを形成する単一の剛性構成要素と、可撓性材料から作製される乗客のシート部分およびバックレストとにより確保される構造強度を切り離して考えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0290715A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、良好な安全条件における乗客の緩衝性の制約は、常に考慮されなければならない。したがって、本発明の目的は、後方に位置する前記乗客の頭部がこの乗客の前方に位置するシートのバックレスト後部に対して揺動する航空機の前方衝撃時に、シートの背後に位置する乗客に緩衝を与える手段を備える、本発明による航空機用シートを提供することである。これと同様の様式で、シート部分の水平面に配置された吸収手段により、航空機の下方衝撃時に乗客を保持することが可能になる。
【0010】
特許文献1は、従来技術による航空機用シートの全般的な例を説明している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明の主題は、特にシート部分、および任意選択でバックレストの水平面において空隙を備える骨組みにより、構造体の機械的強度が確保される、航空機用シートである。
【0012】
本発明によれば、航空機用シートは、航空機の激しい前方衝撃時に背後の乗客の頭部の揺動を吸収するために、本発明の第1の実施形態においてはバックレストに対して若干後方に設置されて位置し、バックレストの背部に配置された、エネルギー吸収性布帛から作製された補強ストリップを備える。同一の補強ストリップが、ヘリコプターの場合に非常に大きなものとなる下方衝撃を吸収するために、シート部分の水平面に配置されてもよい。シートは、これらの2つのストリップを備えてもよい。
【0013】
本発明による2つの主要な実施形態の中の1つにおいては、エネルギー吸収性布帛は、単糸構造の編成品から構成される。
【0014】
この場合には、編成品は、ジャージステッチタイプのものであると有利である。
【0015】
この第1の実施形態の一変例は、編成品に平行な複数の糸を使用することである。
【0016】
本発明の第2の主要な実施形態においては、エネルギー吸収性布帛は、緯糸および経糸で織られる。
【0017】
緯糸および経糸は、ほぼ同一の強度を有することが好ましい。
【0018】
本発明によるこの第2の実施形態の一変例においては、糸は、実際には、弛緩しているが高い引張強度を有する糸により囲まれた、ぴんと張った弾性糸から構成される。
【0019】
高引張強度を有する弛緩糸により囲まれたぴんと張った弾性糸を使用する一変例であるこの場合には、ぴんと張った弾性糸は、ポリアミド(例えばNylon(登録商標))から作製されると有利である。
【0020】
補強ストリップのエネルギー吸収性布帛を構成するために使用される材料は、ポリエーテルイミド繊維、ポリエーテルケトン繊維、高分子量ポリエチレン繊維、メタアラミド繊維およびパラアラミド繊維、天然繊維(亜麻、麻、ジュート、等々)、ならびにポリアミド繊維からなる群からのものである。
【0021】
本発明およびその種々の技術的特徴が、以下の8つの図により例示される以下の説明を読むことにより、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明によるシートの側方からのおよび若干前方からのカバリエ図である。
【
図2】同一配向を有する
図1と同一のシートの分解図である。
【
図3】前出の2つの図と同一のシートのカバリエ背面分解図である。
【
図4】本発明によるシートの補強ストリップ用に使用される編成品の図である。
【
図5】本発明によるシートの補強ストリップ用に使用される編成品の一変形例の図である。
【
図6】本発明によるシートの補強ストリップ用に使用される織成品の図である。
【
図7A】本発明によるシートの補強ストリップの織成品に使用される糸の一変例に関する図である。
【
図7B】本発明によるシートの補強ストリップの織成品に使用される糸の一変例に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照すると、本発明によるシートが、材料の選択に応じて成形、形成、または組立て可能な骨組み1と、バックレスト2および任意選択でシート部分3を形成する2つの可撓性パーツとから形成される。航空機により乗客を輸送するためのシートは、複数の機能を実現する:衝撃および強力な加速に対する動的抵抗、乗客のシート部分およびバックレスト、ならびに様々な付属品(小型折り畳み式テーブル、マガジンラック、アームレスト、等々)に対する支持。これらの各機能は、シートの体積および総重量を削減するために個別に最適化され得る、シートの構成要素に対応する。
【0024】
シートの第1の機能は、構造強度である。この機能は、本発明の場合には、骨組みにより確保される。骨組みは、構造強度をシートに与えるシートの剛性パーツを意味するものとして理解され、バックレスト2、シート部分3、および付属品の固定箇所は、この役割を果たさない。シートの骨組みは、通常はヒンジ連結されるが、剛性でありつつ軽量化され得る。
【0025】
この
図1は、中空管状構造体から形成されるシートの最小骨組み1を示す。取付け箇所は、航空機の床に連結されるシートのパーツ上に位置する。
図1に示すような3人用シートの場合には、バックレストの中央の2つの中央垂直バー9が、非ヒンジ式バックレストの場合に、航空機の床上のシートの取付け部分に対して直接的に連結されることにより、骨組みの重量を最小に抑えることができる。
【0026】
航空機の床に対するこの固定は、例えば航空機の床に取り付けられたレール内に骨組み1の2つの下方バーを挿入することにより直接的に、または剛性の中間構造体に対して固定することにより間接的に行うことができる。剛性の中間構造体は、航空機の床に対して固定される。剛性の航空機構造体を使用することにより、シートの設置および保守を容易にすることが可能になる。
【0027】
シートの第2の機能は、乗客の収容である。シートのバックレスト2およびシート部分3は、乗客と直接接触状態になるパーツであり、シートの構造強度には寄与しない場合がある。これらのパーツは、シート自体の構造に対して固定されるが、シートの総重量を最小限に抑えるためにはるかにより薄いものであることが可能である。バックレスト2および任意選択でシート部分3は、可撓性材料から作製される。例えば高引張強度のポリエステルの織成品などが適する場合がある。繊維のこのステッチングにより、特に背部および臀部の中空部に区画目印を付けて人間工学的形状を得ることが可能となる。
【0028】
図2は、シートの骨組み1に対するバックレスト2およびシート部分3の付加を示す。これらのパーツは、非常に軽量であり、ポリエステル繊維の織成品などの可撓性材料から構成される。以降でその作製が詳細に説明される、種々の特性を有し、エネルギー吸収布帛から構成される、可撓性材料から作製されるストリップ4が、バックレスト2の背後に追加される。なぜならば、このバックレスト2を構成する材料は、激しい衝撃時に乗客を十分に緩衝することができないからである。シートが大きな下方衝撃に耐えなければならない場合には、同一のストリップ(図示せず)が、シート部分3の下に任意選択で追加されてもよい。
【0029】
図1および
図2においては、シートの骨組み1に対して固定される付属品もまた示される。これらは、とりわけ、カップホルダ5および6ならびにアームレスト7であり得る。
【0030】
図3は、背部から見た場合の同一のシートのやはり分解図を示す。骨組み1、バックレスト2、シート部分3、およびバックレスト2の背後に配置された補強ストリップ4が、この図において確認され得る。この図は、とりわけ雑誌または安全指示書を配置するために使用され得るラック8を含む。
【0031】
本発明の主要な技術的特徴は、バックレスト2よりもはるかに変形可能でありながらさらにはるかに高抵抗性でなければならない補強ストリップ4の使用である。バックレスト2は、衝撃の際に補強ストリップ4が変形するための空間を構成するために、骨組み1の中間に空隙を、または凹状後面を有さなければならない。
【0032】
補強ストリップ4およびシート部分の下に任意選択で追加されるストリップを構成する繊維を実現する原理は、高抵抗性を有しあまり伸張性を有さない繊維、換言すれば高い引張強度または破壊強度の繊維を、衝撃を平滑に吸収することができるようにするために弾性成形品と組み合わせることである。衝撃を平滑に吸収する際に、布帛は、停止させるべき物体、すなわち、シートの背後に位置するシート上に位置する乗客の頭部の形状を、考慮された補強ストリップが配置されたバックレストにおいて抱え込むように変形する。この布帛は、この物体に対して均等に抵抗し、それにより衝撃を吸収する。実際には、衝撃の際に伝達されるエネルギーは、衝撃点に固有のものではなく、布帛と物体との間の接触表面全体にわたり展開される。印加される圧力は、大幅に低減されて、物体が受ける応力を限定する。
【0033】
選択される繊維は、布帛成形を可能にするように糸へと凝集される。複数の繊維が、同一の糸の中に凝集される。最も単純な糸は、パラアラミド繊維(Kevlar(登録商標)もしくはTwaron(登録商標))、ポリエーテルイミド繊維(Ultem(登録商標))、ポリエーテルケトン繊維(PEEK(登録商標))、ポリアミド繊維(Nylon(登録商標))、天然繊維(亜麻、麻、ジュート)、または高分子重量ポリエチレン繊維(Dyneema(登録商標)もしくはSpectra(登録商標))などの、高引張強度の繊維からのみ構成される。引張強度は、繊維を破壊するために印加する必要のある引張強度の測度である。引張強度がより高いほど、繊維はより高い引張力に耐える。布帛が、追加の品質を有する必要がある場合には、例えば耐火性用にメタアラミド(Nomex(登録商標))繊維などを追加することにより、同一の糸中に複数の繊維を混合することが可能である。
【0034】
糸が構成されると、これは布帛を成すように成形される。2つの主要な技法、換言すれば編成および織成が可能である。編成は、布帛表面に対して単一の糸のみを使用し、織成は、複数の緯糸および経糸を混合させる。織成は、複数のタイプの糸を混合させるために使用され得るが、糸の不連続部が布帛の脆弱箇所となるため、布帛の強度が限定される。
【0035】
編成は、結果的に得られる布帛において優れた機械的強度を確保するのを可能にするが、成形能力を限定する。実際に、編成布帛では、編成の機械的性能を変更せずに、布帛の他のパーツへの裁断および裁縫は不可能である。
【0036】
図4を参照すると、編成の場合には、ジャージタイプのステッチにより、比較的変形可能な布帛を得ることが可能となる。ジャージステッチは、1つの平編み列に続き1つの裏編み列を作製することからなる。糸10は、1つのラインから次のラインまでそれ自体を中心に巻かれ、ループが、布帛表面中に大きな空隙空間を残す。
【0037】
張力が、編成布帛に対して印加されると、糸のループは変形して、全体に対して一定の弾性を与えることが可能である。張力が大きく、ステッチの変形能力を超過する場合には、糸は、張力加重を受け、糸の引張強度が、役割を果たす。単糸が、編成全体に対して使用されることにより、糸の破断点からの、または2つの糸の間の接合部における、布帛の引き裂きが回避される。
【0038】
図5を参照すると、
図1に示す編成品の実装変形例は、同一の布帛に対して複数の糸20を平行に編成することから構成される。ステッチは、同一のままであるが、単糸のみを使用する代わりに、複数の糸が、各ステッチを構成する。各糸20は、布帛の全表面にわたり連続するものであるが、糸の特性は共に組み合わされ得る。例としては、とりわけ、耐火性、機械的強度、または撥水性特徴がある。この変形例は、同一の単糸内において繊維を混合させるよりも実装が単純であるが、種々の繊維を同様の親密度では混和しない。細糸を使用することにより、各繊維間の相互作用を高めることが可能となる。この場合にも、やはりジャージステッチが利用され得る。
【0039】
図6を参照すると、本発明による原理案の他の代替例は、緯糸40および経糸50である種々の糸を共に織成することからなる。緯糸40および経糸50は、異なるものであってもよいが、前記緯糸40および経糸50のそれぞれの機械的強度が均等であることを確保することが必要である。しかし、ある方向が、他の方向と比較して好まれてもよい。織成品は、比較的緩くてもよく、緯糸40と経糸50との間にある程度の遊びを与えてもよい。この遊びは、糸を構成する繊維の弾性に関連するのではなく、糸同士の間の再配列に固有に関連する弾性を、布帛に対して与える。実施形態の一例は、平織りであってもよく、この場合には、緯糸および経糸は、対称であり、パラアラミド糸(Kevlar(登録商標)もしくはTwaron(登録商標))、ポリエーテルイミド糸(Ultem(登録商標))、ポリエーテルケトン糸(PEEK(登録商標))、ポリアミド糸(Nylon(登録商標))、天然糸(亜麻、麻、もしくはジュート)、または高分子重量ポリエチレン糸(Dyneema(登録商標)もしくはSpectra(登録商標))から作製される。
【0040】
織成品の弾性を上昇させるためには、やはり2つの糸を用いて緯糸を構成し、2つの糸を用いて経糸を構成することが賢明であり得る。
図7Aを参照すると、弾性である中心糸60が使用されるが、別の高引張強度糸62が、非常に幅広い態様でこの糸60を囲む。弾性糸60は、例えば、ナイロン糸(ポリアミド6−6)などであってもよい。高引張強度糸62は、パラアラミド糸(Kevlar(登録商標)もしくはTwaron(登録商標))、ポリエーテルイミド糸(Ultem(登録商標))、ポリエーテルケトン糸(PEEK(登録商標))、ポリアミド糸(Nylon(登録商標))、天然糸(亜麻、麻、もしくはジュート)、または高分子重量ポリエチレン糸(Dyneema(登録商標)もしくはSpectra(登録商標))であってもよい。高引張強度糸62は、中心に位置する弾性糸60の周囲に巻かれるかまたは捩じられる。
【0041】
図7Bを参照すると、張力が布帛に対して印加されると、中心に配置された弾性糸60は、伸張するが、周囲に位置する高引張強度糸62は、変形して、弾性糸60に対してより近づく。張力が、中心に位置する弾性糸60の変形能力を超過すると、次いで、高引張強度を有する糸62は、ぴんと張り、次いでこれにより構成された布帛に対して非常に高い機械的強度を与える。
【0042】
実装形態および利点
航空機の前方衝撃の際に、前方のシートのバックレストの後部における乗客の頭部の緩衝は、布帛パーツの弾性がより高くなると、一層効率的なものとなる。同様に、下方衝撃の際に、乗客の緩衝は、シートのシート部分の水平面において行われるが、これは、シート部分の下に追加されたストリップの弾性がより高くなると、一層効率的なものとなる。実際に、緩衝は、乗客からの運動エネルギーを布帛パーツの弾性エネルギーに転換することに基づく。乗客の衝撃は、換言すれば、巡航速度から停止状態に移る際に、乗客に対して伝達される力は、最小限に抑えられ、可能な限り大きな時間スケールにわたり緩衝が展開される。したがって、非常に高弾性の布帛に帰結する十分に低い弾性係数により、経時的に衝撃を展開することと、乗客が感知する衝撃を最小限に抑えることとが可能となる。糸を構成するために使用される繊維の引張強度を繊維の線密度で除算することにより、衝撃の際に引き裂かれない布帛の強度が定義される。したがって、布帛は、航空機の不時着時に前方衝撃により全速力で発射された乗客の衝撃に耐えることができ、またはシート部分の下に配置されたストリップの場合には下方衝撃の際に衝撃に耐えることができる。
【0043】
破壊強度は、弾性繊維については一般的に低い。この弾性は、同一の糸内において個々のフィラメントが相互に対して摺動し得ることにより、得られる。フィラメント同士の間の結束力が低いことは、破壊に抵抗する際に問題となる。なぜならば、個々のフィラメントが、低い力レベルにてばらばらになるからである。アラミド繊維(Kevlar(登録商標)もしくはTwaron(登録商標))、ポリエーテルイミド繊維(Ultem(登録商標))、ポリエーテルケトン繊維(PEEK(登録商標))、ポリアミド繊維(Nylon(登録商標))、天然繊維(亜麻、麻、もしくはジュート)、または高分子重量ポリエチレン繊維(Dyneema(登録商標)もしくはSpectra(登録商標))などの、非常に高い引張強度を有する糸を使用することにより、弾性および引張強度のこれらの相反する特徴を組み合わせることが可能となり、弾性編成品を形成することにより、または混合織成品を使用することにより、これらの特徴を組み合わせることが可能となる。編成は、布帛全体に対して単糸のみを使用して糸をステッチへと成形することである。大きなサイズの単糸の使用により、全体の機械的強度が保証されると共に、糸の破断点が回避される。ジャージステッチを使用することにより、糸の弾性とは無関係に、この構造によりこの弾性を得ることが可能となる。代替的には、弾性糸および高引張強度を有する弛緩糸を組み合わせた織成品の使用により、同一の結果に帰着することが可能となる。弾性構造および高引張強度糸の使用により、乗客に対する低減速と、布帛パーツの優れた機械的強度とを組み合わせることが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 骨組み
2 バックレスト
3 シート部分
4 補強ストリップ
5 カップホルダ
6 カップホルダ
7 アームレスト
8 ラック
9 中央垂直バー
10 単一の糸
20 複数の糸
40 緯糸
60 弾性糸
62 高引張強度糸