(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
ゼロ熱流束深部組織温度(DTT)測定システムが、ゼロ熱流束構造のヒータ及び温度センサを含むゼロ熱流束DTT測定プローブを介して内部体温を測定する。測定システムは、プローブとの信号導通をチェックし、プローブアイデンティティを認証し、プローブの使用カウントをデクリメントし、プローブから得られた情報に基づいてヒータ温度及び皮膚温度を求め、深部組織温度を算出する制御機構を有する、処理及び表示ユニットを含む。制御ループは、測定温度に関連する安全対策、並びにデータの完全性、及びプローブに関連付けられるプローブ使用情報に関連する安全対策を実装する。測定システムは、プローブをシステムに物理的に、解放可能に、電気的に結合することができる付属コネクタを有する信号インターフェースケーブルを含む。ケーブル及びコネクタは、プローブと分離した、システムの取り外し可能で交換可能な部品である単一要素を全体で構成する。温度センサ装置の動作を模倣する測定システムエミュレーションユニットによって、深部組織温度を示す標準出力信号が提供される。
【0023】
ゼロ熱流束DTT測定プローブ(以下、単に「プローブ」)が、少なくとも2つの温度センサ、ヒータ、及びプログラム可能メモリ素子を含む。例えば、このようなプローブのための構造は、その上に離間関係で配置される少なくとも2つの温度センサを有する可撓性基材を含む。好ましくは、温度センサは、層間に位置付けられる可撓性熱絶縁物によって、それぞれの基材層上で離間関係に維持される。基材は、少なくとも温度センサ、分離熱絶縁物、プログラム可能メモリ素子、及びヒータを支持する。プローブ構造は、プローブがプローブ信号インターフェースケーブルコネクタと取り外し可能に結合されるタブを有する周縁を含む。
【0024】
特定のゼロ熱流束DTT測定システムが、代表的要素を備える好ましい実施形態に関して記載されているが、本実施形態は単なる例示に過ぎない。他の実施形態が、記述されているより多くの又はより少ない要素を含むことも可能である。記述されている要素のいくつかを削除すること、及び/又は記述されていない他の要素を追加することもまた可能である。更に、要素を他の要素と組み合わせてもよく、及び/又は、要素を分割して追加的な要素にしてもよい。
【0025】
ゼロ熱流束DTT測定システム
図2によれば、ゼロ熱流束DTT測定システム40は、処理及び表示ユニット42(以下、「コントローラ」)及びプローブ44を含む。信号インターフェースケーブル46が、第1及び第2の端部、並びに第1の端部に装着されるコネクタ48を有する。コネクタ48において、プローブ44等のプローブがシステムに物理的に、取り外し可能に、電気的に結合されることができる。信号インターフェースケーブル46は、第2の端部に装着され、コントローラ42内の信号コネクタジャック52に挿入及び取り外しができるコネクタ50を有する。信号インターフェースケーブル46並びにコネクタ48及び50は、プローブ44と分離した、システムの取り外し可能及び交換可能部品である単一の一体要素として提供され、プローブと一体には形成されない。態様によっては、コネクタ48及び50を用いて、信号インターフェースケーブル46を介してシステムにドングル45の接続及び取り外しができる。
図3によれば、コントローラ42は、エミュレーションユニットによって生成された出力信号を多機能患者監視装置56等の医療機器に伝導するべくケーブル55を取り外し可能に差し込むことができる出力信号ジャック54を有する。出力信号は、システム40によって測定された深部組織温度を示し、エミュレートされた温度応答性装置によって生成される信号と合致している。コントローラ42の裏面にある手動操作式のC/Fボタン59が、温度を示すためのスケール(摂氏又は華氏)をシステム操作者が選択することを可能にする。
【0026】
図2で見られるように、コントローラ42は、測定温度、ステータス指示、プロンプト、警報及びその他のシステム情報が、目に見える形でシステム操作者に提供される情報表示要素を含む。例えば、液晶型(LCD)の多機能表示パネル43が測定温度を表示する。
【0027】
ゼロ熱流束DTTプローブ構造
ゼロ熱流束DTT測定システムにおいて用いることができるゼロ熱流束DTT測定プローブは、必ずではないが好ましくは、関連出願に従って構築される。
図4〜6に、
図2におけるプローブ44を代表する使い捨て可能プローブの例が示されている。これらの図によれば、ゼロ熱流束DTT測定プローブが、電気回路を支持する可撓性基材を含む。電気回路においては、第1の基材層上に配置されたヒータトレースが、熱絶縁材料の層の一方の側に面し、第1の基材層のゾーンを取り囲むヒータを画定する。そのゾーン内に第1の温度センサが配置され、ヒータの外側の第1の基材層上にプログラム可能メモリ素子が配置され、第2の基材層上に第2の温度センサが配置され、ヒータトレースの外側において基材表面上に複数の接点パッドが配置され、ヒータトレース、第1及び第2の温度センサ並びにプログラム可能メモリ素子を複数の導電性トレースが接点パッドに接続する。
【0028】
図4は、好ましいプローブ構造の、一部模式的に示した断面図である。
図5は、セクションが
図4の視点から回転された、好ましいプローブ構造の、一部模式的に示した断面図である。
図4によれば、プローブ44は、可撓性基材層と、熱絶縁材料層と、電気回路とを含む。電気回路は、ヒータ126と、第1の温度センサ140と、第2の温度センサ142と、を含む。ヒータ126及び第1の温度センサ140は、可撓性基材層103内又はその可撓性基材層103上に配置され、第2の温度センサ142は可撓性基材層104内又は可撓性基材層104上に配置される。第1及び第2の基材層103及び104は、可撓性の熱絶縁材料層102によって分離される。可撓性基材層103及び104は別個の要素であってもよいが、絶縁材料層の周囲に折り畳まれた単一の可撓性基材のセクションであることが好ましい。好ましくは、接着フィルム(図示せず)によって基材を絶縁層102に取り付ける。基材層104の片側に装着された接着剤層105には、皮膚にプローブを取り付けるための剥離可能なライナー(図示せず)が提供される。好ましくは、可撓性絶縁材料層109が層102、103、104の上に置かれ、接着フィルム(図示せず)によって基材層103の片側に取り付けられる。絶縁層109は、ヒータ126及び第1の温度センサ140の上に延在する。
【0029】
図5に示すように、電気回路には、プログラム可能メモリ素子170と、可撓性基材層103の内部又は上に配置された接点パッド171と、が更に含まれる。プログラム可能メモリ素子170は、ヒータ126の外側、好ましくはヒータ126と接点パッド171との間に位置付けられる。接点パッド171は、基材層103のセクション108上に配置され、これは絶縁層109を越えて突き出ており、ケーブル46の第1の端部に固定されるコネクタ48と、取り外し可能に接続できるようになっている。その他の図を参照して詳細に説明されるように、プログラム可能メモリ素子170は、認証データ、温度センサ校正値、測定温度データ、プローブ使用データ、及びその他の情報を格納する。温度センサ140及び142がサーミスタであると仮定すると、温度センサ校正情報はサーミスタごとに1つ以上の固有校正係数を含む。それ故、プログラム可能メモリ素子170をプローブ44上においてヒータ126と接点パッド171との間に配置しているので、格納されている温度センサ校正情報はプローブ44に恒久的に関連付けられている。その結果、ケーブルをコネクタによってプローブに恒久的に取り付けている必要がなくなっている。更に、ケーブル46及びコネクタ48は固有校正情報を格納しないので、それらは、関連出願に従って構成されるあらゆるゼロ熱流束DTT測定プローブのために用いることができる。
【0030】
図4及び5を参照すると、プローブ44は、第2の温度センサ142を皮膚に最接近させるようにして、ヒト被検者又は被検動物上に配置される。層102は、ヒータ126及び第1の温度センサ140を第2の温度センサ142から分離するために、第1の基材層103と第2の基材層104との間に挟み込まれる。動作時、層102は第1及び第2の温度センサの間の熱抵抗の役割を果たし、皮膚に最も近接した層102の表面上に設置された第2の温度センサ142は皮膚の温度を感知し、第1の温度センサ140は、身体から離れた層102の反対側の表面における温度を感知する。第1の温度センサ140が感知する温度が第2の温度センサ142によって感知される温度より低い間は、ヒータは層102及び皮膚を通る熱の流れを減らすように動作する。層102間の温度差がゼロである時は、層102を通る熱流が止まっている。これが、第1及び第2のセンサ140及び142によって感知されるゼロ熱流束条件である。ゼロ熱流束条件が生じると、第2の温度センサによって示される皮膚の温度は、深部体温ではないとしても、深部組織温度として解釈される。ゼロ熱流束条件に達すると、ヒータ126は、条件を維持するように必要に応じて調節される。好ましくは、以下のことに限定されるわけではないが、ヒータは、方形波のデューティサイクルを変化させることによって調節される。
【0031】
図6を参照すると、プローブ44の基材及び電気回路部分の好ましい構造が、接在セクション105、106、及び108を有する可撓性基材101を含む。必ずではないが好ましくは、第1、すなわち中央セクション105はほぼ円形である。第2セクション(即ち「テール」)106は、中央セクション105の周縁から第1の方向に外向きに延在する、球根状の端部107を有する狭く細長い矩形を有する。第3セクション(即ち「タブ」)は、
図5において見られる延長セクション108である。タブ108は、中央セクション105の周辺から第2の方向に外向きに延在する幅の広い矩形の形状を有する。タブ108には、コネクタ48のそれぞれ対応するバネ仕掛けの保持具を受容及び保持するための相対するノッチ110が形成される。好ましくは、テール106は、時計回り又は反時計回りのいずれかの方向に、180度未満の弓状距離によってタブ108から離れて変位される。
【0032】
図6によると、電気回路120が可撓性基材101上に配置される。必ずではないが好ましくは、電気回路120の要素は可撓性基材101の表面121上に設置される。電気回路120は、少なくとも導電性ヒータトレース、温度センサ、プログラム可能メモリ素子、導電性接続トレース部分、並びに装着及び接点パッドを含む。ヒータトレース124は、ヒータトレース124のいかなる部分も延在していない、基材101のゾーン130を取り囲む、概ね環状のヒータ126を画定する。これに関して、ゾーン130は、ヒータが動作するときに直接加熱されない。ゾーン130は、表面121の概ね円形の部分を占有する。更に特定すると、ゾーン130は、
図6に図示した表面121の部分と、反対側表面の対応する部分(この図には描かれていない)と、それらの間の中実部分と、を含む、基材101の円柱状セクションである。必ずではないが好ましくは、ゾーン130は、中央セクション105に中心合わせされ、ヒータ126と同心である。第1の温度センサ140は、ゾーン130に形成された装着パッドに装着される。第2の温度センサ142は、概ね環状のヒータ126の外側に配置された装着パッド上に装着される。好ましくは、これらの装着パッドはテール106の端部の概ね近くに(例えば、テールの球根状の端部107の中心又は中心近くに)形成される。いくつかの構成では、プログラム可能メモリ素子170は、プローブ44上に装着された少なくとも1つのマルチピン電子回路装置を含む。例えば、プログラム可能メモリ素子170は、タブ108近く又は隣接した中央セクション105上の表面121の一部に形成された装着パッドに取り付けられた、電気的に消去可能なプログラム可能読取り/書込みメモリ(electrically-erasable programmable read/write memory、EEPROM)で構成することができる。接点パッド171は、タブ108内の表面121上に形成される。複数の導電性トレース部分が、第1及び第2の温度センサ、プログラム可能メモリ素子170、並びにヒータトレース124を複数の接点パッド171と接続する。必ずではないが好ましくは、少なくとも1つの接点パッド171は、プログラム可能メモリ素子170と、ヒータ126、第1の温度センサ140、及び第2の温度センサ142のうちの1つとによって共有される。
【0033】
図6に図示したように、必ずではないが好ましくは、可撓性基材の可撓性及び適合性を更に高めるために、中央セクション105はそれ自体に形成された複数のスリット151、152を有する。スリットは周辺部から半径方向に、中央セクション105の中心に向かって延在する。スリットは、互いに独立して移動又は屈曲する領域を画定する。ヒータトレース124のレイアウトは、スリットを許容するように適応される。これに関して、ヒータトレースは、ゾーン130の周辺部から、長い方のスリット151の端部にかけて長さを増して行き、それらの端部で一段減少した後に、スリットによって画定されるゾーン内では、ヒータ126の外周辺部に向かって再び概して長さを増す区間を有するジグザグ又はつづら折りのパターンをたどる。図示したように、ヒータの構成はゾーン130で中心合わせされた概して環状の形状を有するが、この環にはスリットで切れ目が入っている。あるいは、この環状形状を、概ね連続した中央の環の周囲を取り巻くくさび形のヒータゾーンの周縁環を含むものとして見ることもできる。
【0034】
必ずではないが好ましくは、ヒータ126は、
図6を参照して理解することができる不均一な出力密度構造を有する。この構成において、ヒータ126には、第1の出力密度を有する中央部分128(細い線で描かれた部分)と、中央部分128を取り囲む、第1の出力密度より高い第2の出力密度を有する周縁部分129(太い線で描かれた部分)と、が含まれる。ヒータトレース124は連続しており、2つの端を含み、第1の端は接点パッド5へ、第2の端は接点パッド6へと移行する。しかし、スリットのために、中央部分128及び周辺部分129のそれぞれは、中央部分128のセクションと周辺部分のセクションとが交互になった一定の順序で配列された複数のセクションを含む。しかし、このヒータの環状構造では、中央部分128のセクションは概ねゾーン130の周囲の中央環内に配列され、周縁部分129のセクションは中央部分128の周囲に配列される。ヒータ126が作動されると、中央部分128はゾーン130を取り囲む第1の出力密度で熱の中央環を生成し、周縁部分129はこの熱の中央環を取り囲む第2の出力密度の熱の輪状環を生成する。
【0035】
ヒータ部分128及び129の異なる出力密度は、それぞれの部分の中で不変であってもよいし、代替的に、それらは変動してもよい。出力密度の変化は段階的でも連続的でもよい。出力密度は、ヒータトレース124の幅及び/又はつづら折れパターンの区間の間のピッチ(距離)によって設定されるのが最も簡易でかつ経済的である。例えば、抵抗、したがってヒータトレースが生成する出力は、トレースの幅に反比例して変化する。任意の抵抗に対し、ヒータトレースによって生成される出力は、つづれ折りの区間のピッチ(それらの区間の間の距離)にも反比例して変化する。
【0036】
図6に図示した可撓性基材101上の電気回路120を
図7の結線図に示す。
図6で番号1〜6が付されたタブ108上の接点パッド171は、
図7の同一番号の要素に対応する。図示した接点パッドの数はあくまで例示を目的とする。使用する接点パッドはもっと多くてもよく、又はもっと少なくてもよい。いかなる特定の数も、プログラム可能メモリ素子の特定の素子構成、ヒータ構成、温度センサの数などを含む設計上の選択によって決定される。構成によっては、接点パッドの数をできるだけ少なくするために、1つ以上の接点パッドを電気回路120の複数の要素とやりとりする電気信号伝達に活用することによって、回路のレイアウトを簡素化し、タブ108の寸法及び質量を最小限にし、インターフェースコネクタの寸法を縮小することが望ましい。
【0037】
好ましくは、プログラム可能メモリ素子170は、装着パッドによってプローブ44に装着されるマルチピンEEPROMを含む。
図6及び7は、電気回路の少なくとも2つの要素によって1つ以上の接点パッドが共有される構成を図示する。これに関し、
第2の温度センサ142の一方の導線(TH2)及びプログラム可能メモリ素子170のピン1を、導電性トレース部分によって接点パッド1に接続する。
第1及び第2の温度センサ140、142の導線及びプログラム可能メモリ素子170のピン4を、導電性トレース部分によって接点パッド2に接続する。
第1の温度センサ140の一方の導線(TH1)及びプログラム可能メモリ素子170のピン3を、導電性トレース部分によって接点パッド3に接続する。
プログラム可能メモリ素子170のピン2及び5を、導電性トレース部分によって接点パッド4に接続する。
ヒータトレース124の帰線端を導電性トレース部分によって接点パッド5に接続する。
ヒータトレース124の入力端を導電性トレース部分によって接点パッド6に接続する。
【0038】
図4〜6を参照すると、プローブ44が組み立てられたとき、中央セクション105及びテール106は、層102等の可撓性の絶縁材料の層の周囲に折り重ねられる。層102は、温度センサ間の熱抵抗及び電気絶縁を提供し、また、離間された構成において温度センサを支持する。換言すれば、第1及び第2の温度センサ140及び142は、ヒータ及び第1の温度センサが絶縁材料層の片側に面し、第2の温度センサがもう一方の側に面するようにして、絶縁材料層によって分離された基材材料のそれぞれ対応する層上に配置される。
【0039】
図4に図示したように可撓性基材101の1つ以上の側にレイアウトされた電気回路120を有するプローブ44は、材料及び部品表に特定した材料を使用して、関連出願に図示された方法で製造及び組み立てが可能である。好ましくは、プローブは、タブ108上に塗装、蒸着、付着、又は形成されてから硬化された別個の片又は材料層を含む剛化材とともに構成される。剛化材はタブ108の可撓性を低下させ、それによって、それをコネクタに確実に結合すること及び切り離すことを可能にする。
図4及び6を参照すると、好ましくは、タブ108のこのような剛化材は、可撓性基材101の第2の側に対応する可撓性基材101の外面に配置される。
【0040】
プローブ設計の考慮事項
ゼロ熱流束DTT測定プローブに関して行われる設計及び製作上の選択は、その動作に影響を及ぼし得る。1つの設計選択は、ゼロ熱流束条件の検出において用いられる温度センサに関連する。深部体温の重要性に鑑みると、ゼロ熱流束条件の信頼性の高い検出及び深部体温の正確な推定を可能にするために、温度センサが正確な温度データを生成することが非常に望まれる。この場合、トレードオフは温度センサの精度とコストとの間にある。ゼロ熱流束DTT測定においては、多数の温度センサ装置を用いることができる。これらの装置としては、例えば、PN接合、抵抗温度装置、及びサーミスタが挙げられる。小型のサイズ、取り扱いの利便性、使いやすさ、及び関心のある温度範囲における信頼性の理由から、サーミスタが好ましい選択である。それらの比較的安いコストのために、それらは1回使いきりの使い捨て可能プローブの望ましい候補となっている。
【0041】
サーミスタの抵抗の大きさはサーミスタの温度の変化に応答して変化する。それ故、温度の変化の大きさを求めるには、サーミスタの抵抗を測定し、既知の関係を用いて温度値に変換する。しかし、バッチ間の製作上の差異が、サーミスタ抵抗に大きなばらつきをもたらし得る。例えば、低コストのサーミスタは、所与の温度において装置間で±5%の抵抗値幅を呈し得るが、それは、±2.5℃の報告温度幅をもたらす。ばらつきはゼロ熱流束温度測定の精度及び信頼性を損ない得る。それ故、ゼロ熱流束DTTプローブの製作における部品及び労働のコストを抑制するにはこのようなサーミスタを用いることが望ましい一方で、装置動作に対する抵抗のばらつきの影響を補正することが重要である。
【0042】
サーミスタ抵抗のばらつきの範囲は、固定温度で測定したサーミスタ抵抗値から導出した係数の知識を必要とする、Steinhart−Hart式等の、周知の方法を用いたサーミスタ抵抗の校正によって補正することができる。サーミスタがその温度測定モードで作動されるとき、係数は、その指示温度の大きさを補正又は調整する周知の式の中で用いられる。このような補正は校正と呼ばれる。
【0043】
システム/プローブ信号インターフェース
図6に示される物理的レイアウト及び
図7の対応する電気回路は、タブ108上のプローブ信号インターフェース接続部の位置を示している。
図8は、タブ108上の信号インターフェースの位置にコネクタ48を解放可能に接続することによって確立されるプローブ44と測定システム40との間の信号インターフェースを示す。これらの図を参照すると、システム40は、コントローラ200、及びコントローラ200とプローブ44との間で電力、コモン、及びデータ信号を伝達する信号インターフェースを含む。好ましくは、インターフェースは、タブ108に解放可能に接続されるコネクタ48及び信号コネクタジャック52内に受容されるコネクタ50を有するケーブル46を含む。
【0044】
プログラム可能メモリ素子170がEEPROMを含むと仮定すると、別個の信号経路がEEPROM接地のために提供され、温度センサ信号経路は
図6及び7に従ってEEPROMの様々なピンと共有される。正当な理由から、この信号経路構成は、ヒータのためのDC接地(コモン)からEEPROMのためのデジタル接地を分離する。EEPROMとヒータが接地のための接点パッドを共有すると仮定する。コネクタ48の接点を含むケーブル46はある程度の抵抗を有する。ヒータ126に電力が送られると、それを通る電流は接地(コモン)接点を通ってコントローラ200に帰還しなくてはならず、このことは、接点のプローブ側に、その線の抵抗にそのヒータ126を通る電流を掛けたものと同等の、ある程度の電圧が発生することを意味する。その電圧はそれらの接点の健全性に依存して2又は3ボルトもの高さであり得る。それと同時にEEPROMで供給電圧が下がれば、あるいはロジック線のたとえ1つでも前述のこの生成電圧を下回れば、EEPROMに逆バイアスがかかることになり、その部品が損傷され得る。ヒータとEEPROMの接地を分離することは、EEPROMを損傷するこれら全ての可能性を除去する。したがって、ヒータを電気回路の他の全ての要素から電気的に隔離することが望ましい。よって、
図7に示すように、複数の接点パッドの第1の接点パッド(例えば、接点パッド5)は、ヒータトレースの第1の終端のみに接続され、一方、複数の接点パッドの第2の接点パッド(例えば、接点パッド6)は、ヒータトレースの第2の終端のみに接続される。
【0045】
図7及び8を参照すると、温度センサがNTC(negative temperature coefficient、負温度係数)サーミスタである場合には、接点パッド2上のコモン信号は、EEPROMのためのVcc及びサーミスタのための基準電圧を提供するために、一定電圧レベルに保持される。コントロールは、サーミスタ/EEPROMスイッチ回路を介して、サーミスタの読取りとEEPROMの、クロッキング/読取り/書込みの間で切り換えられる。再び、温度センサがNTCサーミスタであると仮定すると、EEPROMは、各サーミスタについて1つ以上の校正係数をその内部に保存する。プローブ44がシステム40に接続されると、EEPROMのSCLポートへ提供されるクロック信号に応答して、SDAポートを介してEEPROMから校正係数が読み取られる。以下の表はインターフェースの例示的な構造の概要を示している。
【0047】
プローブは、以下の表に挙げられた材料及び部品を用いて製作することができる。銅トレース及びパッドを有する電気回路を、従来のフォトエッチング技法によってポリエステルフィルムの可撓性基材上に形成し、従来の表面装着技法を用いて温度センサを装着する。表に記載されている寸法は厚さを示すが、φは直径を表わす。もちろん、これらの材料及び寸法は例示に過ぎず、本明細書の範囲を制限するものではない。例えば、トレースの部分又は全部を導電性インクで作製してもよい。別の例では、温度センサは好ましくはサーミスタであるが、PN接合又は抵抗温度検出器を使用してもよい。
【0049】
ゼロ熱流束DTT測定システム制御機構
図8を参照すると、ゼロ熱流束DTT測定システムは、処理及び表示ユニット42と全て一体になった、CPU、プログラムストレージ、データストレージ、クロック発生及びロジックアレイ並びに周辺装置を含む標準的な内蔵型シングルチップマイクロコントローラユニット(microcontroller unit、MCU)202上に構築されるコントローラ200を含む。測定システムは、プローブ44を調節するため、及びエミュレートされたサーミスタ出力信号を患者監視装置56に提供するために構築され、作動される。各周辺装置は適当なインターフェースを介してMCUに接続される。MCU 202上で走るシステムソフトウェアは、プローブ制御、表示、及びエミュレーションのためのロジックを含む。プローブ制御ロジックは、2つのサーミスタ140及び142の抵抗のアナログ−デジタル(analog-to-digital、ADC)読み取り値に基づいて皮膚温度を算出し、報告する。それは比例−積分−微分(proportional-integral-derivative、PID)制御を用いて、ヒータがゼロ熱流束条件に達し、「定常」状態の間、それを維持することを可能にする。表示ロジックは、LCDパネル43を介した目に見える形の温度及びシステムステータス情報の提供を管理する。エミュレーションロジックは、標準温度センサの動作を模擬するシステム出力信号を生成する。
【0050】
図8によれば、コントローラ200は、MCU 202、プローブ制御ロジック208及びスイッチロジック209、表示ロジック210、並びにエミュレーション制御ロジック211を含む。Vccソース212からサーミスタ140、142及びプログラム可能メモリ素子170にVccが提供される。スイッチ216が作動され、Vcc 218をパルス幅変調(pulse-width-modulated、PWM)波形219として提供することによってプローブヒータ126に電力を供給する。220にヒータコモンが設けられている。221にメモリ素子コモンが設けられている。情報スイッチ222は、サーミスタ140及び142によって生成されたアナログ信号が接点パッド1及び3からADC 224へルーティングされる第1の状態を有する。情報スイッチ222の第2の状態は、ADC 224を切り離し、接点パッド1を通じてシステムクロック(SCL)波形をプログラム可能メモリ素子170に結合する。これによって、メモリ素子170のシリアルデータ(SDA)ピンを経由し、接点パッド3を通じてデータがプログラム可能メモリ素子170から読み出されること及びそれに書き込まれることが可能になる。
【0051】
図8を更に参照すると、プローブ制御ロジック208が、プローブ44上のプログラム可能メモリ素子170への読み出し/書き込みアクセスを実行する。プローブ制御ロジック208はプローブから温度データ、プローブ認証情報、温度及び使用履歴、並びに校正データを読み出し、温度値を算出し、ヒータ制御演算を遂行し、プローブ44の動作状態に対する制御を実行し、LCDパネル43を介してシステム操作者とやりとりをする。プローブ制御ロジックは、プログラム可能メモリ素子170に、温度履歴、プローブ使用、及び校正データを含む情報も書き込む。
【0052】
図8は、サーミスタによって感知された皮膚及びヒータ温度を算出するために用いられるサーミスタ140及び142から得られた電圧信号E
1及びE
2を示している。
図8は、ヒータ126によって生成される熱量を制御するために用いられるヒータ制御信号u(T)も示している。スイッチ222が第1の状態にある時には、サーミスタ電圧信号E
1及びE
2がプローブ制御ロジック208によって読み出され、ヒータ及び皮膚温度値T
h及びT
sを得るために変換される。プローブ制御ロジック208は、ヒータ制御信号u(T)の大きさを決定するPID制御アルゴリズム内でヒータ及び温度値を用いる。E
1及びE
2は連続して読み出される。好ましくは、各値は所定の速度(例えば30Hz)でサンプリングされ、パラメータごとのサンプルの平均が用いられる。E
1及びE
2について測定された値を用いて、サーミスタ140及び142についての抵抗R
1及びR
2の大きさが算出される。次に、サーミスタごとにプログラム可能メモリ素子170から読み出された校正情報を用いて、ヒータ及び皮膚温度パラメータの値が算出される。好ましくは、以下のことに限定されるわけではないが、サーミスタの読み取り値は、Steinhart−Hartアルゴリズム、及び装置170から読み出された校正係数A、B、及びCを用いて算出される。代替的に、ヒータ及び皮膚温度の校正値を得るために、R対Tルックアップテーブル又はT(R)に関するその他の線形近似を用いることができる。誤差値ε(i)が、ヒータ温度と皮膚温度との差(即ち、サーミスタ140によって感知された温度とサーミスタ142によって感知された温度との差)として算出され、u(T)を算出するためにPID制御アルゴリズム内で用いられる。
【0053】
図8を更に参照すると、信号u(T)は、ゼロから最大値までの範囲の値を有するデジタル数である。値に応じて、ヒータスイッチ216は、ヒータに提供されるVcc波形219のパルス幅を、ヒータが完全に切られているゼロから、ヒータが継続的に通電されている最大値まで変調する。必ずではないが好ましくは、ヒータ126の安全な動作を確実にするために、パルス幅は予熱動作モードにおいては90%に制限され、平衡動作モードにおいては40%に制限される。エラーフリー動作をしている間、ヒータ126は継続的には通電されない。必ずではないが好ましくは、ヒータ126の安全な動作を確実にするために、PIDは毎秒実行し、ヒータPWM信号219を0.1%きざみで出力する(これは、1秒のデューティサイクルを所与すると、ミリ秒きざみの実行が必要であるのと同じことである)。我々はヒータ126の制御機構をPWM方法に限定するように意図しているのではないことに留意されたい。実際、当業者であれば、ヒータパワーは、以下のものに限定されるわけではないが、持続波変調を含む、他のモードによって制御することができることを理解しよう。
【0054】
図8を更に参照すると、MCU 202は、コントローラ200とシステム操作者との間の視覚インターフェースを制御するための表示ロジック210を作動させる。この点に関して、表示ロジックはMCUメモリ(不図示)から画像を得て、必要に応じてそれをカラー化し、それをLCDパネル43に出す。文字は様々なフォントを用いて描画される。プローブによって感知されたデータを用いて温度履歴グラフが構築される。例えば、状態機械(後述)が、測定温度を「定常」状態画面に出すように表示ロジック210に指令を送る(例えば、36100mC)。必要であれば、表示ロジック210はこれを華氏に直す。次に、それは数を固定小数点数(mC単位)から文字列の形の浮動小数点表示に直す(「36.1」)。主温度を摂氏で表すために特定のフォント及びMCU記憶場所が常に用いられる。
【0055】
図8及び9を参照すると、MCU 202は、エミュレーションユニット(EMU)227の動作を制御するエミュレーション制御ロジック211を含む。EMU 227は、患者監視装置等の電子医療機器用のコモン信号インターフェースに準拠する出力ジャック54における出力信号を生成するように動作可能である。必ずではないが好ましくは、出力信号は抵抗サーミスタの特性を擬態する。態様によっては、以下のことに限定されるわけではないが、EMUは、負性温度特性(negative-temperature-characteristic、NTC)YSI−400サーミスタの抵抗を模倣する。この点に関して、エミュレーションのプロセスは、測定システム40によってプローブ44を介して測定された皮膚温度を、同じ温度に応答してYSI−400サーミスタによって生成されるであろう抵抗値に変換する。動作時、エミュレーションロジック211はT
sの値を得て、その値をエミュレーションユニット227に提供する。エミュレーションユニット(EMU)227は温度値を対応するYSI−400サーミスタ抵抗値に変換し、出力ジャック54を通じて抵抗値を提供する。
【0056】
YSI−400サーミスタ信号は、多くの患者監視装置によって入力として受け入れられている。測定システム40は、EMU 227を駆動することによってこの出力信号をエミュレートし、DTT温度に相当するYSI−400校正チャートからの抵抗値を提供する。このようにすれば、YSI−400出力を受け入れる監視装置はいずれも、測定システム40からの出力も受け入れることになる。
【0057】
図9を参照すると、EMU 227は、エミュレートされるYSI−400サーミスタとの高度の整合性、及びゼロ熱流束DTT測定システム40の高いガルバニック絶縁を提供するために、マイクロプロセッサ制御の光源228によって照明される光依存性抵抗器229を利用するサーミスタエミュレーションシステムである。この点に関して、光源228は発光ダイオード(light emitting diode、LED)として構成され、光依存性抵抗器229は出力光電セルである。好ましくは、光電セル229は、同様に光電セルとして構成される基準光依存性抵抗器230と対にされるか、又はそれに関連付けられる。必ずではないが好ましくは、光電セル229及び230は一致したものである。LED 228は、エミュレーション制御ロジック211の制御を受けて両光依存性抵抗229、230を照明するように位置付けられる。光電セル229、230は各々、LED 228によって出力される光の強度に反比例する抵抗値を呈し、それはNTCサーミスタの温度応答性動作に対応する。光電セル229は、照明のレベルに応答したエミュレーション信号を提供する。光電セル230はMCU 202による光電セル229の閉ループ調整を可能にする。必ずではないが好ましくは、EMU 227は、Perkin−Elmerによって製品名LT2015−1の下で作られ、販売されているオプトカプラ等の一体型光電装置である。
【0058】
動作時、LED 228は皮膚温度値を、同じ温度に保持されたYSI−400サーミスタの抵抗に出力光電セル229の抵抗を等しくさせる強度の光に変換する。LED 228からの光は基準光電セル230にも衝突する。EMU 227は、基準光電セル230の抵抗に基づいてLED 228の強度を制御し、LED出力及び光電セルの感度のわずかな変化を補正する。エミュレーションロジック211は、デジタル−アナログ変換器(digital-to-analog converter、DAC)231及びアナログ−デジタル(A/D)変換器232(ADC)を介してEMU 227の制御を実行する。コントローラ200によってデジタル形式で格納されているT
sの現在値に基づいて、エミュレーションロジック211はLED駆動信号を生成する。駆動信号は、T
sに応答して、エミュレートされるサーミスタによって生成されるであろう抵抗値を出力光電セル229に帯びさせることになるような強度の光をLED 228に放射させる大きさを有する。駆動信号はDAC 231によってデジタルからアナログ形式に変換される。電圧−電流変換器233が、DAC 231によって生成されたアナログ電圧から電流を発生し、それがLED 228に印加される。出力光電セル229によって生成された抵抗値が正しいことを確認するために、エミュレーションロジック211はADC 232を介して基準光電セル230の抵抗値を読み、LED駆動信号を調整することによって、必要な補正を全て行う。EMU校正回路が、出力光電セル229によって生成されたEMU出力をADC 235へ定期的に経路変更することを目的として、エミュレータロジック211によって制御される出力スイッチ234を含む。これによって、変換表(下記)の初期算出及び定期的再チェックが可能になる。
【0059】
エミュレーションロジック211は、少なくとも4つの状態を含む状態フローに応答して動作する。「オフ」状態では、スイッチ234は、抵抗が事実上無限大になるように回路を患者監視装置56に対して開くように作動される。「オン」状態では、患者監視装置56が出力光電セル229の抵抗を測定することができるように、スイッチ234は出力回路を閉じる。この状態において、エミュレーションロジック211は、所望の出力抵抗値を提供することを目指して下記の変換表からの値を用いてLED 228の強度を調節する。「粗い校正」状態では、スイッチ234は患者監視装置56に対して回路を開き、ADC 235に対して回路を閉じる。その後、エミュレーションロジック211は変換表の粗い近似を構築する。「細かい校正」状態では、スイッチ234は患者監視装置56に対して回路を開き、ADC 235に対して回路を閉じる。その後、エミュレーションロジック211は、粗い校正を行ったせいで生じた可能性がある全ての誤差に関して変換表を補正する。
【0060】
EMU 227はエミュレーションロジック211によって変換表を参照して作動される。その例が以下に提示されている。表中の値は完全である必要はなく、むしろ、許容程度の誤差内に維持されることが理解される。変換表の第1列はZHFにおけるDTT温度を表す。第2列(YSI 400値)は、列1内の温度に関連付けられる目標抵抗値(オーム単位)を包含する。第3列(エミュレーション光電セル出力)は、EMU出力ジャック54において取得されるエミュレーション出力光電セル229の抵抗値が列2のYSI 400の値に一致するように粗い校正の間に光電セル229から取得されたADC設定値を提供する。第4列(基準光電セル出力)は、列3内のエミュレーション光電セル出力設定値に関連付けられる、基準光電セル230から取得されたADC設定値を提供する。
【0062】
「オン」状態では、エミュレーションロジック211はMCU 202内から現在温度値を受け取る。その後、現在温度値に最も近い表中の2つの温度値が判定される。エミュレーションロジックはその後、基準光電セル230のための目標ADC値を補間する。DAC 231は、粗い校正の後、最初、中点設定値に設定される。DAC 231はLED 228を駆動し、その結果、それが出力光電セル229及び基準光電セル230の両者を照明する。次に、基準光電セル230の出力がADC 235を介して補間ADC目標値と照合される。もし値が異なっていれば、実際の基準光電セル出力が補間目標値と同じになるまで、LED 228を駆動するDAC 231設定値が調整される。ゼロインされると、DAC値は、ADC 235の値が目標ADC値を追跡するように、更新され続ける。このプロセスが、現在温度の変化並びにLED出力及び光電セル応答の変化に対応するために、定期的に繰り返される。
【0063】
「粗い校正」状態は、プローブが患者に取り付けられるたびに生じる。まず、エミュレーションロジック211はLED 228によって作り出される照明を徐々に変化させ、あり得る値を広範囲にわたって調べ上げる。一定の間隔をおいて、エミュレーションロジック211は、光電セル229の抵抗値が、目標温度(例えば、25℃)に関連付けられるYSI 400の値を達成するようなLED出力に達しようと試みる。この条件が達成されれば、関連するLED設定値及び基準光電セル出力が、変換表中のそれらのそれぞれの列内に記録される。ロジック211は、変換表が完全に埋まるまで、LEDをインクリメントし、プロセスを繰り返す。
【0064】
「細かい校正」状態は、LED及び光電セル出力における有意のドリフトに要する時間よりも短いように選ばれた間隔で、定期的に生じる。エミュレータロジックが、システムの現在温度に基づいて単一目標温度のためのLED設定値を選ぶ。(例えば、37.5℃)。次に、基準光電セル230の抵抗値が出力光電セル229の実際の抵抗値と比較される。その差を用いて、出力光電セルの誤差をなくすために基準光電セルを補償するべく用いられる固定オフセットを設定する。
【0065】
コントローラ200は、以下の表に記載された部品を用いて組み立てることができる。もちろん、これらの部品は例示に過ぎず、本明細書の範囲を限定するものではない。
【0067】
ゼロ熱流束DTT測定システムの動作
ゼロ熱流束DTT測定システム40は、それが認識する条件及びシステム操作者によってそれに入力される指令に応答して、順序立って誘導されて深部組織温度を測定するように構築されている。システム40のコントローラ200は、システム40の動作及びそれに接続されるプローブ44の機能を統御し、プローブから得られるデータを、その形式をヒータ126の制御用、(表示パネル43及びEMU 272を介した)出力用、並びにプログラム可能記憶装置(以下、EEPROM)170内への格納用の形式に合わせるために処理する。
図10A〜10Kは、1つ以上の深部組織温度測定値を得るためにコントローラによって遂行される操作方法を示す。
図11A〜11Mは、方法の実行中にコントローラによって出力される情報を示す。情報は表示パネル43を介して提供され、各情報例は以下の説明において「画面」と呼ばれる。
【0068】
図10Aは、ゼロ熱流束DTT測定システム40が深部組織温度の測定を得るべく遷移する一連のマシン状態を示す状態遷移図である。特定の状態シーケンスが示されているが、記載される操作の間には、他にも多くの遷移状態、操作ステップ、及び障害条件があり得る。最初に電源が入れられると、システム40は「起動」状態250に入る。この時には、表示パネル43上には起動画面(
図11A)が出力される。完全に起動されると、システム40は「スタンバイ」状態251に入り、そこで、それはプローブ44が現れるのを待つ。この時には、スタンバイ画面(
図11B)が表示される。システム操作者がプローブ44を信号インターフェースケーブル46のコネクタ48に差し込むと、システムは、準備完了画面(
図11C)によって示される「準備完了」状態252に入る。プローブ44が患者に取り付けられると、システム40はいくつかの順次ステップを遂行する。まず、プローブ44が、平衡を加速するために、ヒータ126によって、核心温度ではない過渡的な皮膚温度よりいくらか高めに予熱される。数分間持続してよいこの動作条件は「予熱」状態253と呼ばれる。予熱が完了すると、システム40はPID制御を用いて皮膚サーミスタ142とヒータサーミスタ140との間の平衡を生じさせようとようと試みる。更に3〜5分を要し得るこの動作条件は「平衡」状態254と呼ばれる。予熱及び平衡状態のどちらの間においても、平衡画面が表示される(
図11D又は11E)。
図11Dの平衡画面上には、皮膚サーミスタ142によって測定された現在温度が表示されているが、最終温度にまだ達していないことを示すために、点滅し、色分けされている。画面は、平衡プロセスのおおよその進捗を示すプログレスバー401も含む。加えて、画面は、測定値が摂氏単位であるのか(
図11D)、それとも又は華氏単位であるのか(
図11E)を示す。平衡に到達すると、システム40は、定常画面(
図11F又は11G)によって示される平常の「定常」状態255に入る。定常画面は、皮膚サーミスタ142の現在温度、並びに読み取り値が摂氏単位であるのか(
図11F)、それとも華氏単位であるのか(
図11G)を示す。加えて、定常画面は、最近の患者の体温の読み取り値の棒グラフを示す。必ずではないが好ましくは、各棒は5分間隔の平均読み取り値を含み、最大2時間の全時間を示すのに十分なスペースを有する。患者の体温は、36℃、広く受け入れられている、ヒトにおける低体温の閾値を示す線を基準としている。もし患者の体温がこの値未満に下がると、棒の色が、例えば白から青に、変わり、患者の状況を更に強調する。患者の体温データはプローブ44上のEEPROM 170に書き込まれるが、プローブ44は多少の間、抜くことがあり得るため、体温の記録が途切れを含むことがあり得る。このような途切れは、持続時間に関わりなく、チャート内に棒が1本欠けていることで示される(
図11Hにおける408)。
図10Aには示されていないが、1つ以上の条件によってエラー状態に入ることがあり得る。例えば、第1のエラー状態は、システムエラー画面(
図11I)によって示される、システムエラー状態である。別の例として、第2のエラー状態は、プローブエラー画面(
図11J)によって示される、プローブエラー状態である。どちらの種類のエラー状態もシステムの動作を中断する。しかし、システム動作が中断されると、種々の解決措置が示される。この点に関して、プローブエラーは、プローブを抜くことによって解決することができる。しかし、システムエラーは通常、システム操作者によって解決できない。1つの状態から状態252、253、254、及び255のうちの後続のものへの遷移は全て、
図10Eにおいて継続するストリームFへプログラムフローを移動させる。
【0069】
図10B〜10Kは、コントローラ200が測定システム
40を作動させて、システム40に接続されたプローブ44を用いて深部組織温度を測定する方法を示す。これらの図及び付随する説明は、MCU 202の適当なプログラミングを前提としている。したがって、別途記載のない限り、図示され、説明されているステップ又は段は「コントローラ実行」ステップであるか、又はゼロ熱流束DTT測定システムによって実行されるステップである。
【0070】
システム40のための主制御ループを示す
図10Bにおいて、プローブ制御ロジック208を走らせるMCU 202によって実行される深部組織温度測定方法が開始する。
図10Cはプローブ接続シーケンスを示す。
図10Dは摂氏/華氏変更シーケンスを示す。
図10Eはプローブ切り離しシーケンスを示す。
図10Fはヒータ制御シーケンスを示す。
図10Gはデータ収集シーケンスを示す。
図10Hは安全性チェックシーケンスを示す。
図10IはEMU校正シーケンスを示す。
図10Jは校正ドングル接続シーケンスを示す。
【0071】
以下の記載では、図示され、説明されている「プロセス」は、コントローラによって遂行される一連のステップであるとの了解の下に、並列プロセスストリームが説明される。更に、このようなストリームの並列動作は、当業者によって了解されている在来技法であることを理解されたい。MCU 202は種々のプロセスストリームを、順次に、又は織り交ぜた方法で、ただし、システム操作者からすればそれらが並列に見えるような速度で、走らせることができる。これらのプロセスストリームは、プローブ切り離しシーケンス(ストリームF、
図10E)、ヒータ制御シーケンス(ストリームH、
図10F)、主データ収集シーケンス(ストリームI、
図10G)、及びC/F変更シーケンス(ストリームD、
図10D)である。
【0072】
更に、
図10B〜10Kに示される動作シーケンスにおいて遭遇するエラー条件は全て、2つのあり得る結果のうちの一方をもたらす。プローブに関連するエラーは、
図11Jのエラー画面をシステムに表示させ、その後、動作シーケンス内の現在状態におけるエラー待機状態に戻る。システム関連のエラーは
図11Iのエラー画面をシステムに表示させ、その後、エラーの解決のためにエラー待機状態に戻る。全てのエラー条件において、ヒータは切られ、エミュレーションは中断される。
【0073】
次に
図10A及び10Bを参照すると、処理及び表示ユニット42のプラグが差し込まれて電力が利用可能になると、第1ステップ261が開始する。ステップ262では、MCU 202において制御ソフトウェアプログラムが開始される。ステップ263では、起動状態250の間、表示パネル43上に起動画面(
図11A)が出力される。ソフトウェア初期化の完了後、ステップ264では、スタンバイ画面(
図11B)が表示される。次に、ステップ265では、システムをスタンバイ状態251に入らせ、その状態において、システムは、接続されたプローブ上のEEPROMの有無を確認しようとようと継続的に試みる。EEPROMが検出されると、スイッチ222がその第2の状態に配され、EEPROMから情報が読み出される。情報は少なくともプローブ認証コード及びプローブ種類データを含む。ステップ266では、EEPROM上のチェックサムが整合性について調べられる。例えば、格納されたデータの妥当性確認のために、認証及び種類データのコピーを複数の位置に書き込み、チェックサムアルゴリズムに提供することができる。もしチェックサムが無効であれば、エラー267が発生される。ステップ268では、EEPROMから読み出された認証コードが整合性について調べられる。もし認証が無効であれば、エラーメッセージ269が発生される。ステップ270では、どの種類のプローブが存在しているのかを判定するために、EEPROMから読み出されたプローブ種類パラメータが調べられる。もしプローブ種類が認識されていなければ、エラー271が発生される。好ましくは、1種類以上のプローブ種類が認識される。例えば、3つのプローブ種類のうちのいずれか1つがプローブに存在し得る。第1の種類は、ステップ272に出てくるが、患者のDTT測定に用いられる普通の使い捨て可能ZHFプローブである。この場合、プログラムフローは、
図10Cにおいて継続するストリームAに移動される。第2のプローブ種類は、ステップ273に出てくるが、ドングル、ある機能のために制限データ又はソフトウェアにアクセスするために用いられる装置である。例えば、信号インターフェースケーブルコネクタ48に取り外し可能に接続するように構成された校正ドングルに信号インターフェースケーブルを経由してアクセスすることができる。もしこのプローブ種類が認識されていなければ、プログラムフローは、
図10Jにおいて継続するストリームBに移動される。第3のプローブ種類は、274に出てくるが、プログラミングのアップグレード、変更、又は置換の目的でシステム40のファームウェアにアクセスするために用いられるファームウェアドングルである。もしこのプローブ種類が認識されていなければ、プログラムフローは、
図10Kにおいて継続するストリームCに移動される。
【0074】
以下のEEPROMメモリマップ及び擬似コードシーケンスは、DTTプローブの接続を検出するためにコントローラによって実行されるルーチンを示す。
【0076】
読み出し/初期化シーケンス
「スタンバイ」中、コントローラは、接続されているプローブを探す
//コントローラはポーリングを行い、EEPROMのための読み出し指令を絶えず送ることによってEEPROMからの応答を探す//
//プローブが接続されると、そのEEPROMが指令の受領を通知する。コントローラがこの応答を確かめると、それは、プローブが今、接続されていることを知る//
【0077】
接続されたプローブを検出すると、コントローラはEEPROMの内容を読み出す
これより、コントローラは、EEPROMから読み出されたデータを用いて動作する
//EEPROMの導通及び「書き込み」操作を検証するため以外に更なる「読み出し」操作は行われない//
【0078】
EEPROMからデータが読み出されると、コントローラはプローブの検証及び分類に進む
//データの完全性の検証を助けるために、データセットのサイズがチェックされる//
//プローブ種類及びリビジョンが、それらが有効であるかどうかを確かめるために、チェックされる//
//データの完全性を確実にするために、チェックサム(CRC)がデータセットにわたって算出され、EEPROM内に格納されている値を用いて検証される//
//プローブが本物であり、不正変更されていないことを確実にするために、認証キーが検証される//
//プローブが不正変更されているかどうかを確かめるために、プローブデータベースがチェックされる//
//プローブ上に時間及び使用数が残っていることを検証するために、データがチェックされる//
//プローブ上に保存されている過去のエラーが存在するかどうかを確かめるために、データがチェックされる//
【0079】
データチェックが全て合格となれば、その後、コントローラはプローブ(ヒータ、皮膚サーミスタ、ヒータサーミスタ)の物理的特質の試験に進む。
【0080】
さもなければ、画面上にエラーが表示される。
【0081】
チェックが全て合格すれば、その後、コントローラは次の状態に進む(「スタンバイ」から「準備完了」へ移動する)。
【0082】
プローブ接続シーケンス、
図10CのストリームA、では、プローブが接続されているとシステムが判定すると、プローブが温度監視のために身体に取り付けられた時の操作の準備をするために、一連の接続ステップが実行される。最初に、ステップ280においてヒータ126の健全性がチェックされる。ヒータ回路内の電気的導通が欠如しているか又は電気抵抗が不適当であれば、プローブエラー281が生じる。次に、ステップ282において、プローブの健全性がチェックされる。サーミスタ回路内の電気的導通が欠如しているか又は電気抵抗が不適当であれば、プローブエラー283が生じる。次に、ステップ284において、プローブリビジョンの値がチェックされる。この点に関して、データ構造又はEEPROMが変わったり、あるいはプローブの他のソフトウェア駆動式の変形物が所望されたりするときに備えて、プローブリビジョンパラメータが用いられる。もしプローブリビジョンが認識されなければ、プローブエラー285が発生される。
【0083】
図10Cのシーケンスを続けると、EEPROMは、プローブの延長使用又は再使用を制限するように意図されるパラメータを包含する。例えば、使用カウントパラメータ(DTTプローブEEPROMメモリマップ内の残り使用数フィールド内)がゼロよりも大きい値(例えば4〜6)から開始し、プローブが使用のために差し込まれるたびに1、デクリメントされる。ステップ286において、EEPROM上の使用カウントがチェックされ、もしそれがゼロに等しければ、システム動作が中断され、プローブエラー287が発生される。更なる例として、使用時間パラメータ(DTTプローブEEPROMメモリマップ内の残り時間フィールド内)がEEPROM上に格納される。システム40が動作するに従い、EEPROMは新しい情報(例えば、患者の体温)で定期的に更新される。この時、EEPROM上の現在の使用時間が、適当な時間間隔だけ下方へインクリメントされる。ステップ288において遂行されるチェックが、使用時間がゼロであることを発見すると、プローブエラー289が発生される。更に別の例では、シリアルナンバーパラメータが、同じプローブの直接コピー(即ち、「直接模倣品」)が検出されることを確実にする方策を実施する。この点に関して、使用された最も最近のプローブシリアルナンバーのリストがMCU 202の不揮発性メモリ内に保持される。もしステップ290が、特定のプローブが、許可された回数よりも多く使われていることを発見すると、エラー291が発生される。
【0084】
図10Cのシーケンスを続けると、ステップ293において、システム40は「準備完了」状態252に入り、
図11Cの準備完了画面が表示され、ヒータ126のPID制御が始まる。画面は、患者にプローブを取り付けるようにユーザに指示する。プローブが患者に取り付けられたかどうかを検出するには、可能な手段が多数ある。例えば、経時的な2つの温度センサの乖離(即ち、現在の│T
h−T
s│−以前の│T
h−T
s│)が所与の閾値を超えることによって、取り付けが指示され得る。また別の指示は、皮膚温度が設定量だけヒータ温度を超えたかどうかということになろう。場合によっては、好ましいモードは、サーミスタ142によって測定される通りの皮膚温度が閾値温度(例えば、35℃)を超えていること、及び皮膚温度の変化の時間的勾配が閾値、例えば1.5℃/5秒よりも大きいことをチェックすることである。システムは、これらの条件が満足されるまで、「準備完了」状態、ステップ294に留まる。プローブが患者に取り付けられたと判定されると、システムはステップ295において並列ストリームH(
図10F)を生成し、ステップ296において並列ストリームI(
図10G)を生成し、ステップ297において並列ストリームD(
図10D)を生成する。
【0085】
プロセスストリームD(
図10D)はC/Fボタン59を監視し、摂氏を華氏に変更する又はその逆を行う。ステップ300はボタン押し事象をチェックする。現在のモードが摂氏であれば、ステップ302はそれを華氏に変更する。現在のモードが華氏であれば、ステップ301はそれを摂氏に変更する。
【0086】
プロセスストリームF(
図10E)によって、システムは、システムからのプローブの切り離しを監視する。例えば、もしプローブが誤ってコネクタ48から外れたり又は取り外されたりすれば、システム操作者に警報することが望ましい。したがって、305において、システムは、EEPROMとの導通が遮断されているかどうかを、そこから読み出しをしようと試みることによって判定する。もしコントローラ200とプローブとの間の信号の導通が遮断されていなければ、読み出しは成功し、システムは後続の状態へ移行する。もし読み出しが失敗すれば、プローブはコネクタと切断されており、システムをスタンバイ状態265に戻すために一連のステップがとられる。まず、ステップ306において、ヒータのPID制御の動作が停止される。次に、ステップ307において、サーミスタからのデータ収集が中止される。最後に、ステップ308において、EMUサブシステムへの外部回路の動作が停止される。その後、ステップ309がソフトウェア制御をステップ265に戻す。
【0087】
プロセスストリームH(
図10F)を用いて、コントローラはヒータ126の制御を維持する。ステップ310において、プローブ44が危険な温度状況になっていないかを監視する並列プロセスストリームEが開始される。その間、コントローラは、ステップ293において開始されたPID制御方法を通じてヒータ126の動作を調節し続ける。次に、ステップ312において、コントローラは、ステップ294に関して上述された方法を用いて、プローブが今もなお患者に取り付けられているかどうかをチェックする。もしソフトウェアが制御ループ内において数値的不安定を検出すれば、プローブエラー313が生じる。ステップ314において、許容ヒータ最大出力が90%に増加される。ステップ315において、コントローラはシステムに「予熱」状態(
図10Aにおける状態253)に入らせ、表示パネル43上に平衡画面(
図11D又は11E)を表示させる。この状態におけるエラーはプローブエラー316を生じさせる。
【0088】
次に、好ましい予熱プロセスを示す
図12を参照する。この予熱プロセスでは、u(T)を算出するためにPID制御アルゴリズム内で用いられる誤差値ε(i)がオフセット項ε
oによってバイアスされる。ここで、
【0090】
図13に、減衰オフセット項を表す曲線族が示されている。減衰オフセット項の効果は、初期誤差項オフセット(ε
n)として知られている初期オフセットによって、目標ヒータ温度を過渡的な皮膚温度よりも高く設定することである。オフセットは、予熱終了時に通常のPIDヒータ制御へ滑らかに移行するように持続時間(t
n)の予熱期間を通じて減衰することを許される。
図12によれば、ステップ3151において、コントローラが、好ましくはプローブの現在の状況に基づいて、初期予熱パラメータ(初期誤差項オフセット(ε
n)及び予熱持続時間(t
n))を決定する。これらの項を生成するために用いることができる1つのプローブ状況は、皮膚サーミスタ142によって感知される時間的変化率(勾配)である。例えば、もしサーミスタ142の勾配が大きければ(例えば、3.6℃/分よりも大きければ)、プローブは、患者のDTT温度に対して平衡になっているというには程遠く、最大限の予熱が必要である。この場合のためには、ε
nは3℃(
図12におけるε
1)に設定され、t
nは300秒(
図12におけるt
1)に設定されよう。別の例では、もしサーミスタ142の勾配が中ぐらいであれば(例えば、0.75℃/分)、プローブは平衡にはなっていないが、最大限の予熱では、プローブは患者のDTT温度を通り越してしまうことになろう。この場合には、初期誤差項オフセットε
nは1.5℃(
図13におけるε
2)に設定され、t
nは150秒(
図12におけるt
2)に設定される。第3の場合においては、もしサーミスタ142の勾配が低ければ(例えば、0.24℃/分)、おそらく、平衡になったばかりのプローブが一時的に患者から離れたことを示しており、予熱の必要はなく、ε
nとt
nはどちらもゼロに設定される。ステップ3152において、予熱開始以降の持続時間(t)が算出される。ステップ3153において、ステップ3152において算出された持続時間が、ステップ3151において算出された予熱持続時間(t
n)と比較される。もし、tがt
n以上であれば、予熱は完了され、プロセスは
図10Fのステップ317に進む。もしtがt
nよりも小さければ、プロセスは、更新オフセット項(ε
o(t))が算出されるステップ3154に進む。ステップ3155において、誤差値ε(i)をオフセットε
o(t)と結合することによって、新しい誤差値εが算出される。この誤差値がヒータ126のPID制御において用いられる。ε
o(t)をtに関連付ける線形関数が用いられているが、これは、予熱ステップ315を限定するように意図されているものではない。実際に、他の関数を用いることができよう。
【0091】
図10Fに示されているプロセスストリームHを再び参照すると、予熱ステップ315が完了すると、コントローラはステップ317において、ヒータ出力が異常に高くなっていないか再びチェックする。その後、ステップ318において、コントローラはシステムに平衡状態(
図10Aにおける254)に入らせる。それによって、プローブをZHF状況に至らせようと試みるために、PID制御がヒータ126に適用される。この状態におけるエラーはプローブエラーメッセージ319を生じさせる。ZHFが達成されれば、コントローラはステップ320においてEMU 227の校正に関するチェックを行う。もしEMUが校正されていなければ、制御はステップ318に戻る。EMU校正が完全であれば、コントローラはシステムを定常状態状況321に送る。そこで、エミュレータ抵抗は、接続された患者監視装置にアクセス可能になり、PID制御は、ZHF状況を維持するように作動される。この状態において何らかの障害があれば、プローブエラーメッセージ322が生じる。
【0092】
プロセスストリームI(
図10G)を用いて、コントローラは主データ収集シーケンスを開始し、維持する。第1ステップ325において、コントローラはプロセスストリームG(
図10I)を経由してEMU 227の校正を開始する。次に、ステップ326において、コントローラは、ヒータサーミスタ140及び皮膚サーミスタ142によって感知されたヒータ及び皮膚温度(T
h及びT
s)を求める。ADC 224を介して得られるサーミスタデータは電圧を単位にしており、それが抵抗に変換され、次に温度に変換されることに留意されたい。ステップ326内において、抵抗値は、EEPROM 170上に格納されているSteinhart−Hart係数を適用することによって、温度に変換される。変換されると、ステップ327において、T
h及びT
sの移動平均が更新される。温度データ点の収集はもっと速くすることができるが、好ましくは、1秒毎に1回遂行される(1Hz)。したがって、各データ点セットが得られた後、データ収集はステップ328に進み、平衡状態に入るための基準が満たされているかどうかを確かめるために、ステップ329において現在のセットオフデータ点がチェックされる。理想的には、T
h=T
sのときにゼロ熱流束状況が達成されるが、この状況が丁度満たされることはまれである。実際には、平衡に近づくに従い、T
h及びT
s温度曲線の時間的勾配は非常にゆっくりと変化し、わずかな計器誤差源のせいで、システムはゼロ熱流束状況に入ったり出たりし得る。加えて、差が許容精度限界の範囲に入っている限り、熱流束が完全に無くなることを達成する必要はない。一例として、1)T
hとT
sとの差が第1の閾値(例えば、0.1℃)未満であり、かつ2)T
sの時間的勾配が第2の閾値(例えば、0.06℃/分)未満であれば、プローブはゼロ熱流束状況を達成したと見なされる。
【0093】
平衡の基準が満たされれば、コントローラは、ステップ337において、外部の患者監視装置56に患者の体温データに相当する抵抗値へのアクセスを提供するために、EMUシステム227に、出力信号ジャック54に対してスイッチ234を閉じさせる。その後、ステップ338において、コントローラは、「定常」状態255(
図10A)の間の表示パネル43上の定常画面(
図11F又は11G)の出力を開始する。この時、ステップ339において、コントローラは患者の体温の一切の変化をEMU 227に伝える。EMUの動作に何らかの障害があれば、システムエラー340が生じる。
【0094】
周期的な間隔で、例えば5分毎に、EEPROM 170上のデータが更新される。ステップ341において、コントローラは、時間間隔が経過したかどうかを判定する。もし経過していなければ、新たなデータ点セットが収集される(ステップ326)。さもなければ、患者の体温の移動平均がEEPROMに書き込まれる(ステップ332)。書き込みエラーがあると、プローブエラーメッセージが生じる(ステップ333)。次に、EEPROM上の使用時間値が更新され、ステップ341において使われた時間間隔を反映する。もしプローブ44が、時間間隔よりも短い間しか差し込まれていなかったならば(即ち、現在の使用の間にこのステップが初めて行われた時)、EEPROMから読み出された使用カウントパラメータが1、デクリメントされ(ステップ335)、デクリメントされた使用カウントがEEPROMに書き込まれる。明らかなことであろうが、プローブが差し込まれるたびに、かつその後、主データ収集シーケンスが開始され、システムが釣り合いに達し(ステップ329)、更新エラー(ステップ340)がなく、トレンド書き込みエラー(ステップ333)がない場合にのみ、使用カウントは1回だけデクリメントされる。つまり、使用カウントは1回チェックされ(
図10C、ステップ286及び288)、もし使用カウントが前の接続シーケンスの間に阻止値(本例ではゼロ)に達していなければ、それは現在のプローブ接続シーケンスの間に1回デクリメントされる。最後に、MCUメモリの使用済みプローブシリアルナンバーのリストが更新される(ステップ336)。その後、新たなデータ点セットが収集される(ステップ326)。
【0095】
もし、ステップ329において、コントローラが、プローブ44は平衡の基準を満たしていないと判定すると、EMU 227は切られ(330)、ステップ331において、システムは「平衡」状態254(
図10A)に留まり、ディスプレイ43上に平衡画面(
図11D又は11E)を示す。
【0096】
プロセスストリームE(
図10H)を用いて、コントローラはプローブ44における異常状況に関する継続チェックを遂行する。まず、ステップ342において、コントローラは、値が危険閾値、例えば43℃、を超えていないか皮膚温度T
sをチェックする。異常があれば、プローブエラー343が生じる。次に、ステップ344において、コントローラはヒータ温度T
hの同様のチェックを行う。異常があれば、プローブエラー345が生じる。その後、ステップ346において、コントローラは、2つのサーミスタ値が互いに一致していることを確実にするために、T
sとT
hとの差の大きさを閾値(例えば10℃)と比較する。このステップにおいて異常があれば、プローブエラー347が生じる。ステップ348において、コントローラはヒータ126の動作をチェックする。異常があれば、プローブエラー349が生じる。
【0097】
ステップ348に関して、ヒータ制御の好ましいモードがパルス幅変調であれば、単純で効果的なヒータ安全回路が、ヒータ動作パラメータ:ヒータを通る電流レベル、及びPWM信号の任意のパルスの間にヒータの通電が持続する時間、を観察する。所定の安全レベル(例えば700mA)よりも高い電流レベルは、ヒータ内における短絡状況の可能性を示す。所定の時間(例えば2秒)よりも長いパルス幅は、ヒータスイッチ216を通電状態に長く留めさせすぎる異常の可能性を示す(これはヒータを過熱させることになる)。
図13に、PWMヒータ制御モードのための好ましいヒータ安全回路が示されている。ヒータ安全回路は、ヒータ電流検出器400、ヒータ通電タイマ402、MCU 202のレジスタ405、電流感知抵抗器403、及びヒータ安全スイッチ407を含む。必ずではないが好ましくは、ヒータ安全回路の要素はコントローラ200内に設置される。もちろん、ヒータ126はプローブ44上に設置される。ヒータスイッチ216が閉じられると、ヒータ126によって電流パルスが引き出される。抵抗器403によって電流の大きさが感知され、その結果生じる電圧が電流検出器400及びタイマ402の両者に入力される。電流検出器400は入力電圧のレベルを監視する。電流パルスがオンになると、タイマ402はカウントダウンを開始する。もし電流の大きさが安全レベルを超えれば、電流検出器400は、レジスタ405内に格納される異常指示を生成する。もしパルスが立ち下がる前にタイマ402がカウントを終えなければ、それはゼロにリセットされ、次のパルスとともにゼロから新たなカウントを開始する。もしパルスがゼロに立ち下がる前にタイマがカウントを終えれば、それは、レジスタ405内に格納される異常指示生成する。レジスタ405内の異常指示はMCU 202に報告され、同時に、ヒータ安全スイッチ407を開かせ、それにより、ヒータ126への電流の流れが停止する。ヒータ安全性の異常が生じると、MCU 202は、プローブを故障中として標識してそれが再び使用されるのを防ぐエラーコードをプローブに書き込む。その後、MCU 202はレジスタから異常を消去し、それにより、安全スイッチ407が閉じられる。
【0098】
最後に、ステップ350において、コントローラは患者からプローブの脱離の基準を適用する。この点に関しては、皮膚温度が30℃未満に下がり、かつ皮膚温度がヒータ温度を所定の値(例えば、1.0℃)だけ下回るか、又は皮膚温度の勾配が<−625m℃/5秒であるか、のいずれかである。どちらかの条件が満たされれば、コントローラは、ステップ351において、システムを「準備完了」状態252(
図10A)に戻す。
【0099】
プロセスストリームG(
図10I)を用いて、EMU 227の動作が開始され、維持される。他の部分で記載しているように、YSI−400の形式で患者の体温を正確にエミュレートする出力を提供するために、EMUは定期的に自己校正する。好ましくは、校正は実際には2つの過程:粗い校正と細かい校正で遂行される。粗い校正は比較的長期のプロセス(例えば数分)になり得る。したがって、それは、患者の体温の出力を遅延させないようにするために、平衡「状態」254(
図10A)の間に遂行される。もし粗い校正が失敗すれば(ステップ353)、システムエラー354が生じる。粗い校正が成功すれば、ステップ355において、コントローラはいくらかの期間、例えば5分、の遅延を生じさせ、その後、EMUの細かい校正が行われる(ステップ356)。細かい校正は粗い校正よりも短いプロセスであり、例えば、完了に要するのは1秒未満である。
【0100】
態様によっては、ゼロ熱流束DTT測定システム40の校正をチェックするため(プロセスストリームB)、及びエミュレーションシステムの校正を開始するために(プロセスストリームG)、校正ドングルが用いられる。この点に関して、プロセスストリームB(
図10J)を用いて、コントローラは、システム操作者が校正ドングルを使ってシステムの校正をチェックすることを可能にする。このドングルは、それが患者ケーブルに接続し、S−H係数の格納用のEEPROMを有するという点で、プローブに似ている。しかし、ドングルは、サーミスタではなく高精度抵抗器を有することによって、プローブとは異なる。これらの抵抗器の抵抗値は、表示パネル43及び患者監視装置56上で読むことができる標準出力を提供するように選ばれる。このプロセスによって、システムの機能及び精度の完全な検証が提供される。最初に、ステップ360において、コントローラが並列プロセスストリームG(
図10I)を経由してEMU 227の校正を開始する。次に、コントローラは、ステップ361において、皮膚サーミスタT
s及びヒータサーミスタT
hの温度を求める。ADC 224を介して得られるサーミスタデータはADCカウントを単位にしており、それが抵抗の単位(オーム)に変換されることに留意されたい。ステップ361内において、抵抗値は、ドングルのEEPROM上に格納されているSteinhart−Hart係数を適用することによって、温度に変換される。ステップ362において、コントローラはEMU 227をT
sの現在値で更新する。その後、コントローラは校正画面(
図11K)を出力する。表示は、ドングルが外されるまで継続する。
【0101】
態様によっては、ゼロ熱流束DTT測定システム40のプログラミングを更新するためにドングルが用いられる。プロセスストリームC(
図10K)が、システム操作者がファームウェア更新ドングルを用いてコントローラ200のファームウェアを更新することを可能にする。このドングルは、患者ケーブル46のコネクタ48に接続し、EEPROMを有するという点で、普通のプローブに似ている。しかし、それはヒータ又はサーミスタを有しない。まず、ステップ370がEEPROMの内容のチェックサムを検証し、もし正しくなければ、エラー371を生じる。その後、ステップ372が更新画面#1(
図11L)を表示させる。ステップ373において、ユーザが、C/Fボタン59を押すことによって更新を確認する。この時点で、ドングルが外されているかどうかチェックが行われ374、それに続いて、「スタンバイ」状態251(
図10A)に戻る。(このチェックが以下のステップ378、380、381、382、及び383のそれぞれの後で繰り返される。)ボタン押しが検出されると、ステップ377が表示パネル43を更新画面#2(
図11M)に変更する。ステップ378がローダチェックサムを検証し、異常があればプローブエラー379を生じる。ステップ380がドングルのEEPROMからの更新ソフトウェアを解読し、ファームウェア更新コードを走らせる。ファームウェアの更新が完了すると、ステップ381、システムがチェックサムを検証する。もしチェックサムが正しくなければ、システムは前のバージョンのファームウェアに復する、ステップ588。ステップ382が、古いバージョンのファームウェアをメモリから消去することによってクリーンアップを遂行し、それに続いて、システムの認証キーの書き替えが行われる、383。最後に、ステップ384がDTT測定システムを新しいファームウェアに再設定させ、それに続いて、ファームウェア更新ドングルが外される、ステップ385。
【0102】
図15は、校正及びプログラミングに用いることができるドングル構造を示す。ドングル1500は平面図で示されており、視点は、電子部品が実装されているドングル表面1501に向けられている。このドングル構造では、DTTプローブと同じように患者センサケーブル46に物理的に、解放可能に、電気的に接続することができるタブ1508を有するように構成された硬質回路基板の一方の表面上に部品が実装されている。ドングルは、5つの表面実装抵抗器R1〜R5と共に8ピンSOIC(small-outline integrated circuit(スモールアウトライン集積回路))EEPROM 1510を収容するように構築されている。
【0103】
通常、校正の方がプログラミングよりも必要とされる記憶空間が小さいので、8ピンSOIC EEPROMの使用により、校正ドングル及びプログラミングドングルの両者が同じPCBを共有することができる。EEPROMの配線のおかげで、特にWP(write protect(書き込み禁止))が回路内でVss(接地)に配線されているおかげで、ドングル回路網に取り付けられている間、EEPROMに対して読み取りと書き込みがどちらも可能になる。
【0104】
好ましくは、校正ドングルは、抵抗が36℃付近で10KΩサーミスタのものと厳密に一致する高精度の(.1%)抵抗器を必要とする。プログラミングドングルは、抵抗が10kΩである低精度のプルアップ抵抗器を必要とするだけである。PCB上の抵抗器の位置によって、回路を視覚的に識別することが可能である。即ち、表面実装抵抗器が位置R1及びR3に配されていれば、ドングルはプログラミングドングルと識別することができる。任意追加的に、低精度の6.2Ω抵抗器が位置R5を埋めることができる。この位置は、ヒータ回路網がチェックされることを可能にする。
【0105】
測定システム及びプローブの構成及び動作の原則について、現在の好ましい実施形態を参照して説明してきたが、説明された原則の意図から逸脱せずに多様な修正を行うことができることを理解されたい。したがって、これらの原則は以下の請求項によってのみ制限される。