(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038895
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】正面カバーを引き出しに装着するための締結装置
(51)【国際特許分類】
A47B 88/00 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
A47B88/00 B
【請求項の数】21
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-511683(P2014-511683)
(86)(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公表番号】特表2014-515278(P2014-515278A)
(43)【公表日】2014年6月30日
(86)【国際出願番号】AT2012000140
(87)【国際公開番号】WO2012159139
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2014年5月2日
(31)【優先権主張番号】A749/2011
(32)【優先日】2011年5月24日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルツアップフェル,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ベンジャミン
【審査官】
蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/059652(WO,A2)
【文献】
特表2010−532684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00−88/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面パネル(101)を引き出し(102)に解放可能に締結するための締結装置(1)であって、
前記正面パネル(101)に事前に装着された少なくとも1つの家具接続金具(2)と、
前記引き出し(102)に関連付けられた係合装置(10)であって、前記家具接続金具(2)が押し入れられたときに自動的に前記家具接続金具(2)を保持し、制御輪郭(12)を有する移動可能な係合要素(11)を有する、係合装置(10)と、
前記係合装置(10)用の係止装置(20)であって、前記家具接続金具(2)が前記係合装置(10)から偶発的に解放されることを防止する係止装置(20)と
を備え、
該締結装置(1)は細長の穴として形成されたガイド通路(3)を有する主要プレート(73)を有し、前記係止装置(20)が、前記ガイド通路(3)内で移動可能であり、かつ前記係合要素(11)の前記制御輪郭(12)に当接する移動可能な制御本体(4)を有する、
締結装置(1)。
【請求項2】
前記正面パネル(101)を、前記引き出し(102)の引き出し側壁(100)に解放可能に締結する請求項1記載の締結装置。
【請求項3】
前記係合要素(11)が回転軸(A)を中心に枢動可能に装着される、請求項1または2に記載の締結装置。
【請求項4】
前記係合要素(11)の前記制御輪郭(12)が、前記係合要素(11)の回転軸(A)に対して、さまざまな径方向間隔を有する、請求項3に記載の締結装置。
【請求項5】
前記制御本体(4)が、前記ガイド通路(3)内に誘導されながら変位可能に装着される、請求項1から4のいずれか一項に記載の締結装置。
【請求項6】
前記ガイド通路(3)が、湾曲した形状である、請求項5に記載の締結装置。
【請求項7】
前記制御本体(4)は、
前記ガイド通路(3)内で移動可能な圧力ローラ(5)構造と、
一体型構造と、
ボルト型構造と、
鋼製の構造のうち、少なくとも1つを有するように形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の締結装置。
【請求項8】
前記ガイド通路(3)が、半径が連続的に低減していく、少なくとも部分的に湾曲した形状である、請求項1から7のいずれか一項に記載の締結装置。
【請求項9】
前記家具接続金具(2)用の送り通路(6)を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の締結装置(1)であって、
前記送り通路(6)が直線形状であり、
前記係止装置(20)が、自動的に、前記送り通路(6)上の少なくとも2つの異なる位置において前記家具接続金具(2)を保持し、偶発的に解放されないようにする、
締結装置。
【請求項10】
前記係止装置(20)が、前記送り通路(6)上の任意の位置において少なくとも部分的に前記家具接続金具(2)を保持し、偶発的に解放されないようにする、請求項9に記載の締結装置。
【請求項11】
前記家具接続金具(2)用の引き入れ装置(30)を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の締結装置(1)であって、
前記引き入れ装置(30)が、ばね(32)によって荷重がかけられた枢動レバー(31)を有し、前記枢動レバーは、前記移動可能な制御本体(4)を前記ガイド通路(3)内で変位させ、前記係合要素(11)を枢動させ、前記家具接続金具(2)をばね荷重(32)の下で前記引き出し(102)に向かって引っ張る、
締結装置。
【請求項12】
前記係合装置(10)からの前記家具接続金具(2)の意図的な解放を可能にする前記係合装置(10)用の係止解除装置(40)を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の締結装置(1)であって、
前記係止解除装置(40)は、前記制御本体(4)を前記係合要素(11)の前記制御輪郭(12)から持ち上げ、それによって前記係合要素(11)および前記家具接続金具(2)を解放する、
締結装置。
【請求項13】
前記係止解除装置(40)が、前記係止解除された家具接続金具(2)の取り出しを可能にする取り出し装置(41)を有し、
前記取り出し装置(41)が前記係止解除された係合要素(11)を枢動させ、それによって前記家具接続金具(2)を前記引き出し(102)から飛び出させる、
請求項12に記載の締結装置。
【請求項14】
前記係止解除装置(40)が、外部からアクセス可能であり、かつ前記係止解除装置(40)および/または前記取り出し装置(41)がそれを通じて作動可能である工具用の工具受け入れ手段(42)を有する、請求項13に記載の締結装置。
【請求項15】
前記締結装置(1)が、前記正面パネル(101)用の高さ調整装置(50)および/または横方向調整装置(60)を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の締結装置。
【請求項16】
前記制御本体(4)と共働する前記制御輪郭(12)が、前記移動可能な係合要素(11)上ではなく、前記移動可能に装着された枢動レバー(31)上に配置される、請求項11から15のいずれか一項に記載の締結装置。
【請求項17】
前記枢動レバー(31)が、前記締結装置(1)の主要プレート(73)に回転可能に装着され、
前記締結装置(1)の作動準備ができている状態における前記主要プレート(73)は、前記締結装置(1)のハウジング(70)に対して固定式に設けられる、
請求項11に記載の締結装置。
【請求項18】
前記枢動レバー(31)が、前記制御輪郭(12)に衝突する前記制御本体(4)によって前記係合要素(11)に少なくとも時折、連結される、請求項11に記載の締結装置。
【請求項19】
前記制御本体(4)が、
圧力ローラ(5)の形態であり、
細長の穴の形態の前記ガイド通路(3)内に移動可能に装着され、
細長の穴の形態のガイド(33)内に移動可能に装着され、
前記圧力ローラ(5)が、前記制御輪郭(12)に衝突する、
請求項11から18のいずれか一項に記載の締結装置。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の、正面パネル(101)を引き出し(102)に解放可能に締結するための少なくとも1つの締結装置(1)を有する引き出し(102)。
【請求項21】
請求項20に記載の引き出し(102)を有する家具製品(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正面パネルを引き出しに、特に詳細には、引き出し側壁に解放可能に締結するための締結装置であって、
正面パネルに事前に装着された少なくとも1つの家具接続金具と、
引き出しに関連付けられた係合装置であって、家具接続金具が押し入れられたときに自動的にこれを保持し、制御輪郭を有する移動可能な係合要素を有する、係合装置と、
家具接続金具を係合装置から偶発的に解放することを防止する、係合装置用の係止装置と、
を備える締結装置を対象とする。
【0002】
本発明はさらに、正面パネルを引き出しに解放可能に締結するための少なくとも1つの上記締結装置を有する引き出し、およびそのような引き出しを1つまたは複数有する家具製品も対象とする。
【背景技術】
【0003】
正面パネルを引き出しに解放可能に締結するための締結装置は、すでに当技術分野から知られている。この技術における目的は一般に、とりわけ組み立て時間、組み立てコストの両方を低く抑えるために、引き出しへの正面パネルの迅速な取り付けを提供することである。
【0004】
したがって、たとえば2009年1月15日発行の特許文献1は、正面パネルを引き出し側壁に解放可能に、好ましくは調整可能に締結するための締結装置を有する引き出し側壁を示している。家具接続金具は正面パネルに事前に装着され、引き出し側壁内には、ばね負荷式係合要素が配置されており、この係合要素は、家具接続金具が導入されたとき、これを引き出し側壁に向かって自動的に引っ張るものであり、クランプ留め装置の形態で係合要素用の係止装置が設けられている。
【0005】
1998年11月25日発行の特許文献2は、引き出しの正面パネルを好ましくは二重壁の引き出し側壁に締結するための装置であって、正面パネルに締結され、そこから突出する家具接続金具と、引き出し側壁に関連付けられ、移動可能な拘束部分を担持し、引き出し側壁の正面の端縁の完全に背後に留まるキャリア部分とを備える装置を示している。家具接続金具をキャリア部分に連結する拘束部分は、ばねによって作動され、傾斜レバーの形態をとる。この傾斜レバーは水平軸を中心に回転可能であり、家具接続金具が押し入れられると、ばね力を受け、自動的に同時にラッチ掛けし、家具接続金具をキャリア部分に向かって引っ張る。傾斜レバーは、ねじ回しなどのための横方向の受け入れ手段を有する。受け入れ手段はこのねじ回しなどを用いて、ばね動作に反して拘束部分を外れて回転可能であり、それによって家具接続金具を解放する。
【0006】
2010年3月25日発行の特許文献3は、受け入れ要素および少なくとも2つの締結要素を有する、第1の家具部分を第2の家具部分に解放可能に接続するための家具接続金具を開示している。受け入れ要素は第1の家具部分に、少なくとも2つの締結要素は第2の家具部分に関連付けられているか、あるいは受け入れ要素が第2の家具部分に、少なくとも2つの締結要素が第1の家具部分に関連付けられている。受け入れ要素は、少なくとも2つの締結要素を解放可能に保持するための拘束装置を有し、少なくとも2つの締結要素を、一緒に受け入れ要素内に拘束することができる。受け入れ要素の拘束装置は、力蓄積手段、好ましくはばねによって作動される、または作動可能である、かつ締結要素にラッチ掛け可能である、少なくとも2つの拘束要素を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/006651号
【特許文献2】欧州特許第0740917B1号明細書
【特許文献3】独国実用新案第202009014811U1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術に比べて改良された、正面パネルを引き出しに解放可能に締結するための締結装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する締結装置によって達成される。
【0010】
制御本体がガイド通路内で移動可能であり、係合要素の制御輪郭に当接することにより、この移動可能な制御本体は、家具接続金具が押し入れられると、たとえば重力によって、ガイド通路内で自動的に移動し、制御輪郭に沿って摺動することができる。よって係止動作は、家具接続金具の反対移動(すなわち家具接続金具を引き抜くこと)が、係合要素を介して、移動可能な制御本体のガイド通路と制御輪郭の間への引っ掛かりをもたらすため、達成可能である。
【0011】
また、引っ掛かりが生じた後であっても、家具接続金具は依然として締結装置内へとさらに押し入れることができる。すなわち引っ掛かりは、一方向においてのみ行われる。家具接続金具をさらに押し入れることは常に、依然として可能であるが、引き抜くことはできない。これは、移動可能な制御本体が、引き抜きが試みられたときに係合要素の制御輪郭に引っ掛かっているだろうためである。
【0012】
本発明のさらに有利な実施形態は、添付の特許請求の範囲内で定義される。
【0013】
係合要素が回転軸を中心に枢動可能に装着されれば、特に有利であることが判明している。係合要素は、押し入れ移動の間、係合要素の回転軸を中心とする枢動移動によって家具接続金具をたどることができる。
【0014】
好ましい実施形態では、係合要素の制御輪郭が、係合要素の回転軸に対してさまざまな径方向間隔を有するようなすことができる。係合要素の回転軸に対して制御輪郭がさまざまな径方向間隔を有するようになすことにより、家具接続金具の引き入れ方向ではなく、引き抜き方向のみの家具接続金具の係止をもたらすことが可能になる。
【0015】
さらに好ましくは、制御本体は、好ましくは湾曲した、ガイド通路内に押し込み式に、誘導式に、かつ変位可能に装着されるようになすことができる。
【0016】
制御本体が、緩い圧力ローラの形態および/または、一体型および/または、実質的にボルト形状および/または、鋼製であれば、特に有利であることが判明している。具体的には、制御本体が緩い圧力ローラの形態であることにより、制御本体はガイド通路内で容易に移動することができ、さらに、緩いローラであるために、ガイド通路内で自動的に自身を移動させることもできる。鋼製の構造であることによって、制御本体に特に好ましい強度をもたらすことができる。一体型およびボルト形状態とすることもまた、生産技術に関して好ましい可能性がある。
【0017】
特に好ましくは、ガイド通路は半径が、好ましくは連続的に低減していく、少なくとも部分的に湾曲した形状になすことができる。ガイド通路を湾曲した形状にすることによって、家具接続金具との相互作用モードにおいて、締結装置の押し入れ特性および取り出し特性にプラスの影響を与えることが可能である。
【0018】
この点において、締結装置が家具接続金具用の送り通路を有し、その送り通路が実質的に直線形状であり、係止装置が送り通路上の少なくとも2つの異なる位置において、自動的に家具接続金具を保持し、偶発的に解放されないようにした場合、特に有利であることは判明している。実質的に直線形状の送り通路を設けることにより、家具接続金具を送り通路上に比較的容易に嵌合させ、そこで推し進めることができ、好ましい作動モードに寄与することができる。加えて家具接続金具は、一方ではこの送り通路上で第1の位置において、引き抜き方向に係止されて維持することができ、他方では、さらに押し入れることが可能であり、第2の位置で係止されて維持することができる。
【0019】
好ましい実施形態では、係止装置は、送り通路上の任意の位置で、少なくとも領域ごとに家具接続金具が偶発的に解放されないようになすことができる。したがって家具接続金具は、締結装置内の家具接続金具の挿入の深さとは無関係に、締結装置内に係止することができる。
【0020】
締結装置が家具接続金具用の引き入れ装置を有し、引き入れ装置が枢動レバーを有し、この枢動レバーは、ばねによって荷重がかけられており、移動可能な制御本体をガイド通路内で変位させ、係合要素を枢動させ、ばね荷重の下で家具接続金具を引き出しに向かって引っ張るようになした場合、有利になることがさらに判明している。ガイド通路内で移動可能な制御本体を変位させるばね荷重式の枢動レバーを設けることにより、家具接続金具の自動的な後退を、これを引き出しに向かって引き入れることによって達成することが可能になる。
【0021】
締結装置が、家具接続金具の係合要素からの意図的な解放を可能にする、係合要素用の係止解除装置を有し、係止装置が制御本体を係合要素の制御輪郭から持ち上げ、それによって係合要素および家具接続金具を解放するようになした場合、有利になることが判明している。係止解除装置を設けることにより、家具接続金具を締結装置から再度、係止解除することができ、その後、その締結装置から取り外すことができる。
【0022】
好ましくは、係止解除装置は、係止解除された家具接続金具の取り出しを可能にする取り出し装置を有し、取り出し装置は、係止解除された係合要素を枢動させ、それによって家具接続金具を引き出しから飛び出させるようなすことができる。係止解除装置が取り出し装置を有するため、家具接続金具を締結装置から引き抜く必要はなく、家具接続金具の締結装置から出る移動は、係止解除装置の取り出し装置によって能動的に行うようなすことができる。
【0023】
可能性のある実施形態では、係止解除装置は、外部からアクセス可能であり、かつ係止解除装置および/または取り出し装置を、それを通じて作動可能である、工具用の工具受け入れ手段を有するようなすことができる。係止解除装置は、外部からアクセス可能な工具受け入れ手段を設けることによって、容易に作動され得る。
【0024】
好ましい実施形態では、締結装置が、正面パネル用の高さ調整装置および/または横方向調整装置を有するようなすことができる。正面パネルは、締結装置用の高さ調整装置を設けることによって引き出しに対する高さを調整することができ、一方で、正面パネル用の横方向調整装置を設けることによって、引き出しに対して横方向に配向することができる。
【0025】
また、上述の実施形態の少なくとも1つに係る、正面パネルを引き出しに解放可能に締結するための少なくとも1つの締結装置を有する引き出しに対しても、保護が請求される。
【0026】
また、上述のような引き出しを有する家具製品に対する保護もまた、明確に請求される。
【0027】
本発明のさらなる詳細および利点は、これ以後、例として図に示した実施形態を参照した具体的な説明によって、より十分に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1a】引き出し付き家具製品の正面斜視図である。
【
図1b】引き出し付き家具製品の後面斜視図である。
【
図2a】締結装置および家具接続金具を有する引き出し側壁の斜視図である。
【
図2b】締結装置の箇所に切り取りのある、引き出し側壁の側面斜視図である。
【
図3a】ハウジング内における締結装置の側面斜視図である。
【
図3b】
図3aと同様の、ハウジング無しの側面斜視図である。
【
図5a】家具接続金具の挿入および変位中の一段階における締結装置の側面図である。
【
図5b】家具接続金具の挿入および変位中の別の段階における締結装置の側面図である。
【
図5c】家具接続金具の挿入および変位中の別の段階における締結装置の側面図である。
【
図6】家具接続金具が係止され、かつ家具接続金具が完全に押し入れられていない状態の締結装置の側面図である。
【
図7】家具接続金具が自動的に引き入れられた状態の締結装置の側面図である。
【
図8】係止解除が作動された状態の締結装置の側面図である。
【
図9a】家具接続金具が係止解除された締結装置の側面図である。
【
図9b】家具接続金具が係止解除された締結装置の側面図である。
【
図9c】家具接続金具が取り出された締結装置の側面図である。
【
図10】係合要素、枢動レバー、制御本体、および制御輪郭を備えた締結装置の変形形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図3aから10の以下の具体的な説明は、数多くの装置、および複数のそのような装置によって使用される構成要素を有することの多いユニットについて言及する。この好ましい実施形態において説明される、さまざまな装置の構成要素を概説するために、以下のリストを参照されたい。
【0030】
係合装置10の作動に必須である、その構成要素は、
係合要素11と、
係合要素11の回転軸Aと、
係合要素11の受け入れ手段13と、
送り通路6と、
である。
【0031】
係止装置20の作動に必須である、その構成要素は、
制御本体4または圧力ローラ5と、
ガイド通路3と、
制御輪郭12と、
係合要素11と、
係合要素11の回転軸Aと、
である。
【0032】
引入れ装置30の作動に必須である、その構成要素は、
枢動レバー31と、
枢動レバー31の回転軸Bと、
枢動レバー31のガイド33と、
ばね32と、
推力要素34と、
制御本体4または圧力ローラ5と、
制御輪郭12と、
係合要素11と、
ガイド通路3と、
である。
【0033】
係止解除装置40のその作動に必須である構成要素は、
枢動レバー31の係止解除要素43と、
枢動レバー31のガイド33と、
制御本体4または圧力ローラ5と、
ガイド通路3と、
取り出し装置41と、
である。
【0034】
上記の装置10、20、30、および40はすべて、締結装置1の主要プレート73上にコンパクトな構造で設けられ、高さ調整装置50によって垂直方向に、また横方向調整装置60によって水平方向に、基部プレート73と共に変位される。
【0035】
図およびその詳細に関してより具体的に説明してゆく。
【0036】
図1aは、家具製品110の正面側部斜視図を示している。家具製品110は、家具骨組み103内に3つの引き出し102を有する。引き出し102は家具骨組み103内に、引き出し延長ガイド105上に移動可能に装着され、各引き出しが、2つの引き出し側壁100、正面パネル101、および引き出し後壁104を有する。正面パネル101は、締結装置1(ここでは図示せず、
図2を参照)によって引き出し102の2つの側壁100に固定される。
【0037】
図1bもまた、
図1aに示すような3つの引き出し102を備えた家具製品110の側部後面斜視図を示している。引き出し側壁100との接続がなされる手段である2つの家具接続金具2を見ることができるように、正面パネル101は、最上部の引き出し102にはまだ嵌合されていない。
【0038】
図2aは、家具製品110(ここでは図示せず、
図1aまたは1bを参照)の右引き出し側壁100の斜視図を示している。正面パネル101(ここでは図示せず)用の締結装置1は、引き出し側壁100内の、この好ましい実施形態では引き出し側壁100の正面端部に、見ることができる。正面パネル101(ここでは図示せず)の家具接続金具2は、
図2bから明確に見ることができるように、締結装置1内にすでにラッチ掛けされている。
【0039】
締結装置1は、引き出し側壁100上ではなく、引き出し102の任意の他の部分(図示せず)上にも同じように設けることができることは理解されよう。
【0040】
図3aは、締結装置1およびこれに締結される家具接続金具2の側面斜視図を示している。締結装置1は、右側面カバー71および左側面カバー72を備えたハウジング70を有する。左側面カバー72では、高さ調整装置50用の調整要素(その高さ調整ねじ51)、横方向調整装置60用の調整要素(その横方向調整ねじ61)、および係止解除装置40用の調整要素(またはその工具受け入れ手段42)を見ることが可能である。
【0041】
図3bは、
図3aを参照して説明したような締結装置1の側面斜視図を、左側面カバー72無しで示している。また、高さ調整装置50および横方向調整装置60もここでは示されていない。
【0042】
この図は、家具接続金具2を送り通路6上に係合させ、家具接続金具2を締結装置1に係止する役割を果たす係合装置10およびその係合要素11を明確に示しており、そのために係止装置20が設けられる(この点に関しては
図6の具体的な説明を参照)。
【0043】
ここでの締結装置1はまた、引き入れ装置30および係止解除装置40も有する。
【0044】
上記の装置10、20、30、および40ならびにその作動上の移動はすべて、具体的な説明の以下の部分においてより正確な詳細が説明される:
係合装置10:
図5a,5bおよび5c
係止装置20:
図6
引き入れ装置30:
図7
係止解除装置40:
図8
取り出し作動:
図9aから9c。
【0045】
図4は、家具接続金具2用の締結装置1の側部後面図としての分解斜視図を示している。右側面カバー71および左側面カバー72は、締結装置1用のハウジングとして働く。これら2つの側面カバー71と72の間には主要プレート73が構成され、この主要プレート73には締結装置1の必須の構成要素が配設される。この主要プレート73は高さ調整ねじ51によって、左側面カバー71および右側面カバー72に対して高さ調整可能である。
【0046】
この構成では、主要プレート73はガイド通路3を有し、このガイド通路3内に、この好ましい実施形態では緩い圧力ローラ5の形態である制御本体4が変位可能に装着される。主要プレート73はまた、家具接続金具2のピン7用の送り通路6も有する。家具接続金具2のピン7は、送り通路6に沿って締結装置1内に導入される。
【0047】
安定性の理由から、機能させるために必須である構成要素、つまり係合要素11および枢動レバー31は、どちらも2つ同じものを用意し、それぞれ1つずつ、主要プレート73の左右に設けられる。
【0048】
係合要素11および11’は、家具接続金具2のピン7用の受け入れ手段13をそれぞれに有する。制御輪郭12もまた、この好ましい実施形態において係合要素11および11’の両方に設けられる。
【0049】
加えて、係合要素11上には、家具接続金具2を係止解除するまたは取り出すように働く係止解除レバー14が設けられる。
【0050】
枢動レバー31および31’上には、この実施形態では細長の穴の形態であるガイド33が設けられる。枢動レバー31はさらに取り出し装置41を有し、この取り出し装置41が係合要素11の係止解除レバー14と共に家具接続金具2の取り出しを実施する。枢動レバー31または31’は、工具受け入れ手段42を有する係止解除要素43を介して作動される。
【0051】
2つの枢動レバー31および31’は、ばね32およびその推力要素34を介してばね荷重を受ける。これは、家具接続金具2の引き入れ移動に必要である(
図7の具体的な説明を参照)。
【0052】
締結装置1はまた、横方向調整ねじ61を介して横方向に調整することができる。
【0053】
図5aから9cは、締結装置1および家具接続金具2のさまざまな状況における側方断面図をそれぞれに示している。これらの状況は、家具接続金具2の締結装置1内への挿入(
図5aから5c)、家具接続金具2の締結装置内における係止(
図6)、家具接続金具2の締結装置1内における引き入れ(
図7)、家具接続金具2の締結装置1内における係止解除(
図8)および家具接続金具2の締結装置1からの取り出し(
図9aから9c)を表している。
【0054】
明瞭に示すため、締結装置1の構成要素のすべてに、
図5aから9内の各図において常に参照番号が与えられているわけではない。しかし、それぞれのステップおよびその参照に極めて重要である構成要素は含まれる。
【0055】
図5aは、まだ締結装置1に接続されていない状態の、家具接続金具2およびそのピン7を示している。係合要素11は、その受け入れ手段13が家具接続金具2のピン7用の送り通路6にある状態で、待機している。制御本体4または圧力ローラ5は、係合要素11の制御輪郭12に当接しない、またはまだ当接していない。
【0056】
図5bは
図5aと同じ状況を示しているが、家具接続金具2のピン7はすでに送り通路6内に嵌合されている。しかし、係合要素11の回転はまだ行われていない。この理由のため、圧力ローラ5もまた、まだ移動していない。
【0057】
図5cは、家具接続金具2またはそのピン7がすでに中に挿入された状態の締結装置1を示している。この挿入移動は、送り通路6に沿って行われる。この場合、家具接続金具2のピン7は、係合要素11の受け入れ手段13内に進入している。この場合、係合要素11はその回転軸Aを中心に枢動可能に装着されており、したがってピン7の挿入の結果、係合要素11の回転軸Aを中心とする回転移動がもたらされる。この好ましい実施形態では、制御輪郭12は、係合要素11上に形成または装着される。係合要素11のこの制御輪郭12は、係合要素11の回転軸Aに対してさまざまな径方向間隔を含有する。制御本体4は、この好ましい実施形態では圧力ローラの形態であるが、このとき制御輪郭12にすでに当接している。このとき、家具接続金具2を締結装置1から引き抜くことは依然として可能である。これは、制御本体4は制御輪郭12にまだ引っ掛かってないからである。制御本体4は、係合要素11が回転軸A周りで時計回り方向に回転した場合には、ガイド通路3内で「上方向に」依然として逃れることができる。
【0058】
係合要素11の係止、およびそれに伴う家具接続金具2の係止は、
図6に示す状況においてのみ行われる。家具接続金具2またはそのピン7はこのとき、係止装置20が作動された程度だけ、送り通路6において締結装置1内へと挿入されている。これは、圧力ローラ5を制御輪郭12と共にクランプ止めすることによって達成される。家具接続金具2を締結装置1から引き抜く、したがって係合要素11を、回転軸Aを中心に時計回り方向に枢動させる試みがなされた場合、圧力ローラ5は、ガイド通路6内で制御輪郭12に引っ掛かる。家具接続金具2は、こうして引き抜きが防止される。
【0059】
一方で、係合要素11を、回転軸Aを中心に反時計回り方向に移動させることは依然として、十分に可能であり、そうすることによって、好ましくは湾曲したガイド通路3内で、制御本体4のさらなる下方向移動が生ずる。
【0060】
この点において、枢動レバー31およびそのガイド33は、係止装置20には必要でないことを留意されたい。係合要素11の係止は、制御輪郭12、ガイド通路3、および制御本体4のみによって単純に行われる。これは、制御本体4が重力だけでガイド通路3または制御輪郭12をたどるため、可能である。
【0061】
このとき、この係止装置20の優れた利点をここで見ることが可能である。より具体的には、家具接続金具2の係止は、ガイド通路6上の挿入方向の任意の場所において行われる。すなわち係止は、家具接続金具2の締結装置1内への挿入深さとは関係なく起こる。係止が起こった後であっても、家具接続金具2の締結装置1内へのさらなる挿入は可能である。すなわち係止は、引き抜き方向のみに行われ、押し入れ方向には行われない。したがって、さまざまな挿入深さを達成することが可能であり、それによって家具接続金具2または引き出し102(図示せず)に関する製造上の公差を修正することも可能である。
【0062】
この好ましい実施形態では、制御本体4は一体型、かつ実質的にボルト形状である、鋼製の緩い圧力ローラ5の形態である。
【0063】
ガイド通路3は、好ましくは半径が連続的に低減していく、少なくとも部分的に湾曲した形状である。
【0064】
次に
図7は、引き入れ装置30がどのように作動可能になるかを示している。家具接続金具2が、係合装置10またはその係合要素11内に押し入れられ、送り通路6上で変位された後、
図6に示す瞬間では、ばね32は、もはや枢動レバー31の回転軸Bとの死点位置にはなく、したがってこの枢動レバー31が、
図7に示すように回転軸Bを中心に反時計回り方向に枢動される。
【0065】
この結果、圧力ローラ5または制御本体4は、枢動レバー31の、細長の穴の形態であるガイド33内において、下方向にガイド通路3に沿って付勢される。この下方向の圧力は、制御本体4がそのガイド通路3内でばね荷重の下で下方向に移動することを意味し、この場合、係合要素11上に制御輪郭12を設けることにより、係合要素11もまた、その回転軸Aを中心として反時計回り方向に枢動される。このようにして家具接続金具2は、ローラ−制御輪郭の作動組立体によって締結装置1内にさらに引き入れられる。
【0066】
引き入れ特性はこのようにして、制御輪郭の適切な形状によって制御することができる(低速または高速での引き入れ移動、加速または減速ありの引き入れ移動)。
【0067】
この位置では、係止装置20は再度、またはいつでも依然として作動可能状態にあるが、これは、制御本体4が制御輪郭12に依然として当接し、係合要素11を時計回り方向に枢動させる試みがなされた場合、制御輪郭12に引っ掛かるためである。
【0068】
締結装置1を再度係止解除するために、係止解除装置40が設けられる。この係止解除装置の機能は、
図8を参照して次に説明される。係止解除は、枢動レバー31上に設けられた係止解除要素43を介して手動で行うことができる。枢動レバー31を時計回り方向に回転させることにより、ガイド33内の制御本体4が、制御輪郭12および、それによって係合要素11から持ち上げられる。このようにして、係合要素11はもはや妨げられない。
【0069】
家具接続金具2は、この瞬間すでに締結装置1から引き抜くことができる。しかし、取り出しをよりユーザに優しいものとするために、取り出し装置41が枢動レバー31上に設けられる。この取り出し装置41は、この図ですでに明白であるように、係合要素11の係止解除レバー14を押さえ付けることにより、枢動レバー31が時計回り方向に回転し、これにより係合要素11の時計回り方向の回転が導かれ、それによって家具接続金具2は、
図9aに示すように締結装置1から取り出される。この点において、制御本体4は、常に係合要素11の制御輪郭12から依然として持ち上げられており、家具接続金具2は、すでに締結装置1から離れる方向に移動していることを明確に見ることができる。これは、取り出し装置41による係止解除レバー14の変位によって行われる。
【0070】
万が一この瞬間、作業者が係止解除レバー43を解放した場合、
図7に示すように、家具接続金具2が再度引き入れられる。
【0071】
その反対に、作業者が、
図9に示すように係止解除レバー43を時計回り方向にさらに回転させた場合、これは、送り通路6上での家具接続金具2のピン7の完全な取り出しを伴う。
【0072】
作業者はこの位置で、推力要素34が枢動レバー31の回転軸Bに対する死点位置にある状態にばね32が配設されており、したがって制御本体4および制御輪郭12は、ばね荷重下で互いに当接していないため、係止解除要素43を再度解放することができる。
【0073】
したがって家具接続金具2は、
図9cに示すように締結装置1から取り外すことができる。
【0074】
図10は、家具接続金具2およびそのピン7が締結装置1内に拘束された状態の締結装置1の別の実施形態を示している。
【0075】
締結装置1はここでも、上記の高さ調整装置50および横方向調整装置60を有する。枢動レバー31はここでも、締結装置1を係止解除するための工具受け入れ手段22を有する。
【0076】
この変形形態では、制御輪郭12は、前述の実施形態のように係合要素11上ではなく、枢動レバー31上に設けられる。しかし制御輪郭12はこの実施例においても制御本体4と共働するが、この実施形態では、制御本体4は係合要素11上にある。
【0077】
したがってこれは、前述の実施形態の逆の運動学を呈する。前述の具体的な説明において参照された考察が、対応して適用される。
【符号の説明】
【0078】
1 締結装置
2 家具接続金具
3 ガイド通路
4 制御本体
5 圧力ローラ
6 送り通路
7 ピン
10 係合装置
11 係合要素
12 制御輪郭
13 受け入れ手段
14 係止解除レバー
20 係止装置
30 引き入れ装置
31 枢動レバー
32 ばね
33 ガイド(細長の穴)
34 推力要素
40 係止解除装置
41 取り出し装置
42 工具受け入れ手段
43 係止解除要素
50 高さ調整装置
51 高さ調整ねじ
60 横方向調整装置
61 横方向調整ねじ
70 ハウジング
71 右側面カバー
72 左側面カバー
73 主要プレート
100 引き出し側壁
101 正面パネル
102 引き出し
103 家具骨組み
104 引き出し後壁
105 引き出し延長ガイド
110 家具製品
A 係合要素11の回転軸A
B 枢動レバー31の回転軸B