特許第6038907号(P6038907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038907
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】引出し
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/00 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   A47B88/00 B
【請求項の数】16
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-517322(P2014-517322)
(86)(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公表番号】特表2014-523299(P2014-523299A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】AT2012000166
(87)【国際公開番号】WO2013003871
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2014年5月21日
(31)【優先権主張番号】A990/2011
(32)【優先日】2011年7月7日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガッセル,インゴ
【審査官】 蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−516225(JP,A)
【文献】 特開2008−142184(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3031495(JP,U)
【文献】 特開2010−220707(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0133259(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00−88/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方パネル(8)と、引出し側壁(10)と、該引出し側壁(10)上の少なくとも一部に提供された取付要素(12)とを含んだ引出し(3)であって、前記取付要素(12)は前記引出し側壁(10)とは分離された装着体(13)によって前記前方パネル(8)に固定されるものであり、前記装着体(13)は、前記前方パネル(8)固定するための少なくとも1つの固定位置(21)と、前記取付要素(12)を受領するための凹部(15)とを有しており、前記取付要素(12)は、前記装着体(13)の凹部(15)内に導入でき、その取付位置において垂直に延出する想像軸の周囲で旋回することを特徴とする引出し。
【請求項2】
前記装着体(13)は、前記固定位置(21)を有した固定部(18)と、前記凹部(15)を有した受領部(19)とを有しており、該固定部(18)は該受領部(19)に解放可能に接続できることを特徴とする請求項1記載の引出し。
【請求項3】
前記固定部(18)と前記受領部(19)とは少なくとも1つのスナップ式の接続手段(23)によって解放可能に相互接続できることを特徴とする請求項2記載の引出し。
【請求項4】
前記装着体(13)の前記凹部(15)は溝形態であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の引出し。
【請求項5】
前記受領部(19)は、前記引出し側壁(10)の上部側に当接することを特徴とする請求項2に記載の引出し。
【請求項6】
前記取付要素(12)は、プレート状インサートの形態であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の引出し。
【請求項7】
前記取付要素(12)は、ガラス製、木製、金属製、プラスチック製またはセラミック製であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の引出し。
【請求項8】
本引出し(3)は後壁(11)を有しており、前記取付要素(12)の後方端には固定装置(16)が配置されており、該取付要素(12)を前記後壁(11)に対して固定させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の引出し。
【請求項9】
前記固定装置(16)は、手によって作動され、制動位置において前記取付要素(12)を前記後壁(11)に対して固定し、解放位置にて前記取付要素(12)を前記後壁(11)に対して解放する少なくとも1つのグリップ要素(17a、17b)を備えた本体部(24)を有していることを特徴とする請求項8記載の引出し。
【請求項10】
前記少なくとも1つのグリップ要素(17a、17b)は、該グリップ要素(17a、17b)の制動位置において前記後壁(11)の肢部(11a)を受領する受領スロット(27)を有しており、前記肢部(11a)は前記後壁(11)から延出することを特徴とする請求項9記載の引出し。
【請求項11】
前記グリップ要素(17a、17b)は、前記解放位置と前記制動位置との間で、前記本体部(24)に対して旋回式に取り付けられていることを特徴とする請求項9または10記載の引出し。
【請求項12】
前記グリップ要素(17a、17b)は、膜ヒンジを介して前記本体部(24)に対して取り付けられていることを特徴とする請求項11記載の引出し。
【請求項13】
前記グリップ要素(17a、17b)は、使用位置にて水平に延出する軸の周囲で旋回式に取り付けられていることを特徴とする請求項11または12に記載の引出し。
【請求項14】
前記本体部(24)は、前記取付要素(12)の後方端を受領するように提供されている挿入開口部(26)を有していることを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の引出し。
【請求項15】
前記装着体(13)はレールストラット(14)を固定するための装置(22)を有していることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の引出し。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の引出しを少なくとも1つ含んでいることを特徴とする家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方パネル、引出し側壁および引出し側壁の少なくとも一部に設けられた取付要素を含んだ引出しに関する。この取付要素は引出し側壁とは分離した装着体によって前方パネルに固定されるものであり、この装着体は前方パネルへの固定のための少なくとも1つの固定位置と、取付要素を受領するための凹部とを有しており、この取付要素は、装着体が前方パネルへ取り付けられた後に装着要素の凹部内に導入可能となる。
【0002】
本発明はさらに、以下で説明する引出しを少なくとも1つ含んだ家具にも関する。
【背景技術】
【0003】
引出し側壁の高さは取付要素の設置によって増加させることができ、それに伴って引出しの有効収納スペースを増加させることができる。取付要素は、例えば、加工内壁と加工外壁とを有した中空加工部材によって形成できる。あるいは取付要素はガラス製、木製、金属製、プラスチック製あるいはセラミック製の装飾的プレート状インサート(挿入体)の形態でもよい。
【0004】
DE20110531U1が記載する知られた方法では、取付フレーム部材が工具を利用することなく引出しに固定できる。この固定のため、取付フレーム部材の前端には、前方パネルに事前に設けられた孔穴にまず挿入され、取付フレーム部材の横方向旋回動作によって、その孔穴内で拡張される拡張ドエルが提供される。取付フレーム部材のさらなる旋回動作によって、取付フレーム部材の後端領域に設置された保持装置は引出し後壁にスナップ式に係合できる。
【0005】
事前に組み入れられた装着体に後挿入することも可能なプレート状加工取付部材を備えた引出しはEP1516561A1、WO03/024274A1、DE202008011505U1、US4,690,469、DE202008009396U1およびDE202009002242U1において解説されている。これら構造物の弱点は取り付け部材の導入に必要なスペースが大きいことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE20110531U1公報
【特許文献2】EP1516561A1公報
【特許文献3】WO03/024274A1公報
【特許文献4】DE202008011505U1公報
【特許文献5】US4,690,469公報
【特許文献6】DE202008009396U1公報
【特許文献7】DE202009002242U1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は上述の弱点を回避しつつ、当初に述べた種類の引出しに対する取付要素の装着を単純化することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は請求項1の特徴によって達成される。本発明のさらなる有利な形態は従属請求項において記載されている。
【0009】
従って本発明によれば、取付要素は装着体の凹部内に導入でき、その後に取付位置において実質的に垂直に延出する想像軸の周囲で旋回する。
【0010】
言い換えると、凹部に導入された後に、取付要素は引出し本体の中央の方向に側方旋回できる。従って、取付要素の側方旋回動作とは、高さ方向には増加したスペースの必要がないことを意味する。これは特に複数の引出しが、積み重ねられているときに開位置に存在する場合に有利である。この場合には、引出しに取り付けられる取付要素によって引出しの上方にそれぞれ配置される引出しが取付要素の装着を妨害することはない。
【0011】
通常の構造体を提供するために、引出し前方パネル、引出し側壁および引出し後方壁が既に組み立てられているときであっても、引出しには取付要素が選択的に提供される。この点に関して、引出しに対する取付要素のモジュール式接続、並びに、実行が容易な取り外しが引出しを外す必要なく可能である。
【0012】
装着体は提供された装着位置において前方パネルの裏側にまず固定でき、装着体を取り付けた後に取付要素は提供された凹部に導入可能であり、前方パネルに対して固定される。従って、引出し側壁及び/又はレールに取付要素のための固定手段を提供することは不要になる。なぜなら、取付要素の装着および取り外しは、これら構成材と独立して実行できるからである。
【0013】
装着体は複数部品を含んだ構造物でよい。好適には装着体は固定位置を有した固定部と、凹部を有した受領部とを有しており、固定部は受領部に解放可能に接続可能である。このように取付要素は、前方パネルに事前装着されている装着体の凹部に直接的に導入が可能とされるか、あるいは、まず受領部を取付要素に接続し、その後に受領部を前方パネルに事前装着された装着体の固定部に接続することが可能である。この場合、取付要素の取り外しはいつでも行うことができ、装着体の固定部は前方パネル上で一定に保たれる。
【0014】
接続の有利で可能な形態は、固定部と受領部を相互接続可能とし、好適には解放可能なように少なくとも1つのスナップ式接続によって相互接続を可能とすることである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、家具枠体と移動可能な引出しとを含んだ家具の斜視図である。
図2図2は、引出しの斜視図である。
図3a図3aから図3dは、連続的な取付けステップによる取付要素の引出しへの取り付け手順を示す図である。
図3b図3aから図3dは、連続的な取付けステップによる取付要素の引出しへの取り付け手順を示す図である。
図3c図3aから図3dは、連続的な取付けステップによる取付要素の引出しへの取り付け手順を示す図である。
図3d図3aから図3dは、連続的な取付けステップによる取付要素の引出しへの取り付け手順を示す図である。
図4a図4aと図4bは、取り付けられる2部品で成る装着体を備えた前方パネルの裏側の状態を分解図および掛け留め状態で示す図である。
図4b図4aと図4bは、取り付けられる2部品で成る装着体を備えた前方パネルの裏側の状態を分解図および掛け留め状態で示す図である。
図5a図5aと図5bは、引出しの後方端領域の部分切欠き斜視図である。
図5b図5aと図5bは、引出しの後方端領域の部分切欠き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の家具は、本発明の少なくとも1つの引出しを特徴とする。
【0017】
本発明のさらなる詳細と利点は添付図面の実施例を利用して以下で詳細に説明される。
【実施例】
【0018】
図1は家具1の斜視図である。家具1は、引出し延出ガイド4によってキャビネット形態の家具枠体2に対して相対的に移動可能に取り付けられた複数の引出し3を有している。引出し延出ガイド4は、家具枠体2に固定される枠体レール5と、引出し3に固定される引出しレール7と、枠体レール5と引出しレール7との間で移動できる中央レール6とを公知の形態で有している。それぞれの引出し3は、前方パネル8、引出し底部9、引出し側壁10および引出し後壁11を有する。
【0019】
図2は引出し3の後方からの斜視図である。引出し3は、前方パネル8、引出し底部9、側壁10および後壁11を含んでいる。側壁10の上方には、例えばガラス、木材、金属、プラスチックまたはセラミックを含んだプレート状インサートの形態でよい取付要素12が配置されている。反対側の側壁10のプレート状取付要素12は図示されていない。レールストラット(筋かい)14はオプションで取付要素12に配置できる。取付要素12は前方パネル8の裏側に取り付けられる装着体13によって固定でき、装着体13は取付要素12の前端を受領するための垂直に延伸する溝の形態の凹部15を有する。
【0020】
図3aから図3dは引出し3への取付要素12の取り付けステップを示す。取付要素12は装着体13の凹部15に側方から傾斜状態で挿入される。この点に関しては凹部15を口広形態として取付要素12を容易に凹部に導入させることができる。凹部15を備えた装着体13は、好適には緩んだ状態で側壁10の上側に支持されるが、クランプ係合形態及び/又はロック形態で側壁10の上縁を囲むこともできる。
【0021】
図3bでは取付要素12は装着体13の凹部15内に配置される。取付要素12の後端には、取付要素12を後壁11に対して固定させる固定装置16が取り付けられている。取付要素12が装着体13の凹部15内に導入された後に、取付要素12は取り付け位置にて実質的に垂直に延びる想像上の軸の周囲で側壁10の方向に旋回できる。
【0022】
引出し箱の中央方向に取付要素12がさらに旋回するおかげで、取付要素12は図3cで示される位置に来ることがきる。図示の実施例では、固定装置16は2つのグリップ要素17aと17bを有する。これら要素は手動で作動され、拘束位置にて後壁11に取付要素12をポジティブロック方式及び/又は強制ロック方式で固定し、解放位置にて後壁11から取付要素12を解放する。図3dで示すように、取付要素12は上方グリップ要素17aの上方旋回動作および下方グリップ要素17bの下方旋回動作によって固定できる。
【0023】
図4aは装着体13が取り付けられる前方パネル8の裏側を示す。この実施例では装着体13は2部材構造であり、少なくとも1つの固定位置21で前方パネル8に接続される固定部18を含む。図示の実施例では、固定位置21は、前方パネル8内に埋め込まれるネジの通過のために提供される孔部の形態である。固定部18は、装置22内にクランプ式に固定されるレールストラット14を固定するための装置22をさらに含む。装着体13の第2部材は受領部19を形成し、その上に凹部15が提供されて取付要素12の前端を受領する。凹部15はU形状断面の溝形態であり、取付要素12の厚みより幅広い。凹部15の長さは、実質的に取付要素12の高さに対応する。受領部19は固定部18に掛け留めでき、そのために受領部19には前方パネル8に取り付けられた固定部18の背後の掛け留め位置で係合する突起部23が提供される。好適には受領部19である装着体13は、取付要素12の下側を支持できる支持部30を有する。
【0024】
図4bは受領部19と固定部18との間の掛け留め位置を示す。前方パネル8には、知られた形態で引出し側壁10の前端に導入でき、従来のロック機構によってそこに解除可能に掛け留めできる保持部20が固定される。
【0025】
図5aは引出し3の後方端領域の一部切欠き斜視図を示す。そこには引出し底部9、側壁10および後方に曲げられた肢部11aを有する後壁11が図示されている。後壁11の肢部11aは、取付要素12の後方端で支持される固定具16と協調する。固定具16は、取付要素12を受領する挿入開口部26を備えた本体部24を含む。2つのグリップ要素17aと17bはそれぞれの膜ヒンジ25によって本体部24に旋回式に接続される。膜ヒンジ25の旋回軸は好適には使用位置で実質的に水平に延びている。2つのグリップ要素17aと17bのそれぞれは、制動位置(図5b)において後方に曲げられた肢部11aを受領する受領スロット27を有する。よって図5aはグリップ要素17aと17bの解放位置を示し、取付要素12を引出し3から外すことが可能である。一方、図5bはグリップ要素17aと17bの制動位置を示し、取付要素12は引出し3に対して固定される。取付要素12の取り付け、及び/又は取り外しは工具を利用せずに可能である。すなわち手だけで可能であり、工具を使用する必要がない。固定具16はプラスチック材料により完全に一体的に形成できるが、射出成型プロセスによっても問題なく可能である。
【0026】
本発明は図示の実施例のみに限定されず、「請求の範囲」で定義した範囲の変形および技術的均等物にも及ぶ。本明細書で言及されている上下、横方向等の位置的表現は、これらの図示おいてのみのことであり、図面が変われば個々に対応すべきものである。取付要素12は、好適には方形のブロック挿入体(好適には8mmから15mmの厚み)である。さらに取付要素12の後方端を固定具16によって後壁11にまず固定し、その後に、取付要素12の前端を前方パネル8に取り付けられた装着体13に接続することができる。この目的で装着体13は旋回式に取り付けられる閉鎖キャップを有することもでき、それによって取付要素12は装着体13の凹部15内に導入された後に固定できる。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図5a
図5b