特許第6038908号(P6038908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038908
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】金属錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20161128BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20161128BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   C07F15/00 FCSP
   C09K11/06 660
   H05B33/14 B
【請求項の数】12
【全頁数】92
(21)【出願番号】特願2014-517487(P2014-517487)
(86)(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公表番号】特表2014-520766(P2014-520766A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2012002289
(87)【国際公開番号】WO2013000531
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年5月28日
(31)【優先権主張番号】11005252.9
(32)【優先日】2011年6月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】ストエッセル、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヤトシュ、アンヤ
(72)【発明者】
【氏名】ブロイニング、エステル
【審査官】 緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/086089(WO,A1)
【文献】 特開2011−094097(JP,A)
【文献】 特表2002−513440(JP,A)
【文献】 特表2009−526071(JP,A)
【文献】 ARNOLD L RHEINGOLD,INORGANIC CHEMISTRY,1997年,V36 N22,P5097-5103
【文献】 Pettinari, Riccardo,Inorganic Chemistry ,2010年,49(23),11205-11215
【文献】 Donappa, N.; Naikar, S.B.,Asian Journal of Chemistry,1993年,5(4),995-1000
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 15/00
C09K 11/06
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物:
【化1】
式中:Lは、出現毎に同一であるか異なり、下記の式(5)の部分リガンドであり、
【化2】
式中:破線の結合は、Vへの結合を示し、*は、Mへの配位位置を示し、使用される記号と添え字には、以下が適用される:
Mは、Ptであり;
Vは、NR、BRおよびOより成る基から選ばれ;
Xは、出現毎に同一であるか異なり、CまたはNであり、ここで、式(5)の部分リガンド中のすべてのXは、一緒に14個のΠ電子系を形成するが、ただし、部分リガンドは、2、3、4または5個の窒素原子を含み;
〜Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R、CN、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基、または1以上の基Rにより置換されてよい10〜40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基であり;ここで、RとRおよび/またはRとRおよび/またはRとRは、モノあるいはポリ環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環構造を互いに形成してもよく;さらに、RとRは、モノあるいはポリ環式の脂肪族環構造を互いに形成してもよく
ただし、この基R〜Rが結合する基Xが、飽和原子価をもつ窒素原子であるならば、R〜Rは、遊離電子対であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基であり;ここで、RとRは、モノあるいはポリ環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環構造を互いに形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R、CN、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基、または1以上の基Rにより置換されてよい10〜40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基であり;ここで、2個以上の隣接する基Rは、モノあるいはポリ環式の脂肪族もしくは芳香族環構造を互いに形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、Fまたは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基(さらに、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよい。)であり;ここで2個以上の置換基Rは、モノあるいはポリ環式の脂肪族もしくは芳香族環構造を互いに形成してもよく;
nは、2であり;
mは、(2−n)である。
【請求項2】
式(5)の部分リガンドは、式(5a)〜(5q)の部分リガンドから選ばれることを特徴とする請求項1記載の化合物:
【化3-1】
【化3-2】
式中、使用される記号は、請求項1の意味を有する。
【請求項3】
式(5)の部分リガンドが3個以上の窒素原子を含むならば、出現毎に同一であるか異なり選択されるバルキーな基は、N(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基、または1以上の基Rにより置換されてよい10〜40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基より成る基から選ばれ、金属に配位せずかつ五員環もしくは六員環に同時に結合しない窒素原子に隣接する炭素原子に、結合することを特徴とする、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
バルキーな基は、式(R−1)〜(R−112)の構造から選ばれることを特徴とする、請求項3記載の化合物:
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
式中、Ligは、基からリガンドへの結合を示し、芳香族もしくは複素環式芳香族基は、それぞれ、1以上の基Rにより置換されてよい。
【請求項5】
Vは、NRであり、Rは、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項記載の化合物。
【請求項6】
は、式(36)〜(45)の基から選ばれることを特徴とする、請求項5記載の化合物:
【化5】
式中、破線の結合は、ホウ素原子または窒素原子への結合であり、式(44)中の末端フェニル基は、1〜5個のC原子を有するアルキル基により置換されてもよい。
【請求項7】
対応する遊離リガンドと、式(46)の金属アルコキシドとの、式(47)の金属ケトケネートとの、式(48)の金属ハロゲン化物との反応による請求項1〜6何れか1項記載の化合物の製造方法;
【化6】
式中、記号MとRは、請求項1で与えられる意味を有し、Hal=F、Cl、BrまたはIであり、pは、金属Mの原子価に応じて1、2または3である。
【請求項8】
少なくとも一つの請求項1〜6何れか1項記載の化合物と少なくとも一つの溶媒とを含む調合物。
【請求項9】
有機エレクトロルミネッセンス素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機太陽電池、有機光学検査素子、有機光受容素子、有機電場消光素子、発光電子化学電池もしくは有機レーザーダイオードより成る群から選ばれる電子素子での、請求項1〜6何れか1項記載の化合物または請求項8記載の調合物の使用。
【請求項10】
少なくとも一つの請求項1〜6何れか1項記載の一以上の化合物を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機太陽電池、有機光学検査素子、有機光受容素子、有機電場消光素子、発光電子化学電池もしくは有機レーザーダイオードより成る群から選ばれる電子素子。
【請求項11】
有機エレクトロルミッセンス素子であり、一以上の発光層中で発光化合物として請求項1〜6何れか1項記載の化合物を含むことを特徴とする請求項10記載の電子素子。
【請求項12】
請求項1〜6何れか1項記載の化合物が、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、インデノカルバゾール誘導体、アザカルバゾール、バイポーラーマトリックス材料、アザボロール、ボロン酸エステル、ジアザシロール誘導体、ジアザホスホール誘導体、トリアジン誘導体、亜鉛錯体、ジベンゾフラン誘導体または架橋カルバゾール誘導体より成る群から選ばれるマトリックス材料と組み合わせて使用されることを特徴とする請求項11記載の電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体と、発光層中にこれらの金属錯体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
有機半導体が機能性材料として使用される有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。ここで、使用される発光材料は、蛍光発光ではなく燐光発光を示す有機金属錯体であることが多い(M.A.Baldo et al., Appl. Phys. Lett. 1999, 75, 4-6)。量子力学的理由により、4倍までのエネルギーおよびパワー効率が、燐光発光エミッターとして有機金属化合物を使用して可能である。しかしながら、一般的に、三重項発光を示すOLEDの場合に、特に、効率、駆動電圧および寿命に関して、改善に対する必要性が未だ存在する。これは、また、特に、比較的短い波長域、すなわち、緑色および、特に、青色で発光するOLEDにあてはまる。
【0003】
先行技術にしたがうと、イリジウム錯体に加えて白金錯体が、特に、燐光OLEDで三重項エミッターとして使用される。四座配位リガンドを持つ金属錯体によりこれらのOLEDにおける改善を達成することができたが、それは、その錯体をOLEDのより長い寿命をもたらすより高い熱安定性を有するものとしたためである(WO 2005/042550)。
【0004】
先行技術は、さらに、リガンドとしてイミダゾフェナントリジンもしくはジイミダゾキナゾリン誘導体を含むイリジウム錯体(WO 2007/095118)と部分リガンドとしてイミダゾフェナントリジンもしくはジイミダゾキナゾリンをもつ四座配位リガンドを含む白金錯体(US 2011/0073848)を開示する。これらの錯体は、リガンドの構造に応じて、有機エレクトロルミッセンス素子での使用に関して青色燐光を生じうる。ここでも、効率、駆動電圧と寿命に関するさらなる改善が、未だ望まれている。ここで、特に、深青色発光を達成可能とするために、色座標に関する改善に対する必要性が、未だ存在する。
【0005】
WO 2010/086089は、リガンドとしてイミダゾイソキノリン誘導体を含む金属錯体を開示する。青色三重項エミッター開発における十分な進歩は、この型の錯体を使用してすでに達成している。しかしながら、ここで、効率、駆動電圧および寿命に関して、さらなる改善が、また未だ望まれている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、OLED用エミッターとして適している新規で好ましくは、改善された金属錯体の提供である。特に、その目的は、青色および緑色燐光OLEDに適するエミッターを提供することである。
【0007】
驚くべきことに、以下により詳細に説明されるある種の金属キレート錯体が、これらの目的を達成し、有機エレクトロルミネッセンス素子において、特に、駆動電圧、効率と発光色に関して、改善をもたらすことが見出された。特に、驚くべきことは、以下により詳細に定義されるとおり、ブリッジVとしてヘテロ原子を含む金属錯体は、ブリッジVとして炭素原子を含む錯体と比べて改善された結果を有するという結果である。したがって、本発明は、これらの錯体とこれらの錯体と含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0008】
それゆえに、本発明は、式(1)の化合物に関し、
【化1】
【0009】
式中:Lは、出現毎に同一であるか異なり、下記の式(2)の部分リガンドであり、
【化2】
【0010】
式中:破線の結合は、Vへの結合を示し、*は、Mへの配位位置を示し、使用される記号と添え字には、以下が適用される:
Mは、Pt、IrおよびAuより成る群から選ばれ;
Vは、NR、N、BR、B(R、O、SおよびSeより成る基から選ばれ;
Xは、出現毎に同一であるか異なり、CまたはNであり、ここで、式(2)の部分リガンド中のすべてのXは、一緒に14個のΠ電子系を形成するが、ただし、式(2)の各部分リガンド中の少なくとも2個の基Xと最大6個の基Xは、Nであり;
〜Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R、CN、NO、Si(R、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、C=S、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IもしくはCNで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基、または1以上の基Rにより置換されてよい10〜40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基であり;ここで、RとRおよび/またはRとRおよび/またはRとRは、モノあるいはポリ環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環構造を互いに形成してもよく;;さらに、RとRは、モノあるいはポリ環式の脂肪族環構造を互いに形成してもよく
ただし、この基R〜Rが結合する基Xが、飽和原子価をもつ窒素原子であるならば、R〜Rは、遊離電子対であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、Si(R、C(=O)R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、C=S、C=NR、P(=O)R、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IもしくはCNで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基であり;ここで、RとRは、モノあるいはポリ環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環構造を互いに形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R、CN、NO、Si(R、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、C=S、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IもしくはCNで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基、または1以上の基Rにより置換されてよい10〜40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基であり;ここで、2個以上の隣接する基Rは、モノあるいはポリ環式の脂肪族もしくは芳香族環構造を互いに形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、Fまたは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基(さらに、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよい。)であり;ここで2個以上の置換基Rは、モノあるいはポリ環式の脂肪族もしくは芳香族環構造を互いに形成してもよく;
は、Vに結合する二座部分リガンドであり;
nは、1または2であり;
mは、(2−n)である。
【0011】
全体として式(1)の錯体のリガンドと式(2)の部分リガンド中の個々の原子の両者は、荷電されていてもよい。
【0012】
本発明の錯体のリガンドは、式(1)の二座部分リガンドLと二座部分リガンドLがブリッジVを介して互いに結合する四座リガンドである。
【0013】
式(2)の部分リガンドLは、一個の炭素原子と一個の窒素原子を介してか、または二個の炭素原子を介してか、または二個の窒素原子を介して金属に結合する二座リガンドである。リガンドが、二個の炭素原子を介して結合するならば、リガンドは、好ましくは、配位するカルベン環中の正確に二個の窒素原子を含む。本発明の好ましい態様では、部分リガンドLは、一個の炭素原子と一個の窒素原子を介して、金属Mに結合する。
【0014】
式(2)の部分リガンドL中のすべての原子Xは、一緒に14π電子系を形成する。ここで、各炭素原子は、全体電子系に1π電子寄与する。同様に六員環中で結合するだけである各窒素原子は、全体電子系に1π電子寄与する。五員環と六員環中で同時に結合する各窒素原子は、全体電子系に2π電子寄与する。五員環中で結合するだけである各窒素原子は、全体電子系に対して1または2π電子寄与する。この窒素原子が全体電子系に対して1または2π電子寄与するかどうかは、五員環中の窒素原子の結合次第である。式(2)、(3)および(4)中の環中の円は、有機化学における芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の代表として通常使用される6π電子系である。以下の構造は、窒素原子が全体π電子系に1または2π電子寄与するときに、再度、説明される。
【化3】
【0015】
本発明の意味で飽和原子価をもつ窒素原子は、芳香族骨格内で一つの単結合と一つの二重結合か、または三つの単結合の何れかを形式的に生成する窒素原子を意味するものと解される。これらの場合、この窒素原子に結合する基R〜Rは、遊離電子対である。これに対して、本発明の目的のために不飽和原子価をもつ窒素原子は、芳香族骨格内で二個の単結合のみを形式的に生成する窒素原子を意味するものと解される。これらの場合、この窒素原子に結合する基R〜Rは、上記定義されるとおりの基であり、遊離電子対ではない。以下の構造は、何が飽和原子価をもつ窒素原子により意味するものと解されるかを、再度、説明する。
【化4】
【0016】
本発明の意味でのアリール基は、6〜40個のC原子を含む。本発明の意味でのヘテロアリール基は、2〜40個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含むが、ただし、C原子とヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。ここで、アリール基もしくはヘテロアリール基は、単純な芳香族環、すなわち、ベンゼン、または、単純な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または、縮合アリールもしくはヘテロリール基、たとえば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等の何れかを意味するものと解される。
【0017】
リガンドは、カルベン炭素原子を介して金属に結合してもよい。本発明の意味での環状カルベンは、中性C原子を介して金属に結合する環状基である。ここで、好ましいのは、アルジェンゴカルベン、すなわち、二個の窒素原子がカルベンC原子に結合するカルベンである。五員アルジェンゴカルベン環または別の不飽和五員カルベン環も、同様に本発明の意味でのアリール基とみなされる。本発明の好ましい態様では、金属に配位する環状カルベンは、カルベンC原子に結合する正確に二個の窒素原子を含むが、さらなる窒素原子を含まない。
【0018】
本発明の意味での芳香族環構造は、6〜60個のC原子を環構造中に含む。本発明の意味での複素環式芳香族環構造は、1〜60個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を環構造中に含むが、ただし、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、アリールもしくはヘテロアリール基のみを必ずしも含まず、加えて、複数のアリールもしくはヘテロアリール基は、たとえば、C、NもしくはO原子またはカルボニル基のような非芳香族単位(好ましくは、H以外の原子は10%未満である。)により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。したがって、たとえば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等のような構造も、二個以上のアリール基が、たとえば、直鎖もしくは環状アルキル基によりまたはシリル基により中断される構造であるから、本発明の意味での芳香族環構造を意味するものとも解される。
【0019】
本発明の意味での環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基は、一環状、二環状もしくは多環状を意味するものと解される。
【0020】
本発明の目的のためには、C〜C40-アルキル基は、ここで、加えて、個々のH原子もしくはCH基は、上記した基により置換されていてよく、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、tert-ペンチル、2-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、tert-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、シクロヘプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチル、3-(3,7-ジメチル)オクチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは2,2,2-トリフルオロエチルを意味するものと解される。アルケニル基は、たとえば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニルを意味するものと解される。アルキニル基は、たとえば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニルを意味するものと解される。C〜C40-アルコキシ基は、たとえば、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシまたは2-メチルブトキシを意味するものと解される。
【0021】
5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、各場合に、上記した基Rにより置換されていてもよく、任意の所望の位置を介して、芳香族もしくは複素環式芳香族系に連結していてもよいが、たとえば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ベンゾフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ベンゾフルオランセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-もしくはトランス-インデノフルオレン、シス-もしくはトランス-モノベンゾインデノフルオレン、シス-もしくはトランス-ジベンゾインデノフルオレン、シス-もしくはトランス-インデノカルバゾール、シス-もしくはトランス-インドロカルバゾール、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解される。
【0022】
式(1)の好ましい化合物は、荷電しておらず、すなわち、電気的に中性であることを特徴とする。これは、錯体金属原子Mの電荷を補償するように部分リガンドLとLおよび架橋単位Vの電荷を選択することによって簡単な方法で達成することができる。式(1)の化合物が、荷電しているならば、それは、カウンターイオンをも含む。
【0023】
本発明の好ましい態様では、部分リガンドLの五員環は、1個の窒素原子を介して金属Mに配位する。したがって、式(2)の部分リガンドの好ましい態様は、以下の式(3)の構造であり、
【化5】
【0024】
式中、使用される記号は、上記と同じ意味を有し、少なくとも一つの記号Xと多くとも5個の記号Xは、Nである。
【0025】
本発明の、特に、好ましい態様では、部分リガンドLの六員環は、炭素原子を介して金属Mにさらに配位する。したがって、式(2)と(3)の部分リガンドの、特に、好ましい態様は、以下の式(4)の構造であり、
【化6】
【0026】
式中、使用される記号は、上記と同じ意味を有し、少なくとも一つの記号Xと多くとも5個の記号Xは、Nである。
【0027】
本発明の好ましい態様では、(2)、(3)および(4)の部分リガンドの五員環は、少なくとも2個の窒素原子を含み、五員環と六員環の結合する端上の最大1個の原子は、窒素原子である。式(4)の部分リガンドの好ましい態様は、以下の式(5)、(6)および(7)の部分リガンドであり、
【化7】
【0028】
式中、使用される記号は、上記と同じ意味を有し、式(7)の部分リガンドの使用の場合には、架橋単位Vは、BRおよびB(Rから選ばれる。
【0029】
式(5)、(6)および(7)の部分リガンドは、合計で、2、3、4、5または6個の窒素原子を含む。式(5)の部分リガンドの好ましい態様は、以下の式(5a)〜(5r)の部分リガンドであり、式(6)の部分リガンドの好ましい態様は、(6a)〜(6r)の部分リガンドであり、および式(7)の部分リガンドの好ましい態様は、(7a)〜(7r)の部分リガンドであり、
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【化8-4】
【0030】
式中、使用される記号は、上記と同じ意味を有する。
【0031】
上記式(5f)と(5g)の構造は、緑色発光に、特に適しており、さらなる部分リガンドLに応じて、構造(5a)〜(5e)と(5h)〜(5r)も、青色発光に、特に適している。式(6)と(7)の構造も、青色および緑色発光に適している。
【0032】
本発明の好ましい態様では、式(2)、(3)および(4)の部分リガンドは、合計で、3、4または5個の窒素原子、特に、好ましくは、3または4個の窒素原子、非常に、特に、好ましくは、3個の窒素原子を含む。
【0033】
式(2)、(3)および(4)の部分リガンドが、3個以上の窒素原子を含むならば、バルキーな基は、金属原子に配位せず、五員環と六員環に同時に結合しない窒素原子に隣接する炭素原子に結合することが好ましい。ここで、「窒素原子に隣接する炭素原子」は、この炭素原子が窒素に直接結合してよいか、または、それが、炭素原子が式(2)、(3)または(4)中に存在する次の可能な位置であるかを意味する。これは、以下の図での特別なリガンドを参照して再度説明される。
【化9】
【0034】
この表現において、窒素に直接結合する炭素原子と、次の可能な炭素原子が窒素に直接結合しないならば、両者に印がつけられる。両位置は、本出願の意味で窒素原子に隣接する位置とみなされる。
【0035】
この位置でのバルキーな基は、出現毎に同一であるか異なり、N(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、C=S、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IもしくはCNで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基、または1以上の基Rにより置換されてよい10〜40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基より成る基から選ばれる。これらの基の各々は、本出願の意味での「バルキーな基」であると解される。
【0036】
バルキーな基は、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、CF、OCF、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、リガンドに直接結合しない1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IもしくはCNで置き代えられてよい。)または、Si(R(基Rは、HもしくはDではない)、ジアルキルアミノ基(ここで、アルキル基は、それぞれ1〜10個のC原子を有し、直鎖、分岐あるいは環状であってよい)、または各場合に1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基より成る基から選ばれる。
【0037】
バルキーな基が、アルキル基であるならば、そこで、このアルキル基は、好ましくは、4〜10個のC原子を有する。さらに好ましいのは、二級または三級C原子がリガンドに直接結合するか、またはCH基を介してリガンドに結合するかの何れかである二級または三級アルキル基である。このアルキル基は、特に、好ましくは、以下の式(R−1)〜(R−33)の構造から選ばれ、ここで、リガンドへのこれらの基の結合が、各場合に描かれ、
【化10】
【0038】
式中、Ligは、リガンドへのアルキル基の結合である。
【0039】
バルキーな基が、アルコキシ基であるならば、そこで、このアルコキシ基は、好ましくは、3〜10個のC原子を有する。このアルコキシ基は、特に、好ましくは、以下の式(R−34)〜(R−47)の構造から選ばれ、ここで、リガンドへのこれらの基の結合が、各場合に描かれ、
【化11】
【0040】
式中、Ligは、リガンドへのアルキル基の結合である。
【0041】
バルキーな基が、ジアルキルアミノ基であるならば、そこで、これらのジアルキルアミノ基の各々は、好ましくは、1〜8個のC原子、特に、好ましくは、1〜6個のC原子を有する。適切なアルキル基の例は、メチル、エチルまたは基(R−1)〜(R−33)として上記示された構造である。ジアルキルアミノ基は、特に、好ましくは、以下の式(R−48)〜(R−55)の構造から選ばれ、ここで、リガンドへのこれらの基の結合が、各場合に描かれ、
【化12】
【0042】
式中、Ligは、リガンドへのアルキル基の結合である。
【0043】
バルキーな基が、アラルキル基であるならば、そこで、このアラルキル基は、好ましくは、以下の式(R−56)〜(R−69)の構造から選ばれ、ここで、リガンドへのこれらの基の結合が、各場合に描かれ、
【化13】
【0044】
式中、Ligは、リガンドへのアラルキル基の結合であり、フェニル基は、各々、1以上の基Rで置換されてよい。
【0045】
アルキル、アルコキシ、ジアルキルアミノおよびアラルキル基は、また、その正確な構造に応じて、一以上の立体中心を有してよい。したがって、ジアステレオマーの形成は、立体中心を有する複数のそのようなアルキル、アルコキシ、ジアルキルアミノおよびアラルキル基が存在するならば、可能であってよい。本発明は、種々のジアステレオマーもしくは対応するラセミ体および個々の単離されたジアステレオマーもしくはエナンチオマーの混合物両者に関する。
【0046】
バルキーな基が、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であるならば、そこで、これらの芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、好ましくは、5〜30個の芳香族環原子、特に、好ましくは、5〜24個の芳香族環原子を有する。この芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、さらに好ましくは、2個超の芳香族六員環が互いに直接縮合したアリールもしくはヘテロアリール基を含まない。芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、特に、好ましくは、縮合したアリールもしくはヘテロアリール基を全く含まず、非常に、特に、好ましくは、フェニル基だけを含む。ここで、芳香族環構造は、好ましくは、以下の式(R−70)〜(R−84)の構造から選ばれ、ここで、リガンドへのこれらの基の結合が、各場合に描かれ、
【化14】
【0047】
式中、Ligは、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造のリガンドへ結合であり、フェニル基は各々、1以上の基Rで置換されてよい。
【0048】
複素環芳香族環構造は、さらに好ましくは、以下の式(R−85)〜(R−112)の構造から選ばれ、ここで、リガンドへのこれらの基の結合が、各場合に描かれ、
【化15】
【0049】
式中、Ligは、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造のリガンドへ結合であり、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は各々、1以上の基Rで置換されてよい。
【0050】
上記言及したバルキーな基に加えて、さらなる基R〜Rが式(2)の部分に結合するならば、これらは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Br、I、N(R、CN、Si(R、B(OR、C(=O)R、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、2〜10個のC原子を有するアルケニル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上のH原子は、DまたはFで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれる。これらの基は、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、N(R、1〜6個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基(1以上のH原子は、DまたはFで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれる。
【0051】
本発明の錯体中の添え字nは、1または2であり、すなわち、式(1)の錯体は、1または2個の式(2)の部分リガンドを含む。n=2ならば、2個の式(2)の部分リガンドは、同一であるか異なってよい。nは、好ましくは、2である。そこで、2個の式(2)の部分リガンドは、特に、好ましくは、同一である。
【0052】
n=1ならば、錯体は、1個の二座部分リガンドLを含む。ここで、二座部分リガンドLは、金属Mとともに、少なくとも一つの金属−炭素結合を有する環状金属化五員環または環状金属化六員環、特に、好ましくは、環状金属化五員環を形成することが好ましい。ここで、Lは、好ましくは、モノアニオン性である。一般的に、以下の式(8)〜(35)により表されるような2個の基の組み合わせが、特に、この目的に適しており、ここで、一方の基は、好ましくは、中性の窒素原子またはカルベン原子を介して結合し、他方の基は、好ましくは、負に荷電した炭素原子または負に荷電した窒素原子を介して結合する。そこで、部分リガンドLは、各場合に#により示される位置で、互いに結合するこれらの基を通じて、式(8)〜(35)から形成されることができる。基が金属に配位する位置は、*により示される。部分リガンドLを形成する式(8)〜(35)の基の一つは、Vに結合する。このVへの潜在的に存在する結合は、この位置で結合する置換基をもたない記号(#)により表される。
【化16-1】
【化16-2】
【0053】
使用される記号は、上記と同じ意味を有し。Aは、出現毎に同一であるか異なり、OまたはSであり、好ましくは、各基中の最大3個の記号Xは、Nであり、特に、好ましくは、各基中の最大2個の記号Xは、Nであり、非常に、特に、好ましくは、各基中の最大1個の記号Xは、Nである。特に、好ましくは、すべての記号Xは、Cである。
【0054】
式(8)〜(35)の構造中の好ましい基R〜Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Br、N(R、CN、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、2〜10個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上のH原子は、DまたはFで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜14個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれ、ここで、式(5)〜(35)の上記言及した基の2個の間を含め、隣接する基は、モノあるいはポリ環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環構造を互いに形成してもよい。特に、好ましい基R〜Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Br、CN、B(OR、1〜5個のC原子を有する直鎖アルキル基、特に、メチル、3〜5個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、特に、イソプロピルまたはtert-ブチル(1以上のH原子は、DまたはFで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜12個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれ、ここで、式(5)〜(35)の上記言及した基の2個の間を含む隣接する基は、モノあるいはポリ環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環構造を互いに形成してもよい。
【0055】
本発明の好ましい態様では、金属Mは、Pt(II)、Ir(I)またはAu(III)であり、特に、好ましいのは、Pt(II)である。
【0056】
本発明のさらに好ましい態様では、架橋単位Vは、NR、OおよびSより成る群から選ばれ、特に、好ましくは、NRである。
【0057】
ここで、置換基Rは、好ましくは、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上のH原子は、D、FもしくはCNで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれる。Rは、特に、好ましくは、Nへの結合に対して、少なくとも一つのオルト位で、好ましくは、両オルト位で、HまたはD以外の置換基Rにより置換されたアリール基から選ばれ、非常に、特に、好ましくは、窒素への結合に対して、少なくとも一つおよび好ましくは、両オルト位で、1〜4個のC原子を有するアルキル基、特に、メチル、エチル、イソプロピルもしくはtert-ブチルにより置換され、さらなる置換位置でさらなる置換基Rで置換されてよいフェニル基または2〜5個のフェニル基を有する直鎖もしくは分岐オリゴフェニル基である。特に、適する置換基Rは、以下の式(36)〜(45)の基から選ばれる。
【化17】
【0058】
式中、破線の結合はホウ素原子または窒素原子への結合であり、式(44)中の末端フェニル基は、1〜5個のC原子を有する一以上のアルキル基により置換されてもよい。これらの基の中でも、式(39)、式(40)および式(45)が、特に、好ましい基である。
【0059】
上記示された好ましい態様は、所望のとおりに互いに組み合わせることができる。本発明の、特に、好ましい態様では、上記示された好ましい態様が同時に当てはまる。
【0060】
本発明の金属錯体は、原則として種々のプロセスにより調製することができる。しかしながら、以下に記載されたプロセスが、特に、適していることが判明した。
【0061】
したがって、本発明は、対応する遊離リガンドと、式(46)の金属アルコキシドとの、式(47)の金属ケトケネートとの、式(48)の金属ハロゲン化物との反応による式(1)の化合物の製造方法に関し、
【化18】
【0062】
式中、記号MとRは、上記と同じ意味を有し、Hal=F、Cl、BrまたはIであり、pは、金属Mの原子価に応じて1、2または3である。
【0063】
適切な白金出発材料は、たとえば、PtCl、K[PtCl]、PtCl(DMSO)、Pt(Me)(DMSO)またはPtCl(ベンゾニトリル)である。適切な金出発材料は、たとえば、AuCl、HAuCl、KAuClまたは(PPh)AuClである。適切なイリジウム出発材料は、たとえば、[Ir(COD)Cl]、Ir(COD)BFまたはIr(PPh(CO)Clである。
【0064】
錯体の合成に適するプロセスは、KPtClと1当量のリガンドと氷酢酸中の過剰な約40当量の酢酸リチウムとの反応またはPtClとベンゾニトリル中の1当量のリガンドとの還流下の反応であり得る。
【0065】
ここで、合成は、熱的に、光化学的におよび/またはマイクロ波照射によっても活性化することができる。ここで、反応は、追加的な溶媒を使用することなく溶融状態で実行されてもよい。ここで、「溶融」は、リガンドが溶融形態であり、金属前駆体がこの溶融物に溶解または懸濁することを意味する。
【0066】
これらのプロセスは、本発明による式(I)の化合物を、高純度で、好ましくは、99%超の純度で得ることを可能にする(H−NMRおよび/またはHPLCにより測定。)。
【0067】
本発明のリガンド前駆体、リガンドまたは化合物の合成は、スキーム1、2および3に要約される。
【0068】
スキーム1
【化19】
【0069】
1-アミノイソキノリンまたは4-アミノキナゾリン1から出発して、メチルブロモアセテートとのそれらの反応は、イミダゾール[2,1-a]イソキノリン-2-オンまたはイミダゾール[1,2-c]キナゾリン-2-オン2がそれぞれ得られ、次いで、POClまたはPOBrと反応して、2-ハロイミダゾ[2,1-a]イソキノリン3aまたは2-ハロイミダゾ[1,2-c]キナゾリン3bをそれぞれ得ることができる(T. A. Kuzmenko et al., Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii 1992, 12, 1698-705; C. Hamadouchi et al. Boorg. & Med. Chem. Lett. 2005,15, 1943)。
【0070】
3-置換2-ハロイミダゾ[2,1-a]イソキノリン、2-ハロイミダゾ[1,2-c]キナゾリン、イミダゾ[2,1-f]-1,6-ナフチリジンおよび1,3a,5,6-テトラアザシクロペンタ[a]アントラセン(6、10、14)は、スキーム2にしたがって調製することができる。
【0071】
スキーム2
【化20】
【0072】
ハロゲン化化合物3a、b、6、10、14は、次いで、スキーム3により示されるとおりに、エーテル生成によって、ウルマンもしくはブーフバルト法によるアミノ化によってまたはリチウム化と四座リガンド(15、16、17)へのボラニレーションによって変換することができ、適切な金属前駆体と反応して本発明の錯体(18、19、20)に変換することができる。
【0073】
スキーム3
【化21】
【0074】
本発明による化合物は、適当な置換、たとえば、アルキル基、特に、分岐アルキル基または任意に置換されたアリール基、たとえば、キシリル、メシチルもしくは分岐テルフェニル基あるいはクアテルフェニル基により、可溶化することもできる。
【0075】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも一つの式(1)の化合物と少なくとも一つの溶媒とを含む調合物、特に、溶液、懸濁液もしくはミニエマルジョンに関する。
【0076】
上記式(1)の錯体または上記好ましい態様は、電子素子中で活性成分として使用することができる。電子素子は、アノード、カソードと少なくとも一つの層を含み、この層は、少なくとも一つの有機もしくは有機金属化合物を含む少なくとも一つの層を含む素子を意味するものと解される。したがって、本発明の電子素子は、アノード、カソードと上記式(1)の少なくとも一つの化合物を含む少なくとも一つの層を含む。ここで、好ましい電子素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED、PLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光学検査素子、有機光受容素子、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)より成る群から選ばれ、少なくとも一つの層中に上記式(1)の少なくとも一つの化合物を含む。特に、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子である。活性成分は、一般的には、アノードとカソードとの間に導入された有機もしくは無機材料、たとえば、電荷注入、電荷輸送もしくは電荷障壁材料であるが、特に、発光材料およびマトリックス材料である。本発明の化合物は、有機エレクトロルミッセンス素子中の発光材料として、特に、良好な特性を示す。したがって、有機エレクトロルミッセンス素子は、本発明の好ましい態様である。
【0077】
有機エレクトロルミネセンス素子は、カソード、アノードおよび少なくとも一つの発光層を含む。これらの層とは別に、さらなる層、たとえば、各場合に、一以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層、励起子障壁層、電子障壁層、電荷生成層および/または有機もしくは無機p/n接合層をも含んでもよい。たとえば、エレクトロルミネセンス素子中で励起子障壁機能を有するおよび/または電荷補償を調節する中間層を二個の発光層の間に同様に導入されてよい。しかしながら、これらの層の夫々は、必ずしも存在する必要がないことに留意する必要がある。
【0078】
ここで、有機エレクトロルミネセンス素子は、一つの発光層または複数の発光層を含んでもよい。複数の発光層が存在するならば、これらは、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光もしくは燐光を発することができる種々の発光化合物が、発光層に使用される。特に、好ましいのは、ここで、その3層が、青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈する3層構造または三個超の発光層を有する構造である(基本構造については、たとえば、WO 2005/011013参照。)。また、一以上の層が蛍光であり、一以上の他方の層が燐光であるハイブッド構造であってよい。
【0079】
本発明の好ましい態様では、有機エレクトロルミッセンス素子は、一以上の発光層中で発光化合物として式(1)の化合物または上記好ましい態様を含む。
【0080】
式(1)の化合物が、発光層中で発光化合物として使用されるならば、一以上のマトリックス材料と組み合わせて使用されることが好ましい。式(1)の化合物とマトリックス材料を含む混合物は、エミッターとマトリックス材料を含む全体としての混合物に基づいて1〜99体積%、好ましくは、2〜90体積%、特に、好ましくは、3〜40体積%、特に、5〜15体積%の式(1)の化合物を含む。対応して、混合物は、エミッターとマトリックス材料を含む全体としての混合物に基づいて、99〜1体積%、好ましくは、98〜10体積%、特に、好ましくは、97〜60体積%、特別に、95〜85体積%のマトリックス材料を含む。
【0081】
使用されるマトリックス材料は、一般的に、先行技術にしたがってこの目的のために知られるすべての材料であり得る。マトリックス材料の三重項準位は、好ましくは、エミッターの三重項準位よりも高い。
【0082】
本発明化合物のための適切なマトリックス材料は、たとえば、WO 2004/013080、WO 2004/093207、WO 2006/005627もしくはWO2010/006680にしたがうケトン、ホスフィンオキシドまたはスルホキシドおよびスルホン、WO 2005/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP 1205527、WO 2008/086851もしくはUS2009/0134784に記載されたトリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)、m-CBPまたはカルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがう、インデノカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2010/136109もしくはWO 2011/000455にしたがう、アザカルバゾール、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160にしたがう、バイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 2007/137725にしたがう、シラン、たとえば、WO 2005/111172にしたがう、アザボロールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO 2006/117052にしたがう、ジアザシロール誘導体、たとえば、WO 2010/054729にしたがう、ジアザホスホール誘導体、たとえば、WO 2010/054730にしたがう、トリアジン誘導体、たとえば、WO2010/015306、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがう、亜鉛錯体、たとえば、EP 652273もしくはWO 2009/062578にしたがう、ジベンゾフラン誘導体、たとえば、WO 2009/148015にしたがう、または架橋カルバゾール誘導体、たとえば、US 2009/0136779、WO2010/050778、WO 2011/042107もしくは未公開出願DE102010005697.9にしたがうものである。
【0083】
混合物として複数の異なるマトリックス材料、特に、少なくとも一つの電子伝導性マトリックス材料と少なくとも一つの正孔伝導性マトリックス材料を使用することも好ましいかもしれない。好ましい組み合わせは、たとえば、芳香族ケトン、トリアジン誘導体もしくはホスフィンオキシドの誘導体とトリアリールアミン誘導体もしくはカルバゾール誘導体との本発明の金属錯体のためのマトリックス材料としての使用である。同様に好ましいのは、たとえば、WO 2010/108579に記載された電荷輸送体には含まれないか、本質的には含まれない電荷輸送マトリックス材料と電気的に不活性なマトリックス材料の混合物の使用である。
【0084】
二個以上の三重項エミッターと一緒にマトリックスとの混合物を使用することがさらに好ましい。短波長発光スペクトルを有する三重項エミッターが、より長波長発光スペクトルを有する三重項エミッターのためのコマトリックスとして機能する。したがって、たとえば、本発明の式(1)の錯体を、より長波長で発光する三重項エミッター、たとえば、緑色もしくは赤色発光三重項エミッターのためのコマトリックスとして使用することができる。
【0085】
本発明の化合物は、電子素子中で他の機能で、たとえば、正孔注入もしくは輸送層中で正孔輸送材料として、電荷生成材料としてまたは電子障壁材料として使用することができる。
【0086】
カソードは、好ましくは、低い仕事関数を有する金属、種々の金属を含む金属合金もしくは多層構造、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属あるいはランタノイド金属(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)を含む。また、適切なのは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属および銀を含む合金、たとえば、マグネシウムと銀を含む合金である。多層構造の場合、たとえば、Agのような比較的高い仕事関数を有するさらなる金属を前記金属に加えて使用することもでき、たとえば、Ca/AgもしくはBa/Agのような金属の組み合わせが一般的に使用される。高い誘電定数を有する材料の薄い中間層を金属カソードと有機半導体との間に挿入することも好ましいかもしれない。この目的のために適切なものは、たとえば、アルカリ金属フッ化物もしくはアルカリ土類金属フッ化物だけでなく対応する酸化物もしくは炭酸塩である(たとえば、LiF、LiO、BaF、MgO、NaF、CsF、CsCO等)。この層の層厚は、好ましくは、0.5〜5nmである。
【0087】
アノードは、好ましくは、高い仕事関数を有する材料を含む。アノードは、好ましくは、真空に対して4.5eVより高い仕事関数を有する。この目的に適切なものは、一方で、たとえば、Ag、PtもしくはAuのような高い還元電位を有する金属であり、他方で、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiO、Al/PtO)も好ましいかもしれない。いくつかの用途のためには、少なくとも一つの電極は、有機材料の照射(O-SC)もしくは光のアウトカップリング(OLED/PLRD、O−LASER)の何れかを可能とするために、透明でなければならない。好ましい構造は透明アノードである。ここで、好ましいアノード材料は、伝導性混合金属酸化物である。特に、好ましいものは、インジウム錫酸化物(ITO)もしくはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。さらに好ましいものは、伝導性のドープされた有機材料、特に、伝導性のドープされたポリマーで、たとえば、PEDOT、PANIまたはこれらのポリマーの誘導体である。
【0088】
層のために先行技術にしたがって使用されるすべての材料を、さらなる層に一般的に使用することができ、当業者は、進歩性を必要とすることなく、これらの材料のそれぞれを本発明の材料と組み合わせることができるであろう。
【0089】
素子は(用途に応じて)対応して構造化され、接点を供され、本発明による素子の寿命が水および/または空気の存在で極端に短くなることから、最後に封止される。
【0090】
さらに、好ましくは、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより被覆され、材料は、10−5mbar未満、好ましくは、10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で真空気相堆積されることを特徴とする。初期圧力は、さらにより低くても、またはさらより高くても、たとえば、10−7mbar未満でも可能である。
【0091】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により被覆され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、そしてそれにより構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0092】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷あるいはノズル印刷、特に、好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、あるいはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。可溶性の化合物が、この目的のために必要であり、たとえば、適切な置換により得られる。
【0093】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、一以上の層を溶液から適用し、また一以上の他の層を気相堆積により適用することによるハイブリッドシステムとして製造することもできる。したがって、たとえば、式(1)の化合物を含む発光層とマトリックス材料を溶液から適用し、真空気相堆積により正孔障壁層および/また電子輸送層をその上に適用することもできる。
【0094】
これらのプロセスは、当業者に一般的に知られており、本発明の式(1)の化合物または上記好ましい態様を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に、進歩性を要することなく当業者により適用することができる。
【0095】
本発明の電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子は、先行技術を超える以下の驚くべき優位性を有する。
【0096】
1.発光材料として式(1)の化合物を含む有機エレクトロルミッセンス素子は、良好な寿命を有する。
【0097】
2.発光材料として式(1)の化合物を含む有機エレクトロルミッセンス素子は、良好な効率を有する。特に、効率は、式(5)または式(6)の構造単位を含まない類似化合物と比べると顕著により高い。
【0098】
3.本発明の金属錯体により、青色領域で燐光発光する有機エレクトロルミッセンス素子を入手可能である。特に、良好な効率と寿命をもつ青色燐光は、先行技術では大きな困難を要して達成することができるだけである。
【0099】
上記優位性は、その他の電子素子特性を損なうことはない。
【0100】
本発明は、以下の例によってより詳細に説明されるが、それにより限定することを望むものではない。当業者は、進歩性を要することなく説明を基礎としてさらなる電子素子を製造することができ、それゆえ、本特許請求の範囲全体にわたって本発明を実施することができるであろう。
【0101】

以下の合成は、特に断らなければ、保護ガス雰囲気下、無水溶媒中で行われる。金属錯体は、追加的に遮光下で取り扱われる。溶媒と試薬は、たとえば、Sigma-AldricまたはABCRから、購入することができる。括弧内の数は、文献から知られた化学化合物のCAS番号に関する。
【0102】
A:シントンSの合成:
1)3-メチル-6-(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾ[2,1-a]イソキノリンS1
【化22】
【0103】
1a)4-ブロモイソキノリン-1-イルアミン
【化23】
【0104】
47.2g(265ミリモル)のN-ブロモスクシンイミドが、450mlの氷酢酸中の36.0g(250ミリモル)の1-アミノイソキノリン[1532-84-9]の懸濁液に小分けにして添加され、混合物は、20℃で6h攪拌される。沈殿した固形物は、吸引濾過され、100mlの氷酢酸でその度毎に二度、100mlのジエチルエーテルでその度毎に二度洗浄され、真空乾燥される。収率:67.5g(238ミリモル)、95.4%。純度:H−NMRにより約98%。
【0105】
1b)6-ブロモイミダゾ[2,1-a]イソキノリンン
【化24】
【0106】
28.4g(100ミリモル)の4-ブロモ-1-アミノイソキノリン×HAc、25.2ml(300ミリモル)の2-クロロプロパノール、33.6g(400ミリモル)の炭酸水素ナトリウム、300mlのエタノールと50mlの水の混合物が、還流下24h加熱される。反応混合物は、蒸発乾固され、残留物は300mlのジクロロメタンで満たされ、有機相は、水で二度、飽和塩化ナトリウム溶液で一度洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥され、溶媒は真空除去される。こうして得られた油状物は、真空油圧ポンプでバルブ管蒸留により低沸点成分と非揮発成分を逃散される。収率:23.9g(88ミリモル)、88.0%。純度:H−NMRにより約98%。
【0107】
1c)6-(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾ[2,1-a]イソキノリン、S1
13.1g(50ミリモル)の6-ブロモイミダゾ[2,1-a]イソキノリン、24.6g(150ミリモル)のメシチルボロン酸、53.1g(250ミリモル)のリン酸三カリウム、4.1g(10ミリモル)のジシクロヘキシルホスフィノ-2’-6’-ジメトキシビフェニル、1.1g(5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)、100gのガラスビーズ(直径3mm)と200mlのトルエンの混合物が、80℃で48h攪拌される。冷却後、ガラスビーズと塩は吸引濾過され、後者はトルエンで二度すすがれ、有機相は、水で三度洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥され、トルエンは、次いで、真空除去され、残留物は、酢酸エチル:ヘプタンにより、シリカゲル上でクロマトグラフされる。収率:8.5g(28ミリモル)、56.1%。純度:H−NMRにより約98%。
【0108】
2)5-tert-ブチルイミダゾ[1,2-c]キナゾリン、S8
【化25】
【0109】
2a)N-(2-ホルミルフェニル)-2,2-ジメチルプロピオンアミド、S2
【化26】
【0110】
400mlのジオキサン中の18.5g(100ミリモル)の2-ブロモベンズアルデヒド[6630-33-7]、14.2g(140ミリモル)のピバルアミド[754-10-9]、81.5g(250ミリモル)の炭酸カルシウム、1.7g(3ミリモル)の9,9=ジメチル-4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテンと630mg(2.8ミリモル)の酢酸パラジウム(II)の混合物が、100℃で4h攪拌される。冷却後、溶媒は真空除去され、残留物は酢酸エチルで1000mlにされ、有機相は、300mlの水でその度毎に三度洗浄され、300mlの飽和塩化ナトリウム溶液で一度洗浄され、短シリカゲルカラムにより濾過され、溶媒は真空除去される。収率:18.7g(91ミリモル)、91.1%。純度:H−NMRにより約95%。
【0111】
以下の化合物が、同様にして調製される:
【化27-1】
【化27-2】
【0112】
2b)5-tert-ブチルイミダゾ[1,2-c]キナゾリン、S8
20.5g(100ミリモル)のN-(2-ホルミルフェニル)-2,2-ジメチルプロピオンアミド、S2、8.0ml(120ミリモル)のエチレンンジアミン、50mlのエタノールと50mlのニトロベンゼンの混合物が、室温で30min攪拌される。反応混合物は、引き続き、ゆっくりと200℃まで加熱され、その間、エタノール、過剰のエチレンンジアミンと水が連続的に蒸留される。混合物は、200℃でさらに6h攪拌され、室温まで冷却され、その間に、N-[2-(1H-イミダゾール-2-イル)フェニル]-2,2-ジメチルプロピオンアミドが沈殿する。吸引濾過による除去とエタノールによる洗浄後、固形物は、150mlのジオキサンと12.0ml(100ミリモル)のピバロイルクロリド[3282-340-2]の混合物中に懸濁される。懸濁液は、還流下20h加熱され、冷却され、500mlの氷水に添加され、沈殿した油状物は酢酸エチルで500mlにされ、有機相は、300mlの水でその度毎に三度、飽和塩化ナトリウム溶液で一度洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥される。蒸発後得られた赤い油状物は、ジクロロメタンでアルミニウム酸化物(塩基活性度1)上でクロマトグラフされる。収率:10.6g(47ミリモル)、47.0%。純度:H−NMRにより約97%。
【0113】
以下の化合物が、同様にして調製される:
【化28-1】
【化28-2】
【0114】
3)5,8-ジ-tert-ブチルイミダゾ[2,1-f]-1,6-ナフチリジン、S14
【化29】
【0115】
24.3g(100ミリモル)の6-tert-ブチル-2-(3,3-ジメチルブト-1-イニル)-ピリジン-3-カルボキアルデヒド(EP10006208.2)、8.0ml(120ミリモル)のエチレンンジアミンと300mlのニトロベンゼンの混合物が、ゆっくりと200℃まで加熱され、この温度で8h攪拌される。次いで、温度が上昇され、ニトロベンゼンが蒸留され、ニトロベンゼンの最終残留物を除去するために、末端に向けて約50mbarの真空が適用される。残留物はジクロロメタンで50mlにされ、シリカゲル上でクロマトグラフされ、まず、副生物は、ジクロロメタンで溶出され、次いで、生成物は、酢酸エチルで溶出される。収率:21.2g(75ミリモル)、75.2%。純度:H−NMRにより約97%。
【0116】
以下の化合物が、同様にして調製される:
【化30】
【0117】
4)4,7-ジ-tert-ブチル-1,3a,5,6-テトラアザシクロペンタ[a]ナフタレン、S19
【化31】
【0118】
N-(2-ホルミルフェニル)-2,2-ジメチルプロピオンアミドに代えて、2-N-ピバロイルアミド-3-シアノ-6-tert-ブチルピリジン(EP10006208.2にしたがう)を使用して、2b)と同様の手順。収率:8.4g(30ミリモル)、29.7%。純度:H−NMRにより約97%。
【0119】
5)4,7-ジ-tert-ブチル-1,3a,5,8-ペンタアザシクロペンタ[a]ナフタレン、S20
【化32】
【0120】
N-(2-ホルミルフェニル)-2,2-ジメチルプロピオンアミドに代えて、2-tert-ブチル-4-(2,2-ジメチルプロピニルアミノ)ピリミジン-5-カルボキシレート(EP10006208.2にしたがう)を使用して、2b)と同様の手順。収率:9.2g(32ミリモル)、32.4%。純度:H−NMRにより約97%。
【0121】
6)5-tert-ブチル-3-メチルイミダゾ[1,2-c]キナゾリン、S21
【化33】
【0122】
18.8g(105リモル)のN-ブロモスクシンイミドが、300mlのTHF中の22.5g(100ミリモル)の5-tert-5-ブチルイミダゾ[1,2-c]キナゾリン、S8の激しく攪拌された溶液に、20℃で小分けにして添加される。2h後、THFは真空除去され、残留物は、500mlの酢酸エチル中に溶解され、300mlの水でその度毎に三度、飽和塩化ナトリウム溶液で一度洗浄される。酢酸エチルの除去後、残留物は、ジクロロメタンによりシルカゲル上でクロマトグラフされる。こうして得られた20.0g(66ミリモル)の5-tert-5-ブチル-3-ブロモイミダゾ[1,2-c]キナゾリンは、500mlのジエチルエーテル中に溶解され、溶液は、−78℃まで冷却され、2.5Mのn-ヘキサン中の28.0ml(70ミリモル)のn-ブチルリチウムが滴下され、混合物はさらに15min攪拌される。6.2ml(100ミリモル)のヨウ化メチルが、こうして得られた黄色の懸濁液に激しく攪拌されながら一度に添加される。冷却浴は移動され、混合物はゆっくりと室温まで暖められ、黄色の溶液は200mlの5重量%のアンモニア溶液でその度毎に二度洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥され、次いでジエチルエーテルは真空除去される。残留物は、約50mlのシクロヘキサンから再結晶化される。収率:8.5g(35ミリモル)、35.5%。純度:H−NMRにより約97%。
【0123】
以下の化合物が、同様にして調製される:
【化34-1】
【化34-2】
【化34-3】
【0124】
6)2-ブロモ-3-メチル-6-(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾ[2,1-a]イソキノリン、S34
【化35】
【0125】
200mlのDHF中の30.0g(100ミリモル)の3-メチル-6-(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾ[2,1-a]イソキノリン、S1の溶液が、400mlのDHF中の18.8g(105ミリモル)のN-ブロモスクシンイミドの激しく攪拌された溶液にゆっくりと滴下される。混合物はさらに1h攪拌され、DMFは真空除去され、残留物は、酢酸エチル/メタノールから再結晶化される。収率:22.9g(60ミリモル)、60.4%。純度:H−NMRにより約97%。
【化36-1】
【化36-2】
【化36-3】
【化36-4】
【化36-5】
【化36-6】
【化36-7】
【化36-8】
【化36-9】
【化36-10】
【0126】
7)2-ブロモイミダゾ[2,1-a]イソキノリン、S71
【化37】
【0127】
14.4g(100ミリモル)の1-アミノイソキノリン[1532-84-9]、15.3g(100ミリモル)のメチル2-ブロモアセテート[96-32-2]、15.2ml(110ミリモル)のトリエチルアミンと150mlのエタノールの混合物が、還流下8h加熱される。冷却後、沈殿した固形物は吸引濾過され、40mlのエタノールで一度洗浄され、真空乾燥される。57.3g(200ミリモル)ホスホリルブロミドが、こうして得られたイミダゾ[2,1-a]イソキノリン-2-オンに添加され、混合物は、100℃で5h加熱される。冷却後、溶融物は、500mlのトルエンで希釈され、500mlの氷水が激しく攪拌されながら添加され、混合物は、5%NaOHを使用して弱アルカリ性にされる。有機相は、分離され、水で洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥される。溶媒の真空除去後、残留物はジクロロメタンによりシリカゲル上でクロマトグラフされる。収率:18.7g(76ミリモル)、75.7%。純度:H−NMRにより約96%。
【0128】
以下の化合物が、同様にして調製される:
【化38-1】
【化38-2】
【0129】
B:リガンドLの合成:
1)V=NRであるリガンド
100mlの臭素、50mlのアニリン/アミン、12.5g(130ミリモル)のナトリウムtert-ブトキシド、10.0ml(10ミリモル)のトルエン中1モルのトリ-tert-ブチルホスフィンと300mlのトルエン中の1.1g(5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)が、還流下、24h加熱される。冷却後、有機相は200mの水で二度その度毎に洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥され、トルエンは真空除去され、残留物は酢酸エチル/ヘプタンによりシリカゲル上でクロマトグラフされ、固形物は、引き続き分別昇華により揮発および不揮発成分を容易に逃散される(p約10−5mbar、T約260〜300℃)。純度:H−NMRにより約99%。
【0130】
以下のアニリン/アミンが、使用される:
【化39】
【化40-1】
【化40-2】
【化40-3】
【化40-4】
【化40-5】
【化40-6】
【化40-7】
【化40-8】
【化40-9】
【化40-10】
【化40-11】
【化40-12】
【化40-13】
【化40-14】
【化40-15】
【化40-16】
【0131】
2)V=BRであるリガンド
N-ヘキサン中2.5Mの40.0ml(100ミリモル)のn-ブチルリチウムが、300mlのTHF中の100ミリモルの臭素の−78℃に冷却された溶液に滴下される。反応混合物は、さらに30min攪拌され、100mlのTHF中の840mg(50ミリモル)ジフルオロメシチルボラン溶液が、次いで滴下される。反応混合物は、さらに1h−78℃で攪拌され、次いで室温まで暖められ、THFは真空除去され、残留物はジクロロメタンで300mlにされ、100mlの水でその度毎に二度洗浄され。硫酸ナトリウムで乾燥され、溶媒は真空除去され、油状の残留物は酢酸エチル/メタノールから再結晶化され、固形物は、引き続き分別昇華により揮発および不揮発成分を容易に逃散される(p約10−5mbar、T約260〜300℃)。純度:H−NMRにより約99%。
【化41】
【0132】
3)V=Oであるリガンド
200mlのジエチレングリコールジメチルエーテル中の100ミリモルの臭素、4.0g(100ミリモル)の水酸化ナトリウムが、14.9g(120ミリモル)のn-ブチルイミダゾール、26.4g(100ミリモル)の18-クラウン-6と1.9g(10ミリモル)のヨウ化銅(I)が、120℃で16h加熱される。冷却後、反応混合物は、300mlの水でその度毎に三度洗浄され。硫酸ナトリウムで乾燥され、溶媒は真空除去され、油状の残留物は酢酸エチル/メタノールから再結晶化され、固形物は、引き続き分別昇華により揮発および不揮発成分を容易に逃散される(p約10−5mbar、T約260〜300℃)。純度:H−NMRにより約99%。
【化42-1】
【化42-2】
【0133】
C:錯体の合成
100mlのベンゾニトリル中の10ミリモルのビス(ベンゾニトリル)白金(II)ジクロライドと10ミリモルのリガンドLが、還流下16h加熱される。冷却された反応混合物への100mlのメタノールの滴下後、固形物は吸引濾過され、25mlのメタノールでその度毎に五度洗浄され、真空乾燥される。固形物は100mlの氷酢酸中に懸濁され、20mlのピリジンと1.5gの亜鉛ダストが懸濁液に添加され、混合物は、90℃で5h攪拌される。還流下60h加熱される。冷却後、固形物は吸引濾過され、25mlのメタノールでその度毎に三度洗浄され、真空乾燥される。こうして得られた固形物は、熱抽出機中で3cmの深さのセライトベッドの上に置かれ、次いでトルエン(導入量約300ml)で抽出される。抽出が終わると、抽出物は、真空中で約100mlまで蒸発される。抽出剤中で過度に良好な溶解度を有する金属錯体が、200mlのメタノールの滴下により結晶化される。こうして得られた懸濁液の固形物は、吸引濾過され、50mlのメタノールで洗浄され、乾燥される。乾燥後、金属錯体の純度が、NMRおよび/またはHPLCにより測定される。純度が、99.5%未満であると熱抽出工程が繰り返され、純度99.5〜99.9%が達成されると、Pt錯体が昇華される。昇華は約320〜約390℃の範囲の温度で高真空(p約10−6mbar)中で実行され、昇華は、好ましくは、分別昇華の形で実行される。
【化43-1】
【化43-2】
【化43-3】
【0134】
例:OLEDの製造
本発明によるOLEDと先行技術によるOLEDが、WO 2004/058911にしたがう一般的プロセスにより製造されるが、ここに記載される状況(層の厚さの変化、使用材料)に適合される。
【0135】
種々のOLEDに対する結果が、以下の例で示される(表1および2参照)。厚さ150nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆されたガラス板が、改善された加工のために、20nmのPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン)で水からのスピンコート、H.C.Stack,Goslar独から購入。)で被覆される。これらの被覆されたガラス板は、OLEDが適用される基板を形成する。OLEDは、基本的に、次の層構造を有する:基板/随意に、正孔注入層(HIL1)/随意に、正孔注入層(HIL2)/正孔輸送層(HTL)/電子障壁層(EBL)/発光層(EML)/随意に、正孔障壁層(HBL)/電子輸送層(ETL)および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。
【0136】
まず、真空加工OLEDが説明される。この目的のために、すべての材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。ここで、発光層は、常に、少なくとも一つのマトリックス材料(ホスト材料)と、共蒸発により一定の体積割合でマトリックス材料と前混合される発光ドーパント(エミッター)とから成る。ここで、M1:M2:PtL(55%:35%:10%)等の表現は、材料M1が55体積%の割合で層中に存在し、M2が35%の割合で層中に存在し、PtLが10%の割合で層中に存在することを意味する。同様に、電子輸送層も二種の材料の混合物からなってよい。OLEDの正確な構造は表1に示される。OLED製造のために使用される材料は、表3に示される。
【0137】
OLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としての電流効率(cd/Aで測定)と電圧(1000cd/mでV電子測定)が測定される。選ばれた実験から寿命が測定される。寿命は、輝度がある初期輝度からある割合で低下した時間として定義される。LT50という表現は。所与の寿命が初期輝度の50%に、たとえば、4000cd/m〜2000cd/mに低下した時間である。発光色に応じて、種々の初期輝度が選択される。寿命の値は、当業者に知られた変換式により、他の初期輝度に対する数値に変換することができる。ここでは、初期輝度1000cd/mに対する寿命が、通常の数値である。
【0138】
燐光OLEDでのエミッター材料としての本発明の化合物の使用
本発明の化合物は、特に、OLEDでの発光層中で燐光エミッター材料として使用することができる。ここで、OLEDにおいて、本発明の材料が、効率的な青色〜緑色発光OLEDをもたらすことが明らかである。
【0139】
表1:燐光OLEDでのエミッターとしての本発明の化合物の使用
【表1】
【0140】
表2:燐光OLEDでのエミッターとしての本発明の化合物の使用
【表2】
【0141】
表3:使用される材料の構造式
【表3-1】
【表3-2】