特許第6038909号(P6038909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038909
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ステアリングシャフト
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20161128BHJP
   F16C 31/04 20060101ALI20161128BHJP
   F16C 19/56 20060101ALI20161128BHJP
   F16C 33/32 20060101ALI20161128BHJP
   F16C 33/34 20060101ALI20161128BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20161128BHJP
   F16C 23/08 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B62D1/16
   F16C31/04
   F16C19/56
   F16C33/32
   F16C33/34
   F16C25/08
   F16C23/08
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-517578(P2014-517578)
(86)(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公表番号】特表2014-520697(P2014-520697A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2012061337
(87)【国際公開番号】WO2013004466
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】102011051557.7
(32)【優先日】2011年7月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500396654
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ オートモーティブ ステアリング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Robert Bosch Automotive Steering GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム、リンデ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー、フックス
【審査官】 谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−016901(JP,A)
【文献】 特開2009−197818(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10359962(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16
F16C 19/56
F16C 23/08
F16C 25/08
F16C 31/04
F16C 33/34
F16C 33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シャフト(22)内で軸方向に移動可能に支持された内側シャフト(23)を有する、自動車のステアリングシステムのための、ステアリングシャフト(20)であって、
少なくとも2列に軸方向に配置された複数の金属製の転動体(28、29、30)を有する転がり軸受(24、25)が、中空シャフト(22)と内側シャフト(23)との間に配置されており、
前記金属製の転動体(28、29、30)の直径が、前記転がり軸受(24、25)の中央部から前記転がり軸受(24、25)の端部(32、33、34、35)に向かって減少していることを特徴とするステアリングシャフト(20)。
【請求項2】
前記金属製の転動体(28、29、30)は、直接に互いに当接していることを特徴とする請求項1に記載のステアリングシャフト(20)。
【請求項3】
前記金属製の転動体(28、29、30)は、互いに間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングシャフト(20)。
【請求項4】
前記転がり軸受(24、25)は、前記端部(32、33、34、35)の領域に配置されたプラスチックから製造されている転動体(31)を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のステアリングシャフト(20)。
【請求項5】
前記プラスチック製の転動体(31)は、前記転がり軸受(24、25)の中央部に配置された金属製の転動体(28)よりも、大きい径を有していることを特徴とする請求項4に記載のステアリングシャフト(20)。
【請求項6】
前記プラスチック製の転動体(31)とそれに隣接する転動体との間隔は、それ以外の互いに隣接する転動体間の間隔よりも大きいことを特徴とする請求項4または5に記載のステアリングシャフト(20)。
【請求項7】
きついカーブ走行時、及び/または、停止中の自動車のステアリング操作の際、前記プラスチック製の転動体(31)に加えて、軸方向に中央部に配置された金属製の転動体(28)も、中空シャフト(22)に当接することを特徴とする請求項乃至6のいずれか一項に記載のステアリングシャフト(20)。
【請求項8】
前記転動体(28、29、30、31)は、軸方向に移動可能なケージ(26、27)内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のステアリングシャフト(20)。
【請求項9】
電動式または油圧式のサーボアシスト装置の故障時、前記金属製の転動体(29、30)は中空シャフト(22)と内側シャフト(23)とに当接することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のステアリングシャフト(20)。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のステアリングシャフト(20)を備えたことを特徴とする自動車用のステアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空シャフト内で軸方向に移動可能に支持された内側シャフトを有する、特には自動車のステアリングシステムのための、ステアリングシャフトに関する。ここでは、少なくとも2列に軸方向に配置された複数の金属製の転動体を有する転がり軸受が、中空シャフトと内側シャフトとの間に配置されている。
【背景技術】
【0002】
高い圧縮比を伴う内燃機関を用いる場合、従来技術から知られたステアリングシャフトは、振動してしまう。このことは、直線走行時やステアリング操作開始時において特に、ステアリングホイールにおいて妨害的に知覚され得る。エラストマ部と内側シャフトとの間のエアギャップを用いた様々な解決手段は、この問題を有効に解決できない。同様に、同径の転動体を有する転がり軸受と中空シャフトとの間のエアギャップも、性能を発揮しない。
【発明の概要】
【0003】
本発明の課題は、前述の類のステアリングシャフトを改良して、内燃機関によって生成される振動の、内側シャフトと中空シャフトとの間での転がり軸受を介しての伝達を、もはや不可能にすることである。
【0004】
本発明の課題は、冒頭部分に述べた類のステアリングシャフトであって、金属製の転動体の直径が転がり軸受の中央部からその端部に向かって減少しており、複数の相互に隣接する金属製の転動体が異なる直径を有することを特徴とするステアリングシャフトによって解決される。従って、転がり軸受の中央部では、より大径の転動体が認められる。一方、端部に最も近く配置された金属製の転動体は、最も小さい径を有している。従って、中空シャフトに対して内側シャフトが傾斜姿勢である場合でも、転がり軸受を介して振動が中空シャフトひいてはステアリングホイールに伝達され得るというリスクが、顕著に低減される。合目的的に、中央の転動体は、振動の伝達を信頼性をもって回避するために、中空シャフト及び/または内側シャフトに対して所定の間隔を有している。
【0005】
転動体は、軸方向に移動可能なケージ内に配置され得る。この場合、転動体は中空シャフト及び/または内側シャフトに対して当接し得るが、内側シャフトは中空シャフトに対して軸方向に大きなストロークで自由に(軽負荷で)移動され得る。転動体は、合目的的に、転動体と中空シャフトとの間のギャップを形成する遊び、及び/または、転動体と内側シャフトとの間のギャップを形成する遊び、を伴ってケージ内に支持されている。従って、それらは、中空シャフトまたは内側シャフトの実際の設置位置に依存して、重力に基づいて、中空シャフトに組み込まれた軸受面に当接し得ると共に、内側シャフトに組み込まれた軸受面にも当接し得る。当該ギャップによって、振動の伝達は排除される。
【0006】
金属製の転動体は、直接に互いに当接し得る。この場合、転がり軸受は、最小の長さを有する。これによれば、特に中空シャフトに対して傾斜している内側シャフトの場合に、中空シャフトへの振動の伝達のリスクがより一層最小化される。
【0007】
原理的には、金属製の転動体を互いに間隔を空けて配置することも可能である。これは、特に、内側シャフト及び中空シャフトの寸法に依存する。
【0008】
好適な実施の形態では、両端部の領域に配置された転動体は、プラスチック(合成材料)から製造され得る。このためには、その高い温度安定性と良好なダンパ(減衰)性能とにより、とりわけ良好なPOM及びPEEKが適している。プラスチック製の転動体は、合目的的に、中空シャフトと内側シャフトとの間で予張力を伴って当接している。これにより、直線走行時やステアリング操作開始時において、内側シャフトから中空シャフトへの振動、あるいは、中空シャフトから内側シャフトへの振動が、金属製の転動体が中空シャフトまたは内側シャフトに当接することなく、信頼性をもって減衰され得る。
【0009】
有用な態様において、プラスチック製の転動体は、軸受の中央部に配置された金属製の転動体よりも、大径を有する。これにより、金属製の転動体と中空シャフトないし内側シャフトとの間に遊びが生じる。これにより、直線走行中やステアリング操作開始時において、振動が中空シャフトに伝達され得ない。
【0010】
転がり軸受が可能な限り短い長さを有するために、プラスチック製の転動体が金属製の転動体に対して密に配置され得る。
【0011】
きついカーブ走行時、及び/または、停止中の自動車のステアリング操作の際、プラスチック製の転動体に加えて、軸方向に中央部に配置された金属製の転動体も、中空シャフト及び内側シャフトに当接する。この場合、中央部に配置された金属製の転動体もトルクを伝達し、これにより、プラスチック製の転動体はその弾性領域を越えて変形することなく、その破壊から保護される。更に、プラスチック製の転動体の数によって、ダンパ(減衰)性能が改善され得る。
【0012】
電動式または油圧式のサーボアシスト装置の故障時に、金属製の転動体が中空シャフトと内側シャフトとに当接すれば、ステアリング操作に必要なトルクが、信頼性をもって伝達され得る。
【0013】
転動体は、合目的的には、玉(ボール)、円筒ころ、または、テーパ付きころ、であり得る。
【0014】
本発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載のステアリングシャフトを備えた、自動車用のステアリングシステムに関している。
【0015】
以下に、本発明によるステアリングシャフトが、添付の図面に基づいて、詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術から知られたステアリングシャフトである。
図2】本発明によるステアリングシャフトの2つの実施形態の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、従来技術から知られた、中空シャフト11と内側シャフト12とを備えたステアリングシャフト10を示している。内側シャフト12は、中空シャフト11内で、転がり軸受13によって、軸方向に移動可能に支持されている。転がり軸受13は、複数列に軸方向に配置された転動体14を有している。転動体14は、この例では、同径の玉として形成されており、軸方向に移動可能なケージ15内に配置されている。ケージ15の軸方向の移動可能性は、内側シャフト12上に設けられたストッパ17、18によって制限されている。転動体14は、ここでは詳しく図示されないステアリングホイールを介して導入されるトルクを、中空シャフト11から内側シャフト12へ、あるいはその逆に、そして同様にここでは図示されない車輪へと、伝達するために役立つ。弾性軸受ブシュ16が、特に内燃機関に由来する振動が中空シャフト11に、従ってステアリングホイールに、伝達され得るということを、回避すべきである。しかしながら、この解決法は、実際上は性能を発揮しない。転動体14と中空シャフト11ないし内側シャフト12との間のギャップも、振動のステアリングホイールへの不所望の伝達を回避できない。
【0018】
図2は、中空シャフト22と内側シャフト23とを有する、本発明による2つの実施形態のステアリングシャフト20、21を示している。内側シャフト23は、転がり軸受24、25によって、軸方向に移動可能に支持されている。転がり軸受24、25は、ケージ26、27を有している。当該ケージの中に、金属製の転動体28、29、30とプラスチック製の転動体31とが配置されている。
【0019】
中央部に配置された転動体28は、最も大きい径を有しており、両端部32、33、34、35に最も近く配置された金属製の転動体30は、最も小さい径を有している。転動体29は、転動体28、30の直径の中間の直径を有している。
【0020】
転がり軸受24の転動体28、29、30は、互いに間隔を空けて配置されており、転がり軸受25の転動体28、29、30は、互いに直接当接している。これにより、転がり軸受25は、転がり軸受24よりも、顕著に短い。
【0021】
プラスチック製の転動体31は、金属製の転動体28の直径よりも大径の直径を有している。この場合、転動体28と中空シャフト22との間に、遊び36が生じる。
【0022】
操作されていないステアリングホイールを有する未だ停止中の自動車の場合、及び、直線走行時、プラスチック製の転動体31は、好適には玉として形成されるが、中空シャフト22に当接している。プラスチック製の転動体31は、高いダンパ性能(減衰性能)を有するので、内側シャフト23から中空シャフト22への振動は、ステアリングホイールの操作者には知覚可能には伝達されない。転動体28乃至31により形成される列が多ければ多い程、転動体31が振動をより効果的に減衰させ得る。更に、プラスチック製の転動体31は、わずかなトルクを、ステアリング過程の開始時に、中空シャフト22から内側シャフト23へと伝達し得る。
【0023】
きついカーブ走行時、または、停止中の自動車のステアリング操作の際、プラスチック製の転動体31に加えて、中央部に配置された金属製の転動体28も、中空シャフト22に当接してトルクを伝達する。
【0024】
例えば縁石乗り上げ時のような不適切な状況下であると思われる、より高いトルクの場合、あるいは、電動式または油圧式のサーボアシスト装置の故障時、トルクの高さに依存して、より小径で設けられた金属製の転動体29、30も、更に中空シャフト22に当接する。トルクが上昇すればする程、次に小さい転動体29、30が、ますます中空シャフト22に当接する。
【符号の説明】
【0025】
10 ステアリングシャフト
11 中空シャフト
12 内側シャフト
13 転がり軸受
14 転動体
15 ケージ
16 軸受ブシュ
17 ストッパ
18 ストッパ
20 ステアリングシャフト
21 ステアリングシャフト
22 中空シャフト
23 内側シャフト
24 転がり軸受
25 転がり軸受
26 ケージ
27 ケージ
28 転動体
29 転動体
30 転動体
31 転動体
32 端部
33 端部
34 端部
35 端部
36 ギャップ
図1
図2