(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のパルス発生器(3)と第2のパルス発生器(3’)とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサ(4a〜4d)から取得される時間依存性圧力信号を処理するためのデバイスであって、前記圧力センサ(4a〜4d)が、前記第1のパルス発生器(3)から生じる第1のパルスと前記第2のパルス発生器(3’)から生じる第2のパルスとを検出するように前記流体含有システムにおいて構成され、前記第1のパルス発生器(3)がパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じ、前記デバイスが、
前記圧力信号に対する入力(28)と、
前記入力(28)に接続され、
前記圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得すること、ここで前記圧力信号は前記第1のパルスに重ねられた第2のパルスを含む、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルについて、前記圧力信号中の1つまたは複数の周期同期されたデータサンプルを取得することと、ここで、各周期同期されたデータサンプルは前記圧力信号中の先行するまたは後続のパルス周期中で取得され、前記現在のパルス周期中の前記現在のデータサンプルの位置に対応する前記先行するまたは後続のパルス周期中の位置を有する、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、前記1つまたは複数の周期同期されたデータサンプルの関数として基準値を計算すること、および
前記少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が抑制された現在の出力サンプルを生成するように、前記現在のデータサンプルに対して取得される前記基準値を入力として使用して、前記現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させること
を行うように構成された信号処理器(25a)と
を備える、デバイス。
前記信号処理器(25a)が、前記基準値を、隣接するパルス周期内の前記周期同期されたデータサンプルの関数として計算するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
前記信号処理器(25a)が、前記基準値を、前記周期同期されたデータサンプルと、隣接するパルス周期内の前記周期同期されたデータサンプルに隣接する1つまたは複数のデータサンプルの集合として計算するように構成されている、請求項1または2に記載のデバイス。
前記信号処理器(25a)が、前記基準値を、少なくとも2つの他のパルス周期内の周期同期されたデータサンプルの集合として計算するように構成されている、請求項1または2に記載のデバイス。
前記信号処理器(25a)が、前記少なくとも2つの他のパルス周期内の各周期同期されたデータサンプルに隣接する1つまたは複数のデータサンプルを含むように前記集合を計算するように構成されている、請求項4に記載のデバイス。
前記信号処理器(25a)が、前記現在のデータサンプルと前記現在の出力サンプルとの差に基づいて各重み係数を適応的に決定するように構成された適応フィルタ(36)を備える、請求項6に記載のデバイス。
前記信号処理器(25a)が、前記基準値に対応し先行パルス周期において計算される先行基準値を更新することによって、前記集合を再帰的に計算するように構成されている、請求項4に記載のデバイス。
前記信号処理器(25a)が、前記基準値を、前記先行基準値および前記先行パルス周期内の前記周期同期されたデータサンプルと前記先行基準値との差の関数として計算するように構成されている、請求項8に記載のデバイス。
前記現在のパルス周期内で取得される現在のデータサンプルの時系列を入力として受け取って前記現在のパルス周期における基準値の時系列を表す1組の状態を推定するように構成されたカルマンフィルタ(32)をさらに備える、請求項4、8、または9に記載のデバイス。
前記信号処理器(25a)が、前記現在のデータサンプルと前記周期同期されたデータサンプルとの差値を計算し、前記現在のパルス周期内の前記現在のデータサンプルの場所に対応する1つまたは複数の先行パルス周期内の場所を有するために取得される周期同期された出力サンプルに重み係数を適用することによって重み付けされたフィードバック値を生成し、前記現在の出力サンプルを、前記差値と前記重み付けされたフィードバック値の合計として生成するように構成され、前記重み係数が、前記信号処理器(25a)が前記カルマンフィルタを実施するように選択される、請求項10に記載のデバイス。
前記第1のパルス発生器(3)の前記パルス周期を表す同期信号に対する入力(28)をさらに備え、前記信号処理器(25a)が、前記現在のデータサンプルを取得すること、前記基準値を計算すること、および前記減算アルゴリズムを動作させることのうちの少なくとも1つにおいて、前記同期信号に応答する、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス。
前記信号処理器(25a)が、前記現在のデータサンプルを繰り返し取得し、前記現在のパルス周期内の前記少なくとも1つの第1のパルスの推定される時間的プロファイルを形成する基準値の時系列を生成するために前記基準値を計算するように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
前記信号処理器(25a)が、前記第2のパルスの時間的プロファイルを形成する現在の出力サンプルの時系列を生成するために前記減算アルゴリズムを動作させるように構成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイス。
第1のパルス発生器(3)と第2のパルス発生器(3’)とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサ(4a〜4d)から得られる時間依存性圧力信号を処理するためのデバイスであって、前記圧力センサ(4a〜4d)が、前記第1のパルス発生器(3)から生じる第1のパルスと前記第2のパルス発生器(3’)から生じる第2のパルスとを検出するように前記流体含有システムにおいて構成され、前記第1のパルス発生器(3)がパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じ、前記デバイスが、
前記圧力信号に対する入力(28)と、
前記入力(28)に接続され、
前記圧力信号中の前記現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得すること、ここで前記圧力信号は前記第1のパルスに重ねられた第2のパルスを含む、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、基準値を前記現在のデータサンプルの推定値として計算することであって、前記推定値が、前記圧力信号中の前記現在のデータサンプルに隣接した少なくとも2つのデータサンプルに基づく予測によって計算される、計算すること、および
前記少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が抑制された現在の出力サンプルを生成するように、前記現在のデータサンプルに対して得られる前記基準値を入力として使用して、前記現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させること
を行うように構成された信号処理器(25a)と
を備えるデバイス。
前記信号処理器(25a)が、前記現在のデータサンプルと前記現在の出力サンプルとの差に基づいて各重み係数を適応的に決定するように構成された適応フィルタ(36)を備える、請求項16に記載のデバイス。
ヒト被験者の血管アクセス部(3)と流体連通して接続され、前記ヒト被験者の心血管系から血液処理デバイス(6)を通して前記心血管系に戻す血液を循環させるように動作可能であるように構成された体外流体回路(1)を備え、請求項1から28のいずれか一項に記載のデバイスをさらに備える、血液処理のための装置。
第1のパルス発生器(3)と第2のパルス発生器(3’)とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサ(4a〜4d)から得られる時間依存性圧力信号を処理する方法であって、前記圧力センサ(4a〜4d)が、前記第1のパルス発生器(3)から生じる第1のパルスと前記第2のパルス発生器(3’)から生じる第2のパルスとを検出するように前記流体含有システムにおいて構成され、前記第1のパルス発生器(3)がパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じ、前記方法が、
前記圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得することと、ここで前記圧力信号は前記第1のパルスに重ねられた第2のパルスを含む、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルについて、前記圧力信号中の1つまたは複数の周期同期されたデータサンプルを取得することと、ここで、各周期同期されたデータサンプルは前記圧力信号中の先行するまたは後続のパルス周期中で取得され、前記現在のパルス周期中の前記現在のデータサンプルの位置に対応する前記先行するまたは後続のパルス周期中の位置を有する、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、前記1つまたは複数の周期同期されたデータサンプルの関数として基準値を計算すること、および
前記少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が抑制された現在の出力サンプルを生成するように、前記現在のデータサンプルに対して得られる前記基準値を入力として使用して、前記現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させることと
を備える方法。
第1のパルス発生器(3)と第2のパルス発生器(3’)とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサ(4a〜4d)から得られる時間依存性圧力信号を処理する方法であって、前記圧力センサ(4a〜4d)が、前記第1のパルス発生器(3)から生じる第1のパルスと前記第2のパルス発生器(3’)から生じる第2のパルスとを検出するように前記流体含有システムにおいて構成され、前記第1のパルス発生器(3)がパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じ、前記方法が、
前記圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得することと、ここで前記圧力信号は前記第1のパルスに重ねられた第2のパルスを含む、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、基準値を前記現在のデータサンプルの推定値として計算することであって、前記推定値が、前記圧力信号中の前記現在のデータサンプルに隣接した少なくとも2つのデータサンプルに基づく予測によって計算される、計算することと
前記少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が抑制された現在の出力サンプルを生成するように、前記現在のデータサンプルに対して得られる前記基準値を入力として使用して、前記現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させることと
を備える方法。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、従来技術に鑑みて、上記の必要性のうちの1つまたは複数を少なくとも部分的に満たすことである。
【0009】
1つの目的は、流体含有システムにおいて取得される圧力信号中の外乱成分の除去または抑制によって、この圧力信号中の情報成分の抽出を可能にする技法を提供することである。
【0010】
別の目的は、流体含有システムにおいて実施が簡単なこのような技法を提供することである。
【0011】
さらなる目的は、処理容量またはメモリ容量の使用率が改善されたフィルタリング法を提供することである。
【0012】
別の目的は、上述の流体含有システムにおける第1のサブシステム、第2のサブシステム、またはこの2つのサブシステム間の流体接続の完全性の性質のモニタリングを可能にする技法を提供することである。
【0013】
さらに別の目的は、ヒト被験者(human subject)の心血管系の1つまたは複数の性質のモニタリングに使用することが可能なこのような技法を提供することである。
【0014】
上記の目的のうちの1つまたは複数、ならびに以下の説明から明らかになりうるさらなる目的は、独立請求項による、デバイス、血液処理用装置、方法、およびコンピュータ可読媒体によって少なくとも部分的に達成され、その実施形態は従属請求項によって定義される。
【0015】
その種々の態様において、本発明は、第1のパルス発生器におけるパルス生成処理についての理解を用いて設計されるフィルタリング法を提供する。具体的には、本発明のフィルタリングは、圧力信号が連続したパルス周期を含むと知っていること、さらに、(たとえば、流体含有システムおよび第1のパルス発生器の動作状態に応じた)個々のパルス周期内の第1のパルス(複数可)の形状が不明な場合であっても、各パルス周期が第1のパルスの既知の発生を有すると知っていることに基づく。本明細書で用いる場合、「パルス周期」は、第1のパルス発生器の構造に結び付けられ、圧力信号中の所定の数の第1のパルスの繰り返し構造として表される。第2のパルスは、圧力信号中のパルス周期上にオーバレイされる、すなわち重ねられる。圧力信号から取得されるそれぞれの現在のデータサンプルを現在のパルス周期に関連付けることによって、それぞれの現在のデータサンプルに対して圧力信号中の1組の先行データサンプルおよび/または後続データサンプルを選択および処理することにより、それぞれの現在のデータサンプルに対する適切な基準値を生成することが可能である。この見識に基づいて、本発明は、その種々の態様において、結果として生成される基準値の時系列が現在のパルス周期内の第1のパルス(複数可)の推定される時間的プロファイルを形成するように、各基準値を生成するように設計することができる。それによって、各基準値は、現在のパルス周期内の第1のパルス(複数可)からの瞬間的な信号寄与分の推定を表す。それぞれの現在のデータサンプルからこの瞬間的な信号寄与分を減算することによって、出力サンプルの時系列を、第1のパルスが本質的にないように、現在のパルス周期に対して生成することができる。
【0016】
本発明のフィルタリングは、第1のパルスの形状がいくつかの連続したパルス周期にわたってほとんど変わらないという推定に基づいており、したがって、先行データサンプルおよび/または後続データサンプルに基づいて現在のデータサンプルに対する適切な基準値を導出することが可能であることに留意されたい。本発明のフィルタリングはまた、第1のパルスおよび第2のパルスが異なるレートで生成され、したがって第2のパルスの場所は連続したパルス周期間で異なると推定する。それによって、結果として生成される出力サンプルは、第2のパルスが圧力信号中に存在する場合、第2のパルスの信号寄与分を含むが、第1のパルスの信号寄与分は排除されるか、または少なくとも大幅に抑制される。
【0017】
その種々の態様では、本発明のフィルタリングは、単一の圧力センサのみを必要とするので、流体含有システムにおける実施が簡単である。本発明のフィルタリングは、従来技術において提案されるような、別の圧力センサから基準プロファイルを取得する複雑さ、ならびに圧力信号の適切なフィルタリングに関するこの基準プロファイルを使用する複雑さ、場合によってはこれを調整する複雑さをなくす。従来技術による技法と比較して、本発明のフィルタリングは、基準プロファイルをあらかじめ記録または計算する必要性、これらの基準プロファイルを保存する必要性、およびこのような保存された基準プロファイルを圧力信号のフィルタリングに使用する複雑さもなくす。したがって、本発明のフィルタリングは、処理容量とメモリ容量の少なくとも一方の使用率を改善することができる。
【0018】
特許請求の範囲において、本発明のフィルタリングは、2つの異なる手法、すなわち周期同期(CS)手法および近接予測(PP)手法に関して定義される。これらの手法の両方が、上記で説明した本発明の概括的な概念に含まれることを強調すべきである。
【0019】
CS手法の第1の態様は、第1のパルス発生器と第2のパルス発生器とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサから取得される時間依存性圧力信号を処理するためのデバイスである。この圧力センサは、第1のパルス発生器から生じる第1のパルスと第2のパルス発生器から生じる第2のパルスとを検出するように流体含有システムにおいて構成され、第1のパルス発生器はパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じる。デバイスは、圧力信号に対する入力と、この入力に接続され、圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得し、現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、圧力信号中の1つまたは複数の他のパルス周期内の周期同期されたデータサンプルの関数として基準値を計算し、この周期同期されたデータサンプルは、現在のパルス周期内の現在のデータサンプルの場所に対応する1つまたは複数の他のパルス周期内の場所を有するために取得され、少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、現在のデータサンプルに対して得られる基準値を入力として使用して、現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させるように構成された信号処理器とを備える。
【0020】
本明細書で用いる場合、「他の」パルス周期は、現在のパルス周期以外の別のパルス周期を表す。実装形態に応じて、1つまたは複数の他のパルス周期は、圧力信号中の現在のパルス周期に先行または後続してもよいし、その両方であってもよい。後続パルス周期を使用するには、概して、データサンプルの何らかの形態のバッファリングを必要とする。一実施形態では、信号処理器は、基準値を、隣接するパルス周期、たとえば直前の先行パルス周期内の周期同期されたデータサンプルの関数として計算するように構成されている。信号処理器は、隣接するパルス周期内の周期同期されたデータサンプルに等しい基準値を設定するようにさらに構成されうる。
【0021】
一実施形態では、信号処理器は、基準値を、周期同期されたデータサンプルと、隣接するパルス周期、たとえば直前の先行パルス周期内の周期同期されたデータサンプルに隣接する1つまたは複数のデータサンプルの集合として計算するように構成されている。
【0022】
一実施形態では、信号処理器は、基準値を、少なくとも2つの他のパルス周期の集合内の周期同期されたデータサンプルとして計算するように構成されている。信号処理器は、少なくとも2つの他のパルス周期内の各周期同期されたデータサンプルに隣接する1つまたは複数のデータサンプルを含むように集合を計算するようにさらに構成されうる。
【0023】
一実施形態では、信号処理器は、集合を、データサンプルの加算として計算するように構成されている。信号処理器は、加算において各データサンプルに重み係数を適用するようにさらに構成されうる。信号処理器は、現在のデータサンプルと出力サンプルとの差に基づいて各重み係数を適応的に決定するように構成された適応フィルタをさらに備えることができる。
【0024】
一実施形態では、信号処理器は、基準値に対応し先行パルス周期において計算される先行基準値を更新することによって、集合を再帰的に計算するように構成されている。信号処理器は、基準値を、先行基準値および先行パルス周期内の周期同期されたデータサンプルと先行基準値との差の関数として計算するようにさらに構成されうる。ここで、したがって、周期同期されたデータサンプルと同じ先行パルス周期において取得される基準値との差が計算され、この先行パルス周期は直前の先行パルス周期であってもよい。
【0025】
再帰的実施形態の一実装形態では、デバイスは、現在のパルス周期内で取得される現在のデータサンプルの時系列を入力として受け取って現在のパルス周期における基準値の時系列を表す1組の状態を推定するように構成されたカルマンフィルタをさらに備える。対応する実用的な実装形態では、信号処理器は、現在のデータサンプルと周期同期されたデータサンプルとの差値を計算し、現在のパルス周期内の現在のデータサンプルの場所に対応する1つまたは複数の先行パルス周期内の場所を有するために取得される周期同期された出力サンプルに重み係数を適用することによって重み付けされたフィードバック値を生成し、現在の出力サンプルを、差値と重み付けされたフィードバック値の合計として生成するように構成可能であり、重み係数は、信号処理器がカルマンフィルタを実施するように選択可能である。
【0026】
再帰的実施形態の一実装形態、ならびに本明細書で開示されるすべての他の実施形態では、信号処理器は、現在のデータサンプルを、圧力信号中の圧力値として取得するように構成されている。
【0027】
再帰的実施形態の別の実装形態では、信号処理器は、現在のデータサンプルを、圧力信号中の近接する(たとえば連続した)圧力値間の差として取得するように構成されている。それによって、再帰的実施形態は、第1のパルス発生器の動作におけるドリフト(drift)を説明するように構成されうる。
【0028】
以下の実施形態は、以下でさらに説明するように、CS手法の第1の態様だけでなくPP手法の第1の態様にも適用することができる。
【0029】
一実施形態では、信号処理器は、圧力信号から第1のデータサンプルを取得し、現在のパルス周期内のそれぞれの場所に関する第1のデータサンプル間の内挿によってそれぞれの現在のデータサンプルを取得するように構成されている。したがって、この実施形態は、第1のデータサンプルを生成するデータサンプリング機器に関する要件を緩和しながら、現在のパルス周期内の明確な場所を持つそれぞれの現在のデータサンプルを生成することを可能にする。
【0030】
このような一実施形態では、信号処理器は、パルス周期と同期する現在のデータサンプルを取得するように構成されている。
【0031】
このような一実施形態では、デバイスは、第1のパルス発生器のパルス周期を表す同期信号に対する入力をさらに備え、信号処理器は、現在のデータサンプルをうること、基準値を計算すること、および減算アルゴリズムを動作させることのうちの少なくとも1つにおいて、同期信号に応答する。
【0032】
一実施形態では、流体含有システムは、体外血液処理装置、ヒト被験者の心血管系、および体外処理装置と心血管系との間の流体接続部を備え、第1のパルス発生器は体外処理装置に結び付けられ、第2のパルス発生器はヒト被験者に結び付けられる。
【0033】
一実施形態では、信号処理器は、現在のデータサンプルを繰り返し取得し、現在のパルス周期内の少なくとも1つの第1のパルスの推定される時間的プロファイルを形成する基準値の時系列を生成するように基準値を計算するように構成されている。
【0034】
一実施形態では、信号処理器は、第2のパルスの時間的プロファイルを形成する現在の出力サンプルの時系列を生成するために減算アルゴリズムを動作させるように構成されている。
【0035】
一実施形態では、信号処理器は、それぞれの現在のパルス周期に対して少なくとも3つの出力サンプルを生成するように構成されている。
【0036】
一実施形態では、第1のパルス発生器は、少なくとも1つのローラを有する回転子を備える蠕動ポンプを備え、各パルス周期は回転子のフル回転に相当する。一代替実施形態では、第1のパルス発生器は、いくつかのローラを有する回転子を備える蠕動ポンプを備え、回転子の各フル回転は、ローラの数と同じ数のパルス周期を生成する。
【0037】
CS手法の第2の態様は、第1のパルス発生器と第2のパルス発生器とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサから取得される時間依存性圧力信号を処理するためのデバイスである。この圧力センサは、第1のパルス発生器から生じる第1のパルスと第2のパルス発生器から生じる第2のパルスとを検出するように流体含有システムにおいて構成され、第1のパルス発生器はパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じる。デバイスは、圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得するための手段と、現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、圧力信号中の1つまたは複数の他のパルス周期内の周期同期されたデータサンプルの関数として基準値を計算するための手段であって、この周期同期されたデータサンプルは、現在のパルス周期内の現在のデータサンプルの場所に対応する1つまたは複数の他のパルス周期内の場所を有するために取得される、手段と、少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、現在のデータサンプルに対して得られる基準値を入力として使用して、現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させるための手段とを備える。
【0038】
CS手法の第3の態様は、ヒト被験者の血管アクセス部と流体連通して接続され、ヒト被験者の心血管系から血液処理デバイスを通して心血管系に戻す血液を循環させるように動作可能であるように構成された体外流体回路と、第1の態様または第2の態様のデバイスとを備える、血液処理のための装置である。
【0039】
CS手法の第4の態様は、第1のパルス発生器と第2のパルス発生器とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサから取得される時間依存性圧力信号を処理する方法である。この圧力センサは、第1のパルス発生器から生じる第1のパルスと第2のパルス発生器から生じる第2のパルスとを検出するように流体含有システムにおいて構成され、第1のパルス発生器はパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じる。この方法は、圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得することと、現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、圧力信号中の1つまたは複数の他のパルス周期内の周期同期されたデータサンプルの関数として基準値を計算することであって、この周期同期されたデータサンプルは、現在のパルス周期内の現在のデータサンプルの場所に対応する前記1つまたは複数の他のパルス周期内の場所を有するために取得される、計算することと、少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、現在のデータサンプルに対して得られる基準値を入力として使用して、現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させることとを備える。
【0040】
CS手法の第5の態様は、プロセッサによって実行されるときに、このプロセッサに第4の態様の方法を実行させるコンピュータ命令を備えるコンピュータ可読媒体である。
【0041】
CS手法の第1の態様の上記の実施形態のいずれか1つは、CS手法の上記の第2から第5の態様の一実施形態として適合および実施することができる。
【0042】
PP手法の第1の態様は、第1のパルス発生器と第2のパルス発生器とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサから取得される時間依存性圧力信号を処理するためのデバイスである。この圧力センサは、第1のパルス発生器から生じる第1のパルスと第2のパルス発生器から生じる第2のパルスとを検出するように流体含有システムにおいて構成され、第1のパルス発生器はパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じる。デバイスは、圧力信号に対する入力と、この入力に接続され、圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得し、現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、基準値を現在のデータサンプルの推定値として計算し、この推定値は、圧力信号中の現在のデータサンプル近傍の少なくとも2つのデータサンプルに基づく予測によって計算され、少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、現在のデータサンプルに対して得られる基準値を入力として使用して、現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させるように構成された信号処理器とを備える。
【0043】
実装形態に応じて、少なくとも2つのデータサンプルは、圧力信号中の現在のデータサンプルに先行および/または後続してもよいし、その両方であってもよい。後続データサンプル(複数可)を使用するには、概して、データサンプルの何らかの形態のバッファリングを必要とする。
【0044】
PP手法の一実施形態では、信号処理器は、少なくとも2つのデータサンプルのそれぞれに重み係数を適用することによって予測を計算するように構成されている。信号処理器は、現在のデータサンプルと現在の出力サンプルとの差に基づいて各重み係数を適応的に決定するように構成された適応フィルタをさらに備えることができる。
【0045】
PP手法の第2の態様は、第1のパルス発生器と第2のパルス発生器とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサから取得される時間依存性圧力信号を処理するためのデバイスである。この圧力センサは、第1のパルス発生器から生じる第1のパルスと第2のパルス発生器から生じる第2のパルスとを検出するように流体含有システムにおいて構成され、第1のパルス発生器はパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じる。デバイスは、圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得するための手段と、現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、基準値を現在のデータサンプルの推定値として計算するための手段であって、この推定値は、圧力信号中の現在のデータサンプル近傍の少なくとも2つのデータサンプルに基づく予測によって計算される、手段と、少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、現在のデータサンプルに対して得られる基準値を入力として使用して、現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させるための手段とを備える。
【0046】
PP手法の第3の態様は、ヒト被験者の血管アクセス部と流体連通して接続され、ヒト被験者の心血管系から血液処理デバイスを通して心血管系に戻す血液を循環させるように動作可能であるように構成された体外流体回路と、第1の態様または第2の態様のデバイスとを備える、血液処理のための装置である。
【0047】
PP手法の第4の態様は、第1のパルス発生器と第2のパルス発生器とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサから取得される時間依存性圧力信号を処理する方法である。この圧力センサは、第1のパルス発生器から生じる第1のパルスと第2のパルス発生器から生じる第2のパルスとを検出するように流体含有システムにおいて構成され、第1のパルス発生器はパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じる。方法は、圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得することと、現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、基準値を現在のデータサンプルの推定値として計算することであって、この推定値は、圧力信号中の現在のデータサンプル近傍の少なくとも2つのデータサンプルに基づく予測によって計算される、計算することと、少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、現在のデータサンプルに対して得られる基準値を入力として使用して、現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させることとを備える。
【0048】
PP手法の第5の態様は、プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに第4の態様を実行させるコンピュータ命令を備えるコンピュータ可読媒体である。
【0049】
PP手法の第1の態様の上記の実施形態のいずれか1つは、PP手法の上記の第2から第5の態様の一実施形態として適合および実施することができる。
【0050】
本発明のさらに他の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明から、添付の特許請求の範囲から、ならびに図面から、明らかになるであろう。
【0051】
次に、本発明の例示的な実施形態について、添付の概略図を参照して、より詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下では、本発明の例示的な実施形態について、流体含有システムを参照して概括的に説明する。その後、本発明の実施形態および実装形態について、体外血液処理用システムに関連してさらに例示する。
【0054】
以下の説明の全体を通して、同様の要素は同じ参照符号によって示される。
【0055】
概略
図1は、第1の流体含有サブシステムS1と第2の流体含有サブシステムS2との間に流体接続部Cが確立される流体含有システムを示す。流体接続部Cは、一方のサブシステムから他方のサブシステムに流体を送ることも、送らないこともできる。第1のパルス発生器3は、第1のサブシステムS1内の流体中で一連の圧力波を生成するように構成され、第2のパルス発生器3’は、第2のサブシステムS2内の流体中で一連の圧力波を生成するように構成されている。圧力センサ4aは、第1のサブシステムS1内の流体圧力を測定するように構成されている。第2のパルス発生器3’によって生成される圧力波は、第2のサブシステムS2から第1のサブシステムS1に、接続部Cを介して伝わり、したがって、第1のパルス発生器3から生じる第1のパルス(波形)に加えて、第2のパルス発生器3’から生じる第2のパルス(波形)が、圧力センサ4aによって検出される。第1のパルス発生器3と第2のパルス発生器3’のいずれか一方が複数のパルス発生デバイスを含みうることに留意されたい。さらに、任意のこのようなパルス発生デバイスは、それぞれのサブシステムS1、S2の一部であっても、一部でなくてもよい。
【0056】
図1のシステムは、
図1に示されるように圧力センサ4a、4b、4c、4dのうちの1つまたは複数に接続された監視デバイス25をさらに含む。それによって、監視デバイス25は、第1のサブシステムS1内の流体圧力のリアルタイム表示を提供するために時間依存性である1つまたは複数の圧力信号を取得する。
【0057】
概して、監視デバイス25は、圧力信号のうちの1つにおける1つまたは複数の第2のパルスを分離および解析することによって流体含有システムの機能状態または機能パラメータをモニタリングするように構成されている。この機能状態または機能パラメータは、第2のサブシステムS2の種々の特性に関してモニタリング可能である。第2のサブシステムS2がヒト被験者である場合、以下でさらに説明するように、この機能状態または機能パラメータは、ヒト被験者の心拍数または血圧を評価するためにモニタリング可能である。さらに、以下でさらに例示するように、この機能状態または機能パラメータは、たとえば第1のサブシステムS1、第2のサブシステムS2、第2のパルス発生器3’、または流体接続部Cにおける、障害の状態を識別するためにモニタリング可能である。障害の状態を識別すると、監視デバイス25は、適切な方策をとるように、アラームまたは警告信号を発する、かつ/または第1のサブシステムS1または第2のサブシステムS2の制御システムに知らせることができる。この代わりに、またはこれに加えて、監視デバイス25は、機能状態または機能パラメータの値の時系列を(たとえば表示のために)記憶または出力するように構成されうる。
【0058】
監視デバイス25は、実装形態に応じて、デジタルコンポーネント、アナログコンポーネント、またはこれらの組合せを使用して、圧力信号を受信および処理することができる。デバイス25は、本発明のさまざまな実施形態により圧力信号を取得および処理するのに適したハードウェアを備えた、コンピュータまたは類似のデータ処理デバイスであってもよい。本発明の実施形態は、たとえば、デバイス25内の電子メモリ25bと連携してプロセッサ25aにより実行されるためにコンピュータ可読媒体に供給されるソフトウェア命令によって実施することができる。
【0059】
典型的には、監視デバイス25は、圧力信号中に第2のパルスが存在する場合に、この第2のパルスを分離するために、時間依存性圧力信号(複数可)を繰り返し処理するように構成されている。この処理は、
図2の流れ図に概略的に示されている。
【0060】
図2の方法は、たとえば、第1のパルス発生器3と第2のパルス発生器3’とに結び付けられた
図1の流体含有システム内の圧力センサ4aによって測定される時間依存性圧力信号に対して動作する。前述のように、この圧力信号は、第1のパルス発生器3および第2のパルス発生器3’から生じる信号成分の中から第2のパルス発生器3’から生じる信号成分を分離することによって流体含有システムの機能状態または機能パラメータをモニタリングするために処理される。この処理は、圧力信号から現在のデータサンプルを取得するステップ202と、圧力信号中の少なくとも1つの先行データサンプルを表す基準値を取得するステップ203とを含む。ステップ204では、第1のパルスに起因するいかなる信号成分(第1のパルス寄与分)をも本質的に排除するように、この基準値を入力として使用して、減算アルゴリズムを現在のデータサンプルに対して動作させる。ステップ204の結果は、第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない出力サンプルである。「本質的にない」は、前述の機能状態または機能パラメータをモニタリングするために第2のパルスからの信号寄与分を検出および解析できる程度まで、圧力信号から第1のパルス寄与分を除去することを意味する。連続した時間ステップでステップ202〜204を繰り返し、それによって、ステップ202を、圧力信号中の各繰り返しに対して1つの時間ステップ前進させる。1つの実装形態では、受信圧力信号はデジタルであり、データサンプルの時系列によって形成され、ステップ202〜204は、圧力信号中の各データサンプルに対して繰り返してもよいが、必ずしもそうする必要はない。別の実装形態では、受信圧力信号はアナログであり、ステップ202〜204は、圧力信号から現在のデータサンプルを抽出するための初期アナログデジタル変換を備える。あるいは、ステップ202〜204は、圧力信号中の選択された時点における圧力値が現在のデータサンプルを形成するアナログ処理を実施することができる。実装形態にかかわらず、
図2の方法は、圧力信号中のデータサンプルの系列に対して動作し、対応する出力サンプルの系列を生成する。圧力信号が第1のパルスと第2のパルスの両方を含む限り、出力サンプルの系列は、1つまたは複数の第2のパルスまたはその一部を含み、これを、流体含有システムの機能状態または機能パラメータをモニタリングするためのステップ205で種々の特性について評価することができる。
【0061】
本発明の概念の紹介
図2に示されるように、基準値は、圧力信号中の少なくとも1つの先行データサンプルを表す。したがって、「先行データサンプル」は、圧力信号中の、現在のデータサンプルより前のデータサンプルである。先行データサンプルは、たとえば、現在のデータサンプルの直前にあることがあり、または1つもしくは複数のパルス周期さかのぼることもある。「パルス周期」または「周期」は、第1のパルス発生器3の動作に関連して定義され、各周期は少なくとも1つの第1のパルスを含む。周期の定義はやや恣意的であることがあり、各第1のパルスが周期内の既知および/または予測可能な場所を有する限り、周期は任意の数の第1のパルスを含むことができることに留意されたい。一例では、第1の発生器は蠕動ポンプであり、周期は、回転子角度間隔に対応するポンプ部材の1つの完全な旋回またはポンプ部材の部分的な旋回を表すことができる(
図4のポンプ3の回転子30を参照されたい)。蠕動ポンプは任意の数のローラを備えることができるが、典型的な数は2または3である。2つのローラを備えた蠕動ポンプに基づく以下の例では、当業者によく知られているように、各周期は、回転子およびそのローラのフル旋回(360度)と定義され、2つの第1のパルスを備え、各パルスは、2つのローラのうちの一方がチューブセグメントと係合して流体を押してチューブセグメントを通らせるときに生成される。ローラは円の周りに均等に分散させてもよく、対称性は、ローラの完全な回転を各ローラ間の周期に分割するために使用することができ、製造および設計上の違いにより、対称性に依拠するのではなくポンプ部材の完全な回転を使用することが有利になることがある。しかし、平衡のとれたローラを想定できる場合、周期は、単一の第1のパルスを含むように定義することができ、したがって、連続した周期は異なるローラと関連付けられる。
【0062】
本明細書で用いる場合、周期内で現在のデータサンプルと同じ、または少なくとも極めて類似した、タイミングを有する先行データサンプルは、「周期同期されたデータサンプル」と表記される。換言すると、周期同期されたデータサンプルは、現在の周期内の現在のデータサンプルの相対的な場所に対応する先行周期内の相対的な場所を有する。
【0063】
基準値は、2つ以上の直前の先行サンプルの、または2つ以上の周期同期されたデータサンプルの、場合によっては重み付けされた、平均値とすることができ、したがって、2つ以上の先行周期から取得することができる。以下の例では、周期同期されたデータサンプルは、1つまたは複数の直前の先行周期から取得される。しかし、原理上、周期同期されたサンプルは任意の先行周期(複数可)から取得することができるが、時間的に現在のデータサンプルに最も近い周期(複数可)を使用することによって、より優れた精度を達成することができる。というのは、これらの周期(複数可)は、たとえばポンピング速度、平均流体圧力、適合性容積(compliance volume)、ポンプの閉塞などに関して、現在の周期と類似の動作条件で生成される可能性が高いからである。以下で説明する例では、基準値は、現在の周期と固定および所定の関係を持つ先行周期(複数可)から取得した周期同期されたサンプルに基づいて生成される。しかし、一変形形態では、たとえば、現在の周期の動作条件(ポンピング速度、平均流体圧力など)を先行周期のセットのそれぞれと比較することによって、周期同期されたサンプルを取得するために使用するべき先行周期(複数可)を動的に選択するための選択機構を実施することができる。先行周期(複数可)の動的な選択は、平均値を計算するときの各周期同期されたサンプルに対する重み係数を動的に設定するだけで実施することができる(
図9、10、11、および12のフィルタ構造を参照されたい)。
【0064】
本発明のフィルタリングの効果が
図5に例示されている。
図5Aは、第1のパルスと第2のパルスとを10:1の相対的な大きさで含む時間依存性圧力信号d(n)の一例を示す。第1のパルスおよび第2のパルスはそれぞれ、1Hzおよび1.33Hzの周波数を有する。大きさに差があるので、圧力信号は、第1のパルスによって支配される。
図5Bは、本発明のフィルタリング法を圧力信号d(n)に適用した後で取得される、時間依存性のフィルタリングされた信号e(n)を示す。このフィルタリングされた信号e(n)は、第2のパルスおよび雑音から構成される。約4秒後に第2のパルスがないことに留意されたい。これは、監視デバイス(
図1の25)によって観測され、流体含有システムの障害の状態、たとえば流体接続部Cの破損として識別されうる。
【0065】
以下では、所与の時間に第1のパルス寄与分(ポンプパルス寄与分)を評価または生成するための、および圧力信号の第2の(生理的)パルスを抽出するための例示的な実施形態について説明する。
【0066】
図3Aは、
図1の圧力センサ4aによって測定される時間依存性圧力信号の一例を示す。この圧力信号は、第1のパルス発生器3および第2のパルス発生器3’から重ね合わされた寄与分を備え、第1のパルス発生器3は圧力信号の形状を支配する。信号に沿って、いくつかのサンプルは、たとえば、現在のデータサンプルではC1、C2、C3など、第1の先行パルス周期内の周期同期されたデータサンプルではP
11、P
12、P
13、第2の先行パルス周期内の周期同期されたデータサンプルではP
21、P
22、P
23、などで示される。Nは、各パルス周期中のデータサンプルの数を表す。示されるデータサンプルについて、以下で
図3Bから3Hに関連して説明する。そのうえ、圧力信号は、第1のパルス発生器3の連続したパルス周期の継続時間に対応するいくつかの連続した区間にさらに分割される。図示の例では、第1のパルス発生器3は2つのローラを備えた蠕動ポンプであり、各パルス周期は2つの第1のパルスを備えるように定義される。上記で説明したように、それによって、各パルス周期は、回転子のフル回転に対応する。パルス周期は、現在のパルス周期、第1の先行パルス周期、第2の先行パルス周期、および第3の先行パルス周期と表記される。任意の数の先行パルス周期を使用することができるが、簡単にするため、3つの先行パルス周期が示されている。
【0067】
例I.直前の先行パルス周期の対応する周期同期されたサンプルに基づく基準値
図3Bは、直前の先行パルス周期の対応する周期同期されたサンプルに基づく基準値が取得される第1の例を示す。
図3Bは、現在のパルス周期中の第1の位置からの現在のデータサンプルC1と、現在のパルス周期中の現在のデータサンプルの相対的な場所に対応する、第1の先行パルス周期中の第1の位置からの1つの先行周期同期されたデータサンプルP
11とを示す。蠕動ポンプを備えた例では、周期同期されたデータサンプルP
11は、時間的に回転子の1つのフル回転前、すなわち360度前に対応するインスタンスで取得されている。
【0068】
図6は、
図2の方法を実施して
図3Bに示されるデータ処理を達成するフィルタ構造31の概略図である。
図6では、ブロックZ
-Δは、現在のデータサンプルd(n)に対する適切な負の遅延(−Δ)を有する先行データサンプルu(n)を圧力信号中で取得するステップを実施するために含まれる。この遅延は、先行データサンプルu(n)が周期同期されたデータサンプルであるように適切に選択される。図示の例では、Δは、360゜に対応する時間値に設定される。乗算ブロックXにおいて、先行データサンプルに、基準値
【数1】
【0069】
を生成する重み係数W
1を乗じ、これによって(重み係数W
1を1に設定することによって示される)先行データサンプルを直接に使用する。結果として取得される基準値
【数2】
【0070】
は、現在のデータサンプルd(n)からの基準値
【数3】
【0071】
の減算(
図2のステップ204)を実行する加算ブロックΣに入力され、出力サンプルe(n)を生成する。したがって、
図6では、先行データサンプルP
11を基準値として使用して、現在のデータサンプルC1に対して減算アルゴリズムを動作させ、第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない出力サンプルを生成する。
【0072】
しかし、連続した現在のデータサンプルの系列に対して
図3Bの処理を繰り返すときに生成される出力サンプルの系列は、通常、第2のパルスの真の表示ではない。というのは、第2のパルスは、典型的には、少なくとも部分的に、現在のパルス周期と先行パルス周期の両方に存在するが、異なる場所に存在するからである(第1のパルスと第2のパルスは、通常、異なる速度で生成されるからである)。したがって、出力サンプルの系列は、現在のパルス周期中の第2のパルス(の一部)を備えるフィルタリングされた信号と、先行周期中の第2のパルス(の一部)の負のバージョンとを生成する。すなわち、後者は前者の上にオーバレイされるが、逆の符号を備え、1つの完全な第1のパルス発生器の周期、遅延される。
【0073】
図6のフィルタ構造31、ならびに以下で説明する
図7から12のフィルタ構造31は、さまざまな実施形態を概念的に説明するために示されていることを理解されたい。したがって、負の遅延を適用する機能および基準値を生成する機能は、
図2の方法のステップ202〜204を繰り返し実行する間に信号プロセッサ(
図1の25a)によって実施可能であり、その結果、基準値は、ステップ202〜204を1回繰り返す間に生成され、電子メモリ(
図1の25bを参照されたい)に記憶され、ステップ202〜204の次の繰り返し時に電子メモリから取り出される。信号の実際の遅延バージョンを作り出す電子部品の組合せを使用することも可能である。
【0074】
図3Cは、直前の先行パルス周期中の周期同期されたデータサンプルP
11とこの周期同期されたデータサンプルに隣接する2つのデータサンプルP
12およびP
2Nの集合(「近隣集合」)として基準値を計算する第1の例の変形形態を示す。この近隣集合は、基準値のより良い近似値を生じさせることがあり、データサンプルの組合せを説明し、データサンプルの重み付け加算または非重み付け加算、たとえばP
11、P
12、およびP
2Nの平均化を含むことがある。
【0075】
図7は、基準値を生成するために実施される乗算ブロックXを、たとえば、場合によっては改善された基準値を達成するように個々に設定できる重み係数を含む、加算によって、近隣集合を実施する集合ブロック32(「フィルタ」)によって置き換えた、
図6のフィルタ構造31に類似したフィルタ構造31の概略図である。
図7は、集合ブロック32が個々の周期同期されたデータサンプルを受け取ることを示しているが、集合ブロック32は、周期同期されたデータサンプルの受信ストリームを処理して、(現在のデータサンプルの)周期同期された値と周期同期された値の片側または両側の隣接するデータサンプルとの集合によって、それぞれの現在のデータサンプルd(n)に対して、基準値
【数4】
【0076】
を生成するように構成されうることが理解されよう。
【0077】
図8は、周期同期されたサンプルu(n)および出力サンプルe(n)に基づいて各重み係数を適応的に決定するように構成された適応ブロック34によって集合ブロック32を補完する、
図7のフィルタ構造31に類似したフィルタ構造31の概略図である。集合ブロック32および適応ブロック34は、36によって示される適応フィルタを定義する。適応ブロック34のアルゴリズムは、出力サンプルe(n)を最小にするまたは別の方法で最適化するように、近似された基準値
【数5】
【0078】
に対する最良適合を達成するように集合ブロック32の重み係数を自動的および適応的に調整するように構成されうる。適応アルゴリズムには、たとえば、再帰的最小二乗(RLS)法および最小二乗平均(LMS)法がある。
【0079】
例II.複数の先行パルス周期の対応する周期同期されたサンプルに基づく基準値
図3Dは第2の例を示し、複数の先行パルス周期の対応する周期同期されたサンプルは、基準値を取得するために使用される。
図3Dは、現在のパルス周期中の第1の位置からの第1の現在のデータサンプルC1と、第1の現在のパルス周期中の第1の現在のデータサンプルの場所に対応する第1の先行パルス周期、第2の先行パルス周期、および第3の先行パルス周期中の位置からの、第1の先行周期同期されたデータサンプルP
11、第2の先行周期同期されたデータサンプルP
21、および第3の先行周期同期されたデータサンプルP
31とを示す。基準値は、第1のデータサンプルP
11、第2のデータサンプルP
21、および第3のデータサンプルP
31の集合として計算される。基準値を使用して、現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させ、第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない出力サンプルを生成する。
【0080】
この手順を、
図3Eに示される現在のサンプルC2ならびにその周期同期されたデータサンプルP
12、P
22、およびP
32に対して、
図3Fに示される現在のサンプルC3ならびにその周期同期されたデータサンプルP
13、P
23、およびP
33、などに対して繰り返す。
【0081】
蠕動ポンプを備えた例では、第1の先行周期同期されたデータサンプルP
11、P
12、およびP
13(
図3Dから3Fを参照されたい)はそれぞれ、時間的に回転子の1回のフル回転前、すなわち360度前に対応するインスタンスで取得されている。
【0082】
図9は、
図2の方法を実施して
図3Dから3Fに示されるデータ処理を達成するフィルタ構造31の概略図である。
図9では、ブロックZ
-Δ、Z
-2Δ、…、Z
-MΔが集合ブロック32に含まれ、現在のデータサンプルd(n)に対する適切な負の遅延(−Δ)、(−2Δ)、…、(−MΔ)を有する先行データサンプルを圧力信号中で取得するように構成されている。この遅延は、先行データサンプルが周期同期されたデータサンプルであるように適切に選択される。図示の例では、Δは、360゜に対応する時間値に設定される。乗算ブロックXにおいて、各先行データサンプルにそれぞれの重み係数(W
1、…、W
M)を乗じ、加算ブロックΣによって一括して加算し、基準値
【数6】
【0083】
を生成する。結果として取得される基準値
【数7】
【0084】
は、現在のデータサンプルd(n)からの基準値
【数8】
【0085】
の減算(
図2のステップ204)を実行する下流の加算ブロックΣに入力され、出力サンプルe(n)を生成する。したがって、
図9では、先行データサンプル、たとえばM=3の場合はP
11、P
21、およびP
31の集合を基準値として使用して、現在のデータサンプル、たとえばC1に対して減算アルゴリズムを動作させ、第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない出力サンプルを生成する。
【0086】
図9のフィルタ構造31は、それぞれの重み係数W
i(i=1からM)を−W
i(|W|<1)に設定する場合、およびM→∞の場合、フィードバックループとして実施することができる。このようなフィードバックループを備えたフィルタ構造31が
図13に示されており、乗算ブロックXにおいて周期同期された出力サンプルe(n−Δ)に重み係数Wを適用した後で、加算ブロックΣにおいて先行周期(ブロックZ
-Δによって生成される)の周期同期された出力サンプルe(n−Δ)を現在のデータサンプルd(n)に追加する。このようなフィードバックループは、実施は簡単であるが、異なる周期の重み同士の固定の関係を必要とするという欠点を有する。周期同期されたデータサンプルと同様に、「周期同期された出力サンプル」は、現在の周期中の現在のデータサンプルの相対的な場所に対応する先行周期中の相対的な場所に対して計算される。
【0087】
図10は
図9のフィルタ構造31に類似したフィルタ構造31の概略図であり、近似された基準値
【数9】
【0088】
に対する最良適合を達成するための集合ブロック32の重み係数W
1、…、W
Mを適応的に決定するように構成された適応機能を実施する適応ブロック34によって集合ブロック32を補完する。適応ブロック34は、
図8に関連して説明したように構成されうる。
【0089】
図3Gは、基準値を周期同期されたデータサンプルP
11、P
21、およびP
31の集合として計算し、データサンプルP
11、P
21、およびP
31はそれぞれ、隣接する2つのデータサンプルP
12およびP
2N;P
22、P
3N;ならびにP
32、P
4Nとそれぞれ(近隣集合によって)集合される、第2の例の変形形態を示す。したがって、この変形形態は、隣接するデータサンプルを含む
図3Cの例と、複数の先行パルス周期の周期同期されたサンプルを含む
図3Dから3Fの例との組合せを表す。
【0090】
図11は、
図2の方法を実施して
図3Gに示されるデータ処理を達成するフィルタ構造31の概略図である。
図11では、集合ブロック32は、適切な負の遅延(−Δ)、(−2Δ)、…、(−MΔ)を有するブロックZ
-Δ、Z
-2Δ、…、Z
-MΔによって取得される先行(周期同期された)データサンプルと、ブロックZ
-1、…、Z
-(K-1)によって取得されるそれぞれの隣接するデータサンプルとを集合させるように構成されている。先行データサンプルは、重み係数W
1、…、W
MKを適用しながら加算ブロックΣを使用して集合される。結果として取得される基準値
【数10】
【0091】
は、現在のデータサンプルd(n)からの基準値
【数11】
【0092】
の減算(
図2のステップ204)を実行する下流の加算ブロックΣに入力され、出力サンプルe(n)を生成する。
図7と同様に、
図11の集合ブロック32は、周期同期されたデータサンプルの受信ストリームを処理して、(現在のデータサンプルの)周期同期された値と周期同期された値の片側または両側の隣接するデータサンプルとの集合によって、それぞれの現在のデータサンプルd(n)に対して、基準値
【数12】
【0093】
を生成するようにするように構成されうる。したがって、
図3Cを参照すると、
図11のフィルタ構造31は、P
11、P
21、およびP
31の周囲の集合された近隣先行データサンプルの集合を基準値として使用して、現在のデータサンプルC1に対して減算アルゴリズムを動作させ、第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない出力サンプルを生成することができる。
【0094】
図12は
図11のフィルタ構造31に類似したフィルタ構造31の概略図であり、近似された基準値
【数13】
【0095】
に対する最良適合を達成するための集合ブロック32の重み係数W
1、…、W
MKを決定するように構成された適応機能を実施する適応ブロック34によって集合ブロック32を補完する。適応ブロック34は、
図8に関連して説明したように構成されうる。
【0096】
例III.現在のサンプルに隣接するサンプルの予測に基づく基準値
図3Hは、圧力信号中の現在のデータサンプルC1に隣接する2つの先行データサンプルP
1NおよびP
1N−1に基づいて基準値が取得される第3の例を示す。基準値は、2つの先行データサンプルP
1NとP
1N−1とを外挿することによって計算される。
図9のフィルタ構造31は、M=2とΔ=1(すなわち、1時間ステップの遅延)とを設定することによって実施し、
図3Hのデータ処理を達成することができる。乗算ブロックXにおいて、各先行データサンプルにそれぞれの重み係数(W
1、…、W
M)を乗じ、加算ブロックΣにおいて一括して加算し、外挿された基準値または予測された基準値
【数14】
【0097】
を生成する。現在のデータサンプルC1に対して、予測された基準値
【数15】
【0098】
を使用して減算アルゴリズムを動作させ、第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない出力サンプルe(n)を生成する。
【0099】
2つ以上の直前の先行データサンプルは、予測または外挿に使用することができる。原理上は、任意の過去の値を、現在のデータサンプルの予測または外挿の基礎と見なすことができるが、時間的に現在のデータサンプルに最も近い先行データサンプルを選択することによって、精度の改善を達成することができる。
【0100】
重み係数は、先行データサンプルの変化率(導関数)と先行データサンプルの絶対レベルの両方の関数として予測される基準値が生成されるように適切に設定される。たとえば、
図3Hに戻ると、予測される基準値は、
【数16】
【0101】
=W
1・P
1N+W
2・P
1N−1=(W
1+W
2)・P
1N−W
2・(P
1N−P
1N−1)によって与えられることができ、ここで、第1の項は絶対圧レベルの重み付けされた寄与分を表し、第2の項は圧力の変化率の重み付けされた寄与分を表す。したがって、2つ以上の先行データサンプルの重み付けされた組合せによって、適切に予測された基準値を生成することができることは明らかである。
【0102】
第3の例によるフィルタリング法は、第2のパルスが第1のパルスと比較して弱いとき、たとえば第2のパルスの対第1のパルスの大きさ(振幅)の比が約10%、5%、または1%のとき、特に有用なことがある。Mを増加させるにつれて、このフィルタリング法が比較的に強い第2のパルスを除去する能力を改善することができる。
【0103】
一変形形態が、たとえば
図10に関連して図示および説明する、重み係数を適応的に決定するブロック34を含むことによって取得される。
【0104】
たとえば
図8、10、および12に示されるような、フィルタ構造31に適応フィルタ36を含む概括的な性質は、先行データサンプルが第1のパルス寄与分と第2のパルス寄与分の両方を備える場合、フィルタ構造31に、第2のパルス寄与分を保持させながら第1のパルス寄与分を排除する方へ収束できることである。したがって、出力サンプルe(n)は第2のパルス寄与分を含む。というのは、フィルタ36は、基準値
【数17】
【0105】
における第2のパルス寄与分を再生することができないからである。
【0106】
例IV.再帰型フィルタリング
第4の例は、基準値の以前の計算からの平均値を第1の部分として、追加の値を第2の部分として共に再使用して新しい平均値を導出し、次に、この新しい平均値を現在のデータサンプルから減算する再帰的方法を含む。この手順は、各連続した時間ステップに対して繰り返し、圧力信号中に第2のパルスが存在する場合に第2のパルスを分離することができる。このような再帰型フィルタリングは、周期同期されたデータサンプルd(n−Δ)に基づいて各時点nに対してフィルタ32が基準値
【数18】
【0107】
を再帰的に生成するように構成された、
図7に示されるフィルタ構造31によって実施することができる。示されるように、フィルタ32は、カルマンフィルタとして実施することができる。
【0108】
カルマンフィルタの定義
カルマンフィルタは、概して、測定値から動的システムにおける状態を推定するために使用される。動的システムの構造によっては、システム構造についての知識を使用して1つの測定値だけから任意の数の状態を推定することが可能な場合がある。本明細書で用いる場合、mは状態の数を示す。状態空間形式で記述される離散時間における動的システムの概括的な構造(制御入力がなく、出力は1つ)は、
【数19】
【0110】
mの状態はベクトルxに格納され(collected)、測定値dは、この場合はスカラであるが、一般的な場合には任意の長さのベクトルであってもよい。行列AおよびベクトルCはシステムの構造を決定し、(式1に示されるように)時間と共に変化してもよい。外乱vおよびeは、それぞれxおよびdと同じ次元のランダムベクトルであり、それぞれゼロ平均値Rと共分散σ
2とを有する。
【0111】
カルマンフィルタは、状態ベクトルx(n)中の各要素が現在のパルス周期内の基準値のうちの1つに対応するように構成されうる。それによって、カルマンフィルタは、各パルス周期中に、ベクトル
【数20】
【0112】
に格納されるmの基準値を推定するように構成されている。
【数21】
【0114】
は、時間nで行われる第1のパルス寄与分の時間n−1の推定であり、d(n)は時間nにおける現在のデータサンプルである。K(n)を表す式は、時間nにおける推定誤差、すなわち誤差の大きさの推定値の共分散である行列P(n)を含む。これは、
【数23】
【0116】
行列AおよびベクトルCが時間的に一定である構造を識別することが有利な場合がある。というのは、次に、行列PおよびベクトルKが、前もって計算されうる一定値に収束するからである。
【0117】
第1のパルス寄与分の推定に対する概括的なカルマンフィルタの適用
パルス周期内の各データサンプルdは、推定されるべきモデル内の1つの状態と関連付けられる。各時点において、これらのデータサンプルのうちの1つが、第2のパルスの影響も含む誤差と共に測定される。
【0118】
第1のパルスが時間的に一定である、すなわち、形状がすべての周期で同一であると仮定される場合、状態のモデルは、状態が一定であるというものである。したがって、行列Aは、一定であるだけでなく、上記の式1〜3のいずれにも示されていない特に単純な行列である恒等行列と等しくもある。このモデルでは、状態が次々と測定される。したがって、ベクトルCは一定ではなく、それぞれの測定で変化する。第1の状態x
1を測定するとき、ベクトルCは(1 0 0 0 0…0)であり、次の状態x
2を測定するとき、ベクトルCは(0 1 0 0…0)であり、以下同様である。
【0119】
一定のパラメータを有するカルマンフィルタ
上記の続きで、AとCの両方が一定のモデルを見つけることも可能である。このモデルは、次に行列PおよびベクトルKが上述のように前もって計算されうる一定値に収束するので、有利であろう。これは、どの点を測定するかを変更するにつれて状態の番号付けを連続して変化させることによって達成される。たとえば、現在測定されている状態は、一貫してx
1と表記することができる。それぞれの新しいデータサンプルに対して、その後で、状態を再度番号付けする。たとえば、次の時間間隔において、第2の状態は第1の状態に設定され、第3の状態は第2の状態に設定され、最後の状態に至るまで以下同様であり、最後の状態は第1の状態に設定される。m=4(一例として)の場合、これは、
【数24】
【0121】
Cベクトルのこの定義では、式2から
【数25】
【0123】
は、第1の状態の推定を表す。第1のパルスの系列が同一であると仮定する場合、Rをゼロに設定する、すなわちR=0とすることができ、これは、次の時間間隔で雑音が状態に存在しない、すなわち次の状態が前回の時間間隔における過去の状態とまったく同じである(x
1(n+1)=x
2(n)、x
2(n+1)=x
3(n)、以下同様である)ことを表す。しかし、概して、圧力信号中には常に何らかの誤差が存在し、圧力信号は変化する第2のパルスも含むので、測定雑音eはゼロではない。
【0124】
実際には、第1のパルスプロファイルが測定セッション中に若干変化するが、パルス周期間に非常に小さな変化を含むことが想定されうる。したがって、Rは非常に小さな数に設定することができる。さらに、式2および式3から、重要であるのは、共分散Rとσ
2の比であることが分かる。この比に使用されるべき実際の値は、プロファイル推定値の移動性(mobility)が妥当となるように、実用的な試験から決定することができる。
【0125】
共分散と行列AとベクトルCとを決定すると、第1のパルスプロファイル推定値
【数27】
【0126】
が、推定値の初期値およびPの初期値、ならびに測定値(データサンプル)dによって決定される。初期状態推定値は通常、不明であり、Pの初期値は、初期推定値の不確実性を反映するべきであるので、非常に大きな値に設定することができる。Pが非常に大きい場合、初期状態推定値は次の時間ステップで即座に訂正されるので、ゼロに設定することができる。したがって、通常、Pは最初、大きな要素、たとえば1000を持つ対角行列に設定される。
【0127】
AおよびCが式4(任意のmに対して)から取得され、Pを対角行列として開始する場合、Pは、残りのステップ全体を通して、引き続き対角行列である。その場合、ベクトルKは、最後の1つ以外のすべての要素においてゼロである。行列Pは、一定の行列
【数28】
【0128】
に収束し、Kベクトルは一定のベクトル
【数29】
【0129】
に収束する。AおよびCが式4(任意のmに対して)から取得される場合、ベクトル
【数30】
【0130】
中の要素i=1、…、m−1はゼロであり、要素i=mは非ゼロ値kに等しい。
【0131】
1組の1次フィルタとの比較
先の説明によれば、最後の要素を除くK個のベクトル要素はすべてゼロである。したがって、最後の推定値を除くすべての推定値は、更新されることなく再び番号付けされる。状態番号1は次の時間間隔における最後の状態であり、次の時間間隔では、現在の状態番号2が状態番号1になり、次いで次の時間間隔で更新されるので、最後の状態の次の値のみが、測定値dによって更新される。したがって、第1のパルス内の各点は、すべての状態の完全な1組の測定値ごとに1回更新される。Kベクトルが収束すると、
【数31】
【0134】
式5と6を組み合わせると、
【数33】
【0137】
したがって、これは、パルス周期中のこの点に関連する新しい測定値を取得するたび、すなわちm回目の測定ごとの、状態の、取得される更新である。これは、通常の1次フィルタと同じ構造であり、たとえば蠕動ポンプの場合の回転子のフル旋回の時間に対応する1/kサンプル間隔の時定数を有する。
【0138】
上記の式から、そうあるべきであるようにKが1よりはるかに小さい限り、Kは、k
2=m*R/σ
2によって近似的に取得される値に収束すると示すことができる。上記のカルマンフィルタは、次に、1/kサンプル間隔の時定数を有する1組のm個の1次フィルタで置き換えることができる。
【0139】
式8によるデータ処理は、
図6の構造と
図13の構造を直列に結合することによって、および特定の重み係数を
図13の構造で使用することによって実施できることを示すことができる。
図14は、フィルタ32がカルマンフィルタであるときに
図7のフィルタ構造31を実施するフィルタ構造31を示す。具体的には、
図14のフィルタ構造31は、現在のデータサンプルd(n)と、ブロックZ
-Δによって取得される周期同期されたデータサンプルu(n)との差値を計算するための加算ブロックΣを含む。下流の加算ブロックΣは、差値と周期同期された出力サンプルe(n−Δ)との合計として現在の出力サンプルe(n)を生成し、周期同期された出力サンプルe(n−Δ)は、ブロックZ
-Δによって生成され、次に乗算ブロックXによって適切に重み付けされる。乗算ブロックXは、1−k、0<k<1によって取得される重み係数Wを適用するように構成され、したがって、
図14のフィルタ構造31は、上記で説明したカルマンフィルタを実施する。
【0140】
余分な状態を使用した低速ドリフトの排除
第1のパルス発生器および第2のパルス発生器からのパルスを備えることに加えて、たとえば透析器(
図4の6を参照されたい)の透析液側からの影響または血液ラインおよび圧力センサの動きからの低速ドリフトに起因する成分も存在することがある。この低速ドリフトは、カルマンフィルタで1つまたは2つの余分な状態を使用することによって、モデルに含まれることができる。1つの余分な状態は、ドリフトの現在の大きさを表すために使用することができ、モデルは、その場合、このパラメータを他の状態と同じように状態として調整することができる。各ステップで白色雑音(v)を追加することによって、この余分な状態がやや変動すると仮定することも可能である。この雑音の共分散は、他の状態の共分散よりかなり大きく設定することができる。というのは、第1のパルスは、変化するドリフトより一定である可能性が高いからである。その場合、この余分な状態x
m+1のモデルは、
【数35】
【0142】
この余分な状態と他の状態との結合はなく、A行列は、1つの余分な列と1つの余分な行で増加され、1である新しい対角要素以外のすべての要素がゼロである。余分な状態は、次に、Cベクトルを最後に余分な1で拡張することによって測定式に入力される。
【数36】
【0143】
場合によっては、さらに別の状態は、ドリフトの傾きを推定するために使用することができる。その場合、モデルは、ドリフトのレベルが一定ではないが、時間的にそれぞれ新しい点でその傾きによって変化すると仮定する。その代わり、傾きは一定であり、時間的にそれぞれの新しい点に雑音が追加されると仮定される。傾きの新しい状態はx
m+2と表記され、レベルは依然としてx
m+1であるので、ドリフトモデル
【数37】
【0145】
このモデルは、2つの行と2つの列を元のA行列に追加することによって、総合モデルに組み込まれ、最初のm行とm列のすべての要素はゼロであり、最後から2番目の行の最後の2つの列はいずれも1であり、最後の行の最後の2つの列はそれぞれ0および1である。行列R内の要素m+1の共分散値はゼロである。測定値の式は、ゼロをもう1つCベクトルに追加することによってのみ変化する。というのは、傾きは直接入力されず、大きさによってのみ入力されるからである。
【0146】
差分による低速ドリフトの排除
上記で説明したカルマンフィルタ技法では、第1のパルスプロファイルのドリフトは別個の状態として推定され、第1のパルスに結合されない。この状態は、あらゆる測定雑音も組み込んでいるので、あまりすばやく変化させることはできない。さらに、P行列は、余分な状態をモデルに含めるとき、初期値が対角であったとしても、もはや対角ではなく、計算はより複雑になり、プロセッサを必要とする。
【0147】
異なる手法では、第1のパルスプロファイルのドリフトを以前のデータサンプルから推論できることが多いことを利用し、第1のパルスプロファイルからの偏差は次のサンプルにおいて同じであると仮定する。したがって、1つのサンプルにおける第1のパルスプロファイルからの偏差は、次のサンプルにおいて予想される偏差を予測するために使用することができる。これは、第1のパルスプロファイル自体ではなく第1のパルスプロファイル内の連続した差を推定することによって達成することができる。これは、上記と同じ式を使用して行うことができるが、測定値d(n)は、この場合、以前の値から現在の値への圧力値の変化、すなわちd(n)−d(n−1)で置き換えられる。したがって、
図2のステップ202は、近接する圧力値同士(たとえば現在の圧力値と直前の先行圧力値)の差をとることによって、受信圧力値を変換するサブステップを含むことができ、その結果、その後で(ステップ203において)カルマンフィルタによって処理されるデータサンプルは、圧力値ではなく圧力変化値として表される。
【0148】
このような実装形態では、
【数38】
【0149】
は、時間nにおける第1のパルス寄与分の変化の推定である。この手法では、現在の第1のパルス寄与分の予測値は、状態の現在の推定値x
1単独ではなく、以前に測定された圧力値と状態x
1の現在の推定値の合計である。時間nにおける第2のパルス寄与分を表す出力サンプルを生成するため、
【数39】
【0150】
を、圧力値の変化d(n)−d(n−1)から減算することができる。次に、変化の推定は、式8によって更新される。
【数40】
【0151】
原理上は、任意の過去の値を、現在のデータサンプルの予測または外挿の基礎と見なすことができるが、時間内で現在のデータサンプルに最も近い先行データサンプルを選択することによって、精度の改善を達成することができる。
【0152】
ハイパスフィルタリングによる低速ドリフトの排除
差分を使用する代わりに、第1のパルスプロファイル内の低速ドリフトを、
【数41】
【0153】
というハイパスフィルタリングによって除去し、低速変動の大部分を除去することができる。たとえば、血液ポンプ、心臓、および他のより低速な生理現象(呼吸の影響など)からの信号寄与分を含む圧力信号中の心臓パルスを分離するために適用されるとき、このような一実施形態は、血液ポンプとより低速な生理現象の両方からの信号寄与分を抑制するように最適化することができる。この例では、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、たとえば0.6Hzの任意の低い心拍数をはるかに下回らなければならないことがある。場合によっては遅い外乱の除去と組み合わせるが、さらなる可能性は、ノッチフィルタを使用して、カルマンフィルタからの出力サンプルに残りうる任意の望ましくない残差(residual)信号寄与分を排除することである場合がある。
【0154】
本発明の実施形態を概念的に説明するため、圧力信号を、接続システムCが損なわれていないとき、すなわち第1のサブシステムS1たとえば体外血液回路と第2のサブシステムS2たとえばヒト被験者の心血管系との間に流体接続が確立されるときに第1のパルスと第2のパルスの重ね合わせによって形成される圧力パルスである「見かけ上のパルス」の系列を含むと言うことがある。この見かけ上のパルスは、フルパルス周期にわたって延びる1つおよび唯一の見かけ上のパルスを各パルス周期が含むように、上述のパルス周期に関連して定義される。本明細書において示される例では、見かけ上のパルスは第1のパルスによって支配されると推定し、したがって、第1のパルスは、第2のパルスによって修飾される見かけ上のパルスの基本的形状を提供する。しかし、必ずしも第1のパルスが第2のパルスに対して優位であるとは限らない。接続システムCが損なわれているとき、見かけ上のパルスは、第1のパルス(および測定雑音)のみから構成される。
【0155】
図1の各圧力センサ4a〜4dは、圧力値の連続した時系列を検出する。圧力値の系列をプロットすることによって、パルスのプロファイル、すなわち見かけ上のパルスの見かけ上のプロファイルが作り出され、分解能は、圧力値を袖手するサンプルレートによって決まる。
【0156】
見かけ上のプロファイルは、「現在の見かけ上のプロファイル」および「先行見かけ上のプロファイル」と呼ばれることがある。
【0157】
本発明の実施形態は、概して、他の状況に適用可能であるが、本明細書における例は、体外血液処理システム内の(蠕動性)血液ポンプから生じる第1のパルスと、たとえば血管アクセス部を介して体外血液処理システムに接続されたヒト被験者の心臓の拍動から生じる第2のパルスとに関して示されている。本明細書で用いる場合、第1のパルスは、「ポンプパルス」または「ポンププロファイル」(またはより概括的には、「干渉パルス」および「干渉プロファイル」)と表記されることもあり、第2のパルスは、「心臓パルス」および「心臓プロファイル」(またはより概括的には、「生理的パルス」もしくは「生理的プロファイル」)と表記されることもある。
【0158】
図2の実施形態は、現在の見かけ上のパルスからの先行見かけ上のパルスの減算と見なすことができる。見かけ上のパルスは、いくつかの圧力値またはサンプルによって構成される。上記で説明したように、減算は、概して、見かけ上のパルスごとに1サンプルずつ実行され、各連続した見かけ上のパルスに対して繰り返される。たとえば、1サンプルずつの計算が処理中に圧力信号の任意の部分においてリアルタイムかつオンラインで実行されるが、同様にオフラインで適用することができる。
【0159】
したがって、
図2の実施形態は、ポンププロファイルが1つまたは複数の先行見かけ上のパルスに基づいて推定され、残りの信号に生理的プロファイルを残したままで現在の見かけ上のパルスから減算される、フィルタリング方法と見なすことができる。結果として取得される生理的プロファイルにおける詳細のレベルは、周期あたりのデータサンプルの数、すなわち周期ごとのステップ202〜204の繰り返しの数によって決まる。本明細書で用いる場合、「プロファイル」は、少なくとも3つのデータサンプル、好ましくは少なくとも5、10、または20のデータサンプル、場合によっては100データサンプルまたはそれ以上から構成される。
【0160】
図3に戻ると、
図3は、第1のパルスおよび第2のパルスからの寄与分を備える見かけ上のプロファイルの理論上の例を示す。
図3の例では、第1のパルス発生器は、360度の期間で周期的であるが、均等に分布された、すなわち180度に相当する、2つの部材、たとえば2つのローラ蠕動ポンプを有する。したがって、各周期、したがって各完全な見かけ上のプロファイルは、簡単にするため本質的に同一の形状と、オーバレイされた生理的プロファイル(心臓パルス)とを持つように示される2つの類似のポンププロファイルを備える。
【0161】
サンプリング
ポンプ回転のタイミングは、完全な回転とポンプローラ間の間隔の両方について、常に一定とは限らないことがあるので、先行データサンプルは、常に周期内で現在のデータサンプルと同じタイミングを有するとは限らないことがある。本明細書において「類似同期サンプリング」と表記される一実施形態では、これは、それぞれの周期上での現在のデータサンプルおよび先行データサンプルのアライメントを取得するために、タイムスケールを調整するように後処理によって、すなわちデータサンプルをリサンプリングすることによって、修正される。言い換えれば、ポンプ回転と同期することなく(または不十分に同期して)圧力信号から取得される(サンプリングされる)第1のデータサンプルは、第1のデータサンプル間の内挿を使用して各周期内のそれぞれの所与のタイミング(場所)における信号値を生成するリサンプリングに供される。
【0162】
リサンプリングは、第1のパルス発生器の動作と、たとえば蠕動ポンプのポンプローラの角度回転と同期されるタイミング信号(以下では「タコ信号」と表記される)の使用によって容易になることがある。タコ信号では、データサンプルは、各周期内の同じ場所でゼロにリセットされる連続したカウントと関連付けられる。カウント総数は、各周期に対して同じであり、たとえば1周期あたり10,000程度である。タコ信号の使用によって、ローラ旋回の時間の決定を改善することができ、それによって、減算処理も改善することができる。
【0163】
一実装形態では、圧力信号は、ローラの回転速度に関連するレートでリサンプリングされる。タコ信号が各周期に対してローラの同じ場所にリセットされる場合、所望のサンプリング点のあらかじめ定義された数、たとえば50は、タコ信号の連続したゼロ設定の間で均等に分散されるように定義することができ、内挿は、これらの中間時点における圧力値(データサンプル)を見つけるために実行することができる。
【0164】
高周波信号を遅くサンプリングするとき、サンプリング時点は信号に沿ってランダムに分散するように見え、その結果、そのサンプリングされた信号は、代わりに低周波数を備える。圧力信号中の最高周波数が、一般にナイキスト周波数と呼ばれるサンプリング周波数の半分より低い場合、このエイリアシング現象が回避される。したがって、概して、サンプリング周波数の半分より高い周波数を含むことを回避するために、サンプリングの前に、圧力信号をローパスフィルタリングすることが好ましい場合がある。
【0165】
タコ信号が使用可能でない場合、その代わりに、記録される圧力データを、ピーク検出のために解析して、ローラ周期間隔を決定することができる。しかし、これは、時間的に若干ピークをシフトする物理的パルスによって妨害することができ、検出に対する不確実性を増加させる。
【0166】
本明細書において「同期サンプリング」と表記される別の実施形態では、データサンプルは、ポンプ旋回の動きと同期して、すなわちポンプのローラのまたがる円に沿って同じそれぞれの場所で、サンプリングされる。同期サンプリングは、上述のタコ信号に基づいて制御することができる。
【0167】
同期サンプリングまたは類似同期サンプリングは、サンプルレートが十分に高いとき、あまり重要でないことがある。たとえば、1000Hzのサンプルレートが十分であることがあり、すなわち1秒あたり1000の測定値またはサンプルが登録され、これは、各サンプル間が1msであることを表す。たとえば、正確なポンプ周期とぴったり一致するようにリサンプリングされない1000Hzのサンプルレートを有する信号は、わずか0.5msの最大誤差、すなわち正しい値からの偏差を生成する。したがって、特に高いサンプルレートでは、本発明の技法は、1つまたは複数の先行周期内の1つまたは複数の周期同期されたデータサンプルが、現在のパルス周期内の現在のデータサンプルの正確な場所から若干逸脱することがあるそれぞれの場所(「最良近似」)を有するように、同期サンプリングまたは類似同期サンプリングなしで実施することができる。近隣集合の使用により、同期サンプリングまたは類似同期サンプリングの必要性をさらに減少させることができる。
【0168】
体外血流回路におけるモニタリング
以下では、体外血流回路は、
図1の第1のサブシステムS1の一例として
図4を参照して示される。
図4では、体外血流回路20は、透析に使用するタイプのものである。体外血流回路20は、接続システムCによってヒト被験者(患者)の心血管系に接続される。心血管系は、
図1の第2のサブシステムS2に相当する。接続システムCは、血液抽出のための動脈アクセスデバイス1(本明細書では、動脈針の形をとる)と、接続チューブセグメント2aと、コネクタC1aとを備える。接続システムCは、血液を再び戻すための静脈アクセスデバイス14(本明細書では、静脈針の形をとる)と、接続チューブセグメント12bと、コネクタC2aも備える。コネクタC1a、C2aはそれぞれ、回路20と動脈針1および静脈針14との間の血流路を形成するように回路20内の対応するコネクタC1b、C2bとの着脱可能なまたは恒久的な係合を提供するように構成されている。コネクタC1a、C1b、C2a、C2bは、いかなる既知のタイプであってもよい。
【0169】
図示の例では、体外回路20は、
図1に示されるように、コネクタC1bと、動脈チューブセグメント2bと、蠕動型であってもよい血液ポンプ3とを備える。図示の例では、ポンプ3は、2つのローラ3a、3bを有する回転子30を備える。ポンプの入口には、動脈チューブセグメント2bにおけるポンプの前の圧力を測定する圧力センサ4a(以下、「動脈センサ」と呼ぶ)がある。血液ポンプ3は、血液を、チューブセグメント5を介して、透析器6の血液側に押し込む。多数の透析機は、血液ポンプ3と透析器6との間の圧力を測定する圧力センサ4bをさらに備える。血液は、透析器6の血液側からチューブセグメント10を介して静脈点滴チャンバ(venous drip chamber)または脱気チャンバ(deaeration chamber)11に、さらにそこから、静脈チューブセグメント12aおよびコネクタC2bを介して接続システムCに戻すように送られる。圧力センサ4c(以下、「静脈センサ」と呼ぶ)は、透析器6の静脈側での圧力を測定するために設けられる。図示の例では、静脈センサ4cは、静脈点滴チャンバ11における圧力を測定する。動脈針1と静脈針14の両方は、血管アクセス部によって患者または患畜(animal patient)の心血管系に接続される。この血管アクセス部は、たとえばフィステル、スクリブナーシャント(Scribner−shunt)、移植組織など、任意の適切なタイプであってもよい。血管アクセス部のタイプに応じて、針の代わりに、他のタイプのアクセスデバイス、たとえばカテーテルを使用することができる。さらに、透析液回路における圧力を測定するために、圧力センサ4dも透析機内に存在することができる。
【0170】
本明細書において、体外回路20の「静脈側」とは、血液ポンプ3の下流に位置する血流路の一部を指し、体外回路20の「動脈側」とは、血液ポンプ3の上流に位置する血流路の一部を指す。
図4の例では、静脈側は、チューブセグメント5と、透析器6の血液側と、チューブセグメント10と、点滴チャンバ11と、チューブセグメント12aとから構成され、動脈側はチューブセグメント2bから構成される。
【0171】
図4では、制御ユニット23は、とりわけ、血液ポンプ3の旋回速度を制御することによって回路20内の血流を制御するために設けられる。体外血流回路20および制御ユニット23は、透析機などの体外血液処理用装置の一部を形成することができる。さらに図示したり説明したりはしないが、このような装置は、多くの他の機能、たとえば透析液の流量の制御、透析液の温度および組成の制御などを実行することを理解されたい。
【0172】
さらに、
図4では、監視/モニタリングデバイス25は、具体的には
図2に示される方法による圧力センサ4a〜4dのうちの1つまたは複数から取得される圧力信号を処理することによって、回路20の動作および/または患者の生理的状態をモニタリングするように構成されている。この処理は、患者における生理的パルス発生器から生じる生理的パルスを保持しながら、圧力センサ4a〜4dのうちの1つからの圧力信号中のポンプ3から生じるポンプパルスを本質的に排除するまたはこれを十分に抑圧するための処理を含むことができる。概して、
図1の第1のパルス発生器3は、
図4のポンプ3だけではなく、バルブ、透析液用のポンプなどの、回路20内の他の機械的パルス発生器(図示せず)にも対応することができる。生理的パルス発生器(
図1の第2のパルス発生器3’に相当する)は、患者の心臓、反射、随意筋収縮、不随意筋収縮、呼吸系、血圧調節のための自律系、および体温調節のための自律系のうちの1つまたは組合せとすることができる。患者に取り付けられた機械的パルス発生器から生理的パルスが生じることも可能である。
【0173】
障害の状態が検出されると、たとえば血液ポンプ3を停止させるおよびチューブセグメント2a、2b、5、10、12a、12b上の1つまたは複数のクランプデバイス13(1つだけ示されている)を起動させることによって、デバイス25に、アラームを作動させるおよび/または血流を停止させることができる。
【0174】
図4に示されるように、デバイス25は、制御ユニット23にも接続することができる。この代わりに、またはこれに加えて、デバイス25は、血液ポンプ3の周波数および位相を示す上述のタコ信号を提供する、ロータリエンコーダ(たとえば、導電性、光学、または磁気)などの、ポンプセンサ26に接続することができる。別の変形形態では、ポンプセンサ26は、血液ポンプ3を駆動するモータに供給される電流または電力に基づいて周波数および位相を検知するように構成されうる。デバイス25は、聴覚/視覚/触覚によるアラームまたは警告信号を生成するためのローカルまたはリモートのデバイス27に有線(tethered)または無線で接続される。あるいは、監視デバイス25および/またはアラームデバイス27は、透析装置の一部として組み込むことができる。
【0175】
図4では、監視デバイス25は、圧力センサ(複数可)4a〜4dから1つまたは複数の圧力信号を受け取るための、および、任意選択で、受信圧力信号(複数可)を前処理するためのデータ収集部28を備える。たとえば、データ収集部28は、必要とされる最低サンプリングレートおよび分解能を備えたA/Dコンバータと、1つまたは複数の信号増幅器と、オフセット、高周波雑音、および電源電圧外乱(supply voltage disturbance)などの測定データ中の望ましくない信号成分を除去するための1つまたは複数のフィルタとを含むことができる。この実施形態では、データ収集部28は、それぞれ回路内の関連する圧力センサ4a〜4dの場所における血液の瞬間圧を表すデータサンプルの時系列として圧力信号を収集する。このデータサンプルは、
図2のステップによる本発明のフィルタリングおよび後続のモニタリングを実行するデータ解析部29への入力として提供される。フィルタリングおよびモニタリングのステップは、信号処理器(
図1の25a)とメモリ(
図1の25b)の組合せによって実施することができる。
【0176】
本発明の実施形態は、圧力信号に基づいて監視デバイス25によって行われるモニタリング/監視に関する。一例では、モニタリングは、回路20と患者の血管系との間、すなわち静脈側または動脈側のどちらかまたは両方における、接続システムCの破損の検出を目的とすることができる。破損は、血管アクセス部から静脈アクセスデバイスまたは動脈アクセスデバイス1、14が移動すること、すなわちアクセスデバイス1、14が患者の血管系から外れることによって生じることがある。あるいは、破損は、通常、それぞれコネクタC1a、C1b、およびC2a、C2bの破損/不完全な結合/離脱によって、静脈アクセスデバイスまたは動脈アクセスデバイス1、14が回路20から外れることによって生じることがある。
【0177】
本発明の実施形態では、流体含有システムの機能状態または機能パラメータは、上述の出力サンプルの系列によって形成されるフィルタリングされた信号を解析することによって、たとえばフィルタリングされた信号中の1つまたは複数の第2のパルスを分離および解析することによって、モニタリングすることができる。流体含有システムに関する有益な情報は、第2のパルスが存在しないことが検出されることからも取得することができる。
【0178】
体外血流回路では、たとえば、静脈針の移動(VND)は、静脈圧力センサ4cからの圧力信号を処理することによって取得されるフィルタリングされた信号が第2の(心臓および/または呼吸)パルスを備えなくなったことを認識することによって、検出することができる。たとえば、フィルタリングされた信号中の信号の大きさが所定の閾値を下回ることを認識することによって、フィルタリングされた信号中のエネルギーが閾値より下に低下し、その状態が特定の期間維持されることを認識することによって、静脈圧力信号中の第2のパルスの消失を示す、静脈圧力信号および動脈圧力信号から取得されるフィルタリングされた信号中の第2のパルス間の相関の低下を識別することによって、たとえば第2のパルスの欠如によって生じるフィルタリングされた信号中の信号値の幅(spread)の減少を識別するために、フィルタングされた信号に対して統計的手法を実施することによって、フィルタリングされた信号を解析するための種々の技法を使用することができる。移動を検出するための上記およびその他の技法のさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれるWO97/10013およびWO2009/156174に開示されている。
【0179】
圧力信号が第1のパルスと第2のパルスの両方を含む限り、フィルタリングされた信号は第2のパルスまたはその一部を含み、これを、第2のパルスが心臓パルス、呼吸パルス、または血圧調節パルスなどの生理的パルスを備える場合に被験者の心血管系の機能状態または機能パラメータをモニタリングするための種々の特性について評価することができる。このようなフィルタリングされた信号の使用には、低血圧の予測、心拍出量およびアクセスフローのモニタリング、ならびに血圧モニタリング、またはくしゃみ、しゃっくり、嘔吐、せき、血圧の乱れ、異所性拍動、自立系調節の欠如、低血圧、呼吸障害、睡眠時無呼吸、周期性呼吸、過換気、喘息発作、呼吸困難、およびチェーンストークス呼吸などの被験者の不良な状態などの、たとえば心臓または呼吸に関係する、バイタルサインの検出、提示、追跡、および予測がある。これらの用途すなわち適用例は、たとえば、いずれも参照により本明細書に組み込まれる、WO2010/149726、WO2011/080186、WO2011/080189、WO2011/080190、WO2011/080191、およびWO2011/080194に開示されているような、フィルタリングされた信号中の第2のパルスの形状および/または大きさおよび/またはタイミングの抽出および解析に基づくことができる。
【0180】
第2のパルスの解析はまた、たとえば接続システムCにおける、アクセス針1、14の位置決めが逆であるなどの、障害の状態を同定するために使用することができ、たとえば第2のパルスの形状および/またはタイミングは、たとえば参照により本明細書に組み込まれるWO2011/080188に開示されているように、針1、14の位置決めを決定するために評価することができる。
【0181】
上記では、主にいくつかの実施形態に関して、本発明を説明してきた。しかし、当業者に容易に理解されるように、特許請求項によってのみ定義および限定される本発明の範囲と趣旨とを有する、上記で開示した実施形態以外の他の実施形態も同様に可能である。
【0182】
たとえば、データサンプルの時系列が電子メモリ(
図1の25bを参照)に連続的または間欠的にバッファリングされる場合、基準値は、たとえば、先行データサンプルではなく(またはこれに加えて)後続のデータサンプルの関数として計算することができる。たとえば、データサンプルの受信ストリームは、メモリ内のFIFO(先入れ先出し)バッファに入力され(したがって、所与の数の最新のデータサンプルを記憶する)、バッファ内のデータサンプルのうちの現在のデータサンプルの基準値を生成するために処理可能である。「現在の」データサンプルは、フィルタリングされた出力サンプルを生成するために現在処理されているデータサンプルを表す。バッファリングされたデータサンプルを使用して、先行データサンプル(すなわち、現在のデータサンプルより時間的に早く測定されたデータサンプル)のみ、後続データサンプル(すなわち、現在のデータサンプルより時間的に遅く測定されるデータサンプル)のみ、または先行データサンプルと後続データサンプルの両方の関数として、基準値を計算することができることは、当業者には理解されよう。たとえば、上記の例Iと例IIとを参照すると、周期同期されたデータサンプルは、1つまたは複数の先行パルス周期および/または1つまたは複数の後続のパルス周期において取得することができる。同様に、上記の例IIIを参照すると、予測される基準値は、直後の2つ以上のデータサンプルの関数として(すなわち、順投影(forward projection)ではなく逆投影によって)、または現在のデータサンプルの両側のデータサンプルの関数として(たとえば、1つまたは複数の先行データサンプルと1つまたは複数の後続データサンプルとの間の内挿によって)、生成することができる。後続データサンプル/パルス周期の使用は、
図6〜12のフィルタ構造31における正の遅延の使用に相当する。
図6〜12内のフィルタ構造31は、たとえばブロックZ
-Δ、…、Z
-MΔとZ
Δ、…、Z
MΔの両方を含むようにそれぞれの集合ブロック32を2つにすることによって、先行データサンプルと後続データサンプルの両方を使用するように変更することができることは、当業者には理解されよう。
【0183】
そのうえ、圧力信号は、たとえば抵抗、容量、誘導、磁気、または光の検知によって動作し、1つまたは複数のダイヤフラム、ベローズ、ブルドン管、圧電コンポーネント、半導体コンポーネント、歪みゲージ、共振ワイヤ、加速度計などを使用する、任意の考えられうるタイプの圧力センサから生じることができる。
【0184】
図1は、デバイス25が、第1のサブシステムS1内に設置された圧力センサ4a〜4d(のうちの少なくとも1つ)に接続されることを示しているが、その代わりに、デバイス25は、第2のサブシステムS2内の流体圧力を測定するために設置された1つまたは複数の圧力センサ(図示せず)に接続されてもよい。さらに、流体含有システムは、流体接続部Cを介して接続される第1のサブシステムS1と第2のサブシステムS2とに分割する必要はないが、その代わりに、第1のパルス発生器および第2のパルス発生器に結び付けられた一体型流体含有システムとすることができ、デバイス25は、第1のパルス発生器から生じる第1のパルスと第2のパルス発生器から生じる第2のパルスとを検出するために、流体含有システム内に設置された圧力センサに接続されてもよい。
【0185】
さらに、本発明の技法は、患者の全身の血液回路から血液を採取して、その血液を患者に戻す前に血液に適用される処理を有する、あらゆるタイプの体外血流回路におけるモニタリングに適用することができる。このような血流回路には、血液透析、血液濾過、血液透析濾過、血漿交換、アフェレーシス、体外膜型肺(extracorporeal membrane oxygenation)、補助される血液循環、および体外肝保護(extracorporeal liver support)/透析のための回路がある。同様に、本発明の技法は、輸血、注入、ならびに人工心肺装置のための回路などの他のタイプの体外血流回路におけるモニタリングに適用することができる。
【0186】
また、本発明の技法は、血液以外の他の液体を含む流体システムにも適用することができる。
【0187】
さらに、本発明の技法は、上記で開示した回転蠕動ポンプだけでなく、リニア蠕動ポンプ、膜ポンプ、ならびに遠心ポンプなどの他のタイプの容積式ポンプなど、任意のタイプのポンピングデバイスから生じる圧力パルスを除去するために適用することができる。実際には、本発明の技法は、機械であろうとヒトであろうと、任意のタイプの周期的パルス発生器から生じる圧力パルスを除去するために適用することができる。
【0188】
同様に、本発明の技法は、ヒトであろうと機械であろうと、任意のタイプのパルス発生器から生じる圧力パルスを分離するために適用することができる。
【0189】
本発明の技法は、リアルタイムデータに対して動作させる必要はないが、以前に記録された測定信号などのオフラインデータを処理するために使用することができる。
以下に、本出願時の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1] 第1のパルス発生器(3)と第2のパルス発生器(3’)とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサ(4a〜4d)から取得される時間依存性圧力信号を処理するためのデバイスであって、前記圧力センサ(4a〜4d)が、前記第1のパルス発生器(3)から生じる第1のパルスと前記第2のパルス発生器(3’)から生じる第2のパルスとを検出するように前記流体含有システムにおいて構成され、前記第1のパルス発生器(3)がパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じ、前記デバイスが、
前記圧力信号に対する入力(28)と、
前記入力(28)に接続され、
前記圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得すること、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、前記圧力信号中の1つまたは複数の他のパルス周期内の周期同期されたデータサンプルの関数として基準値を計算することであって、前記周期同期されたデータサンプルが、前記現在のパルス周期内の前記現在のデータサンプルの場所に対応する前記1つまたは複数の他のパルス周期内の場所を有するために取得される、計算すること、および
前記少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、前記現在のデータサンプルに対して取得される前記基準値を入力として使用して、前記現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させること
を行うように構成された信号処理器(25a)と
を備える、デバイス。
[付記2] 前記信号処理器(25a)が、前記基準値を、隣接するパルス周期内の前記周期同期されたデータサンプルの関数として計算するように構成されている、付記1に記載のデバイス。
[付記3] 前記信号処理器(25a)が、前記隣接するパルス周期内の前記周期同期されたデータサンプルに等しい前記基準値を設定するように構成されている、付記2に記載のデバイス。
[付記4] 前記信号処理器(25a)が、前記基準値を、前記周期同期されたデータサンプルと、隣接するパルス周期内の前記周期同期されたデータサンプルに隣接する1つまたは複数のデータサンプルの集合として計算するように構成されている、付記1または2に記載のデバイス。
[付記5] 前記信号処理器(25a)が、前記基準値を、少なくとも2つの他のパルス周期内の周期同期されたデータサンプルの集合として計算するように構成されている、付記1または2に記載のデバイス。
[付記6] 前記信号処理器(25a)が、前記少なくとも2つの他のパルス周期内の各周期同期されたデータサンプルに隣接する1つまたは複数のデータサンプルを含むように前記集合を計算するように構成されている、付記5に記載のデバイス。
[付記7] 前記信号処理器(25a)が、前記集合を、データサンプルの加算として計算するように構成されている、付記4から6のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記8] 前記信号処理器(25a)が、前記加算において各データサンプルに重み係数を適用するように構成されている、付記7に記載のデバイス。
[付記9] 前記信号処理器(25a)が、前記現在のデータサンプルと前記現在の出力サンプルとの差に基づいて各重み係数を適応的に決定するように構成された適応フィルタ(36)を備える、付記8に記載のデバイス。
[付記10] 前記信号処理器(25a)が、前記基準値に対応し先行パルス周期において計算される先行基準値を更新することによって、前記集合を再帰的に計算するように構成されている、付記5に記載のデバイス。
[付記11] 前記信号処理器(25a)が、前記基準値を、前記先行基準値および前記先行パルス周期内の前記周期同期されたデータサンプルと前記先行基準値との差の関数として計算するように構成されている、付記10に記載のデバイス。
[付記12] 前記現在のパルス周期内で取得される現在のデータサンプルの時系列を入力として受け取って前記現在のパルス周期における基準値の時系列を表す1組の状態を推定するように構成されたカルマンフィルタ(32)をさらに備える、付記5、10、または11に記載のデバイス。
[付記13] 前記信号処理器(25a)が、前記現在のデータサンプルと前記周期同期されたデータサンプルとの差値を計算し、前記現在のパルス周期内の前記現在のデータサンプルの場所に対応する1つまたは複数の先行パルス周期内の場所を有するために取得される周期同期された出力サンプルに重み係数を適用することによって重み付けされたフィードバック値を生成し、前記現在の出力サンプルを、前記差値と前記重み付けされたフィードバック値の合計として生成するように構成され、前記重み係数が、前記信号処理器(25a)が前記カルマンフィルタを実施するように選択される、付記12に記載のデバイス。
[付記14] 前記信号処理器(25a)が、前記現在のデータサンプルを、前記圧力信号中の近接する圧力値間の差として取得するように構成されている、付記10から13のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記15] 前記信号処理器(25a)が、前記圧力信号から第1のデータサンプルを取得し、前記現在のパルス周期内のそれぞれの場所に関する前記第1のデータサンプル間の内挿によってそれぞれの現在のデータサンプルを取得するように構成されている、付記1から14のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記16] 前記信号処理器(25a)が、前記パルス周期と同期する前記現在のデータサンプルを取得するように構成されている、付記1から15のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記17] 前記第1のパルス発生器(3)の前記パルス周期を表す同期信号に対する入力(28)をさらに備え、前記信号処理器(25a)が、前記現在のデータサンプルを取得すること、前記基準値を計算すること、および前記減算アルゴリズムを動作させることのうちの少なくとも1つにおいて、前記同期信号に応答する、付記1から16のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記18] 前記流体含有システムが、体外血液処理装置、ヒト被験者の心血管系、および前記体外処理装置と前記心血管系との間の流体接続部(C)を備え、前記第1のパルス発生器(3)が前記体外処理装置に結び付けられ、前記第2のパルス発生器(3’)が前記ヒト被験者に結び付けられる、付記1から17のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記19] 前記信号処理器(25a)が、前記現在のデータサンプルを繰り返し取得し、前記現在のパルス周期内の前記少なくとも1つの第1のパルスの推定される時間的プロファイルを形成する基準値の時系列を生成するために前記基準値を計算するように構成されている、付記1から18のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記20] 前記信号処理器(25a)が、前記第2のパルスの時間的プロファイルを形成する現在の出力サンプルの時系列を生成するために前記減算アルゴリズムを動作させるように構成されている、付記1、2、4から19のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記21] 前記信号処理器(25a)が、それぞれの現在のパルス周期に対して少なくとも3つの出力サンプルを生成するように構成されている、付記1から20のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記22] 前記第1のパルス発生器(3)が、少なくとも1つのローラ(3a、3b)を有する回転子(30)を備える蠕動ポンプを備え、各パルス周期が前記回転子(30)のフル回転に相当する、付記1から21のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記23] 前記第1のパルス発生器(3)が、いくつかのローラ(3a、3b)を有する回転子(30)を備える蠕動ポンプを備え、前記回転子(30)の各フル回転が、ローラ(3a、3b)の数と同じ数のパルス周期を生成する、付記1から22のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記24] 第1のパルス発生器(3)と第2のパルス発生器(3’)とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサ(4a〜4d)から得られる時間依存性圧力信号を処理するためのデバイスであって、前記圧力センサ(4a〜4d)が、前記第1のパルス発生器(3)から生じる第1のパルスと前記第2のパルス発生器(3’)から生じる第2のパルスとを検出するように前記流体含有システムにおいて構成され、前記第1のパルス発生器(3)がパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じ、前記デバイスが、
前記圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得するための手段(28、25a)と、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、前記圧力信号中の1つまたは複数の他のパルス周期内の周期同期されたデータサンプルの関数として基準値を計算するための手段(32;36)であって、前記周期同期されたデータサンプルが、前記現在のパルス周期内の前記現在のデータサンプルの場所に対応する前記1つまたは複数の他のパルス周期内の場所を有するために取得される、手段(32;36)と、
前記少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、前記現在のデータサンプルに対して取得される前記基準値を入力として使用して、前記現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させるための手段(31)と
を備えるデバイス。
[付記25] 第1のパルス発生器(3)と第2のパルス発生器(3’)とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサ(4a〜4d)から得られる時間依存性圧力信号を処理するためのデバイスであって、前記圧力センサ(4a〜4d)が、前記第1のパルス発生器(3)から生じる第1のパルスと前記第2のパルス発生器(3’)から生じる第2のパルスとを検出するように前記流体含有システムにおいて構成され、前記第1のパルス発生器(3)がパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じ、前記デバイスが、
前記圧力信号に対する入力(28)と、
前記入力(28)に接続され、
前記圧力信号中の前記現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得すること、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、基準値を前記現在のデータサンプルの推定値として計算することであって、前記推定値が、前記圧力信号中の前記現在のデータサンプル近傍の少なくとも2つのデータサンプルに基づく予測によって計算される、計算すること、および
前記少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、前記現在のデータサンプルに対して得られる前記基準値を入力として使用して、前記現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させること
を行うように構成された信号処理器(25a)と
を備えるデバイス。
[付記26] 前記信号処理器(25a)が、前記少なくとも2つのデータサンプルのそれぞれに重み係数を適用することによって前記予測を計算するように構成されている、付記25に記載のデバイス。
[付記27] 前記信号処理器(25a)が、前記現在のデータサンプルと前記現在の出力サンプルとの差に基づいて各重み係数を適応的に決定するように構成された適応フィルタ(36)を備える、付記26に記載のデバイス。
[付記28] 第1のパルス発生器(3)と第2のパルス発生器(3’)とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサ(4a〜4d)から得られる時間依存性圧力信号を処理するためのデバイスであって、前記圧力センサ(4a〜4d)が、前記第1のパルス発生器(3)から生じる第1のパルスと前記第2のパルス発生器(3’)から生じる第2のパルスとを検出するように前記流体含有システムにおいて構成され、前記第1のパルス発生器(3)がパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じ、前記デバイスが、
前記圧力信号中の前記現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得するための手段(28、25a)と、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、基準値を前記現在のデータサンプルの推定値として計算するための手段(32;36)であって、前記推定値が、前記圧力信号中の前記現在のデータサンプル近傍の少なくとも2つのデータサンプルに基づく予測によって計算される、手段(32;36)と、
前記少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、前記現在のデータサンプルに対して得られる前記基準値を入力として使用して、前記現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させるための手段(31)と
を備えるデバイス。
[付記29] ヒト被験者の血管アクセス部(3)と流体連通して接続され、前記ヒト被験者の心血管系から血液処理デバイス(6)を通して前記心血管系に戻す血液を循環させるように動作可能であるように構成された体外流体回路(1)を備え、付記1から28のいずれか一項に記載のデバイスをさらに備える、血液処理のための装置。
[付記30] 第1のパルス発生器(3)と第2のパルス発生器(3’)とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサ(4a〜4d)から得られる時間依存性圧力信号を処理する方法であって、前記圧力センサ(4a〜4d)が、前記第1のパルス発生器(3)から生じる第1のパルスと前記第2のパルス発生器(3’)から生じる第2のパルスとを検出するように前記流体含有システムにおいて構成され、前記第1のパルス発生器(3)がパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じ、前記方法が、
前記圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得することと、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、前記圧力信号中の1つまたは複数の他のパルス周期内の周期同期されたデータサンプルの関数として基準値を計算することであって、前記周期同期されたデータサンプルが、前記現在のパルス周期内の前記現在のデータサンプルの場所に対応する前記1つまたは複数の他のパルス周期内の場所を有するために取得される、計算することと、
前記少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、前記現在のデータサンプルに対して得られる前記基準値を入力として使用して、前記現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させることと
を備える方法。
[付記31] 第1のパルス発生器(3)と第2のパルス発生器(3’)とに結び付けられた流体含有システム内の圧力センサ(4a〜4d)から得られる時間依存性圧力信号を処理する方法であって、前記圧力センサ(4a〜4d)が、前記第1のパルス発生器(3)から生じる第1のパルスと前記第2のパルス発生器(3’)から生じる第2のパルスとを検出するように前記流体含有システムにおいて構成され、前記第1のパルス発生器(3)がパルス周期の系列において動作し、各パルス周期の結果として少なくとも1つの第1のパルスが生じ、前記方法が、
前記圧力信号中の現在のパルス周期内の現在のデータサンプルを繰り返し取得することと、
前記現在のパルス周期内のそれぞれの現在のデータサンプルに対して、基準値を前記現在のデータサンプルの推定値として計算することであって、前記推定値が、前記圧力信号中の前記現在のデータサンプル近傍の少なくとも2つのデータサンプルに基づく予測によって計算される、計算することと
前記少なくとも1つの第1のパルスに起因する信号成分が本質的にない現在の出力サンプルを生成するように、前記現在のデータサンプルに対して得られる前記基準値を入力として使用して、前記現在のデータサンプルに対して減算アルゴリズムを動作させることと
を備える方法。
[付記32] プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに付記30または31に記載の方法を実行させるコンピュータ命令を備えるコンピュータ可読媒体。