特許第6038923号(P6038923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6038923自動車用の電気加熱装置、及びこれに関連する空調及び/又は加熱ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038923
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】自動車用の電気加熱装置、及びこれに関連する空調及び/又は加熱ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20161128BHJP
   B60H 1/03 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B60H1/22 611C
   B60H1/03 C
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-528889(P2014-528889)
(86)(22)【出願日】2012年9月3日
(65)【公表番号】特表2014-528869(P2014-528869A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】EP2012003678
(87)【国際公開番号】WO2013034269
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2015年8月19日
(31)【優先権主張番号】11/02696
(32)【優先日】2011年9月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100179338
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック、ピエロン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン、テリエ
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ、ルボルニュ
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/054970(WO,A2)
【文献】 米国特許第01766068(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第00199967(GB,A)
【文献】 特表2007−501506(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0046934(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0315024(US,A1)
【文献】 特開2008−164215(JP,A)
【文献】 米国特許第06053132(US,A)
【文献】 特開2010−060147(JP,A)
【文献】 特開2010−223517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の電気液体加熱装置であって、
前記加熱装置は、液体を加熱するための少なくとも1つの第1加熱モジュール(7a)及び1つの第2加熱モジュール(7b)であって、加熱される液体を案内するための少なくとも1つの経路(15)を画成する第1加熱モジュール(7a)及び第2加熱モジュール(7b)を備え、
前記加熱モジュール(7a、7b)のそれぞれは、全体的に略円筒形状を有するとともに略平行な態様で並べて配置されており、
前記加熱モジュール(7a、7b)の各々は、コア(11)と、前記コアを取り囲む加熱手段(13)と、を有し、これにより前記コア(11)の周囲に液体を案内するための経路(15)が画成されており、
前記少なくとも1つの加熱モジュール(7a、7b)の前記コア(11)は、前記液体案内経路(15)に連通する内部キャビティ(12)であって、当該内部キャビティ(12)が膨張管路を形成するように、加熱された液体の膨張作用により圧縮され得る空気を含む内部キャビティ(12)を有していることを特徴とする、自動車用の電気液体加熱装置。
【請求項2】
前記コア(11)は、膨張制御手段(39、41、43)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記膨張制御手段(39、41)は、少なくとも1つの校正通路(41)であってその内部を前記液体が循環可能な校正通路(41)を有していることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記膨張制御手段(43)は、前記コア(11)の前記内部キャビティ(12)に沿って摺動するように構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1加熱モジュール(7a)と1つの第2加熱モジュール(7b)は、少なくとも2つの連続する案内経路(15)を画成している、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1加熱モジュール(7a)と1つの第2加熱モジュール(7b)の案内経路(15)の間に、少なくとも1つの連通カナル(26)を有していることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記連続する案内経路(15)は、略「U」字形状の軌道を画成していることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1加熱モジュール(7a)及び1つの第2加熱モジュール(7b)は、少なくとも2つの略平行な案内経路(15)を画成していることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1加熱モジュール(7a)と1つの第2加熱モジュール(7b)により画成された少なくとも1つの案内経路(15)に連通する、少なくとも1つの液体入口管(19)と少なくとも1つの液体出口管(21)と、を有することを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記入口管(19)は前記第1加熱モジュール(7a)の案内経路(15)と連通し、前記出口管(21)は前記第2加熱モジュール(7b)の案内経路(15)と連通していることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記入口管(19)及び/又は前記出口管(21)は、加熱モジュール(7a、7b)の長手方向軸(A)に略平行な態様で前記装置内に配置されていることを特徴とする、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記入口管(19)及び前記出口管(21)は、前記装置の一方の同一側に配置されていることを特徴とする、請求項乃至11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記入口管(19)は前記装置の第1の側に配置されるとともに、前記出口管(21)は前記装置の前記第1の側と反対の第2の側に配置されていることを特徴とする、請求項乃至11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの入口管(19)と前記少なくとも1つの出口管(21)は、同一方向に配向されていることを特徴とする、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの入口管(19)と前記少なくとも1つの出口管(21)は、2つの対向する方向に配向されていることを特徴とする、請求項乃至13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記加熱モジュール(7a、7b)の前記コア(11)は、前記加熱手段(13)に対面するその外面に少なくとも1つの溝(16)を有していることを特徴とする、請求項1乃至1のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記加熱モジュール(7a、7b)の前記コア(11)は、少なくとも1つの長手方向内部循環カナル(35)を有していることを特徴とする、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の少なくとも1つの加熱装置を備えたことを特徴とする、自動車用の加熱及び/又は空調ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の電気加熱装置に関する。更に具体的には、本発明は、自動車の加熱及び/又は空調ユニットに適用される。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車室を暖めたり曇りや霜を取り除いたりすることを目的とする空気の加熱は、熱交換器を介した空気流の通過によって、更に正確には空気流と液体との熱交換によって実施されている。
【0003】
一般に、熱機関の場合、液体とは冷却水(クーラント)である。
【0004】
しかしながら、このような加熱方法は、車両の客室の迅速且つ効果的な加熱を確保するには不向き又は不十分である場合がある。具体的には、かかる加熱方法は、車両を非常に低温の環境等において使用するのに先立って非常に迅速な温度上昇が望まれる場合に、車室を暖めたり曇りや霜の除去を保証するには、不向き又は不十分である場合がある。
【0005】
電気車両の場合、加熱機能はもはや熱交換器における冷却水の循環によって実現されてはいない。
【0006】
車室を暖めるために水経路が設けられる場合がある。
【0007】
このような加熱方法は、車両の車室の迅速且つ効果的な加熱を確保するには不向き又は不十分である場合がある。
【0008】
更に、更なる水経路を原因とするスペースの必要性やコストを削減するために、電気車両に関して加熱ポンプモードで作動する空調ループを使用することが知られている。したがって、冷却流体を用いて従来の態様で空気流を冷却するための空調ループは、この場合、空気流を加熱するために使用される。この目的のために、空調ループの蒸発器をコンデンサとして使用することが適当である。
【0009】
しかしながら、この加熱方法も不向き又は不十分な場合がある。この理由は、加熱ポンプモードにおける空調ループの性能は、外部の気候条件に依存するということである。この場合、極端に低温の外気を熱エネルギ源として利用することができない。
【0010】
従来技術のこのような欠点を解決するために公知の解決手法は、熱交換器や水経路又は空調ループに更なる電気加熱装置を追加することである。
【0011】
このような電気加熱装置は、熱機関用の冷却水、電気車両の車室を暖めるための水経路用の水、又は空調ループの冷却流体等の液体の上流加熱に適したものであり得る。
【0012】
例えば、正温度計数すなわちPTC要素等の複数の加熱要素からなるこのようなタイプの電気加熱装置が知られている。これらの加熱要素はハウジングに収容されて当該複数のPTC加熱要素の周囲に加熱チャンバを画成し、加熱される液体がこの加熱チャンバ内で循環する。
【0013】
しかしながら、このような加熱装置は、比較的大きなスペースを必要とするとともにかなり重い場合がある。
【0014】
また、これらの公知の電気加熱装置は、自動車製造業者により設定された基準値に一致しないような比較的大きいヘッドロスを有することがある。
【0015】
更に、公知の加熱装置には、伝熱能力を制限するほど高い加熱慣性を有するものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、ヘッドロスや加熱慣性を制限しつつ小さい空間しか必要としない電気加熱装置を提案することにより、従来技術の欠点について少なくとも部分的に改善を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的のため、本発明の主題は、自動車用の電気液体加熱装置であって、前記加熱装置は、液体を加熱するための少なくとも1つの第1及び1つの第2モジュールであって、加熱される液体を案内するための少なくとも1つの経路を画成する第1及び第2モジュールを備え、前記加熱モジュールのそれぞれは、全体的に略円筒形状を有するとともに略平行な態様で並べて配置されていることを特徴とする。
【0018】
加熱装置は、以下の1つ以上の特徴を、単独又は組み合わせて有していてもよい。
−前記加熱モジュール(の各々は、コアと、前記コアを取り囲む加熱手段と、を有し、これにより前記コアの周囲に液体を案内するための経路が画成されている;
−前記少なくとも1つの加熱モジュールと1つの加熱モジュールは、少なくとも2つの連続する案内経路を画成している;
−前記装置は、前記少なくとも1つの加熱モジュールと1つの加熱モジュールの案内経路の間に、少なくとも1つの連通カナルを有している;
−前記連続する案内経路は、略「U」字形状の軌道を画成している;
−前記少なくとも1つの加熱モジュール及び1つの加熱モジュールは、少なくとも2つの略平行な案内経路を画成している;
−前記少なくとも1つの加熱モジュールの前記コアは、前記液体案内経路に連通する内部キャビティであって、当該内部キャビティが膨張管路を形成するように、加熱された液体の膨張作用により圧縮され得る空気を含む内部キャビティを有している;
−前記コアは、膨張制御手段を備えている;
−前記膨張制御手段は、少なくとも1つの校正通路であってその内部を前記液体が循環可能な校正通路を有している;
−前記膨張制御手段は、前記コアの前記内部キャビティに沿って摺動するように構成されている;
−前記膨張制御手段は、ピストンを有している。
−前記装置は、前記少なくとも1つの第1加熱モジュールと1つの第2加熱モジュールにより画成された少なくとも1つの案内経路に連通する、少なくとも1つの液体入口管と少なくとも1つの液体出口管と、を有する;
−前記入口管は前記第1加熱モジュールの案内経路と連通し、前記出口管は前記第2加熱モジュールの案内経路と連通している;
−前記入口管及び/又は前記出口管は、加熱モジュールの長手方向軸に略平行な態様で前記装置内に配置されている;
−前記入口管及び前記出口管は、前記装置の一方の同一側に配置されている;
−前記入口管は前記装置の第1の側に配置されるとともに、前記出口管は前記装置の前記第1の側と反対の第2の側に配置されている;
−前記少なくとも1つの入口管と前記少なくとも1つの出口管は、同一方向に配向されている;
−前記少なくとも1つの入口管と前記少なくとも1つの出口管は、2つの対向する方向に配向されている;
−加熱モジュールの前記コアは、前記加熱手段に対面するその外面に少なくとも1つの溝を有している;
−加熱モジュールの前記コアは、少なくとも1つの長手方向内部循環カナルを有している。
【0019】
本発明は、更に上記で定義付けられた電気加熱装置を備えたことを特徴とする、自動車用の加熱及び/又は空調ユニットにも関する。
【0020】
本発明の更なる特徴及び利点は、非制限的な解説の例として呈示される以下の説明及び添付図面から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、更なる電気加熱装置を備えた自動車の加熱装置を単純化した態様で概略的に示す。
図2図2aは、第1の実施形態による加熱装置の断面正面図である。 図2bは、第1の実施形態による図2aの加熱装置の断面側面図である。
図3図3aは、加熱装置の膨張管路として機能する加熱モジュールを単純化した態様で概略的に示す。 図3bは、第1変形例による、加熱装置の膨張制御手段を有する膨張管路として機能する加熱モジュールを単純化した態様で概略的に示す。 図3cは、第2変形例による、加熱装置の膨張制御手段を有する膨張管路として機能する加熱モジュールを単純化した態様で概略的に示す。
図4図4は、第2の実施形態による加熱装置の断面を示す簡略図である。
図5図5aは、加熱モジュールの断面図とともに第2の実施形態による加熱装置を示す。 図5bは、図5aにおける第2の実施形態による加熱装置の要素を示す図。
図6図6は、第2の実施形態による加熱装置の要素を示す図であって、液体入口及び出口が対向する方向に配置されている。
図7図7は、第3の実施形態による加熱装置の断面図を示す簡略図。
図8図8は、他の実施形態による加熱装置の断面図を示す簡略図。
【0022】
これらの図において、略同一の要素には同一の符号を付す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、電気車両の車室を加熱するための水加熱経路3を備えた自動車の加熱及び/又は空調ユニット1の一部を概略的に示す。
【0024】
この加熱ユニットは、水加熱経路3の上流に、当該加熱経路3に流入する前の水を加熱するための更なる電気加熱装置5を備えている。
【0025】
ここでは、電気車両の車室を加熱するための水経路の場合が示されている。
【0026】
当然ながら、電気加熱装置5を、加熱ポンプモードで作動して冷却流体を加熱することが可能な空調ループの蒸発器の上流に配置することも可能である。
【0027】
また、伝熱液体としての熱機関の冷却水を使用する熱交換器の上流に、このような電気加熱装置5を設けることも可能である。また、電気又はハイブリッド車両用の電池パックとしても知られる電気エネルギ貯蔵装置を熱的に調整することが意図された熱交換器の上流に、このような電気加熱装置5を設けることも可能である。
【0028】
図2a及び2bを参照しつつ、電気加熱装置5の第1の実施形態を更に詳細に説明する。
【0029】
加熱装置5は、略平行な態様で並べて配置された1つの第1の加熱モジュール7aと1つの第2加熱モジュール7bと、を少なくとも有している。
【0030】
加熱モジュール7a、7bは全体的に略円筒形状を有している。
【0031】
2つの加熱モジュール7a、7bは、それらの長手方向軸Aが平行とされた状態で並べて配置されている。加熱モジュール7a、7bの長手方向軸Aは一致せず、よって、それらの延長部は接触しない。
【0032】
加熱モジュール7a、7bの並んだ配置により、加熱装置5の長手方向において必要とされる空間が縮小される。
【0033】
また、加熱モジュール7a、7bをこのように配置した加熱装置5は、従来技術から公知の解決手法に比較して小さい加熱慣性を有する。
【0034】
更に、このような加熱装置5では、ヘッドロスが1000L/hで50ミリバール未満であることを出願人は見出した。このような成果は、自動車製造業者により設定されるヘッドロスに関する制約を満たすものである。
【0035】
各加熱モジュール7a、7bは、加熱装置5の附属ハウジングに収容されている。
【0036】
加熱モジュール7a、7bは、中央コア11と加熱手段13とを備えている。加熱手段13は、中央コア11を取り囲むエンクロージャの形状に形成されて中央コア11とエンクロージャ13との間で加熱されるべき液体を案内するための経路15を画成している。このエンクロージャ13は、制御システム17により制御される加熱要素であって、エンクロージャと案内経路15内で循環する液体との熱交換により液体を加熱するための加熱要素を備えている。
【0037】
中央コア11とエンクロージャ13とは同心的であり得る。
【0038】
したがって、中央コア11の外面とエンクロージャ13の内面とは、加熱されるべき液体の循環容積を画成している。
【0039】
図2a及び2bに示す実施形態によれば、各加熱モジュール7は、中央コア11とエンクロージャ13との間で液体を案内するための経路15を備えている。
【0040】
案内経路15内での液体の流れを中断させるための要素が設けられて、液体とエンクロージャ13との間の熱交換を促進するようにしてもよい。
【0041】
中央コア11は、一部品として、又は変形例として2つの部分からなる部品として形成され得る。
【0042】
中央コア11は、中空体形状に形成され得る。
【0043】
中央コア11は、例えば、略円筒形状を有している。
【0044】
コア11に略一定の、又はこの逆に変化する断面が設けられ得る。
【0045】
中央コア11の略一定の断面によれば、液体は案内経路15を一定の速度で流れる。
【0046】
これに対し、変化する断面によれば、流速は案内経路15に沿って変化する。
【0047】
更に、図示の実施形態によれば、コア11はその外面に、すなわちエンクロージャ13の内面に対面する外面に、略螺旋状の外部溝16を有している。この螺旋溝16により、案内経路15は略螺旋状の軌道を画成している。
【0048】
当然ながら、変形例として、コア11の外面に溝を設けずに長手方向軸Aに平行な軸方向案内経路を画成してもよい。
【0049】
他の図示しない変形例によれば、コア11はその外面に複数の円形溝を有していてもよい。
【0050】
この場合、コア11の内部が案内経路15に連通するように、各円形溝の領域に連通孔を設けられる。したがって、加熱モジュール7a、7bに流入する液体は、コア11の内部及びコア11の周囲を循環的に流れる。
【0051】
一方、エンクロージャ13もまた略円筒形状を有している。
【0052】
当然ながら、エンクロージャ13は中空体形状に形成されて、エンクロージャ13の内部に中央コア11が受容されるようになっている。
【0053】
エンクロージャ13は、例えば、加熱モジュール7a、7bの制御システム17(図2b参照)に連結された少なくとも1つの抵抗トラックを有し得る。
【0054】
単独又は複数の抵抗トラックは、例えば、エンクロージャ13の外面に、すなわち中央コア11に対面するエンクロージャ13の面の反対側に、スクリーン印刷により形成される。
【0055】
更に、エンクロージャ13は、各加熱モジュール7a、7bのエンクロージャ13の内部においてエンクロージャ13の端部領域に配置されたシール手段18を有していてもよい。
【0056】
また、加熱装置5は、少なくとも1つの液体入口19と、少なくとも1つの液体出口21と、を有している。液体入口19及び液体出口21は案内経路15と連通して、液体が加熱モジュール7a、7b内を流れることを可能にしている。
【0057】
これらの入口19及び出口21は、例えば、それぞれ入口管19及び出口管21の形状に形成されている。
【0058】
入口管19及び出口管21は、例えば、加熱装置5に対して突出するような態様でそれぞれ配置されている。
【0059】
第1の実施形態によれば、加熱装置5は、第1の加熱モジュール7aの案内経路15に連通する入口管19と、第2の加熱モジュール7bの案内経路15に連通する出口管21と、を有している。
【0060】
この目的のために、入口管19は、液体流入のための入口カナル23であって、第1の加熱モジュール7aの案内経路15に通じる入口カナル23を有している。同様に、出口管21は、液体排出のための出口カナル25であって、第2の加熱モジュール7bの案内経路15に通じる出口カナル25を有している。
【0061】
更に、入口カナル23と出口カナル25とは、管19、21内において、各加熱モジュール7a、7bの長手方向軸Aに平行な態様でそれぞれ設けられていてもよい。
【0062】
より具体的には、入口カナル23と出口カナル25とは、対応する加熱モジュール7a、7bの中央コア11にそれぞれ同軸に設けられていてもよい。
【0063】
更にまた、入口管19と出口管21とを、図2aの図示例のように、加熱装置5の一方の同一側に配設することも可能である。したがって、液体は略U字状の軌道に従うこととなる。
【0064】
2つの加熱モジュール7a、7bの2つの案内経路15を連結する連通カナル26も設けられている。この連通カナル26は、図示例によれば、案内経路がこの連通カナル26に通じるように加熱モジュール7a、7bの自由端に対面して設置されている。
【0065】
したがって、図2aの矢印により概略的に示されるように、液体は第1の加熱モジュール7a側の入口管19を経由して加熱装置5に流入する。入口カナル23は第1の加熱モジュール7aに画成された案内経路15に連通しているため、液体は第1の加熱モジュール7aのコア11とエンクロージャ13との間を循環する。
【0066】
この循環は、図示のコア11の実施形態により略螺旋状の態様で生じる。上述のように、軸方向又は略巡回的な循環としてもよい。
【0067】
第1の加熱モジュール7aに画成された案内経路15は連通カナル26に通じているため、液体は次いで連通カナル26に流入し、この連通カナル26に通じている第2の加熱モジュール7bの案内経路15内へと案内される。
【0068】
同様に、液体は、出口管21の出口カナル25を経由して加熱装置5を出る前に、第2の加熱モジュール7bの中央コア11の周囲を略螺旋状、軸方向又は巡回的な態様で循環することができる。
【0069】
したがって、2つの加熱モジュール7a、7bの案内経路15は連続している。
【0070】
更にまた、コア11は中空体形状に形成されているので、それらの内部キャビティ12は加熱された液体の膨張管路として機能し得る。
【0071】
伝熱流体を収容するためのこのようなゾーンは、図3a乃至3cに示すように、油圧経路が加熱された流体の膨張を吸収することを可能にする。
【0072】
この目的のために、内部キャビティ12はその上部分に空気を収容している。この上部分は、点線により図3a乃至3cにおいて概略的に仕切られている。内部キャビティ12の上部分は、例えば入口カナル23に直接的に隣接している内部キャビティの一部分である。
【0073】
更に、コア11は、内部キャビティ12とコア11の周囲の、すなわち外部の案内経路15との間に少なくとも1つの連通オリフィス14を有している。外部案内経路15中の液体は、概略的にラインLとして示されている。
【0074】
したがって、内部キャビティ12の上部分に収容された又は「トラップされた」空気は、矢印Fにより概略的に示されるように、内部キャビティ12に流入する加熱された液体の膨張作用によって圧縮され得る。
【0075】
好適には、コア11は膨張制御手段を備える。これに対して、図3aには膨張制御手段を有さない変形例が示されている。
【0076】
図3bに示す第1の実施形態によれば、前記制御手段は、コア11の端部に固定離壁39を有するとともに、伝熱流体すなわち加熱された液体が循環可能な少なくとも1つの校正通路41を設けられている。したがって、固定離壁39は膨張管路の内部容積を画成する。
【0077】
当然ながら、内部キャビティ12と外部案内経路15との間の連通オリフィス14は、離壁39とコア11の端部との間に設置されている。したがって、案内経路15から流入した液体は、校正通路41を通過する前に連通オリフィス39を通過し、これにより加熱された液体の膨張が制御可能とされている。
【0078】
図3cに示す第2の実施形態によれば、前記制御手段は、コア11の内部キャビティ12に沿って摺動可能な可動離壁43を有する。このような可動離壁43は、例えば水の膨張作用により圧縮された空気を収容するための密閉ゾーン45を画定する。可動離壁43は、略円筒形状を有する端部壁43aとこの端部壁43aの外周に設置された管状側壁43bとを有するピストンに類似している。側壁43bは、好適には、可動離壁43とコア11との間のシールを保証するように、シール47等のシール手段を有している。
【0079】
加熱された水等の液体の膨張作用により、空気を収容しているコア11の内部容積は縮小し、これによりここに収容されている空気は圧縮されることとなる。
【0080】
一方、再び図2bを参照すると、エンクロージャ13に担持された加熱要素の制御システム17は、装置5の長手方向壁に配置されている。
【0081】
この制御手段17は、例えば、少なくとも1つのプリント基板(PCB)等の電気経路支持体27と、支持体27に担持された電子及び/又は電気部品29と、を有していてもよい。これらの電子及び/又は電気部品は、例えば、マイクロコントローラと、エンクロージャ7bの抵抗トラックに連結された電気接点と、を備えていてもよい。例えば、電気接点は、例えばミクロコントローラを担持する面と反対側のPCB支持体27の面に担持されている。
【0082】
支持体27は、少なくとも1つの電源及び信号コネクタ31を担持していてもよい。
【0083】
加熱装置5は、制御システム17のための保護カバー33も有し得る。このカバー33は、コネクタ31を通過させるための開口を有している。
【0084】
本実施形態に関して、およそ2kWの電力が2つの加熱モジュール7a、7bの各エンクロージャ13に供給され得る。
【0085】
制御システム17のこのような配置は、加熱装置5のコンパクトな形状に寄与する。
【0086】
図4乃至6を参照して第2の実施形態を説明する。
【0087】
この第2の実施形態は、2つの加熱モジュール7a、7bが平行ではあるが連続していない2つの案内経路15を画成しているという点で、上述の第1実施形態と異なっている。
【0088】
この目的のために、加熱モジュール7a、7bは、加熱モジュール7a、7bの第1の側に入口カナル23と、この第1の側に対向する加熱モジュール7の第2の側に出口カナル25との両方を有している。液体は加熱モジュール7a、7bの案内経路15に沿って、加熱モジュール7a、7bの長手方向軸Aに略平行に循環する。
【0089】
更に、液体が両加熱モジュール7a、7bにおいて同方向に循環するように、2つの加熱モジュール7a、7bに対する入口19が装置5の同一側に配置されているとともに、2つの加熱モジュール7a、7bに対する出口21が反対側に配置されている。
【0090】
特に、2つの加熱モジュール7a、7bに対して共通の入口19を設けるとともに、2つの加熱モジュール7a、7bに対して共通の出口21を設けることも可能である。
【0091】
更に具体的には、図5a乃至6に示すように、2本に分岐してそれぞれ各加熱モジュール7a、7bに液体を供給する共通の入口管19が、2つの加熱モジュール7a、7bに対して設けられてもよい。同様に、2本に分岐してそれぞれ各加熱モジュール7a、7bを出る液体を受容する共通の出口管21が設けられてもよい。
【0092】
図4、5a及び5bに示すように、入口19及び出口21が同一方向に配向されてもよいし、或いは図6に示す変形例のように対向する2方向に配向されてもよい。
【0093】
更にまた、第1の実施形態と同様に、2つの加熱モジュール7a、7bのコア11は、有利には膨張管路として機能することにより液体の加熱による液体容積の変化の吸収を可能とする内部キャビティ12を有し得る。具体的には、各コア11の内部キャビティ12はその上部分に空気を収容しており、この空気が液体の膨張作用により圧縮され得る。上記のように、校正通路又はコア11の内部キャビティ12に沿って摺動可能である可動離壁のような膨張制御手段を設けてもよい。この可動離壁は、流体の膨張によりピストンのように作用するものである。
【0094】
図7及び8を参照して第3の実施形態を説明する。これらの図において、矢印は加熱装置5内の液体の経路を概略的に示している。
【0095】
第3の実施形態は、各加熱モジュール7a、7bに対して、コア11の内部循環カナル35がコア11の内部において内部案内経路を画成している点で、第2の実施形態と異なっている。
【0096】
図示例によれば、内部循環カナル35は、中央コア11の略中央に設けられている。
【0097】
更に、図示の例示的な実施形態によれば、加熱装置5の同一側に入口管19及び出口管21が配置されてもよい。
【0098】
2本の管19、21は、例えば、一方の上方に他方が配置されていてもよい。
【0099】
この目的のために、入口管19は加熱モジュール7a、7bの長手方向軸Aに略垂直に配設されるとともに、出口管21は入口管19の上方に配設されてもよい。
【0100】
この場合、内部循環カナル35は、入口管19に交差するとともに出口管21に通じる延長部37をそれぞれ有している。一方、コア11の周囲の案内経路15は、入口管19の入口カナル23に連通している。
【0101】
図示例において、出口管21は、入口管19を覆うカバー29と一体部品として形成されており、内部循環カナル35の延長部37がカバー29内に通じている。
【0102】
入口管19と同様に(図7参照)、管21は、加熱モジュール7a、7bの長手方向軸Aに略垂直に配設されてもよい。この出口管21は、入口管19と同一方向に配向されても、或いは対向する方向に配向されてもよい。
【0103】
図8に示す変形例によれば、出口管21は、加熱モジュール7a、7bの長手方向軸Aに略平行に配設されている。
【0104】
更にまた、各加熱モジュール7a、7bについて、案内経路15を出た液体が内部循環カナル35に流入するように、案内経路15に内部循環カナル35へのアクセスが設けられている。
【0105】
図示例によれば、2つの加熱モジュール7a、7b内に画成された2つの案内経路15を連結するように配設された連通カナル26もまた、案内経路15を出た液体の各内部循環カナル35への上記アクセスを可能としている。
【0106】
したがって、入口管19を経由して加熱装置5に導入された液体は、各加熱モジュール7a、7bそれぞれのコア11の周囲の各案内経路15を流れる。
【0107】
第1及び第2の実施形態と同様に、各コア11の周囲の液体の流れは略螺旋状、軸方向又は巡回的な態様で生じ得る。
【0108】
案内経路15の出口において、液体は出口管21を経由して排出される前に、内部循環カナル35に導入される。
【0109】
したがって、並べて配置された少なくとも2つの加熱モジュール7a、7bを備えた加熱装置5は、低い加熱慣性を有するとともにヘッドロスの減少を可能としつつ、従来技術の解決手法に比較して長手方向に小さい空間しか必要としない。
【0110】
更に、加熱モジュール7a、7bの配置は、2つの加熱モジュール7a、7bにおける連続的な流れ又は平行な流れに好適であろう。
【0111】
最後に、液体の流れは、必要とされる性能に応じて、略軸方向、螺旋状又は巡回的な経路に従うものとすることができる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8