特許第6038943号(P6038943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスエーエス(セルフ・アジャスタブル・スペクタクルズ)ビー.ブイ.の特許一覧

<>
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000002
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000003
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000004
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000005
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000006
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000007
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000008
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000009
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000010
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000011
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000012
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000013
  • 特許6038943-調整可能な眼鏡 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038943
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】調整可能な眼鏡
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20161128BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G02C7/06
   G02C7/02
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-539354(P2014-539354)
(86)(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公表番号】特表2014-532900(P2014-532900A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】EP2012071793
(87)【国際公開番号】WO2013064679
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】1118986.7
(32)【優先日】2011年11月3日
(33)【優先権主張国】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514112053
【氏名又は名称】エスエーエス(セルフ・アジャスタブル・スペクタクルズ)ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】SAS (SELF ADJUSTABLE SPECTACLES) B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】コク、ロン
(72)【発明者】
【氏名】デ・ツバルト、ジイズ
【審査官】 南 宏輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−296212(JP,A)
【文献】 特表2008−533537(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0091257(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0030678(US,A1)
【文献】 米国特許第04312582(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00578833(EP,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02477264(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/06
G02C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、フレームによって支えられた一組の複合レンズを備えた眼鏡であり、各複合レンズは焦点距離が調整可能であり、
前記複合レンズの光軸に沿って一方が他方の後ろに配された二つのレンズ要素と、
焦点距離を変えるために前記二つのレンズ要素を互いに対して横に移動させるように配された調整機構を備えており、前記二つのレンズ要素は第一のレンズ要素と第二のレンズ要素からなり、前記第一のレンズ要素は、前記第二のレンズ要素に対して反対かつ前記光軸を横切る方向に移動可能であり、それにより、前記光軸は、前記フレームに対して実質的に固定されたままであり、前記調整機構は、
少なくとも一つのレンズ要素に係合している前記少なくとも一つのレンズ要素の横移動を促すための少なくとも一つのフレーム連結回転可能要素と、
前記眼鏡のフレーム内に旋回可能に連結された、前記複合レンズの前記第一のレンズ要素の横移動を、前記第二のレンズ要素の反対方向の横移動に移し換えるための少なくとも一つのコントロールレバーを備えており、
前記コントロールレバーは、前記コントロールレバーの中心軸穴を通り抜ける第一のピンによって旋回可能に連結されており、前記第一のピンは、前記眼鏡のフレーム部分に連結されており、前記第一のピンと前記中心軸穴は第一の中心軸線に沿って整列されており、
前記第一のレンズ要素は、前記コントロールレバーの第一の穴と前記第一のレンズ要素に連結された突起の第二の穴を貫く第二のピンによって前記コントロールレバーに旋回可能に連結されており、前記第一の穴と前記第二の穴と前記第二のピンは第一の軸線に沿って整列されており、
前記第二のレンズ要素は、前記コントロールレバーの第三の穴と前記第二のレンズ要素に連結された突起の第四の穴を貫く第三のピンによって前記コントロールレバーに旋回可能に連結されており、前記第三の穴と前記第四の穴と前記第三のピンは第二の軸線に沿って整列されており、
前記第一の中心軸線と前記第一の軸線と前記第二の軸線は前記光軸(12A,12B)と実質的に平行であり、
前記回転可能要素は実質的に円形であり、前記光軸と実質的に平行である第二の中心軸線に沿って延びている第四のピンの周りに回転可能であり、前記回転可能要素は、前記回転可能要素を手動で回転させるために眼鏡の使用者に接近可能である、眼鏡。
【請求項2】
前記コントロールレバーが複合レンズの各レンズ要素の外側エッジに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡。
【請求項3】
前記回転可能要素が実質的にホイールとして形づくられていて、前記ホイールのエッジが少なくとも一つのレンズ要素のエッジに係合していることを特徴とする請求項1または2に記載の眼鏡。
【請求項4】
前記回転可能要素が歯付きホイールを有し、その歯付きホイールは、対応する歯を有している少なくとも一つのレンズ要素のエッジに係合していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項5】
前記第二の中心軸線が眼鏡のフレームに旋回可能に連結されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項6】
前記回転可能要素が少なくとも第一の部分と第二の部分を有し、前記第一の部分は前記第一のレンズ要素に係合し、前記第二の部分は、前記複合レンズの一つの手動調整のための前記フレームのエッジに隣接している調整部分を有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項7】
前記回転可能要素が前記眼鏡の前記フレームによって少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項8】
各複合レンズのための前記回転可能要素が前記複合レンズの下方の前記フレームのボトムエッジに配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項9】
前記コントロールレバーがその中心において前記フレーム内の固定点のまわりに旋回可能であり、そのそれぞれの端部に隣接している前記二つのレンズ要素と連結していることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項10】
前記レンズ要素の支持と横移動の案内のため、前記二つのレンズ要素を囲んでいる前記眼鏡の前記フレーム内に少なくとも一つのスタッドが配置されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項11】
各複合レンズが、前記二つのレンズ要素を互いに連結しそれらの横移動を案内する少なくとも一つの案内レールを備えていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項12】
前記案内レールの少なくとも一部が前記二つのレンズ要素の一方によって支えられ、前記二つのレンズ要素の他方によって支えられた相補的突起を受ける溝断面を有していることを特徴とする請求項11に記載の眼鏡。
【請求項13】
前記調整機構が、レンズ位置への意図しない変更を防止するブロック装置をさらに備えていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項14】
前記ブロック装置が、前記フレーム上に配置されたかみ合い歯を備えていることを特徴とする請求項13に記載の眼鏡。
【請求項15】
前記レンズ要素が、当接関係で互いに向かい合う平面表面を有していることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項16】
前記レンズ要素が、液体またはゲルの膜によって分離されることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項17】
前記レンズ要素を分離している前記液体またはゲルが高粘性液体またはゲルから構成されていることを特徴とする請求項16に記載の眼鏡。
【請求項18】
前記レンズ要素を分離している前記液体またはゲルが、意図しない調整に対して前記レンズ要素の位置を維持するスティックスリップ効果を提供することを特徴とする請求項16または17に記載の眼鏡。
【請求項19】
前記複合レンズの前記レンズ要素を分離している前記液体またはゲルが、前記レンズ要素とそれらの間のギャップを通過する光の屈折率の変化を低減するように適合されていることを特徴とする請求項16ないし18のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【請求項20】
前記複合レンズがポリカーボネート製であることを特徴とする請求項1ないし19のいずれかひとつに記載の眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に眼鏡の分野に関する。特に、本発明は、フレームと、調整可能な焦点距離を有するように配された一組の複合レンズを備えた眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡は、メガネや鼻眼鏡とも呼ばれ、共通してレンズを支えるフレームの形をしている。それらは、目の前に装着され、鼻の上と耳に支持されるが、他の設計もよく知られている。眼鏡は、通常、視力矯正、目の保護のため、またはUV線からの保護のために使用される。
【0003】
目の屈折異常(近視や遠視や乱視など)は、矯正レンズで緩和されることができ、それらは有効焦点距離を変更する。レンズは、その特性(たとえば厚さ、凹凸)に依存する特定の焦点距離を定める。屈折異常をもつ患者の視力を矯正し、彼らに適切なレンズを提供するため、眼科医や視力検査医は、各患者のおのおのの目に応じてレンズの処方を作らなければならない。
【0004】
世界の後進地域および貧困地域などのいくつかの地区は、視力の問題を有している住民に、彼らが必要とする治療を提供する適切な機器および/または熟練者を有していない。これは何億もの世界の人々に関係していると推定された。たとえば、さまざまな焦点距離の低コストメガネを提供することにより、これらの人々の視力の問題を修正する努力がなされた。たとえそのような固定焦点距離メガネを非常に安く製造することが可能であるとしても、僻地への配布の業務実施は非常に困難なので、個人が、両方の目に適切な矯正を提供する眼鏡をついに受け取ることを保証することは非常に困難なままである。
【0005】
二部分複合レンズの屈折力を、レンズ部品を相対的に移動させることによって変える原理は、すでにこの分野で知られている。US3,617,116とUS3,507,565は、比較的広い所定の処方範囲内において希望の球状または円柱状処方を得るために、光軸に沿って一方が他方の後ろに配された複合レンズを開示している。これらの文献は、希望の屈折力が確定されたのちに、たとえば接合することによって二つのレンズ部品が動かないように固定されてよいことを示唆している。
【0006】
この原理に基づいて、手頃な視力矯正の代替解決策は、低コストの調整可能な眼鏡を提供することである。そのような低コストの調整可能な眼鏡は、大量に製造および供給されることが可能である。それから、訓練されていない着用者は、訓練された眼科医や視力検査医を必要とすることなく、レンズ部品を移動させることによっておのおのの目に正しい焦点をそれらに設定し得る。WO2006/098618は、複数のレンズを互いに横切って移動させる機構によって着用者が焦点距離を調整することが可能である複合レンズを備えた眼鏡を開示している。両方のレンズ要素を等しい量だけ移動させることによって、レンズの光軸は、眼鏡フレームに対して同じ位置にとどまる。開示された機構は、レンズの溝とのノッチの直接かつ恒久的カップリングによって、レンズの少なくとも一つと相互作用することが可能である少なくとも一つのカム要素を必要とする。この文献は、複数のレンズ要素を互いに対して移動させる機構を教示しているが、機構の設計は、眼鏡の流行のまたは個別の設計を着用者に示す用意をしていない。その機構はまた、眼鏡の設計にとって比較的大きくまた目立ち、その機構とその開口の中や周囲にごみや粒子が入り、その機構の中や周囲のある場所を詰まらせやすい。これは、機構の働き、したがって眼鏡の機能をひどく妨害するであろう。その調整機構はまた、手動による直接の調整だけで、レンズの焦点距離のより正確な調整を提供していない。本発明とその実施形態は、前述の欠点の一つ以上に対する解決策を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US3,617,116
【特許文献2】US3,507,565
【特許文献3】WO2006/098618
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、フレームと、前記フレームによって支えられた一組の複合レンズを備えた眼鏡が開示され、各複合レンズは焦点距離が調整可能であり、前記複合レンズの光軸に沿って一方が他方の後ろに配された二つのレンズ要素と、焦点距離を変えるために二つのレンズ要素を互いに対して横に移動させるように配された調整機構を備えており、各レンズ要素は、別のレンズ要素に対して反対かつ前記光軸を横切る方向に移動可能であり、それにより、前記光軸は、前記フレームに対して実質的に固定されたままである。前記調整機構は、少なくとも一つのレンズ要素に係合している前記少なくとも一つのレンズ要素の横移動を促すための少なくとも一つのフレーム連結回転可能要素を備えている。
【0009】
前記調整機構はさらに、前記眼鏡のフレーム内に旋回可能に連結された、前記複合レンズの一つのレンズ要素の横移動を、他方のレンズ要素の反対方向の横移動に移し換えるための少なくとも一つのコントロールレバーを備えている。前記コントロールレバーは、複合レンズの各レンズ要素の外側エッジに連結されていてよい。前記回転可能要素が回転されたとき、前記レンズ要素の一方が横方向に移動され、また、それが連結されているレバーがその旋回軸のまわりに回転され、他方のレンズ要素の反対方向の横移動をもたらす。各レンズ要素が正確に形づくられていれば、これは、光軸が、前記フレームに対して同じ相対位置にとどまるようにする。両方のレンズ要素を互いに反対方向に移動させることによって、前記複合レンズの焦点距離が調整される。前記コントロールレバーは、前記コントロールレバーの中心軸穴を通り抜ける第一のピンによって旋回可能に連結されている。前記第一のピンは、前記眼鏡のフレーム部分に連結されている。前記第一のピンと前記中心軸穴は第一の中心軸線に沿って整列されている。前記一方のレンズ要素は、前記コントロールレバーの第一の穴と前記一方のレンズ要素に連結された突起の第二の穴を貫く第二のピンによって前記コントロールレバーに旋回可能に連結されている。前記第一の穴と前記第二の穴と前記第二のピンは第一の軸線に沿って整列されている。前記他方のレンズ要素は、前記コントロールレバーの第三の穴と前記他方のレンズ要素に連結された突起の第四の穴を貫く第三のピンによって前記コントロールレバーに旋回可能に連結されている。前記第三の穴と前記第四の穴と前記第三のピンは第二の軸線に沿って整列されている。前記第一の中心軸線と前記第一の軸線と前記第二の軸線は前記光軸と実質的に平行である。前記回転可能要素は実質的に円形であり、前記光軸と実質的に平行である第二の中心軸線の周りに第四のピンの周りに回転可能である。前記回転可能要素は、前記回転可能要素を手動で回転させるために眼鏡の使用者にアクセス可能である。
【0010】
前記回転可能要素は、好ましくは円形であり、たとえば実質的にホイールとして形づくられていて、前記ホイールのエッジは、少なくとも一つのレンズ要素のエッジに係合している。前記回転可能要素の中心軸が、回転を許すように前記眼鏡の前記フレームに連結されていてよい。前記ホイールの前記エッジは、接触表面間の摩擦によって、前記レンズ要素の外側エッジに係合していてよい。摩擦が実現される手法は、前記回転可能要素が回転されたときに前記レンズ要素の横移動を引き起こす十分な摩擦を生成するために互いに接触しているさまざまな、たとえば滑らかなまたは粗くされた表面であってよい。前記回転可能要素が歯付きホイールを有し、その歯付きホイールが、対応する歯を有している少なくとも一つのレンズ要素のエッジに係合していてよい。前記レンズ要素に係合しているその外側エッジにあるスライド要素のように、他の回転可能要素も可能である。
【0011】
前記回転可能要素は少なくとも第一の部分と第二の部分を備えていてよく、前記第一の部分は前記レンズ要素に係合し、前記第二の部分は、前記複合レンズの一つの手動調整のための前記フレームのエッジに隣接している調整部分を有している。前記第二の部分は、前記回転可能要素を回転させることによって、手によるレンズの調整のために使用される。前記第一の部分は、前記回転可能要素の回転を前記レンズ要素に伝達するために使用される。前記二つの部分の直径を変えることによって、レンズの調整の精度は変更されることが可能である。たとえば、前記レンズ要素に係合している前記第一の部分が手による調整に使用される前記第二の部分の直径よりも直径が小さいとき、前記回転可能要素の比較的大きい回転によって前記レンズ要素の比較的小さい横移動がもたらされる。これは、前記レンズの正確な調整を達成することをより容易にする。
【0012】
前記回転可能要素は好ましくは、前記眼鏡の前記フレームによって少なくとも部分的に取り囲まれている。前記回転可能要素は好ましくは、前記眼鏡を正面から見たときに実質的に見えないように前記フレーム内に配置される。これは、前記眼鏡の見た目を改善し、前記眼鏡の調整が意図されないときに意図せずに移動される可能性を低減し、前記機構をごみと水分から保護する。前記回転可能要素は好ましくは、前記回転可能要素の少なくとも75%が前記フレームの内側に隠れるように配置されている。各複合レンズの前記回転可能要素は、前記複合レンズの下方の前記フレームのボトムエッジに配置されていてよい。これは、前記調整機構を、それが便利に調整され得るところに置き、たとえば親指を使用して回転要素の一方または両方を回転させて前記複合レンズを調整する。
【0013】
前記コントロールレバーは好ましくは、その中心において前記フレーム内の固定点のまわりに旋回可能であり、そのそれぞれの端部に隣接している前記二つのレンズ要素と連結している。この構成では、各複合レンズの前記二つのレンズは、調整されたときに、反対方向に等しい量だけ移動される。この構成は、焦点軸を前記フレームに対して固定位置に維持しながら、前記レンズの焦点距離の調整を達成するのを支援する。
【0014】
前記レンズ要素の支持と横移動の案内のため、前記少なくとも二つのレンズ要素を囲んでいる前記眼鏡の前記フレーム内に少なくとも一つのスタッドが配置されている。小さいスタッドまたはビームは、前記レンズの平面に実質的に垂直な方向に、光軸に平行に延びていてよい。前記スタッドは、前記レンズ要素の横移動を妨害しないが、横移動を案内し前記眼鏡の構造的支持体を提供することを援助することが可能である。
【0015】
前記レンズ要素は、当接関係で互いに向かい合う平面表面を有していてよい。過去において、各レンズが平面表面と湾曲表面を有し、前記湾曲表面が互いに向かい合うように配された調整可能焦点距離レンズが知られていた。そのような構成において、選択的屈折をおこなうレンズは、事実上、前記二つのレンズ間の変化可能な形状のエアギャップである。現在提案されている構成は、前記レンズの平面表面を合わせて置き、それにより光の選択的屈折が二つの外側表面において主に起こる。調整の際、平面表面が互いにスライドされる。本発明の第一の実施形態に関係する特定の実施形態では、前記レンズ要素は、液体またはゲル、好ましくは高粘性液体またはゲルたとえばシリコーンオイルまたはゲルの膜によって分離されていてよい。前記レンズの狭い隙間は、前記レンズの間へのごみと粒子の進入を防止するのに有利であると考えられる。前記高粘性液体は、前記レンズ要素の間の界面を円滑にするとともに、前記レンズの意図しない調整に対して前記レンズ要素の位置を固定しておくスティックスリップ効果を提供するのを支援する。前記液体はまた、前記レンズ要素の間にほこりが進入するのを防止するのを支援し、前記レンズ要素とそれらの間のすきまを光が通過するときの屈折率の変化を低減し、前記レンズ要素の間の光透過を改善するように選択されてよい。
【0016】
前記二つのレンズ要素を互いに連結し、それらの横移動を案内する一つ以上の案内レールが設けられていてよい。前記複合レンズの一部として案内レールを設けることによって、前記フレームの形に依存しない改良案内構造体が達成され得る。さらに、前記レンズは、前記フレームの中への挿入に先立ってより容易に互いに接合されてよく、一つのユニットとして互いにより堅く保持されてよい。特に、前記案内レールは、フレームに対して移動可能であり、前記レンズ要素の一方または両方を互いに移動させることが可能である。これに関連して、案内レールは、一方のレンズ要素を他方に対して横方向に案内する働きをする任意の構造体を含むように意図されている。一般に、前記案内レールはまっすぐであるけれども、曲がった案内レールや角度のある案内レールも除外されない。前記案内レールの少なくとも一部は、前記レンズ要素の一つによって支えられてよく、別のレンズ要素によって支えられた一つまたは複数の相補的突起を受ける溝断面を有していてよい。前記相補的突起はまた、溝の中に合うレールの形をしていてよい。あるいは、前記突起は、溝によって案内される適切な大きさの一つ以上の杭または従動部の形をしていてよい。
【0017】
前記案内レールは、クリック連結として前記レンズ要素を連結するように形成されていてよい。前記案内レールが第一のレンズ要素に配された溝である場合、それは、マッシュルーム形状の突起とリンクする、またはスナップフィット装置で他方の要素に乗るC形状断面を有していてよい。プラスチック成形の分野の当業者は、そのようなスナップまたはクリック連結を達成するのに必要な形状と公差に良く承知しているであろう。したがって、前記レンズ要素を互いに接合することは、比較的簡単である。クリック連結の代わりとして、前記二つのレンズが、前記案内レール上で従動部を横にスライドさせることによって接合されてよいことが理解されるであろう。連結のこの手法は、実施形態のような蟻継ぎに使用されてよい。
【0018】
そのような案内レールの使用は、前記レンズ要素の少なくとも一方と一体的に形成されてよいことを可能にする。レンズとレールが射出成形技術によって作られるならば、これは特に簡単である。過去においては、レンズはガラスで作られ、精密さは所望の形状に研磨されていた。現代の調整可能な焦点距離レンズは、射出成形によって少ないコストのために十分な精度をもって作られ得る。そのような処理のための好適な材料はポリカーボネートであるが、この分野の当業者は代替案とそれらの利点を承知しているであろう。
【0019】
前記レンズの上側および下側エッジに隣接して配された少なくとも二つの案内レールが設けられてよい。レールは、互いに平行に配され、改善された案内と、前記レンズのより良い保持の両方を確実にする。上部および底部案内レールは同一であってよい。あるいは、前記レールの一方は案内するためのものであってよく、他方は、たとえば、上に説明したようなクリック連結を組み込むことにより前記要素の連結のために追加的に設けられる。
【0020】
各複合レンズの焦点距離を調整するため、前記調整機構は、前記フレームの外の少なくとも一つの可動アクチュエーターを備えていてよい。前記可動アクチュエーターは、使用者によってつかまれ、希望の焦点距離が達成されるまで移動されてよい。好ましくは、前記アクチュエーターは、ほこりとごみの進入が防止される手法で、たとえばシールによって、前記フレームを通過している。前記アクチュエーターは、使用時に見えないように、また容易に乱され、それにより焦点が狂わされないように比較的控えめであってよい。あるいは、前記アクチュエーターは、焦点が固定されてからさらに調整され得ないように初期設定の後に除去されるように配されてよい。
【0021】
前記調整機構の形にはレバーがあり、それは、その中心においてフレーム上の固定点のまわりに旋回可能であり、隣接しているそのそれぞれの端部を前記二つのレンズ要素と連結している。それから、前記レバーは、反対の横方向の前記二つのレンズ要素のそれぞれの移動を引き起こすように、その旋回軸のまわりに回転することが可能である。各レンズ要素が正確に形づくられていれば、これは、光軸が、前記フレームに対して同じ相対位置にとどまるようにする。可動アクチュエーターは、レンズレバー機構内のどんな位置に配置されていてもよいけれども、アクチュエーターのための好ましい個所はレバーの一端である。したがって、これは、前記フレームを通って外側に突出していてよく、手動操作のためのノブまたはグリップが設けられていてよい。
【0022】
前記調整機構は、好ましくは、レンズ位置への意図しない変更を防止するブロック装置によってブロックされることが可能である。これは、前記レンズ要素が選択された位置にセットされることを可能にし、それらがその個所にとどまることを確実にする。前記ブロック装置は、前記フレーム上に、好ましくはそれの内表面上に配置されたかみ合い歯を備えていてよい。かみ合う歯は、前記調整機構上に配置されたさらなる歯とさらに相互にかみ合っていてよい。当業者は、言及は複数の歯に与えられるけれども、複数のかみ合い部品の少なくとも一つ、ただ一つの歯を備えていてもよいことを理解するであろう。前記ブロック装置はまた、前記かみ合い歯と係合および解放するように配されたスプリング負荷要素を備えていてよい。このスプリング負荷要素は、好ましくは、前記調整機構に設けられている。
【0023】
本発明は、そのさまざまな実施形態に限定されないが、各実施形態のいくらかまたはすべての特徴は、眼鏡の機能、流行または他の顕著な特徴を改善するあらゆる方法で組み合わされることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の特徴と利点は、本発明の実施形態を示している次の図面に関連して認められるであろう。
図1図1は、可動アクチュエーターを備えた本発明の第一の実施形態による眼鏡の斜視図である。
図2図2は、図1の眼鏡の一つの複合レンズの平面図である。
図3図3は、3−3線に沿った図2の複合レンズを貫く断面である。
図4図4は、図1のレンズの一つの複合レンズの斜視図である。
図5図5は、複合レンズの動作を示している図1の眼鏡の一部切り取り図である。
図6図6は、複合レンズの動作を示している図1の眼鏡の一部切り取り図である。
図7図7は、複合レンズの動作を示している図1の眼鏡の一部切り取り図である。
図8図8は、図1のフレームの一部の平面図である。
図9図9は、回転可能要素を備えた本発明の第二の実施形態による眼鏡の斜視図である。
図10図10は、回転可能要素とコントロールレバーを示している図9の眼鏡の半分の一部切り取り図である。
図11図11は、より詳細な二つのレンズ要素とのコントロールレバーの連結の斜視図である。
図12図12は、異なる直径への連結とレンズ要素の一つへの連結をより詳細に示している回転可能要素の一部切り取り図である。
図13図13は、複合レンズを備えた二つの回転要素の相互作用を示している図9の眼鏡の一部切り取り図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下は、単なる例として図面を参照して与えられた本発明のいくつかの実施形態の説明である。図1を参照すると、本発明の第一の実施形態による眼鏡1が示されている。眼鏡1は、従来の方式でヒンジ6において旋回可能に取り付けられたアーム4をもつフレーム2を有している。フレーム2は、複合レンズ8Aと8Bを支えている。複合レンズ8A,8Bは、ここに以下に説明されるように焦点距離が調整可能である。焦点距離の調整は、フレーム2の上側エッジに配置された可動アクチュエーター10A,10Bを使用しておこなわれる。より良い理解のために、アクチュエーターは比較的大きく示されているけれども、当業者は、実際には、それは、たまに使用されるだけなので、非常に小さくてよいことを理解するであろう。さらに、アクチュエーターは、フレーム2に外に示されているけれども、フレーム2内に配置されていてもよく、また適当なツールを使用して動かされてよい。複合レンズは、光軸12A,12Bを有している。焦点距離の調整の間中、後述するように、レンズ軸12Aと12Bの相対位置は実質的に一定のままである。正しい視力のために、光軸は、着用者の目の中心の間の距離と実質的に整列すべきであるので、これは重要である。
【0026】
図2は、図1の複合レンズ8Aの可能な実施形態の平面図を示している。レンズは、一方が他方の後ろに配置された二つのレンズ要素14,16を備えている。各レンズ要素14,16は、累進的表面18と平面表面20を有している。平面表面20は、向かい合った関係で互いに当接している。高粘性液体の薄膜22が、二つのレンズ要素の間に使用されていてよい。この液体は、レンズ要素の間の界面を円滑にするとともに、レンズの意図しない調整を引き起こす小さいノックに対してレンズ要素の位置を固定しておくスティックスリップ効果を提供するのを支援し得る。液体はまた、ほこりがレンズ要素の間に進入するのを防止するのを支援し、レンズ要素とそれらの間のすきまを光が通過するときの屈折率の変化の影響を低減し、レンズ要素の間の光透過を改善するために使用されてよい。調整機構24は、レバー40と旋回軸42を備えていて、突起44,46によってレンズ要素14,16に取り付けられている。さらに後述するように、調整機構24の変位は、レンズ要素14を方向Xに移動させ、レンズ要素16を方向Yに等しい距離だけ移動させ、また、その逆も同様である。複合レンズ8Aはまた、平面表面ではなく向かい合った関係の湾曲表面を有しているレンズ要素で、または両表面が累進的表面であるレンズ要素で作られてもよい。
【0027】
図3は、レンズが案内要素を有している図2の線3−3に沿った複合レンズ8Aを貫く断面図である。見えるように、この実施形態では、レンズ要素16は、レンズ8Aの上側エッジ30に隣接している案内溝28を有している。案内溝28は、レンズ要素14の相補的突起32を受ける。案内溝28は断面がC形状をしていて、突起32はマッシュルーム形状をしている。溝28と突起32の両方は、実質的にそれらのそれぞれのレンズ要素14,16の横幅いっぱいに延びていて、案内レールとして機能する。加えて、C形状断面のため、案内溝28は、レンズ要素14と16を互いに保持する役目もしている。複合レンズ8Aの下側エッジ34に隣接して、両方のレンズ要素には、連動案内レール36,38が設けられている。案内レール36,38は、部分的蟻継ぎ断面であり、またレンズの幅いっぱいに延びている。必要な案内機能が十分に達成されさえすれば、各レール、溝または突起は必ずしも幅いっぱいに延びている必要はなく、C形状および蟻継ぎ案内要素は一緒または別々に使用されてもよく、他の形状またはタイプの案内要素が使用されてもよく、特にフレーム2が十分に案内機能をおこなうとき、案内要素はすべて省略されてもよいことを当業者は認めるであろう。
【0028】
図4は、案内溝28、突起30および案内レール36,38の間の相互作用を説明し、調整機構24を示している斜視図の複合レンズ8Aを描いている。見えるように、調整機構は、その中心近くに旋回軸42を有しているレバー40を備えている。レバー40の最上部端に、アクチュエーター10Bが設けられている。突起44が、レバー40の上側部分に配置されていて、レンズ要素14に連結している。別の突起46(部分的に隠れている)が、レバー40の下側端に配置されていて、レンズ要素16に連結している。突起44,46は、当業者がよく知っているであろうさまざまな方法でレンズ要素に連結されていてよい。最も好ましくは、その連結は、相対回転を許可するピンと穴の連結であろう。ピンは、レンズ要素と一体的に成型されてよく、突起は、フレーム2内に必要とされる空間を低減するためにわずかにレンズ要素の中に奥まって配されてよい。
【0029】
調整機構24の動作が、図5〜7を参照してさらに説明される。図5によれば、使用者の視野方向に見た、図4の複合レンズ8Bが示されている。レンズ8Bは、フレーム2に装着されていて、それは、調整機構24を明らかに見えるようにするために一部切り取られている。旋回軸42が、フレーム2内に設けられているピン50に装着されている。ピン50は、フレーム2と一体的に成型されてもよいし、別部品たとえばプラスチックフレームに使用される金属ピンであってもよい。ピン50は、レバー40が旋回軸42において回転することを可能にする。案内溝28とレール36,38は、それぞれ、上側および下側エッジ30,34に隣接して示されている。図5による位置では、アクチュエーター10Bはニュートラル位置にあり、レバー40は実質的に垂直である。これは、−3のジオプトリーをもつレンズ要素のセッティングに相当していてよい。
【0030】
図6では、アクチュエーター10Bは右に移動されていて、レバー40をピン50のまわりに時計回りに回転させた。突起44は、レンズ要素14を右の方に押す。突起46は、レンズ要素16を左の方に等しい量だけ引く。これは、複合レンズ8Bのジオプトリーを−6の値まで増大させる。
【0031】
図7では、アクチュエーター10Bは左の方へ反対方向に移動されている。これは、レバー40を反時計回りに回転させる。この場合、突起44がレンズ要素14を左の方に引きながら、突起46がレンズ要素16を右の方に等しい量だけ押している。これは、複合レンズ8Bのジオプトリーを約−0.5の値に減少させる。複合レンズ8Aの調整は同様の方法でおこなわれる。
【0032】
図8は、アクチュエーター10Bが取り除かれたフレーム2の一部分の上面図を示している。レバー40の上側部分は、スロット52によってフレーム2を通って突出している。スロット52には、その側面の一つに沿った任意追加のかみ合い歯54と、反対側面に沿った弾性シール56が設けられている。レバー40にも、多数の歯58が設けられていてよい。使用時、弾性シールは、レバー40をスロット52の側面の方へ押して歯58をかみ合い歯54と係合させる。いったん係合されたならば、歯54,58は、調整手段の不所望な動きを防止する。複合レンズ8Bの焦点距離を調整するため、アクチュエーター10Bは、シール56の圧力に逆らって矢印Zの方向に移動されなければならない。シール56はまた、スロット52を閉じた状態に維持するのを助け、フレーム2の中へのごみの導入を防止する
図9は、本発明の第二の実施形態による眼鏡1を示している。眼鏡1は、従来の方式でヒンジ6において旋回可能に取り付けられたアーム4をもつフレーム2を有している。フレーム2は、焦点距離が調整可能な複合レンズ65Aと65Bを支えている。これらは、第一の実施形態にしたがって、また上に説明され図2〜4に示された特徴のいくらかまたはすべてを備えて、しかし、後述するような調整機構を備えて構成されてよい。焦点距離の調整は、回転可能要素60Aと60Bを回転させることによっておこなわれる。回転可能要素60Aと60Bは比較的大きいサイズを有しているように図面に描かれているが、実際には、それらは、たまに使用されるだけなので、非常に小さくてよいことに注意されたい。回転可能要素60A,60Bは、それらが、フレームのエッジの下にほんのわずかに突出するか、まったく突出しないように、十分に小さく作られ、フレーム内に奥まって配されてよい。これは、回転可能要素が着用者のほおによりかかる、さもなければ、障害物になるのを防止し、また、眼鏡が魅力的な外観を有し、調整機構が隠され、眼鏡の見た目を損ねないように、回転可能要素を視界から隠す。複合レンズは、光軸12A,12Bを有している。焦点距離の調整の間中、後述するように、レンズ軸12A,12Bの相対位置は実質的に一定のままである。正しい視力のために、光軸は、着用者の目の中心の間の距離と実質的に整列すべきであるので、これは重要である。
【0033】
図10は、眼鏡1の半分の(着用者の視点からの)後方図を示していて、分離線A−A’によって分割され、また、内部構造を示すためにフレームを分解している。一つのレンズ要素66Aが、連結点62Aにおいてコントロールレバー62に連結されていて、一つのレンズ要素66Bが62Bに連結されている。コントロールレバー62は、連結点62Aと62Bの間の中途の点62Cのまわりに旋回する。この構成によって、一つのレンズ要素の横移動は、別のレンズ要素の反対方向の横移動を誘導する。好ましくは、各レンズ要素の横移動は等しく、レンズ軸は、フレームに対して同じ位置に維持される。
【0034】
レンズ要素66Aは、かみ合い歯68と70Aを介して回転可能要素60Aと相互作用し、歯68はレンズ要素66Aの下側端に形成されていて、歯70Aは回転可能要素60Aに形成されている。したがって、回転可能要素60Aの回転は、レンズ要素66Aの横移動に転換される。この実施形態では、回転可能要素60Aは、異なる直径を有している二つの部分を有していて、歯70Aは内側小径部分61Aに形成されていて、歯70Bが外側大径部分61B上の調整部分を形成している。回転可能要素60Aの下側部分は、回転可能要素60Aを手動で回転させるために歯70Bが使用者にアクセス可能であるように、フレームの底部エッジの下にわずかに突出している。これは、最も便利なように、使用者の親指が歯70Bに係合することで達成されることが可能である。回転可能要素は、歯70Bを備えたその下側部分がフレームの下に突出しないが、わずかに奥まって配されるように配置されてもよく、その結果、使用者の親指(または他の指)はまだ、フレームの下側エッジに押し付けることによって歯と係合することが可能である。回転可能要素60Aはピン61のまわりに回転し、それはフレーム2に連結されている。
【0035】
また、多数のスタッド3が示されていて、それらは、フレーム部分2aから内向きに突出していて、レンズ要素の横移動を許しながらレンズ要素を支持している。スタッド3の個数は、眼鏡1に適用されることが可能であり、図10に示される個数に限定されない。また、要素の寸法も、図10に使用される要素の寸法に限定されない。
【0036】
図11は、二つのレンズ要素66Aと66Bの斜視図をより詳細に、また、それらがコントロールレバー62にどのように連結されているかを示している。コントロールレバー62は、コントロールレバー62の中心軸穴62Cを通り抜けるピン74によって旋回可能に連結されている。ピン74は、眼鏡1のフレーム部分2aに連結されている。ピン74と中心軸穴は軸線X1に沿って整列されている。レンズ要素66Aは、コントロールレバー62の穴62Aとレンズ要素66Aに連結された突起78Aの穴76Aを貫くピン76Cによって、コントロールレバー62に旋回可能に連結されている。両方の穴62Aと76Aとピン76Cは軸線X2に沿って整列されている。レンズ要素66Bは、コントロールレバー62の穴62Bとレンズ要素66Bに連結された突起78Bの穴76Bを貫くピン76Dによって、コントロールレバー62に旋回可能に連結されている。両方の穴62Bと76Bとピン76Dは軸線X3に沿って整列されている。穴62A,62B,62C,76A,76Bとコントロールレバー62と突起78Aと78Bとピン74,76C,76Dとレンズ要素66Aと66Bの寸法は、眼鏡1のフレーム2のように、図面に示された寸法や配置に限定されない。
【0037】
眼鏡を調整するため、使用者は、レンズ要素66Aを横に移動させるように作用する回転可能要素60Aを回転させる。レンズ要素66Aが右に横に移動するとき、コントロールレバー62は反時計回りに回転し、したがって、図11から認められ得るように、レンズ要素66Bを押して対応量だけ横に左に移動させる。同様に、レンズ要素66Aの左への横移動は、レンズ要素66Bの右への移動をもたらす。
【0038】
図12は、回転可能要素60Aの軸を通る断面図を示していて、回転可能要素の異なる部分61Aと61Bと、眼鏡1のフレーム2内に共に配置されたレンズ要素66Aと回転可能要素60Aとの連結を詳細に示している。回転可能要素60Aの軸は軸線X4として示されている。回転可能要素60Aは、異なる直径の二つの部分61A61Bを有していて、部分61A61Bよりも直径が小さい。部分61Aは、レンズ要素66Aに取り付けられたか形成された歯68とかみ合う歯70Aを有している。部分61Bはまた、焦点距離を調整するための回転可能要素を手動で回転させるための調整部分70Bを有している。調整部分70Bは、複数の歯、または手動調整に適している粗くされたまたは滑らかな表面を備えていてよい。部分61A61Bは、ピン61によってフレーム2に回転可能に連結されている。形状と要素間の距離は、図12に示されたものに限定されない。
【0039】
使用者が回転可能要素60Aを回転させることによって眼鏡を調整するとき、部分61A61Bが一緒に回転するが、二つの部分の間の直径の差は、調整部分70Bの動きと比較して比較的小さい距離でレンズ要素が移動されることをもたらし、その結果、回転可能要素60Aの比較的粗い調整によってレンズの細密調整がなされることが可能である。二つの部分の直径比を変えることによって、調整精度が、レンズ要素の相対的な横変位に関して、コントロールされることが可能である。二つの部分61Aと61Bだけが図12に示されているが、本発明は、二つだけまたは最小の二つに限定されない。たとえば、回転可能要素の組み合わせ、たとえば、図13に示されるような、それらの軸81と91を通って引かれた割合に傾斜された線D−D’に配置されたかみ合い回転可能要素80と90などが利用されてよい。
【0040】
調整機構は一つの複合レンズについて説明されたが、両方のレンズが着用者のおのおのの目に合うように個々に調整されることが可能であるように、各複合レンズに調整機構が設けられていると理解すべきである。
【0041】
このように、本発明は、上に論じられた実施形態に関連して説明された。これらの実施形態は、この分野の当業者に良く知られるさまざまな変更および代替形態を受け入れ可能であり、また、本発明の一つの実施形態に関して説明された特徴は別の実施形態に使用されてもよいことが認められるであろう。たとえば、第二の実施形態のレンズ要素は、累進的表面と平面表面を有していて、平面表面が向かい合った関係で互いに当接していてよい。高粘性液体またはゲルの薄膜が、レンズ要素の間の界面を円滑にするとともに、レンズの意図しない調整に対してレンズ要素の位置を固定してスティックスリップ効果を提供するために、(当接している平面表面を有しているかそうでない)二つのレンズ要素の間に使用されていてよい。液体またはゲルは、レンズを通る光透過を改善するために、レンズ要素の屈折率をより緊密に整合するように選択されてよい。ほぼ矩形形状レンズが描かれたけれども、レンズとフレーム2は、円、卵形、長円形を含むさまざまな形状に変更されてよい。
【0042】
上に説明されたものに加えてのさらなる変更が、本発明の真意および範囲から逸脱することなく、ここに説明された構造と技術になされてよい。したがって、特定の実施形態が説明されたけれども、これらは単なる例であり、本発明の範囲を限定しない。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] フレーム(2)と、フレーム(2)によって支えられた一組の複合レンズ(66A,66B)を備えた眼鏡(1)であり、各複合レンズ(8,66)は焦点距離が調整可能であり、
前記複合レンズ(8,66)の光軸(Y1,Y2)に沿って一方が他方の後ろに配された二つのレンズ要素(8A,8B,66A,66B)と、
焦点距離を変えるために前記二つのレンズ要素(8A,8B,66A,66B)を互いに対して横に移動させるように配された調整機構を備えており、各レンズ要素(8A,8B,66A,66B)は、別のレンズ要素(8A,8B,66A,66B)に対して反対かつ前記光軸(Y1,Y2)を横切る方向に移動可能であり、それにより、前記光軸(Y1,Y2)は、前記フレーム(2)に対して実質的に固定されたままであり、前記調整機構は、
少なくとも一つのレンズ要素(8A,8B,66A,66B)に係合している前記少なくとも一つのレンズ要素(8A,8B,66A,66B)の横移動を促すための少なくとも一つのフレーム連結回転可能要素(40,60A,60B)と、
前記眼鏡(1)のフレーム(2)内に旋回可能に連結された、前記複合レンズの一方のレンズ要素の横移動を、他方のレンズ要素の反対方向の横移動に移し換えるための少なくとも一つのコントロールレバー(44,46,62)を備えている、眼鏡。
[2] 前記コントロールレバーが複合レンズの各レンズ要素の外側エッジに連結されていることを特徴とする[1]に記載の眼鏡。
[3] 前記回転可能要素(60A,60B)が実質的にホイールとして形づくられていて、前記ホイールのエッジが少なくとも一つのレンズ要素のエッジに係合していることを特徴とする[1]または[2]に記載の眼鏡。
[4] 前記回転可能要素(60A,60B)が歯付きホイールを有し、その歯付きホイールは、対応する歯を有している少なくとも一つのレンズ要素のエッジに係合していることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[5] 前記回転可能要素が実質的に円形であり、その中心軸が眼鏡のフレームに旋回可能に連結されていることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[6] 前記回転可能要素が少なくとも第一の部分(61A)と第二の部分(61B)を有し、前記第一の部分(61A)は前記レンズ要素に係合し、前記第二の部分(61B)は、前記複合レンズの一つの手動調整のための前記フレームのエッジに隣接している調整部分(70B)を有していることを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[7] 前記回転可能要素が前記眼鏡の前記フレームによって少なくとも部分的に取り囲まれていることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[8] 各複合レンズのための前記回転可能要素が前記複合レンズの下方の前記フレームのボトムエッジに配置されていることを特徴とする[1]ないし[7]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[9] 前記コントロールレバーがその中心において前記フレーム内の固定点のまわりに旋回可能であり、そのそれぞれの端部に隣接している前記二つのレンズ要素と連結していることを特徴とする[1]ないし[8]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[10] 前記レンズ要素の支持と横移動の案内のため、前記少なくとも二つのレンズ要素を囲んでいる前記眼鏡の前記フレーム内に少なくとも一つのスタッド(3)が配置されていることを特徴とする[1]ないし[9]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[11] 各複合レンズが、前記二つのレンズ要素を互いに連結しそれらの横移動を案内する少なくとも一つの案内レール(36,38)を備えていることを特徴とする[1]ないし[10]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[12] 前記案内レールの少なくとも一部が前記レンズ要素の一つによって支えられ、他方のレンズ要素によって支えられた相補的突起(32)を受ける溝断面(28)を有していることを特徴とする[10]に記載の眼鏡。
[13] 前記調整機構が、レンズ位置への意図しない変更を防止するブロック装置によってブロックされることが可能であることを特徴とする[1]ないし[11]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[14] 前記ブロック装置が、前記フレーム上に配置されたかみ合い歯を備えていることを特徴とする[13]に記載の眼鏡。
[15] 前記レンズ要素が、当接関係で互いに向かい合う平面表面を有していることを特徴とする[1]ないし[14]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[16] 前記レンズ要素が、液体またはゲルの膜によって分離されることを特徴とする[1]ないし[15]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[17] 前記レンズ要素を分離している前記液体またはゲルが高粘性液体またはゲルから構成されていることを特徴とする[16]に記載の眼鏡。
[18] 前記レンズ要素を分離している前記液体またはゲルが、意図しない調整に対して前記レンズ要素の位置を維持するスティックスリップ効果を提供することを特徴とする[16]または[17]に記載の眼鏡。
[19] 前記レンズの前記レンズ要素を分離している前記液体またはゲルが、前記レンズ要素とそれらの間のギャップを通過する光の屈折率の変化を低減するように適合されていることを特徴とする[16]ないし[18]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
[20] 前記レンズがポリカーボネート製であることを特徴とする[1]ないし[19]のいずれかひとつに記載の眼鏡。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13