【実施例1】
【0038】
図1はこの発明の第1実施例に係る自動変速装置を全体的に示す概略図、
図2は
図1に示す構成の出力軸回転速度(車速)Vと入力軸回転速度(エンジン回転速度)NEの関係を示す説明図である。
【0039】
図1において、符号10は自動変速装置を示す。自動変速装置10の入力軸12はエンジン(内燃機関。駆動源)14に接続される。エンジン14は駆動輪16を備えた車両(駆動輪16などで部分的に示す)20に搭載される。
【0040】
具体的には、入力軸12は、一方では発進機構22と前後進切換機構24を介してエンジン10に接続されると共に、他方では無段変速機(Continuously Variable Transmission。以下「CVT」という)26に接続される。
【0041】
発進機構22はトルクコンバータあるいは発進クラッチからなると共に、前後進切換機構24は車両20の前進方向への走行を可能にする前進クラッチと、後進方向への走行を可能にする後進ブレーキクラッチと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構からなる。
【0042】
入力軸12は第1クラッチ30を介してプーリ入力軸12aに接続されると共に、入力軸12に平行に配置された出力軸32は第2クラッチ34を介してプーリ出力軸32aに接続される。
【0043】
CVT26は、プーリ入力軸12aに接続されるドライブプーリ26aと、プーリ出力軸32aに接続されるドリブンプーリ26bと、その間に掛け回される無端可撓部材、例えば金属製のVベルト26cからなる。
【0044】
第1クラッチ30と第2クラッチ34は共に作動油(油圧)を供給されて係合(締結)と解放(非締結)の間で動作する湿式の油圧クラッチ(摩擦クラッチ)からなる。
【0045】
図示は省略するが、ドライブプーリ26aは、プーリ入力軸12aの外周軸に相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体と、外周軸に相対回転不能で固定プーリ半体に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体からなる。ドリブンプーリ26bも、プーリ出力軸32aの外周軸に相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体と、外周軸に相対回転不能で固定プーリ半体に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体からなる。
【0046】
出力軸32の回転はギヤ36(駆動ギヤ36aと被動ギヤ36b)を介して中間軸40に伝えられ、その回転はギヤ42を介してディファレンシャル44から左右の駆動輪(左側のみ示す)16に伝えられる。
【0047】
自動変速装置10はCVT26と並列に配置される直結機構46を備える。直結機構46はチェーン式伝動装置からなり、入力軸12と出力軸32を直結して入力軸12の回転を固定(所定)変速比で変速して出力軸32に伝達する。
【0048】
直結機構46の固定変速比はCVT26の最小変速比(ODレシオ)に設定される。また、直結機構46は入力軸12に第3クラッチ50を介して接続される。第3クラッチ50も、第1、第2クラッチ30,34と同様、油圧クラッチ(摩擦クラッチ)からなる。
【0049】
CVT26と直結機構46は図示のように入力軸12とプーリ入力軸12a、および出力軸32とプーリ出力軸32aの間に並列に配置されることから、自動変速装置10は、エンジン14の動力を駆動輪16に伝達する経路として、CVT26による(を経由する)第1動力伝達系と直結機構46による(を経由する)第2動力伝達系からなる2種の経路を備える。
【0050】
入力軸12には入力軸回転速度センサ54が設けられ、CVT26に入力される入力軸12の回転速度を示すパルス信号を出力すると共に、CVT26のドライブプーリ26aの付近にはNDRセンサ(回転速度センサ)56が設けられ、ドライブプーリ26aの回転速度(プーリ入力軸12aの回転速度)NDRに応じたパルス信号を出力する。
【0051】
また、ドリブンプーリ26bの付近にはNDNセンサ(回転速度センサ)60が設けられ、ドリブンプーリ26bの回転速度NDNを示すパルス信号を出力すると共に、出力軸32には出力軸回転速度センサ62が設けられ、直結機構46の出力側の回転速度(と車速V、より正確にはファイナルレシオで修正される前の車速)を示すパルス信号を出力する。
【0052】
さらに、第1クラッチ30には油圧スイッチ64が設けられて第1クラッチ30の係合・解放を示す出力を生じると共に、第3クラッチ50にも油圧スイッチ66が設けられて第3クラッチ50の係合・解放を示す出力を生じる。
【0053】
自動変速装置10には、油圧回路70とシフトコントローラ72が設けられる。油圧回路70は油圧ポンプ(送油ポンプ。図示せず)を備え、油圧ポンプはエンジン14で駆動されてリザーバに貯留された作動油を汲み上げて油路に吐出する。油路には種々の電磁制御バルブが配置される。
【0054】
上記したNTセンサ54などの出力はシフトコントローラ72に送られる。シフトコントローラ72はCPU,ROM,RAM,I/Oなどで構成されるマイクロコンピュータを備える。同様に、エンジン14もマイクロコンピュータからなり、クランク角センサなどの種々のセンサからの出力に基づいてエンジン14の動作を制御するエンジンコントローラ74を備える。
【0055】
シフトコントローラ72はエンジンコントローラ74と通信自在に接続され、入力されたNTセンサ54などの出力とエンジンコントローラ74と通信して得たセンサ出力に基づいて油圧回路70の電磁制御バルブを励磁・消磁することで、発進機構22と前後進切替機構24とCVT26と第1、第2クラッチ30,34の動作を制御するCVT26などへの油圧供給を制御してその動作を制御する。
【0056】
シフトコントローラ72は、油圧回路70を介し、例えばCVT26についていえば、高圧の作動油を可動プーリ半体のピストン室に供給し、可動プーリ半体を軸方向に移動させるプーリ圧(挟持力)を発生させる。それに応じてドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bのプーリ幅が変化し、ベルト26cの巻掛け半径が変化し、エンジン14の出力を駆動輪16に伝達するレシオ(変速比)が無段階に変化させられる。
【0057】
即ち、
図2に示すように、CVT26はプーリ圧に応じてレシオが最大変速比Lowレシオ(iLow)から最小変速比ODレシオ(直結レシオ(iOD))の間で無段階に変化させられる。
【0058】
前記した如く、ベルト式のCVT26にあっては、1:1レシオを中心にほぼ同じ値の減速比と増速比を設定することが一般的であると共に、同図に示す如く、平地で最高車速に達するときのレシオをiTopと定義するとき、iTopはiODよりも大きな値(iTop>iOD)に設定される。また、シフトコントローラ72は第1、第2動力伝達系の切替を制御する切替制御手段として機能する。
【0059】
図3は第2動力伝達系を確立、換言すれば第1動力伝達系から第2動力伝達系に切り替えるとき、
図4は第1動力伝達系を確立、換言すれば第2動力伝達系から第1動力伝達系に切り替えるときのトルクフローの説明図、
図5は
図3の動作、
図6は
図4の動作を示すタイム・チャートである。
【0060】
尚、
図1と
図3から
図6において、第1動力伝達系によるCVT26の動力伝達を「CVTモード」、第2動力伝達系による直結機構46の動力伝達を「直結モード」、その間の動作を「移行モード」、第1クラッチ30、第3クラッチ50をCVT−直結モード切替機構、第2クラッチ34を車輪(駆動輪)−CVT間断接機構という。
【0061】
図3と
図5を参照してCVTモードから直結モード(第1動力伝達系から第2動力伝達系)への切替を説明する。
【0062】
シフトコントローラ72は、
図3に示す如く、CVTモードから移行モード1、移行モード2を経て直結モードとなるように、モード切替(第1、第2動力伝達系の切替)を制御する。
【0063】
図5を参照して詳細に説明すると、CVTモード走行中はプーリ26a,26bに変速とトルク伝達に必要なプーリ圧を供給し、NDRセンサ56とNDNセンサ60の出力からプーリ26a,26bの回転速度を計測してレシオを演算する。
【0064】
シフトコントローラ72は、
図5タイム・チャートの時刻t1において入力軸回転速度センサ54から検出された入力軸12の回転速度(CVT26への入力回転速度)と出力軸回転速度センサ62から検出された回転速度を直結機構46の変速比(レシオ)で修正して求めた直結機構46の回転速度とを比較し、入力軸12の回転速度と直結機構46の回転速度がほぼ(あるいは完全に)同期(概略一致)したか否かの判断を開始する。
【0065】
シフトコントローラ72は、時刻t2でほぼ同期したと判断されるとき、モード切替信号を出力すると共に、断接機構(第2クラッチ34)を係合させたまま、切替機構を素早く(時刻t2から時刻t3までの時間ΔT1の間に)CVT26側から直結機構46側に切り替える。より具体的には、第1クラッチ30を解放すると共に、第3クラッチ50を係合させてCVT26側から直結機構46側に切り替える。このとき、入力軸12のCVT26側と直結機構46側は回転速度がほぼ同期しているため、乗員にショックを与えることなく、短時間で切り替えることができる。
【0066】
シフトコントローラ72は、油圧スイッチ64の出力から第1クラッチ30が解除された(CVT26側から直結機構46側に切り替わった)と判断したとき(時刻t4)、出力軸32の断接機構(第2クラッチ34)から徐々に油圧を排出させ、時刻t4から時刻t5までの時間ΔT2の間に徐々に解放する。これにより、CVT26のプーリ26a,26bは乗員に慣性ショックを与えることなく、ゆっくりと回転を停止する。
【0067】
シフトコントローラ72は、次いで時刻t6においてNDRセンサ56および/またはNDNセンサ60の出力からプーリ26a,26bの回転が停止したか否か判断し、停止したと判断されたとき、プーリ圧を停止中レシオ維持圧(所定圧力)まで低下させ、直結モードに完全に切り替える。
【0068】
図3と
図5に示す如く、直結モードにあっては、切替機構のうちの第1クラッチ30は解放され(直結機構46側であり)、第2クラッチ34からなる断接機構も解放されているので、CVT26は入出力で遮断された状態となり、回転停止状態となる。
【0069】
回転停止状態では変速が生じ難いため、CVT26はプーリ圧を低圧にしてもレシオを維持できることから、CVT26にはODレシオが維持可能な程度の極力低圧なプーリ圧(停止中レシオ維持圧)が供給される。これにより、油圧ポンプ圧を下げることができ、油圧ポンプロスを低減することができて燃費を向上させることができる。
【0070】
次いで、
図4と
図6を参照して直結モードからCVTモード(第2動力伝達系から第1動力伝達系)への切替を説明する。
【0071】
シフトコントローラ72は、
図4に示す如く、直結モードから移行モード3、移行モード4を経てCVTモードとなるように、モード切替(第1、第2動力伝達系の切替)を制御する。
【0072】
図6を参照して詳細に説明すると、時刻t1において運転者が車両20の加速を意図してアクセルペダルを踏み込んだと判断されると、シフトコントローラ72は、CVTモードに移行するためにモード切替信号を出力すると共に、プーリ圧を変速とトルク伝達に必要なプーリ圧まで昇圧する。
【0073】
また、シフトコントローラ72は時刻t1において出力軸32の断接機構(第2クラッチ34)への油圧供給を開始し、時刻t2までの間(時間ΔT3の間)に徐々に係合する。これにより、CVT26のプーリ26a,26bは乗員に慣性ショックを与えることなく、ゆっくりと回転を開始する。
【0074】
次いでシフトコントローラ72は、時刻t3においてNTセンサ54から検出された入力軸12の回転速度と出力軸回転速度センサ62から検出された直結機構46の回転速度が前記したようにほぼ(あるいは完全に)同期(概略一致)したか否か判断し(時刻t3)、ほぼ同期したと判断されるとき、切替機構を素早く(時刻t3からt4までの時間ΔT4の間に)直結機構46側からCVT26側に切り替える。即ち、第1クラッチ30を係合すると共に、第3クラッチ50を解放して直結機構46側からCVT26側に切り替える。
【0075】
時刻t3からt4までは入力軸12のCVT26側と直結機構46側は回転速度がほぼ同期しているため、乗員にショックを与えることなく、短時間で切り替えることができる。
【0076】
この実施例は上記のように構成したので、CVT26によるCVTモード(第1動力伝達系)によって動力が伝達されるとき、減速された入力軸12の回転が直結機構46による第2動力伝達系を確立する第3クラッチ50に入力されることとなり、第3クラッチ50の回転強度や耐久性を上げたりする必要がなくなると共に、連れ回り対策も不要にすることができる。さらには、直結機構46の回転が減速されるので、その分騒音も減少させることができる。
【0077】
再び
図12を参照して説明すると、特許文献1記載の技術は、入力軸12(に第1クラッチ30を介して接続されるプーリ入力軸12a)に接続されるドライブプーリ26aと出力軸32(第2クラッチ34を介して接続されるプーリ出力軸32aに)に接続されるドリブンプーリ26bとその間に掛け回されるベルト26cとを有するCVTと、CVTと並列に配置され、入力軸12と出力軸32を直結して入力軸12の回転を所定(固定)の変速比で変速して出力軸32に伝達する直結機構46とを備え、動力伝達としてCVT26によるCVTモード(第1動力伝達系)または直結機構46による直結モード(第2動力伝達系)を確立できるように構成すると共に、直結機構46を出力軸32に第3クラッチを介して接続するように構成している。
【0078】
そのため、CVTモードを確立するとき、CVT伝達時の動力の流れは矢印(実線)で示すようになり、そのときの直結機構46の回転は矢印(破線)で示すようになるため、CVT26によるCVTモードによって動力が伝達されるとき、増速された出力軸32の回転が直結機構46による第2動力伝達系を確立する第3クラッチ50に入力されることとなり、第3クラッチ50の回転強度や耐久性を向上させる必要があると共に、潤滑を増やすことでフリクションロスが大きくなったりするという不都合があった。
【0079】
即ち、
図13に示す如く、CVTモードを確立するとき、直結機構46の回転は増速され、最高エンジン回転速度NEmaxのとき、第3クラッチ50の直結機構46側の回転速度が最高出力軸回転速度(最高車速)Vmaxを上回り、Vmax×iTop/iODまで達してしまう不都合が生じる。その結果、第3クラッチ50の回転強度や耐久性を向上させる対策を講じる必要が生じると共に、過回転によって引き摺りが生じたり、直結機構46の騒音が増加するなどの不都合も生じる。
【0080】
それに対し、この実施例に係る自動変速装置にあっては、直結機構46の所定変速比をCVT26のODレシオ(最小変速比)に設定し、直結機構46を入力軸12に第3クラッチ50を介して接続すると共に、CVTモードを確立するときは第1クラッチ30と第2クラッチ34を係合する一方、直結モードを確立するときは第3クラッチ50を係合し、第1クラッチ30と第2クラッチ34を解放する如く構成したので、
図1に示す如く、CVTモードを確立するとき、出力軸32の回転速度に比して低い入力軸12の回転速度が入力軸側の直結機構46に伝達されるので、入力軸12側の直結機構46の回転は減速されることになる。
【0081】
その結果、
図2に示す如く、最高出力軸回転速度(最高車速)Vmaxのときでも、入力側回転速度(エンジン回転速度NE)は最高エンジン回転速度NEmaxを下回り、NEmax×iOD/iTopに収めることができる。即ち、CVT26によるCVTモードによって動力が伝達されるとき、減速された回転が第3クラッチ50に入力されることとなり、よって第3クラッチ50の耐久性を上げたり、連れ回り対策を講じたりする必要を減少させることができる。さらには、直結機構46の回転が減速されるので、その分騒音も減少させることができる。
【0082】
また、
図3と
図5、特に
図5に示すように、直結モードを確立するとき、CVTモードにおいてCVT26の変速比が最小変速比(OD)になったときに第3クラッチ50を係合すると共に、第1クラッチ30を解放し(時刻t1からt3)、次いで直結モードが確立されたと判断されるとき、第2クラッチ34を徐々に解放する(時刻t4からt5)如く構成したので、上記した効果に加え、直結機構46の回転速度とCVT26のドライブプーリ26aの回転速度(NDR)が同期した状態で第3クラッチを係合することとなるため(時刻t1からt4)、乗員にショックを与えることなく、短時間で直結モードを確立、換言すれば短時間でCVTモードから直結モードに切り替えることができる。
【0083】
さらに、直結モードが確立されたと判断されるとき、第2クラッチ34を徐々に解放する(時刻t4からt5)如く構成したので、CVT26のプーリ回転の低下速度を遅くすることができ、慣性ショックを低減できて乗員に一層ショックを与えることがない。
【0084】
さらに、直結モードが確立されている間、CVT26のプーリ26a,26bを入出力で遮断しているため、ベルト26cやプーリ26a,26bの回転に伴うロスをほとんどなくすことができると共に、時刻t5までに停止と判断されるとき、時刻t6で停止中レシオ維持圧までプーリ圧を下げることができて油圧ポンプ圧を下げることが可能となり、油圧ポンプロスを低減できて燃費を向上させることができる。また、プーリ26a,26bやベルト26cはODレシオ状態を維持しているので、各部の干渉、ガタ、打音が生じることがない。
【0085】
また、
図4と
図6、特に
図6に示す如く、CVTモードを確立するとき、直結モードが確立されている間に第2クラッチ34を徐々に係合し(時刻t1からt2)、次いで直結機構46の回転速度とCVT26のドライブプーリ26aの回転速度がほぼ同期したと判断されるとき、第3クラッチ50を解放すると共に、第1クラッチを係合する(時刻t3からt4)如く構成したので、上記した効果に加え、同様に直結機構46の回転速度とCVT26のドライブプーリ26aの回転速度が同期した状態で第3クラッチ50を解放することとなるため、乗員にショックを与えることなく、短時間でCVTモードを確立、換言すれば短時間で直結モードからCVTモードに切り替えることができる。
【0086】
さらに、直結モードが確立されている間に第2クラッチ34を徐々に係合する(時刻t1からt2)如く構成したので、CVT26のプーリ回転の上昇速度を遅くすることができ、慣性ショックを低減できて乗員に一層ショックを与えることがないと共に、直結モードが確立されている間、CVT26はODレシオを維持しているので、移行時のレシオ合わせが不要となり、移行時間を短縮することができる。
【実施例3】
【0093】
図10は、この発明の第3実施例に係る自動変速装置(符号10bで示す)を部分的に示す概略図、
図11は
図10に示す構成の出力軸回転速度(車速)Vと入力軸回転速度(エンジン回転速度)NEの関係を示す説明図である。
【0094】
第3実施例に係る自動変速装置も、第1実施例と同様、入力軸12(に第1クラッチ30を介して接続されるプーリ入力軸12a)に接続されるドライブプーリ26aと出力軸32(に第2クラッチ34を介して接続されるプーリ出力軸32a)に接続されるドリブンプーリ26bとその間に掛け回される無端可撓部材(例えばベルト)26cとを有するCVT(無段変速機)26と、CVT26と並列に配置され、入力軸12と出力軸32を直結して入力軸12の回転を所定(固定)の変速比で変速して出力軸32に伝達する直結機構46と、動力伝達としてCVT26によるCVTモード(第1動力伝達系)と直結機構46による直結モード(第2動力伝達系)を確立する制御手段(シフトコントローラ。図示せず)を備えると共に、CVTモード(第1動力伝達系)を確立するときは第1クラッチ
30と第2クラッチ34を係合する一方、直結モード(第2動力伝達系)を確立するときは第3クラッチ(符号50bで示す)を係合し、第1クラッチ30と第2クラッチ34を解放する如く構成される。
【0095】
第3実施例に係る自動変速装置10bにあっては、第1実施例と異なり、直結機構46の所定変速比をCVT26の最大変速比Lowレシオ(最小変速比ODレシオではなく)に設定すると共に、直結機構46を出力軸32に第3クラッチ50bを介して接続する如く構成される。
【0096】
即ち、CVT26のようなベルト型の場合、全開発進時や登坂発進のようにLowレシオで高トルクを伝達するとき、プーリ圧(挟持力)が最大となるので、ベルト26cとプーリ26a,26bはそれに見合う強度や耐久性が要求される。しかしながら、その要求を満足させようとすると、大型・重量化すると共に、コストもアップする。その点に鑑み、第3実施例においては、発進は直結機構46で行うと共に、発進後はCVT26に切り替えるようにした。
【0097】
第3実施例にあっても、
図11に示すように出力軸32側の直結機構46は減速運転され、最高エンジン回転速度NEmax時でも、Vmax×iTop/iLowに収めることができ、よってCVT26によるCVTモード(第1動力伝達系)によって動力が伝達されるとき、減速された出力軸32の回転が第3クラッチ50bに入力されることとなり、よって第3クラッチ50bの耐久性を上げたり、連れ回り対策を講じたりする必要を減少させることができる。さらには、直結機構46の回転が減速されるので、その分騒音も減少させることができる。
【0098】
第3実施例に係る自動変速装置10bは、直結機構46の回転速度がLowレシオに設定されると共に、直結機構46を出力軸32に第3クラッチ50bを介して接続し、最大変速比Lowレシオのときに切替を行う点を除くと、残余の構成および効果は第1実施例と異ならない。
【0099】
上記した如く、第1、第2実施例にあっては、車両20に搭載される駆動源(エンジン)14に接続される入力軸12と、駆動輪16に接続される出力軸32と、前記入力軸12に第1クラッチ30を介して接続される(プーリ入力軸12aを介して接続される)ドライブプーリ26aと前記出力軸32に第2クラッチ34を介して接続される(プーリ出力軸32aを介して接続される)ドリブンプーリ26bとその間に掛け回される無端可撓部材(ベルト)26cとを有する無段変速機(CVT)26と、前記無段変速機26と並列に配置され、前記入力軸12と前記出力軸32を直結して前記入力軸12の回転を所定の変速比で前記出力軸32に伝達する直結機構46と、前記無段変速機26による第1動力伝達系と前記直結機構46による第2動力伝達系の確立を制御する制御手段(シフトコントローラ72)とを備える自動変速装置10,10aにおいて、前記直結機構46の前記所定変速比を前記無段変速機26の最小変速比(ODレシオ)に設定し、前記直結機構46を前記入力軸12に第3クラッチ50,50aを介して接続すると共に、前記制御手段は、前記第1動力伝達系を確立するときは前記第1クラッチ30と前記第2クラッチ34を係合し、前記第3クラッチ50,50aを解放する一方、前記第2動力伝達系を確立するときは前記第3クラッチ50,50aを係合し、前記第1クラッチ30と前記第2クラッチ34を解放する如く構成したので、無段変速機(CVT)26による第1動力伝達系によって動力が伝達されるとき、減速された入力軸12の回転が第3クラッチ50,50aに入力されることとなり、直結機構46による第2動力伝達系を確立する第3クラッチ50,50aに入力される回転速度を低下させることができる。その結果、第3クラッチ50,50aの回転強度や耐久性の向上対策が不要となり、さらには連れ回り対策なども不要にできると共に、直結機構46の回転が減速されるので、その分騒音も減少させることができる。
【0100】
さらには、第1動力伝達系または第2動力伝達系直結機構を、乗員にショックを与えることなく、円滑に確立することができると共に、第2動力伝達系を確立するとき、無段変速機(CVT)26を駆動源(エンジン)14から切り離して無回転化させて駆動源の負荷を低減させることができる。
【0101】
また、前記制御手段は、前記第2動力伝達系を確立するとき、前記第1動力伝達系において前記無段変速機(CVT)26の変速比が最小変速比にほぼ一致したと判断されるときに前記第3クラッチ50,50aを係合すると共に、前記第1クラッチ30を解放し、次いで前記第2動力伝達系が確立されたと判断されるとき、前記第2クラッチ34を徐々に解放する如く構成したので、上記した効果に加え、直結機構46の回転速度と無段変速機46のドライブプーリ26aの回転速度が同期した状態で第3クラッチ50,50aを係合することとなるため、乗員にショックを与えることなく、短時間で第2動力伝達系を確立、換言すれば短時間で第1動力伝達系から第2動力伝達系に切り替えることができる。
【0102】
さらに、第2動力伝達系が確立されたと判断されるとき、第2クラッチ34を徐々に解放する如く構成したので、無段変速機26のプーリ回転の低下速度を遅くすることができ、慣性ショックを低減できて乗員に一層ショックを与えることがない。
【0103】
また、前記制御手段は、前記第1動力伝達系を確立するとき、前記第2動力伝達系が確立されている間に前記第2クラッチ34を徐々に係合し、次いで前記直結機構46の回転速度と前記無段変速機26のドライブプーリ26aの回転速度がほぼ同期したと判断されるとき、前記第3クラッチ50,50aを解放すると共に、前記第1クラッチ30を係合する如く構成したので、上記した効果に加え、同様に直結機構46の回転速度と無段変速機26のドライブプーリ26aの回転速度が同期した状態で第3クラッチ50,50aを解放することとなるため、乗員にショックを与えることなく、短時間で第1動力伝達系を確立、換言すれば短時間で第2動力伝達系から第1動力伝達系に切り替えることができる。
【0104】
さらに、第2動力伝達系が確立されている間に第2クラッチ34を徐々に係合する如く構成したので、無段変速機26のプーリ回転の上昇速度を遅くすることができ、慣性ショックを低減できて乗員に一層ショックを与えることがない。
【0105】
また、第2動力伝達系が確立されている間、無段変速機26はODレシオを維持しているので、移行時のレシオ合わせが不要となり、移行時間を短縮することができる。
【0106】
また、前記無段変速機(CVT)26は前記ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bに作動油を供給されて動作する変速機であると共に、前記制御手段は、前記第2動力伝達系が確立されている間、前記ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bに供給すべき作動油の圧力を所定圧力(停止中レシオ維持圧)に低下させる如く構成したので、上記した効果に加え、燃費を向上させることができる。
【0107】
即ち、第2動力伝達系が確立されている間、無段変速機(CVT)26のプーリ26a,26bを入出力で遮断しているため、無端可撓部材(ベルト)26cやプーリ26a,26bの回転に伴うロスを殆どなくすことができると共に、ドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bに供給すべきプーリ圧を所定圧力まで下げることができる。それにより、油圧ポンプ圧を下げることができ、油圧ポンプロスを低減して燃費を向上させることができる。また、プーリ26a,26bや無端可撓部材(ベルト)26cはODレシオ状態を維持しているので、各部の干渉、ガタ、打音が生じることがない。
【0108】
また、前記所定圧力が前記変速比を維持するに足る圧力である如く構成したので、上記した効果に加え、圧力を一層低下できて燃費を一層向上させることができる。
【0109】
尚、上記第1から第3実施例において、直結機構46はチェーンからなるように構成したが、ギヤからなるように構成しても良い。要は、直結機構46は入力軸12と出力軸32を直結して入力軸12の回転を所定の変速比で出力軸32に伝達できれば、どのような構造を備えても良い。
【0110】
また、CVT(無段変速機)26として金属製のVベルトを有する構造を開示したが、金属チェーン、樹脂ベルト、ゴムベルトであっても良い。その意味で上記において使用した「プーリ圧」は挟持力と同義である。
【0111】
また、第1、第2、第3クラッチ30,34,50を油圧クラッチとしたが、乾式クラッチあるいは電磁クラッチでも良い。
【0112】
また、直結機構46の所定(固定)変速比をCVT26の最小変速比と等しくしたが、許容誤差の範囲内であれば、厳密に等しくなくても良い。
【0113】
また、入力軸に持つ駆動減としてエンジン(内燃機関)を用いたが、それに止まるものではなく、モータ・ジェネレータ(あるいはそれとエンジンとのハイブリッド)などであっても良い。入力軸にモータ・ジェネレータを持つハイブリッド車両では高速走行での減速時に無段変速機構を経由しないので、上記した効果に加え、回生効率の向上も見込むことができる。