【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの観点は、臍帯血から分離された単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養した後、培養物から幹細胞を回収することを特徴とする臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法に関するものである。
【0013】
前記培養物から幹細胞を回収することにおいて、幹細胞の免疫学的特性を用いて分離することを更に含むことができる。
【0014】
先ず、臍帯血から単核細胞の分離は、当業界に知られている通常の方法を用いて行うことができる。本発明の一つの態様においては、臍帯血とHetasepを混合して赤血球を除去
した後、フィコール−プラーク(Ficoll-plaque)を用いて単核細胞を分離することによっ
て得ることができる。ここで、臍帯血とHetasepの混合比は、臍帯血5ml当たり0.5
〜2mlにするのが好ましい。
【0015】
本発明では、臍帯血から単核細胞の分離収率を高めるために、分娩直後に回収した臍帯血、分娩直後に回収して室温で12〜48時間保管した臍帯血または3〜5℃で6〜72時間保管した臍帯血を使用するのが好ましい。
【0016】
本発明は、臍帯血から分離された単核細胞から幹細胞を分離する方法において、フィブロネクチンを用いることを特徴とする。本発明における用語‘フィブロネクチンを含む培養容器'とは、単核細胞とフィブロネクチンとが接触できる状態を意味する。例えば、フ
ィブロネクチンは、培養容器にコーティングされるとか、粒子形態または三次元構造物の形態として培地に含まれることができる。一つの態様として、フィブロネクチンが培養容器にコーティングされた場合、フィブロネクチンは、0.1〜1mg/mlの濃度で含ま
れることができる。
【0017】
本発明において、フィブロネクチンは、特別な制限なく、動物から由来したものを使用することができるが、ヒトから由来したものが好ましい。前記フィブロネクチンは、人工合成(例えば、化学的合成法、タンパク質合成装置を用いた合成など)または生合成(例え
ば、組換えDNA技術、繊維芽細胞培養など)を通じて製造するとか、ヒトを含む動物の
血漿または細胞外基質から分離することによって入手することもできる。前記フィブロネクチンは、フィブロネクチンの断片(fragment)またはペプチドであるとか、これを含むことができる。
【0018】
単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養する時、利用可能な培地は、特に制限されないが、基本培地としては、SNU−1またはEGM−2を用いるのが好ましい。
【0019】
‘SNU−1培地’の組成は、下記の通りである(表1)。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明では、前記基本培地にFGF−B(Fibroblast Growth Factor)、アスコルビン酸(Ascorbic acid)、EGF(Epodermal Growth Factor)、ヒドロコルチゾン(hydrocortison
e)、IGF−1(Insulin-like Growth Factor-1)またはVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)、ヘパリン(heparin)を添加し、必要に応じてGA−1000(Gentamycin
Sulfate、 Amphotericin-B)を更に添加するのが好ましい。
【0022】
より好ましくは、 前記基本培地に、ウシ胎児血清(FBS)20%、bFGF(Fibroblast Growth Factor)1〜40ng/ml、アスコルビン酸0.1〜5.0μg/ml、E
GF(Epidermal Growth Factor)1〜40ng/ml、ヒドロコルチゾン0.1〜1μg
/ml、IGF−I(Insulin-like Growth Factor-1)1〜40ng/mlまたはVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)1〜5ng/ml及びヘパリン20〜25μg/mlを添加し、必要に応じてGA−1000(Gentamycin Sulfate、 Amphotericin-B)を
更に添加することである。
【0023】
一方、単核細胞を培養して3日後、付着しなかった単核細胞は除去し、付着した単核細胞のみを続けて培養する。これにより、付着した単核細胞のうち、幹細胞だけ選択的に増殖するようになり、分離した後、12〜20日の間に速く増殖する幹細胞を観察することができる。ここで、培地は2〜3日ごとに交替するのが好ましい。
【0024】
培養物から臍帯血由来の万能幹細胞を取得する方法としては、ソーティング機能を有したフローサイトメーターを使用したFACS法(Int.Immunol.,10(3):275,1998)、磁気ビーズを使用する方法、間葉系幹細胞を特異的に認識する抗体を使用したパニング法(J.Immunol.,141(8):2797,1998)などがある。また、大量の培養物などから多分化能幹細胞を取得する方法としては、細胞の表面に発現されて分子(以下、表面抗原と称する)を特異的に認識する抗体を単独または組み合わせてこれをカラムとして使用する方法がある。
【0025】
フローサイトメーターのソーティングの方式としては、水滴荷電方式、セルキャプチャー方式などを例示することができる。どちらの方法も、細胞の表面抗原を特異的に認識する抗体を蛍光に標識し、標識された抗体と抗原との結合体に対する蛍光を測定して蛍光強度を電気信号に変換することにより細胞の抗原発現量を定量することができる。また、使用する蛍光物質の種類を組み合わせることにより複数の表面抗原を発現している細胞を分離することも可能である。ここに使用可能な蛍光物質としては、FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(allo-phycocyanin)、TR(TexasRed:テキサスレッド)、Cy3、CyChrome、レッド(Red)613、レッド670、TRI−カラー、クァンタムレッド(QuantumRed)などがある。
【0026】
フローサイトメーターを使用したFACS法としては、前記にで取得した幹細胞溶液を集め、遠心分離などの方法で細胞を分離した後、直接抗体で染色する方法と、一度適当な培地中で培養、増殖を行った後に抗体を染色する方法を利用することができる。細胞の染色はまず、表面抗原を認識する一次抗体と目的の細胞サンプルを混合し、氷上で30分〜1時間、インキュベーションする。一次抗体が蛍光で標識されている場合には、洗浄後フローサイトメーターで分離を行う。一次抗体が蛍光標識されていない場合には、洗浄後一次抗体に対して結合活性を有する蛍光標識された二次抗体と一次抗体が反応した細胞とを混合し、再び氷で30分〜1時間、インキュベーションする。洗浄後、一次抗体と二次抗体で染色された細胞をフローサイトメーターで分離を行う。
【0027】
本発明によって分離された、臍帯血由来の万能幹細胞は、下記の特性のうち、少なくとも一つの特性を有している:
(a)転写調節因子であるc−myc、ZNF281に対して陽性の免疫学的な特性を示す。
(b)細胞外基質がコーティングされた底に付着され、付着の後5〜30日の間に紡錘形または球形態の細胞集落を成しながら増殖する。
(c)30〜45のCPDL(cumulative population doubling level)を示す。
(d)CD14、CD31、CD34、CD45及びHLA−DRに対して陰性の免疫学的特性を示す。
(e)中胚葉、内胚葉及び外胚葉の細胞に分化可能である。
(f)TIMP−2、TGF−β、RANTES CINC−3、EOTAXIN、GM−CSF、IFN−γ、IL−1b、IL−3、IL−6、IL−8、IL−10、IL12p40、IL13、IL−16、IP−10、Leptin、MCP−2、MIG、MIP−3a、b−NGFm、sTNFRI、PFGF−bbからなる群から選択された少なくとも一つのサイトカインまたはケモカインを分泌する。
【0028】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞がOct−4、Sox−2、Rex−1、c−myc、ZNF281を発現するということは、未分化状態が維持されていることを意味する。
【0029】
また、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、30〜45のCPDL(cumulative population doubling level)を示し、増殖力が優れることを分かる。核型分析によって、本発明の細胞は速く増殖するが、正常染色体の構造を有していることが確証された。
【0030】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、造血母幹細胞マーカーまたは免疫拒否反応関連マーカーとして知られたCD14、CD31、CD34、CD45及びHLA−DRに対して陰性の免疫学的な特性を示す。このように本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、造血及び免疫拒否反応関連マーカーが欠けて移植の時に血管形成と拒否反応を最小化することができ、同種間移植(allogenic transplantation)に有用な細胞として使用することができ
る。
【0031】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、中胚葉の骨形成細胞、軟骨細胞、脂肪細胞への分化だけではなく、内胚葉の肝細胞及び外胚葉の神経細胞と網膜関連細胞へも分化することができる。よって、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、多様な疾病を治療するのに利用され得る。
【0032】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、TIMP−2、TGF−β、RANTES CINC−3、EOTAXIN、GM−CSF、IFN−γ、IL−1b、IL−3、IL−6、IL−8、IL−10、IL12p40、IL13、IL−16、IP−10、Leptin、MCP−2、MIG、MIP−3a、b−NGFm、sTNFRI、PFGF−bbなどの多様なサイトカインまたはケモカインを分泌する。このようなサイトカインまたはケモカインを分泌することにより本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、多様な疾病を治療するのに利用され得る。
【0033】
このような特徴を有する幹細胞は、新規なものであって、本発明は、前記のような特徴を有する臍帯血由来の万能幹細胞を提供する。
【0034】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、骨形成細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、肝細胞、神経細胞を含めて多様な類型の細胞に分化することができ、それに対応されるように多様な疾病治療に利用することができる。よって、本発明は、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞またはこれから分化した細胞を含有する細胞治療剤を提供する。本発明の細胞治療剤は、例えば、神経疾患(例えば、退行性神経疾患)、骨関節炎(例えば、退行性関節炎、リウマチ
関節炎)、骨欠損(例えば、骨粗鬆症)、肝疾患(例えば、肝硬変)、心血管系疾患を含む多
様な疾病を治療するのに利用され得る。
【0035】
本発明の細胞治療剤は、細胞を保護及び維持する一つ以上の希釈剤を含むのが好ましい。前記希釈剤は、生理食塩水、PBS(Phosphate Buffered Saline)、HBSS(Hank's b
alanced salt solution)などの緩衝溶液、血漿または血液成分などがあり得る。
【0036】
一方、本発明は、新規な幹細胞培養用培地に関するものである。前記培地は、ウシ胎児血清(FBS)20%、bFGF(Fibroblast Growth Factor)1〜40ng/ml、アスコルビン酸0.1〜5.0μg/ml、EGF(Epidermal Growth Factor)1〜40ng/
ml、ヒドロコルチゾン0.1〜1μg/ml、IGF−I(Insulin-like Growth Factor-1)1〜40ng/mlまたはVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)1〜5ng/ml及びヘパリン20〜25μg/mlが添加され、必要に応じてGA−1000(Gentamycin Sulfate、Amphotericin-B)が更に添加されたEGM−2またはSNU−1培地を含む。
【0037】
前記幹細胞培養用培地は、新規なものであって、上述されたように、本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法においても用いられた。本発明の培地は、臍帯血由来の幹細胞を含めてすべての成体幹細胞の増殖に有用であるので、成体幹細胞を培養するのに利用することができる。
【0038】
また、本発明は、幹細胞を本発明の培地で培養して増殖させることを特徴とする幹細胞の培養方法に関するものである。前記幹細胞は、好ましくは成体幹細胞であり得る。
【0039】
一つの態様として、本発明の幹細胞培養用培地は、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞培養に利用され得る。本発明の臍帯血由来の万能幹細胞を本発明の培地で培養しながら紡錘形(spindle-shape)細胞の集落が確認されてから3〜5日後に継代培養するのが好ましい
。培養は、5%CO
2条件下で行うのが適合し、培養は、5〜30日間長続くことができるが、これに制限されるのではない。
【0040】
一方、本発明は、幹細胞を球培養(sphere culture)または三次元培養することを特徴とする幹細胞の幹性(stemness)を増加させる方法に関するものである。前記三次元培養の時にMEF(Mouse embryonic fibroblast cell)を用いることを特徴とするのが好ましい。
また、前記幹細胞は、成体幹細胞であるものを更に含むことができる。
【0041】
前記において、幹性増加とは、胚芽幹細胞様集落(Embryonic Stem Cell-like colony)
を形成するとか、Oct4、Sox2などのような転写調節因子をさらに強く発現することを意味する。