(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アノード電解質が、金属イオンを含み、前記アノードは、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化するように構成される、請求項1または2に記載の電気化学システム。
前記吸着剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン−1、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、ポリメチルアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、およびこれらの組合せから選択されるポリオレフィンである、請求項6に記載の電気化学システム。
前記金属イオンは銅であり、前記不飽和炭化水素はエチレンであり、前記1つまたは複数の有機化合物は、二塩化エチレン、クロロエタノール、ジクロロアセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒドおよびこれらの組合せから選択される、請求項5に記載の電気化学システム。
前記波形の多孔質メッシュアノードが、白金族金属の金属または合金、PtIr混合金属酸化物、亜鉛めっき白金、金属酸化物、金、タンタル、炭素、グラファイト、有機金属大環状化合物、またはそれらの組み合わせでコーティングされたものである、請求項1または2に記載の電気化学システム。
不飽和炭化水素または飽和炭化水素を、前記より高い酸化状態の前記金属イオンを含む前記アノード電解質と反応させて、ハロゲン化炭化水素を含む1つまたは複数の有機化合物および前記より低い酸化状態の金属イオンを生成するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
活性炭、アルミナ、活性シリカ、ポリマー、およびこれらの組合せから選択される吸着剤を用いて、前記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から、前記1つまたは複数の有機化合物を分離するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
前記吸着剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン−1、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、ポリメチルアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、およびこれらの組合せから選択されるポリオレフィンである、請求項18に記載の方法。
前記金属イオンは銅であり、前記不飽和炭化水素はエチレンであり、前記1つまたは複数の有機化合物は、二塩化エチレン、クロロエタノール、ジクロロアセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒドおよびこれらの組合せから選択される、請求項17に記載の方法。
前記波形の多孔質メッシュアノードは、前記アノードへのより大きい表面積;活性部位の増大;電圧の低下;前記アノード電解質による抵抗の減少または排除;電流密度の増大;前記アノードにおける改善された物質移動;またはこれらの組み合わせをさらにもたらす、請求項12または請求項13に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0068】
詳細な説明
本明細書において開示されているのは、アノード室におけるアノードによる金属イオンの酸化に関するシステムおよび方法であり、上記金属イオンは、より低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化される。
【0069】
当技術分野の当業者が認識することができるように、本電気化学的システムおよび方法は、代わりの同等の塩の溶液、例えば、塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液または塩化マグネシウム溶液または硫酸ナトリウム溶液または塩化アンモニウム溶液によって、カソード電解質中で同等のアルカリ性溶液、例えば、水酸化カリウムおよび/もしくは炭酸カリウムおよび/もしくは炭酸水素カリウム、または水酸化ナトリウムおよび/もしくは炭酸ナトリウムおよび/もしくは炭酸水素ナトリウム、または水酸化マグネシウムおよび/もしくは炭酸マグネシウムを生成するように構成され得る。したがって、このような同等物が本システムおよび方法に基づくか、または本システムおよび方法によって示唆されている限りにおいて、これらの同等物は出願の範囲内である。
【0070】
本発明をより詳細に記載する前に、本発明は記載する特定の実施形態に限定されない(これらは当然ながら変化し得るため)ことを理解すべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書において使用される用語法は、特定の実施形態のみを記載する目的であり、限定することは意図されていないこともまた理解すべきである。
【0071】
値の範囲が提供されている場合、その範囲の上限と下限との間のそれぞれのその間の値(文脈によって明らかにそれ以外のことの指示がない限り、下限の単位の10分の1まで)、およびその述べられた範囲内の任意の他の述べられた値またはその間の値は、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立にそのより小さな範囲内に含まれてもよく、本発明内にまた包含される(述べられた範囲内の任意の具体的に除外された限度を前提とする)。述べられた範囲が限度の一方または両方を含む場合、それらの含められた限度の一方または両方を除外した範囲もまた、本発明に含める。
【0072】
本明細書において数値と共に提示されるある特定の範囲は、「約」の数値と解釈し得る。「約」は、約が前に置かれる正確な数、およびこの用語が前に置かれる数に近いかまたはおおよそその数である数に対して文字通りの支持を提供する。ある数が具体的に記載した数に近い数かまたはおおよそその数であるかどうかを決定することにおいて、近いまたはおおよその一方的な(requited)数は、それが提示されている状況において、具体的に記載した数の実質的同等物を提供する数であり得る。
【0073】
他に定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または同等の任意の方法および材料はまた、本発明の実施または試験において使用することができるが、代表的な例示的方法および材料をここで記載する。
【0074】
本明細書において引用した全ての公開資料および特許は、それぞれの個々の公開資料または特許が参考として援用されていることが具体的にかつ個々に示されているかのように、参考として本明細書中に援用されており、方法および/または材料(これらの方法および/または材料と関連して、公開資料が引用される)を開示および記載するために参考として本明細書中に援用されている。任意の公開資料の引用は、出願日より前のその開示のためであり、先行発明に基づいて、本発明がこのような公開資料に先行する資格がないことの承認と解釈するべきではない。さらに、提供する公開資料の日付は、個々に確認する必要があり得る実際の公開の日付とは異なり得る。
【0075】
本明細書で使用する場合、および添付の特許請求において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によって明らかにそれ以外のことの指示がない限り、複数への言及を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、あらゆる任意選択の要素を除外するように作成され得ることもまた留意されたい。したがって、この記述は、クレーム要素の記載に関連して「単独で」、「のみ」などの排他的な用語の使用、または「消極的な」限定の使用に対する先行根拠として役立つことが意図される。
【0076】
当業者であればこの開示を読むと明らかなように、本明細書において記載および例示する個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなしに、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離してもよく、またはこれらと合わせてもよい、個別の成分および特徴を有する。任意の記載した方法は、記載した事象の順番または論理的に可能な任意の他の順番で行うことができる。
【0077】
組成物、方法、およびシステム
一態様において、電気化学セルのアノード室におけるより低い酸化状態からより高い酸化状態への金属イオンの酸化に関する方法およびシステムを提供する。より高い酸化状態を伴って形成される金属イオンは、そのままで使用してもよく、またはこれらに限定されないが、化学合成反応、還元反応などの商業目的で使用される。一態様において、本明細書に記載されている電気化学セルは、効率的および低電圧であるシステムを提供し、ここでアノードによって生成されるより高い酸化状態を有する金属化合物、例えば、金属ハロゲン化物、例えば、金属塩化物または金属硫酸塩は、これらに限定されないが、水素ガスからの塩化水素、塩酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸、または硫酸の発生、および/あるいは炭化水素からのハロ炭化水素またはスルホ炭化水素の発生などの他の目的に使用することができる。
【0078】
「ハロ炭化水素」または「ハロゲン化炭化水素」は、本明細書において使用する場合、ハロ置換炭化水素を含み、ハロは、許容される価数に基づいて炭化水素に結合することができる任意の数のハロゲンでよい。ハロゲンには、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードが含まれる。ハロ炭化水素の例には、クロロ炭化水素、ブロモ炭化水素、およびヨード炭化水素が含まれる。クロロ炭化水素には、これらに限定されないが、モノクロロ炭化水素、ジクロロ炭化水素、トリクロロ炭化水素などが含まれる。これらに限定されないが、金属臭化物および金属ヨウ化物などの金属ハロゲン化物について、アノード室によって生成されるより高い酸化状態を有する金属臭化物または金属ヨウ化物は、これらに限定されないが、臭化水素またはヨウ化水素の発生、および/あるいはこれらに限定されないが、モノブロモ炭化水素、ジブロモ炭化水素、トリブロモ炭化水素、モノヨード炭化水素、ジヨード炭化水素、トリヨード炭化水素などのブロモまたはヨード炭化水素の発生などの他の目的に使用することができる。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンは、商業的マーケットにおいてそのままで販売され得る。
【0079】
「スルホ炭化水素」は、本明細書において使用する場合、許容される価数に基づいて、−SO
3Hまたは−OSO
2OHの1つまたは複数で置換されている炭化水素を含む。
【0080】
本発明の電気化学セルは、より低い酸化状態の金属イオンが、アノード室においてより高い酸化状態の金属イオンに変換される、任意の電気化学セルでよい。このような電気化学セルにおいて、カソード反応は、カソード室においてアルカリを形成するか、または形成しない任意の反応でよい。このようなカソードは、電子を消費し、かつこれらに限定されないが、水酸化物イオンおよび水素ガスを形成する水の反応、または水酸化物イオンを形成する酸素ガスおよび水の反応、または水素ガスを形成する酸、例えば、塩酸からのプロトンの還元、または水を形成する塩酸からのプロトンおよび酸素ガスの反応を含む任意の反応を行う。
【0081】
いくつかの実施形態において、電気化学セルは、セルのカソード室におけるアルカリの生成を含み得る。カソード室において発生したアルカリは、商業目的でそのままで使用してもよく、または二価陽イオンで処理して、二価陽イオン含有カーボネート/ビカーボネートを形成してもよい。いくつかの実施形態において、カソード室において発生したアルカリを使用して、二酸化炭素を捕捉または捕獲し得る。二酸化炭素は、様々な産業プラントが排出する燃焼排ガス中に存在し得る。二酸化炭素は、カーボネートおよび/またはビカーボネート生成物の形態で捕捉され得る。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属を有する金属化合物は、アノード室から取り出されてもよく、当業者には公知の任意の商業的プロセスのために使用される。したがって、アノード電解質およびカソード電解質の両方は、商業目的で使用され得る生成物を発生させるために使用することができ、それによってより経済的、効率的で、エネルギー集約型でないプロセスを提供する。
【0082】
いくつかの実施形態において、アノード室により生成された金属化合物は、塩化水素、塩酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、またはヨウ化水素酸、硫酸、および/あるいはハロ炭化水素またはスルホ炭化水素の発生のために、それぞれ、水素ガス、不飽和炭化水素、または飽和炭化水素と反応させる前に、そのままで使用してもよく、または精製してもよい。いくつかの実施形態において、金属化合物は、水素ガスが発生する現場で使用してもよく、かつ/あるいはいくつかの実施形態において、アノード室から取り出した金属化合物は、水素ガスが発生し、水素ガスから塩化水素、塩酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、またはヨウ化水素酸が形成される場所に移動させてもよい。いくつかの実施形態において、金属化合物は、電気化学的システムにおいて形成され、かつこれらに限定されないがエチレンガスなどの不飽和炭化水素が発生するかまたは移動させられる現場で使用してもよく、かつ/あるいはいくつかの実施形態において、アノード室から取り出した金属化合物は、これらに限定されないがエチレンガスなどの不飽和炭化水素が発生するかまたは移動させられる場所に移動させてもよく、ハロ炭化水素、例えば、クロロ炭化水素がそれから形成される。いくつかの実施形態において、エチレンガス発生施設は、本発明の電気化学的システムと統合され、より高い酸化状態の金属化合物およびエチレンガスを同時に生成し、それらを互いに処理し、生成物、例えば、二塩化エチレン(EDC)を形成する。二塩化エチレンはまた、1,2−ジクロロエタン、ジクロロエタン、1,2−エチレンジクロリド、グリコールジクロリド、freon 150、borer sol、brocide、destruxol borer−sol、dichlor−mulsion、ダッチ液(Dutch oil)、またはgranosanとして公知であり得る。いくつかの実施形態において、本発明の電気化学的システムは、本発明のシステムおよび方法によって形成されるEDCがVCMおよび/またはPVC生成において使用されるように、塩化ビニルモノマー(VCM)生成施設またはポリ塩化ビニル(PVC)生成施設と統合されている。
【0083】
本明細書に記載されている電気化学的システムおよび方法は、これらに限定されないが、ガス拡散アノードを必要としないこと;より高いセル効率;より低い電圧;白金非含有アノード;二酸化炭素の捕捉;環境に配慮し環境にやさしい化学物質;および/または様々な商業的に実現可能な生成物の形成を含む、当技術分野において公知の従来の電気化学的システムを超えた1つまたは複数の利点を実現する。
【0084】
本発明のシステムおよび方法は、これらに限定されないが、アノードにおいて形成される金属塩、様々な他の化学物質を形成するために使用される金属塩、カソードにおいて形成されるアルカリ、様々な他の生成物を形成するために使用されるアルカリ、および/またはカソードにおいて形成される水素ガスなどの様々な生成物を生成する電気化学セルを提供する。このような生成物の全ては本明細書において定義してきており、このような化学物質は、低い電圧またはエネルギーおよび高い効率で作動する電気化学セルを使用して形成されるので、「環境に配慮した化学物質」と称してもよい。本明細書に記載されている低電圧またはよりエネルギー集約型でないプロセスは、同様の化学物質または生成物を作製する従来の方法と比較して、二酸化炭素のより少ない排出をもたらす。いくつかの実施形態において、これらに限定されないが、カーボネートおよびビカーボネート生成物などの化学物質または生成物は、カソードにおいて発生するアルカリ中での、燃焼排ガスからの二酸化炭素の捕獲によって形成される。このようなカーボネートおよびビカーボネート生成物は、汚染を低減させ、よりクリーンな環境を提供するため、「環境に配慮した化学物質」である。
【0085】
金属
「金属イオン」または「金属」は、本明細書において使用する場合、より低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換され得る任意の金属イオンを含む。金属イオンの例には、これらに限定されないが、鉄、クロム、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態において、金属イオンには、これらに限定されないが、鉄、銅、スズ、クロム、またはこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態において、金属イオンは、銅である。いくつかの実施形態において、金属イオンは、スズである。いくつかの実施形態において、金属イオンは、鉄である。いくつかの実施形態において、金属イオンは、クロムである。いくつかの実施形態において、金属イオンは、白金である。「酸化状態」は、本明細書において使用する場合、物質中の原子の酸化の程度を含む。例えば、いくつかの実施形態において、酸化状態は、イオン上の正味電荷である。アノードにおける金属イオンの反応のいくつかの例は、下記の表Iに示す通りである(SHEは、標準水素電極である)。アノード電位の理論値をまた示す。電解質の条件、pH、濃度などによってこれらの電圧からのいくらかの変動が起こってもよく、このような変動は十分に本発明の範囲内であることを理解すべきである。
【表1-1】
【0086】
金属イオンは、金属の化合物または金属の合金またはこれらの組合せとして存在し得る。いくつかの実施形態において、金属に結合している陰イオンは、電解質の陰イオンと同じである。例えば、電解質として使用される塩化ナトリウムまたは塩化カリウムに対して、これらに限定されないが、塩化鉄、塩化銅、塩化スズ、塩化クロムなどの金属塩化物を、金属化合物として使用する。例えば、電解質として使用される硫酸ナトリウムまたは硫酸カリウムに対して、これらに限定されないが、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸スズ、硫酸クロムなどの金属硫酸塩を、金属化合物として使用する。例えば、電解質として使用される臭化ナトリウムまたは臭化カリウムに対して、これらに限定されないが、臭化鉄、臭化銅、臭化スズなどの金属臭化物を、金属化合物として使用する。
【0087】
いくつかの実施形態において、電解質の陰イオンは、金属の陰イオンと部分的にまたは完全に異なってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、電解質の陰イオンは、硫酸でよく、一方、金属の陰イオンは、塩化物でよい。このような実施形態において、電気化学セルにおいてより低い濃度の塩化物イオンを有することが望ましくてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、電解質の塩化物および金属の塩化物に起因するアノード電解質中のより高い濃度の塩化物イオンは、アノード電解質中の望ましくないイオン種をもたらし得る。これは、塩化物以外のイオンを含有する電解質を利用することによって回避し得る。いくつかの実施形態において、アノード電解質は、金属陰イオンと同様のイオン、および金属イオンとは異なる陰イオンの組合せでよい。例えば、金属陰イオンが塩化物であるとき、アノード電解質は、硫酸イオンおよび塩化物イオンのミックスでよい。このような実施形態において、金属塩を溶解するために電解質中に十分な濃度の塩化物イオンを有するが、望ましくないイオン種形成をもたらすほど濃度が高くないことが望ましくてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、電解質および/または金属化合物は、所望の最終生成物に基づいて選択される。例えば、水素ガスと金属化合物との間の反応からHClが所望である場合、金属塩化物が金属化合物として使用され、塩化ナトリウムが電解質として使用される。例えば、金属化合物と炭化水素との間の反応から臭素化炭化水素が所望である場合、金属臭化物が金属化合物として使用され、臭化ナトリウムまたは臭化カリウムが電解質として使用される。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている電気化学的システムにおいて使用される金属イオンは、アノード電解質中の金属の溶解性、および/またはより低い酸化状態からより高い酸化状態への金属酸化に対して望ましいセル電圧に基づいて選択され得る。例えば、Cr
2+をCr
3+へと酸化させるのに必要とされる電圧は、Sn
2+からSn
4+に必要とされる電圧より低くてもよいが、しかし、水素ガスとCr
3+との反応によって形成されるHClの量は、スズ分子毎に得られる2個の塩素原子によってSn
4+を伴って形成されるHClより低くてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、より低いセル電圧が望ましくてもよい場合、これらに限定されないがCr
2+などの、より低いセル電圧をもたらす金属イオン酸化を使用し得る。例えば、カソード電解質によって生成されるアルカリによって二酸化炭素が捕獲される反応について、より低い電圧が望ましくてもよい。いくつかの実施形態において、より高い量の生成物、例えば、塩酸が望ましくてもよい場合、相対的により高い電圧にも関わらずより多い量の生成物をもたらす金属イオン(これらに限定されないがSn
2+など)を使用し得る。例えば、セルの電圧は、クロムシステムと比較して、スズシステムについてより高くてもよいが、しかし、Sn
4+を伴って形成される酸の濃度は、システムのより高い電圧を相殺し得る。本明細書に記載されているシステムおよび方法によって形成される生成物、例えば、酸、ハロ炭化水素、スルホ炭化水素、カーボネート、ビカーボネートなどは、同じ生成物を作製する従前より公知の方法に必要とされるエネルギー入力と比較して、よりエネルギー集約型でないプロセスによって作製されるので、まだ「環境に配慮した」化学物質であることが理解される。
【0090】
いくつかの実施形態において、より低い酸化状態の金属イオンおよびより高い酸化状態の金属イオンは、両方ともアノード電解質中に存在する。いくつかの実施形態において、アノード電解質中のより低い酸化状態およびより高い酸化状態の両方の金属イオンを有することが望ましくてもよい。アノード電解質中のより低い酸化状態およびより高い酸化状態の金属イオンの適切な比を、本明細書において記載してきた。より高い酸化状態の金属イオンと混合したより低い酸化状態の金属イオンは、電気化学的システムにおけるより低い電圧、ならびに水素ガスまたは炭化水素との対応する触媒反応における高収率および高選択性を支援し得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンは、混合金属イオンである。例えば、より低い酸化状態の銅イオンおよびより高い酸化状態の銅イオンを含有するアノード電解質はまた、これらに限定されないが鉄などの別の金属イオンを含有し得る。いくつかの実施形態において、アノード電解質中に第2の金属イオンが存在することは、触媒反応と組み合わせて、電気化学反応の総エネルギーを低下させることにおいて有益であり得る。
【0092】
本発明のシステムおよび方法において使用し得る金属化合物のいくつかの例には、これらに限定されないが、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、硫酸スズ(II)、硝酸スズ(II)、塩化スズ(II)、臭化スズ(II)、ヨウ化スズ(II)、硫酸クロム(III)、硝酸クロム(III)、塩化クロム(II)、臭化クロム(II)、ヨウ化クロム(II)、塩化亜鉛(II)、臭化亜鉛(II)などが含まれる。
【0093】
リガンド
いくつかの実施形態において、添加物、例えば、リガンドを金属イオンと併せて使用し、アノード室の内側の金属イオン酸化の効率を改善し、かつ/あるいはアノード室の内側/外側の金属イオンの触媒反応(これらに限定されないが水素ガスとの、不飽和炭化水素との、および/または飽和炭化水素との反応など)を改善する。いくつかの実施形態において、リガンドを、アノード電解質に金属と一緒に加える。いくつかの実施形態において、リガンドは、金属イオンに結合している。いくつかの実施形態において、リガンドは、共有結合、イオン結合および/または配位結合によって金属イオンに結合している。いくつかの実施形態において、リガンドは、ファンデルワールス引力によって金属イオンに結合している。
【0094】
したがって、いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、リガンドをアノード電解質に加えるステップであって、リガンドが、金属イオンと相互作用するステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、リガンドをアノード電解質に加えるステップであって、リガンドが、金属イオンと相互作用するステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップであって、カソードが、水酸化物イオン、水、および/または水素ガスを生成するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、リガンドをアノード電解質に加えるステップであって、リガンドが、金属イオンと相互作用するステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップであって、カソードが、水酸化物イオン、水、および/または水素ガスを生成するステップと、リガンドおよびより高い酸化状態の金属イオンを含有するアノード電解質と、不飽和炭化水素、水素ガス、飽和炭化水素、またはこれらの組合せとを接触させるステップとを含む、方法を提供する。
【0095】
いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させるステップと、アノードにおいて金属ハロゲン化物をより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、リガンドを金属ハロゲン化物に加えるステップであって、リガンドが、金属イオンと相互作用するステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップであって、カソードが、水酸化物イオン、水、および/または水素ガスを生成するステップと、不飽和および/または飽和炭化水素をより高い酸化状態の金属ハロゲン化物でハロゲン化するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物は、金属塩化物であり、ハロゲン化反応は、塩素化である。いくつかの実施形態において、このような方法は、水素ガス生成カソードを含有する。いくつかの実施形態において、このような方法は、酸素脱分極化カソードを含有する。いくつかの実施形態において、このような方法における不飽和炭化水素は、置換アルケンまたはC
nH
2nとしての非置換アルケン(nは、2〜20である)(またはアルキン、もしくは本明細書においてさらに記載しているような式I)、例えば、エチレン、プロピレン、ブテンなどである。いくつかの実施形態において、このような方法における飽和炭化水素は、置換アルカンまたはC
nH
2n+2としての非置換アルカン(nは、2〜20である)(または本明細書においてさらに記載しているような式III)、例えば、メタン、エタン、プロパンなどである。いくつかの実施形態において、このような方法における金属は、金属塩化物、例えば、塩化銅である。いくつかの実施形態において、このような方法は、100kJ/mol超または150kJ/mol超または200kJ/mol超または100〜250kJ/molの正味のエネルギー削減をもたらすか、あるいは上記方法は、1V超の電圧削減をもたらす(下記および
図8Cに記載)。いくつかの実施形態において、このような方法における不飽和炭化水素は、これらに限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン(シスおよび/もしくはトランス)、ペンテンなどのC
2〜C
5アルケン、またはこれらに限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン(シスおよび/もしくはトランス)などのC
2〜C
4アルケンである。いくつかの実施形態において、このような方法における不飽和炭化水素は、エチレンであり、このような方法における金属イオンは、金属塩化物、例えば、塩化銅である。このような方法において、エチレンのハロゲン化によって、EDCが形成される。いくつかの実施形態において、このような方法における飽和炭化水素は、エタンであり、このような方法における金属イオンは、金属塩化物、例えば、塩化白金または塩化銅である。このような方法において、エタンのハロゲン化によって、クロロエタンまたはEDCが形成される。
【0096】
いくつかの実施形態において、アノード電解質と接触しており、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと;金属イオンと相互作用するように構成されている、アノード電解質中のリガンドと;カソード電解質と接触しているカソードとを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、アノード電解質と接触しており、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと;金属イオンと相互作用するように構成されている、アノード電解質中のリガンドと;水酸化物イオン、水、および/または水素ガスを生成するように構成されている、カソード電解質と接触しているカソードとを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、アノード電解質と接触しており、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと;金属イオンと相互作用するように構成されている、アノード電解質中のリガンドと;水酸化物イオン、水、および/または水素ガスを形成するように構成されている、カソード電解質と接触しているカソードと;リガンドおよびより高い酸化状態の金属イオンを含有するアノード電解質と、不飽和炭化水素、水素ガス、飽和炭化水素、またはこれらの組合せとを反応させるように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、このようなシステムは、酸素脱分極化カソードを含有する。いくつかの実施形態において、このようなシステムは、水素ガス生成カソードを含有する。いくつかの実施形態において、このようなシステムは、100kJ/mol超または150kJ/mol超または200kJ/mol超または100〜250kJ/molの正味のエネルギー削減をもたらすか、あるいはシステムは、1V超の電圧削減をもたらす(下記および
図8Cに記載)。いくつかの実施形態において、このようなシステムにおける不飽和炭化水素は、これらに限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン(シスおよび/もしくはトランス)、ペンテンなどのC
2〜C
5アルケン、またはこれらに限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン(シスおよび/もしくはトランス)などのC
2〜C
4アルケンである。いくつかの実施形態において、このようなシステムにおける不飽和炭化水素は、エチレンである。いくつかの実施形態において、このようなシステムにおける金属は、金属塩化物、例えば、塩化銅である。いくつかの実施形態において、このようなシステムにおける不飽和炭化水素は、エチレンであり、このようなシステムにおける金属イオンは、金属塩化物、例えば、塩化銅である。このようなシステムにおいて、エチレンのハロゲン化によって、EDCが形成される。いくつかの実施形態において、このようなシステムにおける飽和炭化水素は、エタンであり、このようなシステムにおける金属イオンは、金属塩化物、例えば、塩化白金、塩化銅などである。このようなシステムにおいて、エタンのハロゲン化によって、クロロエタンおよび/またはEDCが形成される。
【0097】
いくつかの実施形態において、リガンドは、下記の1つまたは複数をもたらす。不飽和炭化水素、飽和炭化水素、または水素ガスに対する金属イオンの反応性の増強、不飽和もしくは飽和炭化水素のハロゲン化に対する金属イオンの選択性の増強、金属イオンから不飽和炭化水素、飽和炭化水素、または水素ガスへのハロゲンの移動の増強、電気化学セルの酸化還元電位の低減、水性媒体中の金属イオンの溶解性の増強、電気化学セルにおけるカソード電解質への金属イオンの膜横断の低減、電気化学セルおよび/または反応器の腐食の低減、水素ガスとの反応の後の酸性溶液からの金属イオンの分離の増強(例えば、サイズ排除膜)、ハロゲン化炭化水素溶液からの金属イオンの分離の増強(例えば、サイズ排除膜)、ならびにこれらの組合せ。
【0098】
いくつかの実施形態において、金属イオンへのリガンドの結合は、セルにおけるイオン交換膜を通る金属イオンの移行を防止するのに十分により大きく金属イオンのサイズを増加させる。いくつかの実施形態において、リガンドに結合している金属イオンの、アノード電解質からカソード電解質への移行が防止されるように、電気化学セルにおける陰イオン交換膜を、サイズ排除膜と併せて使用し得る。このような膜は、本明細書中の以下に記載されている。いくつかの実施形態において、金属イオンへのリガンドの結合は、水性媒体中の金属イオンの溶解性を増加させる。いくつかの実施形態において、金属イオンへのリガンドの結合は、電気化学セルおよび反応器における金属の腐食を低減する。いくつかの実施形態において、金属イオンへのリガンドの結合は、反応後に酸からまたはハロゲン化炭化水素からの金属イオンの分離を促進するのに十分により大きく金属イオンのサイズを増加させる。いくつかの実施形態において、リガンドの存在および/または金属イオンへのリガンドの結合は、溶液中の金属イオンの様々なハロゲン化種の形成を防止し、所望の種のみの形成を有利にし得る。例えば、銅イオン溶液中のリガンドの存在は、銅イオンの様々なハロゲン化種、例えば、これらに限定されないが、[CuCl
3]
2−またはCuCl
20などの形成を制限し得るが、Cu
2+/Cu
+イオンの形成を有利にし得る。いくつかの実施形態において、金属イオン溶液中のリガンドの存在および/または結合は、上記の利点の1つまたは複数を提供することによってセルの全体的な電圧を低減する。
【0099】
「リガンド」は、本明細書において使用する場合、金属イオンの特性を増強することができる任意のリガンドを含む。いくつかの実施形態において、リガンドには、これらに限定されないが、置換または非置換脂肪族ホスフィン、置換または非置換芳香族ホスフィン、置換または非置換アミノホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換環状窒素、置換または非置換脂肪族硫黄、置換または非置換環状硫黄、置換または非置換複素環、および置換または非置換複素環式芳香族化合物が含まれる。
【0100】
置換または非置換脂肪族窒素
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Aの置換または非置換脂肪族窒素であり、
【化3】
式中、nおよびmは、独立に、0〜2であり、RおよびR
1は、独立に、H、アルキル、または置換アルキルである。いくつかの実施形態において、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、またはペンチルである。いくつかの実施形態において、置換アルキルは、アルケニル、ハロゲン、アミン、置換アミン、およびこれらの組合せを含む基の1つまたは複数で置換されているアルキルである。いくつかの実施形態において、置換アミンは、水素および/またはアルキルから選択される基で置換されている。
【0101】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Bの置換または非置換脂肪族窒素であり、
【化4】
式中、RおよびR
1は、独立に、H、アルキル、または置換アルキルである。いくつかの実施形態において、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、またはペンチルである。いくつかの実施形態において、置換アルキルは、アルケニル、ハロゲン、アミン、置換アミン、およびこれらの組合せを含む基の1つまたは複数で置換されているアルキルである。いくつかの実施形態において、置換アミンは、水素および/またはアルキルから選択される基で置換されている。
【0102】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Bの置換または非置換脂肪族窒素ドナーであり、RおよびR
1は、独立に、H、C
1〜C
4アルキル、または置換C
1〜C
4アルキルである。いくつかの実施形態において、C
1〜C
4アルキルは、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、またはi−ブチルである。いくつかの実施形態において、置換C
1〜C
4アルキルは、アルケニル、ハロゲン、アミン、置換アミン、およびこれらの組合せを含む基の1つまたは複数で置換されているC
1〜C
4アルキルである。いくつかの実施形態において、置換アミンは、水素および/またはC
1〜C
3アルキルから選択される基で置換されている。
【0103】
リガンドの濃度は、これらに限定されないが、金属イオンの濃度、リガンドの溶解性などを含む様々なパラメーターに基づいて選択され得る。
【0104】
O、S、PまたはNヘテロ原子を有する置換または非置換クラウンエーテル
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Cの置換または非置換クラウンエーテルであり、
【化5】
式中、Rは、独立に、O、S、P、またはNであり、nは、0または1である。
【0105】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Cの置換または非置換クラウンエーテルであり、Rは、Oであり、nは、0または1である。いくつかの実施形態において、リガンドは、式Cの置換または非置換クラウンエーテルであり、Rは、Sであり、nは、0または1である。いくつかの実施形態において、リガンドは、式Cの置換または非置換クラウンエーテルであり、Rは、Nであり、nは、0または1である。いくつかの実施形態において、リガンドは、式Cの置換または非置換クラウンエーテルであり、Rは、Pであり、nは、0または1である。いくつかの実施形態において、リガンドは、式Cの置換または非置換クラウンエーテルであり、Rは、OまたはSであり、nは、0または1である。いくつかの実施形態において、リガンドは、式Cの置換または非置換クラウンエーテルであり、Rは、OまたはNであり、nは、0または1である。いくつかの実施形態において、リガンドは、式Cの置換または非置換クラウンエーテルであり、Rは、NまたはSであり、nは、0または1である。いくつかの実施形態において、リガンドは、式Cの置換または非置換クラウンエーテルであり、Rは、NまたはPであり、nは、0または1である。
【0106】
置換または非置換ホスフィン
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Dの置換または非置換ホスフィン、あるいはその酸化物であり、
【化6】
式中、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、H、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミン、置換アミン、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、および置換ヘテロシクロアルキルである。
【0107】
式Dの酸化物の一例は、
【化7】
であり、式中、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、H、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミン、置換アミン、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、および置換ヘテロシクロアルキルである。
【0108】
式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アルキルおよび置換アルキルである。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アルキルおよび置換アルキルであり、置換アルキルは、アルコキシ、置換アルコキシ、アミンおよび置換アミンから選択される基で置換されている。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アルキルおよび置換アルキルであり、置換アルキルは、アルコキシおよびアミンから選択される基で置換されている。
【0109】
式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アルコキシおよび置換アルコキシである。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アルコキシおよび置換アルコキシであり、置換アルコキシは、アルキル、置換アルキル、アミン、および置換アミンから選択される基で置換されている。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アルコキシおよび置換アルコキシであり、置換アルコキシは、アルキルおよびアミンから選択される基で置換されている。
【0110】
式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アリールおよび置換アリールである。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アリールおよび置換アリールであり、置換アリールは、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミン、および置換アミンから選択される基で置換されている。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アリールおよび置換アリールであり、置換アリールは、アルキル、アルコキシ、およびアミンから選択される基で置換されている。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アリールおよび置換アリールであり、置換アリールは、アルキルおよびアルコキシから選択される基で置換されている。
【0111】
式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールである。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールであり、置換ヘテロアリールは、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミンおよび置換アミンから選択される基で置換されている。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールであり、置換ヘテロアリールは、アルキル、アルコキシおよびアミンから選択される基で置換されている。
【0112】
式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、シクロアルキルおよび置換シクロアルキルである。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、シクロアルキルおよび置換シクロアルキルであり、置換シクロアルキルは、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミンおよび置換アミンから選択される基で置換されている。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、シクロアルキルおよび置換シクロアルキルであり、置換シクロアルキルは、アルキル、アルコキシおよびアミンから選択される基で置換されている。
【0113】
式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルである。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルであり、置換ヘテロシクロアルキルは、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミンおよび置換アミンから選択される基で置換されている。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルであり、置換ヘテロシクロアルキルは、アルキル、アルコキシおよびアミンから選択される基で置換されている。
【0114】
式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アミンおよび置換アミンである。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アミンおよび置換アミンであり、置換アミンは、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、および置換アルコキシから選択される基で置換されている。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アミンおよび置換アミンであり、置換アミンは、アルキル、およびアルコキシから選択される基で置換されている。式Dの化合物またはその酸化物のいくつかの実施形態において、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、アミンおよび置換アミンであり、置換アミンは、アルキルで置換されている。
【0115】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Dの置換または非置換ホスフィンあるいはその酸化物であり、
【化8】
式中、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、H、アルキル;アルコキシ、置換アルコキシ、アミン、および置換アミンから選択される基で置換されている置換アルキル;アリール;アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミン、および置換アミンから選択される基で置換されている置換アリール;ヘテロアリール;アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミン、および置換アミンから選択される基で置換されている置換ヘテロアリール;アミン;アルキル、置換アルキル、アルコキシ、および置換アルコキシから選択される基で置換されている置換アミン;シクロアルキル;アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミン、および置換アミンから選択される基で置換されている置換シクロアルキル;ヘテロシクロアルキル;ならびにアルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミン、および置換アミンから選択される基で置換されている置換ヘテロシクロアルキルである。
【0116】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Dの置換または非置換ホスフィンあるいはその酸化物であり、
【化9】
式中、R
1、R
2、およびR
3は、独立に、H、アルキル;アルコキシおよびアミンから選択される基で置換されている置換アルキル;アリール;アルキル、アルコキシ、およびアミンから選択される基で置換されている置換アリール;ヘテロアリール;アルキル、アルコキシ、およびアミンから選択される基で置換されている置換ヘテロアリール;アミン;アルキル、およびアルコキシから選択される基で置換されている置換アミン;シクロアルキル;アルキル、アルコキシ、およびアミンから選択される基で置換されている置換シクロアルキル;ヘテロシクロアルキル;ならびにアルキル、アルコキシ、およびアミンから選択される基で置換されている置換ヘテロシクロアルキルである。
【0117】
置換または非置換ピリジン
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Eの置換または非置換ピリジンであり、
【化10】
式中、R
1およびR
2は、独立に、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミン、置換アミン、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、および置換ヘテロシクロアルキルである。
【0118】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Eの置換または非置換ピリジンであり、
【化11】
式中、R
1およびR
2は、独立に、H、アルキル、置換アルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミン、および置換アミンである。
【0119】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Eの置換または非置換ピリジンであり、R
1およびR
2は、独立に、H、アルキル、および置換アルキルであり、置換アルキルは、アルコキシ、置換アルコキシ、アミン、および置換アミンから選択される基で置換されている。いくつかの実施形態において、リガンドは、式Eの置換または非置換ピリジンであり、R
1およびR
2は、独立に、H、アルキル、および置換アルキルであり、置換アルキルは、アミンおよび置換アミンから選択される基で置換されており、置換アミンは、アルキル、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールで置換されている。
【0120】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Eの置換または非置換ピリジンであり、R
1およびR
2は、独立に、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、リガンドは、式Eの置換または非置換ピリジンであり、R
1およびR
2は、独立に、ヘテロアリール、およびアルキル、アルコキシまたはアミンで置換されている置換ヘテロアリールである。
【0121】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Eの置換または非置換ピリジンであり、R
1およびR
2は、独立に、アミンおよび置換アミンである。いくつかの実施形態において、リガンドは、式Eの置換または非置換ピリジンであり、R
1およびR
2は、独立に、アミンおよび置換アミンであり、置換アミンは、アルキル、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールで置換されている。
【0122】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Eの置換または非置換ピリジンであり、
【化12】
式中、R
1およびR
2は、独立に、H;アルキル;アミンおよび置換アミンから選択される基で置換されている置換アルキル;ヘテロアリール;アルキル、アルコキシまたはアミンで置換されている置換ヘテロアリール;アミン;およびアルキル、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールで置換されている置換アミンである。
【0123】
置換または非置換ジニトリル
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Fの置換または非置換ジニトリルであり、
【化13】
式中、Rは、水素、アルキル、または置換アルキルであり、nは、0〜2であり、mは、0〜3であり、kは、1〜3である。
【0124】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Fの置換または非置換ジニトリルであり、Rは、水素、アルキル、あるいはアルコキシまたはアミンで置換されている置換アルキルであり、nは、0〜1であり、mは、0〜3であり、kは、1〜3である。
【0125】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式Fの置換または非置換ジニトリルであり、Rは、水素またはアルキルであり、nは、0〜1であり、mは、0〜3であり、kは、1〜3である。
【0126】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド;ならびに金属イオンを含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0127】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド;ならびに鉄、クロム、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せから選択される金属イオンを含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0128】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド、金属イオン;ならびに塩を含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0129】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド;鉄、クロム、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せから選択される金属イオン;ならびに塩を含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0130】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド;鉄、クロム、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せから選択される金属イオン;ならびに塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム、またはこれらの組合せを含む塩を含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0131】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド;金属イオン;ならびに塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム、またはこれらの組合せを含む塩を含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0132】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド、金属イオン;塩;ならびに不飽和または飽和炭化水素を含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0133】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド;鉄、クロム、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せから選択される金属イオン;塩;ならびに不飽和または飽和炭化水素を含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0134】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド;鉄、クロム、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せから選択される金属イオン;塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム、またはこれらの組合せを含む塩;ならびに不飽和または飽和炭化水素を含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0135】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド;金属イオン;塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム、またはこれらの組合せを含む塩;ならびに不飽和または飽和炭化水素を含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0136】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド;金属イオン;塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム、またはこれらの組合せを含む塩;ならびにエチレン、プロピレン、ブチレン、エタン、プロパン、ブタン、およびこれらの組合せから選択される不飽和または飽和炭化水素を含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0137】
一態様において、置換または非置換ホスフィン、置換または非置換クラウンエーテル、置換または非置換脂肪族窒素、置換または非置換ピリジン、置換または非置換ジニトリル、およびこれらの組合せから選択されるリガンド;鉄、クロム、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せから選択される金属イオン;塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム、またはこれらの組合せを含む塩;ならびにエチレン、プロピレン、ブチレン、エタン、プロパン、ブタン、およびこれらの組合せから選択される不飽和または飽和炭化水素を含む水性媒体を含む組成物を提供する。
【0138】
本明細書において提供する方法およびシステムのいくつかの実施形態において、リガンドは、
スルホン化バソクプロイン(bathocuprine);
ピリジン;
トリス(2−ピリジルメチル)アミン;
グルタロニトリル;
イミノジアセトニトリル;
マロノニトリル;
スクシノニトリル(succininitrile);
トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン;
トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン;
トリ(2−フリル)ホスフィン;
トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン;
ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィン;
トリス(N,N−テトラメチレン)リン酸トリアミド;
ジ−tert−ブチルN,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト;
ジエチルホスホロアミデート;
ヘキサメチルホスホルアミド;
ジエチレントリアミン;
トリス(2−アミノエチル)アミン;
N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン;
15−クラウン−5;
1,4,8,11−テトラチアシクロテトラデカン;および
その塩、または立体異性体である。
【0139】
いくつかの実施形態において、金属イオン溶液を含むアノード電解質にリガンドを加えるステップと、これらに限定されないが、不飽和炭化水素、飽和炭化水素、または水素ガスに対する金属イオンの反応性の増強、不飽和もしくは飽和炭化水素のハロゲン化に対する金属イオンの選択性の増強、金属イオンから不飽和炭化水素、飽和炭化水素、または水素ガスへのハロゲンの移動の増強、電気化学セルの酸化還元電位の低減、水性媒体中の金属イオンの溶解性の増強、電気化学セルにおけるカソード電解質への金属イオンの膜横断の低減、電気化学セルおよび/または反応器の腐食の低減、水素ガスとの反応の後の酸性溶液からの金属イオンの分離の増強、ハロゲン化炭化水素溶液からの金属イオンの分離の増強、ならびにこれらの組合せを含む特性の1つまたは複数をもたらすステップとを含む、リガンドを使用する方法を提供する。
【0140】
いくつかの実施形態において、電気化学セルの効率を改善するステップを含む、方法を提供し、電気化学セルは、金属イオンを含むアノード電解質と接触しているアノードを含み、アノードは、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させる。いくつかの実施形態において、効率は、電気化学セルに印加される電圧に関係がある。
【0141】
本明細書において使用する場合、「アルケニル」は、2〜10個の炭素原子、いくつかの実施形態において、2〜6個の炭素原子または2〜4個の炭素原子を有し、少なくとも1つのビニル不飽和(>C=C<)部位を有する直鎖または分枝鎖状ヒドロカルビルを指す。例えば、エテニル、プロペニル、および1,3−ブタジエニルなど。
【0142】
本明細書において使用する場合、「アルコキシ」は、−O−アルキルを指し、アルキルは、本明細書において定義する。アルコキシには、例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、sec−ブトキシ、およびn−ペントキシが含まれる。
【0143】
本明細書において使用する場合、「アルキル」は、1〜10個の炭素原子、いくつかの実施形態において、1〜6個の炭素原子を有する一価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。「C
x〜C
yアルキル」は、x〜y個の炭素原子を有するアルキル基を指す。この用語は、例として、直鎖および分枝鎖状ヒドロカルビル基、例えば、メチル(CH
3−)、エチル(CH
3CH
2−)、n−プロピル(CH
3CH
2CH
2−)、イソプロピル((CH
3)
2CH−)、n−ブチル(CH
3CH
2CH
2CH
2−)、イソブチル((CH
3)
2CHCH
2−)、sec−ブチル((CH
3)(CH
3CH
2)CH−)、t−ブチル((CH
3)
3C−)、n−ペンチル(CH
3CH
2CH
2CH
2CH
2−)、およびネオペンチル((CH
3)
3CCH
2−)を含む。
【0144】
本明細書において使用する場合、「アミノ」または「アミン」は、基−NH
2を指す。
【0145】
本明細書において使用する場合、「アリール」とは、6〜14個の炭素原子(環ヘテロ原子を有さない)の芳香族基を指し、この芳香族基は、単一の環(例えば、フェニル)または複数の縮合した(縮合)環(例えば、ナフチルもしくはアントリル)を有する。
【0146】
本明細書において使用する場合、「シクロアルキル」とは、3〜14個の炭素原子(環ヘテロ原子を有さない)の飽和または部分飽和環式基を指し、この飽和または部分飽和環式基は、単一の環、または縮合、架橋、およびスピロ環系を含む複数の環を有する。シクロアルキル基の例には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、およびシクロヘキセニルが含まれる。
【0147】
本明細書において使用する場合、「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指す。
【0148】
本明細書において使用する場合、「ヘテロアリール」は、酸素、窒素、および硫黄からなる群から選択される1〜6個のヘテロ原子の芳香族基を指し、単一の環(例えば、フラニル)ならびに複数の環系(例えば、ベンゾイミダゾール−2−イルおよびベンゾイミダゾール−6−イル)を含む。ヘテロアリールには、これらに限定されないが、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンゾフラニル、テトラヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリル、キナゾリノニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、またはベンゾチエニルが含まれる。
【0149】
本明細書において使用する場合、「ヘテロシクロアルキル」は、窒素、硫黄、または酸素からなる群から選択される1〜5個のヘテロ原子を有する飽和または部分飽和の環式基を指し、単一の環ならびに複数の環系(縮合、架橋、およびスピロ環系を含む)を含む。ヘテロシクリルには、これらに限定されないが、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、N−メチルピペリジン−3−イル、ピペラジニル、N−メチルピロリジン−3−イル、3−ピロリジニル、2−ピロリドン−1−イル、モルホリニル、およびピロリジニルが含まれる。
【0150】
本明細書において使用する場合、「置換アルコキシ」は、−O−置換アルキルを指し、置換アルキルは、本明細書に定義されている通りである。
【0151】
本明細書において使用する場合、「置換アルキル」は、アルケニル、ハロゲン、−OH、−COOH、アミノ、置換アミノからなる群から選択される1〜5個、いくつかの実施形態において、1〜3個または1〜2個の置換基を有するアルキル基を指し、前記置換基は、本明細書に定義されている通りである。
【0152】
本明細書において使用する場合、「置換アミノ」または「置換アミン」は、基−NR
10R
11を指し、R
10およびR
11は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールからなる群から独立に選択される。
【0153】
本明細書において使用する場合、「置換アリール」は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミン、置換アミン、アルケニル、ハロゲン、−OH、および−COOHからなる群から選択される1〜8個、いくつかの実施形態において、1〜5個、1〜3個、または1〜2個の置換基で置換されているアリール基を指し、前記置換基は、本明細書に定義されている通りである。
【0154】
本明細書において使用する場合、「置換シクロアルキル」は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミン、置換アミン、アルケニル、ハロゲン、−OH、および−COOHからなる群から選択される1〜8個、または1〜5個、またはいくつかの実施形態において、1〜3個の置換基を有する、本明細書に定義されているようなシクロアルキル基を指し、前記置換基は、本明細書に定義されている通りである。
【0155】
本明細書において使用する場合、「置換ヘテロアリール」は、置換アリールについて定義した置換基からなる群から選択される1〜5個、または1〜3個、または1〜2個の置換基で置換されているヘテロアリール基を指す。
【0156】
本明細書において使用する場合、「置換ヘテロシクロアルキル」は、置換シクロアルキルについて定義したような置換基の1〜5個、またはいくつかの実施形態において、1〜3個で置換されている、本明細書に定義されているような複素環基を指す。
【0157】
上で定義した全ての置換されている基において、それら自体にさらなる置換基を伴う置換基を定義することによって得られるポリマー(例えば、それ自体が置換アリール基で置換されている、置換基として置換アリール基を有する置換アリールなど)は、本明細書に含まれることは意図されないことが理解される。このような場合、このような置換の最大数は3である。同様に、上記の定義は、許容されない置換パターン(例えば、5個のクロロ基で置換されているメチル)を含むことを意図しないことが理解される。このような許容されない置換パターンは、当業者には周知である。
【0158】
いくつかの実施形態において、電気化学セルにおけるリガンドの濃度は、より低い酸化状態および/またはより高い酸化状態の金属イオンの濃度に依存する。いくつかの実施形態において、リガンドの濃度は、0.25M〜5Mの間;または0.25M〜4Mの間;または0.25M〜3Mの間;または0.5M〜5Mの間;または0.5M〜4Mの間;または0.5M〜3Mの間;または0.5M〜2.5Mの間;または0.5M〜2Mの間;または0.5M〜1.5Mの間;または0.5M〜1Mの間;または1M〜2Mの間;または1.5M〜2.5Mの間;または1.5M〜2Mの間である。
【0159】
いくつかの実施形態において、リガンドの濃度とCu(I)イオンの濃度の比は、1:1〜4:1の間;または1:1〜3:1の間;または1:1〜2:1の間であるか、あるいは1:1、または2:1、または3:1、または4:1である。
【0160】
いくつかの実施形態において、触媒反応、すなわち、より高い酸化状態の金属イオンと不飽和または飽和炭化水素との反応において使用される溶液、および電気化学反応において使用される溶液は、4.5M〜7Mの間のより高い酸化状態の金属イオン、例えば、Cu(II)の濃度、0.25M〜1.5Mの間のより低い酸化状態の金属イオン、例えば、Cu(I)の濃度、および0.25M〜6Mの間のリガンドの濃度を含有する。いくつかの実施形態において、溶液中の塩化ナトリウムの濃度は、リガンドおよび/または金属イオンの溶解性;触媒反応の収率および選択性;ならびに/あるいは電気化学セルの効率に影響を与え得る。したがって、いくつかの実施形態において、溶液中の塩化ナトリウムの濃度は、1M〜3Mである。いくつかの実施形態において、触媒反応、すなわち、より高い酸化状態の金属イオンと不飽和または飽和炭化水素との反応において使用される溶液、および電気化学反応において使用される溶液は、4.5M〜7Mの間のより高い酸化状態の金属イオン、例えば、Cu(II)の濃度、0.25M〜1.5Mの間のより低い酸化状態の金属イオン、例えば、Cu(I)の濃度、0.25M〜6Mの間のリガンドの濃度、および1M〜3Mの間の塩化ナトリウムの濃度を含有する。
【0161】
電気化学的方法およびシステム
一態様において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、カソード室におけるカソード電解質とカソードとを接触させるステップとを含む、方法を提供する。一態様において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、カソード室におけるカソード電解質とカソードとを接触させるステップと、カソード室においてアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するステップとを含む、方法を提供する。一態様において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、不飽和または飽和炭化水素でより高い酸化状態の金属イオンを処理するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、不飽和または飽和炭化水素によるより高い酸化状態の金属イオンの処理は、ハロ炭化水素の形成をもたらす。いくつかの実施形態において、不飽和または飽和炭化水素によるより高い酸化状態の金属イオンの処理は、アノード室の内側である。いくつかの実施形態において、不飽和または飽和炭化水素によるより高い酸化状態の金属イオンの処理は、アノード室の外側である。いくつかの実施形態において、カソードは、酸素脱分極化カソードである。
【0162】
電気化学セルのいくつかの実施形態を、図に例示し、本明細書に記載する。図は単なる例示目的であり、試薬および装置における変動は十分に本発明の範囲内であることを理解すべきである。本明細書に記載されている全ての電気化学的方法およびシステムは、クロロアルカリシステムにおいて見出されるように、塩素ガスを生成しない。不飽和または飽和炭化水素のハロゲン化またはスルホン化に関連する全てのシステムおよび方法は、触媒作用反応器において酸素ガスを使用しない。
【0163】
いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するかまたは酸化させるステップと、カソード室におけるカソード電解質とカソードとを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソード室におけるカソード電解質とカソードとを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するステップと、上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和および/または飽和炭化水素とを接触させ、ハロゲン化炭化水素を形成するステップ、あるいはより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と水素ガスとを接触させ、酸を形成するステップ、あるいはこれらの両方の組合せとを含む、方法を提供する。
【0164】
いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含み、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているカソードを含むカソード室とを含む、システムを提供する。別の態様において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含有し、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているカソードを含有し、アルカリ、水、および/または水素ガスを生成するように構成されているカソード室とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているカソードを含むカソード室であって、カソードが、カソード電解質中でアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するように構成されているカソード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と、不飽和および/もしくは飽和炭化水素ならびに/または水素ガスとを接触させ、それぞれ、ハロゲン化炭化水素または酸を形成するように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。別の態様において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含み、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;不飽和および/または飽和炭化水素をアノード室に送達するように構成されている不飽和および/または飽和炭化水素送達システムであって、アノード室がまた、不飽和および/または飽和炭化水素をハロゲン化炭化水素に変換するように構成されている不飽和および/または飽和炭化水素送達システムとを含む、システムを提供する。
【0165】
図1Aに例示するように、電気化学的システム100Aは、アノード電解質と接触しているアノードを有するアノード室を含み、アノード電解質は、アノードによってより高い酸化状態の金属イオン(M
H+と表す)に変換される、より低い酸化状態の金属イオン(M
L+と表す)を含有する。金属イオンは、スルフェート、塩化物、臭化物、またはヨウ化物の形態でよい。
【0166】
本明細書において使用する場合、M
L+におけるL+として表される「より低い酸化状態」は、金属のより低い酸化状態を含む。例えば、金属イオンのより低い酸化状態は、1+、2+、3+、4+、または5+でよい。本明細書において使用する場合、M
H+におけるH+として表される「より高い酸化状態」は、金属のより高い酸化状態を含む。例えば、金属イオンのより高い酸化状態は、2+、3+、4+、5+、または6+でよい。
【0167】
アノードにおいて発生する電子(複数可)を使用して、カソードにおける反応を推進する。カソード反応は、当技術分野において公知の任意の反応でよい。アノード電解質が、塩化ナトリウム、または金属ハロゲン化物を含有する硫酸ナトリウムなどである場合、アノード室およびカソード室は、いくつかの実施形態において、カソード電解質への、これらに限定されないが、ナトリウムイオンなどのイオンの通過を可能にし得るイオン交換膜(IEM)によって分離され得る。カソードにおいて起こり得るいくつかの反応には、これらに限定されないが、水酸化物イオンおよび水素ガスを形成する水の反応、水酸化物イオンを形成する酸素ガスおよび水の反応、水素ガスを形成するHClの還元;または水を形成するHClおよび酸素ガスの反応が含まれる。
【0168】
図1Bに例示するように、電気化学的システム100Bは、カソード電解質中で水酸化物イオンを形成するカソード電解質と接触しているカソードを有するカソード室を含む。電気化学的システム100Bはまた、アノード電解質と接触しているアノードを有するアノード室を含み、アノード電解質は、より低い酸化状態の金属イオン(M
L+と表す)を含有し、これはアノードによってより高い酸化状態の金属イオン(M
H+と表す)に変換される。アノードにおいて発生する電子(複数可)を使用して、カソードにおける反応を推進する。アノード電解質が、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウムなど、または金属ハロゲン化物を含有する同等の溶液である場合、アノード室およびカソード室は、カソード電解質へのナトリウムイオンの通過を可能とするイオン交換膜(IEM)によって分離される。いくつかの実施形態において、カソード電解質が、例えば、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、または硫酸ナトリウム、あるいは同等の溶液である場合、イオン交換膜は、アノード電解質への、これらに限定されないが、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、または硫酸イオンなどの陰イオンの通過を可能にする。カソード電解質中でナトリウムイオンは水酸化物イオンと合わさり、水酸化ナトリウムを形成する。陰イオンは金属イオンと合わさり、金属ハロゲン化物または金属硫酸塩を形成する。
図1Bにおいて例示するような水酸化物形成カソードは、単なる例示目的であり、他のカソード、例えば、HClを還元して水素ガスを形成するカソード、またはHClおよび酸素ガスの両方を反応させて水を形成するカソードは、上記システムに等しく適用可能であることを理解すべきである。このようなカソードを、本明細書に記載してきた。
【0169】
いくつかの実施形態において、本発明の電気化学的システムは、1つまたは複数のイオン交換膜を含む。したがって、いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソード室におけるカソード電解質とカソードとを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するステップと、少なくとも1つのイオン交換膜によってカソードおよびアノードを分離するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソード室におけるカソード電解質とカソードとを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するステップと、少なくとも1つのイオン交換膜によってカソードおよびアノードを分離するステップと、より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和および/または飽和炭化水素とを接触させ、ハロゲン化炭化水素を形成するステップ、あるいはより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と水素ガスとを接触させ、酸を形成するステップ、あるいはこれらの両方の組合せとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、陽イオン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)、またはこれらの組合せである。
【0170】
いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているカソードを含むカソード室であって、カソードが、アルカリ、水、および/または水素ガスを生成するように構成されているカソード室と;カソードおよびアノードを分離する少なくとも1つのイオン交換膜とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているカソードを含むカソード室であって、カソードが、アルカリ、水、および/または水素ガスを生成するように構成されているカソード室と;カソードおよびアノードを分離する少なくとも1つのイオン交換膜と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和および/もしくは飽和炭化水素ならびに/または水素ガスとを接触させ、それぞれ、ハロゲン化炭化水素および酸を形成するように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、陽イオン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)、またはこれらの組合せである。
【0171】
図2に例示するように、電気化学的システム200は、カソード電解質と接触しているカソードと、アノード電解質と接触しているアノードとを含む。カソードは、カソード電解質中で水酸化物イオンを形成し、アノードは、金属イオンをより低い酸化状態(M
L+)からより高い酸化状態(M
H+)へと変換する。アノードおよびカソードは、陰イオン交換膜(AEM)および陽イオン交換膜(CEM)によって分離される。第3の電解質(例えば、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、またはこれらの組合せ、あるいは同等の溶液)が、AEMおよびCEMの間に配置されている。第3の電解質からのナトリウムイオンは、CEMを通過し、カソード室において水酸化ナトリウムを形成し、第3の電解質からのハロゲン化物陰イオン、例えば、塩化物イオン、臭化物イオンまたはヨウ化物イオン、あるいは硫酸陰イオンは、AEMを通過し、アノード室において金属ハロゲン化物または金属硫酸塩のための溶液を形成する。次いで、アノード電解質中で形成される金属ハロゲン化物または金属硫酸塩は、水素ガスあるいは不飽和または飽和炭化水素との反応用の反応器に送達され、塩化水素、塩酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、またはヨウ化水素酸および/あるいはハロ炭化水素をそれぞれ発生する。第3の電解質は、イオンの移動後に、中央室から枯渇したイオンの溶液として取り出すことができる。例えば、いくつかの実施形態において、第3の電解質が塩化ナトリウム溶液であるとき、カソード電解質へのナトリウムイオンの移動、およびアノード電解質への塩化物イオンの移動の後、枯渇した塩化ナトリウム溶液を、中央室から取り出し得る。枯渇した塩溶液は商業目的で使用してもよく、あるいは電解質としてアノードおよび/もしくはカソード室に移動させるか、または第3の電解質としての再使用のために濃縮され得る。いくつかの実施形態において、枯渇した塩溶液は、脱塩水を調製するのに有用であり得る。
図2において例示するような水酸化物形成カソードは、単なる例示目的であり、他のカソード、例えば、HClを還元して水素ガスを形成するカソード、またはHClおよび酸素ガスの両方を反応させて水を形成するカソードは、上記システムに等しく適用可能であり、本明細書においてさらに記載してきたことを理解すべきである。
【0172】
いくつかの実施形態において、2つのイオン交換膜は、
図2に例示するように、
図1Aまたは1Bに例示するような1つのイオン交換膜で置き換えてもよい。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、
図3Aに例示するように、陰イオン交換膜である。このような実施形態において、カソード電解質は、ハロゲン化ナトリウム、硫酸ナトリウムまたは同等の溶液でよく、AEMは、アノード電解質への陰イオンの通過を可能とするが、アノード電解質からカソード電解質への金属イオンの通過を防止するようなものである。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、
図3Bに例示するような陽イオン交換膜である。このような実施形態において、アノード電解質は、ハロゲン化ナトリウム、硫酸ナトリウム、または金属ハロゲン化物溶液を含有する同等の溶液、または同等の溶液でよく、CEMは、カソード電解質へのナトリウム陽イオンの通過を可能にするが、アノード電解質からカソード電解質への金属イオンの通過を防止するようなものである。いくつかの実施形態において、2つのイオン交換膜の代わりに1つのイオン交換膜を使用することは、複数のIEMによって与えられる抵抗を低減し得、電気化学反応を行うためのより低い電圧を促進し得る。適切な陰イオン交換膜のいくつかの例を、本明細書において提供する。
【0173】
いくつかの実施形態において、本発明の電気化学的システムにおいて使用されるカソードは、水素ガス生成カソードである。したがって、いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソード室におけるカソード電解質とカソードとを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリおよび水素ガスを形成するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソード室におけるカソード電解質とカソードとを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリおよび水素ガスを形成するステップと、より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和または飽和炭化水素とを接触させ、ハロゲン化炭化水素を形成するステップ、あるいはより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と水素ガスとを接触させ、酸を形成するステップ、あるいはこれらの両方の組合せとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、少なくとも1つのイオン交換膜によってカソードおよびアノードを分離するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、陽イオン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)、またはこれらの組合せである。いくつかの実施形態において、上記の方法は、ガスを形成しないアノードを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、ガスを使用しないアノードを含む。
【0174】
いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているカソードを含むカソード室であって、カソードが、アルカリおよび水素ガスを生成するように構成されているカソード室とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているカソードを含むカソード室であって、カソードが、アルカリおよび水素ガスを生成するように構成されているカソード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和もしくは飽和炭化水素および/または水素ガスとを接触させ、それぞれ、ハロゲン化炭化水素および酸を形成するように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、上記システムは、アノードにおいてガスを生成しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記システムは、アノードにおいてガスを使用しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記システムは、カソードおよびアノードを分離する少なくとも1つのイオン交換膜をさらに含む。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、陽イオン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)、またはこれらの組合せである。
【0175】
例えば、
図4Aに例示するように、電気化学的システム400は、カソード電解質401と接触しているカソードを含み、カソード電解質中で水酸化物が形成される。システム400はまた、より低い酸化状態の金属イオン(M
L+)をより高い酸化状態の金属イオン(M
H+)に変換する、アノード電解質402と接触しているアノードを含む。下記は、カソードおよびアノードにおいて起こる反応である。
H
2O+e
−→1/2H
2+OH
−(カソード)
M
L+→M
H++xe
−(アノード、x=1〜3)
例えば、Fe
2+→Fe
3++e
−(アノード)
Cr
2+→Cr
3++e
−(アノード)
Sn
2+→Sn
4++2e
−(アノード)
Cu
+→Cu
2++e
−(アノード)
【0176】
図4Aに例示するように、電気化学的システム400は、カソードにおいて水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するカソードを含む。水素ガスは、外へ出してもよく、商業目的で捕獲および貯蔵してもよい。いくつかの実施形態において、カソードにおいて放出される水素は、アノード電解質中で形成される金属ハロゲン化物または金属硫酸塩によるハロゲン化またはスルホン化(硫酸化を含む)に供され、塩化水素、塩酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸、または硫酸を形成し得る。このような反応を、本明細書において詳細に記載する。アノードにおいて形成されるM
H+は、塩化物イオンと合わさり、これらに限定されないが、FeCl
3、CrCl
3、SnCl
4、またはCuCl
2などのより高い酸化状態の金属塩化物を形成する。カソードにおいて形成される水酸化物イオンは、ナトリウムイオンと合わさり、水酸化ナトリウムを形成する。
【0177】
本出願における塩化物イオンは、単なる例示目的であり、これらに限定されないがスルフェート、臭化物またはヨウ化物などの他の同等のイオンはまた十分に本発明の範囲内であり、アノード電解質中で対応する金属ハロゲン化物または金属硫酸塩をもたらすことを理解すべきである。本明細書において例示する図において示すMCl
nは、より低い酸化状態の金属イオン、およびより高い酸化状態の金属イオンの混合物であることをまた理解すべきである。MCl
nにおける整数nは、より低い酸化状態およびより高い酸化状態の金属イオンを単に表すだけであり、金属イオンに応じて1から5以上までであってよい。例えば、いくつかの実施形態において、銅が金属イオンである場合、MCl
nは、CuClおよびCuCl
2の混合物であり得る。次いで、アノード電解質中の銅イオンのこの混合物は、水素ガス、不飽和炭化水素、および/または飽和炭化水素と接触して、それぞれの生成物を形成し得る。
【0178】
いくつかの実施形態において、本発明の電気化学的システムにおいて使用されるカソードは、アルカリを形成しない水素ガス生成カソードである。したがって、いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソード室におけるカソード電解質とカソードとを接触させるステップと、カソードにおいて水素ガスを形成するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソード室におけるカソード電解質とカソードとを接触させるステップと、カソードにおいて水素ガスを形成するステップと、より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和または飽和炭化水素とを接触させ、ハロゲン化炭化水素を形成するステップ、あるいはより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と水素ガスとを接触させ、酸を形成するステップ、あるいはこれらの両方の組合せとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、少なくとも1つのイオン交換膜によってカソードおよびアノードを分離するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、陽イオン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)、またはこれらの組合せである。いくつかの実施形態において、上記の方法は、ガスを形成しないアノードを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、ガスを使用しないアノードを含む。
【0179】
いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているカソードを含むカソード室であって、カソードが、水素ガスを生成するように構成されているカソード室とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているカソードを含むカソード室であって、カソードが、水素ガスを生成するように構成されているカソード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和もしくは飽和炭化水素および/または水素ガスとを接触させ、それぞれ、ハロゲン化炭化水素および酸を形成するように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、上記システムは、アノードにおいてガスを生成しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記システムは、アノードにおいてガスを使用しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記システムは、カソードおよびアノードを分離する少なくとも1つのイオン交換膜をさらに含む。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、陽イオン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)、またはこれらの組合せである。
【0180】
例えば、
図4Bに例示するように、電気化学的システム400は、カソード電解質401と接触しているカソードを含み、ここで、カソード電解質に送達される塩酸は、カソード電解質中で水素ガスに変えられる。システム400はまた、より低い酸化状態の金属イオン(M
L+)をより高い酸化状態の金属イオン(M
H+)に変換する、アノード電解質402と接触しているアノードを含む。下記は、カソードおよびアノードにおいて起こる反応である。
2H
++2e
−→H
2(カソード)
M
L+→M
H++xe
−(アノード、x=1〜3)
例えば、Fe
2+→Fe
3++e
−(アノード)
Cr
2+→Cr
3++e
−(アノード)
Sn
2+→Sn
4++2e
−(アノード)
Cu
+→Cu
2++e
−(アノード)
【0181】
図4Bに例示するように、電気化学的システム400は、カソードにおいて水素ガスを形成するカソードを含む。水素ガスは、外へ出してもよく、商業目的で捕獲および貯蔵してもよい。いくつかの実施形態において、カソードにおいて放出される水素は、アノード電解質中で形成される金属ハロゲン化物または金属硫酸塩によるハロゲン化またはスルホン化(硫酸化を含む)に供され、塩化水素、塩酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸、または硫酸を形成し得る。このような反応を、本明細書において詳細に記載する。アノードにおいて形成されるM
H+は、塩化物イオンと合わさり、これらに限定されないが、FeCl
3、CrCl
3、SnCl
4、またはCuCl
2などのより高い酸化状態の金属塩化物を形成する。カソードにおいて形成される水酸化物イオンは、ナトリウムイオンと合わさり、水酸化ナトリウムを形成する。
【0182】
図4Bにおける1つのAEMは、単なる例示目的であり、システムは、CEMを有し、HClはアノード電解質中に送達され、水素イオンはCEMを通過してカソード電解質に送達されるように設計されてもよいことを理解すべきである。いくつかの実施形態において、
図4Bにおいて例示するシステムは、AEMおよびCEMの両方を含有してもよく、中央室は、塩化物塩を含有する。本明細書において例示する図において示すMCl
nは、より低い酸化状態の金属イオン、およびより高い酸化状態の金属イオンの混合物であることをまた理解すべきである。MCl
nにおける整数nは、より低い酸化状態およびより高い酸化状態の金属イオンを単に表すだけであり、金属イオンに応じて1から5以上までであってよい。例えば、いくつかの実施形態において、銅が金属イオンである場合、MCl
nは、CuClおよびCuCl
2の混合物であり得る。次いで、アノード電解質中の銅イオンのこの混合物は、水素ガス、不飽和炭化水素、および/または飽和炭化水素と接触して、それぞれの生成物を形成し得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、本発明の電気化学的システムにおけるカソードは、ガス拡散カソードでよい。いくつかの実施形態において、本発明の電気化学的システムにおけるカソードは、カソードにおいてアルカリを形成するガス拡散カソードでよい。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、ガス拡散カソードとカソード電解質とを接触させるステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、ガス拡散カソードは、酸素脱分極化カソード(ODC)である。いくつかの実施形態において、上記方法は、ODCにおいてアルカリを形成するステップを含む。いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させ、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップであって、カソードが、酸素および水を水酸化物イオンに還元する酸素脱分極カソードであるステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソード室におけるカソード電解質とガス拡散カソードとを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリを形成するステップと、より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和および/または飽和炭化水素とを接触させ、ハロゲン化炭化水素を形成するステップ、あるいはより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と水素ガスとを接触させ、酸を形成するステップ、あるいはこれらの両方の組合せとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、ガス拡散カソードは、ガスを形成しない。いくつかの実施形態において、上記方法は、ガスを形成しないアノードを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、ガスを使用しないアノードを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、少なくとも1つのイオン交換膜によってカソードおよびアノードを分離するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、陽イオン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)、またはこれらの組合せである。
【0184】
いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するかまたは酸化させるように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているガス拡散カソードを含むカソード室であって、カソードが、アルカリを生成するように構成されているカソード室とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、ガス拡散カソードは、酸素脱分極化カソード(ODC)である。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているガス拡散カソードを含むカソード室であって、カソードが、アルカリを生成するように構成されているカソード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と、不飽和および/もしくは飽和炭化水素ならびに/または水素ガスとを接触させ、それぞれ、ハロゲン化炭化水素および酸を形成するように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、上記システムは、ガス拡散カソードにおいてガスを生成しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記システムは、アノードにおいてガスを生成しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記システムは、アノードにおいてガスを使用しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記システムは、カソードおよびアノードを分離する少なくとも1つのイオン交換膜をさらに含む。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、陽イオン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)、またはこれらの組合せである。
【0185】
本明細書において使用する場合、「ガス拡散カソード」、または「ガス拡散電極」、または他のその同等物は、ガスと反応して、イオン種を形成することができる任意の電極を含む。いくつかの実施形態において、ガス拡散カソードは、本明細書において使用する場合、酸素脱分極化カソード(ODC)である。このようなガス拡散カソードは、ガス拡散電極、酸素消費カソード、酸素還元カソード、酸素吸入カソード、酸素脱分極化カソードなどと称されてもよい。
【0186】
いくつかの実施形態において、
図5Aに例示するように、電気化学セルにおけるガス拡散カソード(例えば、ODC)およびアノードの組合せは、カソード室におけるアルカリの発生をもたらし得る。いくつかの実施形態において、電気化学的システム500は、カソード電解質501と接触しているガス拡散カソード、およびアノード電解質502と接触しているアノードを含む。アノードおよびカソードは、陰イオン交換膜(AEM)および陽イオン交換膜(CEM)によって分離されている。第3の電解質(例えば、ハロゲン化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム)は、AEMおよびCEMの間に配置される。下記は、アノードおよびカソードにおいて起こり得る反応である。
H
2O+1/2O
2+2e
−→2OH
−(カソード)
M
L+→M
H++xe
−(アノード、x=1〜3)
例えば、2Fe
2+→2Fe
3++2e
−(アノード)
2Cr
2+→2Cr
3++2e
−(アノード)
Sn
2+→Sn
4++2e
−(アノード)
2Cu
+→2Cu
2++2e
−(アノード)
【0187】
アノードにおいて形成されるM
H+は、塩化物イオンと合わさり、これらに限定されないが、FeCl
3、CrCl
3、SnCl
4、またはCuCl
2などの金属塩化物MCl
nが形成される。カソードにおいて形成される水酸化物イオンは、ナトリウムイオンと反応し、水酸化ナトリウムを形成する。カソードにおける酸素は、大気、または酸素の任意の商業的に利用可能な源であり得る。
【0188】
本明細書に記載し、
図5Aに例示するようなガス拡散カソードまたはODCを含有する方法およびシステムは、(
図4Aに例示するような)水素ガス生成カソードを含む方法およびシステムと比較して、電圧削減をもたらし得る。電圧削減は、電気発生のためにより少ない電気消費およびより少ない二酸化炭素排出をもたらし得る。これは、本発明の効率的でエネルギーを削減する方法およびシステムによって形成される、環境により配慮した化学物質、例えば、水酸化ナトリウム、ハロゲン化炭化水素および/または酸の発生をもたらし得る。いくつかの実施形態において、ODCを有する電気化学セルは、ODCを有さない電気化学セルと比較して、または水素ガス生成カソードを有する電気化学セルと比較して、0.5V超、または1V超、または1.5V超、または0.5〜1.5Vの間の理論的電圧削減を有する。いくつかの実施形態において、この電圧削減は、7〜15の間、または7〜14の間、または6〜12の間、または7〜12の間、または7〜10の間のカソード電解質pHで達成される。
【0189】
全体的なセル電位は、各ハーフセル反応についてのネルンスト式の組合せによって決定することができる。
E=E
0−RT ln(Q)/nF
式中、E
0は、標準還元電位であり、Rは、一般ガス定数(8.314J/mol K)であり、Tは、絶対温度であり、nは、ハーフセル反応に関与する電子の数であり、Fは、ファラデー定数(96485J/V mol)であり、Qは、反応商(reaction quotient)である。したがって、
E
全体=E
アノード−E
カソード
である。
【0190】
より低い酸化状態の金属が、下記のようにアノードにおいてより高い酸化状態の金属へと酸化されるとき、
Cu
+→Cu
2++2e
−
銅II種の種々の濃度に基づいたE
アノードは、0.159〜0.75Vの間であり得る。
【0191】
水が、下記のように(
図4Aに例示するような)カソードにおいて水酸化物イオンおよび水素ガスに還元されるとき、
2H
2O+2e
−=H
2+2OH
−、
E
カソード=−0.059pH
c(ここで、pH
cはカソード電解質のpH(=14)である)
E
カソード=−0.83
【0192】
E
全体は、アノード電解質中の銅イオンの濃度に応じて0.989〜1.53の間である。
【0193】
水が、下記のように(
図5Aに例示するような)ODCにおいて水酸化物イオンに還元されるとき、
2H
2O+O
2+4e
−→4OH
−
E
カソード=1.224−0.059pH
c(ここで、pH
c=14である)
E
カソード=0.4V
【0194】
E
全体は、アノード電解質中の銅イオンの濃度に応じて−0.241〜0.3Vの間である。
【0195】
したがって、カソード室におけるODCの使用は、ODCを有さない電気化学セルと比較して、または水素ガス生成カソードを有する電気化学セルと比較して、約1.5Vまたは0.5〜2Vの間または0.5〜1.5Vの間または1〜1.5Vの間の、カソード室における理論的電圧削減、またはセルにおける理論的電圧削減をもたらす。
【0196】
したがって、いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、酸素脱分極カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、アノードおよびカソードに電圧を印加するステップと、カソードにおいてアルカリを形成するステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、水素ガス生成カソードと比較して、またはODCを有さないセルと比較して、0.5V超または0.5〜1.5Vの間の電圧を削減するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触している酸素脱分極カソードを含むカソード室であって、カソードが、アルカリを生成するように構成されているカソード室とを含む、システムを提供し、このシステムは、水素ガス生成カソードを有するシステムと比較して、またはODCを有さないシステムと比較して、0.5V超または0.5〜1.5Vの間の電圧削減を提供する。いくつかの実施形態において、電圧削減は、セル中のオーム抵抗に応じて変化し得る理論的電圧削減である。
【0197】
ガス拡散カソードまたはODCを含有する方法およびシステムは、水素ガス生成カソードを含有する方法およびシステムと比較して、電圧削減をもたらす一方、両方のシステム、すなわち、本発明のODCを含有するシステムおよび水素ガス生成カソードを含有するシステムは、当技術分野において従前より公知のクロロアルカリシステムと比較して、有意な電圧削減を示す。電圧削減は、電気の発生のためにより少ない電気消費およびより少ない二酸化炭素の排出をもたらし得る。これは、本発明の効率的でエネルギーを削減する方法およびシステムによって形成される、環境により配慮した化学物質、例えば、水酸化ナトリウム、ハロゲン化炭化水素および/または酸の発生をもたらし得る。例えば、電圧削減は、ハロゲン化炭化水素、例えば、エチレンと、高電圧を消費するクロロアルカリプロセスによって発生する塩素ガスとを反応させることによって典型的には形成されるEDCの生成において有益である。いくつかの実施形態において、本発明の電気化学的システム(水素ガス生成カソードまたはODCを有する2つまたは3つのコンパートメントのセル)は、クロロアルカリプロセスと比較して、0.5V超、または1V超、または1.5V超、または0.5〜3Vの理論的電圧削減を有する。いくつかの実施形態において、この電圧削減は、7〜15の間、または7〜14の間、または6〜12、または7〜12、または7〜10のカソード電解質pHによって達成される。
【0198】
例えば、クロロアルカリプロセスにおける理論的E
アノードは、下記のような反応を受けて、約1.36Vである。
2Cl
−→Cl
2+2e
−
【0199】
クロロアルカリプロセスにおける理論的E
カソードは、下記のような反応を受けて、(pH>14で)約−0.83Vである。
2H
2O+2e
−=H
2+2OH
−
【0200】
次いで、クロロアルカリプロセスについての理論的E
全体は、2.19Vである。本発明のシステムにおける水素ガス生成カソードについての理論的E
全体は、0.989〜1.53Vの間であり、次いで、本発明のシステムにおけるODCについてのE
全体は、アノード電解質中の銅イオンの濃度に応じて−0.241〜0.3Vの間である。したがって、本発明の電気化学的システムは、クロロアルカリシステムと比較して、3V超または2V超または0.5〜2.5Vの間または0.5〜2.0Vの間または0.5〜1.5Vの間または0.5〜1.0Vの間または1〜1.5Vの間または1〜2Vの間または1〜2.5Vの間または1.5〜2.5Vの間の、カソード室における理論的電圧削減、またはセルにおける理論的電圧削減をもたらす。
【0201】
いくつかの実施形態において、電気化学セルは、第1の電解質によってコンディショニングしてもよく、第2の電解質によって動作し得る。例えば、いくつかの実施形態において、電気化学セルおよびAEM、CEMまたはこれらの組合せは、電解質としての硫酸ナトリウムによってコンディショニングされ、硫酸ナトリウムによる電圧の安定化の後、セルは、電解質としての塩化ナトリウムによって動作し得る。電気化学セルのこのような安定化の例示的な例を、本明細書において実施例13に記載する。したがって、いくつかの実施形態において、アノード室における第1のアノード電解質とアノードとを接触させるステップと、カソード室におけるカソード電解質とカソードとを接触させるステップと、少なくとも1つのイオン交換膜によってカソードおよびアノードを分離するステップと、アノード室における第1のアノード電解質によってイオン交換膜をコンディショニングするステップと、金属イオンを含む第2のアノード電解質とアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードにおいてアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、第1のアノード電解質は、硫酸ナトリウムであり、第2のアノード電解質は、塩化ナトリウムである。いくつかの実施形態において、上記方法は、より高い酸化状態の金属イオンを含む第2のアノード電解質と不飽和および/または飽和炭化水素とを接触させ、ハロゲン化炭化水素を形成するステップ、あるいはより高い酸化状態の金属イオンを含む第2のアノード電解質と水素ガスとを接触させ、酸を形成するステップ、あるいはこれらの両方の組合せをさらに含む。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、陽イオン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)、またはこれらの組合せである。
【0202】
いくつかの実施形態において、本発明の電気化学的システムにおけるカソードは、HClおよび酸素ガスを反応させ、水を形成するガス拡散カソードでよい。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、ガス拡散カソードとカソード電解質とを接触させるステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、ガス拡散カソードは、酸素脱分極化カソード(ODC)である。いくつかの実施形態において、上記方法は、ODCにおいてHClおよび酸素ガスを反応させ、水を形成するステップを含む。いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させ、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップであって、カソードが、酸素およびHClを反応させ、水を形成する酸素脱分極カソードであるステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソード室におけるカソード電解質とガス拡散カソードとを接触させるステップと、カソードにおいてHClおよび酸素ガスから水を形成するステップと、より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和および/または飽和炭化水素とを接触させ、ハロゲン化炭化水素を形成するステップ、あるいはより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と水素ガスとを接触させ、酸を形成するステップ、あるいはこれらの両方の組合せとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、ガス拡散カソードは、ガスを形成しない。いくつかの実施形態において、上記方法は、ガスを形成しないアノードを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、ガスを使用しないアノードを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、少なくとも1つのイオン交換膜によってカソードおよびアノードを分離するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、陽イオン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)、またはこれらの組合せである。
【0203】
いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するかまたは酸化させるように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているガス拡散カソードを含むカソード室であって、カソードが、HClから水を生成するように構成されているカソード室とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、ガス拡散カソードは、酸素脱分極化カソード(ODC)である。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質と接触しているガス拡散カソードを含むカソード室であって、カソードが、HClから水を生成するように構成されているカソード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和および/もしくは飽和炭化水素ならびに/または水素ガスとを接触させ、それぞれ、ハロゲン化炭化水素および酸を形成するように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、上記システムは、ガス拡散カソードにおいてガスを生成しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記システムは、アノードにおいてガスを生成しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記システムは、アノードにおいてガスを使用しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記システムは、カソードおよびアノードを分離する少なくとも1つのイオン交換膜をさらに含む。いくつかの実施形態において、イオン交換膜は、陽イオン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)、またはこれらの組合せである。
【0204】
いくつかの実施形態において、
図5Bに例示するように、電気化学セルにおけるガス拡散カソード(例えば、ODC)およびアノードの組合せは、カソード室における水の発生をもたらし得る。いくつかの実施形態において、電気化学的システム500は、カソード電解質501と接触しているガス拡散カソード、およびアノード電解質502と接触しているアノードを含む。下記は、アノードおよびカソードにおいて起こり得る反応である。
2H
++1/2O
2+2e
−→H
2O(カソード)
M
L+→M
H++xe
−(アノード、x=1〜3)
例えば、2Fe
2+→2Fe
3++2e
−(アノード)
2Cr
2+→2Cr
3++2e
−(アノード)
Sn
2+→Sn
4++2e
−(アノード)
2Cu
+→2Cu
2++2e
−(アノード)
【0205】
アノードにおいて形成されるM
H+は、塩化物イオンと合わさり、これらに限定されないが、FeCl
3、CrCl
3、SnCl
4、またはCuCl
2などの金属塩化物MCl
nが形成される。カソードにおける酸素は、大気、または酸素の任意の商業的に利用可能な源でよい。
図5Bの1つのAEMは、単なる例示目的であり、システムは、CEMを有し、HClはアノード電解質中に送達され、水素イオンはCEMを通過してカソード電解質に送達されるように設計されてもよいことを理解すべきである。いくつかの実施形態において、
図5Bにおいて例示するシステムは、AEMおよびCEMの両方を含有し、中央室は、塩化物塩を含有してもよい。
【0206】
いくつかの実施形態において、本発明の電気化学的システムは、効率的および低エネルギー集約型のシステムのために他の電気化学セルと合わせてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、
図5Cに例示するように、
図4Bの電気化学的システム400は、他の電気化学セルにおいて形成された塩酸がシステム400のカソード電解質に与えられるように、別の電気化学セルと組み合わせてもよい。カソードコンパートメントを変更し、別の電気化学セルからのHClを受け、これを酸化させ、水素ガスを形成することを除いては、電気化学的システム400は、システム100A(
図1A)、100B(
図1B)、200(
図2)、400(
図4A)、500(
図5Aおよび5B)と置き換えてもよい。塩化物イオンは、AEMを通ってカソード電解質からアノード電解質へと移行する。これは、システムの電圧の全体的な改善をもたらし得る。例えば、システムの理論的セル電圧は、0.1〜0.7Vの間でよい。いくつかの実施形態において、カソードがODCであるとき、理論的セル電圧は、−0.5〜−1Vの間であり得る。アノード電解質中でHClを生成する電気化学セルは、2009年7月15日に出願された米国特許出願第12/503,557号(これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されてきた。HClの他の源は、当技術分野で周知である。VCM生成プロセスからのHCl源および本発明の電気化学的システム中へのその統合の一例を、下記の
図8Bに例示する。
【0207】
本明細書に記載されている方法およびシステムのいくつかの実施形態において、サイズ排除膜(SEM)は、陰イオン交換膜(AEM)と併せて、または陰イオン交換膜(AEM)の代わりに使用される。いくつかの実施形態において、AEMは、SEMの層で表面コーティングされている。いくつかの実施形態において、SEMは、AEMに結合しているか、またはAEMに押し付けられている。AEMと共にまたはAEMの代わりにSEMを使用することによって、金属イオン単独での大きなサイズまたはリガンドに結合した金属イオンの大きなサイズに起因して、アノード液からカソード液への、金属イオン、またはリガンドが結合した金属イオンの移行を防止することができる。これは、金属イオンによるCEMのファウリング(fouling)またはカソード液のコンタミネーションをさらに防止することができる。AEMと組み合わせた、またはAEMの代わりのSEMのこの使用は、第3の電解質からアノード液への塩化物イオンの移行をまだ促進することを理解すべきである。いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、サイズ排除膜を使用することによってアノード電解質からカソード電解質への金属イオンの移行を防止するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、カソード電解質中でアルカリを生成するカソード、またはカソード電解質中でアルカリを生成する酸素脱分極化カソード、またはカソード電解質中で水を生成する酸素脱分極化カソード、または水素ガスを生成するカソードをさらに含む。いくつかの実施形態において、この方法は、より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和または飽和炭化水素とを接触させ、ハロゲン化炭化水素を形成するステップ、あるいはより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と水素ガスとを接触させ、酸を形成するステップ、あるいはこれらの両方の組合せをさらに含む。いくつかの実施形態において、このような方法における不飽和炭化水素は、エチレンである。いくつかの実施形態において、このような方法における金属イオンは、塩化銅である。いくつかの実施形態において、このような方法における不飽和炭化水素は、エチレンであり、金属イオンは、塩化銅である。エチレンから形成することができるハロゲン化炭化水素の一例は、二塩化エチレン(EDC)である。
【0208】
いくつかの実施形態において、アノード電解質と接触しており、かつ金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと;カソード電解質と接触しているカソードと;アノードおよびカソードの間に配置されており、かつアノード電解質からカソード電解質への金属イオンの移行を防止するように構成されているサイズ排除膜とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、このシステムは、カソード電解質中でアルカリを生成するか、またはカソード電解質中で水を生成するか、または水素ガスを生成するように構成されているカソードをさらに含む。いくつかの実施形態において、このシステムは、カソード電解質中でアルカリおよび/または水を生成するように構成されている酸素脱分極化カソードをさらに含む。いくつかの実施形態において、このシステムは、水素ガス生成カソードをさらに含む。いくつかの実施形態において、このシステムは、アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和または飽和炭化水素とを接触させ、ハロゲン化炭化水素を形成するか、あるいはより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と水素ガスとを接触させ、酸を形成するか、あるいはこれらの両方の組合せであるように構成されている反応器をさらに含む。いくつかの実施形態において、このようなシステムにおける不飽和炭化水素は、エチレンである。いくつかの実施形態において、このようなシステムにおける金属イオンは、塩化銅である。いくつかの実施形態において、このようなシステムにおける不飽和炭化水素は、エチレンであり、金属イオンは、塩化銅である。エチレンから形成することができるハロゲン化炭化水素の一例は、EDCである。
【0209】
いくつかの実施形態において、サイズ排除膜は、本明細書の上および本明細書において定義されているように、カソード室または第3の電解質を有する中央室への金属イオンの移行を完全に防止するか、あるいは移行を100%;または99%;または95%または75%;または50%;または25%;または25〜50%の間;または50〜75%の間;または50〜95%の間で低減させる。
【0210】
いくつかの実施形態において、本発明の方法およびシステムにおいて使用されるAEMは、AEMが有機物と相互作用せず、かつ/あるいはAEMが金属イオンと反応もせず吸収もしないように、有機化合物(例えば、リガンドまたは炭化水素)に抵抗性である。これは、単に例として、有機物との、または金属イオンとの反応に利用可能であるフリーラジカルも陰イオンも含有しないポリマーを使用することによって達成することができる。単に例として、完全に四級化されたアミンを含有するポリマーは、AEMとして使用され得る。AEMの他の例は、本明細書に記載してきた。
【0211】
本明細書で説明する方法およびシステムのいくつかの実施形態において、乱流プロモータをアノードコンパートメントにおいて使用して、アノードでの物質移動を改善する。例えば、電気化学セル中で電流密度が増大すると、アノードにおいて物質移動律速反応速度が達成される。アノード液の層流は抵抗および拡散の問題を引き起こす可能性がある。アノードでの物質移動を改善し、それによってセルの電圧を低下させる目的で、乱流プロモータを、アノードコンパートメントにおいて使用することができる。本明細書で用いる「乱流プロモータ」は、乱流をもたらす電気化学セルのアノードコンパートメント中の成分を含む。いくつかの実施形態において、乱流プロモータを、アノードの後ろ、すなわちアノードと電気化学セルの壁との間に提供することができ、かつ/または、いくつかの実施形態において、乱流プロモータを、アノードと陰イオン交換膜との間に提供することができる。単に例として、
図1A、
図1B、
図2、
図4A、
図4B、
図5A、
図5B、
図5C、
図6、
図8A、
図9および
図12に示されている電気化学的システムは、乱流プロモータを、アノードと陰イオン交換膜などのイオン交換膜との間に有していてよく、かつ/または乱流プロモータを、アノードとセルの外壁との間に有していてよい。
【0212】
乱流プロモータの一例は、アノードコンパートメント中でのガスのバブリングである。ガスは、アノード液の構成要素と反応しない任意の不活性ガスであってよい。例えば、ガスには、空気、窒素、およびアルゴンなどが含まれるが、これらに限定されない。アノードでのガスのバブリングは、アノード電解質を掻き混ぜ、アノードでの物質移動を改善することができる。改善された物質移動は、セル電圧の低下をもたらすことができる。乱流プロモータの他の例には、これらに限定されないが、アノードに隣接した炭素布の組み込み、アノードに隣接した炭素/グラファイトフェルトの組み込み、アノードに隣接した発泡(expanded)プラスチック、アノードに隣接した漁網、上記の組合せなどが含まれる。
【0213】
いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、乱流プロモータを用いて上記アノード電解質中に乱流をもたらすステップとを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、乱流をもたらすことによって、セルの電圧を、50〜200mVまたは100〜200mVだけ低下させるステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、アノードにおいて気泡を通過させることによって、アノード電解質中に乱流をもたらすステップとを含む方法を提供する。ガスの例には、空気、窒素、およびアルゴンなどが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記方法は、乱流をもたらすことによって、セルの電圧を、50〜200mVまたは100〜200mVだけ低下させるステップをさらに含む(実施例3を参照されたい)。
【0214】
いくつかの実施形態において、上記方法は、カソード電解質中でアルカリを生成するカソードか、カソード電解質中でアルカリを生成する酸素脱分極化カソードか、カソード電解質中で水を生成する酸素脱分極化カソードか、または水素ガスを生成するカソードをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和または飽和炭化水素とを接触させて、ハロゲン化炭化水素を形成するステップ、あるいはより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と水素ガスとを接触させて、酸を形成するステップ、あるいはこれらの両方の組合せをさらに含む。いくつかの実施形態において、そうした方法における不飽和炭化水素はエチレンである。いくつかの実施形態において、そうした方法における金属イオンは塩化銅である。いくつかの実施形態において、そうした方法における不飽和炭化水素はエチレンであり、金属イオンは塩化銅である。エチレンから形成することができるハロゲン化炭化水素の一例は、二塩化エチレン、EDCである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載するようなリガンドを上記方法において使用することができる。
【0215】
いくつかの実施形態において、アノード電解質と接触しており、かつ金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと、カソード電解質と接触しているカソードと、アノード周りに配置されており、かつアノード電解質において乱流をもたらすように構成されている乱流プロモータとを含むシステムを提供する。いくつかの実施形態において、アノード電解質と接触しており、かつ金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと、カソード電解質と接触しているカソードと、アノード周りに配置されており、かつアノード電解質においてガスをバブリングし、乱流をもたらすように構成されているガスバブラーとを含むシステムを提供する。ガスの例には、空気、窒素、およびアルゴンなどが含まれるが、これらに限定されない。ガスバブラーは、当技術分野において公知の、アノードコンパートメント中へガスをバブリングさせる任意の手段であってよい。
【0216】
いくつかの実施形態において、上記のシステムは、カソード電解質においてアルカリを生成させるか、またはカソード電解質において水を生成させるか、または水素ガスを生成させるように構成されているカソードをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記のシステムは、カソード電解質においてアルカリおよび/または水を生成させるように構成されている酸素脱分極化カソードをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記のシステムは、水素ガス生成カソードをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記のシステムは、アノード室に動作可能に接続されており、かつ、より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を不飽和もしくは飽和炭化水素と接触させてハロゲン化炭化水素を形成するか、または、より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を水素ガスと接触させて酸を形成するか、あるいはその両方の組合せを行うように構成されている反応器をさらに含む。いくつかの実施形態において、そうしたシステムにおける不飽和炭化水素はエチレンである。いくつかの実施形態において、そうしたシステムにおける金属イオンは塩化銅である。いくつかの実施形態において、そうしたシステムにおける不飽和炭化水素はエチレンであり、金属イオンは塩化銅である。エチレンから形成することができるハロゲン化炭化水素の一例はEDCである。
【0217】
いくつかの実施形態において、アノード電解質中でより高い酸化状態を伴って形成される金属は、対応する酸化された生成物(ハロゲン化炭化水素および/または酸)、ならびに還元されたより低い酸化状態の金属をもたらし得る反応に供される。次いで、より高い酸化状態の金属イオンの発生のために、より低い酸化状態の金属イオンを電気化学的システムに戻して再循環させてもよい。より高い酸化状態の金属イオンからより低い酸化状態の金属イオンを再生するこのような反応には、これらに限定されないが、本明細書に記載のような水素ガスまたは炭化水素との反応が含まれる。
水素ガス、不飽和炭化水素、および飽和炭化水素との反応
【0218】
いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するかまたは酸化させるステップと、より高い酸化状態の金属イオンを水素ガスで処理するステップとを含む、方法を提供する。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソード電解質中でアルカリを形成するステップとを含む。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリおよび/または水素ガスを形成するステップとを含む。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するステップとを含む。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、ガス拡散カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリを形成するステップとを含む。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリ、水または水素ガスを形成するステップと、アノード電解質中のより高い酸化状態の金属イオンをカソードからの水素ガスで処理するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、酸素脱分極化カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリまたは水を形成するステップと、アノード電解質中のより高い酸化状態の金属イオンを水素ガスで処理するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいて水または水素ガスを形成するステップと、アノード電解質中のより高い酸化状態の金属イオンを水素ガスで処理するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンによる水素ガスの処理は、カソード室の内側またはカソード室の外側でよい。いくつかの実施形態において、上記の方法は、より高い酸化状態の金属イオンを水素ガスで処理することによって、塩化水素、塩酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸および/または硫酸を形成するステップを含む。いくつかの実施形態において、水素ガスによるより高い酸化状態の金属イオンの処理は、塩化水素、塩酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸および/または硫酸、ならびにより低い酸化状態の金属イオンの形成をもたらす。いくつかの実施形態において、より低い酸化状態の金属イオンを、アノード室に戻して再循環させる。いくつかの実施形態において、より低い酸化状態の金属イオンおよび酸の混合物は、酸レターデーション(retardation)技術に供され、より低い酸化状態の金属イオンをアノード室に戻して再循環させる前に、より低い酸化状態の金属イオンを酸から分離する。
【0219】
上に記載した方法のいくつかの実施形態において、方法は、アノードにおいて塩素ガスを生成しない。
【0220】
いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と水素ガスとを反応させるように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するカソードを含むカソード室を含み、カソードは、カソード電解質中でアルカリを形成するように構成されている。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するカソードを含むカソード室を含み、カソードは、カソード電解質中で水素ガスを形成するように構成されている。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するカソードを含むカソード室を含み、カソードは、カソード電解質中でアルカリおよび水素ガスを形成するように構成されている。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するガス拡散カソードを含み、カソードは、カソード電解質中でアルカリを形成するように構成されている。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するガス拡散カソードを含み、カソードは、カソード電解質中で水を形成するように構成されている。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンを有するアノードを含むアノード室であって、アノードが、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質を有するカソードを含むカソード室であって、カソードが、カソード電解質中でアルカリおよび/または水素ガスを形成するように構成されているカソード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質とカソードからの水素ガスとを反応させるように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、反応器は、アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と、同じ電気化学セルのカソードからの水素ガスとを、または外部の源の水素ガスとを反応させるように構成されている。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンによる水素ガスの処理は、カソード室の内側またはカソード室の外側でよい。いくつかの実施形態において、上記のシステムは、より高い酸化状態の金属イオンと水素ガスとを反応させるかまたは処理することによって、塩化水素、塩酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸、および/または硫酸を形成するステップを含む。いくつかの実施形態において、水素ガスによるより高い酸化状態の金属イオンの処理は、塩化水素、塩酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸、および/または硫酸、ならびにより低い酸化状態の金属イオンの形成をもたらす。いくつかの実施形態において、上記システムは、水素ガスによってより高い酸化状態の金属イオンからより低い酸化状態の金属イオンを形成し、より低い酸化状態の金属イオンをアノード室に戻して再循環させるように構成されている。いくつかの実施形態において、上記システムは、これらに限定されないが、イオン交換樹脂、サイズ排除膜、および酸透析などの酸レターデーション技術を使用して、より低い酸化状態の金属イオンを酸から分離するように構成されている。
【0221】
上に記載したシステムのいくつかの実施形態において、上記システムにおけるアノードは、塩素ガスを生成しないように構成されている。
【0222】
いくつかの実施形態において、
図1A、1B、2、3A、3B、4A、4B、5Aおよび5Bの電気化学的システムのアノード電解質中のより高い酸化状態を伴って形成される金属は、金属に結合している陰イオンに基づいて、水素ガスと反応し、対応する生成物を形成し得る。例えば、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、または金属硫酸塩は、水素ガスと金属ハロゲン化物または金属硫酸塩との反応の後に、それぞれ、対応する塩化水素、塩酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸、または硫酸をもたらし得る。いくつかの実施形態において、水素ガスは、外部の源からである。いくつかの実施形態、例えば、
図4Aまたは4Bにおいて例示するものにおいて、金属ハロゲン化物または金属硫酸塩と反応する水素ガスは、カソードにおいて形成される水素ガスである。いくつかの実施形態において、水素ガスは、外部の源、およびカソードにおいて形成される水素ガスの組合せから得られる。いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物または金属硫酸塩と水素ガスとの反応は、上記の生成物、およびより低い酸化状態の金属ハロゲン化物または金属硫酸塩の発生をもたらす。次いで、より高い酸化状態の金属イオンの発生のために、より低い酸化状態の金属イオンを、電気化学的システムに戻して再循環させてもよい。
【0223】
図5Aの電気化学的システムの一例は、
図6において例示する通りである。
図6のシステム600は、単なる例示目的であり、異なる酸化状態を有する他の金属イオン(例えば、クロム、スズなど)と、カソード室においてアルカリ以外の生成物、例えば、水(
図5Bにおけるように)または水素ガス(
図4Aもしくは4Bにおけるように)を形成する他の電気化学的システムは、上記システムに等しく適用可能であることを理解すべきである。いくつかの実施形態において、
図6に例示するように、電気化学的システム600は、水および酸素から水酸化物イオンを生成する酸素脱分極化カソードを含む。システム600はまた、金属イオンを2+の酸化状態から3+の酸化状態へと(または、2+の酸化状態から4+の酸化状態へと、例えば、Snなど)変換させるアノードを含む。M
3+イオンは塩化物イオンと合わさり、MCl
3を形成する。次いで、金属塩化物MCl
3は水素ガスと反応し、より低い酸化状態への金属イオンの還元を受け、MCl
2を形成する。次いで、MCl
2を、MCl
3へ変換するためにアノード室に戻して再循環させる。塩酸をプロセスにおいて発生させ、これは商業目的で使用してもよく、または本明細書に記載のような他のプロセスにおいて利用してもよい。いくつかの実施形態において、この方法によって生成されるHClは、鉱物の溶解のために使用して、二価陽イオンを発生させることができ、この二価陽イオンは本明細書に記載のようなカーボネート沈殿プロセスにおいて使用することができる。いくつかの実施形態において、
図6における金属ハロゲン化物または金属硫酸塩は、不飽和または飽和炭化水素と反応して、本明細書に記載のようなハロ炭化水素またはスルホ炭化水素を形成し得る(図には示さず)。いくつかの実施形態において、カソードは、ガス拡散カソードではないが、
図4Aまたは4Bに記載したようなカソードである。いくつかの実施形態において、上記システム600は、アルカリを生成する任意の電気化学的システムに適用し得る。
【0224】
金属化合物と水素ガスとの反応が行われる反応器のいくつかの例を、本明細書において提供する。一例として、反応器、例えば、より高い酸化状態の金属イオン(図に示すように形成される)と水素ガスとの反応のための反応塔を、
図7Aに例示する。いくつかの実施形態において、
図7Aに例示するように、アノード液は、反応塔の中を通過させる。水素を含有するガスをまた、反応塔に送達する。過剰な水素ガスは反応塔から出してもよく、これを集めて、反応塔に再び移動させて戻してもよい。反応塔の内側で、より高い酸化状態の金属イオンを含有するアノード液(FeCl
3として例示)は、水素ガスと反応して、HClおよびより低い酸化状態の金属イオン、すなわち、FeCl
2として例示される還元された形態の金属イオンを形成し得る。反応塔は、活性炭または活性炭素を任意選択で含有してもよく、あるいは代わりに、活性炭素は、反応塔の外側に存在してもよい。金属イオンと水素ガスとの反応は、活性炭素上で起こってもよく(ここから、還元されたアノード液を再生させてもよい)、または活性炭素は、単純に、ガスから不純物を除去するためのフィルターとして作用してもよい。HClおよびより低い酸化状態の金属イオンを含有する還元されたアノード液は、これらに限定されないが、イオン交換樹脂、サイズ排除膜、および酸透析などを含む当技術分野で公知の分離技術または酸レターデーション技術を使用した酸回収に供され、アノード液からHClを分離し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているリガンドは、金属イオンに結合しているリガンドの大きなサイズに起因して、酸性溶液からの金属イオンの分離を促進し得る。より低い酸化状態の金属イオンを含有するアノード液は、電気化学セルに戻して再循環させてもよく、HClを集めてもよい。
【0225】
反応器の別の例として、より高い酸化状態の金属イオン(図に示すように形成される)と水素ガスとの反応をまた、
図7Bに例示する。
図7Bに例示するように、これらに限定されないが、Fe
3+、Sn
4+、Cr
3+などのより高い酸化状態の金属イオンを含有するアノード室からのアノード液を使用して水素ガスと反応させ、HClを形成してもよく、またはこれを使用してSO
2含有ガスを浄化し、クリーンなガスまたは硫酸を形成してもよい。いくつかの実施形態において、NOxガスは、より高い酸化状態の金属イオンと反応して、硝酸を形成し得ることが意図されている。いくつかの実施形態において、
図7Bに例示するように、アノード液を、反応塔に通過させる。水素、SO
2、および/またはNOxを含有するガスをまた、反応塔に送達する。過剰な水素ガスを反応塔から出してもよく、これを集めて、反応塔に再び移動させて戻してもよい。よりクリーンなガスを大気に放出する前に、過剰なSO
2を、スクラバーに通してもよい。反応塔の内側でより高い酸化状態の金属イオンを含有するアノード液は、水素ガスおよび/またはSO
2と反応し、HClおよび/またはH
2SO
4ならびにより低い酸化状態の金属イオン、すなわち、還元された形態の金属イオンを形成し得る。反応塔は、活性炭または活性炭素を任意選択で含有してもよく、あるいは代わりに、活性炭素は、反応塔の外側に存在してもよい。金属イオンと水素ガスまたはSO
2ガスとの反応は、活性炭素上で起こってもよく(ここから、還元されたアノード液を再生してもよい)、または活性炭素は、単純に、ガスから不純物を除去するためのフィルターとして作用してもよい。HClおよび/またはH
2SO
4ならびにより低い酸化状態の金属イオンを含有する還元されたアノード液は、これらに限定されないが、イオン交換樹脂、サイズ排除膜、および酸透析などを含む当技術分野で公知の分離技術を使用した酸回収に供され、アノード液からHClおよび/またはH
2SO
4を分離し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているリガンドは、金属イオンに結合しているリガンドの大きなサイズに起因して、酸性溶液からの金属イオンの分離を促進し得る。より低い酸化状態の金属イオンを含有するアノード液は、電気化学セルに戻して再循環させてもよく、HClおよび/またはH
2SO
4を集めてもよい。いくつかの実施形態において、反応塔の内側の反応は、50〜100℃の温度で1〜10時間起こり得る。
【0226】
金属含有アノード液からHClを分離するイオン交換樹脂の一例は、
図7Cにおいて例示する通りである。
図7Cに例示するように、分離プロセスは、陰イオン交換樹脂への鉱酸の優先的吸着/吸収を含み得る。第1のステップにおいて、HClおよび/またはH
2SO
4を含有するアノード液を、HClおよび/またはH
2SO
4を吸着し、次いでアノード液を分離するイオン交換樹脂に通す。HClおよび/またはH
2SO
4は、樹脂を水で洗浄することによって樹脂から再生され得る。拡散透析は、アノード液から酸を分離するための別の方法でよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているリガンドは、金属イオンに結合しているリガンドの大きなサイズに起因して、酸性溶液からの金属イオンの分離を促進し得る。
【0227】
いくつかの実施形態において、プロセスにおいて発生する塩酸は、部分的にまたは完全に使用され、くず鉄を溶解して、FeCl
2および水素ガスを形成する。プロセスにおいて発生するFeCl
2は、FeCl
3へ変換するためにアノード室に戻して再循環させてもよい。いくつかの実施形態において、水素ガスは、水素燃料電池において使用され得る。また、燃料電池を使用して、本明細書に記載されている電気化学的物品に動力を供給する電気を発生させることができる。いくつかの実施形態において、水素ガスを、米国仮特許出願第61/477,097号(これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されている電気化学的システムに移動させる。
【0228】
いくつかの実施形態において、より低い酸化状態の金属イオンを有する、または有さない塩酸は、別の電気化学的プロセスに供され、水素ガスおよびより高い酸化状態の金属イオンを発生させる。このようなシステムは、
図11において例示する通りである。
【0229】
いくつかの実施形態において、プロセスにおいて発生する塩酸を使用して、下記に例示するような二塩化エチレンを発生させる。
2CuCl(aq)+2HCl(aq)+1/2O
2(g)→2CuCl
2(aq)+H
2O(l)
C
2H
4(g)+2CuCl
2(aq)→2CuCl(aq)+C
2H
4Cl
2(l)
【0230】
いくつかの実施形態において、
図1A、1B、2、3A、3B、4A、4B、5A、5B、および5Cの電気化学的システムのアノード電解質中のより高い酸化状態を伴って形成される金属は、不飽和炭化水素と反応し、金属に結合している陰イオンに基づいて、対応するハロ炭化水素またはスルホ炭化水素を形成し得る。例えば、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、または金属硫酸塩などは、不飽和炭化水素と金属ハロゲン化物または金属硫酸塩との反応の後に、対応するクロロ炭化水素、ブロモ炭化水素、ヨード炭化水素、またはスルホ炭化水素をもたらし得る。いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物または金属硫酸塩と不飽和炭化水素との反応は、上記の生成物、およびより低い酸化状態の金属ハロゲン化物または金属硫酸塩の発生をもたらす。次いで、より高い酸化状態の金属イオンを発生させるために、より低い酸化状態の金属イオンを電気化学的システムに戻して再循環させてもよい。
【0231】
「不飽和炭化水素」は、本明細書において使用する場合、不飽和炭素を有する炭化水素、または隣接する炭素原子の間に少なくとも1つの二重結合および/もしくは少なくとも1つの三重結合を有する炭化水素を含む。不飽和炭化水素は、直鎖、分枝鎖状、または環状(芳香族もしくは非芳香族)でよい。例えば、炭化水素は、オレフィン族、アセチレン族、非芳香族、例えば、シクロヘキセン、芳香族基または置換不飽和炭化水素(これらに限定されないが、ハロゲン化不飽和炭化水素など)でよい。少なくとも1つの二重結合を有する炭化水素は、オレフィンまたはアルケンと称してもよく、C
nH
2nとしての非置換アルケンの一般式を有してもよく、nは、2〜20、または2〜10、または2〜8、または2〜5である。いくつかの実施形態において、アルケン上の1つまたは複数の水素は、これらに限定されないが、ハロゲン(クロロ、ブロモ、ヨード、およびフルオロを含む)、カルボン酸(−COOH)、ヒドロキシル(−OH)、アミンなどの他の官能基でさらに置換されていてもよい。不飽和炭化水素は、これらに限定されないが、シスおよびトランス異性体、EおよびZ異性体、位置異性体などの不飽和の全ての異性体形態を含む。
【0232】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供する方法およびシステムにおける不飽和炭化水素は、ハロゲン化またはスルホン化(硫酸化を含む)の後に式IIの化合物をもたらす式Iのものであり、
【化14】
式中、nは、2〜10であり、mは、0〜5であり、qは、1〜5であり、
Rは、水素、ハロゲン、−COOR’、−OH、および−NR’(R’’)から独立に選択され、ここで、R’およびR’’は、水素、アルキル、および置換アルキルから独立に選択され、
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードから選択されるハロゲン;−SO
3H;または−OSO
2OHである。
【0233】
R置換基(複数可)は、Rおよび炭素原子の数に応じて、1個の炭素原子上または1を超える個数の炭素原子上であり得ることを理解すべきである。単に例として、nが3であり、mが2であるとき、置換基Rは、同じ炭素原子上であっても2個の異なる炭素原子上であってもよい。
【0234】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供する方法およびシステムにおける不飽和炭化水素は、ハロゲン化の後に式IIの化合物をもたらす式Iのものであり、ここで、nは、2〜10であり、mは、0〜5であり、qは、1〜5であり、Rは、水素、ハロゲン、−COOR’、−OH、および−NR’(R’’)から独立に選択され、ここで、R’およびR’’は、水素、アルキル、および置換アルキルから独立に選択され、Xは、クロロ、ブロモ、およびヨードから選択されるハロゲンである。
【0235】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供する方法およびシステムにおける不飽和炭化水素は、ハロゲン化の後に式IIの化合物をもたらす式Iのものであり、ここで、nは、2〜5であり、mは、0〜3であり、qは、1〜4であり、Rは、水素、ハロゲン、−COOR’、−OH、および−NR’(R’’)から独立に選択され、ここで、R’およびR’’は、水素およびアルキルから独立に選択され、Xは、クロロおよびブロモから選択されるハロゲンである。
【0236】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供する方法およびシステムにおける不飽和炭化水素は、ハロゲン化の後に式IIの化合物をもたらす式Iのものであり、ここで、nは、2〜5であり、mは、0〜3であり、qは、1〜4であり、Rは、水素、ハロゲン、および−OHから独立に選択され、Xは、クロロおよびブロモから選択されるハロゲンである。
【0237】
mが1より大きいとき、置換基Rは、同じ炭素原子上であっても異なる炭素原子上であってもよいことを理解すべきである。同様に、qが1より大きいとき、置換基Xは、同じ炭素原子上であっても異なる炭素原子上であってもよいことを理解すべきである。
【0238】
式Iの上記の実施形態についてのいくつかの実施形態において、mは、0であり、qは、1〜2である。このような実施形態において、Xは、クロロである。
【0239】
式Iを含む置換または非置換アルケンの例には、これらに限定されないが、エチレン、クロロエチレン、ブロモエチレン、ヨードエチレン、プロピレン、クロロプロピレン、ヒドロキシルプロピレン、1−ブチレン、2−ブチレン(シスまたはトランス)、イソブチレン、1,3−ブタジエン、ペンチレン、ヘキセン、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロヘキセンなどが含まれる。少なくとも1つの三重結合を有する炭化水素は、アルキンと称してもよく、C
nH
2n−2として非置換アルキンの一般式を有してもよく、ここで、nは、2〜10、または2〜8、または2〜5である。いくつかの実施形態において、アルキン上の1つまたは複数の水素は、これらに限定されないが、ハロゲン、カルボン酸、ヒドロキシルなどの他の官能基でさらに置換されていてもよい。
【0240】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供する方法およびシステムにおける不飽和炭化水素は、ハロゲン化またはスルホン化(硫酸化を含む)の後に式IIAの化合物をもたらす式IAのものであり、
【化15】
式中、nは、2〜10であり、mは、0〜5であり、qは、1〜5であり、Rは、水素、ハロゲン、−COOR’、−OH、および−NR’(R’’)から独立に選択され、ここで、R’およびR’’は、水素、アルキル、および置換アルキルから独立に選択され、
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードから選択されるハロゲン;−SO
3H;または−OSO
2OHである。
【0241】
置換または非置換アルキンの例には、これらに限定されないが、アセチレン、プロピン、クロロプロピン、ブロモプロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシンなどが含まれる。
【0242】
R置換基(複数可)は、Rおよび炭素原子の数に応じて、1個の炭素原子上または1を超える個数の炭素原子上であり得ることを理解すべきである。単に例として、nが3であり、mが2であるとき、置換基Rは、同じ炭素原子上であっても2個の異なる炭素原子上であってもよい。
【0243】
いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するかまたは酸化させるステップと、不飽和炭化水素によってより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を処理するステップとを含む、方法を提供する。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリを形成するステップとを含む。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するステップとを含む。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、ガス拡散カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリまたは水を形成するステップとを含む。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するステップと、不飽和炭化水素によってより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を処理するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、ガス拡散カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリまたは水を形成するステップと、不飽和炭化水素によってより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を処理するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、ガス拡散カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリを形成するステップと、不飽和炭化水素によってより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を処理するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンによる不飽和炭化水素の処理は、カソード室の内側またはカソード室の外側でよい。いくつかの実施形態において、不飽和炭化水素によるより高い酸化状態の金属イオンの処理は、クロロ、ブロモ、ヨード、またはスルホ炭化水素およびより低い酸化状態の金属イオンをもたらす。いくつかの実施形態において、より低い酸化状態の金属イオンは、アノード室に戻して再循環させてもよい。
【0244】
上記の方法のいくつかの実施形態において、アノードは、塩素ガスを生成しない。上記の方法のいくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンによる不飽和炭化水素の処理は、酸素ガスおよび/または塩素ガスを必要としない。上記の方法のいくつかの実施形態において、アノードは、塩素ガスを生成せず、より高い酸化状態の金属イオンによる不飽和炭化水素の処理は、酸素ガスおよび/または塩素ガスを必要としない。
【0245】
いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和炭化水素とを反応させるように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するカソードを含むカソード室を含み、カソードは、カソード電解質中でアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するように構成されている。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するカソードを含むカソード室を含み、カソードは、カソード電解質中でアルカリおよび/または水素ガスを形成するように構成されている。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するガス拡散カソードを含み、カソードは、カソード電解質中でアルカリまたは水を形成するように構成されている。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンを有するアノードを含むアノード室であって、アノードが、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質を有するカソードを含むカソード室であって、カソードが、カソード電解質中でアルカリ、水または水素ガスを形成するように構成されているカソード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和炭化水素とを反応させるように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンを有するアノードを含むアノード室であって、アノードが、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質を有するガス拡散カソードを含むカソード室であって、カソードが、カソード電解質中でアルカリを形成するように構成されているカソード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和炭化水素とを反応させるように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンによる不飽和炭化水素の処理は、カソード室の内側またはカソード室の外側でよい。いくつかの実施形態において、不飽和炭化水素によるより高い酸化状態の金属イオンの処理は、クロロ、ブロモ、ヨード、またはスルホ炭化水素およびより低い酸化状態の金属イオンをもたらす。いくつかの実施形態において、上記システムは、不飽和炭化水素によってより高い酸化状態の金属イオンからより低い酸化状態の金属イオンを形成し、より低い酸化状態の金属イオンをアノード室に戻して再循環させるように構成されている。
【0246】
いくつかの実施形態において、上記の方法およびシステムの実施形態における、および本明細書に記載のような不飽和炭化水素は、式Iのものであるか、またはC2〜C10アルケンもしくはC2〜C5アルケンである。上記のような方法およびシステムのいくつかの実施形態において、上記の実施形態における、および本明細書に記載のような不飽和炭化水素は、エチレンである。このような不飽和炭化水素から形成されるハロ炭化水素は、式IIのもの(本明細書に記載)、例えば、二塩化エチレン、クロロエタノール、塩化ブチル、ジクロロブタン、クロロブタノールなどである。上記のような方法およびシステムのいくつかの実施形態において、金属イオンは、これらに限定されないが、銅、鉄、スズ、またはクロムなどの本明細書に記載されている金属イオンである。
【0247】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、アノードは、塩素ガスを生成しないように構成されている。上記のシステムのいくつかの実施形態において、不飽和炭化水素とより高い酸化状態の金属イオンとを反応させるように構成されている反応器は、酸素ガスおよび/または塩素ガスを必要としないように構成されている。上記の方法のいくつかの実施形態において、アノードは、塩素ガスを生成しないように構成されており、反応器は、酸素ガスおよび/または塩素ガスを必要としないように構成されている。
【0248】
図5Aの電気化学的システムの例は、
図8Aにおいて例示する通りである。
図8Aのシステム800は、単なる例示目的であり、異なる酸化状態を有する他の金属イオンと、他の不飽和炭化水素と、カソード室においてアルカリ以外の生成物、例えば、水または水素ガスを形成する他の電気化学的システムは、上記システムに等しく適用可能であることを理解すべきである。
図4Aまたは4Bのカソードはまた、
図8Aにおいて置換し得る。いくつかの実施形態において、
図8Aに例示するように、電気化学的システム800は、水および酸素から水酸化物イオンを生成する酸素脱分極化カソードを含む。システム800はまた、金属イオンを1+の酸化状態から2+の酸化状態へと変換するアノードを含む。Cu
2+イオンは塩化物イオンと合わさり、CuCl
2を形成する。次いで、金属塩化物CuCl
2は、これらに限定されないがエチレンなどの不飽和炭化水素と反応して、金属イオンのより低い酸化状態への還元を受け、CuCl、およびこれらに限定されないが二塩化エチレンなどのジクロロ炭化水素を形成することができる。次いで、CuClは、CuCl
2への変換のためにアノード室に戻して再循環させる。
【0249】
本発明の方法およびシステムによって形成される二塩化エチレンは、任意の商業目的で使用することができる。いくつかの実施形態において、二塩化エチレンは、クラッキング/精製などのプロセスによって、塩化ビニルモノマー(VCM)形成に供される。塩化ビニルモノマーは、ポリ塩化ビニルの生成において使用され得る。いくつかの実施形態において、VCMへのEDCの変換の間に形成される塩酸は、分離され、アセチレンと反応して、VCMをさらに形成し得る。
【0250】
いくつかの実施形態において、VCM形成のプロセスにおいて発生するHClは、本明細書に記載されている電気化学的システムの1つまたは複数に循環させてもよく、ここでHClは、カソードまたはアノード電解質中で使用され、カソードにおいて水素ガスまたは水を形成する。
図8Bにおけるように、本発明の統合された電気化学的システムを、VCM/PVC合成と組み合わせて例示する。本発明の電気化学的システム、例えば、
図1B、2、4Aまたは5Aにおいて例示するシステムのいずれかを使用して、CuCl
2を形成してもよく、これはエチレンと反応したときにEDCをもたらす。EDCのクラッキング、およびVCMのそれに続く処理によってHClが生成され、これは
図4Bまたは5Bの電気化学的システムのいずれかに循環し、CuCl
2をさらに形成し得る。全プロセスは、
図4Bまたは5Bのシステムのみで行われ得ることを理解すべきである(すなわち、
図1B、2、4Aまたは5Aのシステムを組み込まない)。
【0251】
いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属塩化物を有する水性媒体中のエチレンの塩素化は、二塩化エチレン、クロロエタノール、またはこれらの組合せをもたらす。本明細書に記載されている方法およびシステムのいくつかの実施形態において、エチレンからの10重量%超;または20重量%超、または30重量%超、または40重量%超、または50重量%超、または60重量%超、または70重量%超、または80重量%超、または90重量%超、または95重量%超、または約99重量%、または約10〜99重量%の間、または約10〜95重量%の間、または約15〜95重量%の間、または約25〜95重量%の間、または約50〜95重量%の間、または約50〜99重量%の間の二塩化エチレン、または約50〜99.9重量%の間の二塩化エチレン、または約50〜99.99重量%の間の二塩化エチレンの形成が存在する。いくつかの実施形態において、残りの重量パーセントは、クロロエタノールである。いくつかの実施形態において、反応においてクロロエタノールは形成されない。いくつかの実施形態において、0.001重量%未満または0.01重量%未満または0.1重量%未満または0.5重量%未満または1重量%未満または5重量%未満または10重量%未満または20重量%未満のクロロエタノールは、反応において残りのEDCと共に形成される。いくつかの実施形態において、0.001重量%未満または0.01重量%未満または0.1重量%未満または0.5重量%未満または1重量%未満または5重量%未満の金属イオンが、EDC生成物中に存在する。いくつかの実施形態において、0.001重量%未満または0.01重量%未満または0.1重量%未満のクロロエタノールおよび/または金属イオンが、EDC生成物中に存在する。
【0252】
いくつかの実施形態において、金属イオンを含有するEDC生成物を、有機溶媒によってすすぐステップ、またはEDC生成物をカラムに通して金属イオンを除去するステップを含み得る洗浄ステップに供し得る。いくつかの実施形態において、EDC生成物は、蒸留によって精製してもよく、ここで副生成物、例えば、クロラール(CCl
3CHO)および/または抱水クロラール(2,2,2−トリクロロエタン−1,1−ジオール)のいずれかが形成される場合、これらは分離し得る。
【0253】
いくつかの実施形態において、不飽和炭化水素は、プロペンである。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオン、例えば、CuCl
2をプロペンで処理し、二塩化プロパン(C
3H
6Cl
2)またはジクロロプロパン(DCP)がもたらされ、これは塩化アリル(C
3H
5Cl)を作製するために使用することができる。いくつかの実施形態において、不飽和炭化水素は、ブタンまたはブチレンである。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオン、例えば、CuCl
2をブテンで処理し、ブタンジクロリド(C
4H
8Cl
2)またはジクロロブテン(C
4H
6Cl
2)がもたらされ、これはクロロプレン(C
4H
5Cl)を作製するために使用することができる。いくつかの実施形態において、不飽和炭化水素は、ベンゼンである。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオン、例えば、CuCl
2をベンゼンで処理し、クロロベンゼンがもたらされる。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオン、例えば、CuCl
2をアセチレンで処理し、クロロアセチレン、ジクロロアセチレン、塩化ビニル、ジクロロエテン、テトラクロロエテン、またはこれらの組合せがもたらされる。いくつかの実施形態において、不飽和炭化水素をより高い酸化状態の金属塩化物で処理し、これらに限定されないが、二塩化エチレン、クロロエタノール、クロロプロペン、酸化プロピレン(さらにデヒドロ塩素化された)、塩化アリル、塩化メチル、トリクロロエチレン、テトラクロロエテン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,1−ジクロロエテン、クロロフェノール、塩素化トルエンなどを含む生成物を形成する。
【0254】
いくつかの実施形態において、金属イオンを使用した、不飽和炭化水素からのハロゲン化炭化水素の収率、例えば、エチレンからのEDCの収率、またはプロピレンからのDCPの収率、またはブテンからのジクロロブテンは、90重量%超または95重量%超または90〜95重量%の間または90〜99重量%の間または90〜99.9重量%の間である。いくつかの実施形態において、金属イオンを使用した、不飽和炭化水素からのハロゲン化炭化水素の選択性、例えば、エチレンからのEDCの収率、またはプロピレンからのDCPの収率、またはブテンからのジクロロブテンは、80重量%超または90重量%超または80〜99重量%の間である。いくつかの実施形態において、金属イオンを使用した、不飽和炭化水素からのハロゲン化炭化水素のSTY(空時収率)、例えば、エチレンからのEDCの収率、またはプロピレンからのDCPの収率、またはブテンからのジクロロブテンは、3より大きいかまたは4より大きいかまたは5より大きいかまたは3〜5の間または3〜6の間または3〜8の間である。
【0255】
いくつかの実施形態において、
図1A、1B、2、3A、3B、4A、4B、5A、および5Bの電気化学的システムのアノード電解質中のより高い酸化状態を伴って形成される金属は、飽和炭化水素と反応し、金属に結合している陰イオンに基づいて、対応するハロ炭化水素またはスルホ炭化水素を形成し得る。例えば、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、または金属硫酸塩などは、飽和炭化水素と金属ハロゲン化物または金属硫酸塩との反応の後に、対応するクロロ炭化水素、ブロモ炭化水素、ヨード炭化水素、またはスルホ炭化水素をもたらし得る。いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物または金属硫酸塩と飽和炭化水素との反応は、上記の生成物、およびより低い酸化状態の金属ハロゲン化物または金属硫酸塩の発生をもたらす。次いで、より高い酸化状態の金属イオンの発生させるために、より低い酸化状態の金属イオンを電気化学的システムに戻して再循環させてもよい。
【0256】
「飽和炭化水素」は、本明細書において使用する場合、不飽和炭素も不飽和炭化水素も有さない炭化水素を含む。炭化水素は、直鎖、分枝鎖状、または環状でよい。例えば、炭化水素は、置換または非置換アルカンおよび/あるいは置換または非置換シクロアルカンでよい。炭化水素は、C
nH
2n+2として非置換アルカンの一般式を有してもよく、nは、2〜20または2〜10または2〜8、または2〜5である。いくつかの実施形態において、アルカンまたはシクロアルカン上の1つまたは複数の水素は、これらに限定されないが、ハロゲン(クロロ、ブロモ、ヨード、およびフルオロを含む)、カルボン酸(−COOH)、ヒドロキシル(−OH)、アミンなどの他の官能基でさらに置換されていてもよい。
【0257】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供する方法およびシステムにおける飽和炭化水素は、ハロゲン化またはスルホン化(硫酸化を含む)の後に式IVの化合物をもたらす式IIIのものであり、
【化16】
式中、nは、2〜10であり、kは、0〜5であり、sは、1〜5であり、
Rは、水素、ハロゲン、−COOR’、−OH、および−NR’(R’’)から独立に選択され、R’およびR’’は、水素、アルキル、および置換アルキルから独立に選択され、
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードから選択されるハロゲン;−SO
3H;または−OSO
2OHである。
【0258】
R置換基(複数可)は、Rおよび炭素原子の数に応じて、1個の炭素原子上または1を超える個数の炭素原子上であり得ることを理解すべきである。単に例として、nが3であり、kが2であるとき、置換基Rは、同じ炭素原子上であっても2個の異なる炭素原子上であってもよい。
【0259】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供する方法およびシステムにおける飽和炭化水素は、ハロゲン化の後に式IVの化合物をもたらす式IIIのものであり、
式中、nは、2〜10であり、kは、0〜5であり、sは、1〜5であり、
Rは、水素、ハロゲン、−COOR’、−OH、および−NR’(R’’)から独立に選択され、ここで、R’およびR’’は、水素、アルキル、および置換アルキルから独立に選択され、
Xは、クロロ、ブロモ、およびヨードから選択されるハロゲンである。
【0260】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供する方法およびシステムにおける飽和炭化水素は、ハロゲン化の後に式IVの化合物をもたらす式IIIのものであり、
式中、nは、2〜5であり、kは、0〜3であり、sは、1〜4であり、
Rは、水素、ハロゲン、−COOR’、−OH、および−NR’(R’’)から独立に選択され、ここで、R’およびR’’は、水素およびアルキルから独立に選択され、
Xは、クロロおよびブロモから選択されるハロゲンである。
【0261】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供する方法およびシステムにおける飽和炭化水素は、ハロゲン化の後に式IVの化合物をもたらす式IIIのものであり、
式中、nは、2〜5であり、kは、0〜3であり、sは、1〜4であり、
Rは、水素、ハロゲン、および−OHから独立に選択され、
Xは、クロロおよびブロモから選択されるハロゲンである。
【0262】
kが1より大きいとき、置換基Rは、同じ炭素原子上であっても異なる炭素原子上であってもよいことを理解すべきである。同様に、sが1より大きいとき、置換基Xは、同じ炭素原子上であっても異なる炭素原子上であってもよいことを理解すべきである。
【0263】
式IIIの上記の実施形態についてのいくつかの実施形態において、kは、0であり、sは、1〜2である。このような実施形態において、Xは、クロロである。
【0264】
例えば、式IIIの置換または非置換アルカンの例には、これらに限定されないが、メタン、エタン、クロロエタン、ブロモエタン、ヨードエタン、プロパン、クロロプロパン、ヒドロキシプロパン、ブタン、クロロブタン、ヒドロキシブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、クロロシクロペンタンなどが含まれる。
【0265】
いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するかまたは酸化させるステップと、飽和炭化水素によってより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を処理するステップとを含む、方法を提供する。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリを形成するステップとを含む。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリおよび水素ガスを形成するステップとを含む。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいて水素ガスを形成するステップとを含む。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、ガス拡散カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリを形成するステップとを含む。上記方法のいくつかの実施形態において、方法は、ガス拡散カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいて水を形成するステップとを含む。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリ、水、および/または水素ガスを形成するステップと、飽和炭化水素によってより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を処理するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノード室におけるアノード電解質中の金属イオンとアノードとを接触させるステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するステップと、ガス拡散カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいてアルカリまたは水を形成するステップと、飽和炭化水素によってより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を処理するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンによる飽和炭化水素の処理は、カソード室の内側またはカソード室の外側でよい。いくつかの実施形態において、飽和炭化水素によるより高い酸化状態の金属イオンの処理は、ハロゲン化炭化水素またはスルホ炭化水素、例えば、クロロ、ブロモ、ヨード、またはスルホ炭化水素、およびより低い酸化状態の金属イオンをもたらす。いくつかの実施形態において、より低い酸化状態の金属イオンは、アノード室に戻して再循環させてもよい。いくつかの実施形態において、上記の実施形態における、および本明細書に記載のような飽和炭化水素は、式III(本明細書に記載)のものであり、またはC2〜C10アルカンもしくはC2〜C5アルカンである。いくつかの実施形態において、上記の実施形態における、および本明細書に記載のような飽和炭化水素は、メタンである。いくつかの実施形態において、上記の実施形態における、および本明細書に記載のような飽和炭化水素は、エタンである。いくつかの実施形態において、上記の実施形態における、および本明細書に記載のような飽和炭化水素は、プロパンである。このような飽和炭化水素から形成されるハロ炭化水素は、式IV(本明細書に記載)のもの、例えば、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロエタン、ジクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパンなどである。
【0266】
上記の方法のいくつかの実施形態において、使用される金属イオンは、白金、パラジウム、銅、鉄、スズ、およびクロムである。上記の方法のいくつかの実施形態において、アノードは、塩素ガスを生成しない。上記の方法のいくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンによる飽和炭化水素の処理は、酸素ガスおよび/または塩素ガスを必要としない。上記の方法のいくつかの実施形態において、アノードは、塩素ガスを生成せず、より高い酸化状態の金属イオンによる飽和炭化水素の処理は、酸素ガスおよび/または塩素ガスを必要としない。
【0267】
いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンと接触しているアノードを含むアノード室であって、アノードが、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と飽和炭化水素とを反応させるように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するカソードを含むカソード室を含み、カソードは、カソードにおいてアルカリを形成するように構成されている。システムのいくつかの実施形態において、上記システムは、カソード電解質を有するカソードを含むカソード室を含み、カソードは、カソードにおいて水素ガスを形成するように構成されている。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するカソードを含むカソード室を含み、カソードは、カソードにおいてアルカリおよび水素ガスを形成するように構成されている。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するガス拡散カソードを含み、カソードは、カソードにおいてアルカリを形成するように構成されている。上記システムのいくつかの実施形態において、システムは、カソード電解質を有するガス拡散カソードを含み、カソードは、カソードにおいて水を形成するように構成されている。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンを有するアノードを含むアノード室であって、アノードが、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質を有するカソードを含むカソード室であって、カソードが、カソード電解質中でアルカリ、水、および水素ガスを形成するように構成されているカソード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と飽和炭化水素とを反応させるように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、アノード電解質中の金属イオンを有するアノードを含むアノード室であって、アノードが、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと変換するように構成されているアノード室と;カソード電解質を有するガス拡散カソードを含むカソード室であって、カソードが、カソード電解質中でアルカリまたは水を形成するように構成されているカソード室と;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と飽和炭化水素とを反応させるように構成されている反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンによる飽和炭化水素の処理は、カソード室の内側またはカソード室の外側でよい。いくつかの実施形態において、飽和炭化水素によるより高い酸化状態の金属イオンの処理は、クロロ、ブロモ、ヨード、またはスルホ炭化水素およびより低い酸化状態の金属イオンをもたらす。いくつかの実施形態において、上記システムは、飽和炭化水素によってより高い酸化状態の金属イオンからより低い酸化状態の金属イオンを形成し、より低い酸化状態の金属イオンをアノード室に戻して再循環させるように構成されている。
【0268】
上記のような方法およびシステムのいくつかの実施形態において、金属イオンは、これらに限定されないが、白金、パラジウム、銅、鉄、スズ、またはクロムなどの、本明細書に記載されている金属イオンである。
【0269】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、アノードは、塩素ガスを生成しないように構成されている。上記のシステムのいくつかの実施形態において、飽和炭化水素とより高い酸化状態の金属イオンとを反応させるように構成されている反応器は、酸素ガスおよび/または塩素ガスを必要としないように構成されている。上記の方法のいくつかの実施形態において、アノードは、塩素ガスを生成しないように構成されており、反応器は、酸素ガスおよび/または塩素ガスを必要としないように構成されている。
【0270】
図8Aにおいて例示する電気化学的システムの例は、不飽和炭化水素を飽和炭化水素で置き換えることによって、飽和炭化水素用に構成することができることを理解すべきである。したがって、適切な金属イオン、例えば、塩化白金、塩化パラジウム、塩化銅などを使用し得る。
【0271】
いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属塩化物を有する水性媒体中のエタンの塩素化は、塩化エタン、二塩化エタン、またはこれらの組合せをもたらす。本明細書に記載されている方法およびシステムのいくつかの実施形態において、エタンからの10重量%超;または20重量%超、または30重量%超、または40重量%超、または50重量%超、または60重量%超、または70重量%超、または80重量%超、または90重量%超、または95重量%超、または約99重量%、または約10〜99重量%の間、または約10〜95重量%の間、または約15〜95重量%の間、または約25〜95重量%の間、または約50〜95重量%の間、または約50〜99重量%の間、または約50〜99.9重量%の間、または約50〜99.99重量%の間のクロロエタンの形成が存在する。いくつかの実施形態において、残りの重量パーセントは、クロロエタノールおよび/または二塩化エチレンである。いくつかの実施形態において、反応においてクロロエタノールは形成されない。いくつかの実施形態において、0.001重量%未満または0.01重量%未満または0.1重量%未満または0.5重量%未満または1重量%未満または5重量%未満または10重量%未満または20重量%未満のクロロエタノールは、反応において残りの生成物と共に形成される。いくつかの実施形態において、0.001重量%未満または0.01重量%未満または0.1重量%未満または0.5重量%未満または1重量%未満または5重量%未満の金属イオンが、生成物中に存在する。いくつかの実施形態において、0.001重量%未満または0.01重量%未満または0.1重量%未満のクロロエタノールおよび/または金属イオンが、生成物中に存在する。
【0272】
いくつかの実施形態において、金属イオンを使用した、飽和炭化水素からのハロゲン化炭化水素の収率、例えば、エタンからのクロロエタンまたはEDCの収率は、90重量%超または95重量%超または90〜95重量%の間または90〜99重量%の間または90〜99.9重量%の間である。いくつかの実施形態において、金属イオンを使用した、飽和炭化水素からのハロゲン化炭化水素の選択性、例えば、エタンからのクロロエタンまたはEDCの収率は、80重量%超または90重量%超または80〜99重量%の間である。いくつかの実施形態において、飽和炭化水素からのハロゲン化炭化水素のSTY(空時収率)は、3より大きいかまたは4より大きいかまたは5より大きいかまたは3〜5の間または3〜6の間または3〜8の間である。
【0273】
本発明の方法およびシステムによって形成される、これらに限定されないが、ハロゲン化炭化水素、酸、カーボネート、および/またはビカーボネートなどの生成物は、当技術分野において従前より公知の方法およびシステムによって形成される同じ生成物より環境により配慮している。アノードとアノード電解質とを接触させるステップと、アノードにおいて金属塩化物をより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、不飽和または飽和炭化水素をより高い酸化状態の金属塩化物でハロゲン化し、環境に配慮したハロゲン化炭化水素を生成するステップとを含む、環境に配慮したハロゲン化炭化水素を作製する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法によって形成される環境に配慮したハロゲン化炭化水素を提供する。アノード電解質と接触しており、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと;カソード電解質と接触しているカソードと;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンと不飽和または飽和炭化水素とを反応させ、環境に配慮したハロゲン化炭化水素を形成するように構成されている反応器とを含むシステムをまた提供する。
【0274】
「環境により配慮した」もしくは「環境に配慮した」という用語、またはその文法的同等物は、本明細書において使用する場合、当技術分野において公知の方法によって形成された同じ化学物質または生成物と比較して、より高いエネルギー削減または電圧削減を伴う本発明の方法およびシステムによって形成された任意の化学物質または生成物を含む。例えば、クロロアルカリは、塩素ガスを作製するために典型的には使用されるプロセスであり、次いで、この塩素ガスを使用して、エチレンを塩素化し、EDCを形成する。クロロアルカリプロセスからEDCを作製するのに必要とされるエネルギーの量は、本発明の金属酸化プロセスからEDCを作製するのに必要とされるエネルギーの量より高い。したがって、本発明の方法およびシステムによって生成されたEDCは、クロロアルカリプロセスによって生成されたEDCより環境により配慮している。エネルギーのこのような削減は、クロロアルカリプロセスについての活性化障壁と比較した、本発明の方法を行うための活性化障壁を例示する
図8Cに例示されている。
【0275】
図8Cに例示するように、クロロアルカリプロセスからEDCを作製するのに必要とされるエネルギーと、本発明の方法およびシステムからEDCを作製するのに必要とされるエネルギーとの間で比較を行う。EDCを作製するプロセスを、2つのパートで例示する。電気化学パート(クロロアルカリプロセスにおいて起こる塩素の発生と比較して、銅酸化は、本発明のシステム1およびシステム2において起こる)。触媒作用パート(システム1および2において(電気化学によって発生する)塩化銅(II)がエチレンを塩素化し、(クロロアルカリプロセスによって発生する)塩素ガスが(従前より公知である)エチレンを塩素化し、EDCを形成する)。システム1において、電気化学反応をリガンドの非存在下で行い、システム2において、電気化学反応をリガンドの存在下で行う。システム1、システム2、およびクロロアルカリプロセスにおいて、カソードは、水素ガス生成カソードであり、電気化学反応についての電流密度は、300mA/cm
2である。
図8Cに例示するように、電気化学反応について、システム1についてクロロアルカリプロセスに対して125kJ/mol超のエネルギー削減、およびシステム2についてクロロアルカリプロセスに対して225kJ/mol超のエネルギー削減がされる。したがって、本発明の方法およびシステムによって、これらに限定されないがEDCなどの環境に配慮したハロゲン化炭化水素を作製するのに、従来のプロセス、例えば、EDCを作製するためのクロロアルカリプロセスと比較して、300kJ/molまで;または250kJ/molまで;または50〜300kJ/molの間;または50〜250kJ/molの間;または100〜250kJ/molの間;または100〜200kJ/molの間のエネルギー削減をすることができる。これは、クロロアルカリプロセスと比較して、システム1および2について1メガワット時/トン超のEDCまたは1〜21メガワット時/トンの間のEDCの削減に換算される。これはまた、クロロアルカリプロセスと比較して、1V超または1〜2Vの間の電圧削減(1V×2電子は、およそ200kJ/molである)と相関する。
【0276】
図8Cにおいてまた例示するように、反応の触媒パートは、それぞれシステム1および2について理論的な低い障壁、ならびに2つのシステム1および2について高い障壁を有する。システム1およびシステム2における触媒反応は、これらに限定されないが、濃度、反応器のサイズ、流量などの条件に応じて、低い障壁のポイントにおいて、または高い障壁のポイントにおいて、またはその間のどこかで起き得る。システム1および2において触媒作用反応へのいくらかのエネルギー入力がたとえ存在しても、これは電気化学反応における有意なエネルギー削減によって相殺され、100kJ/molまで;または100kJ/mol超;または50〜100kJ/molの間;または0〜100kJ/molの間の正味のエネルギー削減が存在する。これは、クロロアルカリプロセスと比較して、1メガワット時/トンまで、または1メガワット時/トン超のEDC、あるいは0〜1Vまたは1V超;または1〜2Vの間の電圧削減に換算される。クロロアルカリプロセス、システム1およびシステム2は、全て水性媒体中で行われることを理解すべきである。有機溶媒(例えば、共沸蒸留によって除去される電気化学セルからの水のいくらかまたは全てを有する)上で動く電気化学セルまたは触媒作用システムは、従来の方法よりもさらにより高いエネルギーを必要とし、環境に配慮したハロゲン化炭化水素を与えない。
【0277】
図8Cにおいてまたさらに例示するのは、リガンドの使用を伴わないシステム1と比較した、リガンドの使用を伴うシステム2におけるエネルギーの削減である。
【0278】
したがって、アノードとアノード電解質とを接触させるステップと、アノードにおいて金属塩化物をより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、不飽和または飽和炭化水素をより高い酸化状態の金属塩化物でハロゲン化し、環境に配慮したハロゲン化炭化水素を生成するステップとを含む環境に配慮したハロゲン化炭化水素を作製する方法を提供し、上記方法は、100kJ/mol超または150kJ/mol超または200kJ/mol超または100〜250kJ/molの間または50〜100kJ/molの間または0〜100kJ/molの間の正味のエネルギー削減をもたらすか、あるいは上記方法は、1V超または0〜1Vまたは1〜2Vまたは0〜2Vの電圧削減をもたらす。アノード電解質と接触しており、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと;カソード電解質と接触しているカソードと;アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属イオンと不飽和または飽和炭化水素とを反応させ、環境に配慮したハロゲン化炭化水素を形成するように構成されている反応器とを含むシステムをまた提供し、上記システムは、100kJ/mol超または150kJ/mol超または200kJ/mol超または100〜250kJ/molの間または50〜100kJ/molの間または0〜100kJ/molの間の正味のエネルギー削減をもたらすか、あるいは上記システムは、1V超または0〜1Vの間または1〜2Vの間または0〜2Vの間の電圧削減をもたらす。
【0279】
全ての本明細書に記載されている電気化学的システムおよび方法は、5重量%超の水もしくは6重量%超の水または水性媒体中で行う。一態様において、上記方法およびシステムは、電気化学セルにおいて金属酸化反応およびセルの外側で還元反応を行う(全て水性媒体中である)利点を提供する。本出願人等は、不飽和もしくは飽和炭化水素または水素ガスのハロゲン化またはスルホン化における水性媒体の使用は、生成物の高い収率および選択性をもたらしただけでなく(本明細書の実施例において示す)、水性媒体中でより低い酸化状態を有する還元された金属イオンの発生をもたらした(これは電気化学的システムに戻して再循環させることができる)ことを驚いたことに予想外に見出した。いくつかの実施形態において、電気化学セルは水性媒体中で効率的に作動するため、水性媒体中で不飽和もしくは飽和炭化水素または水素ガスと反応する、より高い酸化状態の金属イオンを含有するアノード電解質から、(例えば、共沸蒸留による)水を除去することは必要とされず、最小限度の除去も必要とされない。したがって、電気化学セルおよび触媒作用システムの両方における水性媒体の使用は、本発明の効率的でよりエネルギー集約型でない統合システムおよび方法を提供する。
【0280】
したがって、いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させるステップであって、アノード電解質が、金属イオンを含むステップと、アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、水性媒体中で、上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和または飽和炭化水素とを反応させるステップであって、水性媒体が、5重量%超の水または5.5重量%超もしくは6重量%超もしくは5〜90重量%の間もしくは5〜95重量%の間もしくは5〜99重量%の間の水または5.5〜90重量%の間もしくは5.5〜95重量%の間もしくは5.5〜99重量%の間の水または6〜90重量%の間もしくは6〜95重量%の間もしくは6〜99重量%の間の水を含むステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させるステップであって、アノード電解質が、金属イオンを含むステップと、アノードにおいて金属ハロゲン化物または金属硫酸塩をより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、水性媒体中で不飽和または飽和炭化水素をより高い酸化状態の金属ハロゲン化物または金属硫酸塩でハロゲン化またはスルホン化するステップであって、水性媒体が、5重量%超もしくは5.5重量%超もしくは6重量%超もしくは5〜90重量%の間もしくは5〜95重量%の間もしくは5〜99重量%の間の水または5.5〜90重量%の間もしくは5.5〜95重量%の間もしくは5.5〜99重量%の間の水または6〜90重量%の間もしくは6〜95重量%の間もしくは6〜99重量%の間の水を含むステップとを含む、方法を提供する。不飽和炭化水素(例えば、式I)、飽和炭化水素(例えば、式III)、ハロゲン化炭化水素(例えば、式IIおよびIV)、金属イオンなどを、全て本明細書において詳細に記載してきた。
【0281】
いくつかの実施形態において、アノードとアノード電解質とを接触させるステップと、アノードにおいて金属ハロゲン化物または金属硫酸塩をより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、より高い酸化状態の金属ハロゲン化物または金属硫酸塩と、水性媒体中の水素ガスとを接触させ、酸、例えば、塩酸または硫酸を形成するステップであって、水性媒体が、5重量%超の水または5.5重量%超もしくは6重量%超もしくは5〜90重量%の間もしくは5〜95重量%の間もしくは5〜99重量%の間の水または5.5〜90重量%の間もしくは5.5〜95重量%の間もしくは5.5〜99重量%の間の水または6〜90重量%の間もしくは6〜95重量%の間もしくは6〜99重量%の間の水を含むステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、カソードは、水酸化物イオンを生成する。
【0282】
上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは、水、アルカリ、および/または水素ガスを生成する。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは、水を生成するODCである。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは、アルカリを生成するODCである。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは、水素ガスを生成する。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは、酸素および水を水酸化物イオンに還元する酸素脱分極カソードであり、カソードは、水を水素ガスおよび水酸化物イオンに還元する水素ガス生成カソードであり、カソードは、塩酸を水素ガスに還元する水素ガス生成カソードであり、またはカソードは、塩酸および酸素ガスを反応させ、水を形成する酸素脱分極カソードである。
【0283】
上記の方法のいくつかの実施形態において、金属イオンは、本明細書に記載されている任意の金属イオンである。上記の方法のいくつかの実施形態において、金属イオンは、鉄、クロム、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、金属イオンは、鉄、クロム、銅、およびスズからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、金属イオンは、銅である。いくつかの実施形態において、金属イオンのより低い酸化状態は、1+、2+、3+、4+、または5+である。いくつかの実施形態において、金属イオンのより高い酸化状態は、2+、3+、4+、5+、または6+である。
【0284】
いくつかの実施形態において、上記方法は、より低い酸化状態の金属イオンの少なくとも一部を、電気化学セルに戻して再循環させるステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、より高い酸化状態の金属イオンと不飽和または飽和炭化水素とを反応させる前に、水の共沸蒸留を行わない。いくつかの実施形態において、上記の方法は、アノードにおいて塩素ガスを生成しない。いくつかの実施形態において、上記の方法は、ハロゲン化炭化水素への不飽和または飽和炭化水素の塩素化に、酸素ガスおよび/または塩素ガスを必要としない。
【0285】
いくつかの実施形態において、金属イオンを含むアノード電解質と接触しており、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと;カソード電解質と接触しているカソードと;アノード室に動作可能に接続されており、かつ水性媒体中でより高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と不飽和炭化水素または飽和炭化水素とを反応させるように構成されている反応器であって、水性媒体が、5重量%超の水または5.5重量%超もしくは6重量%超もしくは5〜90重量%の間もしくは5〜95重量%の間もしくは5〜99重量%の間の水または5.5〜90重量%の間もしくは5.5〜95重量%の間もしくは5.5〜99重量%の間の水または6〜90重量%の間もしくは6〜95重量%の間もしくは6〜99重量%の間の水を含む反応器とを含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、アノード電解質と接触しており、かつアノードにおいて金属ハロゲン化物または金属硫酸塩をより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと、カソード電解質と接触しているカソードと、アノード室に動作可能に接続されており、かつ水性媒体中でより高い酸化状態の金属ハロゲン化物または金属硫酸塩で不飽和または飽和炭化水素をハロゲン化またはスルホン化するように構成されている反応器であって、水性媒体が、5重量%超の水または5.5重量%超もしくは6重量%超もしくは5〜90重量%の間もしくは5〜95重量%の間もしくは5〜99重量%の間の水または5.5〜90重量%の間もしくは5.5〜95重量%の間もしくは5.5〜99重量%の間の水または6〜90重量%の間もしくは6〜95重量%の間もしくは6〜99重量%の間の水を含む反応器とを含む、システムを提供する。
【0286】
いくつかの実施形態において、アノード電解質と接触しており、かつアノードにおいて金属ハロゲン化物または金属硫酸塩をより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと、カソード電解質と接触しているカソードと、アノード室に動作可能に接続されており、かつより高い酸化状態の金属ハロゲン化物または金属硫酸塩と、水性媒体中の水素ガスとを接触させ、酸、例えば、塩酸または硫酸を形成するように構成されている反応器であって、水性媒体が、5重量%超の水または5.5重量%超もしくは6重量%超もしくは5〜90重量%の間もしくは5〜95重量%の間もしくは5〜99重量%の間の水または5.5〜90重量%の間もしくは5.5〜95重量%の間もしくは5.5〜99重量%の間の水または6〜90重量%の間もしくは6〜95重量%の間もしくは6〜99重量%の間の水を含む反応器とを含む、システムを提供する。
【0287】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、カソードは、水酸化物イオンを生成するように構成されている。上記のシステムのいくつかの実施形態において、カソードは、水素ガスを生成するように構成されている。上記のシステムのいくつかの実施形態において、カソードは、水を生成するように構成されている。上記のシステムのいくつかの実施形態において、カソードは、ODCである。このような方法およびシステムのいくつかの実施形態において、アノード電解質中の水の量を低減させるのに、水の共沸蒸留は必要とされない。いくつかの実施形態において、上記システムは、生成物、例えば、酸またはハロゲン化炭化水素をより低い酸化状態の金属イオンから分離する、反応器に動作可能に接続されているセパレーターをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記システムは、電気化学的システムのセパレーターおよびアノード室に動作可能に接続されている再循環システムをさらに含み、この再循環システムは、より低い酸化状態の金属イオンの少なくとも一部をセパレーターから電気化学セルへと戻して再循環するように構成されている。このような再循環システムは、溶液を移動させるために使用され得るコンジット、パイプ、チューブなどでよい。適当な制御バルブおよびコンピュータ制御システムは、このような再循環システムと関連していてもよい。
【0288】
いくつかの実施形態において、上記のシステムは、アノードにおいて塩素ガスを生成しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記のシステムは、ハロゲン化炭化水素への不飽和または飽和炭化水素の塩素化に、酸素ガスおよび/または塩素ガスを必要としないように構成されている。
【0289】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明する方法およびシステムは、金属イオン溶液を電気化学セルに戻して循環させる前に、ハロゲン化炭化水素および/または他の有機生成物(本明細書で説明するように、飽和または不飽和炭化水素をより高い酸化状態の金属イオンと反応させた後に形成されるもの)を、金属イオンから分離するステップを含む。いくつかの実施形態において、電気化学セルにおける膜のファウリングを防止するために、金属イオン溶液を電気化学セルに戻して循環させる前に、有機物を金属イオン溶液から除去することが望ましい場合がある。本明細書で上述したように、不飽和または飽和炭化水素との反応の後、金属イオンを含有する水性媒体は、有機生成物(例えば、ハロゲン化炭化水素および他の副生成物(痕跡量で存在する可能性がある)であるが、これらに限定されない)を含有する。例えば、より高い酸化状態の金属イオンを含有する金属イオン溶液は、エチレンと反応して、より低い酸化状態の金属イオンおよび二塩化エチレンを形成する。クロロエタノール、ジクロロアセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド(クロラール)等を含むが、これらに限定されない他の副生成物が形成される可能性がある。金属イオンを含有する水性媒体を電気化学セルへ戻して循環させる前に、水性媒体中の金属イオンから有機生成物を分離する方法およびシステムを提供する。水性媒体は、より低い酸化状態の金属イオンとより高い酸化状態の金属イオンの両方の混合物であってよく、より低い酸化状態の金属イオンとより高い酸化状態の金属イオンの比は、電気化学セルからの水性媒体(ここで、より低い酸化状態はより高い酸化状態へ変換される)、および炭化水素と反応した後の水性媒体(ここで、より高い酸化状態はより低い酸化状態へ変換される)に応じて変わる。
【0290】
いくつかの実施形態において、水性媒体中での金属イオンからの有機生成物の分離は、吸着剤を用いて実施される。本明細書で用いる「吸着剤」は、有機化合物に対して高い親和性を有し、かつ、金属イオンに対して親和性を有さないかもしくは非常に低い親和性を有する、化合物を含む。いくつかの実施形態において、吸着剤は、金属イオンに対して親和性を有さないかもしくは低い親和性を有することに加えて、水に対して親和性を有さないかもしくは非常に低い親和性を有する。したがって、吸着剤は、有機物を吸着するが、金属イオンおよび水をはじく疎水性化合物であってよい。本明細書で用いる「有機物」、または「有機化合物」または「有機生成物」は、その中に炭素を有する任意の化合物を含む。
【0291】
いくつかの実施形態において、上記方法は、吸着剤(例えば、活性炭、アルミナ、活性シリカ、ポリマー等であるが、これらに限定されない)を用いて、金属イオン溶液から有機生成物を除去するステップを含む。これらの吸着剤は市販されている。本方法において使用できる活性炭の例には、粉末活性炭、顆粒状活性炭、押出成形活性炭、ビーズ活性炭、含浸炭素、ポリマーコーティング炭素、炭素布等が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において吸着剤の関連で使用される「吸着剤ポリマー」または「ポリマー」は、有機化合物に対して高い親和性を有するが、金属イオンおよび水に対して親和性を有しないかもしくは低い親和性を有する、ポリマーを含む。吸着剤として使用できるポリマーの例には、ポリオレフィンが含まれるが、これに限定されない。本明細書で用いる「ポリオレフィン」または「ポリアルケン」には、モノマーとしてオレフィン(またはアルケン)から生成されるポリマーが含まれる。オレフィンまたはアルケンは、脂肪族化合物であっても芳香族化合物であってもよい。その例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン−1、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、ポリメチルアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、およびポリ(イソブチルメタクリレート)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0292】
いくつかの実施形態において、本明細書で用いる吸着剤は、金属イオン、有機化合物および水を含有する水性媒体から、90重量/重量%超の有機化合物、または95重量/重量%超の有機化合物、または99重量/重量%超もしくは99.99重量/重量%超の有機化合物、または99.999重量/重量%超の有機化合物を吸着する。いくつかの実施形態において、本明細書で用いる吸着剤は、金属イオン、有機化合物および水を含有する水性媒体から、2重量/重量%未満の金属イオン、または1重量/重量%未満の金属イオン、または0.1重量/重量%未満の金属イオン、または0.01重量/重量%未満の金属イオン、または0.001重量/重量%未満の金属イオンを吸着する。いくつかの実施形態において、本明細書で用いる吸着剤は水性媒体から金属イオンを吸着しない。いくつかの実施形態において、吸着剤を通過させた(かつ、電気化学セルに戻して再循環した)後で得られる水性媒体は、100ppm未満、または50ppm未満、または10ppm未満、または1ppm未満の有機化合物を含有する。
【0293】
吸着剤は、市販されている任意の形状および形態で使用することができる。例えば、いくつかの方法およびシステムの実施形態では、吸着剤は、粉末状、板状、メッシュ状、ビーズ状、布状、繊維状、丸剤状、フレーク状、およびブロック状のものなどである。いくつかの方法およびシステムの実施形態において、吸着剤はベッド、および充填カラムなどの形態である。いくつかの方法およびシステムの実施形態において、吸着剤は、充填された吸着剤材料の一連のベッドまたはカラムの形態であってよい。例えば、いくつかの方法およびシステムの実施形態では、吸着剤は、活性炭粉末、ポリスチレンビーズまたはポリスチレン粉末を含有する充填カラム(並列または直列に配置された)の1つもしくは複数である。
【0294】
いくつかの方法およびシステムの実施形態において、有機生成物の吸着の後、種々の脱着技術(不活性流体(例えば水)でのパージ、pHなどの化学的条件の変更、温度の上昇、分圧の低下、濃度の低下、高温の不活性ガスでのパージ(例えば、>100
oCの蒸気、窒素ガス、アルゴンガスまたは空気でのパージであるが、これらに限定されない)等を含むが、これらに限定されない)を用いることによって、吸着剤を再生させる。
【0295】
いくつかの方法およびシステムの実施形態において、脱着プロセス後に、吸着剤を処分、焼却または廃棄することができる。いくつかの方法およびシステムの実施形態において、吸着剤を、脱着後に吸着プロセスにおいて再使用する。いくつかの方法およびシステムの実施形態において、吸着剤を、廃棄する前に、複数回の吸着および再生サイクルで再使用する。いくつかの方法およびシステムの実施形態において、吸着剤を、廃棄する前に、1、2、3、4、5回、またはそれを超える回数の吸着および再生サイクルで再使用する。
【0296】
いくつかの実施形態において、
アノードとアノード電解質とを接触させるステップであって、アノード電解質が金属イオンを含むステップと、
アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、
カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、
水性媒体中で、不飽和または飽和炭化水素を、上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と反応させて、水性媒体中で、ハロゲン化炭化水素を含む1つまたは複数の有機化合物および上記より低い酸化状態の金属イオンを形成するステップと、
上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から、上記1つまたは複数の有機化合物を分離するステップと
を含む方法を提供する。
【0297】
上記の方法のいくつかの実施形態において、上記方法は、より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体をアノード電解質に戻して再循環させるステップをさらに含む。
【0298】
上記の方法のいくつかの実施形態において、不飽和炭化水素(式Iなど)、飽和炭化水素(式IIIなど)、ハロゲン化炭化水素(式IIおよびIVなど)、金属イオン等はすべて本明細書で詳細に説明されている。
【0299】
いくつかの実施形態において、
アノードとアノード電解質とを接触させるステップであって、アノード電解質が金属イオンを含むステップと、
アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、
カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、
水性媒体中で、エチレンを上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と反応させて、水性媒体中で、二塩化エチレンを含む1つまたは複数の有機化合物および上記より低い酸化状態の金属イオンを形成するステップと、
上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から、上記1つまたは複数の有機化合物を分離するステップと、
上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体をアノード電解質に戻して再循環させるステップと
を含む方法を提供する。
【0300】
上記の方法のいくつかの実施形態において、水性媒体は、5重量%超の水、または5.5重量%超、もしくは6重量超%、もしくは5〜90重量%の間、もしくは5〜95重量%の間、もしくは5〜99重量%の間の水、または5.5〜90重量%の間、もしくは5.5〜95重量%の間、もしくは5.5〜99重量%の間の水、または6〜90重量%の間、もしくは6〜95重量%の間、もしくは6〜99重量%の間の水を含む。上記の方法のいくつかの実施形態において、有機化合物は、クロロエタノール、ジクロロアセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド、またはこれらの組合せの1つもしくは複数をさらに含む。上記の方法のいくつかの実施形態において、金属イオンは銅である。より低い酸化状態の金属イオンはCu(I)であり、より高い酸化状態の金属イオンはCu(II)である。上記の方法のいくつかの実施形態において、金属塩はハロゲン化銅である。より低い酸化状態の金属イオンはCu(I)Clであり、より高い酸化状態の金属イオンはCu(II)Cl
2である。
【0301】
上記の方法のいくつかの実施形態において、より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から、1つまたは複数の有機化合物を分離するステップは、1つまたは複数の吸着剤を使用するステップを含む。上記の方法のいくつかの実施形態において、吸着剤は活性炭である。上記の方法のいくつかの実施形態において、吸着剤は、以下のものに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン−1、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、ポリメチルアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)およびこれらの組合せから選択されるポリオレフィンなどのポリマーである。上記の方法のいくつかの実施形態において、吸着剤はポリスチレンである。
【0302】
いくつかの実施形態において、
アノードとアノード電解質とを接触させるステップであって、アノード電解質が金属イオンを含むステップと、
アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、
カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、
水性媒体中で、不飽和または飽和炭化水素を上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と反応させて、水性媒体中で、ハロゲン化炭化水素を含む1つまたは複数の有機化合物および上記より低い酸化状態の金属イオンを形成するステップと、
吸着剤を使用することによって、上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から、上記1つまたは複数の有機化合物を分離するステップと、
上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体をアノード電解質に再循環させるステップと
を含む方法を提供する。
【0303】
いくつかの実施形態において、
アノードとアノード電解質とを接触させるステップであって、アノード電解質が金属イオンを含むステップと、
アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、
カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、
水性媒体中で、エチレンを上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と反応させて、水性媒体中で、二塩化エチレンを含む1つまたは複数の有機化合物および上記より低い酸化状態の金属イオンを形成するステップと、
吸着剤を使用することによって、上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から、上記1つまたは複数の有機化合物を分離するステップと、
上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体をアノード電解質に再循環させるステップと
を含む方法を提供する。
【0304】
いくつかの実施形態では、上記方法において、吸着剤は活性炭である。いくつかの実施形態では、上記方法において、吸着剤はポリスチレンなどのポリオレフィンである。
【0305】
上記の方法のいくつかの実施形態において、吸着剤は、水性媒体から、90重量/重量%超の有機化合物、または95重量/重量%超の有機化合物、または99重量/重量%超、もしくは99.99重量/重量%超、もしくは99.999重量/重量%超の有機化合物を吸着する。上記の方法のいくつかの実施形態において、吸着剤を通過させた後で得られる水性媒体(これは、アノード電解質に戻して再循環される)は、100ppm未満、または50ppm未満、または10ppm未満、または1ppm未満の有機化合物を含有する。
【0306】
上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは水、アルカリおよび/または水素ガスを生成する。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは、水を生成するODCである。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは、アルカリを生成するODCである。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは水素ガスを生成する。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは酸素および水を水酸化物イオンに還元する酸素脱分極カソードであるか、カソードは水を水素ガスおよび水酸化物イオンに還元する水素ガス生成カソードであるか、カソードは塩酸を水素ガスに還元する水素ガス生成カソードであるか、あるいは、カソードは塩酸と酸素ガスを反応させて水を形成する酸素脱分極カソードである。
【0307】
上記の方法のいくつかの実施形態において、金属イオンは、本明細書で説明する任意の金属イオンである。上記の方法のいくつかの実施形態において、金属イオンは、鉄、クロム、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、金属イオンは、鉄、クロム、銅およびスズからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、金属イオンは銅である。いくつかの実施形態において、金属イオンのより低い酸化状態は、1+、2+、3+、4+または5+である。いくつかの実施形態において、金属イオンのより高い酸化状態は、2+、3+、4+、5+または6+である。
【0308】
いくつかの実施形態において、
アノードとアノード電解質とを接触させるステップであって、アノード電解質が銅イオンを含むステップと、
アノードにおいて銅イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、
カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、
水性媒体中で、エチレンを上記より高い酸化状態の銅イオンを含むアノード電解質と反応させて、水性媒体中で、二塩化エチレンを含む1つまたは複数の有機化合物および上記より低い酸化状態の銅イオンを形成するステップと、
活性炭、ポリオレフィン、活性シリカおよびこれらの組合せから選択される吸着剤を使用することによって、上記より低い酸化状態の銅イオンを含む水性媒体から、上記1つまたは複数の有機化合物を分離して、100ppm未満、または50ppm未満、または10ppm未満、または1ppm未満の有機化合物および上記より低い酸化状態の銅イオンを含む水性媒体を生成するステップと、
上記より低い酸化状態の銅イオンを含む水性媒体をアノード電解質に再循環させるステップと
を含む方法を提供する。
【0309】
いくつかの実施形態において、上記に提供した方法は、アノード電解質において乱流をもたらして、アノードでの物質移動を改善するステップをさらに含むことができる。乱流プロモータを用いた、アノードにおけるそうした乱流は本明細書において上述されている。いくつかの実施形態において、上記の提供された方法は、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップをさらに含むことができる。そうした拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)は本明細書で以下に説明されている。
【0310】
いくつかの実施形態において、
金属イオンを含むアノード電解質と接触しているアノードであって、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと、
カソード電解質と接触しているカソードと、
アノード室に動作可能に接続されており、かつ水性媒体中で、上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を不飽和炭化水素または飽和炭化水素と反応させて、水性媒体中で、ハロゲン化炭化水素を含む1つまたは複数の有機化合物および上記より低い酸化状態の金属イオンを形成するように構成されている反応器と、
反応器およびアノードに動作可能に接続されており、かつ上記1つまたは複数の有機化合物を、上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から分離し、上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体をアノード電解質へ再循環させるように構成されているセパレーターと
を含むシステムを提供する。
【0311】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、不飽和炭化水素(式Iなど)、飽和炭化水素(式IIIなど)、ハロゲン化炭化水素(式IIおよびIVなど)、金属イオン等はすべて本明細書で詳細に説明されている。
【0312】
いくつかの実施形態において、
金属ハロゲン化物または金属硫酸塩を含むアノード電解質と接触しているアノードであって、金属ハロゲン化物または金属硫酸塩をより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと、
カソード電解質と接触しているカソードと、
アノード室に動作可能に接続されており、かつ水性媒体中で、不飽和または飽和炭化水素を金属ハロゲン化物または金属硫酸塩でハロゲン化またはスルホン化して、水性媒体中で、ハロゲン化炭化水素またはスルホン化炭化水素を含む1つまたは複数の有機化合物および上記より低い酸化状態の金属イオンを形成するように構成されている反応器と、
反応器およびアノードに動作可能に接続されており、かつ上記1つまたは複数の有機化合物を、上記より低い酸化状態の金属ハロゲン化物または金属硫酸塩を含む水性媒体から分離し、上記より低い酸化状態の金属ハロゲン化物または金属硫酸塩を含む水性媒体をアノード電解質へ再循環させるように構成されているセパレーターと
を含むシステムを提供する。
【0313】
いくつかの実施形態において、
金属イオンを含むアノード電解質と接触しているアノードであって、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと、
カソード電解質と接触しているカソードと、
アノード室に動作可能に接続されており、かつ水性媒体中で、エチレンを上記より高い酸化状態の金属イオンと反応させて、水性媒体中で、二塩化エチレンを含む1つまたは複数の有機化合物および上記より低い酸化状態の金属イオンを形成するように構成されている反応器と、
反応器およびアノードに動作可能に接続されており、かつ上記1つまたは複数の有機化合物を、上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から分離し、上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体をアノード電解質へ再循環させるように構成されているセパレーターと
を含むシステムを提供する。
【0314】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、水性媒体は、5重量%超の水、または5.5重量%超、もしくは6重量%超、もしくは5〜90重量%の間、もしくは5〜95重量%の間、もしくは5〜99重量%の間の水、または5.5〜90重量%の間、もしくは5.5〜95重量%の間、もしくは5.5〜99重量%の間の水、または6〜90重量%の間、もしくは6〜95重量%の間、もしくは6〜99重量%の間の水を含む。
【0315】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、セパレーターは、より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体をアノード電解質へ再循環させるための再循環システムをさらに含む。
【0316】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、1つまたは複数の有機化合物は、クロロエタノール、ジクロロアセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド、またはこれらの組合せの1つもしくは複数を含む。上記のシステムのいくつかの実施形態において、金属イオンは銅である。より低い酸化状態の金属イオンはCu(I)であり、より高い酸化状態の金属イオンはCu(II)である。上記のシステムのいくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物はハロゲン化銅であり、金属硫酸塩は硫酸銅である。
【0317】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、1つまたは複数の有機化合物を、より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から分離するセパレーターは、1つまたは複数の吸着剤を含む。上記のシステムのいくつかの実施形態において、セパレーターは活性炭である。上記のシステムのいくつかの実施形態において、セパレーターは、以下のものに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン−1、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、ポリメチルアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)およびこれらの組合せから選択されるポリオレフィンなどのポリマーである。上記のシステムのいくつかの実施形態において、セパレーターはポリスチレンである。
【0318】
いくつかの実施形態において、
金属イオンを含むアノード電解質と接触しているアノードであって、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと、
カソード電解質と接触しているカソードと、
アノード室に動作可能に接続されており、かつ水性媒体中で、上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を不飽和炭化水素または飽和炭化水素と反応させて、水性媒体中で、ハロゲン化炭化水素を含む1つまたは複数の有機化合物および上記より低い酸化状態の金属イオンを形成するように構成されている反応器と、
反応器およびアノードに動作可能に接続されており、かつ上記1つまたは複数の有機化合物を上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から分離し、上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体をアノード電解質へ再循環させるように構成されている1つまたは複数の吸着剤を含むセパレーターと
を含むシステムを提供する。
【0319】
いくつかの実施形態において、
金属イオンを含むアノード電解質と接触しているアノードであって、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと、
カソード電解質と接触しているカソードと、
アノード室に動作可能に接続されており、かつ水性媒体中で、エチレンを上記より高い酸化状態の金属イオンと反応させて、水性媒体中で、二塩化エチレンを含む1つまたは複数の有機化合物および上記より低い酸化状態の金属イオンを形成するように構成されている反応器と、
反応器およびアノードに動作可能に接続されており、かつ上記1つまたは複数の有機化合物を上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から分離し、上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体をアノード電解質へ再循環させるように構成されている1つまたは複数の吸着剤を含むセパレーターと
を含むシステムを提供する。
【0320】
いくつかの実施形態では、上記のシステムにおいて、吸着剤は活性炭である。いくつかの実施形態では、上記のシステムにおいて、吸着剤はポリスチレンなどのポリオレフィンである。
【0321】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、吸着剤は、水性媒体から、90重量/重量%超の有機化合物、または95重量/重量%超の有機化合物、または99重量/重量%超、もしくは99.99重量/重量%超、もしくは99.999重量/重量%超の有機化合物を吸着する。上記のシステムのいくつかの実施形態において、吸着剤を通過させた後で得られる水性媒体(これは、アノード電解質に戻して再循環される)は、100ppm未満、または50ppm未満、または10ppm未満、または1ppm未満の有機化合物を含有する。
【0322】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、カソードは、水、アルカリおよび/または水素ガスを生成するように構成されている。上記のシステムのいくつかの実施形態において、カソードは、水を生成するように構成されているODCである。上記のシステムのいくつかの実施形態において、カソードは、アルカリを生成するように構成されているODCである。上記のシステムのいくつかの実施形態において、カソードは、水素ガスを生成するように構成されている。上記のシステムのいくつかの実施形態において、カソードは酸素および水を水酸化物イオンに還元するように構成されている酸素脱分極カソードであるか、カソードは水を水素ガスおよび水酸化物イオンに還元するように構成されている水素ガス生成カソードであるか、カソードは塩酸を水素ガスに還元するように構成されている水素ガス生成カソードであるか、あるいはカソードは塩酸と酸素ガスを反応させて水を形成するように構成されている酸素脱分極カソードである。
【0323】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、金属イオンは本明細書で説明する任意の金属イオンである。上記のシステムのいくつかの実施形態において、金属イオンは、鉄、クロム、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、金属イオンは、鉄、クロム、銅およびスズからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、金属イオンは銅である。いくつかの実施形態において、金属イオンのより低い酸化状態は、1+、2+、3+、4+または5+である。いくつかの実施形態において、金属イオンのより高い酸化状態は、2+、3+、4+、5+または6+である。
【0324】
いくつかの実施形態において、
銅イオンを含むアノード電解質と接触しているアノードであって、銅イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるように構成されているアノードと、
カソード電解質と接触しているカソードと、
アノード室に動作可能に接続されており、かつ水性媒体中で、エチレンを上記より高い酸化状態の銅イオンと反応させて、水性媒体中で、二塩化エチレンを含む1つまたは複数の有機化合物および上記より低い酸化状態の銅イオンを形成するように構成されている反応器と、
反応器およびアノードに動作可能に接続されており、かつ上記1つまたは複数の有機化合物を上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体から分離し、100ppm未満、または50ppm未満、または10ppm未満、または1ppm未満の有機化合物および上記より低い酸化状態の銅イオンを含む水性媒体を生成するように構成されている、活性炭、ポリオレフィン、活性シリカおよびこれらの組合せから選択される1つまたは複数の吸着剤を含むセパレーターと、
上記より低い酸化状態の金属イオンを含む水性媒体の一部をアノード電解質へ再循環させるための再循環システムと
を含むシステムを提供する。
【0325】
本明細書で説明するシステムのいくつかの実施形態において、セパレーターは、互いに連結された吸着剤の一連のベッドまたは充填カラムである。
【0326】
上記のシステムのいくつかの実施形態において、再循環システムは、溶液を移動させるために使用され得るコンジット、パイプ、チューブ等であってよい。適切な制御バルブおよびコンピュータ制御システムが、このような再循環システムに関連していてもよい。
【0327】
いくつかの実施形態において、上記のシステムは、アノードにおいて塩素ガスを生成しないように構成されている。いくつかの実施形態において、上記のシステムは、不飽和または飽和炭化水素のハロゲン化炭化水素への塩素化に対して酸素ガスおよび/または塩素ガスを必要としないように構成されている。
【0328】
いくつかのシステムの実施形態において、システムは、有機生成物の吸着後に種々の脱着技術(不活性流体(例えば水など)でのパージ、pHなどの化学的条件の変更、温度の上昇、分圧の低下、濃度の低下、高温の不活性ガスでのパージ(例えば、>100
oCの蒸気、窒素ガス、アルゴンガスまたは空気でのパージであるが、これらに限定されない)等を含むが、これらに限定されない)を用いることによって、吸着剤を再生する再生装置をさらに含む。
【0329】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムにおける反応器および/またはセパレーターの成分は、反応器中に導入される炭化水素の量、反応器中に導入されるアノード電解質の量、セパレーター中への有機物および金属イオンを含有する水性媒体の量、吸着剤による吸着時間、反応器およびセパレーターにおける温度および圧力条件、反応器およびセパレーターを出入りする流量、セパレーターにおける吸着剤の再生時間、電気化学セルへ戻る水性媒体の時間および流量等を制御するように構成された制御ステーションを含むことができる。
【0330】
制御ステーションは、手動で、機械的にまたはデジタル処理で制御される一連のバルブまたはマルチバルブシステムを含んでよく、または、任意の他の好都合なフローレギュレータープロトコルを用いてもよい。場合によっては、その制御ステーションは、ユーザーに入力および出力パラメーターを提供して、上述したような量および条件を制御するように構成されたコンピュータインターフェース(ここで、調節はコンピュータ支援されるか、または完全にコンピュータにより制御される)を含むことができる。
【0331】
本発明の方法およびシステムは、エチレンガスのフロー、水性媒体中の金属イオンの濃度または水性媒体中の有機物の濃度等をモニタリングするように構成された1つまたは複数の検出器も含むことができる。モニタリングは、水性媒体およびガスの圧力、温度および組成についてのデータを収集することを含むことができるが、これらに限定されない。検出器は、モニターするように構成されている任意の好都合な装置、例えば圧力センサー(例えば、電磁圧力センサー、電位差圧力センサー等)、温度センサー(抵抗温度検出器、熱電対、気体温度計、サーミスター、パイロメーター、赤外線センサー等)、体積センサー(例えば、地球物理学的回折トモグラフィー、X線断層撮影法、水中音響測量器(hydroacoustic surveyer)等)、ならびに水性媒体またはガスの化学的構造を決定するための装置(例えば、IR分光計、NMR分光計、UV−vis分光光度計、高速液体クロマトグラフ、誘導結合プラズマ発光分光計、誘導結合プラズマ質量分光計、イオンクロマトグラフ、X線回折装置、ガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフ質量分光計、フローインジェクション分析、シンチレーションカウンター、酸滴定および炎光発光分光計等)であってよい。
【0332】
いくつかの実施形態において、検出器は、ユーザーに水性媒体、金属イオンおよび/または有機物についての収集データを提供するように構成されたコンピュータインターフェースを含むこともできる。例えば、検出器は水性媒体、金属イオンおよび/または有機物の濃度を測定することができ、コンピュータインターフェースは、水性媒体、金属イオンおよび/または有機物内での経時的な組成変化の概要を提供することができる。いくつかの実施形態において、その概要は、コンピュータ可読のデータファイルとして保存されてもよいか、またはユーザー可読の文書としてプリントアウトされてもよい。
【0333】
いくつかの実施形態において、検出器は、水性媒体、金属イオンおよび/または有機物についてのリアルタイムデータ(例えば、内圧、温度等)を収集できるようなモニタリング装置であってよい。他の実施形態では、検出器は、一定の間隔で水性媒体、金属イオンおよび/または有機物のパラメーターを測定する(例えば、その組成を1分毎、5分毎、10分毎、30分毎、60分毎、100分毎、200分毎、500分毎に、またはある他の間隔で測定する)ように構成された1つもしくは複数の検出器であってよい。
【0334】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている電気化学的システムおよび方法は、5重量%超の水を含有する水性媒体を含む。いくつかの実施形態において、水性媒体は、5重量%超の水;または6重量%超の水;または8重量%超の水;または10重量%超の水;または15重量%超の水;または20重量%超の水;または25重量%超の水;または50重量%超の水;または60重量%超の水;または70重量%超の水;または80重量%超の水;または90重量%超の水;または約99重量%の水;または5〜100重量%の間の水;または5〜99重量%の間の水;または5〜90重量%の間の水;または5〜80重量%の間の水;または5〜70重量%の間の水;または5〜60重量%の間の水;または5〜50重量%の間の水;または5〜40重量%の間の水;または5〜30重量%の間の水;または5〜20重量%の間の水;または5〜10重量%の間の水;または6〜100重量%の間の水;または6〜99重量%の間の水;または6〜90重量%の間の水;または6〜80重量%の間の水;または6〜70重量%の間の水;または6〜60重量%の間の水;または6〜50重量%の間の水;または6〜40重量%の間の水;または6〜30重量%の間の水;または6〜20重量%の間の水;または6〜10重量%の間の水;または8〜100重量%の間の水;または8〜99重量%の間の水;または8〜90重量%の間の水;または8〜80重量%の間の水;または8〜70重量%の間の水;または8〜60重量%の間の水;または8〜50重量%の間の水;または8〜40重量%の間の水;または8〜30重量%の間の水;または8〜20重量%の間の水;または8〜10重量%の間の水;または10〜100重量%の間の水;または10〜75重量%の間の水;または10〜50重量%の間の水;または20〜100重量%の間の水;または20〜50重量%の間の水;または50〜100重量%の間の水;または50〜75重量%の間の水;または50〜60重量%の間の水;または70〜100重量%の間の水;または70〜90重量%の間の水;または80〜100重量%の間の水を含む。いくつかの実施形態において、水性媒体は、水溶性有機溶媒を含み得る。
【0335】
本明細書に記載されている方法およびシステムのいくつかの実施形態において、アノード電解質中の総金属イオンの量、またはアノード電解質中の銅の量、またはアノード電解質中の鉄の量、またはアノード電解質中のクロムの量、またはアノード電解質中のスズの量、または白金の量、または不飽和もしくは飽和炭化水素と接触する金属イオンの量は、1〜12Mの間;または1〜11Mの間;または1〜10Mの間;または1〜9Mの間;または1〜8Mの間;または1〜7Mの間;または1〜6Mの間;または1〜5Mの間;または1〜4Mの間;または1〜3Mの間;または1〜2Mの間;または2〜12Mの間;または2〜11Mの間;または2〜10Mの間;または2〜9Mの間;または2〜8Mの間;または2〜7Mの間;または2〜6Mの間;または2〜5Mの間;または2〜4Mの間;または2〜3Mの間;または3〜12Mの間;または3〜11Mの間;または3〜10Mの間;または3〜9Mの間;または3〜8Mの間;または3〜7Mの間;または3〜6Mの間;または3〜5Mの間;または3〜4Mの間;または4〜12Mの間;または4〜11Mの間;または4〜10Mの間;または4〜9Mの間;または4〜8Mの間;または4〜7Mの間;または4〜6Mの間;または4〜5Mの間;または5〜12Mの間;または5〜11Mの間;または5〜10Mの間;または5〜9Mの間;または5〜8Mの間;または5〜7Mの間;または5〜6Mの間;または6〜12Mの間;または6〜11Mの間;または6〜10Mの間;または6〜9Mの間;または6〜8Mの間;または6〜7Mの間;または7〜12Mの間;または7〜11Mの間;または7〜10Mの間;または7〜9Mの間;または7〜8Mの間;または8〜12Mの間;または8〜11Mの間;または8〜10Mの間;または8〜9Mの間;または9〜12Mの間;または9〜11Mの間;または9〜10Mの間;または10〜12Mの間;または10〜11Mの間;または11〜12Mの間である。いくつかの実施形態において、上記のようなアノード電解質中の総イオンの量は、より低い酸化状態の金属イオンの量プラスより高い酸化状態の金属イオンの量;またはより高い酸化状態の金属イオンの総量;またはより低い酸化状態の金属イオンの総量である。
【0336】
本明細書に記載されている方法およびシステムのいくつかの実施形態において、金属イオンを含有するアノード電解質は、より低い酸化状態の金属イオンおよびより高い酸化状態の金属イオンの混合物を含有し得る。いくつかの実施形態において、アノード電解質中により低い酸化状態の金属イオンおよびより高い酸化状態の金属イオンのミックスを有することが望ましくてもよい。いくつかの実施形態において、不飽和または飽和炭化水素と接触しているアノード電解質は、より低い酸化状態の金属イオンおよびより高い酸化状態の金属イオンを含有する。いくつかの実施形態において、より低い酸化状態の金属イオンおよびより高い酸化状態の金属イオンは、ハロまたはスルホ炭化水素を形成するために金属イオンと不飽和または飽和炭化水素との反応が起こるような比で存在する。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンとより低い酸化状態の金属イオンの比は、20:1〜1:20の間、または14:1〜1:2の間;または14:1〜8:1の間;または14:1〜7:1の間;または2:1〜1:2の間;または1:1〜1:2の間;または4:1〜1:2の間;または7:1〜1:2の間である。
【0337】
本明細書に記載されている方法およびシステムのいくつかの実施形態において、本発明の電気化学的システムおよび方法におけるアノード電解質は、4〜7Mの範囲のより高い酸化状態の金属イオン、0.1〜2Mの範囲のより低い酸化状態の金属イオン、および1〜3Mの範囲の塩化ナトリウムを含有する。アノード電解質は、0.01〜0.1Mの塩酸を任意選択で含有し得る。本明細書に記載されている方法およびシステムのいくつかの実施形態において、水素ガスあるいは不飽和または飽和炭化水素と反応するアノード電解質は、4〜7Mの範囲のより高い酸化状態の金属イオン、0.1〜2Mの範囲のより低い酸化状態の金属イオン、および1〜3Mの範囲の塩化ナトリウムを含有する。アノード電解質は、0.01〜0.1Mの塩酸を任意選択で含有し得る。
【0338】
本明細書に記載されている方法およびシステムのいくつかの実施形態において、アノード電解質は、金属イオンに加えて別の陽イオンを含有し得る。他の陽イオンには、アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどであるがこれらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。アノード電解質に加える他の陽イオンの量は、0.01〜5Mの間;または0.01〜1Mの間;または0.05〜1Mの間;または0.5〜2Mの間;または1〜5Mの間でよい。
【0339】
本明細書に記載されている方法およびシステムのいくつかの実施形態において、アノード電解質は、酸を含有し得る。酸をアノード電解質に加えて、アノード液のpHを1または2またはそれ未満にしてもよい。酸は、塩酸または硫酸であり得る。
【0340】
本明細書において提供するシステムは、アノード室に動作可能に接続されている反応器を含む。反応器は、アノード電解質中の金属塩化物と、水素ガスあるいは不飽和または飽和炭化水素とを接触させるように構成されている。反応器は、アノード電解質中の金属塩化物と、水素ガスあるいは不飽和または飽和炭化水素とを接触させるための任意の手段でよい。このような手段またはこのような反応器は当技術分野で周知であり、これらに限定されないが、パイプ、ダクト、タンク、一連のタンク、コンテナ、塔、およびコンジットなどが含まれる。このような反応器のいくつかの例を、本明細書において
図7A、7B、10A、および10Bに記載する。反応器は、反応をモニターし、制御し、かつ/または促進するための温度センサー、圧力センサー、制御機構、不活性ガス注入器などを制御するコントローラーの1つまたは複数を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンを有する金属塩化物と不飽和または飽和炭化水素との間の反応は、100〜200℃の間または100〜175℃の間または150〜175℃の間の温度、および100〜500psigの間または100〜400psigの間または100〜300psigの間または150〜350psigの間の圧力で、反応器において行われる。いくつかの実施形態において、反応器の構成要素は、Teflon(登録商標)で内張りされて、上記構成要素の腐食を防止する。より高い酸化状態の金属イオンと水素ガスとの反応を行うための反応器のいくつかの例を、
図7Aおよび7Bにおいて例示する。
【0341】
いくつかの実施形態において、不飽和または飽和炭化水素を、アノード室に与えてもよく、ここでより高い酸化状態の金属を有する金属ハロゲン化物または金属硫酸塩は、不飽和または飽和炭化水素と反応し、アノード室の内側でそれぞれの生成物を形成する。いくつかの実施形態において、不飽和または飽和炭化水素を、アノード室に与えてもよく、ここでより高い酸化状態の金属を有する金属塩化物は、不飽和または飽和炭化水素と反応し、クロロ炭化水素を形成する。このようなシステムは、アノード室に動作可能に接続されており、かつ不飽和または飽和炭化水素をアノード室に送達するように構成されている、不飽和または飽和炭化水素送達システムを含む。不飽和または飽和炭化水素は、固体、液体、またはガスでよい。不飽和または飽和炭化水素は、外部の源からアノード室へと不飽和または飽和炭化水素を方向付けるための任意の手段を使用して、アノードに供給され得る。外部の源からアノード室へと不飽和または飽和炭化水素を方向付けるためのこのような手段、あるいは不飽和または飽和炭化水素送達システムは当技術分野で周知であり、これらに限定されないが、パイプ、タンク、ダクト、およびコンジットなどが含まれる。いくつかの実施形態において、このシステム、あるいは不飽和または飽和炭化水素送達システムは、外部の源からアノードへと不飽和または飽和炭化水素を方向付けるダクトを含む。不飽和または飽和炭化水素を、セルの底面、セルの上部または横からアノードへと方向付けてもよいことを理解すべきである。いくつかの実施形態において、不飽和または飽和炭化水素ガスがアノード液と直接接触しないように、不飽和または飽和炭化水素ガスは、アノードへと方向付けされる。いくつかの実施形態において、不飽和または飽和炭化水素を、複数の入口を通してアノードへと方向付けてもよい。本明細書において提供する方法およびシステムにおいてアノード室に不飽和または飽和炭化水素を提供する不飽和または飽和炭化水素の源は、当技術分野において公知の不飽和または飽和炭化水素の任意の源を含む。このような源には、これらに限定されないが、商用グレードの不飽和または飽和炭化水素および/あるいは不飽和または飽和炭化水素発生プラント、例えば、石油化学精製産業が含まれる。
【0342】
いくつかの実施形態において、本発明の電気化学セルが、不飽和または飽和炭化水素が発生する現場、例えば、不飽和または飽和炭化水素のハロゲン化(例えば、塩素化)を行うための精製所において設置される方法およびシステムを提供する。いくつかの実施形態において、電気化学的システムからの金属イオン含有アノード液は、不飽和または飽和炭化水素が、不飽和または飽和炭化水素のハロゲン化(例えば、塩素化)を行うために形成される精製所に輸送される。いくつかの実施形態において、本発明の方法およびシステムは、エチレンガスのろ過またはクリーニングを必要とすることなしに、精製所からのエチレンガスを利用することができる。典型的には、エチレンガス発生プラントは、ガスを浄化し、不純物を除く。本発明の方法およびシステムのいくつかの実施形態において、ガスのこのような事前浄化は必要とされず、回避することができる。
【0343】
いくつかの実施形態において、金属の発生およびハロゲン化、例えば、塩素化反応は、同じアノード室において行われる。このような実施形態の例示的な例を、
図9に示す。
図9のシステム900は、単なる例示目的であり、異なる酸化状態を有する他の金属イオンと、他の不飽和または飽和炭化水素と、カソード室においてアルカリ以外の生成物、例えば、水または水素ガスを形成する他の電気化学的システムと、他の不飽和または飽和炭化水素ガスは、上記システムに等しく適用可能であることを理解すべきである。いくつかの実施形態において、
図9に例示するように、電気化学的システム900は、AEMの近くに位置するアノードを含む。システム900はまた、ガス拡散層(GDL)を含む。アノード電解質は、一側面上でアノードと接触しており、他の側面上でGDLと接触している。いくつかの実施形態において、アノードは、アノード液からの抵抗を最小化するために位置してもよく、例えば、アノードは、AEMの近くに位置するか、またはAEMに結合していてもよい。いくつかの実施形態において、アノードは、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態の金属イオンへと変換する。例えば、アノードは、金属イオンを1+の酸化状態から2+の酸化状態へと変換させる。Cu
2+イオンは塩化物イオンと合わさり、CuCl
2を形成する。エチレンガスは、GDLの一側面上でガス含有室中に圧縮される。次いで、エチレンガスは、ガス拡散層を通して拡散し、より高い酸化状態の金属塩化物と反応して、クロロ炭化水素、例えば、二塩化エチレンを形成する。金属塩化物CuCl
2は、より低い酸化状態への還元を受け、CuClを形成する。いくつかの実施形態において、アノード電解質を取り出してもよく、これらに限定されないが、ろ過、真空蒸留、分留、分別結晶、イオン交換樹脂などを含む当技術分野で周知の分離技術を使用して、二塩化エチレンをアノード電解質から分離してもよい。いくつかの実施形態において、二塩化エチレンは、アノード電解質より高濃度でよく、アノード室の内側で別々の層を形成し得る。このような実施形態において、二塩化エチレンを、セルの底面から除去し得る。いくつかの実施形態において、GDLの一側面上のガス含有室に穴を開けて、ガスを除去し得る。いくつかの実施形態において、アノード室に穴を開けて、エチレンガスまたはガス状副生成物を除去し得る。システム900はまた、水および酸素から水酸化物イオンを生成する酸素脱分極化カソードを含む。水酸化物イオンを、本明細書に記載されているカーボネート沈殿プロセスのいずれかに供し得る。いくつかの実施形態において、カソードは、ガス拡散カソードではないが、
図4Aまたは4Bに記載されているようなカソードである。いくつかの実施形態において、上記システム900は、アルカリを生成する任意の電気化学的システムに利用され得る。
【0344】
本明細書に記載されているシステムおよび方法のいくつかの実施形態において、カソードにおいてガスは形成されない。本明細書に記載されているシステムおよび方法のいくつかの実施形態において、カソードにおいて水素ガスが形成される。本明細書に記載されているシステムおよび方法のいくつかの実施形態において、アノードにおいてガスは形成されない。本明細書に記載されているシステムおよび方法のいくつかの実施形態において、アノードにおいてガス状の不飽和炭化水素および飽和炭化水素以外のガスは使用されない。
【0345】
電気化学的システムに接続されている反応器の別の例示的な例を、
図10Aにおいて例示する。
図10Aに例示するように、電気化学的システムのアノード室(電気化学的システムは、本明細書に記載されている任意の電気化学的システムでよい)は、反応器に接続されており、この反応器は不飽和または飽和炭化水素の源(
図10Aにおいてエチレン(C
2H
4)として例示している例)にまた接続されている。いくつかの実施形態において、電気化学的システムおよび反応器は、同じユニットの内側であり、ユニットの内側において接続されている。エチレンと共に、より低い酸化状態の金属イオンを任意選択で伴うより高い酸化状態の金属イオンを含有するアノード電解質を、プレストレスト(例えば、れんがを内張りした)反応器に供給する。エチレンの塩素化は、反応器の内側で起こり、二塩化エチレン(EDCまたはジクロロエタン(DCE))およびより低い酸化状態の金属イオンを形成する。反応器は、340〜360°Fおよび200〜300psigの範囲で動作し得る。これらに限定されないが、金属イオン濃度、より低い酸化状態の金属イオンとより高い酸化状態の金属イオンの比、DCEおよび水蒸気の分圧などの他の反応器条件を設定して、高い選択性を伴って機能することを確実にすることができる。反応熱は、水を蒸発させることによって除去され得る。いくつかの実施形態において、冷却表面は、反応器において必要とされなくてもよく、したがって、温度勾配または綿密な温度制御を必要としなくてもよい。反応器流出ガスは、プレストレスト(例えば、れんがを内張りした)充填塔において水でクエンチし得る(
図10Aにおいて「クエンチ」反応器として示す)。塔から出る液体をさらに冷却し、水相およびDCE相に分離し得る。水相は分割してもよく、一部はクエンチ水として塔へとリサイクルし、残りは、反応器または電気化学的システムへとリサイクルしてもよい。DCE生成物をさらに冷却し、フラッシュし、さらなる水および溶解したエチレンを分離し得る。この溶解したエチレンは、
図10Aに示されているようにリサイクルし得る。クエンチ塔からの凝縮されていないガスは、不活性物を除去するパージ流を除いて反応器にリサイクルし得る。パージ流は、エチレン回収システムを通り抜け、エチレンの全体的な利用を高く、例えば、95%ほど高く維持し得る。実験的決定は、実際のプロセス温度、圧力および組成物でのエチレンガスについての燃焼限界で行い得る。プラントの建設材料は、プレストレストれんが内張り、Hastealloys BおよびC、inconel、ドーパント用グレードのチタン(例えば、AKOT、グレードII)、タンタル、Kynar、Teflon(登録商標)、PEEK、ガラス、または他のポリマーもしくはプラスチックを含み得る。反応器はまた、反応器の中および外でアノード電解質が連続的に流れるように設計され得る。
【0346】
電気化学的システムに接続されている反応器の別の例示的な例は、
図10Bにおいて例示する通りである。
図10Bに例示するように、反応器システム1000は、フランジのヘッドに溶接した金属ボールソケットによって出口ラインCと接続された金属フランジBの上部部分から吊されたガラス製容器Aである。ガラス製反応器は、電気的に加熱された金属シェルDに入れられている。熱入力および温度は、自動温度レギュレーターによって制御し得る。炭化水素は、開口部Eを通して、およびガラスチューブFを通して、フリットガラスの足を取り付けてもよい金属シェル中に導入してもよい。この配置は、ガラス製反応器の両側面上の均圧をもたらし得る。炭化水素は、反応器の底面において金属溶液(より高い酸化状態の金属)と接触させてもよく、媒体を泡立たせてもよい。揮発性生成物、水蒸気、および/または未反応炭化水素は、圧力を大気圧に低減し得るバルブHを任意選択で備えたラインCを介して出してもよい。排出ガスは適当なトラップシステムを通過させて、生成物を取り出し得る。水性金属媒体を通過させることなく、圧力ゾーンにおけるガスの通過を可能にするバイパス配置Gを、器具にまた取り付け得る。いくつかの実施形態において、容器中に残されたより低い酸化状態の還元された金属イオンは、本明細書に記載のような電気分解に供され、より高い酸化状態の金属イオンが再生される。
【0347】
本発明の例示的実施形態は、
図11に示されている通りである。
図11に例示するように、
図6の電気化学的システム600(または代わりに、
図4Aのシステム400)は、CuCl−HCl電気化学的システム1100(
図4Bにおいてシステムとしてまた例示する)と統合され得る。CuCl−HCl電気化学的システム1100において、アノードにおける入力は、CuClおよびHClであり、これはCuCl
2および水素イオンをもたらす。水素イオンはプロトン交換膜を通過してカソードへ行き、そのカソードで水素ガスを形成する。いくつかの実施形態において、クロリド伝導膜をまた使用し得る。いくつかの実施形態において、CuCl−HClセルは、0.5V以下で作動し得、システム600は、0V以下で作動し得ることが意図されている。意図される電圧からのいくらかの逸脱は、抵抗損失によって起こり得る。
【0348】
一態様において、本明細書において提供するシステムおよび方法において、アノード電解質中で形成されるCuCl
2は、銅生成のために使用され得る。例えば、本発明のシステムおよび方法において形成されるCuCl
2は、銅鉱物から銅を抽出する浸出プロセスのために使用され得る。単に例として、黄銅鉱は、酸化剤Cu
2+の助けによって塩化物環境中に浸出することができる銅鉱物である。二価銅は、黄銅鉱の銅および他の硫化物を浸出し得る。銅が浸出すると、他の鉱物、例えば、鉄、硫黄、金、銀などを回収することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている電気化学セルによって生成されるCuCl
2を、銅鉱物濃縮物に加えてもよい。Cu
2+イオンは、銅鉱物を酸化し、CuClを形成し得る。濃縮物からのCuCl溶液は、CuClをCuCl
2に変換し得る本明細書に記載されている電気化学セルのアノード室にフィードバックされ得る。次いで、CuCl
2を鉱物濃縮物にフィードバックし、銅鉱物をさらに酸化し得る。銅が浸出すると、亜鉛、鉛などのさらなる沈殿と共に、銀を凝集し得る。次いで、銅は、アルカリによる処理によって酸化銅として沈殿させてもよい(このアルカリは、電気化学セルのカソード室によって生成し得る)。酸化物としての銅の沈殿の後、ろ液NaClを、電気化学セルに戻してもよい。カソードにおいて発生する水素ガスを酸化銅の還元のために使用して、金属銅を(高温で)形成し得る。溶融銅は、銅ワイヤーロッドなどの銅製品に成型し得る。この方法は、低品位鉱または様々なタイプの銅鉱物のために使用することができる。電気化学的プラントは、採石場の近くに、または濃縮機の近くに取り付け、廃棄物のための輸送コストを排除し、有価金属生成物のみの輸送を可能にし得る。
【0349】
本明細書に記載されているプロセスおよびシステムは、バッチプロセスもしくはシステムまたは連続流プロセスもしくはシステムであり得る。
【0350】
本明細書における態様および実施形態において記載されているような水素ガスあるいは不飽和または飽和炭化水素と、より高い酸化状態の金属イオンとの反応は、水性媒体中で行われる。いくつかの実施形態において、このような反応は、炭化水素または水素ガス供給原料のための溶媒であり得る非水性液体媒体中であってもよい。液体媒体または溶媒は、水性であっても非水性であってもよい。適切な非水性溶媒は、極性および非極性の非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ハロゲン化炭化水素、単に例として、ジクロロメタン、四塩化炭素、および1,2−ジクロロエタン、ならびに有機ニトリル、例えば、アセトニトリルである。有機溶媒は、より低い酸化状態の金属と化学結合を形成することができる窒素原子を含有し、それによってより低い酸化状態の金属イオンに増強された安定性を与え得る。いくつかの実施形態において、アセトニトリルは、上記有機溶媒である。
【0351】
いくつかの実施形態において、有機溶媒が、より高い酸化状態の金属イオンと水素ガスまたは炭化水素との間の反応のために使用されるとき、水を金属含有媒体から除去する必要があり得る。このように、本明細書に記載されている電気化学的システムから得られる金属イオンは、水を含有し得る。いくつかの実施形態において、混合物の共沸蒸留によって、金属イオン含有媒体から水を除去し得る。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンおよび水素ガスあるいは不飽和または飽和炭化水素を含有する溶媒は、反応媒体中に5〜90%;または5〜80%;または5〜70%;または5〜60%;または5〜50%;または5〜40%;または5〜30%;または5〜20%;または5〜10重量%の間の水を含有し得る。反応媒体において許容し得る水の量は、媒体中の特定のハロゲン化物担体次第でよく、許容できる水の量は、例えば、塩化第二鉄に対してよりも塩化銅に対しての方がより多い。水性媒体が反応において使用されるとき、このような共沸蒸留を回避し得る。
【0352】
いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンと、水素ガスあるいは不飽和または飽和炭化水素との反応は、反応温度が50℃より高く350℃までであるときに起こり得る。水性媒体中で、反応は、1000psiまたはそれ未満の値までの超大気圧下で行われ、液相中の反応媒体を50℃〜200℃、典型的には約120℃〜約180℃の温度に維持し得る。
【0353】
いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンと、不飽和または飽和炭化水素との反応は、ハロゲン化物担体を含み得る。いくつかの実施形態において、ハロゲン化物イオン:より高い酸化状態の総金属イオンの比は、1:1;または1:1を超える比;または1.5:1;または2:1を超える比、および/または少なくとも3:1である。このように、例えば、濃塩酸中のハロゲン化第二銅溶液における比は、約2:1または3:1であり得る。いくつかの実施形態において、ハロゲン化物担体の高い使用率に起因して、高濃度の金属ハロゲン化物を使用し、金属ハロゲン化物の飽和またはほぼ飽和した溶液を用いることが望ましくてもよい。必要に応じて、溶液は緩衝され、ハロゲン化反応の間、pHを所望のレベルに維持し得る。
【0354】
いくつかの実施形態において、金属の非ハロゲン化塩を、より高い酸化状態の金属イオンを含有する溶液に加えてもよい。加えた金属塩は、金属ハロゲン化物溶液に可溶性であり得る。塩化第二銅溶液中に組み込むのに適した適切な塩の例には、これらに限定されないが、硫酸銅、硝酸銅およびテトラフルオロホウ酸銅が含まれる。いくつかの実施形態において、方法およびシステムにおいて用いられる金属ハロゲン化物と異なる金属ハロゲン化物を加えてもよい。例えば、塩化第二鉄を、不飽和炭化水素のハロゲン化の時点で塩化第二銅システムに加えてもよい。
【0355】
不飽和または飽和炭化水素供給原料は、連続的または断続的にハロゲン化容器に供給し得る。効率的なハロゲン化は、溶液中の供給原料と金属イオンとの間の密接な接触の達成によって決まり得、ハロゲン化反応は、このような接触を改善または最大化するように設計された技術によって行われ得る。金属イオン溶液は、撹拌または振とうまたは任意の所望の技術によってかき混ぜてもよい。例えば、反応はカラム、例えば、充填カラム、またはトリクルベッド反応器または本明細書に記載されている反応器において行われてもよい。例えば、不飽和または飽和炭化水素がガス状である場合、逆電流技術を用いてもよく、ここで不飽和または飽和炭化水素はカラムまたは反応器を通過して上方向に行き、金属イオン溶液はカラムまたは反応器を通過して下方向に行く。溶液中の不飽和または飽和炭化水素と金属イオンとの接触を増強することに加えて、本明細書に記載されている技術はまた、溶液が水性であり、かつ不飽和または飽和炭化水素の水溶性が低い場合に望ましい場合があるので、溶液中の不飽和または飽和炭化水素の溶解速度を増強し得る。供給原料の溶解はまた、より高い圧力によって補助され得る。
【0356】
飽和、不飽和炭化水素および/または部分的ハロゲン化炭化水素の混合物を用いてもよい。いくつかの実施形態において、さらなるハロゲン化が可能な本発明のプロセスの部分的ハロゲン化生成物は、生成物回収段階、および適当な場合、より低い酸化状態の金属イオン再生段階を通して、反応容器に戻して再循環され得る。いくつかの実施形態において、ハロゲン化反応は、ハロゲン化反応容器の外側で、例えば、別々の再生容器中で継続してもよく、不飽和または飽和炭化水素の過ハロゲン化を回避するための反応の制御において、注意が払われる必要があり得る。
【0357】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている電気化学的システムは、不飽和または飽和炭化水素を生成するか、あるいは水素ガスを生成するプラントの近くに設置される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている電気化学的システムは、PVCプラントの近くに設置される。例えば、いくつかの実施形態において、電気化学的システムは、エチレンガス、水素ガス、塩化ビニルモノマー、および/またはPVCプラントの、半径100マイル以内の近くである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている電気化学的システムは、エチレンと金属イオンとの反応のためのエチレンプラントの内側または外側に設置される。いくつかの実施形態において、上記のように記載されているプラントに、本明細書に記載されている電気化学的システムを後付けする。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンを含有するアノード電解質を、上記のプラントの場所に輸送する。いくつかの実施形態において、より高い酸化状態の金属イオンを含有するアノード電解質を、上記のプラントの場所の100マイル以内に輸送する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている電気化学的システムは、カソード電解質中で発生するアルカリが、二価陽イオンと反応して、カーボネート/ビカーボネート生成物を形成するように、上記のようなプラントの近くに、および二価陽イオンの源の近くに設置される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている電気化学的システムは、カソード電解質中で発生するアルカリが、二酸化炭素を捕捉し、カーボネート/ビカーボネート生成物を形成することができるように、上記のようなプラントの近く、二価陽イオンの源および/または二酸化炭素の源の近くに設置される。いくつかの実施形態において、不飽和または飽和炭化水素を形成する精製所によって発生した二酸化炭素は、電気化学的システムにおいて使用されるか、あるいはカーボネート/ビカーボネート生成物の沈殿において使用される。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている電気化学的システムは、カソード電解質中で発生するアルカリが、二酸化炭素を捕捉し、カーボネート/ビカーボネート生成物を形成することができるように、上記のようなプラントの近く、二価陽イオンの源および/または二酸化炭素の源、例えば、不飽和または飽和炭化水素を生成する精製所の近くに設置される。
【0358】
任意の数のハロまたはスルホ炭化水素は、より高い酸化状態の金属塩化物と本明細書に記載のような不飽和または飽和炭化水素との反応から発生し得る。クロロ炭化水素は、化学および/または製造産業において使用され得る。クロロ炭化水素は、化学中間体または溶媒として使用され得る。溶媒の使用は、金属および布帛クリーニング、油脂の抽出、および化学合成のための反応媒体を含む多種多様の用途を含む。
【0359】
いくつかの実施形態において、不飽和炭化水素、例えば、エチレンは、より高い酸化状態の金属塩化物と反応して、二塩化エチレンを形成する。二塩化エチレンは、これらに限定されないが、塩化ビニル、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレン、ビニリデンクロライド、トリクロロエタン、エチレングリコール、ジアミノエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ビスコースレーヨン、スチレン−ブタジエンゴム、ならびに様々なプラスチックなどのプラスチック、ゴムおよび合成紡織繊維に関わる化学物質の作製;グリス除去剤およびペンキ除去剤として使用される溶媒として;樹脂、アスファルト、ビチューメン、ゴム、脂肪、油、ワックス、ガム、写真、写真式複写、化粧品、皮革クリーニング、および薬物のための溶媒として;穀物、果樹園、菌舎、室内装飾用品、およびカーペットのための燻蒸剤;酸洗い剤として;様々な有機化合物、例えば、エチレンジアミンの生成における中間体としてのビルディングブロック試薬として;エテンおよびクロリドの除去を伴う塩素の源として;ドライクリーニングにおいて使用される1,1,1−トリクロロエタンの前駆体として;加鉛燃料中のアンチノック添加物として;香辛料、例えば、ベニノキ、パプリカおよびウコンの抽出における使用;殺有害生物剤のための賦形剤として;ペンキ、コーティング、および接着剤において;ならびにこれらの組合せを含むこれらに限定されない様々な目的に使用され得る。
【0360】
本明細書に記載されている方法およびシステムにおいて、いくつかの実施形態において、アノード室において塩酸は形成されない。本明細書に記載されている方法およびシステムにおいて、いくつかの実施形態において、アノードにおいてガスは形成されない。本明細書に記載されている方法およびシステムにおいて、いくつかの実施形態において、アノードにおいてガスは使用されない。本明細書に記載されている方法およびシステムにおいて、いくつかの実施形態において、カソードにおいて水素ガスが形成される。本明細書に記載されている方法およびシステムにおいて、いくつかの実施形態において、カソードにおいて水素ガスは形成されない。
【0361】
いくつかの実施形態において、電流がセルを通過するように、ワイヤーがカソードおよびアノードの間で接続されている。このような実施形態において、セルはバッテリーとして作用してもよく、セルによって発生した電流を使用してアルカリを生じさせてもよい(これはセルから取り出される)。いくつかの実施形態において、セルの抵抗は上昇してもよく、電流は下落してもよい。このような実施形態において、電気化学セルに電圧を印加し得る。これらに限定されないが、電極の腐食、液抵抗、膜のファウリングなどを含む様々な理由で、セルの抵抗は増加し得る。いくつかの実施形態において、電流は、アンペア負荷を使用してセルから取り出され得る。
【0362】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供するシステムは、クロロアルカリプロセス、またはODCを有するクロロアルカリプロセス、またはアノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させる任意の他のプロセスと比較して、アルカリを生じさせる低電圧からゼロ電圧のシステムをもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているシステムは、2V未満;または1.2V未満;または1.1V未満;または1V未満;または0.9V未満;または0.8V未満;または0.7V未満;または0.6V未満;または0.5V未満;または0.4V未満;または0.3V未満;または0.2V未満;または0.1V未満;または0ボルト;または0〜1.2Vの間;または0〜1Vの間;または0〜0.5Vの間;または0.5〜1Vの間;または0.5〜2Vの間;または0〜0.1Vの間;または0.1〜1Vの間;または0.1〜2Vの間;または0.01〜0.5Vの間;または0.01〜1.2Vの間;または1〜1.2Vの間;または0.2〜1V;または0Vの間;または0.5V;または0.6V;または0.7V;または0.8V;または0.9V;または1Vの電圧で作動する。
【0363】
本明細書において使用する場合、「電圧」は、電気化学セルにおけるアノードとカソードとの間の所望の反応を推進する、電気化学セルに印加するか、または電気化学セルから取り出される電圧またはバイアスを含む。いくつかの実施形態において、カソード電解質中でアルカリ性溶液、水、または水素ガスが形成され、アノードにおいて金属イオンが酸化されるように、所望の反応は、アノードおよびカソードの間の電子移動であり得る。いくつかの実施形態において、アノード電解質中でより低い酸化状態の金属イオンからより高い酸化状態の金属イオンが形成されるように、所望の反応は、アノードおよびカソードの間の電子移動であり得る。電気化学セルのアノードおよびカソードに亘り電流を印加するために、任意の手段によって電圧を電気化学セルに印加し得る。このような手段は当技術分野で周知であり、これらに限定されないが、装置、例えば、電力源、燃料電池、太陽光によって動力を供給される装置、風によって動力を供給される装置、およびこれらの組合せが含まれる。電流を提供する電力源のタイプは、当業者には公知の任意の電源でよい。例えば、いくつかの実施形態において、セルのアノードおよびカソードを外部の直流(DC)電源に接続することによって、電圧を印加し得る。電源は、DCに整流される交流(AC)でよい。DC電源は、必要な量の電圧を電気化学セルに印加する、調整可能な電圧および電流を有し得る。
【0364】
いくつかの実施形態において、電気化学セルに印加する電流は、少なくとも50mA/cm
2;または少なくとも100mA/cm
2;または少なくとも150mA/cm
2;または少なくとも200mA/cm
2;または少なくとも500mA/cm
2;または少なくとも1000mA/cm
2;または少なくとも1500mA/cm
2;または少なくとも2000mA/cm
2;または少なくとも2500mA/cm
2;または100〜2500mA/cm
2の間;または100〜2000mA/cm
2の間;または100〜1500mA/cm
2の間;または100〜1000mA/cm
2の間;または100〜500mA/cm
2の間;または200〜2500mA/cm
2の間;または200〜2000mA/cm
2の間;または200〜1500mA/cm
2の間;または200〜1000mA/cm
2の間;または200〜500mA/cm
2の間;または500〜2500mA/cm
2の間;または500〜2000mA/cm
2の間;または500〜1500mA/cm
2の間;または500〜1000mA/cm
2の間;または1000〜2500mA/cm
2の間;または1000〜2000mA/cm
2の間;または1000〜1500mA/cm
2の間;または1500〜2500mA/cm
2の間;または1500〜2000mA/cm
2の間;または2000〜2500mA/cm
2の間である。
【0365】
いくつかの実施形態において、印加する電流が100〜250mA/cm
2または100〜150mA/cm
2または100〜200mA/cm
2または100〜300mA/cm
2または100〜400mA/cm
2または100〜500mA/cm
2または150〜200mA/cm
2または200〜150mA/cm
2または200〜300mA/cm
2または200〜400mA/cm
2または200〜500mA/cm
2または150mA/cm
2または200mA/cm
2または300mA/cm
2または400mA/cm
2または500mA/cm
2または600mA/cm
2であるとき、セルは0〜3Vの間の電圧で作動する。いくつかの実施形態において、セルは、0〜1Vの間で作動する。いくつかの実施形態において、印加する電流が100〜250mA/cm
2または100〜150mA/cm
2または150〜200mA/cm
2または150mA/cm
2または200mA/cm
2であるとき、セルは、0〜1.5Vで作動する。いくつかの実施形態において、セルは、100〜250mA/cm
2または100〜150mA/cm
2または150〜200mA/cm
2または150mA/cm
2または200mA/cm
2のアンペア負荷にて0〜1Vの間で作動する。いくつかの実施形態において、セルは、100〜250mA/cm
2または100〜150mA/cm
2または150〜200mA/cm
2または150mA/cm
2または200mA/cm
2の電流またはアンペア負荷にて0.5Vで作動する。
【0366】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供するシステムおよび方法は、アノードとイオン交換膜との間に、および/またはカソードとイオン交換膜との間にパーコレーターおよび/またはスペーサーをさらに含む。パーコレーターおよび/またはスペーサーを含有する電気化学的システムは、2011年2月14日に出願された米国特許仮出願第61/442,573号(これは、本開示において、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されている。
【0367】
本明細書において提供するシステムは、1つまたは複数の本明細書に記載されている方法のいずれかに適用可能であるか、あるいはそれらのために使用することができる。いくつかの実施形態において、本明細書において提供するシステムは、カソード室に動作可能に接続されている酸素ガス供給または送達システムをさらに含む。酸素ガス送達システムは、酸素ガスをガス拡散カソードに提供するように構成されている。いくつかの実施形態において、酸素ガス送達システムは、ガスをガス拡散カソードに送達するように構成されており、ここでガスの還元は触媒されて水酸化物イオンを与える。いくつかの実施形態において、酸素ガスおよび水は、水酸化物イオンに還元され、システム中の未反応の酸素ガスは回収され、カソードに再循環される。酸素ガスは、外部の源からカソードへと酸素ガスを方向付けるための任意の手段を使用してカソードに供給され得る。外部の源からカソードへと酸素ガスを方向付けるためのこのような手段、または酸素ガス送達システムは当技術分野で周知であり、これらに限定されないが、パイプ、ダクト、およびコンジットなどが含まれる。いくつかの実施形態において、このシステムまたは酸素ガス送達システムは、外部の源からの酸素ガスをカソードへと方向付けるダクトを含む。酸素ガスを、セルの底面、セルの上部または横からカソードへと方向付けてもよいことを理解すべきである。いくつかの実施形態において、酸素ガスを、カソードの裏面に方向付け、ここで、酸素ガスは、カソード液と直接接触していない。いくつかの実施形態において、酸素ガスは、複数の入口を通してカソードに方向付けてもよい。本明細書において提供する方法およびシステムにおいてガス拡散カソードに酸素ガスを提供する酸素の源は、当技術分野において公知の酸素の任意の源を含む。このような源には、これらに限定されないが、周囲空気、シリンダーからの商用グレード酸素ガス、液体空気の分留によって得られる酸素ガス、空気をゼオライトのベッドを通過させることによって得られる酸素ガス、水の電気分解から得られる酸素ガス、高圧力または電流のいずれかによって二酸化ジルコニウムをベースとしたセラミック膜を通して空気を押し進めることによって得られる酸素、化学的酸素発生器、断熱タンカー中の液体としての酸素ガス、あるいはこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態において、酸素の源はまた、二酸化炭素ガスを提供し得る。いくつかの実施形態において、酸素ガスの源からの酸素は、カソード室に与えられる前に精製され得る。いくつかの実施形態において、酸素ガスの源からの酸素は、カソード室においてそのままで使用される。
【0368】
カソード室中のアルカリ
アルカリを含むカソード電解質はカソード室から抜き出すことができる。アルカリは、これに限定されないが拡散透析を含む当業界で公知の技術を用いて、カソード電解質から分離され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供する方法およびシステムで製造されるアルカリは、そのままで商業的に使用されるか、または当業界で公知の商業的プロセスにおいて使用される。その方法およびシステムにより生成するアルカリの純度は、最終使用要件に応じて変わり得る。例えば、膜を備えた電気化学セルを使用する本明細書で提供する方法およびシステムは、実質的に不純物を含まない場合がある膜品質アルカリを生成することができる。いくつかの実施形態では、膜の使用を回避するかまたはカソード電解質に炭素を加えることによって、より純度の低いアルカリを生成することもできる。いくつかの実施形態では、カソード電解質で生成されるアルカリは、2重量/重量%超もしくは5重量/重量%超または5〜50重量/重量%の間である。
【0369】
いくつかの実施形態では、カソード室で製造されるアルカリは、本明細書で説明するような種々の商業的プロセスにおいて使用され得る。いくつかの実施形態では、そうした用途に適したシステムを電気化学ユニットに動作可能なように連結することができるか、またはそのアルカリを、使用するために適切なサイトに輸送することができる。いくつかの実施形態では、このシステムは、カソード室からアルカリを収集し、それを、種々の商業的プロセスで使用するために、カソード室で製造されたアルカリを収集、処理および/または輸送できるタンク、コレクター、パイプ等(これらに限定されない)を含むアルカリを収集し処理するための任意の手段であってよい適切なプロセスへと連結するように構成されたコレクターを備える。
【0370】
いくつかの実施形態では、カソード電解質で製造される水酸化ナトリウムなどのアルカリはそのままで商業目的に使用されるか、または当業界で周知の様々な仕方で処理される。例えば、カソード液中で生成される水酸化ナトリウムは化学工業、家庭における塩基として、かつ/またはパルプ、紙、繊維製品、飲用水、せっけん、合成洗剤および排水管洗浄剤の製造における塩基として使用され得る。いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウムは、紙を製造するのに使用され得る。硫化ナトリウムと一緒に、水酸化ナトリウムを、クラフトプロセスにおいてセルロース繊維からリグニンを分離するために使用される白液の成分であり得る。これは、パルプ化プロセスから得られる褐色パルプを漂白するプロセスの後の方の段階のいくつかにおいても有用であり得る。これらの段階は、酸素脱リグニン、酸化抽出および単なる抽出を含むことができ、その全ては、その段階の最後にpH>10.5の強アルカリ環境を必要とし得る。いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウムを、組織を蒸解するのに使用することができる。このプロセスは、屠体(carcass)を密閉室に置くステップと、次いでその屠体を、そのボディが損なわれないように保つ化学結合を破壊し得る水酸化ナトリウムと水の混合液中に入れるステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウムは、水酸化ナトリウムをアルミナ含有原鉱(ボーキサイト)の精製において使用してアルミナ(酸化アルミニウム)を製造するバイエルプロセスで使用され得る。アルミナは、電解ホール・エルー法(Hall−Heroult process)によってアルミニウム金属を製造するのに使用され得る原料である。アルミナは、水酸化ナトリウムに溶解し得、酸化鉄などの高pHで溶解しにくい不純物を高度にアルカリ性の赤泥の形態で後に残留させることができる。いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウムを、せっけん製造プロセスで使用することができる。いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウムを、水酸化ナトリウムがメタノールとトリグリセリドのエステル交換用の触媒として使用され得るバイオディーゼルの製造において使用することができる。いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウムを、これらに限定されないが、ステンレスおよびガラス製のベイクウェアーでの脱脂剤などの洗浄剤として使用することができる。
【0371】
いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウムを食品の調製に使用することができる。水酸化ナトリウムの食品用途には、これらに限定されないが、果物や野菜の洗浄または化学的ピーリング、チョコレートおよびココアの加工、カラメル着色生産、家禽煮沸、清涼飲料水加工およびアイスクリームのシックニングが含まれる。オリーブを水酸化ナトリウムに浸漬させてそれを柔らかくすることができ、また、プレッツェルやドイツ灰汁パン(German lye roll)を、ベーキングしてクリスプにする前に水酸化ナトリウム溶液でつや出しすることができる。いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウムを、詰まった排水管を清浄にするための排水管洗浄剤として家庭で使用することができる。いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウムを、髪をストレートにするリラクサーとして使用することができる。いくつかの実施形態では、粘度を増大させ重い物質が沈殿するのを防止することができるので、水酸化ナトリウムは、石油精製や石油掘削において使用することができる。化学工業において、水酸化ナトリウムは、酸の中和、加水分解、縮合、鹸化および有機化合物中の他の基のヒドロキシルイオンでの置き換えの機能を提供することができる。いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウムを、繊維工業において使用することができる。水酸化ナトリウム溶液による繊維のシルケット加工は、より大きな引張強度および堅固な光沢を可能にすることができる。これは、繊維からワックスや油を除去して、繊維に漂白および染色をより受け入れやすくさせることもできる。水酸化ナトリウムは、ビスコースレーヨンの製造で使用され得る。いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウムは、家庭用漂白剤および殺菌剤として使用され得る次亜塩素酸ナトリウムを製造するため、ならびに防腐剤において使用され得、またアスピリンの製造用に使用され得るナトリウムフェノラートを製造するために使用され得る。
【0372】
二酸化炭素とカソード電解質の接触
一態様では、カソード室の内側かカソード室の外側のいずれかで二酸化炭素をカソード電解質と接触させるステップを含む本明細書で説明するような方法およびシステムを提供する。一態様では、アノード室のアノード電解質において金属イオンとアノードを接触させるステップと;アノード室において、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へ変換するかまたは酸化させるステップと;カソード室においてカソード電解質とカソードを接触させるステップと;カソード電解質においてアルカリを生成させるステップと;カソード電解質においてアルカリを、二酸化炭素供給源からの二酸化炭素などの炭素供給源からの炭素と接触させるステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、アノード室において生成したより高い酸化状態の金属をそのままで使用するステップ(本明細書で説明するように)、あるいはこれを水素ガスとの反応にまたは不飽和もしくは飽和炭化水素との反応に使用するステップ(本明細書で説明するような)をさらに含む。いくつかの実施形態では、アノードをアノード電解質と接触させるステップと;アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へ酸化するステップと;カソードをカソード電解質と接触させるステップと;カソード電解質において水酸化物イオンを生成するステップと;カソード電解質を、二酸化炭素を含む産業排ガスまたは重炭酸イオンを含む二酸化炭素の溶液と接触させるステップを含む、方法を提供する。
【0373】
他の態様では、アノードが金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へ変換するように構成されている、アノード電解質中の金属イオンと接触したアノードを含むアノード室;カソードがアルカリを生成するように構成されている、カソード電解質と接触したカソードを含むカソード室;および、カソード室に動作可能なように連結され、二酸化炭素供給源からの二酸化炭素などの炭素供給源からの炭素をカソード電解質においてアルカリと接触させるように構成された接触器を含む、システムを提供する。いくつかの実施形態では、このシステムは、アノード室に動作可能なように連結され、より高い酸化状態の金属イオンが水素ガスまたは不飽和もしくは飽和炭化水素(本明細書で説明するような)と反応するように構成された反応器をさらに含む。
【0374】
いくつかの実施形態では、炭素供給源からの炭素をカソード電解質で処理して、カソード電解質のアルカリ中の溶解二酸化炭素の溶液を生成させる。カソード電解質中に存在するアルカリは、溶液中での二酸化炭素の溶解を容易にすることができる。溶解二酸化炭素を含む溶液は、炭酸、ビカーボネート、カーボネートまたはその任意の組合せを含む。そうした方法およびシステムにおいて、炭素供給源からの炭素は、工業プロセスからのガス状二酸化炭素、または工業プロセスからのガス状二酸化炭素と接触している気/液接触器からの二酸化炭素の溶液を含む。そうした接触器は本明細書でさらに定義される。接触器を含むシステムのいくつかの実施形態では、カソード室は、水酸化物イオンに加えて、重炭酸および炭酸イオンを含む。
【0375】
炭素供給源からの炭素と一体化した電気化学システムの例示的例を
図12に例示する。
図12のシステム1200は、単なる例示目的であり、異なる酸化状態(例えば、クロム、スズ等)を有する他の金属イオン;
図1A、1B、2、3A、3B、4A、5A、5C、6、8A、8B、9および11の電気化学システムなどの本明細書で説明する他の電気化学システム;ならびに硫酸ナトリウムなどの塩化ナトリウム以外の第3の電解質は、このシステムに等しく適用可能な変更形態であることを理解すべきである。
図12の電気化学システム1200は、第3の電解質、NaClを含む第3の室を作り出す、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜で隔てられたアノードとカソードを含む。金属イオンは、アノード室中で、より低い酸化状態からより高い酸化状態へ酸化され、次いで、より高い酸化状態のこの金属は、水素ガスとの反応または不飽和もしくは飽和炭化水素との反応などの反応器での反応に使用される。そうした反応によって生成される生成物を本明細書で説明する。カソードは、
図12において水素ガスを形成するカソードとして例示されているが、ODCもこのシステムに同等に適用することができる。カソード室は、ガス状二酸化炭素と接触している気/液接触器に連結されている。水酸化物および/または炭酸ナトリウムなどのアルカリを含むカソード電解質を、カソード電解質をガス状二酸化炭素と接触させて重炭酸ナトリウム/炭酸ナトリウム溶液の生成をもたらす気/液接触器へ循環させる。次いで溶解二酸化炭素のこの溶液をカソード室に循環させ、そこでカソードで生成したアルカリは、重炭酸イオンを炭酸イオンに転換させ、カソード電解質のpHを12未満にする。次いでこれはセルの電圧を2V未満に低下させる。こうして生成した炭酸ナトリウム溶液は、ガス状二酸化炭素とさらに接触させるために気/液接触器へ戻して再循環させるか、または本明細書で説明するような炭酸カルシウムの沈殿プロセスを実行するために取り出すことができる。いくつかの実施形態では、ガス状二酸化炭素は、気/液接触器の中間での使用なしでカソード室中へ直接供給される。いくつかの実施形態では、気/液接触器からのビカーボネート溶液をカソード室へ供給しないが、その代わり、ビカーボネート生成物を沈殿させるために使用する。
【0376】
本明細書で説明し
図12に例示するような、炭素供給源からの炭素とカソード電解質(カソードがODCまたは水素ガス生成カソードのいずれかの場合)との接触に関係する方法およびシステムは、炭素供給源からの炭素をカソード電解質と接触させない方法およびシステムと比較して電圧節減をもたらすことができる。その電圧節減によって、電気発生のためのより少ない電力消費とより少ない二酸化炭素排出をもたらすことができる。これは、効率的でエネルギーが節減される本発明の方法およびシステムによって生成される炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、カルシウム/マグネシウムの重炭酸塩またはカルシウム/マグネシウムの炭酸塩、ハロゲン化炭化水素および/または酸などのより環境に配慮した化学品の生成をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、炭素供給源からの炭素(気/液接触器からの二酸化炭素ガスまたは炭酸/重炭酸ナトリウム溶液など)をカソードで発生したアルカリと接触させる電気化学セルは、炭素が、ODCまたは水素ガス生成カソードなどのカソードからのアルカリと接触しない、電気化学セルと比較して0.1V超、0.2V超、0.5V超、1V超もしくは1.5V超または0.1〜1.5Vの間、0.1〜1Vの間、0.2〜1.5Vの間、0.2〜1Vの間、0.5〜1.5Vの間もしくは0.5〜1Vの間の理論的なカソードハーフセル電圧節減または理論的なトータルセル電圧節減を有する。いくつかの実施形態では、この電圧節減は、7〜13の間、6〜12の間、7〜12の間、7〜10の間または6〜13の間のカソード電解質pHで達成される。
【0377】
先に説明したネルンストの式に基づいて、以下のように、より低い酸化状態の金属がアノードで酸化されてより高い酸化状態の金属:
Cu
+→Cu
2++2e
−
となる場合、銅(II)種の濃度を基にしたE
アノードは0.159〜0.75Vの間である。
【0378】
水をカソードで還元して水酸化物イオンと水素ガスにし(
図4Aまたは
図12で示すように)、その水酸化物イオンを重炭酸イオン(カソード電解質中に直接溶解させた二酸化炭素ガスまたはカソード電解質中に循環された気/液接触器からの炭酸/重炭酸ナトリウム溶液など)と接触させてカーボネートを形成した場合、カソード電解質のpHは、以下のように14から14未満へ低下する:
E
カソード=−0.059pH
c(ここで、pH
cはカソード電解質のpH=10である)
E
カソード=−0.59
【0379】
次いでE
全体は、アノード電解質中の銅イオンの濃度に応じて0.749〜1.29の間である。E
カソード=−0.59は、重炭酸/炭酸イオンと接触していない水素ガス生成カソードについてのE
カソード=−0.83に対して、200mV超または200mV〜500mVの間もしくは100〜500mVの間の節減である。E
全体=0.749〜1.29は、重炭酸/炭酸イオンと接触していない水素ガス生成カソードについてのE
全体=0.989〜1.53に対して、200mV超または200mV〜1.2Vの間もしくは100mV〜1.5Vの間の節減である。
【0380】
同様に、水をODCで水酸化物イオンに還元し(
図5Aで例示するように)、その水酸化物イオンを重炭酸イオン(カソード電解質中に直接溶解させた二酸化炭素ガスまたはカソード電解質中に循環された気/液接触器からの炭酸/重炭酸ナトリウム溶液など)と接触させてカーボネートを形成した場合、カソード電解質のpHは、以下のように14から14未満へ低下する:
E
カソード=1.224−0.059pH
c(pH
c=10)
E
カソード=0.636V
【0381】
次いでE
全体は、アノード電解質中の銅イオンの濃度に応じて−0.477〜0.064Vの間である。E
カソード=0.636は、重炭酸/炭酸イオンと接触していないODCの場合のE
カソード=0.4に対して100mV超または100mV〜200mVの間、100〜500mVの間もしくは200〜500mVの間の節減である。E
全体=−0.477〜0.064Vは、重炭酸/炭酸イオンと接触していないODCの場合のE
全体=−0.241〜0.3に対して、200mV超または200mV〜1.2Vの間もしくは100mV〜1.5Vの間の節減である。
【0382】
上述したように、カソード電解質を14以上のpHに増大させると、アノードハーフセル電位とカソードハーフセル電位の間の差は増大することになる。CO
2添加も他の介入(例えば、水での希釈)もなしでセル動作の期間を延長することにより、必要とされるセル電位は増大し続けることになる。7〜13の間または7〜12の間のカソードpHでの電気化学セルの動作は、大幅なエネルギー節減を提供する。
【0383】
したがって、カソード電解質における異なるpH値に起因して、アノードとカソードの間に印加される電圧が2.9V未満、2.5V未満、2.1V未満もしくは2.0V、1.5V未満、1.0V未満もしくは0.5V未満または0.5〜1.5Vの間であり、他方、カソード電解質でのpHが7〜13、7〜12、6〜12または7〜10の間である場合、カソード電解質において水酸化物イオン、炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンが生成する。
【0384】
いくつかの実施形態では、炭素供給源は二酸化炭素の任意のガス状供給源および/または溶解形態の二酸化炭素または二酸化炭素の溶液を提供する任意の供給源である。溶解形態の二酸化炭素または二酸化炭素の溶液は、炭酸、重炭酸イオン、炭酸イオンまたはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、カソードに供給される酸素ガスおよび/または二酸化炭素ガスは、当業界で公知の任意の酸素供給源および二酸化炭素ガス供給源からのものである。酸素ガスの供給源と二酸化炭素ガスの供給源は同じであっても異なっていてもよい。酸素ガス供給源および二酸化炭素ガス供給源のいくつかの例は、本明細書で説明する通りである。
【0385】
いくつかの実施形態では、カソード室において生成するアルカリを、二酸化炭素のガス状ストリームおよび/または溶解形態の二酸化炭素で処理して、そのままで商業的目的に使用できるカーボネート/ビカーボネート生成物を生成させることができるか、または、これらに限定されないが、アルカリ土類金属イオンなどの二価陽イオンで処理してアルカリ土類金属のカーボネートおよび/またはビカーボネートを生成させることができる。
【0386】
本明細書で用いる「炭素供給源からの炭素」は、ガス形態の二酸化炭素または溶解形態の二酸化炭素もしくは二酸化炭素の溶液を含む。炭素供給源からの炭素は、CO
2、炭酸、重炭酸イオン、炭酸イオンまたはこれらの組合せを含む。本明細書で用いる「炭素供給源」は、ガス状および/または溶解形態の二酸化炭素を提供する任意の供給源を含む。炭素の供給源には、これらに限定されないが、CO
2のガス状ストリームを提供する排出ストリームまたは工業プロセス;CO
2、炭酸、重炭酸イオン、炭酸イオンまたはこれらの組合せを含む溶液を提供する気/液接触器;および/またはビカーボネートブライン溶液が含まれる。
【0387】
いくつかの実施形態では、ガス状CO
2は、工業プラントからの排出ストリームまたは産物である。工業プラントの特性は、これらの実施形態において、変わる可能性がある。工業プラントには、これらに限定されないが、不飽和もしくは飽和炭化水素を生成する精製所、発電所(例えば、2008年12月24日出願の「Methods of sequestering CO
2」という名称の国際出願番号PCT/US08/88318(その開示内容は、その全体が参考として本明細書中に援用される)に詳細に記載されているとおりのもの)、化学処理プラント、製鋼所、製紙工場、セメントプラント(例えば、米国仮出願番号第61/088,340号(その開示内容は、その全体が参考として本明細書中に援用される)にさらに詳細に記載されているとおりのもの)およびCO
2を副産物として産出する他の工業プラントが含まれる。排出ストリームは、工業プラントの実動プロセスの副産物として産出されるガスのストリーム(または類似のストリーム)を意味する。ガス状ストリームは、実質的に純粋なCO
2であってもCO
2および1つまたは複数の追加的なガスを含む多成分ガス状ストリームであってもよい。本方法の実施形態におけるCO
2供給源として使用できる多成分ガス状ストリーム(CO
2を含む)には、還元状態ストリーム、例えば合成ガス、シフト反応合成ガス、天然ガスおよび水素などと、酸化状態ストリーム、例えばメタンの燃焼などの燃焼による燃焼排ガスの両方が含まれる。NOx、SOx、VOC、粒子状物質およびHgを含有する排ガスは、これらの化合物を、沈殿生成物中のカーボネートと一緒に取り込むことになる。本発明によって処理することができる興味のある具体的な多成分ガス状ストリームには、これらに限定されないが、酸素含有燃焼発電所の燃焼排ガス、ターボチャージ式ボイラー産物ガス,石炭ガス化産物ガス、シフト反応(shifted)石炭ガス化産物ガス、嫌気性消化装置産物ガス、油井頭天然ガスストリーム、および改質天然ガスまたはメタンハイドレートなどが含まれる。ガスが二酸化炭素と酸素ガスの両方を含む場合、そのガスを、二酸化炭素供給源としても酸素の供給源としても使用することができる。例えば、酸素とメタンの燃焼によって得られる燃焼排ガスは酸素ガスを含むことができ、二酸化炭素ガスと酸素ガスの両方の供給源を提供することができる。
【0388】
したがって、排出ストリームは、様々な異なるタイプの工業プラントから産出される。本発明に適した排出ストリームには、化石燃料(例えば、石炭、油、天然ガス)を燃焼する工業プラントで産出される燃焼排ガスなどの排出ストリームまたは天然由来の有機燃料堆積物(例えば、タールサンド、重油、オイルシェール等)の人為的な燃料産物が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明のシステムおよび方法に適した排出ストリームは、粉炭式石炭発電所、超臨界式石炭発電所、大量燃焼式石炭発電所、流動床式石炭発電所などの石炭燃焼式発電所から供給される。いくつかの実施形態では、排出ストリームは、ガスもしくは油燃焼式ボイラーおよび蒸気タービン発電所、ガスもしくは油燃焼式ボイラー単純サイクルガスタービン発電所またはガスもしくは油燃焼式ボイラー複合サイクルガスタービン発電所から供給される。いくつかの実施形態では、合成ガス(すなわち、有機物、例えば石炭、バイオマス等のガス化によって産出されるガス)を燃焼させる発電所により産出される排出ストリームを使用する。いくつかの実施形態では、統合型ガス化複合サイクル(IGCC)プラントからの排出ストリームを使用する。いくつかの実施形態では、熱回収蒸気発生器(Heat Recovery Steam Generator)(HRSG)プラントから産出される排出ストリームを使用して、本明細書で提供するシステムおよび方法による組成物を製造する。
【0389】
セメントプラントで産出される排出ストリームも、本明細書で提供するシステムおよび方法に適している。セメントプラント排出ストリームは、湿式プロセスプラントと乾式プロセスプラントの両方からの排出ストリームを含み、これらのプラントは、シャフトキルンまたはロータリーキルンを使用することができ、予備か焼炉を含むことができる。これらの工業プラントはそれぞれ、単一の燃料を燃焼させてよく、または、2つ以上の燃料を逐次的かまたは同時に燃焼させてよい。
【0390】
通常の周囲空気中に二酸化炭素が存在し得るが、その非常に低い濃度を考慮すると、周囲二酸化炭素は、炭素供給源からの炭素をカソード電解質と接触させた場合に得られるようなビカーボネートおよび/またはカーボネートの生成を達成するのに十分な二酸化炭素を提供することはできない。このシステムおよび方法のいくつかの実施形態では、電気化学システム内の圧力は周囲空気中の周囲大気圧より高くてよく、したがって、一般に、周囲二酸化炭素がカソード電解質中に浸透するのを防止することができる。
【0391】
接触システムまたは接触器は、炭素供給源からの炭素をカソード室内またはカソード室外のカソード電解質に接触させるための任意の手段を含む。炭素をカソード電解質と接触させるためのそうした手段、または炭素供給源からの炭素をカソード室と接触させるように構成された接触器は当業界で周知であり、それらには、これらに限定されないが、インジェクション、パイプ、ダクト、およびコンジットなどが含まれる。いくつかの実施形態では、上記システムは、炭素をカソード室内のカソード電解質に方向付けるダクトを含む。炭素供給源からの炭素をカソード室内でカソード電解質と接触させる場合、炭素を、カソード室において望ましい炭素の量に応じて、セルの底部、セルの頂部から、セル中の側部入口から、かつ/または全ての入口ポートからカソード電解質に注入することができることを理解すべきである。カソード室内での炭素供給源からの炭素の量は、その溶液の流量、カソード電解質の所望されるpHおよび/またはセルのサイズに依存する可能性がある。炭素供給源からの炭素の量のそうした最適化は十分に本発明の範囲内である。いくつかの実施形態では、炭素供給源からの炭素は、工業プロセスからのガス状二酸化炭素、または工業プロセスからのガス状二酸化炭素と接触している気/液接触器からの二酸化炭素の溶液から選択される。
【0392】
いくつかの実施形態では、カソード室は、カソード室中での二酸化炭素ガスおよび/または二酸化炭素の溶液の送達を容易にする助けとなる隔壁(partition)を含む。いくつかの実施形態では、その隔壁は、二酸化炭素ガスと酸素ガスの混合および/またはカソード室中の二酸化炭素ガスとアノード室中の水素ガスの混合を防止する助けとなることができる。いくつかの実施形態では、上記隔壁は、ガス形態の二酸化炭素ならびに溶解形態の二酸化炭素を含むカソード液をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するシステムは、カソード電解質を第1のカソード電解質部分と第2のカソード電解質部分に分割する隔壁であって、溶解二酸化炭素を含む第2のカソード電解質部分がカソードと接触し;溶解二酸化炭素およびガス状二酸化炭素を含む第1のカソード電解質部分が隔壁の下で第2のカソード電解質部分と接触する隔壁を含む。このシステムでは、第1のカソード電解質部分中のガス、例えば二酸化炭素が第2のカソード電解質部分中のカソード電解質から分離されるように、隔壁をカソード電解質中に配置する。したがって、隔壁は、カソードでのガスならびに/またはアノードからのガスおよび/もしくは蒸気の混合を防止する手段として役に立ち得る。そうした隔壁は、2009年11月12日出願の米国特許公開第2010/0084280号(本開示において、これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されている。
【0393】
いくつかの実施形態では、炭素供給源は、CO
2、炭酸、重炭酸イオン、炭酸イオンまたはこれらの組合せを含む、溶解形態の二酸化炭素または二酸化炭素の溶液を提供する気/液接触器である。いくつかの実施形態では、部分的にまたは完全に溶解したCO
2を飽和させた溶液は、CO
2チャージ水を作製するために、CO
2ガス状ストリームをスラリーまたは溶液に通して注入するかまたは拡散させることによって作製される。いくつかの実施形態では、CO
2を飽和させたスラリーまたは溶液は、本明細書で説明するような電気化学セルのカソード電解質から得られるプロトン除去剤を含む。いくつかの実施形態では、気/液接触器は、CO
2ガスが、プロトン除去剤を含むスラリーまたは溶液を通してバブリングするバブル室を含むことができる。いくつかの実施形態では、接触器は、プロトン除去剤を含むスラリーまたは溶液を、CO
2ガスを通して噴霧または循環させるスプレー塔を含むことができる。いくつかの実施形態では、接触器は、プロトン除去剤を含む溶液とCO
2ガスとの間の接触表面積を増大させるための充填床を含むことができる。例えば、気/液接触器または吸収装置は、炭酸ナトリウムのスラリーもしくは溶液または充填床を含むことができる。CO
2を、そのアルカリ性媒体が溶液へのCO
2の溶解を容易にする、このスラリーもしくは溶液または充填床を通して注入する。CO
2の溶解後に、溶液はビカーボネート、カーボネートまたはこれらの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、一般的な吸収装置または接触器の流体温度は32〜37℃である。溶液中へCO
2を吸収させる吸収装置または接触器は、2010年3月10日出願の米国特許出願番号第12/721,549号(本開示において、これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されている。カーボネート/ビカーボネート種を含む溶液を、気/液接触器から抜き出してビカーボネート/カーボネート生成物を生成させることができる。いくつかの実施形態では、カーボネート/ビカーボネート溶液を、アルカリを含むカソード電解質へ移送することができる。このアルカリは、ビカーボネートを実質的にまたは完全にカーボネートへ転換してカーボネート溶液を生成させることができる。カーボネート溶液は、気/液接触器に戻して再循環させるか、またはカソード室から抜き出し、二価陽イオンで処理してビカーボネート/カーボネート生成物を生成させることができる。
【0394】
いくつかの実施形態では、カソード電解質中で生成されたアルカリを気/液接触器へ送ってよく、そこで二酸化炭素ガスをアルカリと接触させる。アルカリと接触させた後、二酸化炭素ガスは、炭酸、重炭酸イオン、炭酸イオンまたはこれらの組合せの生成をもたらすことができる。次いで溶解形態の二酸化炭素をカソード室に戻すことができ、そこでアルカリはビカーボネートをカーボネートへ転換させることができる。次いでカーボネート/ビカーボネート混合物をそのままで商業的目的に使用することができるか、または、アルカリ土類金属イオンなどの二価陽イオンで処理してアルカリ土類金属カーボネート/ビカーボネートを生成させる。
【0395】
いくつかの実施形態におけるシステムは、そのシステムにおいてカソード電解質を抜き出し循環させるのに適合したカソード電解質循環システムを含む。いくつかの実施形態では、カソード電解質循環システムは、そのシステムにおいて、炭素供給源からの炭素を循環するカソード電解質と接触させるのに、かつ電解質を再循環させるのに適合した気/液接触器を、カソード室の外側に含む。カソード電解質のpHは、システムから、カソード電解質/炭素供給源からの炭素を抜き出し、そして/または循環させることによって調節することができるので、カソード電解質区画のpHは、システムから除去され、気/液接触器を通過させられ、そして/またはカソード室に戻して再循環されるカソード電解質の量を制御することによって制御が可能である。
【0396】
いくつかの実施形態では、炭素供給源はビカーボネートブライン溶液である。ビカーボネートブライン溶液は、2011年1月18日出願の米国仮出願番号第61/433,641号および2010年10月29日出願の同第61/408,325号(本開示において、これら両方は、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されている。本明細書で用いる「ビカーボネートブライン溶液」は、重炭酸イオンを含む任意のブラインを含む。いくつかの実施形態では、ブラインはビカーボネート、例えば重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸リチウム等を含むブラインの溶液などの合成ブラインである。いくつかの実施形態では、ブラインは天然由来のビカーボネートブライン、例えば自然発生的な湖などの地下(subterranean)ブラインである。いくつかの実施形態では、ビカーボネートブラインは、これらに限定されないが、カーボネートブライン、アルカリ性ブライン、ハードブラインおよび/またはアルカリ性ハードブラインなどの地下ブラインから作製される。いくつかの実施形態では、ビカーボネートブラインは、破砕されてブライン中に溶解し、任意選択でさらに処理されている鉱物性物質(mineral)から作製される。鉱物性物質は湖の表面下、表面または地下で見出すことができる。ビカーボネートブラインは蒸発残留岩からも作製することができる。ビカーボネートブラインは、ビカーボネート(HCO
3−)に加えて、これらに限定されないが、炭酸(H
2CO
3)および/またはカーボネート(CO
32−)などの炭素の他のオキシ陰イオンを含むことができる。
【0397】
本明細書で説明する電気化学セルのいくつかの実施形態では、このシステムは、炭素供給源からのCO
2、炭酸、重炭酸イオン、炭酸イオンまたはこれらの組合せなどの炭素と、カソード電解質からの水酸化ナトリウムなどのアルカリとの反応によって炭酸イオンを生成するように構成される。いくつかの実施形態では(図には示されていない)、ガス形態の二酸化炭素などの炭素供給源からの炭素を、カソード室内のカソード液と接触させることができ、水酸化物/カーボネート/ビカーボネートを含むカソード液をカソード室から抜き出し、カソード室の外側の気/液接触器と接触させることができる。そうした実施形態では、気/液接触器からのカソード液を、カソード室内のカソード液と再度接触させることができる。
【0398】
炭素供給源からの炭素がカソード室の外側のカソード電解質と接触するシステムについては、アルカリ含有カソード電解質をカソード室から抜き出すことができ、炭素供給源からの炭素を含むように構成された容器に加えることができる。この容器は、パイプもしくはコンジット等の炭素供給源用の導入口またはCO
2のガス状ストリーム、溶解形態のCO
2を含む溶液および/またはビカーボネートブラインと連絡する配管系を有することができる。容器は、例えばビカーボネートブライン溶液などの炭素供給源を製造、改変および/または貯蔵することができる反応器と流体連絡していてもよい。
【0399】
炭素供給源からの炭素をカソード室内のカソード電解質と接触させるシステムについては、アルカリ、ビカーボネートおよび/またはカーボネートを含むカソード電解質をカソード室から抜き出し、本明細書で説明するようなアルカリ土類金属イオンと接触させてビカーボネート/カーボネート生成物を生成させることができる。
【0400】
電気化学セルの成分
本明細書で提供する方法およびシステムは、以下の成分の1つまたは複数を含む。
【0401】
いくつかの実施形態では、アノードは腐食安定性のある導電性のベース支持体を含むことができる。例えば、これらに限定されないが、非晶質炭素、例えばカーボンブラック、米国特許第4,908,198号に記載されておりSFC(商標)Carbonsという商標名で市販されている特異的にフッ素化された炭素のようなフッ素化炭素。導電性のベース材料の他の例には、これらに限定されないが、準化学量論的酸化チタン、例えば式TiO
x(xは約1.67〜約1.9の範囲である)を有するマグネリ相準化学量論的酸化チタンが含まれる。例えば、酸化チタンTi
4O
7。いくつかの実施形態では、炭素系材料は、GDEのためまたは電気伝導性を高めるためのブレンド材料としての機械的支持体を提供するが、それを、腐食を防止するための触媒支持体として使用することはできない。
【0402】
いくつかの実施形態において、ガス拡散電極または本明細書に記載する一般的な電極は、電気化学的解離、例えばカソードでの酸素の還元またはアノードでの金属イオンの酸化を助けるための電気触媒(electrocatalyst)を含有する。電気触媒の例には、高度に分散された白金族金属の金属または合金、例えば白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、あるいはそれらの組合せ(例えば、白金−ロジウム、白金−ルテニウム、PtIr混合金属酸化物でコーティングされたチタンメッシュもしくは亜鉛めっき白金でコーティングされたチタンなど);電気触媒金属酸化物(例えば、IrO
2であるが、これに限定されない);金、タンタル、炭素、グラファイト、有機金属大環状化合物、および酸素の電気化学還元または金属の酸化に関する技術分野で周知の他の電気触媒が含まれるが、これらに限定されない。
【0403】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明する電極は、多孔質の均一な複合構造物ならびに各層がはっきりと区別できる物理的および組成的な構成、例えば空隙率およびフラッディングを防止するための電気伝導性ベースならびに三相界面の喪失および結果としての電極性能を有することができる不均一な層状タイプの複合構造物に関する。
【0404】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する電極は、浸透(penetration)および電極の汚れを減少させるのを助けることができる、電極のアノード溶液またはカソード溶液側のまたはそれに隣接した多孔質ポリマー層を有するアノードおよびカソードを含むことができる。安定なポリマー性の樹脂またはフィルムは、アノード液と隣接した複合電極層中に含まれ得、これは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン等の非イオン性ポリマー、あるいは、ポリスチレンスルホン酸、スチレンとビニルベンゼンのスルホン化コポリマー、カルボキシル化ポリマー誘導体、部分または完全フッ素化炭化水素鎖を有するスルホン化もしくはカルボキシル化ポリマーおよびポリビニルピリジンなどのアミノ化ポリマーから形成されるもののようなイオン型荷電ポリマーから形成される樹脂を含む。安定なミクロ多孔質ポリマーフィルムは、電解質浸透を阻止するためにドライ側に含まれ得る。いくつかの実施形態では、ガス拡散カソードは金および/または銀などの貴金属、貴金属合金、およびニッケルなどの高い表面積コーティングでコーティングされている当業界で公知のそうしたカソードを含む。
【0405】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供する方法およびシステムは、アノード中またはその周りでの電解質の拡散の増大を可能にするアノードを含む。本出願人等は、アノードの形状および/または幾何学構造(geometry)は、アノード室中のアノード周りのアノード電解質のフローまたは速度に影響を及ぼす可能性があり、ひいては、物質移動を改善し、セルの電圧を低下させる可能性があることを発見した。いくつかの実施形態において、本明細書で提供する方法およびシステムは、「拡散増進」アノードであるアノードを含む。本明細書で用いる「拡散増進」アノードは、アノード中および/またはその周りでの電解質の拡散を増進し、それによってアノードでの反応を増進させるアノードを含む。いくつかの実施形態において、拡散増進アノードは多孔質アノードである。本明細書で用いる「多孔質アノード」は、その中に細孔を有するアノードを含む。本出願人等は、予想外にかつ驚くべきことに、本明細書で提供する方法およびシステムにおいて使用する拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)が、電気化学的システムにおいて、非拡散型または非多孔質アノードを超えるいくつかの利点(この利点は、より大きい表面積、活性部位の増大、電圧の低下、アノード電解質による抵抗の減少または排除、電流密度の増大、アノード電解質中の乱流の増大、および/または改善された物質移動を含むが、これらに限定されない)を有することを発見した。
【0406】
拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)は、扁平であっても非扁平であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)は、扁平な形態(この扁平な形態は、展伸扁平形態、多孔板、網状構造等を含むが、これらに限定されない)である。いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)は、展伸メッシュを含むか、または扁平展伸型メッシュアノードである。
【0407】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)は、非扁平であるか、波形の幾何学構造を有する。いくつかの実施形態において、アノードの波形の幾何学構造はアノード電解質への乱流のさらなる利点をもたらし、アノードでの物質移動を改善することができる。本明細書で用いる「波形」または「波形の幾何学構造」または「波形アノード」は、扁平でない、すなわち非扁平であるアノードを含む。アノードの波形の幾何学構造には、非扁平状、展伸非扁平状、階段状、起伏状、波状、3D状、クリンプ状、溝状、ひだ状、縮み(pucker)状、畝(ridge)状、フリル状、さざ波状、しわ(wrinkle)状、ウーブンメッシュ(woven mesh)状、穿孔タブ様式(punched tab style)等が含まれるが、これらに限定されない。
【0408】
拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)の扁平状および波形の幾何学構造のいくつかの例は、
図16に例示されている。これらの例は、単なる例示目的に過ぎず、これらの幾何学構造からの任意の他の変形形態は、十分に本発明の範囲内である。
図16の
図Aは扁平展伸アノードの例であり、
図16の
図Bは波形アノードの例である。
【0409】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップであって、アノード電解質が金属イオンを含むステップと、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)において、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいて水酸化物を生成させるステップとを含む方法を提供する。
【0410】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップであって、アノード電解質が金属イオンを含むステップと、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)において、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードをカソード電解質と接触させるステップと、不飽和炭化水素または飽和炭化水素を上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と反応させてハロゲン化炭化水素を生成するステップとを含む方法を提供する。
【0411】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップであって、そのアノード電解質が金属イオンを含むステップと、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)において、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードをカソード電解質と接触させるステップと、5重量%超の水を含む水性媒体中で、不飽和炭化水素または飽和炭化水素を上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と反応させてハロゲン化炭化水素を生成するステップとを含む方法を提供する。
【0412】
上記の方法のいくつかの実施形態において、不飽和炭化水素(式Iなど)、飽和炭化水素(式IIIなど)、ハロゲン化炭化水素(式IIおよびIVなど)、金属イオン等はすべて本明細書で詳細に説明されている。
【0413】
上記の方法のいくつかの実施形態において、水性媒体は、5重量%超の水、または5.5重量%超、もしくは6重量%超、もしくは5〜90重量%の間、もしくは5〜95重量%の間、もしくは5〜99重量%の間の水、または5.5〜90重量%の間、もしくは5.5〜95重量%の間、もしくは5.5〜99重量%の間の水、または6〜90重量%の間、もしくは6〜95重量%の間、もしくは6〜99重量%の間の水を含む。
【0414】
上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは水、アルカリおよび/または水素ガスを生成する。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは、水を生成するODCである。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは、アルカリを生成するODCである。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは水素ガスを生成する。上記の方法のいくつかの実施形態において、カソードは、酸素および水を水酸化物イオンに還元する酸素脱分極カソードであるか、カソードは水を水素ガスおよび水酸化物イオンに還元する水素ガス生成カソードであるか、カソードは塩酸を水素ガスに還元する水素ガス生成カソードであるか、あるいはカソードは塩酸と酸素ガスを反応させて水を形成する酸素脱分極カソードである。
【0415】
上記の方法のいくつかの実施形態において、金属イオンは本明細書で説明する任意の金属イオンである。上記の方法のいくつかの実施形態において、金属イオンは、鉄、クロム、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、金属イオンは、鉄、クロム、銅およびスズからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、金属イオンは銅である。いくつかの実施形態において、金属イオンのより低い酸化状態は、1+、2+、3+、4+または5+である。いくつかの実施形態において、金属イオンのより高い酸化状態は、2+、3+、4+、5+または6+である。
【0416】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップであって、アノード電解質が銅イオンを含むステップと、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)において、銅イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいて水酸化物を生成させるステップとを含む方法を提供する。
【0417】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップであって、アノード電解質が銅イオンを含むステップと、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)において、銅イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードをカソード電解質と接触させるステップと、不飽和炭化水素または飽和炭化水素を上記より高い酸化状態の銅イオンを含むアノード電解質と反応させてハロゲン化炭化水素を生成するステップとを含む方法を提供する。
【0418】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップであって、アノード電解質が銅イオンを含むステップと、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)において、銅イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードをカソード電解質と接触させるステップと、5重量%超の水を含む水性媒体中で、不飽和炭化水素または飽和炭化水素を上記より高い酸化状態の銅イオンを含むアノード電解質と反応させて、ハロゲン化炭化水素を生成するステップとを含む方法を提供する。
【0419】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップであって、アノード電解質が銅イオンを含むステップと、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)において、銅イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードをカソード電解質と接触させるステップと、エチレンを上記より高い酸化状態の銅イオンを含むアノード電解質と反応させて二塩化エチレンを生成するステップとを含む方法を提供する。
【0420】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップであって、アノード電解質が銅イオンを含むステップと、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)において、銅イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードをカソード電解質と接触させるステップと、5重量%超の水を含む水性媒体中、エチレンを上記より高い酸化状態の銅イオンを含むアノード電解質と反応させて二塩化エチレンを生成するステップとを含む方法を提供する。
【0421】
上記の方法および実施形態のいくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)の使用は、非拡散型または非多孔質アノードと比較して、10〜500mVの間、または50〜250mVの間、または100〜200mVの間、または200〜400mVの間、または25〜450mVの間、または250〜350mVの間、または100〜500mVの間の電圧節減をもたらす。
【0422】
上記の方法および実施形態のいくつかの実施形態において、波形アノードの使用は、扁平多孔質アノードと比較して、10〜500mVの間、または50〜250mVの間、または100〜200mVの間、または200〜400mVの間、または25〜450mVの間、または250〜350mVの間、または100〜500mVの間の電圧節減をもたらす。
【0423】
拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)は、種々のパラメーター(インチ当たりのメッシュの線の数であるメッシュ数、細孔サイズ、ワイヤーの太さまたはワイヤー径、開口面積パーセンテージ、波形の振幅、波形の繰り返し周期等を含むが、これらに限定されない)によって特徴付けることができる。拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)のこれらの特徴は、多孔質アノードの特性(例えば、アノード反応のための表面積の増大、溶液抵抗の低下、アノードとカソードの間に印加される電圧の低下、アノードにわたる電解質乱流の増進、および/またはアノードでの改善された物質移動などであるが、これらに限定されない)に影響を及ぼし得る。
【0424】
上記の方法および実施形態のいくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)は、2×1mm〜20×10mmの間、または2×1mm〜10×5mmの間、または2×1mm〜5×5mmの間、または1×1mm〜20×10mmの間、または1×1mm〜10×5mmの間、または1×1mm〜5×5mmの間、または5×1mm〜10×5mmの間、または5×1mm〜20×10mmの間、または10×5mm〜20×10mmの間などの範囲の細孔開口サイズ(
図16に例示したように)を有することができる。多孔質アノードの細孔サイズは、細孔の幾何学構造にも依存する可能性があることを理解すべきである。例えば、細孔の幾何学構造は菱形であっても正方形であってもよい。菱形の幾何学構造について、細孔サイズは、例えば3×10mm(3mmは菱形の幅であり、10mmはその長さである)、またはその逆の菱形であってよい。正方形の幾何学構造について、細孔サイズは、例えば各側部が3mmである。ウーブンメッシュは、正方形の細孔を有するメッシュであってよく、展伸メッシュは、菱形の細孔を有するメッシュであってよい。
【0425】
上記の方法および実施形態のいくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)は、0.5mm〜5mmの間、または0.5mm〜4mmの間、または0.5mm〜3mmの間、または0.5mm〜2mmの間、または0.5mm〜1mmの間、または1mm〜5mmの間、または1mm〜4mmの間、または1mm〜3mmの間、または1mm〜2mmの間、または2mm〜5mmの間、または2mm〜4mmの間、または2mm〜3mmの間、または0.5mm〜2.5mmの間、または0.5mm〜1.5mmの間、または1mm〜1.5mmの間、または1mm〜2.5mmの間、または2.5mm〜3mmの間の範囲、または0.5mm、または1mm、または2mm、または3mmの細孔ワイヤーの太さまたはメッシュ厚さ(
図16に例示するような)を有することができる。
【0426】
上記の方法および実施形態のいくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)が波形アノードである場合、波形アノードは、1mm〜8mmの間、または1mm〜7mmの間、または1mm〜6mmの間、または1mm〜5mmの間、または1mm〜4mmの間、または1mm〜4.5mmの間、または1mm〜3mmの間、または1mm〜2mmの間、または2mm〜8mmの間、または2mm〜6mmの間、または2mm〜4mmの間、または2mm〜3mmの間、または3mm〜8mmの間、または3mm〜7mmの間、または3mm〜5mmの間、または3mm〜4mmの間、または4mm〜8mmの間、または4mm〜5mmの間、または5mm〜7mmの間、または5mm〜8mmの間の範囲の波形振幅(
図16に例示するような)を有することができる。
【0427】
上記の方法および実施形態のいくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)が波形アノードである場合、波形アノードは、2mm〜35mmの間、または2mm〜32mmの間、または2mm〜30mmの間、または2mm〜25mmの間、または2mm〜20mmの間、または2mm〜16mmの間、または2mm〜10mmの間、または5mm〜35mmの間、または5mm〜30mmの間、または5mm〜25mmの間、または5mm〜20mmの間、または5mm〜16mmの間、または5mm〜10mmの間、または15mm〜35mmの間、または15mm〜30mmの間、または15mm〜25mmの間、または15mm〜20mmの間、または20mm〜35mmの間、または25mm〜30mmの間、または25mm〜35mmの間、または25mm〜30mmの間の範囲の波形周期(図示せず)を有することができる。
【0428】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップであって、アノード電解質が金属イオンを含むステップと、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)において、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードとカソード電解質とを接触させるステップと、カソードにおいて水酸化物を生成させるステップであって、上記アノードが以下の
2×1mm〜20×10mmの間、または2×1mm〜10×5mmの間、または2×1mm〜5×5mmの間、または1×1mm〜20×10mmの間、または1×1mm〜10×5mmの間、または1×1mm〜5×5mmの間、または5×1mm〜10×5mmの間、または5×1mm〜20×10mmの間、または10×5mm〜20×10mmの間の範囲の細孔開口サイズ;
0.5mm〜5mmの間、または0.5mm〜4mmの間、または0.5mm〜3mmの間、または0.5mm〜2mmの間、または0.5mm〜1mmの間、または1mm〜5mmの間、または1mm〜4mmの間、または1mm〜3mmの間、または1mm〜2mmの間、または2mm〜5mmの間、または2mm〜4mmの間、または2mm〜3mmの間、または0.5mm〜2.5mmの間、または0.5mm〜1.5mmの間、または1mm〜1.5mmの間、または1mm〜2.5mmの間または2.5mm〜3mmの間の範囲、または0.5mm、または1mm、または2mm、または3mmの細孔ワイヤーの太さまたはメッシュ厚さ;
1mm〜8mmの間、または1mm〜7mmの間、または1mm〜6mmの間、または1mm〜5mmの間、または1mm〜4mmの間、または1mm〜4.5mmの間、または1mm〜3mmの間、または1mm〜2mmの間、または2mm〜8mmの間、または2mm〜6mmの間、または2mm〜4mmの間、または2mm〜3mmの間、または3mm〜8mmの間、または3mm〜7mmの間、または3mm〜5mmの間、または3mm〜4mmの間、または4mm〜8mmの間、または4mm〜5mmの間、または5mm〜7mmの間、または5mm〜8mmの間の範囲の波形振幅;および
2mm〜35mmの間、または2mm〜32mmの間、または2mm〜30mmの間、または2mm〜25mmの間、または2mm〜20mmの間、または2mm〜16mmの間、または2mm〜10mmの間、または5mm〜35mmの間、または5mm〜30mmの間、または5mm〜25mmの間、または5mm〜20mmの間、または5mm〜16mmの間、または5mm〜10mmの間、または15mm〜35mmの間、または15mm〜30mmの間、または15mm〜25mmの間、または15mm〜20mmの間、または20mm〜35mmの間、または25mm〜30mmの間、または25mm〜35mmの間、または25mm〜30mmの間の範囲の波形周期
の1つまたは複数を含むステップとを含む方法を提供する。
【0429】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップであって、アノード電解質が金属イオンを含むステップと、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)において、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードをカソード電解質と接触させるステップと、不飽和炭化水素または飽和炭化水素を上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と反応させて、ハロゲン化炭化水素を生成するステップであって、上記アノードが以下の
2×1mm〜20×10mmの間、または2×1mm〜10×5mmの間、または2×1mm〜5×5mmの間、または1×1mm〜20×10mmの間、または1×1mm〜10×5mmの間、または1×1mm〜5×5mmの間、または5×1mm〜10×5mmの間、または5×1mm〜20×10mmの間、または10×5mm〜20×10mmの間の範囲の細孔開口サイズ;
0.5mm〜5mmの間、または0.5mm〜4mmの間、または0.5mm〜3mmの間、または0.5mm〜2mmの間、または0.5mm〜1mmの間、または1mm〜5mmの間、または1mm〜4mmの間、または1mm〜3mmの間、または1mm〜2mmの間、または2mm〜5mmの間、または2mm〜4mmの間、または2mm〜3mmの間、または0.5mm〜2.5mmの間、または0.5mm〜1.5mmの間、または1mm〜1.5mmの間、または1mm〜2.5mmの間または2.5mm〜3mmの間の範囲、または0.5mm、または1mm、または2mm、または3mmの細孔ワイヤーの太さまたはメッシュ厚さ;
1mm〜8mmの間、または1mm〜7mmの間、または1mm〜6mmの間、または1mm〜5mmの間、または1mm〜4mmの間、または1mm〜4.5mmの間、または1mm〜3mmの間、または1mm〜2mmの間、または2mm〜8mmの間、または2mm〜6mmの間、または2mm〜4mmの間、または2mm〜3mmの間、または3mm〜8mmの間、または3mm〜7mmの間、または3mm〜5mmの間、または3mm〜4mmの間、または4mm〜8mmの間、または4mm〜5mmの間、または5mm〜7mmの間、または5mm〜8mmの間の範囲の波形振幅;および
2mm〜35mmの間、または2mm〜32mmの間、または2mm〜30mmの間、または2mm〜25mmの間、または2mm〜20mmの間、または2mm〜16mmの間、または2mm〜10mmの間、または5mm〜35mmの間、または5mm〜30mmの間、または5mm〜25mmの間、または5mm〜20mmの間、または5mm〜16mmの間、または5mm〜10mmの間、または15mm〜35mmの間、または15mm〜30mmの間、または15mm〜25mmの間、または15mm〜20mmの間、または20mm〜35mmの間、または25mm〜30mmの間、または25mm〜35mmの間、または25mm〜30mmの間の範囲の波形周期
の1つまたは複数を含むステップとを含む方法を提供する。
【0430】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)をアノード電解質と接触させるステップであって、アノード電解質が金属イオンを含むステップと、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)において、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へと酸化させるステップと、カソードをカソード電解質と接触させるステップと、5重量%超の水を含む水性媒体中で、不飽和炭化水素または飽和炭化水素を上記より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質と反応させて、ハロゲン化炭化水素を生成するステップであって、上記アノードが以下の
2×1mm〜20×10mmの間、または2×1mm〜10×5mmの間、または2×1mm〜5×5mmの間、または1×1mm〜20×10mmの間、または1×1mm〜10×5mmの間、または1×1mm〜5×5mmの間、または5×1mm〜10×5mmの間、または5×1mm〜20×10mmの間、または10×5mm〜20×10mmの間の範囲の細孔開口サイズ;
0.5mm〜5mmの間、または0.5mm〜4mmの間、または0.5mm〜3mmの間、または0.5mm〜2mmの間、または0.5mm〜1mmの間、または1mm〜5mmの間、または1mm〜4mmの間、または1mm〜3mmの間、または1mm〜2mmの間、または2mm〜5mmの間、または2mm〜4mmの間、または2mm〜3mmの間、または0.5mm〜2.5mmの間、または0.5mm〜1.5mmの間、または1mm〜1.5mmの間、または1mm〜2.5mmの間または2.5mm〜3mmの間の範囲、または0.5mm、または1mm、または2mm、または3mmの細孔ワイヤーの太さまたはメッシュ厚さ;
1mm〜8mmの間、または1mm〜7mmの間、または1mm〜6mmの間、または1mm〜5mmの間、または1mm〜4mmの間、または1mm〜4.5mmの間、または1mm〜3mmの間、または1mm〜2mmの間、または2mm〜8mmの間、または2mm〜6mmの間、または2mm〜4mmの間、または2mm〜3mmの間、または3mm〜8mmの間、または3mm〜7mmの間、または3mm〜5mmの間、または3mm〜4mmの間、または4mm〜8mmの間、または4mm〜5mmの間、または5mm〜7mmの間、または5mm〜8mmの間の範囲の波形振幅;および
2mm〜35mmの間、または2mm〜32mmの間、または2mm〜30mmの間、または2mm〜25mmの間、または2mm〜20mmの間、または2mm〜16mmの間、または2mm〜10mmの間、または5mm〜35mmの間、または5mm〜30mmの間、または5mm〜25mmの間、または5mm〜20mmの間、または5mm〜16mmの間、または5mm〜10mmの間、または15mm〜35mmの間、または15mm〜30mmの間、または15mm〜25mmの間、または15mm〜20mmの間、または20mm〜35mmの間、または25mm〜30mmの間、または25mm〜35mmの間、または25mm〜30mmの間の範囲の波形周期
の1つまたは複数を含むステップとを含む方法を提供する。
【0431】
いくつかの実施形態において、拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)は、電気触媒でコーティングされた金属(例えば、チタンなど)から作製されている。電気触媒の例は、上述されており、電気触媒の例には、高度に分散された白金族金属の金属または合金、例えば白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、あるいはそれらの組合せ(例えば、白金−ロジウム、白金−ルテニウム、PtIr混合金属酸化物でコーティングされたチタンメッシュもしくは亜鉛めっき白金でコーティングされたチタンなど);電気触媒金属酸化物(例えば、IrO
2であるが、これに限定されない);金、タンタル、炭素、グラファイト、有機金属大環状化合物および当技術分野で周知の他の電気触媒が含まれるが、これらに限定されない。拡散増進アノード(例えば多孔質アノードであるが、これに限定されない)は市販されていてもよく、または適切な金属で製作されていてもよい。電極は、当技術分野で周知のプロセスを用いて、電気触媒でコーティングされてもよい。例えば、金属を、コーティング用の触媒溶液中に浸してもよく、そして、加熱、サンドブラスティング等のプロセスに供してもよい。アノードを製作し、触媒でコーティングするそうした方法は、当技術分野で周知である。
【0432】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供するシステムおよび方法において、カソード液もしくはカソード電解質および/またはアノード液もしくはアノード電解質を含む電解質またはAEMとCEMの間に配置された第3の電解質には、これらに限定されないが、塩水または淡水が含まれる。塩水には、これらに限定されないが、海水、ブラインおよび/または半塩水(brackish water)が含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するシステムおよび方法におけるカソード電解質には、これらに限定されないが、海水、淡水、ブライン、半塩水、水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたはこれらの組合せが含まれる。「塩水」は、淡水以外のいくつかの異なる種類の水性流体を指すその従来の意味で用いられ、この用語「塩水」には、これらに限定されないが、半塩水、海水およびブライン(天然由来の地下ブラインまたは人為的地下ブラインおよび人工ブライン、例えば地熱プラント廃水、脱塩廃水等を含む)ならびに淡水の塩分より多い塩分を含む他の塩類溶液(saline)が含まれる。ブラインは塩が飽和またはほぼ飽和している水であり、50ppt(パーツ・パー・サウザンド)以上の塩分を有する。半塩水は、淡水より塩分を含むが海水ほどは塩分を含まない、0.5〜35pptの範囲の塩分を有する水である。海水は、海または大洋からの水であり、35〜50pptの範囲の塩分を有する。塩水供給源は、海、大洋、湖、沼地、河口、潟等の天然由来の供給源であっても人工の供給源であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するシステムは、地球上の(terrestrial)ブラインからの塩水を含む。いくつかの実施形態では、電気化学セルから抜き出された枯渇塩水に塩を補充し、電気化学セルへ戻して再循環させる。
【0433】
いくつかの実施形態では、カソード電解質および/またはアノード電解質および/または塩水などの第3の電解質を含む電解質は、1%超の塩化物含量、例えばNaCl;または10%超のNaCl;または20%超のNaCl;または30%超のNaCl;または40%超のNaCl;または50%超のNaCl;または60%超のNaCl;または70%超のNaCl;または80%超のNaCl;または90%超のNaCl;または1〜99%の間のNaCl;または1〜95%の間のNaCl;または1〜90%の間のNaCl;または1〜80%の間のNaCl;または1〜70%の間のNaCl;または1〜60%の間のNaCl;または1〜50%の間のNaCl;または1〜40%の間のNaCl;または1〜30%の間のNaCl;または1〜20%の間のNaCl;または1〜10%の間のNaCl;または10〜99%の間のNaCl;または10〜95%の間のNaCl;または10〜90%の間のNaCl;または10〜80%の間のNaCl;または10〜70%の間のNaCl;または10〜60%の間のNaCl;または10〜50%の間のNaCl;または10〜40%の間のNaCl;または10〜30%の間のNaCl;または10〜20%の間のNaCl;または20〜99%の間のNaCl;または20〜95%の間のNaCl;または20〜90%の間のNaCl;または20〜80%の間のNaCl;または20〜70%の間のNaCl;または20〜60%の間のNaCl;または20〜50%の間のNaCl;または20〜40%の間のNaCl;または20〜30%の間のNaCl;または30〜99%の間のNaCl;または30〜95%の間のNaCl;または30〜90%の間のNaCl;または30〜80%の間のNaCl;または30〜70%の間のNaCl;または30〜60%の間のNaCl;または30〜50%の間のNaCl;または30〜40%の間のNaCl;または40〜99%の間のNaCl;または40〜95%の間のNaCl;または40〜90%の間のNaCl;または40〜80%の間のNaCl;または40〜70%の間のNaCl;または40〜60%の間のNaCl;または40〜50%の間のNaCl;または50〜99%の間のNaCl;または50〜95%の間のNaCl;または50〜90%の間のNaCl;または50〜80%の間のNaCl;または50〜70%の間のNaCl;または50〜60%の間のNaCl;または60〜99%の間のNaCl;または60〜95%の間のNaCl;または60〜90%の間のNaCl;または60〜80%の間のNaCl;または60〜70%の間のNaCl;または70〜99%の間のNaCl;または70〜95%の間のNaCl;または70〜90%の間のNaCl;または70〜80%の間のNaCl;または80〜99%の間のNaCl;または80〜95%の間のNaCl;または80〜90%の間のNaCl;または90〜99%の間のNaCl;または90〜95%の間のNaClを含有する水を含む。いくつかの実施形態では、上記の割合を、電解質として塩化アンモニウム、塩化第二鉄、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムに適用する。本明細書で記される割合は重量%、重量/重量%または重量/体積%を含む。塩化ナトリウムを含む本明細書で説明する全ての電気化学システムは、これらに限定されないが、塩化アンモニウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウムまたはこれらの組合せなどの他の適切な電解質で置き換えることができることを理解すべきである。
【0434】
いくつかの実施形態では、塩水、淡水および/または水酸化ナトリウムなどのカソード電解質はアルカリ土類金属イオンも二価陽イオンも含まない。本明細書で用いるように、二価陽イオンは、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、ラジウム等のアルカリ土類金属イオンを含む。いくつかの実施形態では、塩水、淡水および/または水酸化ナトリウムなどのカソード電解質は1重量/重量%未満の二価陽イオンを含む。いくつかの実施形態では、海水、淡水、ブライン、半塩水および/または水酸化ナトリウムなどのカソード電解質は1重量/重量%未満の二価陽イオンを含む。いくつかの実施形態では、海水、淡水、ブライン、半塩水および/または水酸化ナトリウムなどのカソード電解質は、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウムおよびこれらの組合せを含む二価陽イオンを含む。いくつかの実施形態では、海水、淡水、ブライン、半塩水および/または水酸化ナトリウムなどのカソード電解質は、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウムおよびこれらの組合せを含む1重量/重量%未満の二価陽イオンを含む。
【0435】
いくつかの実施形態では、海水、淡水、ブライン、半塩水および/または水酸化ナトリウムなどのカソード電解質は、1重量/重量%未満;または5重量/重量%未満;または10重量/重量%未満;または15重量/重量%未満;または20重量/重量%未満;または25重量/重量%未満;または30重量/重量%未満;または40重量/重量%未満;または50重量/重量%未満;または60重量/重量%未満;または70重量/重量%未満;または80重量/重量%未満;または90重量/重量%未満;または95重量/重量%未満;または0.05〜1重量/重量%の間;または0.5〜1重量/重量%の間;または0.5〜5重量/重量%の間;または0.5〜10重量/重量%の間;または0.5〜20重量/重量%の間;または0.5〜30重量/重量%の間;または0.5〜40重量/重量%の間;または0.5〜50重量/重量%の間;または0.5〜60重量/重量%の間;または0.5〜70重量/重量%の間;または0.5〜80重量/重量%の間;または0.5〜90重量/重量%の間;または5〜8重量/重量%の間;または5〜10重量/重量%の間;または5〜20重量/重量%の間;または5〜30重量/重量%の間;または5〜40重量/重量%の間;または5〜50重量/重量%の間;または5〜60重量/重量%の間;または5〜70重量/重量%の間;または5〜80重量/重量%の間;または5〜90重量/重量%の間;または10〜20重量/重量%の間;または10〜30重量/重量%の間;または10〜40重量/重量%の間;または10〜50重量/重量%の間;または10〜60重量/重量%の間;または10〜70重量/重量%の間;または10〜80重量/重量%の間;または10〜90重量/重量%の間;または30〜40重量/重量%の間;または30〜50重量/重量%の間;または30〜60重量/重量%の間;または30〜70重量/重量%の間;または30〜80重量/重量%の間;または30〜90重量/重量%の間;または50〜60重量/重量%の間;または50〜70重量/重量%の間;または50〜80重量/重量%の間;または50〜90重量/重量%の間;または75〜80重量/重量%の間;または75〜90重量/重量%の間;または80〜90重量/重量%の間;または90〜95重量/重量%の間の二価陽イオン(二価陽イオンには、カルシウム、マグネシウムおよびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない)を含む。
【0436】
いくつかの実施形態では、カソード電解質は、これらに限定されないが、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムまたはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、カソード電解質は、これらに限定されないが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含む。いくつかの実施形態では、カソード電解質は、これらに限定されないが、水酸化ナトリウム、二価陽イオンまたはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、カソード電解質は、これらに限定されないが、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、二価陽イオンまたはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、カソード電解質は、これらに限定されないが、水酸化ナトリウム、重炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムマグネシウムまたはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、カソード電解質は、これらに限定されないが、塩水、水酸化ナトリウム、ビカーボネートブライン溶液またはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、カソード電解質は、これらに限定されないが、塩水および水酸化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、カソード電解質は、これらに限定されないが、淡水および水酸化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、カソード電解質は、アルカリ度も二価陽イオンも有していない淡水を含む。いくつかの実施形態では、カソード電解質は、これらに限定されないが、淡水、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、二価陽イオンまたはこれらの組合せを含む。
【0437】
いくつかの実施形態では、アノード電解質は、これらに限定されないが、淡水および金属イオンを含む。いくつかの実施形態では、アノード電解質は、これらに限定されないが、塩水および金属イオンを含む。いくつかの実施形態では、アノード電解質は金属イオン溶液を含む。
【0438】
いくつかの実施形態では、セルからの枯渇塩水(depleted salt water)をセルへ戻して循環させることができる。いくつかの実施形態では、カソード電解質は、1〜90%;1〜50%;または1〜40%;または1〜30%;または1〜15%;または1〜20%;または1〜10%;または5〜90%;または5〜50%;または5〜40%;または5〜30%;または5〜20%;または5〜10%;または10〜90%;または10〜50%;または10〜40%;または10〜30%;または10〜20%;または15〜20%;または15〜30%;または20〜30%の水酸化ナトリウム溶液を含む。いくつかの実施形態では、アノード電解質は、0〜5M;または0〜4.5M;または0〜4M;または0〜3.5M;または0〜3M;または0〜2.5M;または0〜2M;または0〜1.5M;または0〜1M;または1〜5M;または1〜4.5M;または1〜4M;または1〜3.5M;または1〜3M;または1〜2.5M;または1〜2M;または1〜1.5M;または2〜5M;または2〜4.5M;または2〜4M;または2〜3.5M;または2〜3M;または2〜2.5M;または3〜5M;または3〜4.5M;または3〜4M;または3〜3.5M;または4〜5M;または4.5〜5Mの金属イオン溶液を含む。いくつかの実施形態では、アノードは酸素ガスを生成しない。いくつかの実施形態では、アノードは塩素ガスを生成しない。
【0439】
いくつかの実施形態では、カソード電解質とアノード電解質は、イオン交換膜で部分的にまたは完全に分離されている。いくつかの実施形態では、イオン交換膜は陰イオン交換膜または陽イオン交換膜である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示するような電気化学セルにおける陽イオン交換膜は慣用的なものであり、例えば日本(東京)の旭化成;または米国のMembrane International(Glen Rock、NJ)もしくはDuPontから入手することができる。CEMの例には、これらに限定されないが、N2030WX(Dupont)、F8020/F8080(Flemion)およびF6801(Aciplex)が含まれる。本発明の方法およびシステムにおいて望ましいCEMは、最少の抵抗損失、90%超の選択率および濃厚なカセイ(caustic)中での高い安定性を有する。本発明の方法およびシステムにおいて、AEMを濃厚な金属塩アノード液および飽和ブラインストリームに曝す。AEMは、塩化物イオンなどの塩イオンのアノード液への通過は許容するが、アノード液からの金属イオン種を拒絶することが望ましい。いくつかの実施形態では、金属塩は、これらに限定されないが、MCl
+、MCl
2−、MCl
20、M
2+等を含む種々のイオン種(陽イオン、陰イオンおよび/または中性)を形成することができるが、そうした錯体はAEMを通過しないまたは膜を汚さないことが望ましい。実施例において提供されるものは、金属クロスオーバーを防止することが分かっている本発明の方法およびシステムについてテストされた膜の一部である。
【0440】
したがって、アノード室のアノード電解質において金属イオンとアノードを接触させるステップと;アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へ変換させるステップと;カソード室においてカソード電解質とカソードを接触させるステップと;カソードにおいてアルカリ、水または水素ガスを生成させるステップと;陰イオン交換膜を用いることによってアノード電解質からカソード電解質への金属イオンの移行を防止するステップを含む方法であって、その陰イオン交換膜が3Ωcm
2未満、2Ωcm
2未満または1Ωcm
2未満のオーム抵抗を有する方法を本明細書で提供する。いくつかの実施形態では、陰イオン交換膜は1〜3Ωcm
2のオーム抵抗を有する。いくつかの実施形態では、アノード室のアノード電解質において金属イオンとアノードを接触させるステップと;アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へ変換させるステップと;カソード室においてカソード電解質とカソードを接触させるステップと;カソードにおいてアルカリ、水または水素ガスを生成させるステップと;陰イオン交換膜を用いることによってアノード電解質からカソード電解質への金属イオンの移行を防止するステップを含む方法であって、その陰イオン交換膜がアノード電解質からの全ての金属イオンの80%超、90%超もしくは99%超または約99.9%を拒絶する方法を提供する。
【0441】
アノード室のアノード電解質において金属イオンと接触しているアノードであって、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へ変換するように構成されているアノードと;カソード室においてカソード電解質と接触しているカソードであって、カソード室においてアルカリ、水または水素ガスを生成するように構成されているカソードと;3Ωcm
2未満、2Ωcm
2未満または1Ωcm
2未満のオーム抵抗を有する陰イオン交換膜とを含むシステムも提供する。いくつかの実施形態では、陰イオン交換膜は1〜3Ωcm
2の間のオーム抵抗を有する。いくつかの実施形態では、アノード室のアノード電解質において金属イオンと接触しているアノードであって、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へ変換するように構成されているアノードを接触させるステップと;カソード室においてカソード電解質と接触しているカソードであって、カソード室においてアルカリ、水または水素ガスを生成するように構成されているカソードと;アノード電解質からの全ての金属イオンの80%超、90%超もしくは99%超または約99.9%を拒絶する陰イオン交換膜とを含む、システムを提供する。
【0442】
アノード室のアノード電解質において金属イオンとアノードを接触させるステップと;アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へ変換させるステップと;カソード室においてカソード電解質とカソードを接触させるステップと;カソードにおいてアルカリを生成させるステップと;アノード電解質を陰イオン交換膜でブライン区画から分離するステップと;陽イオン交換膜によってカソード電解質をブライン区画から分離するステップと;3Ωcm
2未満、2Ωcm
2未満または1Ωcm
2未満のオーム抵抗を有する陰イオン交換膜を用いることによってアノード電解質からブライン区画への金属イオンの移行を防止するステップとを含む方法も本明細書で提供する。いくつかの実施形態では、陰イオン交換膜は1〜3Ωcm
2の間のオーム抵抗を有する。いくつかの実施形態では、アノード室のアノード電解質において金属イオンとアノードを接触させるステップと;アノードにおいて金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へ変換させるステップと;カソード室においてカソード電解質とカソードを接触させるステップと;カソードにおいてアルカリを生成させるステップと;アノード電解質を陰イオン交換膜でブライン区画から分離するステップと;陽イオン交換膜によってカソード電解質をブライン区画から分離するステップと;アノード電解質からの全ての金属イオンの80%超、90%超もしくは99%超または約99.9%を拒絶する陰イオン交換膜を用いることによってアノード電解質からブライン区画への金属イオンの移行を防止するステップとを含む、方法を提供する。
【0443】
アノード室のアノード電解質において金属イオンと接触しているアノードであって、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へ変換するように構成されているアノードと;カソード室においてカソード電解質と接触しているカソードであって、カソード室においてアルカリを生成するように構成されているカソードと;アノード電解質をブライン区画から分離する陰イオン交換膜と;カソード電解質をブライン区画から分離する陽イオン交換膜とを含むシステムであって、その陰イオン交換膜が3Ωcm
2未満、2Ωcm
2未満または1Ωcm
2未満のオーム抵抗を有するシステムも提供する。いくつかの実施形態では、陰イオン交換膜は1〜3Ωcm
2の間のオーム抵抗を有する。いくつかの実施形態では、アノード室のアノード電解質において金属イオンと接触しているアノードであって、アノード室において金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態へ変換するように構成されているアノードと;カソード室においてカソード電解質と接触しているカソードであって、カソード室においてアルカリを生成するように構成されているカソードと;アノード電解質をブライン区画から分離する陰イオン交換膜と;カソード電解質をブライン区画から分離する陽イオン交換膜とを含むシステムであって、その陰イオン交換膜がアノード電解質からの全ての金属イオンの80%超、90%超もしくは99%超または約99.9%を拒絶するシステムを提供する。
【0444】
AEMを含む上記の方法およびシステムは、より高い酸化状態の金属イオンを含むアノード電解質を、本明細書で説明するような水素ガス、不飽和炭化水素または飽和炭化水素で処理するステップをさらに含む。
【0445】
陽イオン交換膜の例には、これに限定されないが、陰イオン基、例えばスルホン酸および/またはカルボン酸基を含むペルフルオロ化ポリマーからなる陽イオン膜が含まれる。しかし、いくつかの実施形態では、電解質間での特定の陽イオン種または陰イオン種の移行を制限するかまたは許容する必要性に応じて、例えば、アノード電解質からカソード電解質中へのナトリウムイオンの移行は許容するがアノード電解質からカソード電解質中への他のイオンの移行を制限する陽イオン交換膜が使用され得るように、より制限的であり、したがって1つの種の陽イオンの移行は許容するが他の種の陽イオンの移行を制限する陽イオン交換膜を使用することができることを理解されよう。同様に、いくつかの実施形態では、電解質間での特定の陰イオン種の移行を制限するかまたは許容する必要性に応じて、例えば、カソード電解質からアノード電解質中への塩化物イオンの移行は許容するがカソード電解質からアノード電解質中への水酸化物イオンの移行を制限する陰イオン交換膜が使用され得るように、より制限的であり、したがって陰イオンの1つの種の移行は許容するが他の種の陰イオンの移行を制限する陰イオン交換膜を使用することができる。そうした制限的な陽イオンおよび/または陰イオン交換膜は市販されており、当業者はそれを選択することができる。
【0446】
いくつかの実施形態では、アノードとカソードの間に位置する1つまたは複数の陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を含む、システムを提供する。いくつかの実施形態では、これらの膜は、必要に応じて酸性および/または塩基性の電解溶液中で機能できるように選択されるべきである。膜の他の望ましい特徴は、高いイオン選択性、低いイオン抵抗性、大きい破裂強度、および0℃〜100℃もしくはそれ以上の温度範囲の酸性電解溶液中または使用できる同様の温度範囲のアルカリ性溶液中での高い安定性を含む。いくつかの実施形態では、イオン交換膜は、アノード液からカソード液への金属イオンの輸送を防止することが望ましい。いくつかの実施形態では、0℃〜90℃、0℃〜80℃、0℃〜70℃、0℃〜60℃、0℃〜50℃、0℃〜40℃、0℃〜30℃、0℃〜20℃もしくは0℃〜10℃またはそれ以上の範囲で安定な膜を使用することができる。いくつかの実施形態では、0℃〜90℃、0℃〜80℃、0℃〜70℃、0℃〜60℃、0℃〜50℃または0℃〜40℃の範囲で安定であるが、それより高い温度では不安定な膜を使用することができる。他の実施形態については、1つの種類の陽イオンの移行は許容するが他の移行は許容しないか;または1つの種類の陰イオンの移行は許容するが他の移行は許容しないイオン特異的なイオン交換膜を利用して電解質における1つもしくは複数の所望生成物を達成するのが有用であり得る。いくつかの実施形態では、その膜は、0℃〜90℃、0℃〜80℃、0℃〜70℃、0℃〜60℃、0℃〜50℃、0℃〜40℃、0℃〜30℃、0℃〜20℃または0℃〜10℃の範囲ならびにより高いおよび/もしくはより低い範囲の温度で、システムにおいて望ましい長さの時間、例えば数日間、数週間もしくは数カ月間または数年間安定でありかつ機能的であってよい。いくつかの実施形態では、例えば、膜は、100℃、90℃、80℃、70℃、60℃、50℃、40℃、30℃、20℃、10℃、5℃の電解質温度およびより高いもしくはより低い電解質温度で、少なくとも1日間、少なくとも5日間、10日間、15日間、20日間、100日間、1000日間、5〜10年間またはそれ以上安定であり機能的であってよい。
【0447】
膜のオーム抵抗は、アノードとカソードの間の電圧低下に影響を及ぼすことができる。例えば、膜のオーム抵抗が増大するにつれて、アノードとカソードの間の電圧は増大し得、逆もまた然りである。使用できる膜には、これらに限定されないが、比較的低いオーム抵抗および比較的高いイオン移動度を有する膜;温度とともに増大する、したがってオーム抵抗を低下させる比較的高い水和特性を有する膜が含まれる。当業界で公知のより低いオーム抵抗を有する膜を選択することによって、特定の温度でのアノードとカソードの間の電圧低下を減少させることができる。
【0448】
膜を通して散乱されるものは、酸性基を含むイオンチャンネルであってよい。これらのイオンチャンネルはマトリックスの内部表面から外部表面へ延びていてよく、酸性基は、水和水として可逆反応で水を容易に結合させることができる。水和水としてのこの水の結合は、一次反応速度論に従うことができ、その結果反応速度は温度に比例する。したがって、膜は比較的低いオームおよびイオン抵抗性を提供し、同時にシステムにおいて、動作温度範囲について、改善された強度と抵抗性を提供するように選択することができる。
【0449】
いくつかの実施形態では、カソード室内のカソード電解質と接触した場合、炭素供給源からの炭素は水酸化物イオンと反応し、カソード電解質のpHに応じて水と炭酸イオンを生成する。カソード電解質に炭素供給源からの炭素を加えるとカソード電解質のpHを低下させることができる。したがって、カソード電解質に望ましいアルカリ性の度合いに応じて、カソード電解質のpHを調節することができ、いくつかの実施形態では、それは6〜12の間;7〜14またはそれより大きい値の間;または7〜13の間;または7〜12の間;または7〜11の間;または7〜10の間;または7〜9の間;または7〜8の間;または8〜14またはそれより大きい値の間;または8〜13の間;または8〜12の間;または8〜11の間;または8〜10の間;または8〜9の間;または9〜14またはそれより大きい値の間;または9〜13の間;または9〜12の間;または9〜11の間;または9〜10の間;または10〜14またはそれより大きい値の間;または10〜13の間;または10〜12の間;または10〜11の間;または11〜14またはそれより大きい値の間;または11〜13の間;または11〜12の間;または12〜14またはそれより大きい値の間;または12〜13の間;または13〜14またはそれより大きい値の間に維持される。いくつかの実施形態では、カソード電解質のpHを、7〜14またはそれより大きい値の間の任意の値、12未満のpH、pH7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0および/またはそれ以上に調節することができる。
【0450】
同様に、システムのいくつかの実施形態では、アノード電解質のpHを調節し、0〜7の間、0〜6の間、0〜5の間、0〜4の間、0〜3の間、0〜2の間または0〜1の間に維持する。アノードとカソードの間の電圧は、アノード電解質とカソード電解質の間のpH差(当業界で周知のネルンストの式によって決定することができる)を含むいくつかの因子に依存する可能性があるので、いくつかの実施形態では、アノード電解質のpHを、アノードとカソードの間の所望の動作電圧に応じて、0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5および7を含む0〜7の間の値に調節することができる。したがって、例えばクロル−アルカリプロセスの場合のような、使用エネルギーを削減し、かつ/またはアノードとカソードの間の電圧を低下させることが望ましい同等なシステムでは、炭素供給源からの炭素を本明細書で開示するようなカソード電解質に加えて、アノード電解質とカソード電解質の間の所望pH差を達成することができる。
【0451】
システムは、アノード電解質のpH、カソード電解質のpH、カソード電解質中の水酸化物の濃度、アノード電解質の抜き出しおよび補充、カソード電解質の抜き出しおよび補充および/またはカソード電解質に添加される炭素供給源からの炭素の量を調節することによって、アノード電解質とカソード電解質の間に任意の所望pH差を生じさせるように構成することができる。アノード電解質とカソード電解質の間のpH差を調節することによって、アノードとカソードの間の電圧を調節することができる。いくつかの実施形態では、このシステムは、アノード電解質とカソード電解質の間に、少なくとも4pH単位;少なくとも5pH単位;少なくとも6pH単位;少なくとも7pH単位;少なくとも8pH単位;少なくとも9pH単位;少なくとも10pH単位;少なくとも11pH単位;少なくとも12pH単位;少なくとも13pH単位;少なくとも14pH単位;または4〜12pH単位の間;または4〜11pH単位の間;または4〜10pH単位の間;または4〜9pH単位の間;または4〜8pH単位の間;または4〜7pH単位の間;または4〜6pH単位の間;または4〜5pH単位の間;または3〜12pH単位の間;または3〜11pH単位の間;または3〜10pH単位の間;または3〜9pH単位の間;または3〜8pH単位の間;または3〜7pH単位の間;または3〜6pH単位の間;または3〜5pH単位の間;または3〜4pH単位の間;または5〜12pH単位の間;または5〜11pH単位の間;または5〜10pH単位の間;または5〜9pH単位の間;または5〜8pH単位の間;または5〜7pH単位の間;または5〜6pH単位の間;または6〜12pH単位の間;または6〜11pH単位の間;または6〜10pH単位の間;または6〜9pH単位の間;または6〜8pH単位の間;または6〜7pH単位の間;または7〜12pH単位の間;または7〜11pH単位の間;または7〜10pH単位の間;または7〜9pH単位の間;または7〜8pH単位の間;または8〜12pH単位の間;または8〜11pH単位の間;または8〜10pH単位の間;または8〜9pH単位の間;または9〜12pH単位の間;または9〜11pH単位の間;または9〜10pH単位の間;または10〜12pH単位の間;または10〜11pH単位の間;または11〜12pH単位の間のpH差を生じさせるように構成され得る。いくつかの実施形態では、システムは、アノード電解質とカソード電解質の間に、少なくとも4pH単位のpH差を発生させるように構成される。
【0452】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する方法およびシステムにおいて、電気化学セル中のアノード電解質およびカソード電解質は室温、あるいは例えば40℃超、50℃超、60℃超、70℃超もしくは80℃超または30〜70℃の間などの高温で動作させる。
【0453】
ビカーボネートおよび/またはカーボネート生成物の製造
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する方法およびシステムは、カソード電解質が炭素供給源からの炭素と接触した後に得られたカーボネート/ビカーボネート溶液を処理するように構成される。いくつかの実施形態では、カーボネートおよび/またはビカーボネートを含む溶液を、これらに限定されないが、カルシウムおよび/またはマグネシウムなどの二価陽イオンで処理して、カルシウムおよび/またはマグネシウムのカーボネートおよび/またはビカーボネートを生成させる。そうしたプロセスについての例示的実施形態を
図13に示す。
【0454】
図13に例示するように、プロセス1300は、カソード電解質を炭素供給源からの炭素と接触させた後に得られたカーボネート/ビカーボネート溶液を処理するための方法およびシステムを示す。いくつかの実施形態では、溶液を沈降分離装置1301において沈殿に供する。いくつかの実施形態では、この溶液は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび/または重炭酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、カソード電解質中のビカーボネートおよび/または炭酸イオンを、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウムおよびこれらの組合せを含むアルカリ土類金属イオンまたは二価陽イオンで処理するように構成される。本明細書で使用する「二価陽イオン」は、アルカリ土類金属イオンなどの二価陽イオンを含む任意の固体もしくは溶液、またはアルカリ土類金属を含む任意の水性媒体を包含する。アルカリ土類金属には、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム等またはこれらの組合せが含まれる。二価陽イオン(例えば、Ca
2+およびMg
2+などのアルカリ土類金属陽イオン)は、工場廃液、海水、ブライン、硬水、鉱物性物質および他の適切な多くの供給源に見ることができる。アルカリ性土類金属含有水は、水を使用する方法に応じて淡水または塩水を含む。いくつかの実施形態では、このプロセスで使用される水は、1つまたは複数のアルカリ土類金属、例えばマグネシウム、カルシウム等を含む。いくつかの実施形態では、アルカリ土類金属イオンは、アルカリ土類金属イオンを含む溶液の1重量%〜99重量%;または1重量%〜95重量%;または1重量%〜90重量%;または1重量%〜80重量%;または1重量%〜70重量%;または1重量%〜60重量%;または1重量%〜50重量%;または1重量%〜40重量%;または1重量%〜30重量%;または1重量%〜20重量%;または1重量%〜10重量%;または20重量%〜95重量%;または20重量%〜80重量%;または20重量%〜50重量%;または50重量%〜95重量%;または50重量%〜80重量%;または50重量%〜75重量%;または75重量%〜90重量%;または75重量%〜80重量%;または80重量%〜90重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、アルカリ土類金属イオンは海水などの塩水中に存在する。いくつかの実施形態では、二価陽イオンの供給源は硬水または天然由来のハードブラインである。いくつかの実施形態では、カルシウムが豊富な水を、かんらん石または蛇紋石などのマグネシウムケイ酸塩鉱物性物質と混合することができる。
【0455】
いくつかの実施形態では、石こう(例えば、ソルベー法による)は、これに限定されないが、カルシウムイオンなどの二価陽イオンの供給源を提供する。カソード室からのカーボネート/ビカーボネート溶液および石こうからのカルシウムを用いて炭酸カルシウム/重炭酸カルシウムを沈降させた後、硫酸ナトリウムを含有する上澄み液を、本明細書で説明する電気化学システムに循環させることができる。この硫酸ナトリウム溶液を、硫酸銅などの金属硫酸塩と一緒に使用して、アノード室でそうしたCu(I)イオンを酸化してCu(II)イオンにし、水素ガス(hydrogen gases)のスルホン化または不飽和もしくは飽和炭化水素のスルホン化にさらに使用されるようにすることができる。そうした実施形態では、電気化学システムは沈降プロセスと完全に一体化される。カルシウムの供給源としての石こうのそうした使用は、2011年8月3日出願の米国仮出願番号第61/514,879号(これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されている。
【0456】
場所によっては、種々の工業プロセスからの工業排出ストリームは、陽イオンの好都合な供給源(また、いくつかの場合、プロセスにおいて有用な他の材料、例えば金属水酸化物)を提供する。そうした排出ストリームには、これらに限定されないが、採鉱廃棄物;化石燃料焼却灰(例えば、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ボイラースラグ);スラグ(例えば、鉄スラグ、燐スラグ);セメントキルン廃棄物(例えば、セメントキルンダスト);石油精製/石油化学精製廃棄物(例えば、油田およびメタンシームブライン);石炭シーム廃棄物(例えば、ガス生産ブラインおよび石炭シームブライン);紙加工廃棄物;水軟質化廃ブライン(例えば、イオン交換廃液);シリコン加工廃棄物;農業廃棄物;金属仕上げ廃棄物;高pH繊維工業廃棄物および苛性スラッジが含まれる。いくつかの実施形態では、陽イオンの水性溶液は、10〜50,000ppm;または10〜10,000ppm;または10〜5,000ppm;または10〜1,000ppm;または10〜100ppm;または50〜50,000ppm;または50〜10,000ppm;または50〜1,000ppm;または50〜100ppm;または100〜50,000ppm;または100〜10,000ppm;または100〜1,000ppm;または100〜500ppm;または1,000〜50,000ppm;または1,000〜10,000ppm;または5,000〜50,000ppm;または5,000〜10,000ppm;または10,000〜50,000ppmの範囲の量のカルシウムおよび/またはマグネシウムを含む。
【0457】
淡水は陽イオン(例えば、Ca
2+およびMg
2+などのアルカリ土類金属の陽イオン)の好都合な供給源である。鉱物性物質が相対的に無い供給源から鉱物性物質が相対的に豊富な供給源までの範囲の淡水供給源を含む、適切な任意の数の淡水供給源を使用することができる。鉱物性物質の豊富な淡水供給源は、多くの硬水供給源、湖または内海のいずれかを含む天然由来のものであってよい。アルカリ性の湖または内海(例えば、トルコのヴァン湖)などのいくつかの鉱物性物質の豊富な淡水供給源もpH調整剤の供給源を提供する。鉱物性物質の豊富な淡水供給源は人為的なものであってよい。例えば、鉱物性物質の少ない(軟質の)水を、アルカリ土類金属陽イオン(例えば、Ca
2+、Mg
2+等)などの陽イオンの供給源と接触させて、本明細書で説明する方法およびシステムに適した鉱物性物質の豊富な水を生産することができる。陽イオンまたはその前駆体(例えば、塩、鉱物性物質)を、好都合な任意のプロトコルを用いて(例えば、固体、懸濁液または溶液の添加)、淡水(または本明細書で説明する他の任意のタイプの水)に加えることができる。いくつかの実施形態では、Ca
2+およびMg
2+から選択される二価陽イオンを淡水に加える。いくつかの実施形態では、Ca
2+を含有する淡水を、ケイ酸マグネシウム(例えば、かんらん石または蛇紋石)またはその産物もしくは加工形態物と混合して、カルシウムおよびマグネシウム陽イオンを含む溶液を得る。
【0458】
炭素供給源からの炭素をカソード電解質および二価陽イオンと接触させた後に得られる沈殿物には、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムマグネシウムまたはこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、沈殿物を、これらに限定されないが、混合、撹拌、温度、pH、沈降、沈殿物の滞留時間、沈殿物の脱水、水による沈殿物の洗浄、イオン比、添加剤濃度、乾燥、ミリング、破砕、貯蔵、熟成および硬化を含むステップの1つまたは複数に供して、本発明のカーボネート組成物を作製することができる。いくつかの実施形態では、沈降条件は、カーボネート生成物が、これらに限定されないがバテライト、アラゴナイト、非晶質炭酸カルシウムまたはこれらの組合せなどの準安定な形態となるような条件である。
【0459】
沈降分離装置1301はタンクまたは一連のタンク群であってよい。接触プロトコルには、これらに限定されないが、直接接触プロトコル、例えば、陽イオン、例えばアルカリ土類金属イオン含有水のボリュームを、水酸化ナトリウム含有カソード電解質のボリュームを通して流すこと;同時接触手段、例えば一方向に流れる液相ストリーム間での接触;および向流手段、例えば対向して流れる液相ストリーム間での接触などが含まれる。したがって、接触は、好都合であり得る場合に、注入器、バブラー、流体ベンチュリ反応器、スパージャー、ガスフィルター、スプレー、トレーまたは充填塔反応器などの使用を通して達成することができる。いくつかの実施形態では、接触はスプレーによる。いくつかの実施形態では、接触は充填塔を通すことによる接触である。いくつかの実施形態では、炭素供給源からの炭素を、陽イオンの供給源および水酸化物を含有するカソード電解質に加える。いくつかの実施形態では、陽イオンの供給源およびアルカリを含有するカソード電解質を炭素供給源からの炭素に加える。いくつかの実施形態では、陽イオンの供給源と炭素供給源からの炭素の両方を、沈降のための沈降分離装置において、アルカリを含有するカソード電解質に同時に加える。
【0460】
いくつかの実施形態では、炭素供給源からの炭素がカソード室内のカソード電解質に加えられている場合、水酸化物、ビカーボネートおよび/またはカーボネートを含む抜き出したカソード電解質を、二価陽イオンとさらに反応させるために沈降分離装置に供給する。いくつかの実施形態では、炭素供給源からの炭素および二価陽イオンがカソード室内のカソード電解質に加えられている場合、水酸化ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムマグネシウムまたはこれらの組合せを含む抜き出したカソード電解質を、さらに処理するために沈降分離装置に供給する。
【0461】
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムマグネシウムまたはこれらの組合せの溶液を含む沈降分離装置1301を沈降条件に供す。沈降ステップで、非晶質であっても結晶質であってもよいカーボネート化合物は、沈殿する。これらのカーボネート化合物は、炭酸、ビカーボネート、カーボネートまたはその混合物を含む反応生成物を形成することができる。カーボネート沈殿物は自己セメント化組成物であってよく、母液中にそのまま貯蔵することができるか、または、さらに処理してセメント製品を作製することができる。あるいは、沈殿物をさらなる処理に供して、水硬性セメントまたは補助的セメント系材料(SCM)組成物を得ることができる。自己セメント化組成物、水硬性セメントおよびSCMは、2010年8月16日出願の米国特許出願番号第12/857,248号(本開示において、これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されている。
【0462】
興味のある1つもしくは複数の条件または1つもしくは複数の沈降条件には、水の物理的環境を変えて所望の沈殿生成物を生成させる条件が含まれる。そうした1つもしくは複数の条件または沈降条件には、これらに限定されないが、温度、pH、沈殿、沈殿物の脱水または分離、乾燥、ミリングおよび貯蔵の1つもしくは複数が含まれる。例えば、水の温度は、所望組成物の沈降が起こるのに適した範囲内であってよい。例えば、水の温度を、所望のカーボネート化合物の沈降が起こるのに適した温度(amount)に上げることができる。そうした実施形態では、水の温度は5〜70℃、例えば、25〜45℃を含む20〜50℃であってよい。したがって、所与の沈降条件セットは0〜100℃の範囲の温度であってよいが、特定の実施形態では、その温度を上昇させて所望沈殿物を生成させることができる。特定の実施形態では、温度を、低いかまたはゼロの二酸化炭素排出供給源、例えば太陽光エネルギー供給源、風力エネルギー供給源、水力発電エネルギー供給源等によって発生されるエネルギーを用いて上昇させる。
【0463】
沈殿物が溶液から除去されるまでの沈降分離装置における沈殿物の滞留時間は変わり得る。いくつかの実施形態では、溶液中の沈殿物の滞留時間は5秒間超、5秒間〜1時間の間、5秒間〜1分間の間、5秒間〜20秒間の間、5秒間〜30秒間の間または5秒間〜40秒間の間である。理論によって制約されるわけではないが、沈殿物の滞留時間は粒子径に影響を及ぼす可能性があると考えられる。例えば、より短い滞留時間ではより小さいサイズの粒子またはより分散した粒子が得られる可能性があるのに対し、より長い滞留時間では凝集した粒子かまたは大きいサイズの粒子が得られる可能性がある。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスにおける滞留時間は、プロセスの後段のステップのために分離されていても混合されたままでもよい、単一または複数バッチで小さいサイズの粒子も大きいサイズの粒子もできるように用いることができる。
【0464】
沈殿物の性質は、適切な主イオン比の選択によっても影響される可能性がある。主イオン比は多形体形成に影響を及ぼす可能性があり、したがって、カーボネート生成物は、これらに限定されないが、バテライト、アラゴナイト、非晶質炭酸カルシウムまたはこれらの組合せなどの準安定な形態のものである。いくつかの実施形態では、カーボネート生成物は方解石も含むことができる。そうした多形体沈殿物は、2010年8月16日出願の米国特許出願番号第12/857,248号(本開示において、これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されている。例えば、マグネシウムは、沈殿物中のバテライトおよび/または非晶質炭酸カルシウムを安定化させることができる。沈降速度も化合物の多形相形成に影響を及ぼす可能性があり、所望の沈殿生成物を生成させるのに十分な方法で制御することができる。溶液に所望多形相で種晶を加えることによって最速の沈降を達成することができる。種晶を加えない場合は、海水のpHを急速に上昇させることによって急速な沈降を達成することができる。pHが高くなればなるほど、沈降はより急速になる。
【0465】
いくつかの実施形態では、水から所望沈殿物を生成させるための一連の条件は、これらに限定されないが、水の温度およびpH、場合によっては、水中の添加剤およびイオン種の濃度を含む。沈降条件は、混合速度、超音波などの撹拌形態、種晶、触媒、膜または基材の存在などの因子も含むことができる。いくつかの実施形態では、沈降条件は、過飽和条件、温度、pHおよび/または濃度勾配あるいはこれらのパラメーターのいずれかの循環または変更を含む。本発明によるカーボネート化合物の沈殿物を調製するために用いられるプロトコルは回分式プロトコルであっても連続式プロトコルであってもよい。沈降条件は、連続フローシステムで所与の沈殿物を生成させるために、回分式システムと比較して異なっていてもよいことを理解されよう。
【0466】
水からのカーボネート沈殿物の生成に続いて、
図13のステップ1302に例示するように、得られた沈殿カーボネート組成物を母液から分離するかまたは脱水して沈殿生成物を得ることができる。あるいは、沈殿物を、母液または母上澄み液(mother supernate)中にそのまま置き、接合組成物(cementing composition)として使用する。沈殿物の分離は、例えば沈殿したものからバルク過剰水が流れ出る場合、重力のみによるかもしくは真空にすることによるかのいずれか、機械的圧搾、または沈殿物を母液からろ過してろ液を得る等による機械的アプローチを含む好都合な任意のアプローチを用いて達成され得る。バルク水の分離によって湿潤した脱水沈殿物が生成され。脱水ステーションは、スラリーを脱水するために互いに連結された(例えば、並列もしくは直列またはこれらの組合せ)任意の数の脱水ステーションであってよい。
【0467】
上記プロトコルは沈殿物と母液のスラリーの生成をもたらす。母液および/またはスラリーの中のこの沈殿物は自己セメント化組成物を与えることができる。いくつかの実施形態では、脱水沈殿物またはスラリーの一部または全部をさらに処理して水硬性セメントまたはSCM組成物を作製する。
【0468】
望むなら、沈殿物および母液から構成される組成物を、沈降に続いて、かつさらなる処理に先行してある期間貯蔵することができる。例えば組成物を、1〜40℃、例えば20〜25℃の温度範囲で1日〜1000日またはそれより長い期間、例えば、1日〜10日またはそれより長い期間の範囲の期間貯蔵することができる。
【0469】
次いでスラリー成分を分離する。実施形態は母液の処理を含むことができ、ここで、母液は生成物と同じ組成で存在してもよく、または存在しなくてもよい。得られる反応母液は、好都合な任意のプロトコルを用いて処分することができる。特定の実施形態では、これを廃棄のために貯水池(tailings pond)1307に送ることができる。特定の実施形態では、これを天然に存在する水域、例えば大洋、海、湖または河に廃棄することができる。特定の実施形態では、母液は、本発明の方法のための供給水の供給源、例えば大洋または海に戻される。あるいは、母液をさらに処理することができる。例えば2008年6月27日出願の米国特許出願番号第12/163,205号(本開示において、これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)にさらに記載されているような脱塩プロトコルに供することができる。
【0470】
次いで得られた脱水沈殿物を、
図13のステップ1304に例示するように、乾燥して本発明のカーボネート組成物を生成させる。乾燥は沈殿物を空気乾燥することによって達成され得る。沈殿物を空気乾燥する場合、空気乾燥は要望に応じて−70〜120℃の範囲の温度であってよい。特定の実施形態では、乾燥を、凍結して乾燥すること(すなわち、凍結乾燥)によって達成し、ここでは、沈殿物を凍結させ、周囲の圧力を低下させ、十分に加熱して材料中の凍結水を凍結沈殿物相からガスへと直接昇華させる。さらに他の実施形態では、沈殿物をスプレー乾燥して沈殿物を乾燥させ、ここでは、沈殿物を含む液体を、高温ガス(発電所からのガス状排出ストリームなど)によって供給して乾燥させる、例えば供給液を、アトマイザーを通して主乾燥室中にポンプ輸送し、高温ガスをアトマイザー方向へ並流または向流として通過させる。システムの具体的な乾燥プロトコルに応じて、乾燥ステーションはろ過エレメント、凍結乾燥構造物、スプレー乾燥構造物等を含むことができる。乾燥ステップでは空気や微粉を放出することができる(1306)。
【0471】
いくつかの実施形態では、スプレー乾燥のステップは、異なるサイズの沈殿物粒子の分離を含むことができる。望むなら、
図13のステップ1303で例示したように、1302からの脱水沈殿生成物を乾燥前に洗浄することができる。沈殿物を淡水で洗浄して、例えば塩(NaClなど)を脱水沈殿物から除去することができる。使用済み洗浄水は、例えば貯水池等に廃棄することによって、適宜廃棄することができる。洗浄に使用した水は鉄、ニッケル等の金属を含有している可能性がある。
【0472】
いくつかの実施形態では、乾燥沈殿物を純化(refined)、ミリング、熟成、そして/または硬化して(精製ステップ1305に示すように)、例えば粒子径、表面積、ゼータ電位等の所望物理的特性を提供するか、または1つもしくは複数の成分を混合物、凝集物、補助的セメント系材料等の沈殿物に加えてカーボネート組成物を生成させる。純化処理は異なる様々なプロトコルを含むことができる。特定の実施形態では、所望の物理的性質、例えば粒子径等を有する生成物を得るために、生成物を、機械的純化、例えば粉砕に供する。乾燥された沈殿物を、ミリングまたは粉砕して所望粒子径を得ることができる。
【0473】
いくつかの実施形態では、本発明の方法およびシステムによって生成した炭酸カルシウム沈殿物は、これらに限定されないが、バテライト、アラゴナイト、非晶質炭酸カルシウムまたはこれらの組合せを含む準安定な形態のものである。いくつかの実施形態では、本発明の方法およびシステムによって生成される炭酸カルシウム沈殿物は、これらに限定されないが、バテライト、非晶質炭酸カルシウムまたはこれらの組合せを含む準安定な形態のものである。炭酸カルシウムの組成物を含むバテライトを、水と接触させた後、高い圧縮強度を有するアラゴナイト、方解石またはこれらの組合せなどの安定な多形形態へ変換させる。
【0474】
得られたカーボネート組成物またはセメント質(cementitous)組成物は、このプロセスで用いられる炭素供給源からの炭素に由来する成分(element)またはマーカーを有する。凝結(setting)および硬化後のカーボネート組成物は少なくとも14MPa;または少なくとも16MPa;または少なくとも18MPa;または少なくとも20MPa;または少なくとも25MPa;または少なくとも30MPa;または少なくとも35MPa;または少なくとも40MPa;または少なくとも45MPa;または少なくとも50MPa;または少なくとも55MPa;または少なくとも60MPa;または少なくとも65MPa;または少なくとも70MPa;または少なくとも75MPa;または少なくとも80MPa;または少なくとも85MPa;または少なくとも90MPa;または少なくとも95MPa;または少なくとも100MPa;または14〜100MPa;または14〜80MPa;または14〜75MPa;または14〜70MPa;または14〜65MPa;または14〜60MPa;または14〜55MPa;または14〜50MPa;または14〜45MPa;または14〜40MPa;または14〜35MPa;または14〜30MPa;または14〜25MPa;または14〜20MPa;または14〜18MPa;または14〜16MPa;または17〜35MPa;または17〜30MPa;または17〜25MPa;または17〜20MPa;または17〜18MPa;または20〜100MPa;または20〜90MPa;または20〜80MPa;または20〜75MPa;または20〜70MPa;または20〜65MPa;または20〜60MPa;または20〜55MPa;または20〜50MPa;または20〜45MPa;または20〜40MPa;または20〜35MPa;または20〜30MPa;または20〜25MPa;または30〜100MPa;または30〜90MPa;または30〜80MPa;または30〜75MPa;または30〜70MPa;または30〜65MPa;または30〜60MPa;または30〜55MPa;または30〜50MPa;または30〜45MPa;または30〜40MPa;または30〜35MPa;または40〜100MPa;または40〜90MPa;または40〜80MPa;または40〜75MPa;または40〜70MPa;または40〜65MPa;または40〜60MPa;または40〜55MPa;または40〜50MPa;または40〜45MPa;または50〜100MPa;または50〜90MPa;または50〜80MPa;または50〜75MPa;または50〜70MPa;または50〜65MPa;または50〜60MPa;または50〜55MPa;または60〜100MPa;または60〜90MPa;または60〜80MPa;または60〜75MPa;または60〜70MPa;または60〜65MPa;または70〜100MPa;または70〜90MPa;または70〜80MPa;または70〜75MPa;または80〜100MPa;または80〜90MPa;または80〜85MPa;または90〜100MPa;または90〜95MPa;または14MPa、16MPa、18MPa、20MPa、25MPa、30MPa、35MPa、40MPaもしくは45MPaの圧縮強度を有する。例えば、上記態様および上記実施形態のいくつかの実施形態では、凝結および硬化後の組成物は、14MPa〜40MPa、17MPa〜40MPa、20MPa〜40MPa、30MPa〜40MPaまたは35MPa〜40MPaの圧縮強度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で説明する圧縮強度は1日、3日、7日または28日後の圧縮強度である。
【0475】
いくつかの実施形態における、例えばカルシウムおよびマグネシウムのカーボネートおよびビカーボネートを含む沈殿物は、建築材料、例えば同一出願人による2008年5月23日出願の米国特許出願番号第12/126,776号(本開示において、これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載されているようなセメントおよび骨材として使用することができる。
【0476】
以下の実施例を、本発明をいかに作製し使用するかの完全な開示と説明を当業者に提供するために示すが、これらは、本発明者らが本発明者らの発明とみなすものの範囲を限定するものではなく、また、以下の実験が全てであるか、または実施した唯一の実験であることを表そうとするものでもない。本明細書で説明したものに加えて、本発明の種々の改変形態が、上記説明および添付の図面から当業者に明らかになろう。そうした改変形態は添付の特許請求の範囲に包含される。用いた数字(例えば、量、温度等)に関して正確さを確実にしようと努力をしてきたが、いくらかの実験誤差および偏差があるものと斟酌されるべきである。別段の指定のない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはその近傍である。
【0477】
実施例およびその他において、略語は以下の意味を有する。
【表A】
【実施例】
【0478】
(実施例1)
不飽和炭化水素からのハロ炭化水素の形成
塩化銅を用いたエチレンからのEDCの形成
この実験は、塩化第二銅を用いたエチレンからの二塩化エチレン(EDC)の生成を対象とする。実験は圧力容器中で実施した。圧力容器は、触媒、すなわち塩化第二銅溶液を含む外側ジャケットおよび塩化第二銅溶液中にエチレンガスをバブリングするための入口を備えた。反応物の濃度は以下の表1に示す通りであった。圧力容器を160℃に加熱し、実験中、エチレンガスを300psiで30分〜1時間、200mLの溶液を含む容器中に通した。容器を4℃に冷却し、次いで排出し開放した。溶液中で形成された生成物を酢酸エチルで抽出し、次いで分液漏斗で分離した。EDCを含む酢酸エチル抽出物をガスクロマトグラフィー(GC)に供した。
【表1-2】
【0479】
塩化銅を用いたプロピレンからのジクロロプロパンの生成
この実験は、塩化第二銅を用いたプロピレンからの1,2−ジクロロプロパン(DCP)の生成を対象とする。実験は圧力容器中で実施した。圧力容器は、触媒、すなわち塩化第二銅溶液を含む外側ジャケットおよび塩化第二銅溶液中にプロピレンガスをバブリングするための入口を備えた。5M CuCl
2、0.5M CuCl、1M NaClおよび0.03M HClの150mL溶液を、450mLの撹拌式グラスライニング圧力容器に入れた。閉じた容器をN
2でパージした後、160℃に加熱した。この温度に達した後、プロピレンを容器に加えて、圧力を、大部分が水蒸気による自圧から130psigの圧力まで上昇させた。15分間後、さらなるプロピレンを加えて、圧力を120psigから140psigへ上昇させた。さらに15分後、圧力は135psigであった。この時点で、反応器を14℃に冷却し、減圧して開放した。酢酸エチルを用いて反応器部品を濯ぎ、次いで抽出溶媒として使用した。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。これは、酢酸エチル相中に回収された0.203gの1,2−ジクロロプロパンを示した。
【0480】
(実施例2)
触媒反応器から電気化学システムへの水相の再循環
この実施例は、触媒反応器で生成したCu(I)溶液の、PtIr金網電極を含む電気化学セルへの再循環を例示する。4.5M Cu(II)、0.1M Cu(I)および1.0M NaClを含む溶液を、パールボム(Parr bomb)型反応器に60分かけて充填し、160℃および330psiで反応。EDCまたは残留抽出剤などの有機残留物のアノード性能に対する影響を見るために、触媒作用実行の前後に、同じ溶液をアノードサイクリックボルタンメトリー(CV)でテストした。各CV実験を70℃、10mVs
−1の走査速度で、5サイクル、飽和カロメル電極(SCE)に対して0.3〜0.8Vについて実施した。
【0481】
図14は、触媒作用の前後(それぞれプレおよびポストと表示)での溶液におけるPtIr金網電極(6cm
2)の得られたV/I応答を例示する。
図14に例示するように、レドックス電位(零電流での電圧)は、Cu(I)濃度の増大についてのネルンストの式から予測されるように、触媒作用後に、より低い電圧へシフトした。Cu(I)濃度の増大は、触媒反応の間のCu(I)再生に伴うEDC生成に起因していた。触媒作用前CV曲線は、低Cu(I)濃度での物質移動の限界に起因して、0.5A近傍の限界電流に達した。触媒作用の稼働の間のCu(I)生成は、触媒作用後の速度論的挙動の顕著な改善によって示されており、
図14に、限界電流に到達していない、急で直線的なI/V勾配として例示されている。触媒作用後のCVで得られた典型的な可逆I/V曲線によって示されているように、残留EDCまたは他の有機物の悪影響がないことは明らかであった。
(実施例3)
アノードコンパートメントにおける空気のバブリング
【0482】
この実施例は、空気をアノード周りにバブリングさせた場合のセル電圧の低下を例示する。本明細書で説明するように、アノードコンパートメントにおける空気の循環は、アノードでの物質移動を改善し、それによってセル電圧を低下させる。
【0483】
フルセル中に導入された溶液は、0.9M Cu(I)、4.5M Cu(II)および2.5M NaClアノード液ならびに10重量%NaOHカソード液であった。陰イオン交換膜はFAS−PK−130であった。アノード液における流量は1.7l/minであり、アノードと後壁の間隔は3mmであった。アノードを陰イオン交換膜から分離するために、漁網をアノードの一方の側で使用した。
図15に例示するように、気泡がアノードコンパートメントを通過するたびに、電圧は100〜200mV低下した。
(実施例4)
セル電圧に対するアノードの幾何学構造の効果
【0484】
この実施例は、扁平展伸アノードに対して、波形アノードをセルにおいて使用した場合の、セル電圧の低下を例示する。
【0485】
フルセル中に導入された溶液は、0.9M Cu(I)、4.5M Cu(II)および2.5M NaClアノード液ならびに10重量%NaOHカソード液であった。陰イオン交換膜はFAS−130セパレーターであり、温度は70
oCであった。
図16のAに示したように、扁平展伸アノードは3.30Vおよび3.32Vのセル電圧を示したのに対し、
図16のBに示したように波形アノードは3.05Vおよび2.95Vのセル電圧を示した。250mV〜370mVの間の電圧節減があった。
(実施例5)
吸着剤上での有機物の吸着
【0486】
この実験では、異なる吸着剤を用いて、金属水溶液からの有機物の吸着を試験した。試験した吸着剤は、活性炭(Aldrich、20〜60メッシュ)、ペレット化したPMMA((ポリ(メチルメタクリレート)GPCによる平均Mw約120,000、Aldrich)およびペレット化したPBMA((ポリ(イソブチルメタクリレート)平均Mw約130,000、Aldrich)(PMMAとPBMAはどちらもPXMAとして
図17に示されている)ならびに架橋PS(Dowex Optipore(登録商標)L−493、Aldrich)であった。PS(Dowex Optipore(登録商標)L−493、Aldrich)は、1100m
2/gの表面積、4.6nmの平均細孔直径および500g/ビーズの平均破壊強度を有する20〜50メッシュビーズであった。
【0487】
静電吸着実験を20mLねじ蓋付きバイアル中で実施した。4M CuCl
2(H
2O)
2、1M CuClおよび2M NaClを含有するストック水溶液を少量の二塩化エチレン(EDC)、クロロエタノール(CE)、ジクロロアセトアルデヒド(DCA)およびトリクロロアセトアルデヒド(TCA)でドープした。水溶液を1mLのEtOAcで抽出し、EtOAc抽出用溶媒の有機物濃度を分析することによって、溶液の有機物含有量を分析した。
図17に例示したグラフで示すように、6mLのストック溶液を90
oCで異なる量の吸着剤材料と特定の時間撹拌した。ろ過後、処理した水溶液の有機物含有量を、抽出および有機相のGCMS分析により分析した。吸着剤材料の量を増加させると、有機物含有量の減少の増大が達成されることが観察された。最も著しい減少は架橋PSで観察された。
【0488】
この実験では、繰り返して、所与の吸着材料(Dowex Optipore(登録商標)495−L)上でCu含有溶液から有機物を吸着し、この材料を冷水および熱水で洗浄し、材料を乾燥し、次いでその洗浄した材料を吸着のために再度使用することによって、吸着剤の再生能力を試験した。実験の結果を
図18に例示する。2回目の再生後でも吸着性能は、未使用材料と非常に近似していることが観察された。Dowex材料での有機物吸着後のCu濃度の紫外線(UV)測定は、有意の変化を示さないことも観察された。未使用材料では、全体のCu濃度の約10%の低下が観察され、再生材料では、Cu濃度のほんの1〜2%だけの低下しか観察されなかった。これらの発見は、複数回の使用サイクル後でもCuイオンの大部分を保持することなく、ポリマー吸着材料は銅イオン含有溶液から有機物を吸着するという、ポリマー吸着材料の繰り返し使用の利点を指している。したがって、その吸着容量が使い果たされた後に吸着剤材料を再生することができ、再生後、吸着剤材料を、吸着のために再使用することができる。
【0489】
次いでDowex Optipore(登録商標)495−L材料を動的吸着カラム(
図19に例示する)で評価して、フロー条件下でのブレイクスルー時間を確立した。511g CuCl
2(H
2O)
2、49g CuCl、117g NaClおよび500g水を含有するストック溶液を、EDC(1.8mg/mL)、CE(0.387mg/mL)、TCA(0.654mg/mL)およびDCA(0.241mg/mL)でドープした。初期有機物濃度を抽出およびGCMS分析により分析した。91〜94
oCの熱ストック溶液を、ポンプで送って、13.5gのDowex Optipore(登録商標)V495Lを充填したカラム(1.25cm直径、15.2cm長さ)に通した。出口で測定された温度は78〜81
oCであった。流量は18mL/minであった。60分後、フィードをストック溶液から熱DI水へ切り替え、再生サイクルを開始した。サンプルを、
図20に例示したグラフで示される間隔で採取した。サンプルをその有機物含有量について、抽出、および有機相のGCMS分析により分析した。DCAがすぐ後に続くCEは、最も早いブレイクスルー時間を有しており、それにTCAが後続することが観察された。最も遅いブレイクスルー時間はEDCの場合に観察された。
【0490】
有機物の再生プロファイルは、吸着と同じ順番に従った。最初に、吸着されたCEを熱水で洗い出し、すぐ後にDCAを洗い出した。吸着剤から洗い出された次の有機化合物はTCAであり、最後はEDCであった。吸着ならびに脱着のプロファイルおよび時間は、流量、温度、カラム寸法およびその他のパラメーターに影響を受ける可能性があることが観察された。これらのパラメーターを使用して、電気化学セルに入る前の、出口ストリームからの有機物の除去のための技術を最適化することができる。