(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039059
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンの支持構造
(51)【国際特許分類】
F02C 7/20 20060101AFI20161128BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20161128BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
F02C7/20 Z
F02C7/20 A
F02C7/00 E
F01D25/24 D
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-510227(P2015-510227)
(86)(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公表番号】特表2015-516537(P2015-516537A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】SE2012000062
(87)【国際公開番号】WO2013165281
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2015年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】514144559
【氏名又は名称】ゲーコーエヌ エアロスペース スウェーデン アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(72)【発明者】
【氏名】ヨンソン,ヨーラン
(72)【発明者】
【氏名】サムエルソン,リキャルド
【審査官】
橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−346792(JP,A)
【文献】
特表2008−500488(JP,A)
【文献】
特開2003−056360(JP,A)
【文献】
特表2011−525953(JP,A)
【文献】
特開平02−245428(JP,A)
【文献】
特開平11−315960(JP,A)
【文献】
特開2003−020957(JP,A)
【文献】
国際公開第95/004225(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0158684(US,A1)
【文献】
米国特許第03365124(US,A)
【文献】
米国特許第05316437(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D13/00−15/12
23/00−25/36
F02C1/00−9/58
F23R3/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(1、100)の支持構造(37、37’)であって、内輪(10)、外輪(11)、および当該内輪(10)と当該外輪(11)間で荷重を伝達するように構成され、当該内外輪(10、11)を接続する周方向に間隔を空けた複数の半径方向荷重担持要素(12)を備えた、支持構造(37、37’)において、
主軸ガス流のガス通路が前記内外輪(10、11)間に規定され、
当該支持構造(37、37’)が、主ガス流入用の入口面と、主ガス流出用の出口面とを有し、
前記半径方向要素(12)が、前記入口面を向いた前縁(121)と、前記出口面を向いた後縁(122)と、当該前縁(121)および当該後縁(122)を接続する2つの対向側面(123、124)とを備えた翼型を有し、前記2つの対向側面(123、124)の中間の点の軌跡が各半径方向要素(12)の平均反り曲線を形成し、
前記半径方向要素(12)のうちの少なくとも1つが、当該支持構造(37、37’)からの分離抽気ガス流を誘導するように構成されたガス流路構成を備え、
前記ガス流路構成が、前記半径方向要素(12)内に配置された半径方向に延びるガス通路(32)と、当該ガス通路(32)と連通した少なくとも1つの開口(34)とを備え、当該少なくとも1つの開口(34)が、前記半径方向要素(12)の側面(123、124)の一方に配置され、
前記主軸ガス流の内半径を規定するように構成された内側環状ガス流案内部材(13)を備え、当該内側環状ガス流案内部材(13)が前記内輪(10)の半径方向外方に配置され、前記少なくとも1つの開口(34)が前記内輪(10)と前記内側環状ガス流案内部材(13)間に配置されたことを特徴とする、支持構造(37、37’)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの開口(34)が、前記内輪(10)と関連して配置されたことを特徴とする、請求項1に記載の支持構造(37、37’)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの開口(34)が、前記内輪(10)に形成された凹部(34b)を備えたことを特徴とする、請求項2に記載の支持構造(37、37’)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの開口(34)が細長形状を有し、当該細長形状の長手延伸方向が、前記半径方向要素(12)の平均反り曲線に沿って延びたことを特徴とする、請求項2または3に記載の支持構造(37、37’)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの開口(34)が、前記前縁(121)および前記後縁(122)から一定の最小距離に配置され、当該最小距離が前記平均反り曲線の長さの5%であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の支持構造(37、37’)。
【請求項6】
前記ガス通路(32)が、前記半径方向要素(12)の対向側面(123、124)上に配置された少なくとも2つの開口(34)と連通したことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の支持構造(37、37’)。
【請求項7】
前記ガス通路(32)が、前記半径方向要素(12)の対向側面(123、124)上に配置された少なくとも4つの開口(34)と連通したことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の支持構造(37、37’)。
【請求項8】
2つの開口(34)が、前記半径方向要素(12)の各側面(123、124)上において互いにある軸方向距離だけ離れて配置され、各開口(34)が請求項5に記載の如く配置されたことを特徴とする、請求項7に記載の支持構造(37、37’)。
【請求項9】
少なくとも2つの部品を溶接することによって製造され、前記少なくとも1つの半径方向要素(12)が、前記内輪(10)からある距離で当該半径方向要素(12)周りの周方向に延びた溶接ライン(50)を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の支持構造(37、37’)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの開口(34)が、前記溶接ライン(50)と前記内輪(10)間に配置されたことを特徴とする、請求項9に記載の支持構造(37、37’)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの半径方向要素(12)が、当該支持構造(37、37’)からの第2の分離抽気ガス流を誘導するように構成された第2のガス流路構成を備え、当該第2のガス流路構成が、前記半径方向要素(12)内に配置された半径方向に延びる第2のガス通路(33)と、当該第2のガス通路(33)と連通した少なくとも1つの第2の開口(35)とを備え、当該少なくとも1つの第2の開口(35)が、前記半径方向要素(12)の前縁(121)に配置されたことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の支持構造(37、37’)。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の支持構造(37、37’)を備えたことを特徴とする、ガスタービンエンジン(1、100)。
【請求項13】
流れに沿って圧縮部、燃料燃焼室、およびタービン部を備えた軸流型であって、前記支持構造(37、37’)が前記圧縮部に配置されたことを特徴とする、請求項12に記載のガスタービンエンジン(1,100)。
【請求項14】
航空機の推進用に配置されたことを特徴とする、請求項12または13に記載のガスタービンエンジン(1,100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンの支持構造であって、内輪、外輪、および内輪と外輪間で荷重を伝達するように構成され、内外輪を接続する周方向に間隔を空けた複数の半径方向荷重担持要素を備えた構造に関する。特に、本発明は、このような構造の半径方向要素を介した抽気/ガスの誘導に関する。また、本発明は、このような支持構造を有するガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の「ジェットエンジン」等の軸流ガスタービンエンジンは一般的に、空気吸入口、圧縮部、燃料燃焼室、タービン部、対応する圧縮機およびタービンを接続する1または複数の回転可能な駆動軸、排気口、および駆動軸を支持するとともにエンジンを航空機等に搭載するための構造を備えている。
【0003】
この支持構造は固定された部品であって、通常、軸受および中心配置の駆動軸に接続するための内殻または内輪と、エンジンケーシング等に接続するための外殻または外輪とを備え、周方向に分布した翼型半径方向荷重担持要素が内殻/内輪と外殻/外輪間で延伸して両者を接続している。このため、エンジンを通る主軸ガス流は、内外輪と要素間に形成された領域を流れる。
【0004】
ガスタービンエンジンから空気/ガスを抽気することによって、たとえば飛行機の客室の加圧または冷却もしくは加熱に使用可能な加圧空気/ガスの流れを生成することが知られている。特許文献1および特許文献2に記載の通り、ガス流を横切って付加的な非構造性の半径方向要素を配置し、主軸ガス流方向における半径方向要素の前縁に配置された入口と要素の外側部に配置された出口とを接続する何らかの形態の内部通路をこれら(翼型)要素に設けることによって、抽気の流れを生成可能である。
【0005】
また、支持構造の半径方向荷重担持要素を利用して、抽気の流れを誘導することが知られている。ただし、支持構造は、駆動軸とエンジンケーシング間で相当な半径方向荷重を伝達できる必要があるため、かなりの剛性を有する半径方向要素を要する。また、抽気を誘導するための通路および開口は一般的に、要素の剛性および強度に悪影響を及ぼす。このため、非構造性の要素ではなく構造性の要素を利用して抽気の流れを生成するのは、より複雑となる。
【0006】
従来、ここに記載したような支持構造は鋳造により製造しており、半径方向要素が十分な強度および剛性を示しつつ抽気の流れを誘導可能な鋳造構造を設計するための様々な方法が知られている。
【0007】
航空機用途における軽量製品への要望から、従来の鋳造構造より軽いながらも半径方向荷重の伝達、内圧に対する耐性等が可能な支持構造の必要性が生じている。一般的に、このような軽量構造は、多くの既製部品を接合、通常は溶接することによって製造する。また、このような既製構造の半径方向要素は通例、中空の翼型羽根で構成されている。羽根の長さ方向に沿ったいずれかの場所に溶接断面接続が配置されるように羽根の第1の部分をその延長となる第2の部分に溶接することによって羽根を形成する場合には、抽気通路に関する特有の問題が発生する。典型的な例としては、羽根の第1の部分が鋳造内輪(ハブ)の一部を構成し、その他の羽根の外側部および外輪がこれに接合されている場合がある。ただし、このような羽根における抽気通路および開口の配置方法は明らかとなっていない。抽気系が溶接部分に干渉したり羽根の構造的剛性を低下させたりすることがあってはならないためである。
【0008】
軽量の既製支持構造の利用可能性を増大させるには、抽気を可能とする設計が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第2,986,231号明細書
【特許文献2】国際公開第95/04225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、支持構造、特に既製の溶接支持構造用の改良されたブリードオフ空気系を構成する支持構造およびガスタービンエンジンを提供することにある。この目的は、独立請求項1および12が含む技術的特徴により規定される構造およびエンジンによって達成される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態、その他の実施形態、および変形形態を含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ガスタービンエンジンの支持構造であって、内輪、外輪、および内輪と外輪間で荷重を伝達するように構成され、内外輪を接続する周方向に間隔を空けた複数の半径方向荷重担持要素を備えた、支持構造において、主軸ガス流のガス通路が内外輪間に規定され、当該支持構造が、主ガス流入用の入口面と、主ガス流出用の出口面とを有し、半径方向要素が、入口面を向いた前縁と、出口面を向いた後縁と、前縁および後縁を接続する2つの対向側面とを備えた翼型を有し、上記2つの対向側面の中間の点の軌跡が各半径方向要素の平均反り曲線を形成し、半径方向要素のうちの少なくとも1つが、当該支持構造からの分離抽気ガス流を誘導するように構成されたガス流路構成を備えた支持構造に関する。
【0012】
本発明は、上記ガス流路構成が、上記半径方向要素内に配置された半径方向に延びるガス通路と、当該ガス通路と連通した少なくとも1つの開口とを備え、当該少なくとも1つの開口が、半径方向要素の側面の一方に配置されたことを特徴とする。
【0013】
半径方向要素の前縁ではなく側面に開口を設けると、最も大きな荷重が要素の前後部を介して伝達されるため、要素の剛性および強度が影響を受け難いという利点がある。さらに、開口の位置を半径方向および軸方向の両方向に調整することによって、要素の剛性への影響を低減するとともに、要素の任意の溶接部分との干渉を回避することができる。実際、本発明の支持構造によれば、既製の溶接支持構造において、抽気の取り出しを容易に行うことができる。半径方向要素の側面に開口を設けることの別の効果として、同じ要素、少なくとも要素の前縁、たとえば上述の開口に関して溶接部分の対向側面に別の開口を配置することにより開口同士の過度の接近または溶接部分との接近を回避可能な特定の設計を有するある種の要素において、第2のブリードオフ系を配置する機会が与えられる。
【0014】
本発明の一実施形態において、当該構造は、主軸ガス流の内半径を規定するように構成された内側環状ガス流案内部材を備え、当該内側環状ガス流案内部材が内輪の半径方向外方に配置され、上記少なくとも1つの開口が内輪と内側環状ガス流案内部材間に配置されている。
【0015】
これにより、開口ひいては内部ガス通路は、内輪と内側環状ガス流案内部材間に形成された空間と連通する。この空間に存在するガス/空気は、事実上移動しないものであり、また、主ガス流の外側部と比較して清浄であるため、多くの目的に有用である。さらに、このガス/空気の圧力は、要素とその先においてガス通路を通る抽気の流れを形成するのに適している。
【0016】
本発明の一実施形態においては、上記少なくとも1つの開口が、内輪と関連して配置されている。
【0017】
これにより、剛性への影響が通常は最小限に抑えられ、内輪からある距離に位置する要素の溶接ラインまでの距離を短くすることができる。通常、「関連して」とは、内輪と半径方向要素の側壁の下縁/内縁との間の領域に開口が形成されることを意味する。
【0018】
本発明の一実施形態においては、上記少なくとも1つの開口が、内輪に形成された凹部を備えている。
【0019】
この設計により、開口の一部または全体が凹部によって形成される。これは、開口の総断面積の減少なく、半径方向要素の側面に配置される開口の部分を減らせることを意味する。これにより、要素の機械特性への影響が低減される。あるいは、凹部を用いることによって、羽根の側面に配置される開口の部分の拡幅なく、(抽気の流れを増やすために)開口の幅を拡げることができる。当然のことながら、これら2つの選択肢を組み合わせることも可能である。凹部は、たとえば半径方向要素の側壁の両面上に幾分か延伸するように、周方向に延びているのが好ましい。さらに、凹部は、開口を通って要素から上昇/流出するガス/空気の流れを増強するように成形するのが好ましく、通常は、円形/ボール状である。また、凹部は、鋳造プロセスにおける内輪の形成時に作成可能である。
【0020】
本発明の一実施形態においては、上記少なくとも1つの開口が細長形状を有し、当該細長形状の長手延伸方向が、半径方向要素の平均反り曲線に沿って延びている。
【0021】
これにより、開口は、要素の側面に沿って半径方向に延びる必要なく、十分な大きさで作成可能である。これによって、要素の機械特性に対する開口の影響が低減される。
【0022】
本発明の一実施形態においては、上記少なくとも1つの開口が、前縁および後縁から一定の最小距離に配置され、当該最小距離が平均反り曲線の長さの5%である。
【0023】
本発明の一実施形態においては、ガス通路が、半径方向要素の対向側面上に配置された少なくとも2つの開口と連通している。これにより、要素の対称な機械特性が与えられるとともに、各開口をあまり大きくする必要なく、総開口面積を大きくすることができる。
【0024】
本発明の一実施形態においては、ガス通路が、半径方向要素の対向側面上に配置された少なくとも4つの開口と連通している。また、2つの開口が、半径方向要素の各側面上において互いにある軸方向距離だけ離れて配置され、各開口が上記規定の通りに設計されているのが好ましい。これは、総開口面積の増大と要素の機械特性への影響の低減とを同時に行うのに適した設計である。
【0025】
本発明の一実施形態において、当該構造は、少なくとも2つの部品を溶接することによって製造され、上記少なくとも1つの半径方向要素が、内輪からある距離で当該半径方向要素周りの周方向に延びた溶接ラインを有する。本発明の設計は、特にこのような溶接構造において都合が良い。また、上記少なくとも1つの開口が、溶接ラインと内輪間に配置されているのが好ましい。
【0026】
本発明の一実施形態においては、上記少なくとも1つの半径方向要素が、当該支持構造からの第2の分離抽気ガス流を誘導するように構成された第2のガス流路構成を備え、当該第2のガス流路構成が、半径方向要素内に配置された半径方向に延びる第2のガス通路と、当該第2のガス通路と連通した少なくとも1つの第2の開口とを備え、当該少なくとも1つの第2の開口が、半径方向要素の前縁に配置されている。これにより、1つの半径方向要素に対して、2つの分離抽気ガス流系を設けることができる。
【0027】
また、本発明は、上記のような支持構造を備えたガスタービンエンジンに関する。ガスタービンエンジンは、流れに沿って圧縮部、燃料燃焼室、およびタービン部を備えた軸流型であって、支持構造が圧縮部に配置されているのが好ましい。また、ガスタービンエンジンは、航空機の推進用に配置されているのが好ましい。
【0028】
後述する本発明の説明においては、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る支持構造を設けた航空機用軸流ガスタービンエンジンの全体概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る支持構造の前面斜視図である。
【
図6】
図2〜
図5に示す実施形態の一部を示した半径方向断面図である。
【
図7】本発明の支持構造からの抽気を利用する副空気系の一例を示した全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明に係る支持構造37を設けた航空機用軸流ガスタービンエンジン1の全体概略図である。また、
図1は、別の支持構造27も示している。エンジン1は、さらに別の支持構造(図示せず)も備えている。
【0031】
一般的に、
図1に示すガスタービンエンジン1は、従来の設計を有しており、軸流に沿って空気吸入口3、低圧圧縮機4、高圧圧縮機5、燃焼器6、高圧タービン7、低圧タービン8、および排気口9を備えている。動作時、高圧圧縮機5は、第1の中空軸である高圧(HP)軸(図示せず)を介して高圧タービン7により駆動される。同様に、低圧圧縮機4は、第1の軸内で同軸に配設された第2の中空軸である低圧(LP)軸(図示せず)を介して低圧タービン8により駆動される。また、ガスタービンエンジンケーシングの内部および周囲に空気を送り込むファン12が配置されている。さらに、共通軸2も図示している。
【0032】
一般的に、ガスタービンエンジン1は、従来通りに動作するため、空気吸入口3を介して空気を引き込み、ファン12によって最初に圧縮した後、低圧圧縮機4によって圧縮した上で高圧圧縮機5に送ってさらに圧縮する。その後、燃焼器6に流れ込んだ圧縮空気を燃料と混合して燃焼させる。そして、その結果としての高温燃焼生成物を高圧および低圧タービン7、8で膨張させた後、排気口9を介して大気中に排出する。
【0033】
駆動軸の支持およびエンジン1の航空機への搭載には通常、前側および後側支持構造37、27を使用する。前側支持構造37は、低圧および高圧圧縮機4、5間の圧縮部に配置されている。
【0034】
一般的に、ジェットエンジンの支持構造は、ころ軸受および/または玉軸受によって1または複数の軸を支持する。荷重は、半径方向の「スポーク」により、内側支持構造を介して外側構造(シュラウド)に接続された内側ハブへと伝達される。空力抵抗の低減またはガス流の案内のため、これらの「スポーク」は通例、翼構造で覆われているか、または構造と一体化されている。一体化された翼または羽根は、「ストラット」と称する場合がある。以下に記載する例では、構造性羽根という用語を使用する。構造性羽根は、空力荷重および構造的荷重と熱誘導荷重との組み合わせの両者を支持可能である。現代のジェットエンジンの大半は、支持構造37等の構造性構成要素において上記のような羽根を利用している。
【0035】
以下に詳述する通り、支持構造37は、当該構造37からエンジン1のその他の部分に向かう抽気ガスの流れを生成するように配置されている。
【0036】
図7は、3つの軸を有すること以外は
図1に示すエンジン1と原則的に類似する航空機用の別の軸流ガスタービンエンジン100の概略図である。このような3軸エンジン100についても、当業者には周知である。この場合、本発明の支持構造37’は、中圧圧縮機と高圧圧縮機間の圧縮部に配置され、いわゆる中圧圧縮機ケース(ICC:Intermediate Compressor Case)を構成する。
【0037】
図7に例示するように、副空気系は、支持構造37’からタービンの後側支持構造101の軸受室に抽気を供給する(実線)。その追加または代替として、前側支持構造102および/またはタービン部の高圧、中圧、および低圧支持構造103、104の軸受室に抽気ガスを供給するようにしてもよい(点線)。また、抽気ガスは、その他の目的に使用してもよい。
【0038】
特に、本発明の支持構造37、37’は、ガス/空気の適当な圧力によって、
図7に示すようなエンジン100への適用に十分適応されている。
【0039】
以下、
図2〜
図6を参照して支持構造37、37’を説明する。支持構造37は、内輪10、外輪11、および内外輪10、11を接続する構造性羽根の形態の周方向に間隔を空けた複数の半径方向荷重担持要素12を備えている。羽根12は、内輪10と外輪11間で荷重を伝達するように設計されている。内輪10の内側には、羽根12と支持構造37の中心に配置された軸(図示せず)を支持する軸受構造(図示せず)との間で荷重を伝達する環状の荷重伝達構造が配置されている。例示の支持構造37は、ガスタービンエンジン1を航空機に固定するためのエンジン取付具(図示せず)をさらに備えている。
【0040】
また、支持構造37には、内外輪10、11における端点からのある距離で羽根12に固定されるとともに、内外輪10、11間で周方向に延びたリング状壁または板の形態の内側および外側環状ガス流案内部材13、14が設けられている。羽根12は、内側および外側ガス流案内壁13、14を通って延伸するものと考えられる。内側ガス流案内壁13は、内輪10の半径方向外方に配置され、主軸ガス流の内半径を規定している。外側ガス流案内壁14は、内側ガス流案内壁13の半径方向外方および外輪11の半径方向内方に配置され、主軸ガス流の外半径を規定している。
【0041】
このように、内外輪10、11間の領域における内側および外側ガス流案内壁13、14間には、主軸ガス流のガス通路が規定されている。主軸ガス流のガス通路は、半径方向に延びる羽根12によって、周方向に分割されている。
図2には、構造37への主ガス流入の入口面を示しており、
図3には、主ガス流出用の出口面を示している。また、内側および外側ガス流案内壁13、14に対する主ガス流は、構造37の上流および下流に配置されたその他のガス流案内部材(図示せず)が案内する。
【0042】
半径方向要素/羽根12は、少なくとも主軸ガス流のガス通路に存在する長さ方向の部分にわたって、入口面を向いた前縁121と、出口面を向いた後縁122と、前縁121および後縁122を接続する2つの対向側面123、124とを備えた翼型を有する(
図4参照)。この2つの対向側面123、124の中間の点の軌跡は、各半径方向要素12の平均反り曲線を形成する。
【0043】
図4〜
図6に示すように、半径方向要素12のうちの1つは、支持構造37からの分離抽気ガス流すなわち主軸ガス流から分離したガス流を誘導するように構成されたガス流路構成を備えている。ここに示す例において、羽根12は実際のところ、外輪11において当該羽根12の半径方向外方に配置された第1および第2の出口30、31を介した支持構造37からの第1および第2の分離抽気ガス流を誘導するように構成された第1および第2のガス流路構成を備えている。この第1および第2の抽気ガス流は互いに分離され、異なる目的に使用される。
【0044】
第1のガス流路構成は、半径方向要素12内に配置され、第1の出口30と連通した半径方向に延びる第1の抽気ガス通路32を備えている。さらに、ガス流路構成は、この例において、第1の抽気ガス通路32と連通した4つの細長流入開口34を備えており、2つの開口34が半径方向要素12の各側面123、124に配置されている。
【0045】
図4〜
図6から分かるように、4つの開口34は、内輪10と関連して、すなわち羽根12の側面124と内輪10とが交差する領域において、内輪10と内側環状ガス流案内部材13間に配置されている。各細長開口34の一部は、内輪10に形成された円形の凹部34bを構成要素としている(たとえば、
図5参照)。この場合は、すべての開口34が細長形状を有しており、その細長形状の長手延伸方向は、半径方向要素12の平均反り曲線に沿って延びている。すなわち、おおよそ支持構造37の軸方向に延びている。
【0046】
すべての開口34は、構造性羽根12の前縁121および後縁122から一定の距離に配置されている。これは、支持構造37を介して伝達される荷重の大部分を担持する羽根12の前後端部において機械特性に過度の影響が及ぶことを回避するためである。開口34と前後縁121、122間の最小距離の正確な値は、用途に応じて決まる。一般的に、この最小距離は、平均反り曲線の長さの少なくとも5%とする。多くの用途においては、少なくとも10〜15%が適している。
【0047】
2つの開口34は、半径方向要素12の各側面123、124上において互いにある軸方向距離だけ離れて配置されている。この軸方向距離は、平均反り曲線の長さの少なくとも5%であるのが好ましい。
【0048】
内輪10と内側環状ガス流案内部材13間に形成された空間に存在するガス/空気は、事実上移動しないものであり、また、主ガス流と比較して清浄であるが、ここでは第1の出口30と連通している。また、この空間に存在するガス/空気は、圧力が比較的高いため、開口34を通り、ガス通路32を介して出口30とその先に至る抽気の流れを形成する。また、上述の設計を用いることによって、反対方向に空気/ガスを供給することも可能である。
【0049】
この場合、支持構造37は、複数の既製部品を溶接することによって製造される。これらの部品の1つとして、内輪10および周方向に分布した各羽根12の内側部分が挙げられる。この内側部品には、内側ガス流案内壁13および羽根12の延伸部等、その他の部品が溶接によって接合される。したがって、各羽根12は、内輪10からある距離で当該羽根12周りの周方向に延びた溶接ライン50(
図5参照)を有する。図から分かるように、開口34は、溶接ライン50と内輪10間において、溶接ライン50から無理なく可能な限り離間した状態で配置されている。このように、溶接ライン50までの距離が最大化され、構造上の影響が最小限に抑えられている。
【0050】
上述の通り、羽根12は、第2の出口31を介した支持構造37からの第2の分離抽気ガス流を誘導するように構成された第2のガス流路構成を備えている。この第2のガス流路構成は、半径方向要素12内に配置された半径方向に延びる第2の抽気ガス通路33と、当該第2の抽気ガス通路33を介して第2の出口31と連通した第2の流入開口35とを備えている。この第2の流入開口35は、主軸ガス流のガス通路において、羽根12の前縁121に配置されている。したがって、この場合、第2の流入開口35は、内側および外側ガス流案内部材13、14間に配置されている。
【0051】
第2の抽気ガス流は、たとえばガスタービンエンジンの高圧タービン部における支持構造の軸受ハウジングのバッファとして利用可能である。
【0052】
第2のガス流路構成、特に前縁121近傍の設計は、半径方向要素12に高い強度および剛性を付与し、好ましい第2の抽気ガス流を提供し(圧力損失の低減等)、重量を低減するように最適化および調和されている。
【0053】
図5および
図6における矢印は、支持構造37からの2つの分離抽気ガス流の流れを示している。
【0054】
本発明は、上述の実施形態によって制限されるものではなく、特許請求の範囲内において種々変更可能である。たとえば、抽気ガスの流れは、エンジンのその他の部分またはエンジン外部の箇所に供給可能であり、第2のガス流路構成を含む必要はない。さらに、第1のガス流路構成の2つの開口34を羽根12の各側面上に配置する必要もない。
【0055】
図2に示すように、ガス流路構成は、半径方向要素12のうちの1つにのみ設けている。ただし、第1のガス流路構成および任意選択として第2の構成を1または複数の要素12が備えることも可能である。