特許第6039073号(P6039073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039073
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】流体機械
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/10 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   F04B39/10 C
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-523672(P2015-523672)
(86)(22)【出願日】2013年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2013067171
(87)【国際公開番号】WO2014207791
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貞方 康輔
(72)【発明者】
【氏名】田代 耕一
(72)【発明者】
【氏名】末藤 和孝
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第2002−0045393(KR,A)
【文献】 実公昭49−013373(JP,Y1)
【文献】 実開昭61−081073(JP,U)
【文献】 特開平07−259739(JP,A)
【文献】 特開平11−166479(JP,A)
【文献】 実開昭60−143181(JP,U)
【文献】 特表2008−534832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/10
F16K 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内を往復動するピストンと、
前記シリンダ内に設けられた弁座板と、
前記弁座板に一端が固定され、前記ピストンの往復動に伴って前記弁座板のポート部を開閉する弁と、
前記弁座板に一端が弁とともに固定され、前記弁の開き量を抑制する弁受けとを備え、
前記弁受けの前記弁座板側の面は、前記ポート部と対向する位置において開放端側が前記ポート部に近づくように傾斜し、前記ポート部と固定端との間に前記弁座板から最も離間した部分を設け、
前記弁受けは、前記弁座板から最も離間した部分と前記固定端との間の固定端側接触面と前記ポート部と対向する位置にある開放端接触面とにおいて、前記弁と接触することを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記弁受けの前記弁座板から最も離間した部分と前記固定端との間における前記弁座板側の面は傾斜が異なる少なくとも2つの平面をつなぎ合わせた形状であることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【請求項3】
前記固定端側の傾斜よりも前記弁受けの前記弁座板から最も離間した部分に近い側の傾斜を大きくすることを特徴とする請求項に記載の流体機械。
【請求項4】
前記弁受けの前記弁座板から最も離間した部分と前記固定端との間における前記弁座板側の面を前記弁座板に向けて凸な曲面として形成することを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【請求項5】
前記曲面の曲率が変化することを特徴とする請求項に記載の流体機械。
【請求項6】
前記弁受けの前記弁座板から最も離間した部分と前記固定端との間における前記弁座板側の面は平面と曲面とをつなぎ合わせた形状であることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【請求項7】
前記弁受けはシリンダヘッドと一体に形成された弁固定部であることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【請求項8】
前記弁受けの前記弁座板から最も離間した部分と前記開放端との間における前記弁座板側の面は平面と曲面とをつなぎ合わせた形状であることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【請求項9】
シリンダ内を往復動するピストンと、
前記シリンダ内に設けられた弁座板と、
前記弁座板に一端が固定され、前記ピストンの往復動に伴って前記弁座板のポート部上で開閉する弁と、
前記弁座板に一端が弁とともに固定され、前記弁の開き量を抑制する弁受けとを備え、
前記弁受けは、前記ポート部と固定端との間に屈曲部を有し、前記ポート部上では、開放端側に向けて前記ポート部に前記弁座板に近くづくように傾斜し、
前記弁受けは、前記屈曲部と前記固定端との間の固定端側接触面と前記ポート部と対向する位置にある開放端接触面とにおいて、前記弁と接触することを特徴とする流体機械。
【請求項10】
前記弁受けの前記屈曲部と前記固定端との間における前記弁座板側の面は少なくとも2つの傾斜が異なる平面をつなぎ合わせた形状であることを特徴とする請求項に記載の流体機械。
【請求項11】
前記固定端側の傾斜よりも前記屈曲部に近い側の傾斜を大きくすることを特徴とする請求項10に記載の流体機械。
【請求項12】
前記弁受けの前記屈曲部と前記固定端との間における前記弁座板側の面を前記弁座板に向けて凸な曲面として形成することを特徴とする請求項に記載の流体機械。
【請求項13】
前記曲面の曲率が変化することを特徴とする請求項12に記載の流体機械。
【請求項14】
前記屈曲部と前記固定端との間における前記弁座板側の面は平面と曲面とをつなぎ合わせた形状であることを特徴とする請求項に記載の流体機械。
【請求項15】
前記弁受けはシリンダヘッドと一体に構成された弁固定部であることを特徴とする請求項9に記載の流体機械。
【請求項16】
前記弁受けの前記屈曲部と前記開放端との間における前記弁座板側の面は平面と曲面とをつなぎ合わせた形状であることを特徴とする請求項に記載の流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特許文献1、2がある。特許文献1には、弁押さえ部をフロントマフラーに設けた圧縮機が記載されている。特許文献2には、吐出弁の近傍に上方向に曲がったわん曲リテーナが設けられたロータリ圧縮機の消音装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−281290号公報
【特許文献2】特開昭61−79896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の弁抑え部(弁受け)は、吐出ポートの上方で開放端側が吐出弁から遠ざかるように傾斜している。そのため、吐出弁が開放したときに吐出弁と弁受けが面接触せず、吐出弁の振動を十分に低減することができない。
【0005】
特許文献2のわん曲リテーナ(弁受け)は吐出ポートの上方で水平になっているため、吐出弁が開放したときに吐出弁と弁受けが面接触せず、吐出弁の振動を十分に低減することができない。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、吐出弁の閉じ遅れを抑制しつつ、吐出弁の振動を低減することができる流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、「シリンダ内を往復動するピストンと、前記シリンダ内に設けられた弁座板と、前記弁座板のポート部に設けられ、前記ピストンの往復動に伴って開閉する弁と、前記弁の開き量を規制する弁受けとを備え、前記弁受けの前記弁座板側の面は、前記ポート部上では前記開放端側が前記ポート部に近づくように傾斜し、前記ポート部と前記固定端との間に前記弁座板から最も離間した部分を設けることを特徴とする流体機械」を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出弁の閉じ遅れを抑制しつつ、吐出弁の振動を低減することができる流体機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1における往復動圧縮機を示す図である。
図2】本発明の実施例1の弁受けの比較構造1を示す図である。
図3】本発明の実施例1の弁受けの比較構造2を示す図である。
図4】本発明の実施例1の弁受けを示す図である。
図5】本発明の実施例1の吐出弁の変形を示す図である。
図6】本発明の実施例1のピストンの位相に対する弁受けの比較構造1の変位を示すグラフである。
図7】本発明の実施例1のピストンの位相に対する弁受けの比較構造2の変位を示すグラフである。
図8】本発明の実施例1のピストンの位相に対する弁受けの変位を示すグラフである。
図9】本発明の実施例1の弁受けと比較構造1、2の弁受けの性能を比較したグラフである。
図10】本発明の実施例2の弁受けを示す図である。
図11】本発明の実施例3の弁受けを示す図である。
図12】本発明の実施例3の変形例の弁受けを示す図である。
図13】本発明の実施例4の弁受けを示す図である。
図14】本発明の実施例5の弁受けを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1について図1、2を用いて説明する。
【0011】
図1は、本実施例における流体機械の一例である、流体を圧縮する往復動圧縮機の全体構造を示す図である。往復動圧縮機は、シリンダ6内をピストン9が往復動することにより空気等の気体(流体)を吸引し圧縮して吐出するものである。図1に示すように、往復動圧縮機は、ピストン9を収納するクランクケース7を有しており、クランクケース7は、内部がクランク室8とされている。クランク軸14はクランクケース7に回転可能に支持されている。
【0012】
クランク軸14は、偏心して設けられた偏心軸15を有しており、偏心軸15の反対に位置する部位に、バランスウェイト16が設けられている。クランク軸14は、クランクケース7の外側に突出する連結軸部に駆動源が接続され回転駆動される。
【0013】
クランクケース7の上部には、内周面がクランク軸14と直交する方向に円筒状のシリンダ6が、クランク軸14と直交する方向に軸線を配して取り付けられている。このシリンダ6は、その内周面が軸方向のほぼ全体にわたって一定径をなしており、クランク室8に開口している。また、シリンダ6内のクランクケース7とは反対側には、弁座板5およびシリンダヘッド本体からなるシリンダヘッド4が搭載されている。
【0014】
シリンダヘッド本体には、外部に連通する吸込室17と、吐出室18とが画成されており、吸入室17側には吸入弁21などの音が外部に直接聞こえないようにするためのケース1とケース1内部に設置された粉塵吸入防止のためのフィルタ2が配管3を介して吸入室17と連通している。また、吸入室17側の弁座板5には、吸込室17をシリンダ6内の圧縮室23に連通させる吸入穴19(ポート部)と、吐出室18を圧縮室23に連通させる吐出穴20(ポート部)とが形成されている。また、弁座板5には、リード弁としての吸入弁21および吐出弁22が取り付けられ、これら吸入弁21および吐出弁22は、基端側(一端)がネジ等を介して弁座板5に固定された固定端25となり、先端側(他端)は自由端(開放端26)となってピストン9の往復動に伴って、吸入穴19、吐出穴20上を開閉する。なお、吐出弁22よりも十分剛性が高い弁受け24が固定端に吐出弁22とともに固定され、弁受け24によって吐出弁22の開き量が抑制される。
【0015】
クランク軸14の偏心軸15には、連接棒12が軸受を介して回転可能に連結されている。連接棒12はその一端側にあって軸受を介してクランク軸12に回転可能に連結される略円環状の大端部13と、この大端部13からシリンダ6内へと伸長するロッド部と、その他端側にある、大端部13よりも小径の略円環状の小端部11とを有する一体成形品である。円環状の大端部13の中心軸線と円環状の小端部11の中心軸線とは平行をなしており、これらの中心軸線は、ロッド部の中心軸線と直交している。
【0016】
連接棒12の小端部11には、円筒状のピストンピン10が同軸で回転可能に挿入されており、このピストンピン10を介してピストン9が回動可能に連結されている。つまり、ピストン9には、径方向に貫通する二カ所のピン穴が形成されており、一方のピン穴、連接棒12の小端部11、他方のピン穴にピストンピンが挿入されることで、ピストン9が連接棒12に連結される。ピストン9は、シリンダ6内にその軸線方向に沿って往復摺動可能となるように挿嵌されている。言い換えれば、連接棒12は、ピストン9をシリンダ6内で往復動させるべく、一端側がピストン9に連結され、他端側がクランク軸14に連結されている。ピストン9は、シリンダ6と弁座板5との間に上記した圧縮室23を画成する。
【0017】
連接棒12は、大端部13がクランク軸14の偏心軸15によって偏心運動させられることによって、ピストン9をシリンダ6内で摺動させながら往復動させることになり、その際に、ピストン9に連結された小端部11がシリンダ6の中心軸線上を直線運動するのに対して、大端部13が偏心運動することから、全体として、クランク軸14の中心軸線に直交し且つシリンダ6の中心軸線に直交する方向に揺動する。このクランク軸14の中心軸線に直交し且つシリンダ6の中心軸線に直交する方向(図1の左右方向)を揺動方向とする。他方、連接棒12は、クランク軸14の軸線方向には揺動しない。このクランク軸14の軸線方向を非揺動方向とする。
【0018】
ここで、連接棒12の揺動について説明すると、図1に示すように連接棒12を揺動方向と直交するクランク軸14の軸線方向に沿って見た場合に、下死点では全体が揺動方向の中央に位置しており、この状態からクランク軸14が圧縮行程を行うべく図1に示す反時計回りの方向に回転して連接棒12を上昇させると、上死点と下死点との間の中間まで大端部13が揺動方向の片側(図1の右側)に移動しながら上昇し、上死点と下死点との間の中央(例えば3時の位置)で最も揺動方向の片側(図1の右側)に位置する。
【0019】
続いて、上死点に向かうにしたがって大端部13は揺動方向の中央に戻ることになり、上死点では大端部13が揺動方向の中央に位置することで連接棒12の全体が揺動方向の中央に位置することになって圧縮行程が終了する。
【0020】
ピストン9が上死点にある状態からクランク軸14が吸込行程を行うべく回転すると連接棒12を下降させることになり、上死点と下死点との中間まで、大端部13が揺動方向の逆の片側(図1の左側)に移動しながら下降し、上死点と下死点との間の中央(例えば9時の位置)で最も揺動方向の逆の片側(図1の左側)に位置する。
【0021】
続いて、下死点に向かうにしたがって大端部13は揺動方向の中央に戻ることになり、下死点では大端部13が揺動方向の中央に位置することで連接棒12の全体が揺動方向(左右方向)の中央に位置することになって吸込行程が終了する。
【0022】
なお、ここでは、小端部11が直線運動し、揺動運動しないものについて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、小端部11が揺動運動するものであってもよい。
【0023】
本実施例における往復動圧縮機の吸入弁21、吐出弁22の動作について説明する。吸込行程では、ピストン9が上死点から下死点に向かって下降し、吸入弁21が開き、吐出弁22は閉じる。これにより、外部から吸込んだ空気が吸入室17を介して圧縮室23に流入する。続いて、圧縮行程では、ピストン9が下死点から上死点に向かって上昇し、吸入弁21が閉じ、吐出弁22は開く。これにより、圧縮室23内の空気が圧縮され、吐出室18に流入する。
【0024】
本実施例における弁受け24の形状について比較構造と比較しつつ説明する。比較構造1、2における弁受け24の形状を図2、3に示し、本実施例における弁受けの形状を図4に示す。また、比較構造1、2、本実施例における弁受け24の測定点30における変位とピストン9の位相との関係を図5、6、7にそれぞれ示す。ここで、ピストン9の位相とは、クランク軸14の回転角に対応した位相で、下死点を0、上死点をπとしたものである。
【0025】
図2に比較構造1における弁受け24の形状を示す。比較構造1において、弁受け24は、固定端25から開放端26に向けて弁座板5から遠ざかるように傾斜している。比較構造1の弁受け24の形状における吐出弁22の動作について説明する。まず、圧縮行程では、吐出弁22は開き始めに吐出室18と圧縮室23の圧力差で開弁するが、開弁と同時に圧縮された空気が吐出穴20から流出し、この流出した空気によって動圧が発生し、吐出弁22を閉じようとする力も発生する。これにより吐出弁22に掛かる力が上死点に近づくにつれて変わり、ピストン9が上死点に近づいて、圧縮室23から流出する空気量が少なくなってくると差圧による力が大きくなる。ここで、図6に示すように、吐出穴20中心に対応する吐出弁22の位置(測定点30)の変位はピストン9が上死点に近づく直前で最大となる。それに伴い、ピストン9が上死点に近づく直前で弁座板5と吐出弁22の距離が大きくるため、吐出弁22が閉じるまでに時間が掛かり、閉じ遅れが発生し圧縮機の性能が低下する。
【0026】
図3に比較構造2における弁受けの形状を示す。比較構造2では、屈曲部27を設け、弁受け24の開放端26側が弁座板5側に近づくように弁受け24を傾斜させている。これにより、弁受け24の開放端26の変位を比較構造1よりも小さく抑制し、吐出弁22の閉じ遅れを抑制することができる。また、吐出穴20の直上に屈曲部27を設け、かつ屈曲部27の位置が弁受け24と弁座板5との距離を最大にして吐出穴20直上の空間を大きくした。これにより、弁受け24の開放端26と弁座板5の隙間が狭くなることで、吐出し抵抗が大きくなるのを抑制し、性能を維持することができる。
【0027】
しかし、吐出穴20の位置は吐出弁22に力が一番掛かる位置であり、空気が噴出すことによる流体力の影響を受けやすい。そのため、弁受け24の開放端26と固定端25を支点として図7に示すように振動が発生する。吐出弁22が振動することで吐出弁22と弁受け24の開放端26の接触部が摩耗したり、吐出弁22の動きが不安定になり性能・信頼性の低下といった問題が発生する。
【0028】
ここで、図4を用いて本実施例における弁受け24の構成について説明する。弁受け24は吐出弁22の固定端側にある固定端25で弁座板5に吐出弁22とともに固定される。本実施例では、吐出穴20と固定端25の間に屈曲部27を設け、屈曲部27において、吐出弁22と弁受け24とが最も離間するようにした。また、吐出弁22の開放端の弁受け24の開放端26側は特に吐出穴20上(吐出穴20上と対向する位置)において、屈曲部27部から弁座板5(吐出穴20)に近づくように傾斜させ、開放端側傾斜面28を構成する。また、開放端側傾斜面28は平面で構成した。
【0029】
屈曲部27を吐出穴20と固定端25の間に設けることで、吐出穴20直上の空間を小さくすることができ、吐出弁22の開放端26側の変位量が大きくなり過ぎないようにすることができる。吐出弁22の開放端26側の変位量が抑制されることで、閉じ遅れを防止し、性能低下を防止することができる。また、吐出弁22の変形は図5に示すような形状となり、吐出弁22の変位は図8に示すようになる。吐出弁22は平面で構成されている開放端側傾斜面28にある開放端側接触面31aに加えて、屈曲部27と固定端25との間にある固定端側傾斜面29においても固定端側接触面31bにおいて接触するように構成される。これにより、吐出弁22が弁受け24と2箇所で面接触することができ、吐出弁22の振動を抑制することができる。
【0030】
図9に比較構造1、2と本実施例における圧縮機の性能を示す。ここで、圧縮機の性能とは、圧縮機の単位時間当たりの吐出し量(L/min)を示す。図9に示すとおり、本実施例における屈曲部27を吐出穴20と固定端25の間に設け、開放端側傾斜面28を直線とする構成が比較構造1、2と比較して吐出し性能が高いことがわかる。
【0031】
以上より、本実施例によれば、屈曲部27を吐出弁22の吐出穴20と固定端25との間に設け、吐出穴20上で開放端26側が弁座板5(吐出穴20)に近づくように傾斜させることにより、吐出弁の閉じ遅れを抑制しつつ、吐出弁の振動を低減させ、さらに騒音も低減させることができる。
【実施例2】
【0032】
図10を用いて、本発明の実施例2を説明する。実施例1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
本実施例では、図10に示すように、屈曲部27から固定端側傾斜面29を弁座板5に向けて凸部を設けた点に特徴がある。即ち、屈曲部27から固定端25側の弁座板5側の面を傾斜が異なる少なくとも2つの面をつなぎ合わせて構成した。また、固定端25側の傾斜よりも屈曲部27に近い側の傾斜を大きくした。
【0034】
これにより、吐出弁22が開いたとき、実施例1と同様に弁受け24の開放端側傾斜28にある開放端側接触面31aと固定側傾斜面29にある固定端側接触面31bの2箇所で接触するが、実施例1と比較して、開放端側接触面31aと固定端側接触面31bの間隔を狭めることができる。従って、本実施例によれば、弾性変形する部分が短くなることで、実施例1と比較して、さらに吐出弁24の振動を抑制でき、性能・信頼性が向上させることができる。
【実施例3】
【0035】
図11、12を用いて、本発明の実施例3を説明する。実施例1、2と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
本実施例では、図11に示すように、屈曲部27と固定端25との間の弁座板5側の面を弁座板5側に向けて凸な曲面として構成した。また、図12の変形例に示すように、屈曲部27と固定端25との間の弁座板5側の面を平面と曲面とを繋ぎ合わせた形状として構成してもよい。
【0037】
本実施例によれば、曲面で吐出弁22と接するため,吐出弁22が接している間の応力集中を低減でき,実施例2と比較して、さらに吐出弁24の振動を抑制でき、性能・信頼性が向上させることができる。
【実施例4】
【0038】
図13を用いて、本発明の実施例4を説明する。実施例1−3と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
本実施例では、図13に示すように、弁受けをシリンダヘッド4と一体に形成された弁固定部32とした点に特徴がある。弁固定部32には、実施例1−3と同様に弁受け24の開放端側傾斜面28、屈曲部27、固定端側傾斜面29が設けられ、吐出弁22を弁座板5と間に挟み込んでいる。
【0040】
本実施例によれば、実施例1と比較して、部品点数を低減することができる,組立性の向上やコスト削減が可能となる。
【実施例5】
【0041】
図14を用いて、本発明の実施例4を説明する。実施例1−4と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
本実施例では、図14に示すように、屈曲部27と開放端26側との間における弁座板5側の面を平面と弁座板5に向けて凹んだ曲面とをつなぎ合わせた形状とした点に特徴がある。また、平面を吐出穴20上までとすることで、吐出弁22と開放端側傾斜面28の接触部に面で接する部分を確保できる。
【0043】
本実施例によれば、実施例1と比較して,弁座板5に向けて凹曲面設けることで,吐出弁22と弁受け24の間の空間を広くとることができるため,吐出しの損失低減することができる。また,実施例3と組み合わせることで,弁の振動も低減させることができ,性能・信頼性を向上させることができる。
【0044】
上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:ケース
2:フィルタ
3:配管
4:シリンダヘッド
5:弁座板
6:シリンダ
7:クランクケース
8:クランク室
9:ピストン
10:ピストンピン
11:小端部
12:連接棒
13:大端部
14:クランク軸
15:偏心軸
16:バランスウェイト
17:吸入室
18:吐出室
19:吸入穴(ポート部)
20:吐出穴(ポート部)
21:吸入弁
22:吐出弁
23:圧縮室
24:弁受け
25:固定端
26:開放端
27:屈曲部
28:開放端側傾斜面
29:固定端側傾斜面
30:吐出弁の変位の測定点
31a:開放端側接触面
31b:固定端側接触面
32:弁固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14