【実施例】
【0052】
以下、適宜図面を参照して、本発明の好適な実施例として、情報表示システム10について説明する。
【0053】
<実施例の構成>
始めに、
図1を参照し、情報表示システム10の構成について説明する。ここに、
図1は、情報表示システム10のブロック図である。
【0054】
図1において、情報表示システム10は、図示せぬ車両に搭載され、当該車両の運転者たる利用者1に各種情報を提供する装置である。情報表示システム10は、制御装置100、ディスプレイDP及び撮像装置CMを備える。ディスプレイDP及び撮像装置CMは、夫々制御装置100に電気的に接続されている。
【0055】
情報表示システム10は、不図示のカーナビゲーションシステムの一部として構成されている。従って、情報表示システム10は、車両の位置情報、地図情報、周辺施設の情報、道路情報等の各種情報を利用者1に提供することができる。無論、本発明に係る撮像システムの用途は、カーナビゲーション分野に限定されない。例えば、パーソナルコンピュータ装置における情報表示に適用することも可能である。
【0056】
尚、情報表示システム10において、制御装置100と撮像装置CMとにより、本発明に係る「撮像システム」の一例が構成される。
【0057】
ディスプレイDPは、車両の運転席前方におけるフロントガラスの手前に、ルーフ部分から吊り下げられた状態で固定された表示装置である。ディスプレイDPは、利用者1の視認に供される表示画面を有する。ディスプレイDPの表示内容は、ディスプレイDPと電気的に接続された制御装置100によって制御される構成となっている。
【0058】
撮像装置CMは、車両のハンドルHDの奥側に位置するステアリングコラム付近において利用者1を撮像可能に固定された、本発明に係る「撮像手段」の一例たるデジタルビデオカメラである。撮像装置CMの動作は、撮像装置CMと電気的に接続された制御装置100とによって制御される構成となっている。
【0059】
撮像装置CMは、ある解像度(即ち、画素数)を有するイメージセンサ(例えば、CCDやCMOSセンサ等を含む)を搭載しており、その撮像領域が、望遠側撮像領域と広角側撮像領域との間で切り替え可能となっている。撮像装置CMの撮像領域は、後述する撮像モード選択部130により選択される撮像モードと一対一に対応する。即ち、撮像装置CMの撮像領域は、撮像モードとして広角モードが選択された場合には、利用者1のジェスチャの検出に最適化された広角側撮像領域(即ち、本発明に係る「第2撮像領域」の一例)に制御される。また、望遠モードが選択された場合には、利用者1の視線方向の検出に最適化された望遠側撮像領域(即ち、本発明に係る「第1撮像領域」の一例)に夫々制御される。
【0060】
尚、撮像装置CMにおける撮像領域の切り替えは、撮像装置CMが有するズームイン/アウト機能により実現される。即ち、後述する撮像制御部140からズームイン制御信号が供給されると、撮像装置CM内部の駆動制御回路がレンズモータを駆動し、第1撮像領域の一部が拡大され、撮像領域が望遠側撮像領域に切り替えられる。逆に、撮像制御部140からズームアウト制御信号が供給されると、撮像装置CM内部の駆動制御回路がレンズモータを駆動し、撮像領域が拡大され、撮像領域が広画角な広角側撮像領域に切り替えられる。
【0061】
尚、このような撮像領域の切り替えは一例に過ぎない。例えば、撮像装置CMにズームイン/アウトの機能が備わらない場合であっても、テレコンバージョンレンズによりズームインと同等の機能を実現することができ、ワイドコンバージョンレンズによりズームアウトと同等の機能を実現することができる。この場合、撮像装置CMに、或いはその周辺部に、レンズの着脱機構が設けられていればよい。
【0062】
ここで、
図2を参照し、撮像装置CMの設置位置について補足する。ここに、
図2は、撮像装置CMの設置位置を説明する図である。
【0063】
図2において、(a)及び(b)は、ある着座姿勢における利用者1の顔面を異なる方向から撮像した図である。具体的には、(a)は正面から撮像した図であり、(b)は(a)よりも下方から撮像した図である。
【0064】
利用者1の視線方向を検出するためには、利用者1の目の周辺部分に相応の解像度が必要となるが、(a)では利用者1の瞼に阻害されて瞳を十分に撮像することができない。一方、(b)では、利用者1の瞳が瞼に隠れることなく撮像される。
【0065】
撮像装置CMは、このような事情から、利用者1を
図2(b)に相当する方向から撮像することができるように、車両のハンドルHDの奥側に位置するステアリングコラム付近に設置されている。また、パソコン操作に視線検出を利用する場合においても、同様の事情から好適には、利用者1の目の周辺を利用者1の前方且つ斜め下方から撮影できる位置に撮像装置が設置される。
【0066】
制御装置100は、情報表示システム10の動作を制御するコンピュータ装置である。制御装置100は、制御部110、動作検出部120、撮像モード選択部130、撮像制御部140、視線方向検出部150、ジェスチャ検出部160及び表示制御部170を備える。
【0067】
制御部110は、CPU(Central processing Unit)ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えた演算処理装置である。制御部110のROMには、制御装置110が実行する各種の制御に関する制御プログラムが格納されている。制御装置100の各部は、この制御プログラムによりその動作が制御される構成となっている。この制御プログラムの中には、後述する撮像モード制御処理に関する制御プログラムも含まれる。
【0068】
尚、この撮像モード制御処理に関する制御プログラムは、本発明に係る「コンピュータプログラム」の一例である。また、このROMは、本発明に係る「記録媒体」の一例である。
【0069】
尚、ROMは不揮発性記憶装置であるから、本実施例において、撮像モード制御処理に関する制御プログラムは、予め制御部110に備わるが、この制御プログラムは、RAM又は制御装置100に備わり得る他の揮発性記憶装置に書き込まれていてもよい。この場合、この制御プログラムのアップデート及びメンテナンス等が比較的簡便になされ得る。また、この制御プログラムをネットワークで配信する、或いは制御プログラムが記録された記録媒体を配布する等の措置を講じることも可能となる。
【0070】
動作検出部120は、撮像装置CMの撮像モードの切り替えを促す利用者1のトリガ動作を検出可能に構成された、本発明に係る「検出手段」の一例である。
【0071】
動作検出部120は、音声検出部121及びスイッチ状態検出部122を備える。
【0072】
音声検出部121は、利用者1の音声を集音するマイクロフォンと電気的に接続されており、当該音声に係る音声信号を分析して利用者1の発声内容を特定することができる。音声検出部121における音声解析には、公知の音声入力装置における音声解析手法を使用可能である。
【0073】
スイッチ状態検出部122は、利用者1が操作可能な操作スイッチと電気的に接続されており、当該操作スイッチの操作状態を特定することができる。この操作スイッチは、押下式のスイッチであっても、トグル式のスイッチであっても、レバー式のスイッチであってもよい。本実施例における操作スイッチは、オン動作に対応するオンスイッチと、オフ動作に対応するオフスイッチとを備える。オン動作及びオフ動作については後述する。
【0074】
撮像モード選択部130は、撮像装置CMの撮像モードを選択する、本発明に係る「選択手段」の一例である。
【0075】
撮像制御部140は、撮像装置CMの動作を制御する制御ユニットである。撮像制御部140は、撮像装置CMに内蔵された制御回路に制御信号を供給することにより撮像装置CMの動作を制御する。例えば、撮像制御部140は、撮像モード選択部130により一の撮像モードが選択された場合に、当該選択された撮像モードに対応する撮像領域が得られるように画角の制御信号を供給する。そして、供給された制御信号に従って画角の調整がなされた後に、撮像が開始されるように撮像制御信号を供給する。
【0076】
視線方向検出部150は、制御部110のRAMに一時的に格納される撮像装置CMの撮像結果から、利用者1の視線方向を検出可能に構成された画像処理回路である。撮像装置CMでは、後述するように、視線方向の検出が要求される場合、或いは、ジェスチャの検出が要求されない場合に、撮像モードが望遠モードに制御される。撮像装置CMの設置位置は固定されているから、利用者1(本実施例では車両の運転者)の着座位置や姿勢に応じた初期設定処理が行われた後は、望遠側撮像領域において撮像される利用者1の目(特に、瞳の周辺)の画像から、公知のアルゴリズムや演算式を用いて利用者1の視線方向を検出することができる。尚、視線方向の検出自体は、本発明との相関が薄いため、詳細な説明は省略する。
【0077】
ジェスチャ検出部160は、制御部110のRAMに一時的に格納される撮像装置CMの撮像結果から、利用者1のジェスチャを検出可能に構成された処理回路である。ジェスチャ検出部160におけるジェスチャ検出には、顔検出手法やパターン認識手法等、公知の各種画像解析手法を適用することができる。
【0078】
表示制御部170は、GPS(Global Positioning System)等から得られる測位情報を基に、ディスプレイDPに表示すべき情報を決定し、ディスプレイDPの制御を介して表示画面に情報を表示させる制御回路である。また、表示制御部170は、表示すべき情報の種類やレイアウトを含む、表示画面の画面構成を、利用者1の状態に応じて制御する構成となっている。ここで、「利用者1の状態」とは、視線方向検出部150により検出される利用者1の視線方向や、ジェスチャ検出部160により検出される利用者1のジェスチャ等を意味する。
【0079】
<実施例の動作>
これ以降、本実施例の動作について説明する。
【0080】
<情報表示システム10の基本動作>
本実施例に係る情報表示システム10は、一種のカーナビゲーションシステムであり、地図情報、施設情報、道路情報、事前に設定された目的地情報、設定経路情報及び位置情報等に基づいて、表示情報が決定されディスプレイDPに表示される。
【0081】
例えば、GPS信号等に基づいて現在位置及び進行方向が取得され、別途取得される地図情報から、現在位置及び進行方向が地図上の位置情報として表示される。一方、設定経路情報に基づいて近未来的な走行経路が予測され、その時点で何らかの検索条件が設定されていれば、この近未来的な走行経路において検索条件に合致する施設等の情報が表示される。例えば、検索条件として「飲食店」が設定されていれば、施設情報から車両の走行経路上の飲食店に関する情報が検索され、地図情報に重畳される形で表示画面に表示される。
【0082】
ここで、情報表示システム10は、このようなカーナビゲーションシステムとしての機能をベースとして、利用者1の視線方向及びジェスチャに応じた、最適な情報を表示することができる。
【0083】
例えば、利用者1の視線方向がディスプレイDPの特定の位置に対応している場合、その位置に利用者1の所望する情報を表示させることができる。また、例えば、利用者1が、指差し動作等のジェスチャによりディスプレイDPに表示された特定の情報を指し示している場合、該当する情報を拡大させる、或いは該当する情報に関するより詳細な情報を表示させることができる。このように、情報表示システム10では、利用者1の視線方向及びジェスチャが、情報の表示内容の決定に利用される。
【0084】
ここで、視線方向の検出には、利用者1の顔面、特に目の周辺の画像に相応の解像度が必要であり、ジェスチャの検出には利用者1の上半身を含む比較的広範囲の撮像領域が必要である。しかしながら、両者を満たすために撮像装置CMを広画角且つ高解像度とするとコストが増加する。このようなコストの増加を防ぎつつ視線方向の検出とジェスチャの検出とを両立するため、本実施例では、制御部110により撮像モード制御処理が実行される。撮像モード制御処理は、撮像装置CMの撮像領域を的確に制御するための処理である。
【0085】
<撮像領域の説明>
次に、
図3及び
図4を参照して、撮像装置CMの撮像領域について説明する。ここに、
図3は望遠側撮像領域を説明する図であり、
図4は広角側撮像領域を説明する図である。
【0086】
図3において、撮像装置CMの撮像モードとして望遠モードが選択され、撮像領域が望遠側撮像領域に制御されると、撮像領域の所定比率以上の部分が利用者1の顔面で占められる。従って、望遠側撮像領域において利用者1を撮像した画像は、利用者1の視線方向の検出に適した画像となる。
【0087】
尚、この望遠側撮像領域における顔面の比率(即ち、上記の所定比率)は、撮像装置CMと利用者1との距離、望遠モードにおける画角及びイメージセンサの光学的解像度(例えば、画素数)の三要素に応じて変化する。利用者1の目の周辺部分に、視線方向の検出に必要な解像度が得られる限りにおいて、これら三要素の組み合わせは自由に決定されてよい。
【0088】
一方、
図4において、撮像装置CMの撮像モードとして広角モードが選択され、撮像領域が広角側撮像領域に制御されると、撮像領域に利用者1の上半身が含まれる。即ち、撮像装置CMの画角が大きくなることによって、撮像領域は望遠側撮像領域よりも広くなる。従って、広角側撮像領域において利用者1を撮像した画像は、利用者1のジェスチャの検出に適した画像となる。
【0089】
尚、
図3及び
図4から明らかなように、広角側撮像領域は、望遠側撮像領域の全てを含む撮像領域である。また、広角側撮像領域は望遠側撮像領域から画角を変化させたものである。従って、広角側撮像領域においては、撮像装置CMのイメージセンサの光学的解像度が固定値であっても、利用者1の視線方向の検出に必要な利用者1の眼球周辺部の解像度は望遠側撮像領域と較べて低い。
【0090】
<撮像モード制御処理の説明>
次に、
図5を参照して、制御部110により実行される撮像モード制御処理の詳細について説明する。ここに、
図5は、撮像モード制御処理のフローチャートである。尚、撮像モード制御処理は、所定周期で繰り返し実行される処理である。
【0091】
図5において、制御部110は、トリガ動作判定処理を実行する(ステップS110)。トリガ動作判定処理は、利用者1のトリガ動作の有無及びその内容を判定する処理である。
【0092】
本実施例に係るトリガ動作は、利用者1が先述したジェスチャに基づく情報表示を所望する場合に行うオン動作と、利用者1がジェスチャに基づく情報表示の終了を所望する場合、所望するジェスチャに基づく情報表示が終了した場合及び視線方向に基づく情報表示を所望する場合等に行うオフ操作とから構成される。即ち、本実施例では、初期状態として望遠モードによる望遠側撮像領域が選択されており、ジェスチャによる情報表示が所望される場合に広角モードによる広角側撮像領域が選択される。但し、このような制御態様は、本願の本質とは関係がなく、如何様にも変更を加えることができる。トリガ動作の判定結果は、一時的にRAMに格納される。トリガ動作の詳細については後述する。
【0093】
トリガ動作の判定が終了すると、その時点の撮像装置CMの撮像モードが望遠モードであるか否かが判定される(ステップS120)。
【0094】
撮像モードが望遠モードに制御されている場合(ステップS120:YES)、制御部110は、ステップS110で判定されたトリガ動作が、オン動作であるか否かを判定する(ステップS130)。トリガ動作がオン動作に該当する場合(ステップ130:YES)、撮像モード選択部160により撮像モードとして広角モードが選択される(ステップS140)。広角モードが選択されると、ジェスチャ検出部160により広角側撮像領域の画像に基づいたジェスチャ検出が開始され(ステップS150)、撮像モード制御処理は終了する。尚、既に述べたように、撮像モード制御処理は、一定周期で繰り返し実行される。従って、実質的には、ジェスチャ検出が開始された後、ジェスチャ検出が継続されたまま処理はステップS110に戻される。
【0095】
一方、ステップS120において、現時点の撮像モードが広角モードである場合(ステップS120:NO)、制御部110は、ステップS110で判定されたトリガ動作が、オフ動作に該当するか否か、利用者1のジェスチャが終了したか否か、及び、利用者1のジェスチャが所定期間非検出であるか否かを判定する(ステップS160)。
【0096】
トリガ動作がオフ動作に該当するか、情報表示のためのジェスチャが終了したか、又は、利用者1のジェスチャが所定期間検出されない場合(ステップS160:YES)、撮像モード選択部160により撮像モードとして望遠モードが選択される(ステップS170)。望遠モードが選択されると、視線方向検出部150により望遠側撮像領域の画像に基づいた視線方向の検出が開始され(ステップS180)、撮像モード制御処理は終了する。尚、既に述べたように、撮像モード制御処理は、一定周期で繰り返し実行される。従って、実質的には、視線方向の検出が開始された後、視線方向の検出が継続されたまま処理はステップS110に戻される。
【0097】
また、ステップS160において、トリガ動作がオフ動作に該当せず、情報表示のためのジェスチャが終了しておらず、且つ、利用者1のジェスチャが検出されている場合(ステップS160:NO)、処理はステップS140に移行し、撮像モードが広角モードに維持される。
【0098】
また、ステップS130において、トリガ動作がオン動作に該当しない場合(ステップS130:NO)、処理はステップS170に移行し、撮像モードが望遠モードに維持される。撮像モード制御処理は、このように実行される。
【0099】
ここで、撮像モード制御処理の効果について説明する。
【0100】
<広角モードから望遠モードへの切り替え>
撮像モード制御処理において、ステップS130が「NO」側に分岐するか、ステップS160が「YES」側に分岐した場合、撮像モードが広角モードから望遠モードに切り替えられる。即ち、撮像領域が広角側撮像領域から望遠側撮像領域へ切り替えられる。この場合、撮像装置CMの撮像結果は、
図4に示す状態から
図3に示す状態へと変化する。
【0101】
<望遠モードから広角モードへの切り替え>
撮像モード制御処理において、ステップS130が「YES」側に分岐するか、ステップS160が「NO」側に分岐した場合、撮像モードが望遠モードから広角モードに切り替えられる。即ち、撮像領域が望遠側撮像領域から広角側撮像領域へ切り替えられる。この場合の撮像装置CMの撮像結果が
図6に例示される。
【0102】
図6において、(a)は、望遠側撮像領域において、オン動作としてのジェスチャが検出された状態を例示している。即ち、ここでは、トリガ動作の判定にジェスチャが利用されている。一方(b)は、このオン動作の判定を受けて、撮像モードが広角モードに切り替えられた状態を例示している。
【0103】
このように、本実施例に係る撮像モード制御処理によれば、トリガ動作の判定結果に基づいて、撮像装置CMの撮像モード(即ち、一義的に撮像領域)が、広角モードと望遠モードとのうち利用者1が所望する一方に迅速に切り替えられる。
【0104】
ここで、視線方向の検出には高解像度が必要であるが、画角が狭まり利用者1の顔面が相対的に拡大された望遠側撮像領域の画像においては、目付近の解像度を相対的に向上させることができる。一方で、利用者1の様々なジェスチャを検出する場合には、解像度よりも画角が必要である。従って、撮像装置CMが有する解像度は、ジェスチャ検出に適した広画角の撮像領域において目付近の要求解像度を満たそうとする場合と較べて低解像度でよく、視線方向の検出精度を担保したまま、性能の面からも画像処理負荷の面からも撮像装置CMに係るコストの増加を抑制することができる。
【0105】
即ち、本実施例に係る撮像モード制御処理によれば、一台の撮像装置で、コストの増加を抑制しつつ、ジェスチャの検出と視線方向の検出とを両立することができる。
【0106】
<トリガ動作のバリエーション>
ここで、トリガ動作について説明する。トリガ動作には、大別して下記(1)乃至(3)の三種類ある。本実施例に係る情報表示システム10では、これら三種類のトリガ動作のいずれもが利用可能であるが、無論、これらのうち一つだけが利用可能であってもよい。
【0107】
(1)利用者1の発声
(2)利用者1による操作スイッチの操作
(3)利用者1のジェスチャ
上記(1)に示される利用者1の発声は、音声検出部121により検出される。例えば、利用者1が「ジェスチャオン」等と発声した場合に、その音声が音声検出部121により検出され、制御部110により上述したオン動作に該当するとの判定が下される。また、利用者1が「ジェスチャオフ」等と発声した場合に、その音声が音声検出部121により検出され、制御部110により上述したオフ動作に該当するとの判定が下される。
【0108】
尚、本実施例の情報表示システム10のように、カーナビゲーション装置の分野では、音声認識装置が備わる構成は珍しくない。このように元々のシステムに音声認識装置が備わる場合については、マイクロフォン及び音声検出部121がコストの増加に繋がることはない。
【0109】
上記(2)に示される利用者1のスイッチ操作は、スイッチ状態検出部122により検出される。例えば、利用者1が上述したオンスイッチを操作した場合に、その旨がスイッチ状態検出部122により検出され、制御部110により上述したオン動作に該当するとの判定が下される。また、利用者1が上述したオフスイッチを操作した場合に、その旨がスイッチ状態検出部122により検出され、制御部110により上述したオフ動作に該当するとの判定が下される。或いは、本実施例の構成と異なり、単一のスイッチによりオン動作とオフ操作とを判定することもできる。即ち、スイッチがオン操作されていればオン動作であり、スイッチがオフ操作されていればオフ動作であるとの判定が成立する。或いは、オン動作に対応するスイッチのみを設け、ジェスチャが一定時間検出されなかった場合に自動的にオフ動作とする制御が行われてもよい。
【0110】
尚、操作スイッチは、トリガ動作の検出に特化して設けられるスイッチであるから、コストの面からは不利である。しかしながら、音声やジェスチャと較べてその検出は容易であり且つ正確である。
【0111】
上記(3)に示される利用者1のジェスチャは、ジェスチャ検出部160により検出される。ジェスチャがトリガ動作として利用される場合には、動作検出部120、マイクロフォン及び操作スイッチは必ずしも必要がなくなり、装置構成を簡素化することができる。
【0112】
ここで、トリガ動作としてのジェスチャには二種類ある。即ち、トリガ動作として予め設定されたジェスチャと、情報表示に利用されるジェスチャと区別されないジェスチャである。
【0113】
前者の場合、予めオン動作に相当するジェスチャとオフ動作に相当するジェスチャとを決定しておくことができるので、例えば、ハンドルHD上に手や手指を置く/離す等の簡素なジェスチャであっても、オン動作及びオフ動作に係る判定を下すことができる。但し、
図3に示したように、望遠側撮像領域の画角は狭いので、この場合、少なくともオン動作に関するジェスチャは、望遠側撮像領域内で設定される必要がある。尚、
図6に例示されるジェスチャも、望遠側撮像領域内で行われたオン動作としてのジェスチャの一例である。
【0114】
後者の場合、ジェスチャ検出部160によるジェスチャ検出機能が流用されるため、トリガ動作に特化したジェスチャを事前に設定しておく必要がない。従って、ジェスチャにある程度の自由度が確保される。
【0115】
但し、望遠側撮像領域におけるオン動作に相当するジェスチャは、当然ながら望遠側撮像領域内でなされる必要がある。即ち、本実施例では、画角の狭い望遠側撮像領域において確実にオン動作に相当するジェスチャを検出するための判定基準が用意されている。
【0116】
画角の狭い望遠側撮像領域では、利用者1が行い得るジェスチャは限定される。ここで、多くの場合、
図6(a)に例示されるように、ジェスチャにより利用者1の顔面は遮蔽される。このことを、ジェスチャによるトリガ動作判定に利用することができる。
【0117】
例えば、利用者1の頭部、顔の輪郭、目、鼻、口等、顔を構成するパーツが、利用者1の画像の中に含まれているかを判定することによって、オン動作に相当するジェスチャがなされているか否かを判定することができる。これらパーツが存在している場合には、撮像装置CMと利用者1の顔面との間に遮蔽物が存在しないことから、オン動作がなされていないとの判定が可能である。逆に、これらパーツが存在しない場合には、撮像装置CMと利用者1の顔面との間に遮蔽物が存在することから、オン動作がなされたとの判定が可能である。このようなトリガ動作の判定は、手指、手或いは腕等の複雑な動きの解析を伴うことなく実現し得るため、トリガ動作判定処理に係るトリガ動作の判定として好適である。
【0118】
しかしながら、このような判定手法は、以下のケースが存在するため、トリガ動作の判定精度が必ずしも十分でない。即ち、利用者1がオン動作を行っていないにもかかわらず上記パーツが遮蔽される第1のケースと、利用者1がオン動作を行っているにもかかわらず上記パーツが遮蔽されない第2のケースである。
【0119】
ここで、
図7を参照し、第1のケースについて説明する。ここに、
図7は、トリガ動作判定に係る第1のケースを説明する図である。
【0120】
図7において、利用者1は、左手を顔面付近まで動かし、腕時計で時刻を確認している。このような時刻確認動作は、情報表示システム10における情報表示とは何の関係もなく、ジェスチャに該当しない。
【0121】
ところが、この場合、利用者1の顔面が少なからず遮蔽されるため、上述した判定基準では、オン動作に該当するジェスチャであるとの判定が成立し得る。このため、望遠モードにより望遠側撮像領域が撮像される期間(上記ステップS120が「YES」側に分岐した場合)において、オン動作であるとの誤判定が生じ、上記ステップS130が「YES」側に分岐して撮像領域が広角側撮像領域に切り替わってしまう。
【0122】
図7では、このようにして視線方向を検出すべき期間において撮像領域が広角側撮像領域に切り替わった場合が示されている。この場合、撮像領域に占める利用者1の顔面の比率が低下することから、望遠モードと較べて顔面の解像度が低下することとなり、視線方向の検出精度が低下する。
【0123】
そこで、本実施例では、ステップS160にジェスチャ終了に関する判断要素が含まれている。即ち、広角側撮像領域への切り替わり後、所定期間に何らのジェスチャも存在しなければ、ジェスチャが終了したか、或いは、オン動作の誤判定が行われたものとして、撮像領域は望遠側撮像領域に復帰する。従って、第1のケースにおいても、情報表示システム10の機能が阻害されずに済む。
【0124】
次に、
図8を参照し、第2のケースについて説明する。ここに、
図8は、トリガ動作判定に係る第2のケースを説明する図である。
【0125】
図8において、利用者1は、右手でハンドルHDの左上方部に触れている。このような動作は、利用者1がジェスチャに基づく情報表示を所望するオン動作に該当するジェスチャである可能性がある。
【0126】
ところが、この場合、利用者1の顔面は全く遮蔽されないため、上述した判定基準では、オン動作に該当するジェスチャであるとの判定が成立しない。このため、望遠モードにより望遠側撮像領域が撮像される期間(上記ステップS120が「YES」側に分岐した場合)において、オン動作でないとの誤判定が生じ、上記ステップS130が「NO」側に分岐して撮像領域が望遠側撮像領域に維持されてしまう。
【0127】
そこで、本実施例では、ステップS110のトリガ動作判定処理における判定基準に、上述した利用者1の顔面のパーツが遮蔽されていることに加え、運転操作以外の用途で利用者1がハンドルHDに触れていることが加えられる。即ち、この判定基準が適用された場合には、
図8に例示される動作がオン動作であると判定される。
図8には、このようにしてジェスチャを検出すべき期間において撮像領域が広角側撮像領域に正常に切り替わった状態が示されている。
【0128】
ところで、
図8に示される動作は、必ずしもオン動作でない可能性もある。即ち、通常のハンドル操作とトリガ動作としてのオン動作とを正確に切り分けることは、必ずしも容易ではない。ハンドルHDへの接触がオン動作であると誤判定された場合、第1のケースと同様に、撮像領域に占める利用者1の顔面の比率が低下することから、視線方向の検出精度が低下する。
【0129】
しかしながら、このような場合については、第1のケースと同様に、ジェスチャの非検出により所定のインタバルを経て撮像モードは広角モードから望遠モードに切り替わるので問題はない。
【0130】
ところで、トリガ動作判定処理においては、オン動作が生じたとする誤判定よりも、オン動作が生じていないとする誤判定の方が大きな問題である。即ち、前者であれば、上述したように、その後のジェスチャが非検出となることから撮像モードが望遠モードに切り替わるといったフェールセーフ機能が発動する。これに対し、後者の場合、広角モードに切り替わるべき場合に広角モードに切り替わらないことから、その後に引き続く利用者1のジェスチャが撮像領域外の動作となって、望遠モードが継続されてしまう。即ち、ジェスチャに基づく情報表示が機能しなくなる可能性がある。
【0131】
このような問題に対処するため、ステップS110におけるトリガ動作判定処理では、オン動作が発生したとの判定が下され易くなっている。例えば、オン動作に該当するか否かが不明確である場合は、全てオン動作が発生している旨の判定が下される構成となっている。即ち、撮像装置CMの撮像モードは、このような対策が講じられない場合と較べて広角モードに切り替わり易い。
【0132】
しかしながら、望遠モードにおいて利用者1のジェスチャが撮像領域外となるのと異なり、広角モードにおける広角側撮像領域には利用者1の顔面が含まれる。従って、検出精度は低下しても、利用者1の視線方向の検出は不可能ではない。以上のことから、このようなオン動作判定に対する相対的な重み付けは有効である。また、オン動作の誤判定であっても、上述したフェールセーフ機能により、相応の時間経過の後に撮像モードは望遠モードに復帰する。この点においても、当該重み付けは有効である。
【0133】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う撮像システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。