特許第6039085号(P6039085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039085
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】放熱塗料組成物および放熱構造体
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20161128BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161128BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   C09D163/00
   C09D7/12
   B32B27/04 Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-534380(P2015-534380)
(86)(22)【出願日】2013年9月23日
(65)【公表番号】特表2015-537063(P2015-537063A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】KR2013008491
(87)【国際公開番号】WO2014051295
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年3月27日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0109475
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ユン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヘ・ド
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ソ・イ
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/142036(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0013914(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0032811(KR,A)
【文献】 特開2008−303263(JP,A)
【文献】 特開2007−262254(JP,A)
【文献】 特開2000−303021(JP,A)
【文献】 特開2002−166492(JP,A)
【文献】 特開2001−342379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B32B 27/00− 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
硬化剤と、
アミン基、アミド基、カルボキシル基およびヒドロキシ基からなる群より選択された1種以上を含む官能基が結合されている炭素系フィラーと、
媒をみ、
炭素系フィラーは、単一壁炭素ナノチューブ、二重壁炭素ナノチューブ、多重壁炭素ナノチューブ、グラフェン、グラフェンオキシド、グラフェンナノプレートおよびグラファイトからなる群より選択された1種以上を含む、放熱塗料組成物。
【請求項2】
炭素系フィラーの表面に、前記官能基が直接結合されているか、または炭素数1〜20のアルキレンを介して前記官能基が結合されている、請求項1に記載の放熱塗料組成物。
【請求項3】
炭素系フィラーは、下記の化学式1で表される、請求項1に記載の放熱塗料組成物。
【化1】
(前記化学式1中、
は、前記炭素系フィラーに一つ以上結合された官能基であって、互いに同一または異なり、−R−NHR、−R−C(=O)−NHR、−R−C(=O)−OH、−R−OHおよび−R−NH−C(=O)Rからなる群より選択され、
は、互いに同一または異なり、単一結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、
は、互いに同一または異なり、水素または炭素数1〜20のアルキルである。)
【請求項4】
溶媒は、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミン系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒およびフラン系溶媒からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の放熱塗料組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂の5〜50重量%と、
硬化剤の0.1〜20重量%と、
アミン基、アミド基、カルボキシル基およびヒドロキシ基からなる群より選択された1種以上を含む官能基が結合されている炭素系フィラーの0.05〜5重量%と、
残量の溶媒と、
を含む、請求項1に記載の放熱塗料組成物。
【請求項6】
分散剤、レベリング剤、分散補助剤、pH調節剤、沈降防止剤、界面活性剤、湿潤剤および増粘剤からなる群より選択された1種以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の放熱塗料組成物。
【請求項7】
硬化剤は、ポリアミドおよびアミドアミン、変性脂肪族アミン、変性脂環族アミン硬化剤、変性芳香族アミン形態のイミダゾール系硬化剤を含む、請求項1に記載の放熱塗料組成物。
【請求項8】
エポキシ基が開環して架橋構造をなしているエポキシ樹脂の硬化物と、
アミン基、アミド基、カルボキシル基およびヒドロキシ基からなる群より選択された1種以上を含む官能基が結合されている炭素系フィラーをみ、
炭素系フィラーは、単一壁炭素ナノチューブ、二重壁炭素ナノチューブ、多重壁炭素ナノチューブ、グラフェン、グラフェンオキシド、グラフェンナノプレートおよびグラファイトからなる群より選択された1種以上を含む、放熱構造体。
【請求項9】
前記炭素系フィラーは、前記エポキシ樹脂の硬化物内に分散されている、請求項に記載の放熱構造体。
【請求項10】
前記炭素系フィラーに結合された官能基は、前記エポキシ基由来酸素と水素結合を形成している、請求項に記載の放熱構造体。
【請求項11】
プラスチック基材、金属基材または繊維基材上に形成されている、請求項に記載の放熱構造体。
【請求項12】
LEDランプ、凝縮器、蒸発器、エンジン、ヒーター、ボイラー配管、通信装備、モータ、バッテリー、ハウジング材料、電極材料、半導体、ゲーム機、ディスプレイ、携帯電話、家電製品、自動車、建築・医療機器、船舶、飛行機、宇宙航空機器、軍事施設および装備または熱交換器において放熱層を形成するために用いられる、請求項に記載の放熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱塗料組成物および放熱構造体に関する。より具体的には、本発明は、多様な製品に優れた放熱性と共に、優れた耐塩水性、膜強度、付着性または耐スクラッチ性などを有する放熱層の形成を可能にする放熱塗料組成物および放熱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などにLEDヘッドランプの適用が増加することによってランプの温度を低めようとする技術的な努力が先行されている。特に、LED素子は、温度に対して非常に敏感な半導体素子であり、駆動時に温度上昇による寿命短縮、誤作動の問題が深刻に発生することがある。そのため、前記LEDヘッドランプなどの温度上昇を抑制して寿命を延長させ、誤作動を抑制することが一層要求されている。
【0003】
現在まではこのようなLEDヘッドランプなどの温度上昇を抑制するために、ランプとブラケットの間のファンを通じて放熱特性を実現した場合が大部分であった。しかし、このような放熱構造では、ランプの寿命に比べてファンの寿命が短く、騒音、埃の発生などの問題と頻繁な故障の原因になって、高価のLEDヘッドランプを交換しなければならないなどの問題点が発生した。
【0004】
そこで、ファンなどの機械的構造物を用いることなく、LEDヘッドランプなどの周囲で発生する熱を適切に放出させてその温度上昇を抑制することによって、ランプの寿命をより長くする技術の開発が継続して要求されてきた。
【0005】
最近は、前記LEDヘッドランプなどの周囲に放熱塗料組成物を用いて放熱層などを放熱構造体を形成することによって、上述した効果を得るための試みが行われた。しかし、このような効果を好適に実現できるように、優れた放熱性と共に、優れた耐塩水性、膜強度、付着性または耐スクラッチ性などを有する放熱層の形成を可能にする放熱塗料組成物はまだ良好に具現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】KR10−1142269 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、LEDヘッドランプなど多様な製品に優れた放熱性と共に、優れた耐塩水性、膜強度、付着性または耐スクラッチ性などを有する放熱層の形成を可能にする放熱塗料組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、前記放熱塗料組成物から形成されて、優れた放熱性と共に、優れた耐塩水性、膜強度、付着性または耐スクラッチ性などを有する放熱層など放熱構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、アミン基、アミド基、カルボキシル基およびヒドロキシ基からなる群より選択された1種以上を含む官能基が結合されている炭素系フィラーと、溶媒と、を含む放熱塗料組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、エポキシ基が開環して架橋構造をなしているエポキシ樹脂の硬化物と、アミン基、アミド基、カルボキシル基およびヒドロキシ基からなる群より選択された1種以上を含む官能基が結合されている炭素系フィラーと、を含む放熱構造体を提供する。
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る放熱塗料組成物および放熱構造体について説明する。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、エポキシ樹脂と、硬化剤と、アミン基、アミド基、カルボキシル基およびヒドロキシ基からなる群より選択された1種以上を含む官能基が結合されている炭素系フィラーと、溶媒と、を含む放熱塗料組成物が提供される。
【0013】
このような放熱塗料組成物は、例えば、末端などに一つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂および硬化剤と共に、水素結合可能な特定の官能基が表面結合されている炭素系フィラーを含む。このような放熱塗料組成物をLEDヘッドランプなど放熱が必要な製品の周囲に塗布し、硬化を進行すれば、下記反応式1のようにエポキシ樹脂中のエポキシ基が開環して硬化剤との相互作用によりエポキシ基同士で架橋構造をなすことができる。これによって、エポキシ樹脂の硬化物およびこれを含む放熱層など放熱構造体が形成され得る。
【0014】
【化1】
【0015】
特に、このような放熱構造体のエポキシ樹脂硬化物内には、前記特定の官能基が表面結合されている炭素系フィラーが均一に分散され得るが、このような炭素系フィラーの特定の官能基と、前記架橋構造をなしているエポキシ基由来酸素とが水素結合を形成することができると予測される。このように水素結合を形成した結合形態の概略的な化学構造は、下記反応式2で表されたとおりである。
【0016】
【化2】
【0017】
このような水素結合の形成など炭素系フィラーと、エポキシ樹脂との相互作用により、前記放熱層など放熱構造体内において、前記炭素系フィラーは、エポキシ樹脂およびその硬化物とより優れた混和性を示すことができ、このような炭素系フィラーがより均一に放熱構造体内に分散されることによって、さらに優れ、且つ均一な効果を示すことができる。
【0018】
その結果、前記一実施形態の放熱塗料組成物から得られた放熱構造体は、前記熱伝導性および放熱性素材である炭素系フィラーなどによるさらに優れた効果が発現して優れた放熱特性を示すことができ、このような放熱層など放熱構造体は、エポキシ樹脂と、炭素系フィラーとの間の優れた混和性などにより優れた耐塩水性、膜強度、基材付着性、耐スクラッチ性および硬度などの向上した諸般物性を示すことができる。
【0019】
結局、一実施形態の放熱塗料組成物を用いて、LEDヘッドランプの周囲にファンなどの機械的放熱構造物を形成することもなく、これから発生する熱を効果的に放出させて温度上昇を抑制することができ、その結果、前記LEDヘッドランプの寿命をより向上させることができる。また、このような一実施形態の放熱塗料組成物は、凝縮器、蒸発器、エンジン、ヒーター、ボイラー配管、通信装備、モータ、バッテリー、ハウジング材料、電極材料、半導体、ゲーム機、OLED素子などのディスプレイ、携帯電話、家電製品、自動車、建築・医療機器、船舶、飛行機、宇宙航空機器、軍事施設および装備または熱交換器などの周囲に優れた放熱特性その他諸般物性を示す放熱層などの放熱構造体の形成を可能にする。
【0020】
一方、上述した一実施形態の放熱塗料組成物において、硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させることができる多様な硬化剤成分を用いることができ、例えば、イミダゾール系硬化剤を用いることができる。
【0021】
また、前記放熱塗料組成物において、前記炭素系フィラーは、放熱性および熱伝導性などを示すと知られた任意の炭素系フィラー、例えば、単一壁炭素ナノチューブ、二重壁炭素ナノチューブ、多重壁炭素ナノチューブ、グラフェン、グラフェンオキシド、グラフェンナノプレート、グラファイト、カーボンブラックまたは炭素−金属複合体などになることができる。そして、このような炭素系フィラーに結合された官能基は、アミン基、アミド基、カルボキシル基またはヒドロキシ基を構造中に含む任意の官能基になることができるが、このような官能基は、炭素系フィラーの表面に直接結合されているか、または炭素数1〜20のアルキレンなどのリンカーを介して結合されていてもよい。
【0022】
このような官能基が結合された炭素系フィラーは、例えば、下記の化学式1で表される化学構造を有することができる。
【0023】
【化3】
【0024】
前記化学式1中、Rは、前記炭素系フィラーに一つ以上結合された官能基であって、互いに同一または異なり、−R−NHR、−R−C(=O)−NHR、−R−C(=O)−OH、−R−OHおよび−R−NH−C(=O)Rからなる群より選択され、
は、互いに同一または異なり、単一結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、
は、互いに同一または異なり、水素または炭素数1〜20のアルキルである。
【0025】
前記炭素系フィラーがこのような構造を有することによって、一実施形態の放熱塗料組成物から形成された放熱構造体がより優れた放熱特性および混和性を示して、その物性がより向上することができる。
【0026】
一方、前記一実施形態の放熱塗料組成物において、前記溶媒としては、各成分の適切な溶解を可能にする任意の溶媒を用いることができ、例えば、水などの水系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミン系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒およびフラン系溶媒からなる群より選択された1種以上を用いることができる。
【0027】
また、前記放熱塗料組成物は、エポキシ樹脂の5〜50重量%と、硬化剤の0.1〜20重量%と、アミン基、アミド基、カルボキシル基およびヒドロキシ基からなる群より選択された1種以上を含む官能基が結合されている炭素系フィラーの0.05〜5重量%と、残量の溶媒と、を含むことができ、このような含量範囲により前記組成物の塗布性、エポキシ樹脂と炭素系フィラー間の混和性および炭素系フィラーによる放熱特性などが最適化されて、前記組成物から形成された放熱構造体がより優れた特性を示すことができる。
【0028】
付加して、一実施形態の組成物は、上述した各構成成分以外にも、通常の添加剤、例えば、分散剤、レベリング剤、分散安定剤、pH調節剤、沈降防止剤、界面活性剤、湿潤剤および増粘剤からなる群より選択された1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0029】
このような添加剤中の分散剤としては、以前から炭素系フィラーなどを含む塗料組成物または樹脂組成物に使用可能であると知られた任意の分散剤を特別な制限なしに全て用いることができる。このような分散剤の代表的な例としては、変性アクリレート系分散剤;変性ポリウレタンアクリルコポリマー分散剤;ポリアセタール系分散剤;アクリル酸、メチルメタクリレート、アルキル(C1〜C10)アクリレート、ビニルアクリレート、または2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリル系分散剤;ポリカーボネート系分散剤;スチレンまたはアルファメチルスチレンなどのスチレン系分散剤;ポリエステル系分散剤;ポリフェニレンエーテル系分散剤;ポリオレフィン系分散剤;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体分散剤;ポリアリレート系分散剤;ポリアミド系分散剤;ポリアミドイミド系分散剤;ポリアリールスルホン系分散剤;ポリエーテルイミド系分散剤;ポリエーテルスルホン系分散剤;ポリフェニレンスルフィド系分散剤;ポリイミド系分散剤;ポリエーテルケトン系分散剤;ポリベンゾオキサゾール系分散剤;ポリオキサジアゾール系分散剤;ポリベンゾチアゾール系分散剤;ポリベンズイミダゾール系分散剤;ポリピリジン系分散剤;ポリトリアゾール系分散剤;ポリピロリジン系分散剤;ポリジベンゾフラン系分散剤;ポリスルホン系分散剤;ポリウレア系分散剤;ポリウレタン系分散剤;またはポリホスファゼン系分散剤;などが挙げられ、これらの中で選択された2種以上の混合物または共重合体を用いることもできる。
【0030】
また、前記レベリング剤としては、製品名BYK系列などと知られた添加剤を代表的に用いることができ、その他多様なレベリング剤を用いることができる。そして、前記分散安定剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、湿潤剤またはぬれ性向上剤などを用いることができ、その他樹脂組成物または塗料組成物中で、炭素系フィラーなどの分散性を安定化させることができると知られた任意の添加剤を用いることができる。このような各添加剤としては、当業界に知られているかまたは商業的に入手可能なものを全て用いることができる。
【0031】
上述した一実施形態の組成物は、 アルミニウムヒートシンク(Al heat sink)などの金属基材やプラスチック基材または繊維基材など任意の基材に付着性が良好に適用可能であり、上述したLEDヘッドランプなどの素子だけでなく、凝縮器、蒸発器、エンジン、ヒーター、ボイラー配管、通信装備、モータ、バッテリー、ハウジング材料、電極材料、半導体、ゲーム機、OLED素子などのディスプレイ、携帯電話、家電製品、自動車、建築・医療機器、船舶、飛行機、宇宙航空機器、軍事施設および装備または熱交換器などの周囲に優れた放熱特性その他諸般物性を示す放熱層などの放熱構造体を形成するために適用され得る。
【0032】
一方、本発明の他の実施形態により、上述した放熱塗料組成物から形成された放熱構造体が提供される。このような放熱構造体は、エポキシ基が開環して架橋構造をなしているエポキシ樹脂の硬化物と、アミン基、アミド基、カルボキシル基およびヒドロキシ基からなる群より選択された1種以上を含む官能基が結合されている炭素系フィラーと、を含むことができる。このような放熱構造体において、前記炭素系フィラーは、前記エポキシ樹脂の硬化物内に均一に分散されていてもよく、特に、エポキシ樹脂の硬化物との優れた混和性により、より均一に分散されて優れた特性を示すことができる。したがって、前記放熱構造体は、優れた放熱特性だけでなく、優れた混和性などにより優れた耐塩水性、膜強度、基材付着性、耐スクラッチ性および硬度などの向上した諸般物性を示すことができるのは上述したとおりである。このような優れた特性は、前記炭素系フィラーに結合された官能基が、前記エポキシ樹脂の硬化物中のエポキシ基由来酸素と水素結合などを通じて相互作用しているためであると予測され得る。
【0033】
このような放熱構造体は、上述したLEDヘッドランプなどの素子だけでなく、凝縮器、蒸発器、エンジン、ヒーター、ボイラー配管、通信装備、モータ、バッテリー、ハウジング材料、電極材料、半導体、ゲーム機、OLED素子などのディスプレイ、携帯電話、家電製品、自動車、建築・医療機器、船舶、飛行機、宇宙航空機器、軍事施設および装備または熱交換器などの多様な製品に適用されてもよく、優れた放熱特性その他諸般物性を示すことができ、上述した一実施形態の塗料組成物から形成された放熱層などの形態を有することができる。
【発明の効果】
【0034】
前述のように、本発明によれば、優れた放熱特性と共に、優れた耐塩水性、膜強度、基材付着性、耐スクラッチ性および硬度などの向上した諸般物性を示す放熱構造体の提供を可能にする放熱塗料組成物が提供される。
【0035】
したがって、このような放熱塗料組成物を用いて、LEDヘッドランプの周囲にファンなどの機械的放熱構造物を形成することもなく、これから発生する熱を効果的に放出させて温度上昇を抑制することができ、その結果、前記LEDヘッドランプの寿命をより向上させることができる。
【0036】
また、本発明の放熱塗料組成物は、凝縮器、蒸発器、エンジン、ヒーター、ボイラー配管、通信装備、モータ、バッテリー、ハウジング材料、電極材料、半導体、ゲーム機、OLED素子などのディスプレイ、携帯電話、家電製品、自動車、建築・医療機器、船舶、飛行機、宇宙航空機器、軍事施設および装備または熱交換器などの周囲に優れた放熱特性その他諸般物性を示す放熱層などの放熱構造体の形成を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施例で放熱特性を測定するための方法および装置構成を概略的に示した図面である。
図2】実施例1および2の放熱塗料組成物でコーティングされたAlプレートと、比較例1のコーティングされていないAlプレートとにおいて放熱特性を比較して示したグラフである。
図3】比較例2の放熱塗料組成物でコーティングする場合、塗膜状態が不良であることを示した図面である。
図4】実施例1、実施例2および比較例2の放熱塗料組成物のコーティング時、塗膜の表面特性および耐塩水性の評価結果をそれぞれ示した図面である。
図5】実施例2、比較例3および4の放熱塗料組成物のコーティング時、塗膜の表面特性および耐塩水性の評価結果をそれぞれ示した図面である。
図6】実施例2の放熱塗料組成物を用いて多様なヒートシンク構造で放熱性能の確認時、実際適用したヒートシンク構造(多様なピンの厚さおよびピッチを適用)を概略的に示した図面である。
図7図6の放熱性能の評価結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の理解のために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲は下記の実施例に限定されない。
【0039】
[製造例1]
多重壁CNT10gを蒸溜水990gと混合してCNT溶液を準備した。前記CNT溶液を30g/min流速で予熱槽に投入する前、これと共に245atm〜252atmに圧縮された気相状態の酸素は0.8g/minの流速でCNT溶液と混合され、前記混合液は200〜260℃に予熱された予熱槽に投入された。
【0040】
前記予熱された混合液は、350℃の温度および230atm〜250atmの亜臨界水状態の表面処理反応器に注入されて表面処理された。表面処理反応中に表面処理反応器の入口を基準に4/5地点で230〜250atmの圧力と300〜350℃の温度でアンモニア水が0.20g/minの流速で高圧注入された。前記表面処理された生成物は、再び200℃に1次冷却後、再び約25℃の温度に冷却した後、連続的に表面処理された9.8gの生成物を得た。
【0041】
[製造例2]
前記の製造例1と同様な方法で製造された官能化されたCNT30gと変性ポリアクリレート系分散剤90gとMEK(Methyl Ethyl Ketone)と1−プロパノールの混合液880gを撹拌機を通じて混合および分散してCNT分散液を製造した。
【0042】
[製造例3]
エポキシ樹脂(製造会社:国都化学、製品名:YD128)46gと、レベリング剤0.2g、MEK11.6g、1−プロパノール14.6gを混合した後、10分間混合した。混合液に製造例2のCNT分散液を23g混合してミキシングした。この後、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2−ethyl−4−methylimidazole)を4.6g混合後、再び10分間ミキシングして放熱塗料組成物を製造した。このように製造された放熱塗料組成物の最終の組成は、下記表1に示されたとおりである。
【0043】
【表1】
【0044】
[実施例1]
製造例3の放熱塗料組成物を実施例1の組成物として用い、これを横×縦×厚さが70×70×1の厚さを有する表面処理されていないアルミニウム試片に厚さ10umにスプレーコーティングした。硬化条件は130℃、30分間オーブンで進行した。
【0045】
また、CNT放熱塗料組成物がコーティングされたアルミニウム試片を用いて放熱効果測定のための装置に装着した。このような装置の概略化された図面は、図1に示されたとおりであり、サーモカップル(thermocouple)をLED PCBに付着して温度測定を行った。電力(Watt)は20Wを入力し、温度変化を観察した。
【0046】
[実施例2]
前記の製造例2と同様な方法で分散液を製造し、分散補助剤として変性ポリアクリレート系分散剤の代わりに変性ポリウレタン系分散剤90gを追加し、製造例3と同様な方法で実施例2の放熱塗料組成物を製造した。
【0047】
このような実施例2の放熱塗料組成物に対して実施例1と同様な方法で温度変化を観察して前記放熱塗料組成物の放熱効果を評価した。
【0048】
[比較例1]
コーティングされていない裸(bare)のアルミニウム試片を用いたことを除いては、実施例1と同様な方法で温度変化を測定して放熱効果を評価した。
【0049】
[比較例2]
エポキシ46gとレベリング剤0.2g、MEK12.6g、1−プロパノール15.9gを混合後、10分間攪拌した。混合液に官能化されていないCNT分散液23gを混合してミキシングした後、2−エチル−4−メチルイミダゾールを2.3g追加して再び10分間混合した。この後、製造例3と同様な方法で比較例2の放熱塗料組成物を製造した。
【0050】
製造された比較例2の放熱塗料組成物から実施例1と同様な方法で温度変化を測定して放熱塗料組成物の放熱効果を評価した。
【0051】
[比較例3]
前記の製造例1と同様な方法で製造された官能化されたCNT30gに、変性ポリアクリレート系分散剤90gおよび分散安定剤として非イオン性フッ素系添加剤である2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールエトキシレート(2,5,8,11−Tetramethyl−6−dodecyn−5,8−Diol Ethoxylate)4gを追加して蒸溜水876gと混合後、分散液を製造した。
【0052】
前記CNT分散液50.0gと3−アミノプロピルトリエトキシシラン系(3−Aminopropyltriethoxysilane)バインダー2.0g、シラン系レベリング剤13.3gと蒸溜水34.7gを混合して比較例3の放熱塗料組成物を製造した。
【0053】
このような比較例3の放熱塗料組成物に対して、実施例1と同様な方法で温度変化を測定して前記放熱塗料組成物の放熱効果を評価した。
【0054】
[比較例4]
前記比較例3のCNT分散液と同様に製造後、CNT分散液66gと水系変性アクリルウレタン系バインダーと共重合ウレタンバインダー混合液24gとシリコン系バインダー8g、シラン系レベリング剤0.1g、イソプロピルアルコール1.9gを混合して比較例4の放熱塗料組成物を製造した。
【0055】
このような比較例3の放熱塗料組成物に対して、実施例1と同様な方法で温度変化を測定して前記放熱塗料組成物の放熱効果を評価した。
【0056】
前記実施例1、2および比較例1で測定された放熱特性に関するグラフは、図2に示されたとおりである。図2を通じて、実施例の放熱塗料組成物から形成された放熱層を付加すれば、優れた放熱特性が発現することを確認した。しかし、比較例2は、塗膜状態が不良であり、スプレーコーティング時にノズルが詰まる現象が頻繁に発生したため、放熱特性の評価実施が不可能であった。図3を通じて、このような現象を確認することができる。
【0057】
一方、実施例1、2、比較例1および2で得られた試片で、塗膜の塗料安定性および表面特性、放熱層の付着性(JIS D0202;<M2.5)、耐塩水性(240hr、約30℃、5%塩水濃度;ASTM B117)、鉛筆硬度および耐スクラッチ性(ASTM D 3363−92a)をそれぞれ評価した。図4には実施例1、2および比較例2の塗膜表面特性および耐塩水性の評価結果を比較して示し、各物性の測定結果は下記表2および3に共に示した。
【0058】
下記表2および3で、表面特性、付着性および耐塩水性は、次の評価基準により評価して示した。
【0059】
*評価基準:
表面特性:肉眼評価(図4のような写真で肉眼評価して判別する)。
付着性:ASTM D 3359により、付着性に優れた場合である5Bから付着性が劣悪な0Bの6段階に区分され、定量的に判断して表2などに示した。
耐塩水性:ASTM規格により、特定時間でコーティング表面が塩化される程度を肉眼で評価および判断する(図4のような写真で肉眼評価して判別する)。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
前記表2および3と図4を参照すれば、実施例の試片では、放熱層の優れた硬度、耐塩水性、付着性および表面特性などが具現されたことが確認され、塗料の分散安定性もより優れていることが確認された。
【0063】
一方、実施例2と比較例3および4で測定された放熱特性に関する比較は、下記表4に示したとおりである。また、塗料安定性および表面特性、放熱層の付着性(JIS D0202;<M2.5)、耐塩水性(240hr、約30℃、5%塩水濃度;ASTM B117)、鉛筆硬度および耐スクラッチ性(ASTM D 3363−92a)などに対しても互いに比較して下記表4に共に示し、図5には実施例2と比較例3および4の塗膜表面特性および耐塩水性の評価結果を比較して示した。
【0064】
実施例2と比較例3および4は、類似した放熱効果を奏するが、実施例2だけが耐塩水性が発現することを確認した。
【0065】
【表4】
【0066】
最後に、実施例2の放熱塗料組成物を多様なヒートシンク構造に適用して放熱性能を確認した。より具体的に、図6に示されたヒートシンク構造において、ピンの厚さおよびピッチを多様に変更しながら放熱性能を確認し、その確認および評価結果は下記表5および図7にまとめた。表5および図7を参照すれば、実施例の放熱塗料組成物を用いる場合、多様なヒートシンク構造において優れた放熱効果が具現され、最適の設計としては、ピンの厚さ1mm、ピッチ6mmで最も優れた放熱効果が具現されることを確認することができた。
【0067】
【表5】
図1
図2
図6
図7
図3
図4
図5