特許第6039087号(P6039087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039087
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】プロセス変数測定ノイズ診断
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   G05B23/02 V
【請求項の数】22
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-534580(P2015-534580)
(86)(22)【出願日】2013年9月23日
(65)【公表番号】特表2015-530675(P2015-530675A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】US2013061170
(87)【国際公開番号】WO2014052232
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】13/631,048
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】ラド,ジェイソン,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルスタッド,ローレン,エム.
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−281307(JP,A)
【文献】 特開2010−009344(JP,A)
【文献】 特開2011−202998(JP,A)
【文献】 特開2009−181431(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0121790(US,A1)
【文献】 米国特許第07821437(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス変数送信機であって
プロセス変数を感知するセンサによって提供されるセンサ信号を受信し、該センサ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル(A/D)変換器と、
前記デジタル信号を受信し、該デジタル信号を表す測定出力を提供するプロセッサと、
前記センサ信号を受信し、ポジティブ閾値に関連するポジティブノイズイベントの数を表す第1の値、及びネガティブ閾値に関連するネガティブノイズイベントの数を表す第2の値を生成するノイズ検出器を備え、
前記プロセッサは、前記第1の値及び前記第2の値に基づいて、ノイズのカウントを評価して、検出されたノイズを表すノイズ出力を生成するプロセス変数送信機。
【請求項2】
前記ノイズ検出器は、
前記センサ信号を受信し、前記ポジティブ閾値をポジティブ電圧閾値として生成するポジティブノイズ閾値生成器と、
前記センサ信号を受信し、前記ネガティブ閾値をネガティブ電圧閾値として生成するネガティブノイズ閾値生成器を備える請求項1に記載のプロセス変数送信機。
【請求項3】
前記ノイズ検出器は、さらに、
前記センサ信号、クロック入力、前記ポジティブ電圧閾値を受信し、前記センサ信号が前記ポジティブ電圧閾値をポジティブ方向に超えた時に、前記クロック信号の各クロックパルスによってポジティブカウントを累積するポジティブノイズカウンタを備える請求項2に記載のプロセス変数送信機。
【請求項4】
前記センサ信号、クロック入力、前記ネガティブ電圧閾値を受信し、前記センサ信号が前記ネガティブ電圧閾値をネガティブ方向に超えた時に、前記クロック信号の各クロックパルスによってネガティブカウントを累積するネガティブノイズカウンタを備える請求項3に記載のプロセス変数送信機。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記ポジティブ及びネガティブノイズカウントに基づいて、前記ノイズ出力を生成する請求項4に記載のプロセス変数送信機。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記ポジティブ及びネガティブノイズカウントに基づいて、前記ノイズ出力をノイズの特性として生成する請求項5に記載のプロセス変数送信機。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記A/D変換器が前記センサ信号を前記デジタル信号に変換した時に前記ノイズ検出器によって検出されたノイズを特性化してそのノイズ特性を出力する請求項6に記載のプロセス変数送信機。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記ポジティブ及びネガティブノイズカウントを分析し、前記ノイズ出力を生成して、ノイズ対称性、ノイズ頻度及びノイズレベルを識別する請求項6に記載のプロセス変数送信機。
【請求項9】
前記A/D変換器は、安定化時間の間、前記センサ信号を前記デジタル信号に変換し、前記プロセッサは、前記ノイズ出力を生成して、前記安定化時間が測定不正確性に寄与しているか否かを識別する請求項7に記載のプロセス変数送信機。
【請求項10】
前記プロセッサは、時間に対する前記ノイズの特性に基づいて、前記プロセス変数送信機に対するノイズプロファイルを生成する請求項6に記載のプロセス変数送信機。
【請求項11】
前記プロセッサは、蓄積キャパシタを横切る前記センサ信号を間欠的にラッチし、前記ポジティブ及びネガティブノイズ閾値生成器は、前記センサ信号として、前記蓄積キャパシタを横切る電圧を受ける請求項2に記載のプロセス変数送信機。
【請求項12】
前記ノイズ検出器は、さらに、
リフレッシュカウンタを備え、前記プロセッサは、前記リフレッシュカウンタからの出力に基づいて前記蓄積キャパシタにラッチされた前記センサ信号をリフレッシュする請求項11に記載のプロセス変数送信機。
【請求項13】
前記ノイズ検出器は、前記A/D変換器の一部である請求項1に記載のプロセス変数送信機。
【請求項14】
前記ノイズ検出器は、前記A/D変換器とは別のものである請求項1に記載のプロセス変数送信機。
【請求項15】
前記プロセッサは、プロセス制御ループ上に前記測定出力を提供する請求項1に記載のプロセス変数送信機。
【請求項16】
前記センサは、抵抗温度デバイス及び熱電対からなる群から選択された少なくとも一つの温度センサを含む請求項1に記載のプロセス変数送信機。
【請求項17】
前記ノイズ出力は、ラインノイズを表す請求項1に記載のプロセス変数送信機。
【請求項18】
前記ノイズ検出器は、複数のセンサ信号からノイズを監視する請求項1に記載のプロセス変数送信機。
【請求項19】
プロセス変数送信機でプロセス変数を感知する方法であって、
センサから前記プロセス変数を表すアナログセンサ信号を受信すること、
前記アナログセンサ信号をデジタル信号に変換すること、
前記アナログセンサ信号を前記デジタル信号に変換する間、ポジティブノイズ閾値を超えるノイズイベントを表すポジティブノイズカウントをポジティブノイズ累積器に累積し、ネガティブノイズ閾値を超えるノイズイベントを示すネガティブノイズカウントをネガティブノイズ累積器に累積すること、
前記ポジティブノイズカウント及び前記ネガティブノイズカウントに基づいて、前記アナログセンサ信号上のノイズを特性化すること、
前記デジタル信号及び前記アナログセンサ信号上の前記ノイズの特性を表すプロセス制御ループ上の出力を生成することを含む方法。
【請求項20】
ポジティブノイズカウントを累積することは、前記センサ信号に基づいて前記ポジティブノイズ閾値を生成することを含み、ネガティブノイズカウントを累積することは、前記センサ信号に基づいて前記ネガティブノイズ閾値を生成することを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ノイズの特性を表す出力を生成することは、
ノイズ対称性、ノイズ頻度、ノイズレベル、及び前記プロセス変数送信機を備える測定システムのノイズプロファイルの少なくとも一つを評価して識別する出力を生成することを含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
プロセス変数送信機であって、
プロセス温度を感知する温度センサによって提供される温度センサ信号を受信し、該温度センサ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル(A/D)変換器と、
前記デジタル信号を受信し、プロセス制御ループ上の電流を制御して該デジタル信号を表す測定出力を提供するプロセッサと、
前記温度センサ信号を受信し、前記A/D変換器が該温度センサ信号を前記デジタル信号に変換する間、ポジティブ閾値に関連するポジティブノイズイベントの数を表す第1のカウント値、及びネガティブ閾値に関連するネガティブノイズイベントの数を表す第2のカウント値を生成するノイズ検出器を備え、
前記プロセッサは、前記第1及び第2のノイズカウント値に基づいて、検出されたノイズの特性を表すノイズ出力を生成するプロセス変数送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス制御及び監視システムにおける温度を測定するために用いられるプロセス変数送信機に関する。より具体的には、本発明は、プロセス変数の測定がデジタル化されるときの測定回路内のノイズレベルの監視に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス変数送信機は、プロセス制御または監視システムにおけるプロセスパラメータを測定するために用いられる。マイクロプロセッサベースの送信機は、しばしば、センサ、センサからの出力をデジタル形態に変換するアナログ−デジタル変換器、デジタル化された出力を補償するためのマイクロプロセッサ、及び補償された出力を送信する出力回路を備える。現在、この送信は、一般に、4〜20ミリアンペア制御ループまたは無線のようなプロセス制御ループを通して行われる。
【0003】
このようなシステムによって測定されるパラメータの一例は、温度であり、それは、白金抵抗温度計または(PRT)と呼ばれる抵抗温度デバイス(RTD: resistive temperature device)の抵抗または熱電対(thermocouple)によって出力される電圧を測定することにより感知される。もちろん、このようなタイプの温度センサは、単に、例として挙げたものであり、他のものを用いることもできる。同様に、温度は、プロセス変数の単なる一例であり、圧力、流量、pHなどの、他の多くの様々なプロセス制御パラメータも測定できる。従って、ここでは、温度センサに関連して説明を進めるが、この説明は、他のセンサに対しても容易に適用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常の測定回路では、温度センサと測定送信機との間に多くの接続点が存在し、そこで不良が生じたり、品質低下が生じたりすることがある。多くの温度測定アプリケーションでは、制御のために測定する前に、如何なる理由で温度測定の品質低下が生じたかをユーザが理解することが非常に重要である。品質低下の状態は、リード/センサ破損、過度のライン抵抗(excessive line resistance)、腐食または接続不良などを含む、種々の異なる原因に起因する。
【0005】
リード抵抗、過度のDC電圧またはセンサ破損のような固定状態を評価するために、温度送信機では、数多くの診断(diagnostic)が具現化されてきた。しかし、これらの固定状態のいずれかは、測定プロセスの間に発生する一時的状態、動的状態、または非永続性状態である可能性がある。これは、測定不確実性の多数の原因となる。
【0006】
例えば、デジタル化プロセスの間、測定アナログ−デジタル(A/D)変換器への入力電圧は、平均値であり、デジタル化プロセス上でのノイズについての情報は提供されない。非対称ノイズは、制御システムに提供される出力に測定不正確性を引き起こすことがある。
【0007】
また、ノイズは、送信機のアップデートレートで、送信機内のサンプル間で評価できるが、ある場合、そのアップデートレートは、非常にゆっくりしたものである。従って、アップデートレートより高い頻度で発生する測定ノイズが不正確性をもたらすこともある。
【0008】
また、(センサライン上または送信機の内部のいずれかにおいて)過度のライン抵抗または測定容量が、測定回路の安定化時間(settling time)に影響を与えることがある。安定化時間が十分長く設定されない場合、送信機の精度仕様(accuracy specification)を超えて測定不正確性が発生する。しかし、安定化時間を増大させることは、直接的に、測定アップデートレートを遅くする。従って、測定アップデートレートと余りに短い安定化時間に起因して発生する測定不正確性との間には、トレードオフ(tradeoff)が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
プロセス変数送信機は、プロセス温度を感知する温度センサによって提供される温度センサ信号を受信し、該温度センサ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル(A/D)変換器を備える。プロセッサが、前記デジタル信号を受信し、該デジタル信号を表す測定出力を提供する。ノイズ検出器が、このセンサ信号を受信し、ポジティブ閾値に関連するポジティブノイズイベントの数を表す第1の値、及びネガティブ閾値に関連するネガティブノイズイベントの数を表す第2の値を生成する。前記プロセッサは、前記第1及び第2の値に基づいて、ノイズのカウントを評価して、検出されたノイズを表すノイズ出力を生成する。
【発明の効果】
【0010】
ノイズレベル検出器は、プロセス変数送信機のポジティブ及びネガティブノイズイベントの両方を検出する。この検出器は、測定がなされている間でもこれをなすことができるので、測定中に変化するノイズイベントを検出することができる。この検出器は、プロセッサにノイズの表示を出力し、該プロセッサは、ノイズを特性化し、メンテナンスを示唆できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、プロセス流体の温度を感知するように構成された温度センサを備える産業用プロセス制御システムの概略図である。
図2図2は、図1の送信機をより詳細に示すブロック図である。
図3図3は、ノイズ検出器を備えるアナログ−デジタル変換器を示す、一部はブロック図、一部は回路図の図である。
図4図4は、図3に示されたアナログ−デジタル変換器の動作の一実施形態を示すフローチャートである。
図5図5は、ノイズ検出部内のノイズカウント累算器の図である。
図6図6は、電圧に対するカウントのプロット図である。
図7図7は、電圧に対するカウントのプロット図である。
図8図8は、電圧に対するカウントのプロット図である。
図9図9は、図3と類似しているが、複数のセンサを備えた実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、産業用プロセス制御システム5の概略図である。図1において、プロセス配管(process piping)7は、プロセス流体を移送する。プロセス変数送信機10は、プロセス配管7に結合するように構成される。送信機10は、一実施形態では、熱電対または他の温度センサからなるプロセス変数センサ18を備える。しかし、これは、単なる例に過ぎない。送信機10は、プロセス制御室6のような遠隔位置に情報を送信する。送信は、2線式制御ループ(two-wire control loop)11のようなプロセス制御ループを通して行うことができる。このプロセス制御ループは、例えば、4〜20mAプロセス制御ループ、デジタル通信を行うプロセス制御ループ、無線プロセス制御ループなどを含む任意の所望の形態で構成できる。図1に示された例では、プロセス制御ループ11は、制御室6にある電源(power supply)6Aによって電力が供給される。この電力は、プロセス変数送信機10に電力を提供するために用いられる。ループ11を介して流れる電流を感知するために感知抵抗器6Bが用いられるが、他のメカニズムを用いることもできる。
【0013】
図2は、図1に示された産業用プロセス制御システム5の一部のブロック図であり、送信機10をさらに詳細に示している。図2において、センサ18は、例えば、感知対象のプロセスから入力14を受けるプロセス変数センサである。入力14は、例えば、配管7を通して流れるプロセス流体であり、センサ18は、例えば、温度センサである。しかし、センサ18は、圧力、pH、流量などを感知するような異なるタイプのセンサであってもよい。センサ18はまた、多数の異なるタイプの温度センサの1つであってもよい。例えば、センサ18は、熱電対または抵抗温度デバイス(RTD)である。後者の場合、送信機10は、さらに、センサ18に励起電流(excitation current)を提供する制御可能電流源を備える。これらの実施形態のいずれか1つでは、センサ18は、例えば、送信機10のアナログ−デジタル(A/D)変換器22に、感知されたパラメータを示すアナログ出力20を提供する。
【0014】
一実施形態では、センサ18からの出力20は、例えば、アナログ信号を増幅及びフィルタリングする回路(図示しない)に適宜提供される。この回路は、センサ18または送信機10の一部、あるいは別の回路であってもよい。増幅及びフィルタリングされた信号20は、次に、A/D変換器22に提供される。A/D変換器22は、センサ18によって提供されたアナログ信号20のデジタル表示であるデジタル化された出力を、プロセッサ24に提供する。プロセッサ24は、付随メモリ及びクロック回路を有し、プロセス制御ループ11上に、感知されたパラメータに関する情報を提供する。入力/出力(I/O)回路が、プロセッサ24に備えられてもよく、プロセッサ24と別に提供されてもよく、このI/O回路は、ループ11上にデジタル形態の情報を送信するか、または、ループ11を通る電流の流れを制御してアナログ形態の情報を送信する。
【0015】
図2に示された実施形態は、A/D変換器22がさらにノイズ検出部26を備えることを示している。ノイズ検出部26は、センサ出力20におけるノイズレベルを監視するものであり、A/D変換器22の内部または外部のいずれかに配置される。図2に示された例では、ノイズ検出部26は、A/D変換器22の内部に示されているが、これは、単に例として示したものである。ノイズ検出部26は、入力信号20がA/D変換器22によってデジタル化される時のノイズを監視する。
【0016】
図3は、A/D変換器22とノイズ検出部26の、さらなる詳細図である。図3に示された実施形態では、A/D変換器22は、図示されているように、差動増幅器30とシグマデルタ変換器32を備える。シグマデルタ変換器32は、例として示されたものであり、他の変換メカニズムを用いることもできる。
【0017】
図3は、また、ノイズ検出部26が、図示されるように、ノイズ検出器34、スイッチS1及びキャパシタC1を備えることを示している。図3は、センサ18が、入力端子40及び42にそれぞれが結合された2つのリード36及び38を備えることを示している。一実施形態では、端子40と端子42の間の電圧は、センサ18によって感知された温度を示す。図3はまた、センサ18が、図示されるように、さらなる端子48及び50に結合されるリード44及び46を備える4リードセンサ(four lead sensor)でもよいことを示している。追加のセンサをこれらの端子に結合することができ、測定する入力信号を選択するマルチプレクサ(multiplexer)を使用することができる。しかし、ここでは、センサ18が、端子40及び42にそれぞれが接続された2つのリードを有するものとして説明を進める。
【0018】
以下、ノイズ検出部26のさらに詳細な動作を、図4及び図5を参照して説明する。しかし、簡単には、電圧Vinputは、端子40と端子42の間に生じ、センサ18によって感知された温度を表す。この入力電圧は、差動増幅器30に提供されて増幅され、デジタル信号への変換のための変換器32に提供され、プロセッサ24に提供される。Vinputはまた、所定レートでラッチ(latch)され、キャパシタC1に保持される。これは、スイッチS1を閉じることで行われる。ノイズ検出器34において、Vinputは、多数のクロック周期にわたって送信機−所定閾電圧と比較される。2つの累算器(またはカウンタ)が使用される。Vinputと送信機−所定閾電圧との間の電圧差が閾値より大きいか小さければ、2つの累算器のうちの1つが増加する。2つの累算器のうちの1つは、ノイズイベントに対してポジティブ方向に増加するのに対し、他の1つは、ノイズイベントに対してネガティブ方向に増加する。累算器の値は、ノイズカウント41を示す。Vinputが変換器32によってデジタル化されると、ノイズカウント41は、ノイズ検出器34からプロセッサ24に提供されて、検出されたノイズのタイプが特定される。
【0019】
図4は、ノイズ検出器34の、さらなる詳細ブロック図である。図5は、ノイズ検出部26の動作をさらに詳細に示すフローチャートである。以下、図4及び図5の両者を参照してさらに詳細に説明する。
【0020】
図5に示された動作を説明するに先立ち、まず、図4の構成要素を簡単に説明する。図4のVinputは、センサ18(図3)を横切って生じる入力電圧であり、リード40とリード42の間に印加される。Vinput_latchedは、スイッチS1が閉じるとき、キャパシタC1(図3)を横切る電圧である。Vos_threshは、ポジティブ及びネガティブ閾値(Vpos_adjust及びVneg_adjust)を生成するために、ポジティブ及びネガティブ閾値生成器60及び62で使用される電圧設定ポイントである。図示された実施形態では、閾値生成器は、一組の合算ノード60及び62からなる。Vinput_latchedは、合算ノード60でノイズ閾値Vos_threshに加算され、Vos_threshは、合算ノード62でVinput_latchedから減算される。ノイズ閾値Vos_threshは、経験に基づいて決定でき、あるいは、実行を繰り返しながら変更できる。同様に、2つの異なる閾値を用いて、Vpos_adjust及びVneg_adjustを生成できる。一実施形態では、Vos_threshの値は、ファームウェア内に設定され、または、製造時に設定されるので、ユーザは、それを設定または調節する必要がない。また、この値は、ユーザによって調節可能であってもよく、所定閾電圧についての決定は、実行中に行われてもよい。この閾値は、センサ信号の値のような各種の異なるパラメータ、または他のパラメータに基づいて可変されてもよい。
【0021】
その結果としてのポジティブ及びネガティブ閾電圧(Vpos_adjust及びVneg_adjust)は、比較器64及び66に提供され、Vinputと比較される。比較器64及び66の出力はそれぞれ、クロック72からのクロック入力を受信するカウンタ68及び70の入力に提供される。VinputがVpos_adjustをポジティブ方向に超えるとき、そしてクロック72がクロックパルスを提供するとき、カウンタ68は、1ずつ増加する。同様に、VinputがVneg_adjustをネガティブ方向に超えるとき、そしてクロック72がクロックパルスをカウンタ70に提供するとき、カウンタ70は1ずつ増加する。実質的には、クロック72の全てのクロックサイクルの間で、比較器64及び66の出力が評価され、ノイズレジスタ(またはカウンタ)68及び70は、ポジティブ及びネガティブノイズ閾電圧(Vpos_adjust及びVneg_adjust)を超えたポジティブ及びネガティブノイズイベントの両者に対応するカウントを累積する。リフレッシュカウンタ73もまた、クロック72を計時し、予め決定されたレートでVinput_latchをリフレッシュする1つの手法を提供する。リフレッシュカウンタは、リフレッシュ周期でカウントアップし、カウンタ73からの出力に基づくリフレッシュレートで、キャパシタC1にラッチされた電圧をリフレッシュする。
【0022】
図4に示された実施形態は、に一例を示すだけであり、他の実施形態も可能である。例えば、あるアプリケーションでは、ポジティブノイズイベントによって増加し、ネガティブノイズイベントによって減少する唯一つのノイズカウンタが用いられる。これは、例えば、ノイズ対称性(noise symmetry)を特性化するために用いることができる。
【0023】
ノイズ検出時のA/D変換器22の全体的な動作を、図4の説明と共に、図5を参照して説明する。図3乃至5を一緒に参照して説明する。
【0024】
一実施形態では、ノイズ検出前に、プロセッサ24がリセット信号をカウンタ(6868及び70に提供してノイズカウンタをリセットする。これは、図5のブロック80で示されている。プロセッサ24はまた、図示されているように、リフレッシュカウンタ73をリセットする。これは、図5のブロック82で示されている。
【0025】
プロセッサ24は、次に、スイッチS1を閉じることでキャパシタC1にVinputをラッチする。これは、図5のブロック84で示されている。変換器32がVinputをアナログ−デジタル変換する期間の、ある時点で、VinputがキャパシタC1にラッチされる。一実施形態では、この電圧は、変換プロセスの開始時にラッチされ、また間欠的にリフレッシュされる。即ち、プロセッサ24は、スイッチS1を開き、リフレッシュカウンタ73により出力されるカウントの数がXとなる度に再び閉じる。所定リフレッシュレートは、経験に基づいて設定されればよく、または、与えられたアプリケーションに基づいて調節されればよく、あるいは、他の手法でもよい。このレートをファームウェア内に設定し、または製造時に設定すれば、ユーザがリフレッシュレートを設定する必要がない。また、リフレッシュレートを、要求されるように、セットし直す能力をユーザに与えてもよい。
【0026】
いずれの場合でも、VinputがキャパシタC1にラッチされると、合算ノード60及び62が、比較器64及び66に印加されるポジティブ及びネガティブ閾電圧Vpos_adjust及びVneg_adjustを生成する。上記で簡単に説明したように、VinputがVpos_adjustをポジティブ方向に超えた時、カウンタ68は、クロック72の各クロックサイクルで増加する。同様に、Vinputがネガティブ電圧Vneg_adjustをネガティブ方向に超えた時、カウンタ70は、クロック72の各クロックサイクルで増加する。ポジティブ及びネガティブノイズ出力を検査することと、必要に応じてカウンタ68及び70を増加させることは、図5のブロック86で示されている。各クロックサイクルの後、リフレッシュカウンタ73が、ラッチされた電圧Vinput_latchedがリフレッシュされるべきであるかを示すカウント値に達したか否かが判定される。もしそうであるならば、処理は、ブロック82に戻って、リフレッシュカウンタ73がゼロに設定される。リフレッシュカウンタがリセットされるべきか否の判定は、図5のブロック88で示されている。
【0027】
もし、ブロック88で、リフレッシュカウンタがまだリセットされる必要がないと判定されると、プロセッサ24は、変換器24がVinputの測定を完了したか否かを判定する。これは、図5のブロック90で示されている。もし、測定が完了していなかったら、処理は、ブロック86に戻り、検出器34は、引き続きポジティブ及びネガティブノイズ出力を監視し、必要に応じてカウンタ68及び70を増加させる。
【0028】
しかし、ブロック90で、A/D変換が完了したと判定されると、カウンタ68及び70によって提供されるカウント41は、プロセッサ24に出力される。これは、図5のブロック92で示されている。プロセッサ24は、次々に、カウント41に基づいて検出されたノイズを特性化することができる。
【0029】
プロセッサ24は、次に、カウンタ68及び70からのカウント41に基づいて識別されたノイズ特性を出力することができる。ノイズ特性を出力することは、図5のブロック94で示されている。
【0030】
プロセッサ24では、カウント41に基づいて多様な種々のノイズ特性を識別できるが、以下に説明されるノイズ特性の多くは、例としてだけのものである。
【0031】
第1のノイズ特性は、ノイズ対称性である。ポジティブ及びネガティブカウンタ68及び70の両方が同一のカウントを提供し、これらのカウントが閾値を超えなければ(即ち、それらが過度ではなければ)、プロセッサ24は、ノイズが対称であると判定する。これは、測定出力が測定ノイズによって影響を受けているという表示を提供できるが、プロセッサ24が、品質低下が存在する可能性があるという表示をユーザに提供できるようにする。このタイプのノイズは、ノイズ電流によって、高いインピーダンスラインに、測定可能な電圧が発生する設備環境で、熱電対が劣化した場合に発生する可能性がある。これは、これらのセンサ測定ループに対するメンテナンス、または他のメンテナンスを施さなければならないことを、ユーザに知らせる。
【0032】
第2の特性は、ノイズ頻度である。即ち、プロセッサ24は、キャパシタC1がVinputをラッチする周期を規定するリフレッシュレート、及びカウンタ68及び70によって出力されるカウントの量を考慮することができる。これらのパラメータが与えられれば、近似的にノイズ頻度を決定することができる。測定プロセス内で周期的に新たな電圧レベルがラッチされるが、ノイズカウントが依然として累積される場合、これは、プロセッサ24が、与えられた測定時に存在するノイズの量を、少なくとも概略的に、評価できるようにする。
【0033】
さらにもう一つのノイズ特性は、ノイズレベルである。ノイズレベルは、カウンタ68及び70のカウント出力の量及び選択された電圧閾レベルVos_threshによって評価できる。閾レベルは、調節されて、どれほど多くのノイズがシステムに存在するかについて、プロセッサ24に、そして最終的にはユーザに、情報を提供する。これは、熱起電力(EMF)がRTD測定ラインに発生するとき、重要である。接続点が腐食するか、またはすり減り、またこの接続を横切る温度勾配が存在する場合、動的EMF状態がRTD測定に導入される。この場合、ユーザは、これを認識し、測定ループのメンテナンスを実行することができる。プロセッサ24は、メンテナンスが必要であることをユーザに知らせるメッセージを生成することができる。
【0034】
さらにもう一つのノイズ特性は、安定化時間が十分であるか否かである。即ち、変換器32によって実行されるデジタル化処理の開始時にキャパシタC1に測定電圧Vinputがラッチされ、ポジティブまたはネガティブ方向(両方向でなくてもよい)で比較的大きな数のノイズカウントがあるものと仮定すると、プロセッサ24は、安定化時間が調節される必要があると判定する。安定化時間の調節後、新たな測定が計算される。このプロセスは、接続された測定ループに対する安定化時間を初期化して、最良のアップデートレートで、最高レベルの正確性を与えることができる。
【0035】
図6乃至図8は、y軸に沿った電圧に対するx軸に沿ったカウンタ68及び70のプロット(plot)である。図6乃至図8は、ノイズ特性の幾つかを示している。図6では、Vinputはライン100で示され、Vpos_adjustはライン102で示され、Vneg_adjustはライン104で示されている。図6は、通常の測定ノイズであることを示している。すなわち、Vinputは、閾電圧102及び104で設定された閾値内で変化する。測定サイクルの間、Vinputは、閾値102または104のいずれも横切らないので、カウンタ68及び70の出力は、両方ともゼロとなる。
【0036】
図7は、図6と類似しており、同様の要素には同様の番号が付されている。しかし、図7では、Vinputは、ある回数だけ、閾電圧102及び104を横切る。カウンタ68のポジティブカウントが29カウントであるのに対し、カウンタ70のネガティブカウントは25カウントである。これは、ノイズがポジティブ方向に若干非対称であるということを示している。
【0037】
図8はまた、図6と類似しており、同様の要素には同様の番号が付されている。しかし、図8では、Vinputは、測定サイクルの最初以外では、全時間にわたってポジティブ閾値102を上回っている。従って、カウンタ68によって出力されるポジティブカウントは380であるが、ネガティブカウントはない。これは、安定化時間が正確でなく、調節が必要であることを示している。
【0038】
図5を再び参照すると、ノイズ対称性に対応するノイズ特性の表示をプロセッサ24が出力することがブロック110で示されている。ノイズ頻度に対応するノイズ特性を出力することがブロック112で示され、ノイズレベルに関する表示を出力することがブロック114で示され、安定化時間の項目を示す表示を出力することがブロック116で示されている。もちろん、プロセッサ24は、その他の出力118も生成でき、その他のノイズ特性の表示も生成できる、
【0039】
プロセッサ24または送信機10の他の部分は、カウンタ68及び70によって出力されるカウントに基づいて他の動作を行うこともできる。これらの他の動作を行うことは、図5のブロック120で示されている。例えば、プロセッサ24は、ブロック122で示されているように、安定化時間を調節することができ、または、ブロック124で示されているように、測定サイクルに対する累積周期をユーザが調節するようにすることができる。同様に、プロセッサ24は、カウンタ68及び70によって出力されるカウント(41)から識別されるノイズ特性に基づいて測定システムのプロファイルを生成することができる。これは、図5のブロック126で示されている。プロファイルを生成することは、多くの様々な手法で行うことができる。例えば、プロセッサ24は、統計的なプロセス監視のような学習プロセスを用いて、時間経過に関する測定システムのプロファイルを生成することができる。これは、どのようなノイズレベル、リフレッシュレート及び安定化時間を使用して、各特定ユーザに対する設備が構成されるべきであるのかの理解の助けとなる。動作開始時のノイズレベルは、時間上の他の測定サンプル周期の比較のためのベースラインとして用いることもできる。送信機10または他の構成部分は、様々な他の動作を行うこともでき、これは、図5のブロック128で示されている。
【0040】
同様に、カウントは、測定ループでのライン周波数を検出するために用いることができる。例えば、あるユーザの設備では、(50Hzまたは60Hzのような)ライン周波数が測定ラインに結合される。このような設備では、設定可能なパラメータをユーザに提供し、この時間周期に渡って、測定が積分されるようにすることができる。
【0041】
複数のノイズ検出部26を送信機10内に備えることができる。各ノイズ検出構成要素26は、測定サイクルの間、異なるノイズ特性を処理するように構成することができる。例えば、1つのノイズ検出部26は、特に、安定化時間の項目を識別するように構成され、他の1つのノイズ検出構成要素26は、ノイズ頻度に焦点が合わされ、また、他の1つノイズ検出構成要素26は、ノイズレベルなどに焦点が合わされる。
【0042】
また、ノイズ検出部26は、現在、送信機10によってセンサ出力が測定されていない場合でも、複数の異なるセンサのノイズを独立に、継続的に監視するために利用することができる。図9は、図2と類似しているが、第2センサ19を備えた実施形態を示している。もちろん、多数のセンサを追加することができるが、図9では、2つのセンサだけの例が示されている。図9の実施形態では、マルチプレクサを通して1度に1つのセンサ入力を受信する。このように、送信機10は、センサ19の出力を測定していると、センサ18の出力を測定しない。しかし、その場合、ノイズ検出部27は、依然としてセンサ18の出力上のノイズを検出している。従って、ノイズ検出部26が、変換器22によって現在測定されているセンサ19上のノイズを検出しているとき、センサ18の出力上のノイズもまた、ノイズ検出構成要素27により検出される。測定中でないときにセンサ出力上のノイズを検出することには意味があり、有用である。本実施形態はまた、異なるセンサの間のノイズ差を特性化するシステムにすることもできる。
【0043】
このシステムはまた、感知されたノイズを正確に補償するためにも有用である。ノイズが特性化されれば、補償を、より正確にできる。また、カウンタの計時に用いられるクロック信号は、より多くの情報を得るために制御することができる。クロック周波数を高くすれば、高周波ノイズ成分を検出できる。従って、クロック周波数を、要求されるように制御することができる。
【0044】
本発明は、好ましい実施形態に関して説明されたが、当業者は、本発明の精神及び範疇を外れることなく形態と詳細において変更できることを認識するだろう。
【符号の説明】
【0045】
5・・・業用プロセス制御システム、6・・・プロセス制御室、7・・・プロセス配管、10・・・プロセス変数送信機、11・・・プロセス制御ループ、14・・・センサ入力、18,19・・・プロセス変数センサ、20・・・センサ出力、22・・・A/D変換器、24・・・プロセッサ、26,27・・・ノイズ検出部、30・・・差動増幅器、32・・・シグマデルタ変換器、34・・・ノイズ検出器、36,38,44,46・・・リード、40,42,48,50・・・入力端子、41・・・ノイズカウント、60,62・・・合算ノード、64,66・・・比較器、68,70・・・カウンタ、72・・・クロック、73・・・リフレッシュカウンタ、・S1・・スイッチ、C1・・・キャパシタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9