(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アイドルストップ機能付きの車両に搭載され、少なくとも前記車両が停車状態であることを含むアイドルストップ条件の成立後であってエンジンの停止前に、発進に使用する第一クラッチを締結すると共に前記第一クラッチとは別の第二クラッチの油圧を第一所定圧まで高めて変速機構の出力軸回転を固定するインターロックを行う有段変速機構の制御装置において、
前記車両が停止している路面の勾配を検出する勾配検出手段と、
前記インターロック中であって前記エンジンの停止前に前記勾配検出手段により検出された前記勾配が所定値以下である場合に、前記油圧を前記第一所定圧よりも低い第二所定圧に低下させてスリップ状態とするスリップインターロックを行う油圧制御手段と、
を備えた有段変速機構の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
[1.装置構成]
図1は、本実施形態にかかる有段変速機構の制御装置が搭載された車両の概略構成図である。
図1に示すように、この車両は、駆動源としてエンジン(内燃機関)1を備える。エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータ2,第一ギヤ列3,無段変速機4(以下、単に変速機4という),第二ギヤ列5及び終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第二ギヤ列5には、駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられる。
【0020】
この車両は、所定のアイドルストップ条件が成立した場合にエンジン1を自動的に停止させるとともに、所定の再始動条件が成立した場合にエンジン1を自動的に再始動させるアイドルストップ機能を備える。アイドルストップ条件には、例えばブレーキスイッチがオンであることや車両が停車状態であること(すなわち車速がゼロであること)等が含まれるが、本装置では、単にブレーキスイッチがオンであるだけでなく、ブレーキ踏力が所定の値以上であることも含まれている。また、再始動条件には、例えばブレーキスイッチがオフであることやアクセル開度がゼロでないこと等が含まれる。
【0021】
また車両には、エンジン制御装置(図示略)が設けられる。エンジン制御装置は、エンジン1に関する燃料系,点火系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを総合的に制御する電子制御装置であり、エンジン1の各気筒に対して供給される空気量や燃料噴射量,各気筒の点火時期,過給圧等を制御するものである。ここでは、エンジン制御装置により、上記のアイドルストップ条件等の判定が行われ、エンジン1の自動停止及び再始動が制御される。
【0022】
車両には、エンジン1の動力の一部を利用して駆動される機械式オイルポンプ10mと、電動モータによって駆動される電動オイルポンプ10eとが設けられる。さらに、機械式オイルポンプ10m又は電動オイルポンプ10eからの油圧を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11などを制御する変速機コントローラ12とが設けられる。
【0023】
電動オイルポンプ10eは、バッテリ13の電力を駆動源とする電動モータによって駆動され、油圧制御回路11にオイルを供給して油圧を発生させる(すなわち油圧を供給する)。電動オイルポンプ10eは、例えばアイドルストップ制御によりエンジン1が自動停止され、機械式オイルポンプ10mによって油圧を供給できないような場合に、機械式オイルポンプ10mに代わって油圧制御回路11に油圧を供給する。電動オイルポンプ10eから吐出されるオイルが流れる流路には、逆止弁14が設けられる。
【0024】
変速機4は、ベルト式無段変速機構20(以下、バリエータ20という)と、バリエータ20に直列に設けられる副変速機構(有段変速機構)30とを備える。「直列に設けられる」とは、エンジン1から駆動輪7に至るまでの動力伝達経路において、バリエータ20と副変速機構30とが直列接続されるという意味である。ここでは、副変速機構30は、バリエータ20の出力軸に直接接続されている。なお、副変速機構30は、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介してバリエータ20に接続されていてもよい。
【0025】
バリエータ20は、ベルト接触径の変化により変速機入力回転数と変速機出力回転数との比である変速比(すなわち、変速機入力回転数/変速機出力回転数)を無段階に変化させる無段変速機能を備える。バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、これら二つのプーリ21,22の間に掛け回されるVベルト23とを有する。
【0026】
プライマリプーリ21,セカンダリプーリ22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され、固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、油圧シリンダ24a,24bとを有する。油圧シリンダ24a,24bは、各可動円錐板の背面に設けられ、供給される油圧が調整されることで各可動円錐板を軸方向に変位させる。油圧シリンダ24a,24bに供給される油圧は、変速機コントローラ12により制御される。V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21,22との接触半径が変化することで、バリエータ20の変速比が無段階に変化する。
【0027】
副変速機構30は、前進2段・後進1段の有段変速機構である。副変速機構30は、二つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素32〜34とを備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更することで、副変速機構30の変速段が変更される。
【0028】
ここでは、摩擦締結要素として、発進に利用されるLowブレーキ(第一クラッチ)32と、これとは別のHighクラッチ(第二クラッチ)33と、Revブレーキ34とが設けられる。これらLowブレーキ32,Highクラッチ33及びRevブレーキ34は、それぞれ供給される油圧に応じた伝達トルクを発生させる。また、これらLowブレーキ32,Highクラッチ33及びRevブレーキ34に供給される油圧は、変速機コントローラ12により制御される。
【0029】
例えば、Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33とRevブレーキ34とを解放すれば、副変速機構30の変速段は1速となる。車両発進時での副変速機構30の変速段は通常1速であるため、発進時はLowブレーキ32のみが締結される。また、Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32とRevブレーキ34とを解放すれば、副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。さらに、Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32とHighクラッチ33とを解放すれば、副変速機構30の変速段は後進となる。
【0030】
油圧制御回路11は、複数の流路と複数の油圧制御弁とで構成される。油圧制御回路11は、変速機コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えるとともに、機械式オイルポンプ10m及び電動オイルポンプ10eで発生した油圧から必要な油圧を調整する。そして、調整した油圧を変速機4の各部位(油圧シリンダ24a,24b及び摩擦締結要素32〜34)に供給する。これにより、バリエータ20の変速比及び副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
【0031】
変速機コントローラ12のハードウェア構成を
図2に示す。変速機コントローラ12には、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124とが内蔵され、これらが内部バス125を介して通信可能に接続される。変速機コントローラ12の入力インターフェース123には、アクセル開度センサ41,入力回転速度センサ42,出力回転速度センサ43,エンジン回転速度センサ44,インヒビタスイッチ45,ブレーキスイッチ46,前後Gセンサ47,油圧センサ48,油温センサ49等の各種センサが接続され、これらセンサで検出されたセンサ情報やスイッチ情報が入力される。
【0032】
アクセル開度センサ41は、図示しないアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度APO)を検出する。アクセル開度APOは、運転者の加速意思や発進意思に対応するパラメータである。入力回転速度センサ(検知手段)42は変速機4の入力回転速度Npriを検出するセンサである。この入力回転速度センサ42から出力されるパルス信号を用いて、車両の動き出しが検出される。出力回転速度センサ43は変速機4の出力軸の回転を出力回転速度Noutとして検出するセンサであり、出力回転速度Noutからは車速Vspが演算される。エンジン回転速度センサ44は、例えばクランクシャフトの単位時間当たりの回転数をエンジン回転速度Neとして検出する。
【0033】
インヒビタスイッチ45は、運転者によって選択されるシフトレバー(セレクトレバー)の位置(レンジ位置)を検出し、レンジ位置に応じたレンジ位置信号を出力する。ブレーキスイッチ46は、フットブレーキの踏み込みを検出するオンオフスイッチである。ブレーキスイッチ46は、ブレーキ液圧が所定の閾値PB
TH以上の場合(すなわちブレーキ踏力が大きい場合)にオン信号を出力し、ブレーキ液圧が閾値PB
TH未満の場合(すなわちブレーキ踏力が小さい場合)にオフ信号を出力する。
【0034】
前後Gセンサ(勾配検出手段,検知手段)47は、車両に作用する前後G(前後方向の加速度)を検知するセンサである。前後Gセンサ47からの出力信号を用いて、車両の傾きや車両の挙動が算出される。油圧センサ48は、ここではHighクラッチ33に供給される油圧(以下、Hi/C圧という)を検出する。以下、油圧センサ48で検出された実際のHi/C圧を、Hi/C実圧という。油温センサ49は、オイルの温度(油温)を検出する。油温はオイルの粘性に影響するため、オイルポンプ10m,10eが適切に作動しうる油温であるか否かを、油温センサ49を用いてチェックする。
【0035】
記憶装置122には、副変速機構30を制御する制御プログラムなどが格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されている制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して制御信号を生成し、生成した制御信号を、出力インターフェース124を介して油圧制御回路11や電動オイルポンプ10eなどに出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値やその演算結果は、記憶装置122に適宜格納される。
【0036】
[2.制御の概要]
本実施形態に係る変速機コントローラ12は、各種センサ41〜49のセンサ情報,スイッチ情報に基づいて、副変速機構30のLowブレーキ32及びHighクラッチ33に供給される各油圧を制御して、副変速機構30をインターロック状態に制御する。以下、この制御をインターロック制御という。インターロック制御では、副変速機構30は、インターロック状態とスリップインターロック状態とに制御される。以下、インターロック状態にすることを、「インターロックする」ともいい、スリップインターロック状態にすることを「スリップインターロックする」ともいう。
【0037】
インターロック状態とは、Lowブレーキ32とHighクラッチ33とを共に完全に締結させて副変速機構30の出力軸回転を固定した状態をいう。副変速機構30は、Lowブレーキ32に供給される油圧(以下、Low/B圧という)が所定圧P
LOWに制御されるとともに、Hi/C圧が第一所定圧P1に制御されることで、インターロックされる。副変速機構30がインターロックされると、エンジン1で発生した駆動力は駆動輪7へ伝達されない。なお、ここではLow/B圧は、インターロック開始前及びインターロック後において、所定圧P
LOWで略一定に制御されているものとする。また、第一所定圧P1は、車両を確実に停止させることができる程度の油圧であり、Lowブレーキ32の所定圧P
LOWよりも高圧である。
【0038】
インターロックの開始条件は、以下のIL開始条件1〜5が全て成立することである。つまり、IL開始条件1〜5が全て成立した時点で、Hi/C圧の指令値(以下、Hi/C指示圧という)が第一所定圧P1にされて、インターロックが開始される。
IL開始条件1:エンジン1が作動中(エンジン停止前)である
IL開始条件2:アクセルオフである(APO=0)
IL開始条件3:ブレーキスイッチがオンである
IL開始条件4:車速Vspがゼロである(Vsp=0)
IL開始条件5:油温が所定範囲内である
【0039】
これらのうち、IL開始条件2〜5は上記のアイドルストップ条件に含まれているものとする。さらにここでは、アイドルストップ条件には、IL開始条件2〜5に加えて、エンジン1を停止させても車両がずり下がらない程度にブレーキペダルが踏まれている、という条件が含まれているとする。この条件は、例えば路面勾配Rに応じてブレーキ踏力の閾値が演算され、この閾値よりも実際のブレーキ踏力が大きい場合に成立したと判定され、エンジン1が自動停止される。なお、ブレーキ踏力は、例えば踏力センサやブレーキ液圧センサのセンサ値やペダルストロークから演算される。
【0040】
したがって、エンジン1が自動停止される場合は、その前に副変速機構30がインターロック状態に制御される。なお、後述するように、路面勾配Rは車体が完全に静止してから算出されるため、副変速機構30がインターロックされてからエンジン1が自動停止されるまでの間にはタイムラグが生じる。このタイムラグは、少なくとも路面勾配Rが算出され、路面勾配Rからブレーキ踏力の閾値が求められ、このブレーキ閾値と実際のブレーキ踏力とが比較されて、エンジン1を自動停止すると判定されるまでの時間である。また、ブレーキ踏力が閾値未満の場合は、ブレーキ踏力が不足しているため、エンジン1は自動停止されない。この場合は、インターロックはされるものの、エンジン1は作動状態のままとされる。
【0041】
インターロックの解除条件は、以下のIL解除条件1及び2の少なくとも一方が成立することである。
IL解除条件1:ブレーキスイッチがオフである
IL解除条件2:スリップインターロックが開始された
【0042】
すなわち、インターロック中にブレーキスイッチ46がオンからオフに切り替えられた場合は、IL解除条件1が成立したと判定され、Hi/C指示圧がゼロに低下されて、Lowブレーキ32のみが締結状態となりインターロックが解除される。また、後述のスリップインターロックの開始条件が成立した場合は、インターロックからスリップインターロックへ移行されるため、インターロックは解除される。
【0043】
スリップインターロック状態とは、Lowブレーキ32を完全に締結する一方、Highクラッチ33を完全には締結せずにスリップさせた状態をいう。副変速機構30は、Low/B圧が所定圧P
LOWに制御されるとともに、Hi/C圧が第一所定圧P1よりも低い第二所定圧P2に制御されることで、スリップインターロックされる。副変速機構30がスリップインターロックされると、エンジン1で発生した駆動力の一部は駆動輪7へ伝達される。なお、ここでもLow/B圧は、スリップインターロック開始前及びスリップインターロック後において、所定圧P
LOWで略一定に制御されているものとする。また、第二所定圧P2は、Highクラッチ33が完全には締結せず、且つ、解放もしない圧力、すなわちHighクラッチ33のクラッチプレート間の隙間がゼロとなりスリップ状態となる圧力である。
【0044】
スリップインターロックの開始条件は、インターロック中であってエンジン1の停止前に以下のSIL開始条件が成立することである。つまり、上記のIL開始条件1〜5が全て成立してインターロックが開始された後に、上記のIL開始条件1〜5に加え、以下のSIL開始条件が成立した場合は、スリップインターロックが開始される。
SIL開始条件:路面勾配Rが所定値R
TH以下である(R≦R
TH)
【0045】
ここで、路面勾配Rは、車両が停止している路面の勾配であり、前後Gセンサ47からのセンサ情報に基づいて算出される。平坦路に停止している場合の路面勾配Rは略ゼロとなり(R≒0)、下り坂に停止している場合の路面勾配Rは負の値となり(R<0)、上り坂に停止している場合の路面勾配Rは正の値となる(R>0)。なお、路面勾配Rの算出は、車体が完全に静止するのを待ってから、すなわち車速Vspがゼロになってから所定時間txが経過した後に行われる。つまり、SIL開始条件の判定は、IL開始条件1〜5の成立時点から所定時間txが経過した後に実施される。
【0046】
上記のSIL開始条件の所定値R
THは、平坦路と上り坂との境界値(R
TH>0)であり、予め設定されている。すなわち、SIL開始条件を満たす場合とは、車両が停止している路面が平坦路又は下り坂である場合である。つまり、副変速機構30は、上記のIL開始条件1〜5の成立により、まずはHi/C指示圧が第一所定圧P1まで高められることでインターロックされる。そして、インターロック開始から所定時間tx経過時に算出された路面勾配Rが所定値R
TH以下の場合(SIL開始条件が成立した場合)は、Hi/C指示圧が第二所定値P2まで低下されてスリップインターロックされる。
【0047】
なおここでは、Hi/C指示圧は、SIL開始条件が成立した時点で一気に第一所定圧P1から第二所定圧P2に低下されるのではなく、第一所定圧P1から第二所定圧P2よりも高い圧力P2′(以下、ランプ圧P2′という)まで低下され、その後、徐々に第二所定圧P2になるようにランプ制御される。これにより、Hi/C実圧のアンダーシュートが抑制される。
【0048】
スリップインターロックの解除条件は、以下のSIL解除条件の1及び2の少なくとも一方が成立することである。
SIL解除条件1:ブレーキスイッチがオフである
SIL解除条件2:車両の動き出しを検知した
【0049】
すなわち、スリップインターロック中にブレーキスイッチ46がオンからオフに切り替えられた場合は、SIL解除条件1が成立したと判定され、Hi/C指示圧がゼロに低下されて、Lowブレーキ32のみが締結状態となりスリップインターロックが解除される。また、車両の動き出しは、例えば、入力回転速度センサ42から出力されるパルス信号、または、前後Gセンサ47で検出された前後Gの変化率ΔGから求められる。パルス信号が所定値以上検出された場合、または、前後Gの変化率ΔGが所定値G
0以上であれば車両が動き出したと判定され、Hi/C指示圧がゼロに低下されてスリップインターロックが解除される。
【0050】
なお、インターロック中にSIL開始条件が成立しない場合(上り坂に停止している場合)は、インターロック状態が維持され、スリップインターロック状態には移行されない。つまりこの場合は、インターロックの解除条件が成立するまで、Hi/C指示圧が第一所定圧P1のまま維持され、坂道による車両の後方へのずり下がりが防止される。
【0051】
[3.制御構成]
図1に示すように、上述の制御を実施するための要素として、変速機コントローラ12には、算出部12a,判定部12b及び油圧制御部12cが設けられる。これらの各要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0052】
算出部(勾配検出手段,検知手段)12aは、前後Gセンサ47からのセンサ情報に基づいて、車両の停止している路面勾配Rを算出するとともに、入力回転速度センサ42または前後Gセンサ47からのセンサ情報に基づいて車両の動き出しを算出するものである。路面勾配Rの算出は、判定部12bから算出指示があった場合に算出され、算出結果は判定部12bへ伝達されて、上記のSIL開始条件の判定に用いられる。
【0053】
一方、車両の動き出しは、例えば入力回転速度センサ42から出力されるパルス信号や前後Gの変化率ΔG,車輪又は車輪に対応した回転等から算出する。なお、ここでは入力回転速度センサ42から出力されるパルス信号から車両の動き出しを算出するものとする。この算出は、判定部12bから算出指示があった場合に行なわれ、算出結果は判定部12bへ伝達されて、上記のSIL解除条件2の判定に用いられる。
【0054】
判定部12bは、各種センサ41〜49の情報と算出部12aの算出結果とに基づいて、インターロック制御に関する各種判定を実施するものである。判定部12bは、まずIL開始条件1〜5の成否を判定する。これらが全て成立しない場合には、他の条件の判定は実施しない。IL開始条件1〜5が全て成立した場合は、油圧制御部12cへインターロックを開始するように指示するとともに、IL開始条件1〜5が全て成立した時点から所定時間txが経過した時点で、算出部12aへ路面勾配Rの算出を指示する。
【0055】
判定部12bは、IL開始条件1〜5が全て成立すると判定した後は、IL解除条件1の成否と、IL解除条件2(すなわち、SIL開始条件)の成否とを判定する。IL解除条件1が成立した場合は、油圧制御部12cへインターロックの解除指示をする。一方、IL解除条件2が成立した場合(すなわち、SIL開始条件が成立した場合)は、油圧制御部12cへインターロックの解除指示をするとともに、スリップインターロックを開始するように指示する。なお、判定部12bは、SIL開始条件が成立した時点から、算出部12aに対して入力回転速度センサ42から出力されるパルス信号の算出を指示する。
【0056】
判定部12bは、SIL開始条件が成立したと判定した場合は、SIL解除条件1及び2の成否を判定し、何れか一つの解除条件が成立したら、油圧制御部12cへスリップインターロックを解除するように指示する。このとき、SIL解除条件2の判定では、算出部12aで算出された入力回転速度センサ42から出力されるパルス信号が用いられる。
【0057】
油圧制御部(油圧制御手段)12cは、判定部12bからの指示に基づいて、Hi/C圧及びLow/B圧を制御して、副変速機構30のインターロック状態を制御する。なお、ここではLow/B圧は、インターロック制御にかかわらず所定圧P
LOWで略一定に制御されているものとする。つまり、油圧制御部12cは、Hi/C圧のみを制御する。
【0058】
油圧制御部12cは、判定部12bからインターロックの開始指示が伝達された場合は、Hi/C指示圧を第一所定圧P1に制御する。これにより、Highクラッチ33は完全に締結され、副変速機構30はインターロックされる。油圧制御部12cは、判定部12bからインターロックの解除指示とともにスリップインターロックの開始指示が伝達された場合は、Hi/C指示圧を第一所定圧P1から第二所定圧P2に低下させる。なお、このとき、Hi/C実圧のアンダーシュートを防止すべく、Hi/C指示圧を徐々に低下させる。これにより、Highクラッチ33はスリップ状態となり、副変速機構30はスリップインターロックされる。
【0059】
油圧制御部12cは、判定部12bからインターロックの解除指示またはスリップインターロックの解除指示が伝達された場合は、Hi/C指示圧をゼロに低下させる。これにより、Lowブレーキ32のみを締結状態として、インターロックまたはスリップインターロックを解除する。
【0060】
[4.フローチャート]
次に、
図3及び
図4を用いて変速機コントローラ12で実行されるインターロック制御の手順の例を説明する。
図3のフローチャートは、イグニッションスイッチ(IG_SW)がオンにされるとスタートし、所定の演算周期で繰り返し実施される。
図4のフローチャートは、
図3のフローチャートのサブフローである。
【0061】
図3に示すように、ステップS10では、各種センサ41〜49で検出されたセンサ情報やスイッチ情報が変速機コントローラ12に入力される。ステップS20では、アクセルオフ且つブレーキスイッチ46がオンであるか否かが判定される。アクセルオフ且つブレーキスイッチ46がオンの場合はステップS30へ進み、アクセルオン又はブレーキスイッチ46がオフの場合はステップS200へ進む。
【0062】
すなわち、以下のステップS30〜S150の処理は、アクセル開度APOがゼロであり、且つ、ブレーキスイッチ46がオンの場合(ブレーキ踏力が所定の閾値以上の場合)に実施される。ステップS20の判定は、上記のIL開始条件2,IL開始条件3,IL解除条件1及びSIL解除条件1の各判定に対応する。なお、ステップS200では、後述する何れのフラグもゼロであるか否かが判定される。フロー開始時には全てのフラグがゼロに設定されているため、この演算周期をリターンする。
【0063】
ステップS30では、フラグILがIL=0であるか否かが判定される。ここで、フラグILは、油圧制御部12cによって副変速機構30がインターロック状態に制御されているか否かをチェックするための変数であり、IL=0はインターロック状態ではない場合に対応し、IL=1はインターロック状態である場合に対応する。最初の演算周期では、インターロック状態ではない(IL=0である)ため、ステップS40へ進む。
【0064】
ステップS40では、油温が所定範囲内であるか否かが判定され、所定範囲内の場合はステップS50へ進み、車速Vspがゼロであるか否かが判定される。これらの判定は、上記のIL開始条件4,5に対応し、これらの判定が不成立の場合はこの演算周期をリターンする。油温が所定範囲内であり、且つ、車速Vspがゼロになったら、ステップS60へ進み、油圧制御部12cにおいてHi/C指示圧が第一所定圧P1に制御され、副変速機構30がインターロックされる。なおこのとき、エンジン1は未だアイドルストップされておらず、作動中(エンジン停止前)である。
【0065】
続くステップS70では、フラグILがIL=1に設定され、ステップS80においてタイマがカウント中であるか否かが判定される。このタイマは、車体の揺れが収まったか否かをカウントするためのものであり、初めてステップS80へ進んだ場合はタイマカウントが開始されていないため、ステップS85へ進む。そして、ステップS85においてタイマがスタートされ、この演算周期をリターンする。
【0066】
次の演算周期では、フラグILがIL=1に設定されているため、ステップS30からステップS180へ進み、フラグNILがNIL=0であるか否かが判定される。フラグNILがNIL=0であれば、ステップS190へ進み、フラグSILがSIL=1であるか否かが判定される。ここで、フラグNIL,SILは、路面勾配Rの判定が終了した後に設定されるフラグであり、NIL=0,SIL=0は、路面勾配Rの判定が未実施の場合に対応する。一方、NIL=1は路面が上り坂(R≧R
TH)の場合に対応し、SIL=1は路面が平坦路又は下り坂(R<R
TH)の場合に対応する。
【0067】
ステップS85からリターンした場合は、フラグNIL=0,SIL=0であるため、ステップS80を経由してステップS90へ進む。そして、タイマカウント値が所定時間tx以上であるか否かが判定され、タイマ値が所定時間tx未満であれば、この演算周期をリターンする。なお、この所定時間txは、車体が完全に静止するまでの待機時間である。これらの処理が繰り返し実施され、タイマカウント値が所定時間tx以上になると、ステップS100へ進む。
【0068】
ステップS100では、算出部12aにおいて路面勾配Rが算出される。続くステップS110では、算出された路面勾配Rが所定値R
TH以下であるか否かが判定される。当該判定は、上記のSIL開始条件の判定である。路面勾配Rが所定値R
TH以下である場合は、油圧制御部12cにおいてスリップインターロックに制御される。ここでは、ステップS120に進み、Hi/C指示圧がランプ圧P2′に制御され、ステップS130においてフラグSILがSIL=1に設定されて、ステップS140において
図4に示すランプ制御が実施される。
【0069】
図4に示すように、ステップS142では、Hi/C指示圧から所定の値ΔPHが減算されたものが新たなHi/C指示圧に設定される。続くステップS144では、ステップS142で設定されたHi/C指示圧が第二所定圧P2以下であるか否かが判定され、第二所定圧P2よりも大きい場合はこのフローを終了する。一方、ステップS142で設定されたHi/C指示圧が第二所定圧P2以下の場合は、ステップS146においてHi/C指示圧が第二所定圧P2に設定されて、このフローを終了する。このように、スリップインターロック状態にする場合は、Hi/C指示圧をまずランプ圧P2′まで低下させた後、徐々に第二所定圧P2まで低下させる。
【0070】
一方、
図3に示すように、ステップS110において路面勾配Rが所定値R
THよりも大きい場合は、ステップS135へ進み、フラグNILがNIL=1に設定される。この場合は、Hi/C指示圧は第一所定圧P1のままとされ、インターロック状態が維持され、この演算周期をリターンする。次回以降の演算周期では、ステップS20の判定においてアクセルオン又はブレーキスイッチ46がオフであると判定されない限り、ステップS180からNOルートへ進んで演算周期をリターンする。
【0071】
つまり、車両が停止し、インターロックされた後、路面勾配Rが上りであると判定されると、アクセルオン又はブレーキスイッチ46がオフにされるまでは、インターロック状態が維持される。アクセルオン又はブレーキスイッチ46がオフにされると、ステップS20からステップS200へ進み、フラグIL,NIL,SILが何れもゼロであるか否かが判定される。ここでは、フラグNILがNIL=1に設定されているため、ステップS160へ進み、Hi/C指示圧がゼロに制御されてインターロックが解除される。そして、ステップS170では、全てのフラグIL,NIL,SILがゼロにリセットされ、タイマが停止されると共にリセットされ、この演算周期をリターンする。
【0072】
また、ステップS140においてランプ制御された後は、ステップS150に進み、算出部12aにおいて算出された入力回転速度センサ42から出力されるパルス信号数が所定値以上であるか否かが判定される。当該判定は、上記のSIL解除条件2の判定に対応する。パルス信号数が所定値未満の場合は、未だ車両が動き出していないとして、この演算周期をリターンする。
【0073】
次の演算周期において、アクセルオフ且つブレーキスイッチ46がオンのままであれば、ステップS190からステップS140へ進み、Hi/C指示圧が設定されて、ステップS150の判定が繰り返される。すなわち、スリップインターロック状態に制御されている場合は、ステップS20の判定において、アクセルオン又はブレーキスイッチ46がオフにされたと判定されるか、ステップS150において車両の動き出しを検知したと判定されたら、ステップS160へ進み、スリップインターロック状態が解除される。ステップS170では、フラグIL,NIL,SILがゼロにリセットされ、タイマが停止されると共にリセットされ、この演算周期をリターンする。
【0074】
[5.作用]
次に、
図5及び
図6を用いて、車両が下り坂(すなわちR<R
TH)に停車した場合に、本制御装置によるインターロック制御について、従来制御と比較しながら説明する。
図5は本制御装置によるインターロック制御に関するタイムチャートであり、
図6は比較例としての従来のインターロック制御に関するタイムチャートである。なお、従来のインターロック制御では、車速Vspがゼロでインターロックを開始し、ブレーキスイッチ46がオフに切り替えられるとインターロックを解除するものとする。
【0075】
まず、
図6を用いて従来制御での課題について説明する。
図6(a)〜(e)に示すように、アクセルオフでブレーキペダルが踏み込まれて減速し、時刻t
1において車速Vspがゼロになると、Hi/C指示圧が第一所定圧P1に高められる。これに伴ってHi/C実圧が上昇し、副変速機構30がインターロックされる。ここで、Hi/C圧は第一所定圧P1に制御されているため、仮にブレーキペダルを放したとしても車両の動きは副変速機構30により確実に停止させることができる。
【0076】
この状態で、時刻t
2から運転者によるブレーキ踏力がゆっくりと小さくされた場合、ブレーキ液圧は徐々に低下する。しかし、ブレーキ液圧が所定の閾値PB
TH以上であればブレーキスイッチ46はオンのままであるため、インターロック状態が維持される。さらにブレーキ液圧が低下し、時刻t
4においてブレーキスイッチ46はオンであるがブレーキ力(車両を静止させておくための制動力)が不足し始めたとすると、ブレーキ時に発生したドライブシャフトのねじりが解放される。
【0077】
これにより、
図6(e)中に矢印Aで示すように、車両にはプラスの加速度が発生する。しかしながら、このとき副変速機構30は、Hi/C圧が第一所定圧P1に制御されてインターロックされているため、ドライブシャフトを止めようとする力(反力)が作用する。そのため、
図6(e)中に矢印Bで示すように、車両にはマイナスの加速度が発生する。
【0078】
このとき、ブレーキ液圧が所定の閾値PB
TH未満になったとすると(時刻t
6)、ブレーキスイッチ46がオフに切り替わるため、インターロックが解除される。すなわち、ブレーキスイッチ46のオフと同時にHi/C圧が一気に解放される(Hi/C指示圧=0とされる)ため、
図6(e)中に矢印Cで示すように、車両には大きなG段差(突き上げG)が発生し、これが発進時のショックとなる。
【0079】
これに対し、本制御装置は、発進時のショックを抑制することが可能である。すなわち、
図5(a)〜(e)に示すように、アクセルオフでブレーキペダルが踏み込まれて減速し、時刻t
1において車速Vspがゼロになると、Hi/C指示圧が第一所定圧P1に高められる。これに伴ってHi/C実圧が上昇し、副変速機構30がインターロックされる。ここで、Hi/C圧は第一所定圧P1に制御されているため、仮にブレーキペダルを放したとしても車両の動きは副変速機構30により確実に停止させることができる。
【0080】
この状態で、時刻t
2から運転者によるブレーキ踏力がゆっくりと小さくされた場合、ブレーキ液圧は徐々に低下する。しかし、ブレーキ液圧は所定の閾値PB
TH以上であるためブレーキスイッチ46はオンのままとなる。ここで、インターロックを開始した時刻t
1から所定時間txが経過した時刻t
3において、車両の停止している路面の勾配Rが算出され、路面勾配Rの判定が行われる。
【0081】
ここでは、車両は下り坂に停車しておりSIL開始条件が成立するため、時刻t
3においてインターロックからスリップインターロックに移行され、Hi/C指示圧がランプ制御されながら第二所定圧P2まで低下される。すなわち、時刻t
3において、まずHi/C指示圧が第一所定圧P1からランプ圧P2′まで下げられ、その後は傾斜状にHi/C指示圧が下げられて、最終的に第二所定圧P2で一定に制御される。これにより、Hi/C実圧のアンダーシュートが防止される。
【0082】
この状態で、さらにブレーキ液圧が低下し、時刻t
4においてブレーキスイッチ46はオンであるがブレーキ力(車両を静止させておくための制動力)が不足し始めたとすると、ブレーキ時に発生したドライブシャフトのねじりが解放される。これにより、
図5(e)に示すように、車両にはプラスの加速度が発生する。このとき、副変速機構30はスリップインターロックされているため、車両の動きが止められることなく、車両は前方へ動き出す。
【0083】
時刻t
5において車両の動き出しが検知されると、Hi/C圧が解放されて(Hi/C指示圧=0とされて)スリップインターロックが解除され、車両はクリープ走行し始める。そして、時刻t
6においてブレーキ液圧が所定の閾値PB
TH未満になると、ブレーキスイッチ46がオフに切り替わる。
【0084】
なお、クリープ走行し始めた時点で、運転者が再びブレーキペダルを強く踏み込めば、車速Vspがゼロになるため、再びインターロックされる。また、勾配Rの判定が行われた時刻t
3以降でエンジン1が自動停止された場合であっても、勾配Rが所定値R
TH未満の平坦路又は下り坂でのみインターロックからスリップインターロックに移行されるため、車両の後方へのずり下がりは確実に防止される。
【0085】
[6.効果]
したがって、本実施形態に係る有段変速機構の制御装置によれば、アイドルストップ制御の判定において、ブレーキペダルが踏み込まれて車速Vspがゼロとなると、エンジン1の停止前に副変速機構30をインターロックさせる。このとき、Hi/C圧を第一所定圧P1まで高めるため、車両を確実に動かなくすることができる。また、エンジン停止に至らずに再発進するような場合であっても、路面勾配Rが所定値R
TH以下であれば、Hi/C圧を第一所定圧P1よりも低い第二所定圧P2に低下させてスリップインターロックさせる。これにより、発進時のショックを抑制することができ、発進性を向上させることができる。
【0086】
また、ブレーキペダルが緩やかに放されて、ブレーキスイッチ46はオンなのにブレーキ力は足りないような場合であっても、路面勾配Rが所定値R
TH以下のときはHi/C圧を第二所定圧P2に制御するため、発進時のショックの抑制することができ、発進性を向上させることができる。特に、ブレーキ力が不足するとクリープ走行が開始されるが、スリップインターロック状態であれば、クリープ走行を止めるような力が働かないため、スムーズな発進が可能となる。
【0087】
また、変速機4は、変速比を無段階に変化させるバリエータ20と、このバリエータ20の出力側に接続された有段変速機構としての副変速機構30とから構成されている。そのため、無段変速機でありながら、車速Vspがゼロのときには副変速機構30をインターロックさせることができる。また、バリエータ20を大型化することなく、とりうる変速比幅を大きくすることができる。
【0088】
また、Hi/C圧を第二所定圧P2に制御しているときに車両の動き出しが検知されたら、Hi/C圧をさらに低下させてスリップインターロックを解除するので、発進性をより向上させることができる。
【0089】
また、インターロック中の勾配判定で、路面勾配Rが所定値R
THよりも大きい場合は、Hi/C圧を第一所定圧P1に維持するため、ブレーキ力が不足した場合であっても車両を確実に停止させておくことができる。また、この場合は、インターロック解除時に車両が前方へ動こうとする力と自重とが打ち消しあうため、発進時の車両の突き出し感(G段差)が軽減されてショックを低減することができる。
【0090】
また、インターロックからスリップインターロックへ移行されるのは、車両が平坦路又は下り坂に停車している場合なので、車両が後方へずり下がることを確実に防止しながら、発進時のショックを抑制し、発進性を向上させることができる。
【0091】
[7.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上記実施形態では、車両の動き出しを入力回転速度センサ42から出力されたパルス信号数、または、前後Gセンサ47で検出された前後Gの変化率ΔGから求めているが、車両の動き出しの検知方法はこれに限られず、車両が動き出したことを検知できればよい。
【0092】
また、上記した各条件(インターロックの開始条件及び解除条件,スリップインターロックの開始条件及び解除条件)は一例であって、上記したものに限られない。例えば、上記の条件に加え、さらに他の条件が設けられていてもよいし、上記の条件のうち何れかを省略してもよい。また、上記の条件に代えて、他の条件を設定してもよい。
また、上記実施形態では、路面勾配Rの所定値R
THが平坦路と上り坂との境界値(R
TH>0)に予め設定されていたが、所定値R
THはこれに限られず、例えば所定値R
THをゼロに設定して、下り坂の場合のみインターロックからスリップインターロックに移行する構成としてもよい。
【0093】
また、ここでは有段変速機構として、バリエータ20の出力側に設けられた副変速機構30について説明したが、有段変速機構はこれに限られない。すなわち、発進に使用する第一クラッチを締結すると共に、これとは別の第二クラッチの油圧を高めてインターロックさせる有段式自動変速機(バリエータ20を有さない有段変速機構)にも適用可能である。
また、上記実施形態では、前進2段・後進1段の副変速機構30を例示したが、前進用の摩擦締結要素を三つ以上有する有段変速機構であってもよい。また、上記実施形態ではLow/B圧を一定として説明しているが、一定でなくてもよい。