(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶接部は、溶接により形成される線状の溶接痕であり、前記ガス流路の延びる方向に対して平行に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用の燃料電池カセット。
前記第1フレーム及び前記セパレータには、前記酸化剤ガス及び前記燃料ガスを流すガス流路を構成する穴部が、それぞれ形成されるとともに、溶接により前記穴部の周囲を封止する閉回路形状の溶接痕が形成され、
前記溶接部は、前記溶接により形成される線状の溶接痕であり、前記穴部の周囲の溶接痕に交差するよう設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用の燃料電池カセット。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を燃料電池に具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0029】
図1及び
図2に示されるように、本実施の形態の燃料電池1は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。燃料電池1は、燃料電池カセット2を複数個(例えば20個)積層してなる燃料電池スタック3を備えている。燃料電池スタック3は、縦180mm×横180mm×高さ80mmの略直方体状をなしている。また、燃料電池スタック3は、同燃料電池スタック3を厚さ方向に貫通する8つの貫通孔4を有している。なお、燃料電池スタック3の四隅にある4つの貫通孔4に締結ボルト5を挿通させ、燃料電池スタック3の下面から突出する締結ボルト5の下端部分にナット(図示略)を螺着させる。また、残り4つの貫通孔4にガス流通用締結ボルト6を挿通させ、燃料電池スタック3の上面及び下面から突出するガス流通用締結ボルト6の両端部分にナット7を螺着させる。その結果、燃料電池スタック3において複数の燃料電池カセット2が固定される。
【0030】
図2及び
図3に示されるように、各燃料電池カセット2は、発電の最小単位である平板状の単セル11と、セパレータ12と、燃料極フレーム13(第1フレーム)と、インタコネクタ14とを積層し、各部材を溶接にて接合してなる接合体である。また、燃料電池カセット2は、セパレータ12において、燃料極フレーム13が配置される一方の表面19(
図2では下面)の裏面側となる他方の表面20(
図2では上面)に配置される空気極絶縁フレーム15(第2フレーム)を更に有している。
【0031】
単セル11は、空気極21、燃料極22及び固体電解質層23を有して構成され、発電反応により電力を発生する。燃料極フレーム13は、厚さが2mm程度の導電性材料(例えばステンレスなどの金属板)によって形成された略矩形枠状の金属製フレームであり、単セル11の側面を囲むように配置される。つまり、燃料極フレーム13の中央部には、同燃料極フレーム13を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部31が設けられており、その開口部31よりも内側に単セル11が配置されている。
【0032】
セパレータ12は、厚さ0.1mmの導電性材料(例えばステンレスなどの金属板)によって形成されており、矩形状の開口部32を中央部に有する略矩形枠状をなしている。セパレータ12は、銀を含むロウ材を用いたロウ付けによって単セル11(固体電解質層23)の周縁部に接合されるとともに、燃料極フレーム13の一方の表面34(
図2では上面)に配置される。セパレータ12は、セル11間の仕切り板として機能し、空気極21に接する酸化剤ガス(空気)及び燃料極22に接する燃料ガスを分離する。
【0033】
インタコネクタ14は、厚さが0.8mm程度の導電性材料(例えばステンレスなどの金属板)によって略矩形板状に形成されている。インタコネクタ14は、燃料極フレーム13においてセパレータ12が配置される一方の表面34の裏面側となる他方の表面35(
図2では下面)側に配置される。
【0034】
燃料電池スタック3において複数の燃料電池カセット2を積層配置した場合、エンドプレート8,9は、単セル11の厚み方向の両側に一対配置される。各インタコネクタ14は、ガス流路を形成するとともに、隣接する単セル11同士を導通させるようになっている。隣り合う単セル11の間に配置されるインタコネクタ14は、隣り合う単セル11を区分する。両エンドプレート8,9は、燃料電池スタック3を挟持しており、燃料電池スタック3から出力される電流の出力端子となっている。なお、エンドプレート8,9は、インタコネクタ14よりも肉厚になっている。
【0035】
空気極絶縁フレーム15は、厚さ1.0mm程度のマイカシートによって略矩形枠状に形成されている。空気極絶縁フレーム15の中央部には、同絶縁フレーム15を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部37が設けられている。
【0036】
単セル11を構成する固体電解質層23は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミック材料(酸化物)によって形成され、厚さ0.01mmの略矩形板状をなしている。固体電解質層23は、セパレータ12の下面に固定されるとともに、セパレータ12の開口部32を塞ぐように配置されている。固体電解質層23は、酸素イオン伝導性固体電解質体として機能するようになっている。
【0037】
また、固体電解質層23の上面には、燃料電池スタック3に供給された酸化剤ガスに接する空気極21が貼付され、固体電解質層23の下面には、同じく燃料電池スタック3に供給された燃料ガスに接する燃料極22が貼付されている。即ち、空気極21及び燃料極22は、固体電解質層23の両側に配置されている。また、空気極21は、セパレータ12の開口部32内に配置され、セパレータ12と接触しないようになっている。なお、本実施の形態では、燃料極フレーム13の開口部31、インタコネクタ14等によってセパレータ12の下方に燃料室17が形成されるとともに、空気極絶縁フレーム15の開口部37、インタコネクタ14等によってセパレータ12の上方に空気室18が形成されている。
【0038】
本実施の形態の単セル11において、空気極21は、金属の複合酸化物であるLSCF(La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3)によって矩形板状に形成されている。また、燃料極22は、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアとの混合物(Ni−YSZ)によって矩形板状に形成されている。単セル11において、空気極21はカソード層として機能し、燃料極22はアノード層として機能する。空気極21は、空気極側集電体38によってインタコネクタ14に電気的に接続され、燃料極22は、燃料極側集電体39によってインタコネクタ14に電気的に接続されている。
【0039】
燃料電池スタック3(各燃料電池カセット2)には、酸化剤ガス及び燃料ガスを流すマニホールドが形成されている。燃料電池スタック3に形成されるマニホールドは、各燃料電池カセット2の積層方向に延設される縦孔部と、縦孔部に接続されてそれぞれの単セル11に繋がるガス流路を分岐または集合すべく積層方向と直交する方向に延設される横孔部とを有する。
【0040】
具体的には、
図2に示されるように、燃料電池スタック3のマニホールドとして、各単セル11の燃料室17に燃料ガスを供給する燃料供給経路50と、燃料室17から燃料ガスを排出する燃料排出経路51とが形成されている。燃料供給経路50は、ガス流通用締結ボルト6の中心部において軸方向に沿って延びる燃料供給孔52(縦孔部)と、燃料供給孔52及び燃料室17を連通させる燃料供給横孔53(横孔部)とによって構成されている。また、燃料排出経路51は、ガス流通用締結ボルト6の中心部において軸方向に沿って延びる燃料排出孔54(縦孔部)と、燃料排出孔54及び燃料室17を連通させる燃料排出横孔55(横孔部)とによって構成されている。よって、燃料ガスは、燃料供給孔52及び燃料供給横孔53を順番に通過して燃料室17に供給され、燃料排出横孔55及び燃料排出孔54を順番に通過して燃料室17から排出される。
【0041】
さらに燃料電池スタック3のマニホールドとして、各単セル11の空気室18に空気を供給する空気供給経路(図示略)と、空気室18から空気を排出する空気排出経路(図示略)とを備えている。空気供給経路は、燃料供給経路50と略同様の構造を有しており、ガス流通用締結ボルト6の中心部において軸方向に沿って延びる空気供給孔(図示略)と、空気供給孔及び空気室18を連通させる空気供給横孔(図示略)とによって構成されている。また、空気排出経路は、燃料排出経路51と略同様の構造を有しており、ガス流通用締結ボルト6の中心部において軸方向に沿って延びる空気排出孔(図示略)と、空気排出孔及び空気室18を連通させる空気排出横孔(図示略)とによって構成されている。よって、空気は、空気供給孔(縦孔部)及び空気供給横孔(横孔部)を順番に通過して空気室18に供給され、空気排出横孔(横孔部)及び空気排出孔(縦孔部)を順番に通過して空気室18から排出される。
【0042】
本実施の形態において、燃料電池カセット2を構成するセパレータ12、燃料極フレーム13及びインタコネクタ14などの平板状の金属部材は、レーザ溶接によって各々接合されている。
図4には、燃料電池カセット2において、セパレータ12側から見た燃料極フレーム13との溶接部(溶接痕70〜72,77)を示している。
【0043】
図4に示されるように、セパレータ12には、中央部の開口部32に加えて、縁部に複数の穴部60が貫通形成されている。燃料極フレーム13、インタコネクタ14及び空気極絶縁フレーム15にも、同じ位置に複数の穴部60がそれぞれ貫通形成されている(
図3参照)。各穴部60は、締結ボルト5やガス流通用締結ボルト6を挿通させる貫通孔4(
図2参照)の一部を構成するものであり、円形状の穴部60aと楕円形状の穴部60bとを含む。
【0044】
ここで、セパレータ12及び燃料極フレーム13に形成される楕円形状の穴部60bは、上述したマニホールドを形成するための穴部である。より詳しくは、
図4のセパレータ12の上下に形成される楕円形状の穴部60bにおいて、上側は燃料ガス供給用のガス流路(燃料供給経路50)を形成するための穴部であり、下側は燃料ガス排出用のガス流路(燃料排出経路51)を形成するための穴部である。また、セパレータ12の左右に形成される楕円形状の穴部60bにおいて、左側は酸化剤ガス供給用のガス流路(空気供給経路)を形成するための穴部であり、右側は酸化剤ガス排出用のガス流路(空気排出経路)を形成するための穴部である。さらに、左右に配置される楕円形状の穴部60bには、その上下方向に細長の穴部60cが延設されている。これら穴部60b及び穴部60cは、マニホールドの縦孔部と横孔部との分岐箇所に対応する分岐用穴部60dであり、楕円形状の穴部60bが縦孔部に相当し、上下方向に延びる穴部60cが横孔部に相当する。
【0045】
そして、セパレータ12の外周部65には、燃料極フレーム13と接合するために、レーザ溶接による閉回路形状の溶接痕70(レーザ溶接痕)が形成されている。さらに、セパレータ12における各穴部60(60a,60d)の周囲にも、レーザ溶接による閉回路形状の溶接痕71,72(レーザ溶接痕)が形成されている。閉回路形状の溶接痕71は、各穴部60aの外形形状に沿って形成されており、閉回路形状の溶接痕72は、各分岐用穴部60dの外形形状に沿って形成されている。また、インタコネクタ14にも、燃料極フレーム13と接合するために、レーザ溶接による閉回路形状の溶接痕が同様に形成されている。なお、インタコネクタ14の表面及びセパレータ12の表面における溶接痕70〜72の線幅は0.1mm程度である。
【0046】
このように、燃料極フレーム13の上面34にセパレータ12をレーザ溶接するとともに燃料極フレーム13の下面35にインタコネクタ14をレーザ溶接することで、燃料電池カセット2の各部材12〜14が接合される。また、閉回路形状の溶接痕70〜72によって各穴部60や外周部65が封止されることにより、燃料電池カセット2の内側に閉じた空間として燃料室17が形成されるようになっている。
【0047】
図5に示されるように、本実施の形態の空気極絶縁フレーム15には、酸化剤ガスのガス流路75,76(横孔部としての空気供給横孔75及び空気排出横孔76)が複数形成されている。本実施の形態では、空気極絶縁フレーム15において左右の楕円形状の穴部60b(空気供給用の穴部及び空気排出用の穴部)の上方及び下方となる位置にそれぞれ3本ずつガス流路75,76が形成されている。これらガス流路75,76の幅は1.5mm程度であり、長さは15mm程度である。そして、
図4〜
図6に示されるように、これらガス流路75,76内においてセパレータ12の露出する部位に、レーザ溶接による線状の溶接痕77(溶接部としてのレーザ溶接痕)が形成されている。溶接痕77は、1つのガス流路75,76に対して1つの溶接痕77が設けられるとともに、ガス流路75,76の延びる方向に対して平行に直線的に設けられている。各溶接痕77の線幅は0.1mm程度である。これら溶接痕77を設けることにより、ガス流路75,76内においてセパレータ12の露出する部位が燃料極フレーム13に固定される。
【0048】
溶接痕77の一方の端部は、分岐用穴部60dの周囲を封止する閉回路形状のレーザ溶接痕72に交差するよう設けられるとともに、溶接痕77の他方の端部は、燃料極フレーム13の内端78よりもセル側にはみ出さないように設けられている。このように、セル側にはみ出さないように溶接痕77を形成する場合、その形成時において燃料極フレーム13の存在しない箇所に対してレーザ溶接が行われることが回避される。なお、空気極絶縁フレーム15は、燃料極フレーム13と外形寸法がほぼ等しく形成されており、燃料極フレーム13の内端78の位置と空気極絶縁フレーム15の内端79の位置とが一致するように配置されている。
【0049】
上記のように構成した燃料電池1において、例えば、稼働温度(700℃程度)に加熱した状態で、燃料供給経路50から燃料室17に燃料ガスを導入するとともに、空気供給経路(ガス流路75を含む供給経路)から空気室18に空気を供給する。その結果、燃料ガス中の水素と空気中の酸素とが固体電解質層23を介して反応(発電反応)し、空気極21を正極、燃料極22を負極とする直流の電力が発生する。なお、本実施の形態の燃料電池スタック3は、単セル11を複数積層して直列に接続しているため、空気極21に電気的に接続される上側エンドプレート8が正極となり、燃料極22に電気的に接続される下側エンドプレート9が負極となる。
【0050】
次に、燃料電池1の製造方法を説明する。
【0051】
先ず、単セル11を、従来周知の手法に従って形成する。具体的には、燃料極22となるグリーンシート上に固体電解質層23となるグリーンシートを積層し、焼成する。さらに、固体電解質層23上に空気極21の形成材料を印刷した後、焼成する。この時点で、単セル11が形成される。
【0052】
次に、ステンレス板を打ち抜くことにより、穴部60を有するセパレータ12、燃料極フレーム13及びインタコネクタ14を形成する。また、マイカシートを所定形状に形成することにより、空気極絶縁フレーム15を形成する。具体的には、市販のマイカシート(マイカと成形用樹脂との複合体からなるシート)を切断して他の部材(燃料極フレーム13など)と略同じ外形形状に形成する。このとき、空気極絶縁フレーム15には、複数の穴部60(60a,60b)とガス流路75,76とが形成される。なお、マイカシートに含まれている樹脂成分は、他の部材と共に積層された後に行われる熱処理によって蒸発する。さらに、マイカシートは、各燃料電池カセット2を積層方向にボルト締めした際に他の部材(セパレータ12及びインタコネクタ14)に挟まれることによって、各部材をシールするようになっている。
【0053】
次に、セパレータ12、燃料極フレーム13及びインタコネクタ14をレーザ溶接により接合する。具体的には、セパレータ12及び燃料極フレーム13における各穴部60の位置合わせを行いつつ、
図7に示されるように、セパレータ12及び燃料極フレーム13を重ね合わせた状態で溶接治具装置100(上治具101と下治具102との間)に配置する(配置ステップ)。そして、図示しない固定部材(ボルト、ナット、クランプ部材など)によって上治具101と下治具102とを締め付けることでセパレータ12及び燃料極フレーム13を固定する。
【0054】
溶接治具装置100の上治具101には、溶接部位を露呈させる開口部103が形成されている。そして、レーザ照射装置105を用い、所定の照射条件(例えば、出力が150W、ビーム径が0.1mm程度)にて上治具101の開口部103に沿ってレーザL1を照射する(溶接ステップ)。ここでは、セパレータ12側からレーザL1を照射し、燃料極フレーム13にセパレータ12をレーザ溶接する。なお、レーザ照射装置105としては、例えばファイバーレーザなどの照射装置が用いられる。ファイバーレーザは、波長が1080nmのレーザL1を照射する固体レーザである。また、図示しないX−Yテーブルを用いて溶接治具装置100を水平方向に移動させることで、上治具101の開口部103に沿ってレーザL1を照射するように構成している。
【0055】
本実施の形態の溶接ステップでは、2種類の上治具101を準備し、2回に分けてレーザ溶接を行っている。より詳しくは、例えば第1の上治具101を用い、その上治具101の開口部103に沿ってレーザL1を照射することにより、外周部65における閉回路形状のレーザ溶接痕70を形成するとともに、分岐用穴部60dの周囲のレーザ溶接痕72のうち、縦線の部分の溶接痕を形成する。その後、第1の上治具101から第2の上治具101に交換し、第2の上治具101の開口部103に沿ってレーザL1を照射することにより、円形状の穴部60aの周囲のレーザ溶接痕71を形成するとともに、分岐用穴部60dの周囲のレーザ溶接痕72のうち、縦線以外の部分(曲線の部分)の溶接痕を形成する。またこのとき、ガス流路75,76内におけるセパレータ12の露出する部位となる位置にレーザL1を照射し、その部位を燃料極フレーム13に固定する直線状のレーザ溶接痕77(溶接部)を形成する。この結果、セパレータ12と燃料極フレーム13とが接合される。
【0056】
レーザ溶接の後、接合したセパレータ12と燃料極フレーム13とを溶接治具装置100から一旦取り出す。そして、セパレータ12を、ロウ付けによって単セル11の固体電解質層23に対して固定する。具体的には、固体電解質層23とセパレータ12とのそれぞれにロウ材を配置した後、大気雰囲気下で、例えば850〜1100℃で加熱することでロウ材を溶融させて、固体電解質層23とセパレータ12とを接合する。
【0057】
その後、上記と同様の溶接治具装置を用いて、燃料極フレーム13の表面35側(裏面側)にインタコネクタ14をレーザ溶接する。ここでは、レーザ照射装置105により、インタコネクタ14側からレーザL1を照射する。なお、インタコネクタ14は、セパレータ12よりも厚いため、レーザ出力を300Wとした状態でレーザL1を照射して、燃料極フレーム13にインタコネクタ14をレーザ溶接する。この結果、燃料電池カセット2を構成する金属部材12〜14の接合体が形成される。
【0058】
そして、金属部材12〜14の接合体と空気極絶縁フレーム15とを重ね合わせて積層することで燃料電池カセット2を構成し、その燃料電池カセット2を複数積層して一体化することにより、燃料電池スタック3を形成する。さらに、燃料電池スタック3の四隅にある4つの貫通孔4に締結ボルト5を挿通させ、燃料電池スタック3の下面から突出する締結ボルト5の下端部分にナット(図示略)を螺着させる。また、残り4つの貫通孔4にガス流通用締結ボルト6を挿通させ、燃料電池スタック3の上面及び下面から突出するガス流通用締結ボルト6の両端部分にナット7を螺着させる。その結果、燃料電池スタック3において各燃料電池カセット2が固定され、燃料電池1が完成する。
【0059】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0060】
(1)本実施の形態の燃料電池カセット2では、空気極絶縁フレーム15の部分にガス流路75,76が形成され、各ガス流路75,76内においてセパレータ12が露出する部位に溶接痕77が形成されている。そして、その溶接痕77によって、セパレータ12の露出する部位が燃料極フレーム13に固定される。このようにすると、燃料極フレーム13とセパレータ12との熱膨張差が生じた場合であっても、ガス流路75,76内におけるセパレータ12の変形(フクレ等)が防止される。このため、従来のようにガス流路75,76内においてセパレータ12が変形して反応ガスの流れを阻害するといった問題を回避することができる。従って、単セル11の空気極21に対して酸化剤ガスが偏って流れることが回避され、酸化剤ガスの流配を効率よく行うことができる。また、ガス流路75,76内においてセパレータ12が変形しないため、従来のようにセパレータ12の変形による単セル11間での短絡も防止することができる。この結果、単セル11における酸化剤ガスの利用率の低下が防止され、電池特性を良好に維持することができる。
【0061】
(2)本実施の形態の燃料電池カセット2において、セパレータ12の厚みは、インタコネクタ14の厚みより薄くなっている。この場合、セパレータ12の変形(フクレ等)が発生し易くなるが、本実施の形態のように溶接痕77を形成することにより、燃料極フレーム13にセパレータ12を固定することができるため、ガス流路75,76内におけるセパレータ12の変形を確実に抑えることができる。
【0062】
(3)本実施の形態の燃料電池カセット2では、線状の直線的な溶接痕77がガス流路75,76の延びる方向に対して平行に設けられている。このようにすると、溶接痕77によって酸化剤ガスの流れを妨げることなくセパレータ12を燃料極フレーム13に確実に固定することができる。
【0063】
(4)本実施の形態の燃料電池カセット2において、セパレータ12及び燃料極フレーム13には、ガス流路を構成する穴部60(60a〜60d)が形成され、溶接により穴部60の周囲を封止する閉回路形状の溶接痕71,72が形成されている。そして、ガス流路75,76内において、分岐用穴部60dの周囲の溶接痕72に交差するように溶接痕77が設けられている。燃料電池カセット2において、分岐用穴部60dの近傍には比較的大きなガス圧(ガス流路を流れる酸化剤ガスの圧力)が加わる。このため、本実施の形態のように分岐用穴部60dの周囲における溶接痕72に交差するように溶接痕77を形成することで、比較的大きなガス圧が加わる部位においてセパレータ12を燃料極フレーム13に確実に固定することができ、セパレータ12の変形を防止することができる。
【0064】
(5)本実施の形態において、セパレータ12と燃料極フレーム13とを接合する溶接は、ファイバーレーザによる溶接である。この場合、小さいスポットサイズに焦点を合わせることができるため、溶接痕70〜72,77の線幅を0.1mm程度とすることができる。従って、熱歪みを抑えつつ燃料極フレーム13にセパレータ12を確実に溶接することができ、燃料電池カセット2におけるシール性を十分に確保することができる。また、ファイバーレーザを用いることで、レーザ照射装置105の小型化が可能となる。
【0065】
(6)本実施の形態の溶接ステップでは、穴部60の周囲に沿ってレーザL1を照射して穴部60の周囲を封止する閉回路形状のレーザ溶接痕71,72を形成している。またこのとき、ガス流路75,76内におけるセパレータ12の露出する部位となる位置にレーザL1を照射して溶接痕77を形成し、セパレータ12の露出する部位を燃料極フレーム13に固定している。このようにすると、穴部60の周囲のガス流路の封止とセパレータ12の固定とを同じレーザ溶接にて行うことができるため、燃料電池カセット2を効率よく製造することができる。また、本実施の形態では、2種類の上治具101を用いて2回に分けてレーザ溶接を行い、分岐用穴部60dの周囲のレーザ溶接痕72のうち縦線の部分と、それと交差する溶接痕77とを別々に溶接している。このようにすると、レーザ溶接痕72と溶接痕77との交差部分を確実に形成することができる。
【0066】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0067】
・上記実施の形態の燃料電池カセット2において、1つのガス流路75,76に対して1つの溶接痕77が形成されていたが、これに限定されるものではなく、
図8に示されるように、1つのガス流路81,82に対して複数の溶接痕83を形成してもよい。具体的には、
図8に示す空気極絶縁フレーム15には、穴部60bの長径と等しい幅を有するガス流路81,82が形成されている。そして、ガス流路81,82においてセパレータ12の露出する部位には、ガス流路81,82(横孔部)の延びる方向に平行な複数本の溶接痕83が形成されている。このようにしても、ガス流路81,82内において、セパレータ12の露出する部位を燃料極フレーム13に確実に固定することができるため、セパレータ12の変形を防止することができる。
【0068】
・上記実施の形態の燃料電池カセット2では、溶接部として、ガス流路75,76,81,82(横孔部)の延びる方向に平行な線状の溶接痕77,83を形成していたが、
図9に示されるように、ガス流路81(横孔部)の延びる方向Y1に対して垂直な線状の溶接痕85を形成してもよい。さらに、
図10に示されるように、溶接部としては、ガス流路81(横孔部)の延びる方向Y1に対して傾斜した線状の溶接痕86を形成してもよい。また、
図11に示されるように、溶接部として、ガス流路81(横孔部)の縦横方向に交差する網目状に溶接痕87を形成してもよい。さらには、溶接部は、線状の溶接痕に限定されるものではなく、
図12に示されるように、ガス流路81(横孔部)の縦横方向に所定間隔を開けてドット状に複数の溶接痕88を形成してもよい。このように、1つのガス流路81に対して複数の溶接部85〜88を形成することで、ガス流路81内においてセパレータ12の露出する部位を燃料極フレーム13に確実に固定することができ、ガス流路81内でのセパレータ12の変形を防止することができる。
【0069】
・上記実施の形態の燃料電池カセット2では、ガス流路75,76毎に溶接痕77が形成されていたが、これに限定されるものではなく、複数のガス流路75,76に交差するよう比較的長い線状の溶接痕を形成してもよい。なおこの場合、線状の溶接痕をクランク状やジグザグ状に形成してその一部が各ガス流路75,76にて露出するように形成する。このようにしても、ガス流路75,76内において、セパレータ12の露出する部位を燃料極フレーム13に固定することができ、セパレータ12の変形を防止することができる。
【0070】
・上記実施の形態では、燃料極フレーム13と空気極絶縁フレーム15とが同じ外形寸法で形成されていたがこれに限定されるものではない。例えば、
図13に示されるように、燃料極フレーム13の内端78が空気極絶縁フレーム15の内端79よりもセル側にはみ出すように配設されていてもよい。この場合、
図14に示されるように、ガス流路75,76内におけるセパレータ12の露出する部位には、空気極絶縁フレーム15の内端79よりもセル側にはみ出るように線状の溶接痕77が形成される。このように溶接痕77を形成すると、空気極絶縁フレーム15に形成されたガス流路75の出口付近やガス流路76の入口付近において、溶接痕77によりセパレータ12を燃料極フレーム13に固定することができ、セパレータ12の変形を確実に防止することができる。また、
図15に示されるように、空気極絶縁フレーム15の内端79が燃料極フレーム13の内端78よりもセル側にはみ出すように配設してもよい。この場合、
図16に示されるように、ガス流路75,76内におけるセパレータ12の露出する部位には、空気極絶縁フレーム15の内端79よりもセル側にはみ出さないように線状の溶接痕77が形成される。このように溶接痕77を形成すると、燃料極フレーム13の存在しない箇所に対してレーザ溶接が行われることを回避することができる。
【0071】
・上記実施の形態では、ファイバーレーザを用いたレーザ溶接によって溶接痕77,83,85〜88(溶接部)を形成していたが、ファイバーレーザ以外に、炭酸ガスレーザやYAGレーザを用いたレーザ溶接にて溶接部を形成してもよい。さらに、レーザ溶接以外に、例えばシームレス溶接(抵抗溶接)やロウ付けなどの他の手法によって溶接部を形成してもよい。
【0072】
・上記実施の形態では、固体酸化物形燃料電池に具体化するものであったが、これ以外に溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)などの他の燃料電池に具体化してもよい。
【0073】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0074】
(1)手段1において、前記溶接部は、前記溶接により形成される線状の溶接痕であり、複数の前記溶接痕が交差するよう設けられていることを特徴とする燃料電池カセット。
【0075】
(2)手段1において、前記セパレータの厚みは、0.04mm以上0.3mm以下であることを特徴とする燃料電池カセット。
【0076】
(3)手段1において、前記溶接部が形成される前記ガス流路は、前記酸化剤ガスを流す流路であることを特徴とする燃料電池カセット。
【0077】
(4)手段1において、前記第1フレームは、金属板を用いて矩形枠状に形成された金属製フレームであることを特徴とする燃料電池カセット。
【0078】
(5)手段1において、前記第2フレームは、マイカを用いて矩形枠状に形成されたマイカ製フレームであることを特徴とする燃料電池カセット。
【0079】
(6)手段1において、前記第1フレームの内端が前記第2フレームの内端よりもセル側にはみ出すように配設され、前記溶接部は、前記第2フレームの内端よりも前記セル側にはみ出るように形成された線状のレーザ溶接痕であることを特徴とする燃料電池カセット。
【0080】
(7)手段1において、前記第2フレームの内端が前記第1フレームの内端よりもセル側にはみ出すように配設され、前記溶接部は、前記第2フレームの内端よりも前記セル側にはみ出さないように形成された線状のレーザ溶接痕であることを特徴とする燃料電池カセット。
【0081】
(8)手段1において、前記電解質層は、固体酸化物からなる固体電解質層であることを特徴とする燃料電池カセット。
【0082】
(9)手段2において、各燃料電池カセットに形成される前記マニホールドは、前記燃料電池カセットの積層方向に延設される縦孔部と、前記縦孔部に接続されてそれぞれの前記燃料電池セルに繋がるガス流路を分岐または集合すべく前記積層方向と直交する方向に延設される横孔部とを有するガス流路であり、前記溶接部は、前記横孔部内に露出する部位に形成されることを特徴とする燃料電池スタック。
【0083】
(10)技術的思想(9)において、前記溶接部は、前記横孔部の延びる方向に対して垂直な線状のレーザ溶接痕を有することを特徴とする燃料電池スタック。
【0084】
(11)技術的思想(9)において、前記溶接部は、前記横孔部の延びる方向に対して傾斜した線状のレーザ溶接痕を有することを特徴とする燃料電池スタック。
【0085】
(12)技術的思想(9)において、前記溶接部は、縦横方向に交差する網目状に形成されたレーザ溶接痕を有することを特徴とする燃料電池スタック。
【0086】
(13)技術的思想(9)において、前記溶接部は、縦横方向に所定間隔を開けてドット状に形成された溶接痕を有することを特徴とする燃料電池スタック。
【0087】
(14)技術的思想(9)において、前記溶接部は、複数の前記横孔部に対して交差するように形成された線状のレーザ溶接痕を有することを特徴とする燃料電池スタック。
【0088】
(15)手段1に記載の燃料電池カセットの製造方法であって、前記ガス流路を構成する穴部が形成された前記セパレータ及び前記第1フレームを準備し、前記穴部の位置を合わせつつ前記セパレータ及び前記第1フレームを重ね合わせて配置する配置ステップと、前記穴部の周囲に沿ってレーザを照射して前記穴部の周囲を封止する閉回路形状のレーザ溶接痕を形成するとともに、前記ガス流路内における前記セパレータの露出する部位となる位置にレーザを照射して、前記セパレータの露出する部位を前記第1フレームに固定する前記溶接部を形成する溶接ステップとを含むことを特徴とする燃料電池カセットの製造方法。