特許第6039119号(P6039119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6039119
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20161128BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20161128BHJP
   G01N 21/896 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G01N21/84 E
   G01N21/892 A
   G01N21/892 B
   G01N21/896
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-31879(P2016-31879)
(22)【出願日】2016年2月23日
【審査請求日】2016年4月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591114641
【氏名又は名称】株式会社ヒューテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昌裕
(72)【発明者】
【氏名】大西 拓二
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−036948(JP,A)
【文献】 特開昭64−088238(JP,A)
【文献】 米国特許第06082885(US,A)
【文献】 米国特許第05873645(US,A)
【文献】 特表2006−524806(JP,A)
【文献】 特開2014−122825(JP,A)
【文献】 特開2013−205041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 − G01N 21/958
G01B 11/00 − G01B 11/30
F21V 1/00 − F21V 15/04
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が平坦面である被検査対象の欠陥を検査する装置であって、
前記被検査対象に向けて直線状の光を放出する投光手段と、
該投光手段からの前記光を、前記被検査対象を経由して受光する撮影手段と、が備えられており、
前記投光手段には、
光源と、該光源と前記被検査対象との間に設けられている、該光源から前記被検査対象に照射される前記光を制限する遮光部材と、が備えられており、
前記撮影手段には、
複数の受光素子からなる撮像部と、前記被検査対象を経由した前記光を集光して、前記受光素子に入射させるレンズと、が備えられており、
該遮光部材には、
前記光源から放出される前記光を通過させ、不要散乱光を制限する光通過孔が、前記直線状の前記光の長手方向に複数設けられており、
該光通過孔は、前記被検査対象の表面に欠陥がない場合、該光通過孔を通過して、前記被検査対象を経由した前記光が全て前記レンズに集光されるように形成されており、
前記遮光部材が、あらかじめ定められた形状に変形させられているハニカム構造体を含んで構成され、
該ハニカム構造体の有する六角柱構造の筒状体が前記光通過孔である、
ことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記ハニカム構造体が、アルミニウム製であり、
表面に黒色のアルマイト処理が施されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査装置に関する。さらに詳しくは、被検査対象を、光学的手法によって検査する欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面が平坦面である被検査対象において、その表面の欠陥、例えば、スジ状の傷などの検査には、光学的手法を用いた検査が行われている。かかる検査では、LED等の光源から発せられる光を被検査対象の表面に照射する。すると、被検査対象の表面が平坦面であれば、正常な表面では正反射のみが生じる一方、欠陥が存在する表面では、乱反射により散乱光が発生する。したがって、撮影手段によって被検査対象を撮影すれば、撮影された散乱光の強度に基づいて、傷等の欠陥の有無を判断することができる。なお、被検査対象が透明である場合には、反射光だけでなく、透過光を用いて欠陥の検査を行うことも可能である。
【0003】
特許文献1では、反射光による光学的手法を用いた検査装置が開示されている。本文献で開示されている欠陥検査装置では、直線状の光源から被検査対象の表面に光を照射するとともに、被検査対象を一定速度で動作させる。さらにこの欠陥検査装置には、発光体の近傍に、発光体の軸方向に複数のスリットを設けられている。これらのスリットは、スリットを通過して金属表面等で反射した反射光が、撮影手段に設けられているレンズに集光されるよう、それぞれが所定の角度になるように構成されている。すなわち、上記の構成は、被検査対象の一の部分に照射させられる光を、あらかじめ定められたスリットから照射される光になるように、欠陥から生じる散乱光以外の散乱光(本明細書では、本来測定には含まれるべきではない散乱光を「不要散乱光」と称する)をできるだけ制限している。
【0004】
このような構成により、均一な凹凸より深い凹凸欠陥を光らせることが可能となり、被検査対象の表面が、ヘアラインや梨地肌のような細かな凹凸を有する表面である場合、表面の傷等の欠陥を被検査対象全体に亘って検出することができる。
【0005】
しかるに、特許文献1の構成の欠陥検査装置は、遮光プレートの角度を調整する構成が必要となり、遮光プレートが数mm程度の厚さを持つ必要がある。このため、被検査対象を経由した光、すなわち被検査対象の表面で反射した反射光や、被検査対象を透過した透過光に、この遮光プレートにより生じる影の影響をなくすよう、不要散乱光をある程度含ませるなどする必要があり、そのため、比較的小さな欠陥による散乱光を検出することが難しいという問題がある。
【0006】
また、遮光プレートは、直線状の光源の長手方向の光を制限することはできるが、短手方向の光を制限することができず、反射光や透過光に短手方向からの不要散乱光が含まれ過ぎてしまい、これによっても、小さな欠陥による散乱光を検出することが難しくなる。
【0007】
加えて、遮光プレートにより構成されるスリットを適切に角度にするために、多くの遮光プレートを精度よく組み立てる必要があり、作業に時間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−36948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、表面が平坦面である被検査対象の、より微細な欠陥を検査することができる欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の欠陥検査装置は、表面が平坦面である被検査対象の欠陥を検査する装置であって、前記被検査対象に向けて直線状の光を放出する投光手段と、該投光手段からの前記光を、前記被検査対象を経由して受光する撮影手段と、が備えられており、前記投光手段には、光源と、該光源と前記被検査対象との間に設けられている、該光源から前記被検査対象に照射される前記光を制限する遮光部材と、が備えられており、前記撮影手段には、複数の受光素子からなる撮像部と、前記被検査対象を経由した前記光を集光して前記受光素子に入射させるレンズと、が備えられており、該遮光部材には、前記光源から放出される前記光を通過させ、不要散乱光を制限する光通過孔が、前記直線状の前記光の長手方向に複数設けられており、該光通過孔は、前記被検査対象の表面に欠陥がない場合、該光通過孔を通過して、前記被検査対象を経由した前記光が全て前記レンズに集光されるように形成されており、前記遮光部材が、あらかじめ定められた形状に変形させられているハニカム構造体を含んで構成され、該ハニカム構造体の有する六角柱構造の筒状体が前記光通過孔であることを特徴とする。
第2発明の欠陥検査装置は、第1発明において、前記ハニカム構造体が、アルミニウム製であり、表面に黒色のアルマイト処理が施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、投光手段に設けられている遮光部材が、光源から放出させる光を通過させる光通過孔を、直線状の光の長手方向に複数設けていることにより、被検査対象の一の部分に照射させられる光が、あらかじめ定められた光通過孔を通過した光のみに制限される。すなわち、不要散乱光を、反射光や透過光に必要以上に含まないようにすることができ、傷などの欠陥により発生する散乱光を、撮影手段が適切にとらえることができ、微細な欠陥を検査することができる。
また、遮光部材が、ハニカム構造体を変形させることにより構成され、ハニカム構造体の有する六角柱構造の筒状体が光通過孔であることにより、ハニカム構造体を構成する壁が薄いので、不要散乱光を、反射光や透過光に必要以上に含ませる必要がなく、傷などの欠陥により発生する散乱光を、撮影手段がより適切にとらえることができ、より微細な欠陥を検査することができる。また、ハニカム構造体をあらかじめ定められた曲率で変形させるだけで、多数の光通過孔を有する遮光部材を精度よく、かつ容易に作成できる。
第2発明によれば、ハニカム構造体がアルミニウム製であることにより、SUS等と比較して軽量であるとともに、プラスチック等と比較して耐久性を高くできる。また表面に黒色のアルマイト処理が施されていることにより、光通過孔の壁に照射された光の反射を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る欠陥検査装置を構成する遮光部分の三面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る欠陥検査装置の概略の平面図である。
図3図3(A)は、本発明の第1実施形態に係る欠陥検査装置の概略の側面図であり、図(B)は撮影方法の概略説明図である。
図4図1の遮光部材を含む投光手段の概略の側面断面図である。
図5図5(A)は、B方向から見たときの遮光部材の要部拡大断面図であり、図5(B)は、Cから見たときの遮光部材の要部拡大図である。
図6図6(A)は、遮光部分を構成するハニカム構造体の説明図であり、図6(B)は、ハニカム構造体を変形させた場合の説明図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る欠陥検査装置の概略の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の欠陥検査装置1は、被検査対象の表面や内部を光学的手法により検査する装置であって、表面等に形成された傷などを検出することができるものである。ヘアラインのように規則的な細かな凹凸が形成された表面に発生した傷等の検出に加え、鏡面の金属の表面上の傷等の検出、透明フィルムの内部のフィッシュ・アイ等の検出に適した装置である。
【0014】
(欠陥検査装置1の説明)
本発明の第1実施形態に係る欠陥検査装置1は、被検査対象Sの表面に対して光を照射する投光手段10に特徴を有しているが、まず、本実施形態に係る欠陥検査装置の全体的な構成を簡単に説明する。なお、本発明は、被検査対象Sの表面から反射する反射光を受光する場合に加えて、被検査対象Sが透明の場合は、被検査対象Sを透過した透過光を受光する場合もあるが、第1実施形態としては反射光を受光する場合について説明する。
【0015】
図3(A)は、本発明の第1実施形態に係る欠陥検査装置1の概略の側面図、図3(B)は、撮影手段20の撮影方法の概略説明図である。図3において、符号Sは、本実施形態の欠陥検査装置1によって表面の欠陥が検査される被検査対象を示している。この被検査対象Sは、連続して搬送される、フィルムや金属等からなるシート状の部材などであるが、とくに限定されない。ただし、表面が平坦面であることが必要である。
【0016】
図3(A)に示すように、本実施形態に係る欠陥検査装置1は、被検査対象Sにおいて検査を行う表面側に、被検査対象Sの表面に対して光を照射する投光手段10と、被検査対象Sの表面の検査位置DLを撮影する撮影手段20と、撮影手段20によって撮影された信号に基づいて傷等の有無を判断する解析手段30とを備えている。なお、解析手段30は、投光手段10および撮影手段20と電気的に接続されており、両者の作動を制御する機能も有している。
【0017】
図3(B)に示すように、撮影手段20は、撮像部21と、レンズ22を備えている。 撮像部21は、投光手段10から被検査対象Sの表面に照射された光(以下、照射光SLという)のうち被検査対象Sの表面で反射した光(以下、反射光RLという)を受光するものであり、例えば、ラインセンサ等のように複数の受光素子21sを有している。レンズ22は、反射光RLを集光して、撮像部21の受光素子21sに集光した光を入射するものである。
【0018】
この撮影手段20は、被検査対象Sの表面が滑らかな面であれば、被検査対象Sの表面において照射光SLと等しい角度で反射される反射光RL(正反射光)が、レンズ22によって集光されて各受光素子21sに入射されるように配設されている。
【0019】
なお、撮像部21がラインセンサ等のように複数の受光素子21sが並んで配設されているものの場合には、撮影手段20は、複数の受光素子21sが並ぶ方向と被検査対象Sの幅方向とが平行となるように配設される。また、撮影手段20の撮像部21は、受光素子21sを複数有するものであれば問題ないが、単体であっても同様の機能を有し、被検査対象Sの表面で反射した光を検出できる受光素子を有する機器であれば、とくに限定されない。
【0020】
(投光手段10)
つぎに、投光手段10について説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係る欠陥検査装置1全体の概略の平面図であり、図4は、欠陥検査装置1を構成する投光手段10の概略の側面断面図である。
【0021】
図2および図4において、符号11は投光手段10の光源を示している。この光源11は被検査対象Sの幅方向(図2では左右方向、図3(A)および図4では紙面に垂直な方向)に沿って延びたものであり、被検査対象Sの幅方向と平行な略直線状の光を放出することができるものである。
【0022】
図4に示すように、光源11は光を放出する発光体11aを備えている。この発光体11aは、例えば、被検査対象Sの幅方向と平行に配設された棒状の蛍光灯や、被検査対象Sの幅方向に沿って複数のLED素子(発光体)が一列に並んで配設された回路などをあげることができるが、とくに限定されない。
【0023】
以下では、光源11において、被検査対象Sの幅方向と平行な方向を光源11の軸方向という。例えば、発光体11aが棒状の蛍光灯の場合であればその軸方向、また、LED素子が一列に並んで配設された発光体11aの場合であればLED素子が並んでいる方向を、光源11の軸方向という。
【0024】
なお、検査精度を高める上では、被検査対象Sの走行方向(図2では紙面の上下方向、図3(A)および図4では左右方向)において、被検査対象Sに照射される光の幅WDがあまり広くないほうが好ましい。被検査対象Sに照射される光における走行方向の幅WDを制限する方法はとくに限定されないが、例えば、図4に示すような構造を有する光源11を採用することができる。つまり、図4に示すように、光源11に、ケース11bを設け、このケース11b内に蛍光灯やLED素子等の発光体11aを収容する。そして、このケース11bに光を透過する光放出窓11cを形成して、この光放出窓11cを通して被検査対象Sに向けて照射させる。すると、被検査対象Sに照射される光における走行方向の幅WD、つまり、被検査対象Sの走行方向において、被検査対象Sに光が照射される範囲を制限することができる。なお、「投光手段10が放出する直線状の光」とは、被検査対象S上で、直線形状となる光を意味し、この直線形状の光の長手方向は、被検査対象Sの幅方向と一致し、短手方向は、図4の幅WDで示す方向と一致する。
【0025】
また、被検査対象Sの幅方向において、被検査対象Sに照射される光の強度のバラツキを小さくして、被検査対象Sに均一な強度の光を照射する上では、光源11は、後述する遮光部材20との間に、光を拡散して透過する散乱板などを備えている場合がある。例えば、図4に示すように、発光体11aをケース11bに収容して、このケース11bに光を透過する光放出窓11cを形成した場合には、この光放出窓11cとして、上述したような散乱板を設置することができる。
【0026】
(遮光部材15)
図2および図4に示すように、投光手段10は、光源11と被検査対象Sとの間に、遮光部材15を備えている。この遮光部材15は、光源11から放出された光について、光源11から被検査対象Sに照射される光を制限する機能を有するものである。すなわち、遮光部材15は、被検査対象Sの一の部分に照射される光を、あらかじめ定められた光通過孔17eから照射される光のみに制限し、他の光通過孔17eから照射される散乱光、すなわち不要散乱光を制限する機能を有する。
【0027】
まず、遮光部材15は、光源11の軸方向に沿って延びたフレーム16を備えている。このフレーム16は、後述する遮光部分17を支持するものであり、光源11から放出される光と干渉しない位置(すなわち、被検査対象S上に影を形成しない位置)に設けられている(図4参照)。
【0028】
図2および図4に示すように、フレーム16には、遮光部分17が設けられている。具体的に遮光部分17は、ハニカム構造体17aと、ハニカム構造体17aの側面に設けられているサイドサポータ17b等により構成されており、この遮光部分17が、フレーム16に固定されている。
【0029】
(遮光部分17)
遮光部分17について、図1により説明する。図1には本発明の実施形態に係る遮光部分17の三面図を示す。図1(A)は、遮光部分17の正面断面図、図1(B)は、遮光部分17の平面図、図1(C)は側面図である。図1(A)は、図1(B)のA−Aにおける断面図である。
【0030】
遮光部分17は、ハニカム構造体17aと、ハニカム構造体17aの側面に設けられている、2本のサイドサポータ17bとを含んで構成されている。図1(B)に示すように、ハニカム構造体17aは、正六角形を隙間なく並べた構造である。本実施形態に係るハニカム構造体17aの一辺の長さは約3mmであり、ハニカム構造体17aの厚さ(図1(A)紙面上で上下の長さ)は約20mmである。このハニカム構造体17aは、図1(A)に示すように、あらかじめ定められた曲率半径に基づいて変形させられている。そして変形させられた状態のまま、ハニカム構造体17aはサイドサポータ17bに固定されている。
【0031】
サイドサポータ17bには、位置決めピン17dが複数本設けられており、この位置決めピン17dとハニカム構造体17aとの間には、薄板形状の変形サポータ17cが、ハニカム構造体17aの上下に、サイドサポータ17bそれぞれに対して2本、合計4本設けられている。ハニカム構造体17aの変形後の形状は、これらの変形サポータ17cにより保持されている。
【0032】
図6には、ハニカム構造体17aを変形させた場合の説明図を示す。図6(A)は、ハニカム構造体17aを変形させる前の状態を示し、図6(B)は、変形させた後の状態を示した図である。図にはXYZ座標を記載している。なお本明細書で「ハニカム構造体17aを変形させる」とは、ハニカム構造体17aを全体に亘って、概略滑らかに変形させることを意味し、その一部のみをつぶすように変形させる場合は含まない。
【0033】
ハニカム構造体17aを、図6(B)の矢印Sが示すように変形させる場合、すなわち、XZ面でハニカム構造体17aのX方向の両端を、Zの正方向に動作させようとすると、ハニカム構造体17aでは、X方向の中央部の下端部分において、Y方向の長さがもっとも小さくなり、X方向の中央部の上端部分において、Y方向の長さがもっとも大きくなるように変形する。このようにハニカム構造体17aが変形することにより、ハニカム構造体17aが、ある曲率半径に基づいて変形させられた場合でも、光通過孔17eの十分な大きさを保持できる。ハニカム構造体17aは、一般的に正六角形を隙間なく並べた構造とされているが、本明細書におけるハニカム構造体17aはこれに限定されず、三角形や四角形を隙間なく並べた構造も含まれる。ただし、図6(B)のように変形させる場合、正六角形を隙間なく並べた構造が、上記のように変形するためもっとも容易に変形させることができる。
【0034】
図5(A)には、図4のBで示す方向から見たときの遮光部分17の要部拡大断面図を、図5(B)には、図4のCで示す方向から見たときの遮光部分17の要部拡大図を示す。ここで、ハニカム構造体17aは、多数の光通過孔17eを有しており、この光通過孔17eは、ハニカム壁17fによって分割されている。本実施形態では、個々の光通過孔17eを通過して被検査対象Sの表面で反射する反射光が全て、撮影手段20を構成するレンズ22に集光させられるように、ハニカム構造体17aは、所定の曲率半径をもって変形させられている。
【0035】
このように構成されていることで、個々の光通過孔17eを通過した光は、被検査対象Sの表面に欠陥がない場合、被検査対象Sの表面で正反射し、正反射された光が、撮影手段20の各受光素子21sに、それぞれ入射する。すなわち被検査対象Sの一の部分に照射させられる光は、レンズ22を通してあらかじめ定められた受光素子21s(対応する受光素子21s)に入射され、被検査対象Sの表面で乱反射した不要散乱光は、どの受光素子21sにも入射しないように、光通過孔17eは設けられている。
【0036】
例えば、図5(A)に示すように、複数の光通過孔17eがある場合を考える。なお図5(A)において、線SL1、SL2は、各光通過孔17eの軸心を示し、これらの光通過孔17eを通過して被検査対象Sの表面で反射し、撮影手段20のレンズ22に集光する反射光RLの光軸と一致している。
【0037】
図5(A)に示すように、光源11から放出された光のうち、光通過孔17eの軸心に沿った光Laは、光通過孔17eを通過して被検査対象Sの表面に照射される。一方、光通過孔17eの軸心に対して傾斜した方向の光(図5(A)のLb,Lc)は、ハニカム構造体17aのハニカム壁17fによって遮られて、光通過孔17eの下の開口から放出されず、被検査対象Sの表面に照射されない。
【0038】
すると、ハニカム構造体17aによって、各光通過孔17eからは、その軸心SLの方向に沿った光のみが被検査対象Sの表面に照射光SLとして照射されるので、この照射光SLが被検査対象Sの表面で反射された光が、撮影手段20のそれぞれ対応する各受光素子21sにのみ入射されることになる。
【0039】
なお、「撮影手段20のそれぞれ対応する各受光素子21sにのみ入射される」とは、「被検査対象Sの表面で乱反射した不要散乱光が、対応しない受光素子21sにまったく入射しない」と言う意味ではなく、乱反射した光が偶然に対応しない受光素子21sに入射したとしても、欠陥の検出精度に影響を与えない程度の光量しか対応しない受光素子21sに入射しないという意味である。
【0040】
投光手段10が上記のごとき構成となっているので、被検査対象Sの一の部分に照射させられる光を、あらかじめ定められた光通過孔17eを通過した光のみに制限させることができる。すなわち、被検査対象の一の部分に照射させられる光が、特定の光通過孔を通過した光のみに制限され、この特定の光通過孔以外の光通過孔を通過した光は、被検査対象におけるその一の部分には照射されないようにすることができる。言い換えると、遮光部材17の長手方向に設けられている、あらかじめ定められた光通過孔17eとは別の光通過孔17eからの散乱光のみならず、遮光部材の短手方向に設けられている、あらかじめ定められた光通過孔17eとは別の光通過孔17eからの不要散乱光を含まなくすることができる。これにより、傷などの欠陥により発生する散乱光を、撮影手段が適切にとらえることができ、より微細な欠陥を検査することができる。
【0041】
(ハニカム構造体17aについて)
なお、ハニカム構造体17aは、表面に反射防止処理が施されていることが好ましい。この反射防止処理は、例えば黒色のアルマイト処理であることが望ましい。
【0042】
光通過孔17eのハニカム壁17fの表面で光が反射すると、その反射光も光通過孔17eを通過して被検査対象Sの表面に照射される。かかる光が被検査対象Sの表面に照射されると、その光があたかも正反射光(擬似正反射光)のように撮影手段20の受光素子21sに入射する可能性がある。擬似正反射光とは、被検査対象Sの表面で反射された光のうち、その光の走行方向がたまたま受光素子21sの光軸Laと同軸となったものを意味している。かかる擬似正反射光が受光素子21sに入射されると、この擬似正反射光の強度の分だけ、受光素子21sに入射される光の強度が強くなる。すると、被検査対象Sの表面がヘアライン仕上げや梨地肌などの凹凸を有する面である場合、被検査対象Sの表面においてその受光素子21sが観察している部分に傷などの欠陥が存在していると誤って判断される可能性がある。
【0043】
また、被検査対象Sの表面が平坦面である場合であれば、被検査対象Sの表面においてその受光素子21sの観察している部分に傷があったとしても、その部分に傷がないと誤って判断される可能性がある。つまり、被検査対象Sの表面欠陥の誤検出や見過ごしが生じる可能性がある。
【0044】
したがって、ハニカム構造体17aのハニカム壁17fの表面で反射して光通過孔17eを通過する光に起因する、被検査対象Sの表面における乱反射による検査ミスや欠陥検出精度の低下を防止する上では、光通過孔17eのハニカム壁17fは、その表面に反射防止処理が施されていることが好ましい。
【0045】
ハニカム構造体17aがアルミニウム製であることにより、SUS等と比較して軽量であるとともに、プラスチック等と比較して耐久性を高くできる。また表面に黒色のアルマイト処理が施されていることにより、光通過孔17eの壁に照射された光の反射を抑えることができる。
【0046】
また、ハニカム構造体17aは、あらかじめ定めらえた曲率半径を有するように変形させるように、位置決めピン17dはあらかじめ決められた位置に設けられている必要があるが、例えば位置決めピン17dに、偏心部を設けて、ハニカム構造体17aの形状を変形可能なように構成することも可能である。加えて、ハニカム構造体17aは、理想的には、レンズ22の焦点Hとハニカム構造体17aまでの、光の通過する距離を曲率半径とする弧となるように変形させるが、これに限定されない。例えば位置決めピン17dの間を直線で形成するようにすることも可能である。ただし、この場合も光通過孔17eを通過して被検査対象Sの表面で反射する反射光RLが全てレンズ22に集光されるように形成されている必要がある。
【0047】
なお、ハニカム構造体17aの固定方法は、本実施形態で示す方法に限定されるものではなく、例えば、サイドサポータ17cに接着剤等により固定することも可能である。また、サイドサポータ17cの、ハニカム構造体17aに臨む側面に、ハニカム構造体17aの厚みと同じ幅の溝を設け、この溝にハニカム構造体17aをはめ込むことも可能である。この場合この溝を、弧を描くようにし、この弧の曲率半径は、レンズ22の焦点Hから溝までの、光の通過する距離とすることが望ましい。
【0048】
また、本実施形態では、遮光部材15にハニカム構造体17aを用いたが、これに限定されない。例えば、プラスチック板材に、複数の光通過孔17eを設け、これらの光通過孔17eを通過して、被検査対象Sの表面で反射する反射光が、全てレンズ22に集光されるようになっている構成も採用可能である。
【0049】
図7には、本発明の第2実施形態に係る欠陥検査装置の概略の側面図を示す。第1実施形態は、被検査対象Sから反射する反射光を撮影手段が受光する構成であるのに対し、第2実施形態は、被検査対象Sを透過した透過光を撮影手段が受光する構成である。図7に示すように、第2実施形態に係る欠陥検査装置1は、被検査対象Sの下側に、被検査対象Sに対して光を照射する投光手段10と、被検査対象Sの表面の検査位置DLを撮影する撮影手段20と、撮影手段20によって撮影された信号に基づいて傷等の有無を判断する解析手段30とを備えている。本実施形態では、投光手段10と撮影手段20とを結ぶ線は、被検査対象に対して垂直に交わっている。
【符号の説明】
【0050】
1 欠陥検査装置
10 投光手段
11 光源
15 遮光部材
17a ハニカム構造体
17e 光通過孔
20 撮影手段
21s 受光素子
22 レンズ
S 被検査対象
【要約】
【課題】金属の鏡面や、透明フィルムとともにヘアラインのように拡散性のある金属の表面であっても、微細な欠陥を検査することができる欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】被検査対象Sに向けて直線状の光を放出する投光手段10と、この光を、被検査対象Sを経由して受光する撮影手段20と、が備えられた欠陥検査装置1であって、投光手段には、光源11と、遮光部材15と、が備えられており、遮光部材15に設けられている複数の光通過孔17eを通過して、被検査対象Sを経由した光が全て撮影手段20にあるレンズ22に集光されるように形成されている。この構成により、被検査対象Sの一の部分に照射させられる光が、あらかじめ定められた光通過孔17eを通過した光のみに制限することができ、表面にある微細な欠陥を検査することができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7