特許第6039124号(P6039124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社信明産業の特許一覧 ▶ 学校法人早稲田大学の特許一覧

<>
  • 特許6039124-耐震性マンホール継手 図000002
  • 特許6039124-耐震性マンホール継手 図000003
  • 特許6039124-耐震性マンホール継手 図000004
  • 特許6039124-耐震性マンホール継手 図000005
  • 特許6039124-耐震性マンホール継手 図000006
  • 特許6039124-耐震性マンホール継手 図000007
  • 特許6039124-耐震性マンホール継手 図000008
  • 特許6039124-耐震性マンホール継手 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6039124
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】耐震性マンホール継手
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   E02D29/12 E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-110850(P2016-110850)
(22)【出願日】2016年6月2日
【審査請求日】2016年6月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146582
【氏名又は名称】株式会社信明産業
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(74)【代理人】
【識別番号】100070323
【弁理士】
【氏名又は名称】中畑 孝
(72)【発明者】
【氏名】岡山 信之
(72)【発明者】
【氏名】榎並 弘
(72)【発明者】
【氏名】松尾 信彦
(72)【発明者】
【氏名】小泉 淳
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−057714(JP,A)
【文献】 特開2006−307540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールと接続管との接続に用いる耐震性マンホール継手であって、マンホールの周壁に形成された削孔にゴム製リングを介して先端部を圧入すると共に接続管を緩挿させる鋼製筒と、該鋼製筒の基端部外周面に嵌合すると共に同鋼製筒内に緩挿した接続管の外周面と嵌合するゴム製筒とから成り、上記鋼製筒は先端から基端に向かって等径の筒状を呈先端部外周面に環状溝を介して上記ゴム製リングを固定すると共に外周面にマンホールの周壁と衝突する突起を等角度を置いて複数設ける構成を備え、上記ゴム製筒は先端から基端に向かって漸次縮径する筒状を呈する構成を備え、マンホールの周壁への上記各突起の衝突により上記鋼製筒の先端部の上記削孔への健全なる圧入を確認できるようにし、該圧入された上記鋼製筒の先端部外周面で上記ゴム製リングを内側からバックアップしつつ上記削孔の内周面に圧着することにより上記鋼製筒の上記削孔からの抜け止めを図ると共に該鋼製筒の先端部外周面と上記削孔の内周面間における止水を図る一方、上記ゴム製筒の変形によりマンホールと接続管との相対変動を吸収することを特徴とする耐震性マンホール継手。
【請求項2】
上記ゴム製リングは、上記環状溝の底面と面接触する内周面を備える基部と、該基部の外周面から周方向に連続して一体に立ち上がる可撓片部とを有し、該可撓片部の自由端部が上記環状溝から突出することを特徴とする請求項1記載の耐震性マンホール継手。
【請求項3】
上記ゴム製リングは上記可撓片部を複数有することを特徴とする請求項2記載の耐震性マンホール継手。
【請求項4】
上記ゴム製リングは、上記環状溝の底面と面接触する内周面を備える基部と、該基部の先端部外周面と同基端部外周面とを周方向に連続してアーチ状に繋ぐ可撓アーチ部と、該可撓アーチ部にて密閉された間隙部とを有し、上記可撓アーチ部の頂部が上記環状溝から突出することを特徴とする請求項1記載の耐震性マンホール継手。
【請求項5】
上記ゴム製リングを構成するゴムが水膨張ゴムであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の耐震性マンホール継手。
【請求項6】
上記環状溝は上記鋼製筒の先端部外周面に設けた一対の環状突条にて形成することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の耐震性マンホール継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールと下水管等の接続管との接続に用いる継手であって、耐震と止水(主にマンホール内への地下水の侵入阻止)の両立を図る耐震性マンホール継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の耐震性マンホール継手として、下記特許文献1乃至3に示すように、マンホールの周壁に形成された削孔の内周面に嵌合するゴム製筒を備え、該ゴム製筒にて耐震と止水の両立を図る耐震性マンホール継手が既知である。
【0003】
詳述すると、下記特許文献1の耐震性マンホール継手は、先端部をマンホールの削孔に嵌合すると共に基端部で接続管を支持するゴム製筒と、該ゴム製筒の先端内周面に設けられる拡張バンドとから成り、該拡張バンドにより上記ゴム製筒の先端部を拡径し、同先端部の上記削孔への嵌合を補完することができるものである。
【0004】
また、下記特許文献2の耐震性マンホール継手は、既述の特許文献1と同様に、先端部をマンホールの削孔に嵌合すると共に基端部で接続管を支持するゴム製筒と、該ゴム製筒の先端内周面に設けられる拡張バンドとから成り、該拡張バンドを上記削孔の内周面に沿うR形状とすることにより、削孔径が大きい場合でも有効にゴム製筒の先端部と削孔とを嵌合させることができるものである。
【0005】
また、下記特許文献3の耐震性マンホール継手は、既述の特許文献1,2とは異なり、拡張バンドによってゴム製筒の先端部を拡径する構造を廃し、先端部を硬質ゴムで形成し、その余の部分を軟質ゴムで形成したゴム製筒と、該ゴム製筒の先端部の外周面に挿着したOリングとから成り、該Oリングを挿着したゴム製筒の先端部をマンホールの削孔に嵌合することにより、当該先端部と上記Oリングが共働して耐震と止水の両立を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4493483号公報
【特許文献2】特許第4705410号公報
【特許文献3】実用新案登録第3065932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2の耐震性マンホール継手は、ゴム製筒の先端部を拡張バンドによって拡径する作業が必須となり、取付作業が煩雑となる問題点を有している。また、マンホールの周壁厚や削孔径に応じた拡張バンドを用意せねばならず、不経済である。
【0008】
また、上記特許文献3の耐震性マンホール継手は、拡張バンドに纏わる問題点を解決できるものの、ゴム製筒の先端部とマンホールの削孔との嵌合は、木ハンマーで押し込む程度の緩嵌合であり、しかもその緩嵌合を接着剤により補強するものである(特許文献3の段落〔0016〕)。したがって、上記特許文献3の耐震性マンホール継手は、ゴム製筒によりOリングを削孔の内周面に圧着して止水を図る技術思想、すなわちOリングのみで止水を図る技術思想を一切想定していない。むしろ、ゴム製筒とOリングの双方が協働して止水を図る技術思想に基づくものであり、削孔に嵌合するゴム製筒が必須となる。
【0009】
また、ゴム製筒の先端部に挿着されるOリングは、断面形状が当然に円形であり、ゴム製筒の削孔への嵌合時や地震時などに、削孔内で不用意に動いてしまい適正位置に配することができないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記従来の耐震性マンホール継手が抱える問題点を有効に解決するために開発されたものであり、「ゴム製筒をマンホールの削孔に嵌合する」という従来の耐震性マンホール継手構造を抜本的に見直し、有効に耐震及び止水の両立を図りながらも取付作業の負担を軽減した比類なき耐震性マンホール継手を提供する。
【0011】
要述すると、本発明に係る耐震性マンホール継手は、マンホールと接続管との接続に用いることを前提として、マンホールの周壁に形成された削孔にゴム製リングを介して先端部を圧入すると共に接続管を緩挿させる鋼製筒と、該鋼製筒の基端部外周面に嵌合すると共に同鋼製筒内に緩挿した接続管の外周面と嵌合するゴム製筒とから成り、上記鋼製筒は先端から基端に向かって等径の筒状を呈すると共に先端部外周面に環状溝を介して上記ゴム製リングを固定する構成を備え、上記ゴム製筒は先端から基端に向かって漸次縮径する筒状を呈する構成を備え、上記鋼製筒の先端部外周面で上記ゴム製リングを内側からバックアップしつつ上記削孔の内周面に圧着することにより上記鋼製筒の上記削孔からの抜け止めを図ると共に該鋼製筒の先端部外周面と上記削孔の内周面間における止水を図る一方、上記ゴム製筒の変形によりマンホールと接続管との相対変動を吸収することができる。
好ましくは、上記鋼製筒の外周面にマンホールの周壁と衝突する突起を等角度を置いて複数設け、該各突起の衝突により上記鋼製筒の先端部の上記削孔への健全なる圧入を確認できるようにする。
【0012】
好ましくは、上記ゴム製リングは、上記環状溝の底面と面接触する内周面を備える基部と、該基部の外周面から周方向に連続して一体に立ち上がる可撓片部とを有し、該可撓片部の自由端部が上記環状溝から突出する構成とし、上記鋼製筒のマンホールの削孔への圧入時に上記可撓片部が変形して当該圧入を許容すると共に、圧入後は上記可撓片部の自由端部が削孔の内周面に圧着して有効に抜け止めと止水を図ることができる。また、上記ゴム製リングは上記可撓片部を複数有することもできる。
【0013】
上記ゴム製リングの他例として、該ゴム製リングは、上記環状溝の底面と面接触する内周面を備える基部と、該基部の先端部外周面と同基端部外周面とを周方向に連続してアーチ状に繋ぐ可撓アーチ部と、該可撓アーチ部にて密閉された間隙部とを有し、上記可撓アーチ部の頂部が上記環状溝から突出する構成とし、上記鋼製筒のマンホールの削孔への圧入時に上記可撓アーチ部が変形して当該圧入を許容すると共に、圧入後は上記可撓アーチ部の頂部が削孔の内周面に圧着して有効に抜け止めと止水を図ることができる。特に上記間隙部により上記可撓アーチ部の変形を容易とし、圧入時に要する力を低減することができる。
【0014】
また、上記ゴム製リングを構成するゴムを水膨張ゴムとし、確実なる止水を図ることができる。
【0015】
また、上記環状溝は上記鋼製筒の先端部外周面に設けた一対の環状突条にて形成し、該環状溝の容易形成を可能とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る耐震性マンホール継手によれば、鋼製筒のバックアップによってゴム製リングを削孔の内周面に確実に圧着することができ、該鋼製筒の抜け止めを図りつつ有効に止水を図ることができる。
【0018】
また、ゴム製リングの形状によって、マンホールの削孔への鋼製筒の圧入を許容する一方、圧入後の適切な止水を行うことができる。
【0019】
さらに、部品点数も少なく、取付作業も容易であり、作業効率を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る耐震性マンホール継手の分解斜視図。
図2図1の耐震性マンホール継手の横断面図。
図3】(A)は図1の耐震性マンホール継手による接続構造の横断面図、(B)は図3(A)におけるゴム製リングの拡大断面図。
図4図1の耐震性マンホール継手による接続構造の側面図。
図5】(A)は複数のゴム製リングを有する本発明に係る耐震性マンホール継手による接続構造の横断面図、(B)は図5(A)におけるゴム製リングの拡大断面図。
図6】ゴム製リングの他例を示す端面図であり、(A)は可撓片部を有しない例、(B)は可撓片部の代わりに可撓アーチ部を有し、該アーチ部により密閉された間隙部を有する例を示す。
図7】取付治具による取付作業を概示する正面図。
図8】取付治具による取付作業を概示する横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る耐震性マンホール継手を図1乃至図8に基づき説明する。
【0022】
<基本構成>
本発明に係る耐震性マンホール継手は、図1乃至図5に示すように、マンホールMと下水管等の接続管Pとの接続に用いる耐震性マンホール継手であって、マンホールMの周壁に形成された削孔Maにゴム製リング2を介して先端部1aを圧入すると共に接続管Pを緩挿させる鋼製筒1と、該鋼製筒1の基端部1bの外周面に嵌合すると共に同鋼製筒1内に緩挿した接続管Pの外周面と嵌合するゴム製筒3とから成る。なお、本書面において、マンホールM及び接続管Pを円筒状として説明するが、本発明に係る耐震性マンホール継手にあっては、マンホールMと接続管Pの一方又は双方が楕円筒状や角筒状等の円筒状とは異なる断面形状を有する場合であっても適切に対応できる。
【0023】
<鋼製筒>
鋼製筒1は、図1図2に示すように、先端から基端に向かって等径の筒状を呈する構成を備え、容易に変形することはない。加えて、先端部1aの外周面に環状溝4を介してゴム製リング2を固定する構成を備え、図3に示すように、削孔Maへの圧入後は、ゴム製リング2を内側から先端部1aの外周面でバックアップする。
【0024】
鋼製筒1の外径はマンホールMの削孔Maの内径よりも僅かに小さく(例えば数mm小さく)設定し、後記するゴム製リング2の断面形状や接続箇所の深度、想定震度等により適宜調整する。また、鋼製筒1の内径は接続管Pの外径よりも大きく(例えば数十mm大きく)設定する。適度な環状空間を介して接続管Pを緩挿させることにより、マンホールMと接続管Pとが相対変動した際に、該マンホールMと共に動く鋼製筒1内における接続管Pの変動、特に接続管Pの先端部Paの変動を吸収するためである。
【0025】
好ましくは先端部1aの外周面は削孔Maの内周面に相似する形状とする。すなわち、図3(A)に示すように、鋼製筒1の先端縁をマンホールMの周壁の内周面側における削孔Maの孔縁に沿う形状とする。不用意に鋼製筒1の先端縁がマンホールM内に突出し流下機能に影響を与えるのを防止するためである。
【0026】
また、先端部1aの外周面に設ける環状溝4は、当該面に直接刻設しても良いが、好ましくは、図示の如く先端部1aの外周面に一対の環状突条4′を固着し、これら環状突条4′間を環状溝4とすることにより、環状溝4の形成を容易にする。
【0027】
図1図2に示すように、先端部1aの外周面よりも基端部1b寄りの外周面にマンホールMの周壁と衝突する突起5を等角度を置いて複数設け、図3乃至図5に示すように、該各突起5の衝突により先端部1aの削孔Maへの健全なる圧入を確認できるようにすることが望ましい。加えて、既述した環状突条4′に等角度を置いて複数の位置決めピン6を設ける。各位置決めピン6は、止めネジから成り、先端部1aの圧入後に突出させるものであるが、説明の便宜上、図2においては突出した状態で描いている。先端部1aの圧入後に位置決めピン6螺合用の貫通孔を通じて削孔Maの内周面に嵌合孔を穿設し、該嵌合孔に位置決めピン6を嵌合させて鋼製筒1の位置決めを行う。
【0028】
なお、図中の7は、基端部1bに設けられる環状の嵌合突条であり、後記するゴム製筒3の先端部3aの嵌合溝10と嵌合するものである。
【0029】
<ゴム製リング>
ゴム製リング2は、既述の如く、鋼製筒1の先端部1aの外周面に設けられた環状溝4に固定されるものであり、鋼製筒1の削孔Maからの抜け止めを図ると共に該鋼製筒1の先端部1aの外周面と削孔Maの内周面間における止水を図る。本発明にあって、ゴム製リング2は、図1乃至図3に示すように、鋼製筒1の先端部1aの外周面に単数固定することの他、図5に示すように、間隔を置いて複数固定することもできる。単数とするか複数とするかは、マンホールMの周壁厚や削孔Maの内径等に基づいて、適宜選択できる。
【0030】
また、ゴム製リング2は、基本材料としてクロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、その他高分子材料等を単独又は複合して使用し、リング状に成形する。
【0031】
好ましくは、上記基本材料のゴムに吸水性材料、紙おむつや生理用品等に用いられる吸水性ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム)等を配合した水膨張ゴムで成形する。侵入した地下水を吸水し止水を確実とするためである。当該水膨張ゴムは、基本材料たるゴムと吸水性材料とを要求性能(膨張率、最大膨張までに要する時間等)に応じて適正割合で配合することは勿論である。
【0032】
ゴム製リング2の構成としては、図2に示すように、鋼製筒1の環状溝4の底面と面接触する内周面を備える環状バンド状の基部21と、該基部21の外周面から周方向に連続して一体に立ち上がる複数の可撓片部22とを有する。よって、基部21により安定して環状溝4内に固定することができると共に、各可撓片部22により次のように鋼製筒1の抜け止めと地下水に対する止水を図ることができる。
【0033】
すなわち、各可撓片部22の自由端部22aが鋼製筒1の環状溝4から突出する構成とすることにより、鋼製筒1の削孔Maへの圧入の際には、削孔Maの内周面に各可撓片部22の自由端部22aが接して各可撓片部22がそれぞれ圧入方向と逆方向に撓んで圧入を許容すると共に、圧入後は、図3(B)に示すように、削孔Maの内周面に各可撓片部22の自由端部22aがそれぞれ圧着して待機し、鋼製筒1の抜け止めを図りながら地下水の侵入に備えることとなる。
【0034】
なお、本発明にあっては、可撓片部22は、図1図2に示すように複数設けることに限定されず、図5に示すように、単数でも良い。
【0035】
又は、図6(A)に示すように、可撓片部22を設けず、基部21上に断面半円状の半円部23を一体に設けることや、図6(B)に示すように、可撓片部22の代わりに、基部21の先端部21aの外周面と同基端部21bの外周面とを周方向に連続してアーチ状に繋ぐ可撓アーチ部24と、該可撓アーチ部24にて密閉された間隙部25とを有する構成とすることができる。なお、これらの例における基部21も鋼製筒1の環状溝4の底面と面接触する内周面を備えることは言うまでもない。
【0036】
これらの例の場合も、半円部23の頂部23a・可撓アーチ部24の頂部24aが鋼製筒1の環状溝4から突出する構成とすることにより、鋼製筒1の削孔Maへの圧入の際には、削孔Maの内周面に半円部23の頂部23a・可撓アーチ部24の頂部24aが接してゴム製リング2全体が低背となるように圧縮されて圧入を許容すると共に、圧入後は削孔Maの内周面に半円部23の頂部23a・可撓アーチ部24の頂部24aが圧着して待機し、鋼製筒1の抜け止めを図りながら地下水の侵入に備えることとなる。特に図6(B)に示すゴム製リング2は、間隙部25により可撓アーチ部24の変形を容易とし、圧入時に要する力を低減することができ、好適である。なお、間隙部25の横断面形状や容積を調整することにより所望の圧入力低減を実現することができる。
【0037】
<ゴム製筒>
ゴム製筒3は、既述のゴム製リング2と同様のゴムから成り、図1乃至図5に示すように、先端から基端に向かって漸次縮径する筒状を呈する構成を備え、マンホールMと接続管Pとの相対変動が生じた際には、マンホールMと共に動く鋼製筒1又は接続管Pの何れかに追随して変形し、適切に上記相対変動を吸収することができる。
【0038】
また、先端部3aの外周面に締付用溝8を環状に設け、該締付用溝8を利用して締付バンド9を締め付けて鋼製筒1の基端部1bの外周面に嵌合する構成を備える。同様に基端部3bの外周面にも締付用溝8を設け、該締付用溝8を利用して締付バンド9を締め付けて接続管Pの外周面に嵌合する構成を備える。これら締付用溝8はゴム成形時に形成する。
【0039】
また、先端部3aの内周面には、鋼製筒1の基端部1bの外周面に設けられた既述の嵌合突条7と嵌合する嵌合溝10を設けると共に、鋼製筒1の基端部1bの外周面に係止する係止段部11を設け、鋼製筒1とゴム製筒3との嵌合を確実ならしめる。また、基端部3bの内周面にも係止段部11を設け、ゴム製筒3と接続管Pとの嵌合を確実ならしめる。
【0040】
以上説明した本発明に係る耐震性マンホール継手によれば、鋼製筒1の先端部1aの外周面でゴム製リング2を内側からバックアップしつつ削孔Maの内周面に圧着することにより、鋼製筒1の削孔Maからの抜け止めと、該鋼製筒1の先端部1aの外周面と上記削孔Maの内周面間における止水の双方を有効に行うことができる。
【0041】
また、ゴム製筒3が鋼製筒1又は/及び接続管Pに追従して変形することによりマンホールMと接続管Pとの相対変動を吸収することができる。
【0042】
<取付作業>
既述した構成の本発明に係る耐震性マンホール継手の取付においては、まずマンホールMの削孔Maにゴム製リング2を有する鋼製筒1の先端部1aを圧入することとなるが、該鋼製筒1が容易には変形しない構造であるため、該鋼製筒1に対し軸方向に沿って平行且つ上下左右均等に大きな力を加える必要がある。
【0043】
そこで、適例として、図7図8に示すように、複数の取付用ボルト14の締付によって互いに接近する第一取付治具12及び第二取付治具13を用意し、鋼製筒1の先端部1aの内周面に第一取付治具12を固定すると共にマンホールM内に第二取付治具13を待機させる状態を得て、この状態から各取付用ボルト14を締め付けることによって鋼製筒1を適切に圧入することができる。
【0044】
詳述すると、第一取付治具12は、一対の横断面コ字状のチャンネル材12aを交差し、該交差箇所を矩形状の固定用鉄板12b及び固定用ボルト12cを介して固定して成り、鋼製筒1の先端部1aの内周面に90°間隔で穿設した治具固定用ネジ孔1cに固定用ネジ12dを螺合することにより、該鋼製筒1の先端部1aの内周面に固定する。なお、各チャンネル材12aの両端部には取付用ボルト14の軸部を挿通する挿通用孔12eが穿設されている。
【0045】
他方、第二取付治具13は、水平方向に間隔を置いて並設する一対の鉄パイプ13aと、該一対の鉄パイプ13a間を上下部で繋ぐ一対の帯状の固定用鉄板13bから成り、各鉄パイプ13aには上記第一取付治具12の各挿通用孔12eに連通させる挿通用孔13cが穿設されていると共に、各固定用鉄板13bには各鉄パイプ13aの挿通用孔13cと対応する位置にナット部13dが設けられる構成を有し、マンホールM内(削孔Maの背後)に固定されることなく待機する。なお、一対の鉄パイプ13aは削孔Maの直径よりも長く、圧入作業時には、各鉄パイプ13aの上下端部がマンホールMの内周面に係合する。
【0046】
圧入作業においては、鋼製筒1に固定された第一取付治具12の各挿通用孔12eと第二取付治具13の各挿通用孔13cとを一致させ、上記各挿通用孔12e側から取付用ボルト14の軸部を挿通し、該軸部を第二取付治具13のナット部13dと螺合し、各取付用ボルト14を締め付けていけば、第二取付治具13の各鉄パイプ13aの上下端部がマンホールMの内周面に係合し、つまり第二取付治具13がマンホールM内で踏ん張っている状態で、これに第一治取付治具12が接近していき、これに伴い、鋼製筒1の先端部1aが削孔Ma内に圧入されていく。
【0047】
この際には、全取付用ボルト14を同時に締め付けるか、鋼製筒1に設けた突起5の進み具合を確認しつつ各取付用ボルト14を少しずつ締め付けていけば、鋼製筒1には軸方向に沿って平行に且つ上下左右均等に圧入力が加わり、適切且つ容易な圧入が可能となる。
【0048】
また、第二取付治具13は、マンホールMの内周面に係合する部分を鉄パイプ13a、つまり外面を周面とする部材で構成していることにより、かかる係合は周面同士の係合となり、マンホールMの内周面を徒に傷つけることがない。
【0049】
既述した圧入作業が終われば、あとは鋼製筒1の基端部1bにゴム製筒3の先端部3aを嵌合し、接続管Pの先端部Paをゴム製筒3の基端部3bから鋼製筒1の先端部1aに到達するまで挿通し、ゴム製筒3の基端部3bを接続管Pの外周面に嵌合すれば、図3乃至図5に示すような接続構造を構築することができる。また、鋼製筒1の基端部1bにゴム製筒3の先端部3aを嵌合した状態で上記圧入作業を行っても良い。この場合には圧入後にゴム製筒3の基端部3bを接続管Pの外周面に嵌合するのみで良く、さらに効率良く図3乃至図5に示す接続構造を構築することができる。
【0050】
上記のとおり、本発明に係る耐震性マンホール継手は、鋼製筒1を削孔Maに圧入し、あとは鋼製筒1へのゴム製筒3の嵌合、接続管Pの挿通、接続管Pへのゴム製筒3の嵌合を順に行えば、極めて容易に且つ短時間で取付作業が完了する。
【符号の説明】
【0051】
1…鋼製筒、1a…先端部、1b…基端部、1c…治具固定用ネジ孔、2…ゴム製リング、3…ゴム製筒、3a…先端部、3b…基端部、4…環状溝、4′…環状突条、5…突起、6…位置決めピン、7…嵌合突条、8…締付用溝、9…締付バンド、10…嵌合溝、11…係止段部、12…第一取付治具、12a…チャンネル材、12b…固定用鉄板、12c…固定用ボルト、12d…固定用ネジ、12e…挿通用孔、13…第二取付治具、13a…鉄パイプ、13b…固定用鉄板、13c…挿通用孔、13d…ナット部、14…取付用ボルト、21…基部、21a…基部の先端部、21b…基部の基端部、22…可撓片部、22a…可撓片部の自由端部、23…半円部、23a…半円部の頂部、24…可撓アーチ部、24a…可撓アーチ部の頂部、25…間隙部、M…マンホール、Ma…削孔、P…接続管、Pa…先端部。
【要約】      (修正有)
【課題】有効に耐震及び止水の両立を図りながらも取付作業の負担を軽減した耐震性マンホール継手の提供。
【解決手段】マンホールMの周壁に形成された削孔Maにゴム製リング2を介して先端部3aを圧入すると共に接続管Pを緩挿させる鋼製筒1と、鋼製筒1の基端部外周面に嵌合すると共に同鋼製筒1内に緩挿した接続管Pの外周面と嵌合するゴム製筒3とから成り、鋼製筒1は先端から基端に向かって等径の筒状を呈すると共に先端部外周面に環状溝4を介してゴム製リング2を固定する構成を備え、ゴム製筒3は先端から基端に向かって漸次縮径する筒状を呈する構成を備え、鋼製筒1の先端部外周面でゴム製リング2を内側からバックアップしつつ削孔Maの内周面に圧着することにより鋼製筒1の先端部外周面と削孔Maの内周面間における止水を図る一方、ゴム製筒3の変形によりマンホールMと接続管Pとの相対変動を吸収する。
【選択図】図1
図2
図4
図6
図1
図3
図5
図7
図8