特許第6039125号(P6039125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6039125
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】救護器具兼用看板立て
(51)【国際特許分類】
   G09F 7/18 20060101AFI20161128BHJP
   G09F 15/00 20060101ALI20161128BHJP
   A61G 1/017 20060101ALI20161128BHJP
   A61G 1/02 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G09F7/18 Y
   G09F7/18 V
   G09F15/00 J
   G09F15/00 L
   A61G1/017 701
   A61G1/02 702
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-144855(P2016-144855)
(22)【出願日】2016年7月22日
【審査請求日】2016年9月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516221834
【氏名又は名称】常磐精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】喜井 充
(72)【発明者】
【氏名】喜井 翔太郎
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−55085(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第735613(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 7/18
A61G 1/017
A61G 1/02
G09F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
看板本体が着脱自在に装着される枠部と、
前記枠部を傾斜させた状態で支持する脚部と、
設置面としての地面と前記枠部との間に介在して、前記設置面に接触する複数の車輪部とを備え、
前記枠部の内側に、人を載置又は収容可能な空間が設けられ、
前記複数の車輪部が、前記内側に人が載置又は収容された前記枠部を支持した状態で、前記設置面に沿って回転可能に設けられている救護器具兼用看板立て。
【請求項2】
前記枠部は、上下方向に傾斜を有して延びて当該枠部の両側部を形成する2本の縦桟と、当該各縦桟の上端を連結する横桟とを有し、
前記脚部は、鉛直方向に延びて、その上端部が前記枠部の前記縦桟に取り付けられて前記枠部と前記設置面との間に位置する4本の支柱部材を有し、前記枠部を前記設置面から離間させかつ傾斜させた状態で支持し、当該支柱部材の下端部には、前記複数の車輪部が取り付けられ、
前記脚部の前記支柱部材のうち、異なる前記縦桟に取り付けられた前記支柱部材同士であって、前記縦桟における同一高さ位置にその上端部が取り付けられている前記支柱部材同士の間が、棒状の保持部材により連結されることで、当該保持部材が前記縦桟間に高さを異ならせて2本設けられ、
前記2本の保持部材は、前記枠部の内側の空間に配置され、前記2本の保持部材の間に、着座用の部材が取り付け可能とされている請求項1に記載の救護器具兼用看板立て。
【請求項3】
前記2本の保持部材のうち、高い位置に配置されている方の前記保持部材が取り付けられている2本の前記支柱部材は、当該保持部材の取付位置よりも上方となる位置に、水平方向に延在するシート部材が架け渡し可能とされている請求項2に記載の救護器具兼用看板立て。
【請求項4】
前記枠部は、上下方向に延びて当該枠部の両側部を形成する2本の縦桟と、当該各縦桟の上端を連結する横桟とを少なくとも有し、
前記脚部は、第1脚部と第2脚部とを備え、
前記第1脚部は、前記枠部の前記2本の縦桟のそれぞれに上端部が取り付けられた補強部材と、当該補強部材の下端部が一端部に取り付けられ、他端部が前記枠部の前記縦桟に取り付けられて前記補強部材を支持する支持部材とを備え、前記補強部材及び前記支持部材は、前記枠部と設置面の間に介在して、下端部が前記設置面に接触して傾斜姿勢となっている前記枠部を支持して、前記枠部を前記設置面上に起立させ、
前記第2脚部は、その上端部が、前記枠部の前記2本の縦桟のそれぞれに、前記補強部材の取付位置から離れた位置であって、前記支持部材の取付位置とは反対側となる位置に回動自在に取り付けられ、
前記看板本体が取り外された状態のときに、前記枠部の少なくとも前記2本の縦桟に、人体載置用の載置部材が架け渡して取り付け可能とされ、
前記車輪部は、前記支持部材の前記一端部及び前記第2脚部の下端部の最下端に取り付けられ、
前記第2脚部が前記上端部を支点として前記縦桟に対して直交する姿勢まで回動した状態で、前記枠部の前記下端部が前記設置面から離れ、前記枠部が前記設置面に平行となる姿勢まで前記車輪部を回動軸として回動したときに、前記補強部材及び支持部材と前記第2脚部とが前記車輪部を介して前記設置面に対して前記枠部を支持し、この状態で、前記車輪部が前記設置面に沿って回転可能になる請求項1に記載の救護器具兼用看板立て。
【請求項5】
前記複数の車輪部が前記枠部の下端に設けられ、
前記枠部は、上下方向に延びて当該枠部の両側部を形成する2本の縦桟と、当該各縦桟の上端を連結する横桟とを少なくとも有し、
前記脚部は、その上端部が前記枠部の前記2本の縦桟のそれぞれに回動自在に取り付けられた着座用脚部と、当該着座用脚部の下端部に一端部が回動自在に取り付けられて他端部が前記設置面に接触し、前記着座用脚部と直線状に連結して、前記枠部の下端部が前記設置面に接触した状態で前記枠部を傾斜姿勢で支持して前記設置面上に起立させる支持脚部とを備え、
前記着座用脚部を前記枠部に対して直交する姿勢まで回動させた状態のときには、前記支持脚部は、前記着座用脚部と前記枠部の間に介在して、前記着座用脚部を当該姿勢で支持し、
前記着座用脚部であって、少なくとも前記枠部に対して前記直交する姿勢まで回動する部分には、その上に人が着座可能な耐力を有する着座部材が配されている請求項1に記載の救護器具兼用看板立て。
【請求項6】
前記着座用脚部は、その一端部側が前記枠部に対して回動することで、前記支持脚部と直線上に連結された状態で、前記枠部に対して前記着座用脚部及び前記支持脚部が平行な姿勢になるまで姿勢を変更する請求項5に記載の救護器具兼用看板立て。
【請求項7】
前記枠部の前記2本の縦桟であって、前記脚部が取り付けられている側とは反対側となる部分の下端部に、当該下端部に対して回動自在に設けられ、前記2本の縦桟間に架け渡されて延びる補助部材と、
前記補助部材と前記枠部の間に介在して、前記補助部材を前記枠部に対して予め定められた鋭角となる姿勢に保持するストッパー部材と、を備える請求項6に記載の救護器具兼用看板立て。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常時は看板本体を支持可能とされ、緊急時には救護器具として利用可能な救護器具兼用看板立てに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、防災に対する意識が高まって来ている。例えば、AED(Automated External Defibrillator)が多くの公共施設などに備え付けられ、また緊急時のために担架や車椅子などの救護器具を備えることが望まれている。
【0003】
ところが、救護器具を保管するスペースを確保できないという問題がよく指摘される。担架を例にとると、一般的な担架は保管スペースを広くとり保管場所が限られる。
【0004】
このため、特許文献1では、車両内にコンパクトに収納でき、車両事故発生時には標識として用いたり、あるいは負傷者等を乗せる担架として用いたりすることが可能な車両用緊急表示標識装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−55085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置は、車両用に特定されるので、汎用性に欠け、公共施設などに備え付けるのには向いていない。このため、担架や車椅子などの救護器具を平常時から使いやすい状態で装備しておくには、汎用性があって、かつ保管するスペースを容易に確保できるものを、担架などの救護器具として兼用可能にする、という手段が考えられる。
【0007】
ここで、周知のように看板は、街中の何処にでも設置されている。このような看板は、看板立てにより、歩道などの設置面に立てた状態で設置される。また、看板及び看板立ては、夜間等、使用しない時間帯は、予め用意されている保管場所に収納される。このため、このような看板立てを担架などの救護器具として兼用することができれば、緊急時にすぐに使用でき、また保管場所が確保されているため、救護器具のための保管場所を別個に確保する必要がない。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、緊急時に利用しやすく、汎用性があり、保管するスペースを容易に確保することが可能な救護器具兼用看板立てを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る救護器具兼用看板立ては、看板本体が着脱自在に装着される枠部と、
前記枠部を傾斜させた状態で支持する脚部と、
設置面としての地面と前記枠部との間に介在して、前記設置面に接触する複数の車輪部とを備え、
前記枠部の内側に、人を載置又は収容可能な空間が設けられ、
前記複数の車輪部が、前記内側に人が載置又は収容された前記枠部を支持した状態で、前記設置面に沿って回転可能に設けられているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る救護器具兼用看板立てによれば、緊急時に利用しやすく、汎用性があり、また、保管するスペースを容易に確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る救護器具兼用看板立てを示す斜視図である。
図2図1の救護器具兼用看板立てに看板本体を取り付けた状態を示す斜視図である。
図3】(a)、(b)は、図1の救護器具兼用看板立てに看板本体を取り付ける過程を示す斜視図及び側面図である。
図4図1の救護器具兼用看板立てに着座用の第1シート及び背もたれ用の第2シートを取り付けた状態を示す斜視図である。
図5】救護器具兼用看板立ての第1シートに人が座っている状態を示す斜視図である。
図6図1の救護器具兼用看板立てに適用された柱状体を示す断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る救護器具兼用看板立てを示す斜視図である。
図8図7の救護器具兼用看板立てに看板本体を取り付けた状態を示す斜視図である。
図9図7の救護器具兼用看板立てに看板本体を取り付ける過程を示す斜視図である。
図10図7の救護器具兼用看板立てをストレッチャーとして用いる状態を示す側面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る救護器具兼用看板立てを示す斜視図である。
図12図11の救護器具兼用看板立てを平板状に畳んだ状態を示す側面図である。
図13図12の救護器具兼用看板立てに人が寝た状態を示す側面図である。
図14図11の救護器具兼用看板立てを車椅子として利用可能な状態を示す側面図である。
図15図14の救護器具兼用看板立てに人が着座した状態を示す側面図である。
図16図14の救護器具兼用看板立てに人が着座して、階段を昇降している状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態に係る救護器具兼用看板立てを示す斜視図である。また、図2は、図1の救護器具兼用看板立てに看板本体を取り付けた状態を示す斜視図である。更に、図3(a)、(b)は、図1の救護器具兼用看板立てに看板本体を取り付ける過程を示す斜視図及び側面図である。
【0014】
図1乃至図3に示すように第1実施形態に係る救護器具兼用看板立て1は、看板本体2が着脱自在に装着される枠部3と、枠部3を設置面から離間させ、かつ傾斜させた状態で支持する脚部4と、脚部4に設けられて、設置面に接する4つのキャスター5とを備えている。
【0015】
枠部3は、両側の2本の縦桟3a、及び各縦桟3aの上端を連結する横桟3bからなるU字型のものである。縦桟3aは、上下方向に傾斜を有して延び、枠部3の両側部を形成する。なお、縦桟3aの下端には、縦桟3a同士を連結する横桟3bは設けていない。
【0016】
脚部4は、2本の短支柱4a、2本の長支柱4b、各短支柱4aの下端部と各長支柱4bの下端部を連結する複数の連結桟4c、各短支柱4aの間に掛け渡された第1保持部材4d、各長支柱4bの間に掛け渡された第2保持部材4e、及び各長支柱4bの上側に突設されたそれぞれのハンドル4fを備えて構成される。なお、短支柱4a及び長支柱4bは、特許請求の範囲における支柱部材の一例である。
【0017】
短支柱4a及び長支柱4bは、鉛直方向に延びて、その上端部が枠部3の縦桟3aに取り付けられ、枠部3と設置面との間に位置する。短支柱4a及び長支柱4bは、枠部3を設置面から離間した状態で、かつ傾斜させた状態で支持する。短支柱4a及び長支柱4bのそれぞれの下端部には、キャスター5が取り付けられている。
【0018】
各短支柱4a及び各長支柱4bは、各連結桟4c、第1保持部材4d、及び第2保持部材4eを介して連結されて、一体的に支持されている。また、各短支柱4aの上端部の外側面には、枠部3の各縦桟3aがねじ止め又はビス止めされている。さらに、各長支柱4bの上端部の外側面にも、枠部3の各縦桟3aがねじ止又はビス止めされ、これにより枠部3が傾斜した状態で支持されている。
【0019】
脚部4の短支柱4a同士の間は保持部材4dにより連結され、長支柱4b同士の間は保持部材4eにより連結されている。保持部材4d,4eは、棒状の部材、例えば、角柱部材である。すなわち、異なる縦桟3aに取り付けられた支柱同士であって、縦桟3aにおける同一高さ位置にその上端部が取り付けられている支柱同士の間が保持部材により連結される。これにより、縦桟3aの間に、高さ位置を異ならせて2本の保持部材4d,4eが設けられる。
【0020】
各キャスター5(特許請求の範囲における車輪部の一例)は、各短支柱4aの下端及び各長支柱4bの下端にそれぞれ設けられている。これらのキャスター5は、車輪と、車輪を回転自在に軸支する垂直軸とを備える。キャスター5は、車輪の向きが垂直軸周りに自在に変わるように、車輪を支持している。これらのキャスター5により、救護器具兼用看板立て1が、設置面としての地面の上を水平方向に移動可能とされ、また、方向転換が可能とされている。
【0021】
看板本体2は、例えば矩形の平板状のものであり、その表面には広告などが描かれ又は貼り付けられている。この看板本体2の裏面上側には、フック6が設けられている。図3(b)に示すように、フック6を枠部3の横桟3bに引っ掛けて、看板本体2を枠部3上に載置する。これにより、図2に示すように、看板本体2が枠部3により、傾斜した状態で支持される。
【0022】
なお、この状態において、看板本体2の下部を持ち上げて枠部3から引き離し、更に、看板本体2の背面上側のフック6を枠部3の横桟3bから外すことで、看板本体2を枠部3から取り外される。
【0023】
看板本体2が枠部3に取り付けられていない状態では、両側を縦桟3aとする枠部3の内側には、縦桟3aに沿って取り付けられた短支柱4a及び長支柱4bと、第1保持部材4d及び第2保持部材4eのみが存在する空間が形成される。
【0024】
図4に示すように、着座用の第1シート11(特許請求の範囲における着座用の部材の一例)が、その上端部が第2保持部材4eに取り付けられ、その下端部が第1保持部材4dに取り付けられることで、第1保持部材4d及び第2保持部材4eに取り付けられている。第1シート11は、キャンバス地又は合成樹脂等からなる。例えば、第1シート11の下端部を第1保持部材4dに巻き付け、上端部を第2保持部材4eに巻き付けた上で、当該上下端部を第1シート11自体に縫い付け又は接着することで、第1シート11が第2保持部材4eに固定されている。
【0025】
なお、例えば、第1シート11の上下端部及び第1保持部材4d及び第2保持部材4eにそれぞれの面ファスナーを予め取り付けておき、第1シート11の上下端部を第1保持部材4d及び第2保持部材4eに巻き付けると共に、第1シート11の上下端部の面ファスナーを、第1保持部材4dの面ファスナー及び第2保持部材4eの面ファスナーに貼り付けるようにすることで、第1保持部材4d及び第2保持部材4eに対して第1シート11を着脱自在に取り付けることも可能である。なお、面ファスナーに代えて、ホック、スナップボタン等を用いることも可能である。
【0026】
第1シート11は、上記面ファスナー又はホック、スナップボタン等により、第1保持部材4d及び第2保持部材4eへの取り付け及び取り外しが自在とされている。
【0027】
また、本実施形態では、第1保持部材4d及び第2保持部材4eに、着座用の部材として、第1シート11が用いられる例を示しているが、着座用の部材は第1シート11に限られない。例えば、着座用の部材として、通常の椅子等の同様の素材からなるクッションが第1保持部材4d及び第2保持部材4eに、固定して又は取り外し可能に、取り付けられていてもよい。
【0028】
また、図4に示すように、短支柱4aよりも高い位置に配置されている長支柱4bの間には、第2保持部材4eよりも更に上側となる部分に、第2シート12(特許請求の範囲におけるシート部材の一例)が水平方向に架け渡されている。第1シート11の第1保持部材4dへの取付と同様に、第2シート12は、その両側端部を各長支柱4bに巻き付けて縫い付け又は接着するか、或いは、その両側端部に例えば面ファスナーを予め取り付けておき、第2シート12の両側端部を各長支柱4bに巻き付けると共に、面ファスナー同士を貼り付けることで、長支柱4bに取り付けられる。
【0029】
このような着座用の第1シート11及び背もたれ用の第2シート12を有する救護器具兼用看板立て1によれば、看板本体2を取り外せば、図5に例を示すように、人(例えばケガ人)が第1シート11に座ることができ、更に、第2シート12にもたれ掛かることができる。また、他の人(補助者)は、各長支柱4bの上側のハンドル4fを両手に持って、人が座っている状態の救護器具兼用看板立て1を押し引き可能である。このとき、脚部4の各キャスター5の車輪は上記のように回転可能であるため、他の人は、人が座っている状態の救護器具兼用看板立て1を容易に移動及び方向転換させることができる。すなわち、救護器具兼用看板立て1は車椅子としても機能する。なお、図5では、救護器具兼用看板立て1に着座した人の背中部分を第2シート12が支持する例を図示しているが、第2シート12が支持する箇所はこれに限定されず、例えば着座する人の頭部分(後頭部)等であってもよい。
【0030】
一方、看板本体2の重量と比較して、人の体重は非常に重いため、車椅子としても用いることが可能な救護器具兼用看板立て1の機械的強度は、看板本体2のみを載置させるに必要な強度よりも大きくして、安全性を確保する必要がある。このため、枠部3を構成する各縦桟3a及び横桟3bとして、かつ脚部4を構成する各短支柱4a、各長支柱4b、各連結桟4c、第1保持部材4d、第2保持部材4e、及び各ハンドル4fとして、図6に示すような断面形状の柱状体16を適用することが好ましい。この柱状体16は、概ね、内側管状部16a、外側管状部16b、及び内側管状部16aの外側角と外側管状部16bの内側角を連結する4つの連結部16cからなる。柱状体16は、このように、内部に空間を有しつつ、耐力が必要な箇所には軸組を有することで、軽量でありながら、大きな曲げ強度を確保している。
【0031】
また、救護器具と兼用しない従来の看板立ての場合は、枠部及び脚部のみを有する構成である。これは、看板本体のみを傾斜を有する姿勢で支持できれば足りるためである。
【0032】
これに対して、上記実施形態に係る救護器具兼用看板立て1では、車椅子として人が着座した際における重量に対する耐力を確保するために、枠部3には、短支柱4a及び長支柱4bが取り付けられ、しかも、短支柱4a及び長支柱4bは、連結桟4c、第1保持部材4d及び第2保持部材4eにより補強される、という従来にはない構成を備えている。第1保持部材4d及び第2保持部材4eは、第1シート11及び第2シート12が取り付けられることで、人の着座を可能にするが、着座時には大きな負荷が救護器具兼用看板立て1に掛かる。しかしながら、救護器具兼用看板立て1では、第1シート11及び第2シート12が取り付けられる第1保持部材4d及び第2保持部材4eは、上記補強を有して組み付けられている短支柱4a及び長支柱4bに取り付けられているため、着座時の負荷に耐え得る。さらに、救護器具兼用看板立て1では、2本の短支柱4a及び2本の長支柱4bの存在により、車椅子として機能するために必要な4つのキャスター5の取り付けも可能となっている。
【0033】
また、救護器具兼用看板立て1は、看板本体2を取り付けた状態(図2)では、枠部3の内側に配置されている上記第1保持部材4d、第2保持部材4e、第1シート11、及び第2シート12は看板本体2に隠れ、看板本体2を正面から視認する人には見えない。このため、救護器具兼用看板立て1によれば、看板本体2の意匠性を害することなく、災害時のために常に救護器具を備えておくことが可能になる。
【0034】
このように第1実施形態では、通常時には救護器具兼用看板立て1を、看板を起立させるための看板立てとして用いることができ、また緊急時には看板本体2を取り外して、着座用の第1シート11及び背もたれ用の第2シート12への着座により、救護器具兼用看板立て1を車椅子として利用することができる。
【0035】
また、救護器具兼用看板立て1は、通常時は、看板立てとして利用され、不要なときは移動して看板立て用の保管場所に保管可能なので、救護器具用の保管場所を別個に確保する必要がない。更に、第2シート12については、常時から第2保持部材4eに取り付けておかず、車椅子としての使用時に取り付けるようにする場合であっても、小さく折り畳むことができるので、格別な保管場所を必要とせず、また小さなケース等に収納することができる。例えば、脚部4の各連結桟4cの上に例えば第2シート12を畳んだ状態で載置しておく、又は上記ケースを載置しておくことも可能である。
<第2実施形態>
【0036】
図7は、本発明の第2実施形態に係る救護器具兼用看板立てを示す斜視図である。図8は、図7の救護器具兼用看板立てに看板本体を取り付けた状態を示す斜視図である。図9は、図7の救護器具兼用看板立てに看板本体を取り付ける過程を示す斜視図である。
【0037】
図7乃至図9に示すように第2実施形態の救護器具兼用看板立て21は、看板本体2が着脱自在に装着される枠部23と、脚部240と、脚部240に設けられて、設置面に接する一対のキャスター25とを備えている。脚部240は、第1脚部24及び第2脚部28を備える。
【0038】
枠部23は、両側の2本の縦桟23a、及び各縦桟23aの上端部を連結する横桟23bからなるU字型のものである。
【0039】
第1脚部24は、枠部23を傾斜させた状態で設置面上に支持する。第1脚部24は、枠部23の各縦桟23aの長さ方向中央部に取り付けられた2本の補強部材24a、各補強部材24aを連結する連結桟24c、各補強部材24aの下端部が取り付けられて、枠部23の各縦桟23aに接続されたそれぞれの支持部材24d、及び各支持部材24dを連結する連結桟24hを備えて構成される。
【0040】
補強部材24aは、その上端部が枠部23の縦桟23aに取り付けられている。支持部材24dは、その一端部に補強部材24aの下端部が取り付けられている。また、支持部材24dは、その他端部が縦桟23aに取り付けられて固定されている。補強部材24aは、支持部材24dにより、縦桟23aに対する角度θ(図7)が一定に保たれている。補強部材24a及び支持部材24dは、枠部23と設置面の間に介在して、図7に示すように下端部が設置面に接触して傾斜姿勢となっている枠部23を支持して、枠部23を設置面上に起立させる。
【0041】
第2脚部28は、その上端部が、枠部23の2本の縦桟23aのそれぞれに回動自在に取り付けられている。すなわち、第2脚部28は、2本設けられている。第2脚部28は、縦桟23aにおける、補強部材24aの取付位置から離れた位置であって、支持部材24dの取付位置とは反対側となる位置に取り付けられている。
【0042】
各キャスター25(特許請求の範囲における車輪の一例)は、第1脚部24の各支持部材24dの一端部24eの最下端と、第2脚部28の下端部の最下端にそれぞれ設けられている。
【0043】
看板本体2の裏面上側には、フックが設けられている。図7に示す姿勢とされている救護器具兼用看板立て21の横桟23bに当該フックを引っ掛けて、看板本体2を枠部23に重ねると、看板本体2が傾斜した状態で支持される。このように、看板本体2を枠部23に重ねて、救護器具兼用看板立て1を看板立てとして使用される場合は、第2脚部28は、図7に示すように、枠部23の縦桟23aから下方に延びる状態とされることが好ましい。
【0044】
救護器具兼用看板立て21を移動させるときには、枠部23の各縦桟23aの下端を設置面から浮かせて、各キャスター25のみを設置面に接触させる。
【0045】
また、図10に示すように、第2脚部28がその上端部を支点として縦桟23aに対して直交する姿勢まで回動された状態で、枠部23の下端部が設置面から離れるように、枠部23が設置面に平行となる姿勢までキャスター25を回動軸として回動されたとき、補強部材24a及び支持部材24dがキャスター25を介して設置面に対して枠部23を支持し、また、第2脚部28も設置面に対して枠部23を支持し、この状態で、キャスター25が設置面に沿って回転する。従って、第2脚部28は、縦桟23aが当該姿勢であって、縦桟23aに対して直交する姿勢のときに、キャスター25の最下部が設置面に接する長さに設定されている。
【0046】
なお、第2脚部28は、このように縦桟23aに対して直交する姿勢まで回動したときに、当該直交する姿勢で固定される機構を有している。当該機構には、例えば折り畳み机の脚部等に用いられている、固定及び固定解除が自在な既知のロック機構が適用される。また、各第2脚部28の間には、各第2脚部28に対して直交する状態で取り付けられて各第2脚部28を繋ぐ横桟(図略)が設けられてもよい。
【0047】
また、枠部23の両縦桟23a(保持部材)間には、ストレッチャー用のシート27(図7)が架け渡されている。例えば、シート27の両側端部及び各縦桟23aにそれぞれの面ファスナーを予め取り付けておき、シート27の両側端部を各縦桟23aに巻き付けると共に、シート27の両側端部の面ファスナーを、各縦桟23aの面ファスナーに貼り付けて、シート27を支持する。また、ストレッチャー用のシート27は、枠部23の各縦桟23a対して、取り付け及び取り外しが可能とされ、使用時に取り付け可能になるようにしてもよい。シート27は、特許請求の範囲における載置部材の一例である。
【0048】
救護器具兼用看板立て21が当該ストレッチャー用のシート27を備えることで、救護器具兼用看板立て21を図10の状態にすると、人をシート27上に乗せて寝かせることができる。また、他の二人の人は、枠部23の上端部及び下端部を持って、救護器具兼用看板立て21を設置面上で移動させることができる。
【0049】
このように第2実施形態では、緊急時には看板本体2を取り外して、担架用のシート27を装着すれば、図10に示すように、救護器具兼用看板立て21をストレッチャーとして用いることができる。
【0050】
また、救護器具兼用看板立て21は、救護器具兼用看板立て1の場合と同様に、通常時は、図8に示すように看板立てとして利用され(第2脚部28は縦桟24aに直交する状態ではなく下方に向けた状態とされる)、不要なときは移動して看板立て用の保管場所に保管可能なので、救護器具用の保管場所を別個に確保する必要がない。更に、シート27については、常時から縦桟23aに取り付けておかず、ストレッチャーとしての使用時に取り付けるようにする場合であっても、小さく折り畳むことができるので、格別な保管場所を必要とせず、また小さなケース等に収納することができる。例えば、第1脚部24の各連結桟24cの上に例えばシート27を畳んだ状態で載置しておく、又は上記ケースを載置しておくことも可能である。
【0051】
なお、第2実施形態の救護器具兼用看板立て21についても、機械的強度を十分に向上させて、安全性を確保するために、枠部23を構成する各縦桟23a及び横桟23bとして、かつ第1脚部24を構成する各補強部材24a、連結桟24c、各支持部材24dとして、図6に示すような断面形状の柱状体16を適用することが好ましい。
<第3実施形態>
【0052】
図11は、本発明の第3実施形態に係る救護器具兼用看板立てを示す斜視図である。
【0053】
図11に示すように第3実施形態の救護器具兼用看板立て31は、看板本体2が着脱自在に装着される枠部33と、枠部33の背面に取り付けられた背もたれ32と、枠部33の背面側に設けられて、枠部33を傾斜させた状態で設置面上に支持する脚部34と、枠部33の下端部に設けられて、設置面に接する一対の車輪35と、枠部33の表面側に設けられた開閉板36(特許請求の範囲における補助部材の一例)とを備えている。
【0054】
枠部33は、両側の2本の縦桟33a、各縦桟33aを連結する横桟33b、及び各縦桟33aの上側に突設されたそれぞれのハンドル33cからなる。縦桟33aは、上下方向に延びて枠部33の両側部を形成する。横桟33bは、上記2本の縦桟33aの上端部を連結する。
【0055】
脚部34は、主に、着座部34aとサポート部34bからなる。着座部34aが枠部33の各縦桟33aの略中央に回動自在に取り付けられている。
【0056】
サポート部34bは、ヒンジ(図示せず)を介して着座部34aに連結されている。サポート部34bは、その上端部が着座部34aの下端部に回動自在に取り付けられ、下端部が設置面に接触可能とされている。サポート部34bは、着座部34aと直線状に連結して、下端部が設置面に接触した状態となっている枠部33を傾斜姿勢で支持して設置面上に起立させる。サポート部34bは、着座部34aを枠部33(縦桟33a)に対して直交する姿勢まで回動させた状態のときに、サポート部34bは、着座部34aと枠部33の間に介在して、着座部34aを当該姿勢で支持する。
【0057】
図14には、着座部34aが上記のように枠部33に対して直交する状態とされ、サポート部34bにより着座部34aを支持している状態を示している。着座部34a上には、着座用部材341が設けられている。着座用部材341は、その上に人が着座可能な耐力を有する部材、例えば、木板又は合成樹脂板等である。着座部34aは、特許請求の範囲における着座用脚部の一例である。サポート部34bは、特許請求の範囲における支持脚部の一例である。
【0058】
また、枠部33の2本の縦桟33aであって、脚部34が取り付けられている側とは反対側となる部分の下端部には、当該下端部に対して回動自在に設けられ、2本の縦桟33aの間に架け渡されて延びる開閉板36(特許請求の範囲における補助部材の一例)が取り付けられている。
【0059】
更に、開閉板36と枠部33の間に介在して、開閉板36を枠部33に対して予め定められた鋭角となる姿勢に保持するストッパー部材37が開閉板36の内側に設けられている。ストッパー部材37は、周知のアームストッパーなどである。ストッパー部材37は、その上端部が開閉板36の内側上端部付近に回動自在に取り付けられている。
【0060】
開閉板36の下端部は、枠部33の各縦桟33aの下端部表面側に対して、上記回動により開閉自在とされている。図11においては、開閉板36が枠部33に対して閉じられた状態を示している。
【0061】
各車輪35は、枠部33の各縦桟33aの下端部に設けられて軸35aにより回転自在に支持されている。
【0062】
看板本体2の裏面上側には、フックが設けられている。このフックを枠部33の横桟33bに引っ掛けて、看板本体2を枠部33に重ねると、看板本体2が傾斜した状態で支持される。
【0063】
着座部34aは、サポート部34bと直線上に連結された状態で、上端部側が枠部33に対して回動することで、図12に例を示すように、枠部33に対して着座部34a及びサポート部34bが平行な姿勢になるまで姿勢を変更する。着座部34aが閉じられ、着座部34a及びサポート部34bが平坦になって枠部33に重ね合わさると、背もたれ32、着座部34a、及びサポート部34bが枠部33の各縦桟33a上に並んで、救護器具兼用看板立て31全体が平板状になる。また、枠部33の各縦桟33aには、担架用のシート(図示せず)が取り付けられている。
【0064】
この場合、図13に示すように、ケガ人をシート上に乗せて寝かせることができ、救助者二人が、枠部33の上端部及び下端部を持って、救護器具兼用看板立て31を持ち運ぶことができる。すなわち、救護器具兼用看板立て31を担架として利用することができる。
【0065】
また、図14に示すように看板本体2を取り外し、着座部34aを枠部33に対して直交する姿勢とさせ、着座部34aとサポート部34bをV字型に屈曲させた状態で、サポート部34bの下端を枠部33の各縦桟33aに対してボルト及びナット等により固定すると、着座部34aが枠部33の各縦桟33aから突出する状態となる。縦桟33aに対するサポート部34bの下端の着脱は、ボルト及びナットなどを利用することで自在とされている。
【0066】
この場合は、図15に示すように人を着座部34aに座らせて背もたれ32にもたれ掛けさせることができ、他の人が枠部33の各縦桟33aの上側のハンドル33cを両手に持って、救護器具兼用看板立て31を押し引きし、救護器具兼用看板立て31を移動させたり方向転換させることができる。このとき、枠部33の各車輪35が回転するため、移動及び方向転換が容易である。すなわち、救護器具兼用看板立て31を車椅子として利用することができる。
【0067】
更に、図16に示すように開閉板36を開いて、ストッパー部材37を図16に示す位置まで回動させ、ストッパー部材37の枠部33側の端部を枠部33に固定することで、この開いた状態をストッパー部材37により保持させることができる。この場合は、図16に示すように、開閉板36を階段の上に乗せて、各ハンドル33cを操作することにより、救護器具兼用看板立て31を大きく傾けることなく階段上で滑らせて昇降させることができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記各実施形態に示した救護器具兼用看板立てに対して、補強のために横桟又は縦桟を更に追加する等の設計変更は適宜行われる。また、図1乃至図16を用いて説明した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0069】
1、21、31 救護器具兼用看板立て
2 看板本体
3、23、33 枠部
4、240、34 脚部
24 第1脚部
28 第2脚部
5、25 キャスター
6 フック
11 第1シート
12 第2シート
35 車輪
36 開閉板
【要約】
【課題】緊急時に利用しやすく、汎用性があり、保管するスペースを容易に確保することが可能な救護器具兼用看板立てを提供する。
【解決手段】救護器具兼用看板立て1は、看板本体2が着脱自在に装着される枠部3と、枠部3を設置面から離間させかつ傾斜させた状態で支持する脚部4、脚部4の下端に設けられて、設置面に接する複数のキャスター5と、を備え、看板本体2が取り外された状態では、枠部3の内側に空間が形成され、脚部4には、空間に配置された着座用の第1シート11を保持する第1保持部材4d及び第2保持部材4eが設けられている。
【選択図】図4
図1
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図5
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