特許第6039132号(P6039132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6039132複合媒質からなる試片に対するX線CT画像の最小単位に存在する各純粋媒質の体積比の測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039132
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】複合媒質からなる試片に対するX線CT画像の最小単位に存在する各純粋媒質の体積比の測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   A61B6/03 360E
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-513856(P2016-513856)
(86)(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公表番号】特表2016-522720(P2016-522720A)
(43)【公表日】2016年8月4日
(86)【国際出願番号】KR2013011794
(87)【国際公開番号】WO2015046668
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年11月13日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0114407
(32)【優先日】2013年9月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515317226
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ コンストラクション テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン, ヒュ ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム, クヮン ヨム
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−92980(JP,A)
【文献】 特開2003−303344(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/010206(WO,A1)
【文献】 特開2007−246959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の種類の純粋媒質が混合されてなる複合媒質からなる試片に対するX線CT撮影において最小単位に該当するそれぞれのボクセルに対し、当該ボクセル内で各純粋媒質が占める体積比を算出する方法であって、
CT撮影装置にてX線を透過してCT撮影を実施することによって複合媒質からなる試片に対するX線ヒストグラムを入手するステップ;
CT撮影にて入手された複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGF及びこれを構成する個別的なGFを演算装置で算出するステップ;
それぞれの純粋媒質に対するGFの平均値と、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFそれぞれの平均値の差(Li,j)を下記の式(3)によって演算し、算出されたLi,j値を用いて、下記の式(4)によって、それぞれのガウス関数でそれぞれの純粋媒質が占める体積比(PRi,j)を算定するステップ;及び
それぞれのボクセル大きさ単位における各純粋媒質の体積比(VF)を下記の式(5)によって算出するステップ;を含むことを特徴とするボクセル内における各純粋媒質の体積比の測定方法。
【数3】
【数4】
【数5】
[前記式(3)、式(4)及び式(5)中、μはi番目の複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちの純粋媒質に対するGFの平均値であり、μは複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちのj番目のGFの平均値であり、Li,jはμとμとの差であり、NPは純粋媒質の個数であり、PRi,jは複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちのj番目のGFにおけるi番目の純粋媒質が占める体積比であり、NFは純粋媒質の個数と補助GFの個数とを合わせた個数であり、VF(x)はCT値がxであるボクセルにおけるi番目の純粋媒質が占めている体積比であり、GF(x)は複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちのCT値がxであるボクセルに対するj番目のガウス関数のボクセル頻度数である]
【請求項2】
入手されたX線ヒストグラムを代表するGF及びこれを構成する個別的なGFを演算装置で算出するステップは、
入手された複合媒質のX線ヒストグラムの極大点の個数を計数し、各純粋媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの平均値を読み取り;
追加の補助GFの個数を決めた後、各補助GFに対する平均値を決め、GF全体の和からなる複合媒質の仮GFを算出し;
算出された仮GFのうちの、CT撮影で入手したX線ヒストグラムとの複数の水平軸値に対する対応の垂直軸値の誤差が最小になるGFを、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFとして採用することで実施されることを特徴とする請求項1に記載のボクセル内における各純粋媒質の体積比の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合媒質からなる試片に対してX線CT撮影を実施することで試片のX線CT画像の最小単位に存在する各純粋媒質の体積比の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT撮影が医療分野を始めてとして多くの産業分野で利用されている。大韓民国登録特許第10−1120250号には医療分野においてX線CT撮影を実施して得た画像を処理する方法が開示されている。
【0003】
従来のX線CT撮影装置では、撮影対象(試片)にX線を透過させて3次元画像単位であるボクセル(voxel)単位で試片の3次元イメージ(image)を形成する。本明細書では、このようにX線を透過してCT値を算出する過程を、便宜上「CT撮影」と略称し、また、その際に使用されるX線CT撮影装置を、便宜上「CT撮影装置」と略称する。
【0004】
このように試片に対してCT撮影を実施するにあたって、3次元形状の試片はボクセル(voxel)という3次元画像の基本単位からなるものと見なし得る。すなわち、試片の画像においてCT撮影を実施して認識することができる最小基本単位がボクセルである。試片が複数の種類の媒質が混ざり合って作られた媒質複合体(複合媒質)である場合、試片の画像において一つのボクセルは一の種類の純粋媒質からなるものもあるのに対し、複数の種類の媒質が混合されている状態のものもある。例えば、試片が地盤から採取した土砂の場合、土砂には空隙が存在し、該空隙には空気が存在することから、土砂は「空気」と「骨材」という二種の純粋媒質が混合されてなる、すなわち「空気−骨材」の媒質複合体であると言える。このとき、このようは土砂の試片を最小単位であるボクセルに分割したとき、或るボクセルは空気だけで満たされまたは骨材だけで満たされてなるものとされることがある反面、或るボクセルの場合は、空気と骨材とが混ざり合ってなるものとされることがある。このように複数の種類の媒質が混合されている状態のボクセルを「ミクセル(mixel)」と称する。すなわち、前記例示した土砂の場合では、空気と骨材とが混ざり合ってなるボクセルが、つまり「ミクセル」に該当する。
【0005】
従来のCT撮影装置及びCT撮影方法では、それぞれのボクセルに対してCT値の閾値を決めておき、決められた閾値を基準にして二分法にてそれぞれのボクセルを区分した。図1には、従来のCT撮影装置及びCT撮影方法にて試片のボクセルを二分法にて区分する方式を説明するための概念図が示されている。図1の(a)に示されたように試片をX線CT撮影で認識することができる最小単位に該当する「ボクセル」に分割したとき、或るボクセルの場合は、純粋に一種の媒質だけからなるのに対し、ミクセル(mixel)と記載されたボクセルの場合は、純粋に一種の媒質からなるものではく、他の媒質が混合された状態にあるようになる。すなわち、ミクセルでは複数の種類の媒質が所定の体積比で混合されている。
【0006】
ところで、従来のCT撮影装置及びCT撮影方法では、決められた閾値を基準にして二分法にてボクセルを区分するため、単にそれぞれのボクセルに対するCT値が閾値を超えるか否かのみを判断し、図1中の(b)において黒色と白色で示されたように、それぞれのボクセルを単に二つのうちの何れかに分類するようになる。すなわち、従来の技術では、複数の種類の媒質が混合されているミクセルが存在しても、このようなミクセルに混合された媒質の体積比を一切考慮することなく、CT値の閾値のみを基準にしてボクセルを二種の種類だけで区分するようになる。このように従来のX線CT撮影装置及びX線CT撮影方法によっては、ミクセルにおける媒質体積比を一切考慮することができないため、試片をなす媒質の体積比を算出した場合、精度や信頼性が低いという技術的限界が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複数の種類の媒質が混合されているミクセルが存在するとき、ミクセルに混合された媒質の体積比を一切考慮することなく、CT値の閾値のみを基準にしてボクセルを二つの種類だけで区分する従来技術の限界を克服することができる技術を提供することである。
【0008】
具体的に、本発明の目的は、複数の種類の純粋媒質が混合されてなる複合媒質(媒質複合体)からなる試片に対するCT画像の最小単位に該当するそれぞれのボクセル、すなわち、試片画像をなすそれぞれのボクセルに対し、当該ボクセル内において各純粋媒質が占める体積比を算出することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、複数の種類の純粋媒質が混合されてなる複合媒質からなる試片に対するX線CT撮影において最小単位に該当するそれぞれのボクセルに対し、当該ボクセル内で各純粋媒質が占める体積比を算出する方法であって、CT撮影装置にてX線を照射してCT撮影を実施することによって複合媒質からなる試片に対するX線ヒストグラムを入手するステップ;入手された複合媒質のX線ヒストグラムを代表するガウス関数及びこれを構成する個別的なガウス関数を演算装置で算出するステップ;それぞれの純粋媒質に対するGFの平均値と、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFそれぞれの平均値の差(Li,j)を演算し、算出されたLi,j値を用いて、それぞれのガウス関数でそれぞれの純粋媒質が占める体積比(PRi,j)を算定するステップ;及びそれぞれのボクセルに対する各純粋媒質の体積比(VF)を算出するステップ;を含むことを特徴とするボクセル内における各純粋媒質の体積比の測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の種類の純粋媒質が混合されてなる複合媒質(媒質複合体)で作られた試片に対するCT画像の最小単位に該当するそれぞれのボクセル、すなわち、試片のCT画像をなすそれぞれのボクセルに対し、当該ボクセル内において各純粋媒質が占める体積比を算出することができるようになる。
【0011】
本発明によれば、試片のボクセルのうちの複数の純粋媒質が混合されているミクセルに対し、それぞれの純粋媒質が占める体積、すなわち、当該ミクセル内において混合された純粋媒質の体積比を算出することができるようになる効果が奏される。
【0012】
本発明によれば、ボクセルに基づいて試片をなす各媒質の体積比を算出したとき、ボクセルの大きさ、すなわち、CT画像の解像度に特に影響を受けることなく、各純粋媒質の体積比に対する精度よい演算結果を得ることができるようになる。
【0013】
また、本発明によれば、ボクセル(ミクセルを含む)内の純粋媒質の体積比の算定が可能になることで、従来の二分法では不可能であった試料中の各純粋媒質の体積比の分布図を算出することができ、且つX線CT撮影を用いた試片の分析方法に対して精度や信頼性を高めることができるようになる効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来のCT撮影装置及びCT撮影方法で試片のボクセルを二分法にて区分する方式を説明するための概念図である。
図2】一種の物質(純粋媒質)からなる試片に対するCT値のX線ヒストグラム(histogram)である。
図3】本発明に係る方法の概略的な過程を示すフローチャートである。
図4】重回帰分析によって複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを演算し算出する過程に関するフローチャートである。
図5】三種の純粋媒質が混合されてなる複合媒質からなる撮影対象試片に対するCT値のX線ヒストグラムである。
図6図5に示されたX線ヒストグラムにおいて領域Aと領域Bに補助GFが存在することを示すX線ヒストグラムである。
図7】各GFにおいてそれぞれの純粋媒質が占める体積比を算定するステップに関する詳細なフローチャートである。
図8】本発明に従ってボクセルを区分する方式を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施例について添付の図面を参照して説明する。なお、本発明は、図面に示された実施例を参考にして説明しているが、これは一つの実施例として説明されるものであるに過ぎず、これによって本発明の技術的思想やその核心構成及び作用が制限されるものではない。
【0016】
本発明では、媒質の体積比を測定したい試片に、先ず公知のCT撮影装置にてX線を照射してCT撮影を実施するようになる。CT撮影装置では、X線の透過能力を評価し、X線の透過能力に応じて試片のCT画像のボクセル単位から固有の値を得ており、このようにCT撮影装置においてそれぞれの媒質のX線透過程度に基づいて試片のCT画像のボクセルに独自的に付与される固有値を「CT値」と総称する。本発明では、このように公知のCT撮影装置にてCT撮影を実施することで自動的に算出されるCT値を用いて、当該CT撮影装置に対し、ボクセル単位で試片をなす複数の構成媒質の体積比を測定することができる方法を提供する。
【0017】
CT撮影装置にて試片に対してCT撮影をすれば、CT値のX線CTヒストグラム(以下、「X線ヒストグラム」(X-ray histogram)と略称する)が取得されるが、図2には、一種の物質、すなわち、純粋媒質からなる試片に対するX線ヒストグラムの一例が示されている。X線ヒストグラムにおける、x軸はCT撮影装置でボクセル単位に対して得られる「CT値」で、y軸は当該CT値の「頻度数」、すなわち、当該CT値を有する試片のボクセル(voxel)の数である。このように、測定対象になる試片をCT撮影して入手したX線ヒストグラムは、鐘(bell)形状をなすようになることから、数学的には平均値と分散、そして曲線グラフの下の領域の面積値で定義されるガウス分布関数(Gaussian distribution Function/以下、「GF」と略称する)で表され得る。すなわち、一種の物質からなる純粋媒質のX線ヒストグラムは、一つの固有のGFに代表され得る。図2中の図面符号Mは、種(bell)形状のX線ヒストグラムのグラフにおける極大点(M)を意味する。
【0018】
一方、複合媒質の場合、複数の種類の純粋媒質が混合されてなるものであるため、このような複合媒質のX線ヒストグラムに対するGFは、複合媒質をなす各純粋媒質の固有の構成比による和で表され得る。
【0019】
前記したような事項に基づき、本発明では、次のようなステップを順次実施しており、本発明に係る方法は、入力装置、演算装置、及び出力装置(映像装置)を含むシステムによって実施されていてよく、方法の実施の際に必要な入力データはユーザによって入力装置を介して入力されていてよい。前記演算装置は、コンピューターからなるものであってよく、本発明の方法に含まれた一連の過程が前記演算装置で駆動されるコンピュータープログラムによって実施されていてよい。特に、このような演算装置は、CT撮影装置に組み込まれていてよいが、CT撮影装置に接続された別途の装置として備えられていてもよい。
【0020】
図3は、本発明に係る方法の概略的な過程を示すフローチャートである。本発明に係る方法では、先ず、公知のCT撮影装置にてX線を照射してCT撮影を実施することによって試片に対するX線ヒストグラムを入手し(ステップS0)、演算装置では入手されたX線ヒストグラムを代表するGFを算出する(ステップS1)。純粋媒質の場合、図2に示されたように、X線ヒストグラムは一つの極大値を有する曲線の形態を持つようになり、GFは平均値(鐘状の曲線における平均値)、分散値、そして曲線の下の部分に対する面積値で定義される関数であることから、純粋媒質に対するX線ヒストグラムを代表するGFは、CT撮影にて入手されたX線ヒストグラムから公知の数学的方法によって決定できるようになる。
【0021】
しかし、複数の種類の純粋媒質が混合されてなる複合媒質の場合、X線ヒストグラムは一つのGFで表されず、平均値と分散値、そして面積値がそれぞれ異なる複数のGFの和で表される。このため、本発明では、CT撮影にて入手されたX線ヒストグラムに基づいて重回帰分析を実施することによって、複合媒質を代表する複数のGFを演算し算出するようになる。
【0022】
以下では、このような過程、すなわち、演算装置において重回帰分析によって複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを演算し算出する過程についてより詳しく説明する。図4には、重回帰分析によって複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを演算し算出する過程についてのフローチャートが示されており、図5には、三種の純粋媒質が混合されてなる複合媒質からなる撮影対象試片に対するCT値のX線ヒストグラムの一例が示されている。図5に例示されたように、例えば、撮影対象試片が三種の純粋媒質が混合されてなる複合媒質(媒質複合体)からなる場合、X線ヒストグラムは純粋媒質を代表して極大点を有する三つのGFを含むようになる。したがって、本発明では、撮影対象試片に対してX線ヒストグラムを入手した後、極大点の個数を計数しこれを撮影対象試片を構成する純粋媒質の個数にするようになる(ステップS1−1)。図3に例示された場合では、撮影対象試片は、三つの極大点を持っていることから、純粋媒質p1、p2及びp3からなるものであると言える。
【0023】
このようにX線ヒストグラムにおける極大点を計数すると共に、それぞれの極大点におけるCT値を各純粋媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの平均値と読み取る(ステップS1−2)。図3の場合、純粋媒質p1に対する極大点におけるCT値であるμP1を読み取り、純粋媒質p2に対する極大点におけるCT値であるμP2及び純粋媒質p3に対する極大点におけるCT値であるμP3を、それぞれ読み取る。このようにして読み取られた各純粋媒質の極大点におけるCT値は、各純粋媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの平均値となる。すなわち、GFは、平均値(bell状の曲線における平均値)、分散、そして曲線の下の部分に対する面積値で定義される関数であって、このようにして読み取られた各純粋媒質の極大点におけるCT値は、各純粋媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの平均値となる。
【0024】
一方、複合媒質のX線ヒストグラムは、純粋媒質のX線ヒストグラムの和だけからなるものではない。図5において領域Aと領域Bで表示された区間の場合、頻度数が所定値を持っていることから、領域Aと領域Bに対しても数学的に表現しなければならず、領域Aと領域Bのように純粋媒質の極大点の間の区間を含む複合媒質全体のX線ヒストグラムをGFで表現するためには、純粋媒質のX線ヒストグラムに対するGF以外に補助GFがさらに必要となる。図6には、図5に示されたX線ヒストグラムにおいて領域Aと領域Bに補助GFが存在することを示すX線ヒストグラムが示されており、図6に示されたように補助GFがさらに必要となる。
【0025】
したがって、重回帰分析によって複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを演算し算出するためには、さらなる補助GFの個数を決めるようになる(ステップS1−3)。すなわち、ユーザは、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの算出に用いられる補助GFの個数(NF)を任意に決める。補助GFの個数(NF)が決められると、演算装置では純粋媒質間のX線ヒストグラムを代表するGFの平均値間隔を前記補助GFの個数(NF)で割って、それぞれの補助GFに対する平均値を決める(ステップS1−4)。
【0026】
このように複合媒質をなす純粋媒質に対し、演算装置での演算過程によって、それぞれの純粋媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの平均値が決められ(ステップS1−2)、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの算出に用いられる補助GFの個数と、それぞれの補助GFの平均値が決められると(ステップS1−3及びS1−4)、純粋媒質を代表するGFと補助GFの形態を決める分散値及び面積値を任意に設定し、各純粋媒質を代表するGFと補助GFを全て合わせて定義された複合媒質の「仮GF」を算出する(ステップS1−5)。
【0027】
「仮GF」と実際のCT撮影から得られたX線ヒストグラムとの誤差(水平軸の最小と最大の範囲の間での一定間隔の値(CT値)に対する「仮GF」とX線ヒストグラムからの垂直軸の対応値との差の総和)が最小になったときの純粋媒質のGFと補助GFの分散値及び面積値の組み合わせを算出する。このような一連の演算過程を一般に「重回帰分析」と言い、このような重回帰分析によって純粋媒質のGFと補助GFの分散値と面積値の組み合わせが決まり、これらの和で定義される「複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGF」が採用される(ステップS1−6)。すなわち、算出された仮GFのうちの、CT撮影にて入手したX線ヒストグラムとの複数の水平軸値に対する対応の垂直軸値(関数またはヒストグラム曲線からの垂直軸対応値)の誤差が最小になるGFを、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFとして採用するようになる。
【0028】
このような関係を数学的に表すと、次の式(1)のとおりである。
【0029】
【数1】
【0030】
前記式(1)中、NFは純粋媒質の個数と補助GFの個数とを合わせた個数であり、GFは面積値、分散値と平均値で定義される鐘状のガウス分布関数であって複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成するようになる個別的なGFを意味する。図3に示されたように、例えば、複合媒質がp1、p2及びp3の三種の純粋媒質からなり、補助GFの個数を17と決めたとすれば、総GFの個数NFは20(J=1〜20)であるので、前記式(1)は、次の式(2)で表される。
【0031】
【数2】
【0032】
前記式(2)中、GF、GF、…は、それぞれ純粋媒質のGFと補助GFであって、前記ステップS1−2及びステップS1−3によって決められた平均値を有する。また、前記式(2)中、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFは、前記ステップS1−5とS1−6の重回帰分析によって決められた分散値と面積値で形態が決められた全てのGFの和で定義される関数である。
【0033】
このように、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFと、これを構成する個別的なGFがそれぞれ算出され決定されると、演算装置ではミクセルを代表する補助GFにおいてそれぞれの純粋媒質が占める体積比を算定する(ステップS2)。
【0034】
図7には、各GFにおいてそれぞれの純粋媒質が占める体積比を算定するステップについての詳細なフローチャートが示されており、図7に示されたように、先ず、それぞれの純粋媒質に対するGFの平均値と、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数の補助GFのそれぞれの平均値の差を演算する(ステップS2−1)。すなわち、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちの、i番目の純粋媒質に対するGFの平均値(μ)と、複合媒質(ミクセル)のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちのj番目のGFの平均値(μ)の差(Li,j)を下の式(3)によって演算する。
【0035】
【数3】
【0036】
前記式(3)によって演算されたLi,j値が小さいほど、該当する純粋媒質の割合が大きくなるわけである。図3に例示されたように、純粋媒質がp1、p2及びp3の三種であり、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成するGFの平均値が、純粋媒質p3のGF平均値に近いと、すなわち、式(3)によって演算されたL3,j値が小さいと、これは純粋媒質p3の占める割合が大きいということを意味する。
【0037】
したがって、それぞれの純粋媒質に対するGFの平均値と、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのそれぞれの平均値の差を演算した後は、演算された結果を用いてそれぞれのGFにおけるそれぞれの純粋媒質が占める体積比を演算する(ステップS2−1)。すなわち、前記式(3)によってLi,j値を演算した後は、Li,j値を用いて、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちのj番目のGFにおけるi番目の純粋媒質が占める体積比PRi,jを下の式(4)によって算出する。
【0038】
【数4】
【0039】
前記式(4)中、Li,jは式(3)によって演算された値であり、NPは純粋媒質の個数(ステップS1−1によって決められた純粋媒質の個数)である。式(4)中のPRi,jは、前記式(1)における複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの算出に用いられた複数のGFのうちのj番目のGFに対し、j番目のGFにおけるi番目の純粋媒質が占める体積比を意味する。
【0040】
このように複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの算出に用いられた複数のGFのそれぞれに対し、純粋媒質が占める体積比が前記式(4)によって算出されると、演算装置ではそれぞれのボクセルに対する各純粋媒質の体積比VFを下の式(5)によって算出する(ステップS3)。
【0041】
【数5】
【0042】
前記式(5)中、VF(x)はCT値がxであるボクセルにおけるi番目の純粋媒質が占めている体積比である。式(5)中、PRi,jは、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちのj番目のGFにおけるi番目の純粋媒質が占める体積比(式(4)によって演算されたもの)であり、GF(x)は、CT値がxであるボクセルに対するj番目のGFのボクセル頻度数である。すなわち、前記式(5)中、GF(x)は、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちのj番目のGFのX線ヒストグラムグラフを描いたとき、当該グラフにおける横軸のCT値がxであるときの縦軸の値を意味する。
【0043】
一方、式(5)中、NPは、純粋媒質の個数であり、NFは純粋媒質の個数と補助GFの個数を合わせた個数(式(1)参照)である。
【0044】
このように本発明では、複数の種類の純粋媒質が混合されてなる複合媒質(媒質複合体)で作られた試片に対するCT撮影において最小単位に該当するそれぞれのボクセル、すなわち、試片をなすそれぞれのボクセルに対し、当該ボクセル内において各純粋媒質が占める体積比を算出することができるようになる。前述したように、まるでデジタルカメラで物を撮影したとき、撮影の最小単位である「ピクセル(pixel)」が集まって物の2次元画像をなすのと同様、試片をCT撮影すると、試片はCT撮影の最小単位であるボクセルが集まってなるものと見なされ、本発明によれば、試片のボクセルのうちの複数の純粋媒質が混合されているボクセル、すなわち、ミクセルに対し、当該ミクセルに混合された純粋媒質の体積比を算出することができるようになる。
【0045】
図8には、本発明によってボクセルを区分する方式を説明するための概念図が示されており、図8の(a)に示されたように、試片がミクセルと純粋な媒質のみからなるボクセルからなる場合、本発明では、当該ミクセルに混合された純粋媒質の体積比を算出することができるようになるので、図8の(b)に示されたように、純粋媒質の体積比によってそれぞれのボクセル(ミクセルを含む)を区分することができるようになる。
【0046】
すなわち、前述したように、従来技術によっては決められた閾値を基準にして二分法にてボクセルを区分していたため、試片に対するボクセルのうちの複数の種類の媒質が混合されているミクセルが存在しても、このようなミクセルに混合された純粋媒質の体積比を一切考慮することができず、よって、公知の方法にて試片をなす各媒質の体積比を算出しても精度や信頼性が低いという短所があった。これに対し、本発明では、前記のように純粋媒質が混合されているミクセルに対し、当該ミクセルに混合された純粋媒質の体積比を算出することができるようになることから、ボクセルに基づいて公知の方法にて試片をなす各媒質の体積比を算出したとき、一つのボクセル単位の体積内でも純粋媒質の体積比を精度よく演算することができるようになり、且つ、CT撮影を利用した試片の平均体積比の分析方法に対して精度や信頼性を高めることができるようになるという効果が奏される。
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図1
図8