(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039135
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】マッシュルーム型高圧電極
(51)【国際特許分類】
H02G 5/00 20060101AFI20161128BHJP
H01R 4/58 20060101ALI20161128BHJP
H01T 19/02 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
H02G5/00
H01R4/58 C
H01T19/02
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-520292(P2016-520292)
(86)(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公表番号】特表2016-529650(P2016-529650A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】EP2013062672
(87)【国際公開番号】WO2014202126
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2016年4月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508254509
【氏名又は名称】エービービー テクノロジー エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アレバロ, リリアナ
【審査官】
出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭51−049817(JP,U)
【文献】
特開昭57−120400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 5/00− 5/10
H01T 19/02
H02B 1/20
H02B 13/00−13/08
H02B 15/00−15/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム型上部(10)、
ドーナツ型底部(11)、及び
前記上部(10)と前記底部(11)とを接続する中間部(12)を備える、高圧電極装置であって、前記中間部(12)が、接続される電気設備を受容するためのリードスルー(13)を備え、前記高圧電極装置の前記上部(10)が楕円体型である、高圧電極装置。
【請求項2】
前記中間部(12)が円筒形である、請求項1に記載の高圧電極装置。
【請求項3】
前記高圧電極装置が前記ドーナツ型底部(11)に配置された円筒形部分を更に備え、前記円筒形部分が前記ドーナツ型底部(11)の内部に沿って前記ドーナツ型底部(11)の周囲に接触している、請求項1又は2に記載の高圧電極装置。
【請求項4】
前記円筒形部分が、絶縁体を受容するための開口を中央に備える、請求項3に記載の高圧電極装置。
【請求項5】
前記ドーム型上部(10)の直径(d1)が前記ドーナツ型底部(11)の直径(d2)よりも大きい、請求項1から4の何れか一項に記載の高圧電極装置。
【請求項6】
前記楕円体型上部(10)のx方向の直径が、前記楕円体型上部(10)のy方向の直径と実質的に等しい、請求項1から5の何れか一項に記載の高圧電極装置。
【請求項7】
前記楕円体型上部が、前記楕円体型上部の前記ドーナツ型底部に面する端部において、x−y方向に平坦である、請求項1から6の何れか一項に記載の高圧電極装置。
【請求項8】
少なくとも1つのポスト碍子(15)であって、その上に前記高圧電極装置が配置されるポスト碍子(15)を更に備える、請求項1から7の何れか一項に記載の高圧電極装置。
【請求項9】
少なくとも1つの台碍子(16)であって、その上に前記ポスト碍子(15)が配置される台碍子(16)を更に備える、請求項8に記載の高圧電極装置。
【請求項10】
接続される前記電気設備が、バスバー、ブッシング、変圧器、バルブ、サージアレスタ、及び支持碍子のうちの一又は複数を含む、請求項1から9の何れか一項に記載の高圧電極装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧電極装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧装置及び高圧ステーションの絶縁設計は、他の諸パラメータの中でも特に、スイッチングインパルスへの耐性レベル及び沿面距離要件によって左右される。高電圧伝送レベルが高まるにつれ、スイッチング耐久要件が厳しくなっている。電極表面へのストレスを低減し、耐電圧能力を向上させるために、曲率半径の大きい電極が、高圧装置、バス端子、接続箇所などで広く用いられている。電極は、コロナの発生点を有さず且つステーションの電圧レベルに応じた絶縁破壊要件を満たす必要がある。絶縁という観点から、絶縁ガス中の電極の最も重要な電気的特性は、コロナ放電の開始及び絶縁破壊電圧という特性である。コロナ放電は、高ストレスの電極付近に発生する持続的な部分放電である。屋内条件下で、電極の形状及びクリアランス長は、最大動作電圧においてコロナ放電が発生しないように決定されるべきである。コロナ放電の開始電圧は、エアギャップの構成並びに密度及び湿度などの大気条件によって決定される。
【0003】
印加される電圧の増大によってコロナ放電が更に進行すると、エアクリアランスの絶縁破壊に繋がることがある。外付けの絶縁設計において、電極の形状及びクリアランス長は、過電圧下でクリアランスの絶縁破壊が発生しないように決定されるべきである。エアギャップの絶縁破壊はコロナ開始から始まり、より強力な放電活動に発展する。
【0004】
例えば、バスバー、変圧器及びバルブ、バスバー及びブッシング、並びに支持碍子などの様々な電気設備を接続している高電圧直流(HVDC)バルブホールで、球状電極が用いられている。これらの球状電極の直径は電極の接続点でハンドリングされる最大電圧に依存する。最大電圧は絶縁協調要件(即ち、ある設備が用いられるシステムにおいて出現し得る電圧に対しての、当該設備の電気的強度要件)によって決定される。そのような球状電極の目的は、接続点においてより緩やかな(lenient)電場を提供し、且つコロナ放電及びエアクリアランスの絶縁破壊のような電気的ストレスを防止することである。
【0005】
バルブホール内の電気設備のクリアランス距離の算出は、スイッチングインパルス耐電圧要件(即ち、スイッチングインパルス動作において絶縁媒体が耐えられるはずの印加される過電圧)に依存する。クリアランス距離は、電極のギャップ率(gap factor)(ある特定のギャップ距離での装置の絶縁破壊電圧と、参照とする絶縁破壊電圧、すなわち参照とする尖端−平面間の装置においてギャップ距離を同じにしたときの絶縁破壊電圧との関係)と、絶縁破壊媒体(絶縁体又は空気)とに依存する。電極が高スイッチングインパルス耐電圧を提供可能である場合、絶縁要件を満たすクリアランス距離は、より低いスイッチングインパルス耐久レベル能力を有する電極で算出されたクリアランス距離よりも短い。
【0006】
電気設備の接地プレーンへの絶縁距離は、ポスト碍子と上部電極との組み合わせ、及び/又は、ポスト碍子と台碍子(pedestal insulator)と上部電極との組み合わせによって主に形成される。従って、球状/コロナ電極は典型的に、一又は複数の垂直に配置されたポスト碍子の上部に配置される。ポスト碍子がバルブホールのフロア上に配置された台碍子の上部に配置されることもある。球状電極を用いた実地試験によれば、800kVDCなどの高電圧において屋内条件での絶縁要件の要件を満たすために、ポスト碍子の長さは8m以上、用いられる台碍子は少なくとも2.4mであるべきであり、このことは球状電極がバルブホール内で10.4mの高さで配置されることを示唆する。
【0007】
HVDC動作電圧が上昇するにつれて絶縁要件が更に厳しくなる。この絶縁要件を満たすために、コロナフリー電極(例えば球状電極)の直径は増大してきた。バルブホール内の接続において初期プロジェクトで用いられた球状電極は直径1.3mであったが、現在、800kVDCプロジェクトにおいて1.8m又はこれを上回る直径の球状電極が用いられている。絶縁要件の上昇により、ステーション内で用いられる電極の直径及びポスト碍子の長さが増大している。
【0008】
しかしながら、電極の直径の増加はギャップ率の増加にも、また電極の耐電圧にも直接的に比例しない。更に、台碍子及びポスト碍子の全長に対する絶縁破壊電圧は比例関係でないので、ポスト碍子の長さの増加が設備の絶縁破壊電圧能力を直接的に向上させるわけではない。実験的及び理論的調査によれば、絶縁破壊電圧と球状電極のギャップ距離との間の関係は飽和する傾向にある(即ち、実際には、高圧電極がどの高さで配置されるかに関係なく、電極の絶縁破壊電圧はある高さを超えると増加しない)。しかしながら、この飽和点は予測が難しく、この種の設備における絶縁破壊の物理的挙動は複雑であるのでモデリングが困難である。
【0009】
調査によれば、1100kVDCシステムにおいて、直径2m、絶縁距離15m以上の球状電極は、要求されるスイッチングインパルス耐電圧のうち最小で50%が満足されない。しかもギャップの飽和に到達するので、絶縁長さ、フロアとの距離、又は電極の直径の増大によってより高い電圧を達成することが不可能となる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、当技術分野におけるこの問題を解決又は少なくとも緩和し、高圧電極装置を提供することである。
【0011】
本発明の一態様によれば、この目的が、ドーム型の上部、ドーナツ(toroid)型の底部、及び、上部と底部とを接続する中間部を備えた高圧電極装置によって達成される。中間部は、接続される高電圧設備を受容するためのリードスルー(貫通部)(lead−through)を備える。
【0012】
ドーム型の上部によって、例えば電極装置が配置されている構造物(例えばバルブホール)の天井に対しての電極上部における電場ストレスが低減し、電極上部において不均質な電場が防止されるので、有利である。電極のドーム型部分は、電極の上部近傍に位置する任意の物体の方への等電位線を滑らかにし、これにより、電極上部付近の物体のいかなる不規則性又はそれら物体からのいかなる障害も有意に電場を攪乱せず、コロナの開始が防止される。本装置の上部により電極上部での電場集中が(例えば、電場が球の周囲に均等に分布する球形の場合に対して)低減し、結果として、小孔又は突起が存在する場合にも電極上部の電場分布に対する影響が少なくすむ。底部が、周辺設備(例えば、壁及び接地プレーン)に対する電場を滑らかにするのに十分な内径を有するドーナツ型であることに、更なる利点がある。底部は、装置からの電気力線が壁及び接地プレーンの方へと滑らかに落下するように設計される。本装置の完成品の等電位線は均一に分布し、電場の集中点を防止する。従って、電極の側部、底部、及び上部の方へのストレスがより均質となり、電極の静電挙動を妨害しない。上部が楕円体型であると例示したが、他のドーム形状も企図され得る。
【0013】
高電圧下の試験及び絶縁破壊シミュレーションの後、本発明の電極装置は、球状電極よりもはるかに高い耐電圧能力を有することが示された。本電極装置は良好なスイッチングインパルス耐電圧能力をもたらす。従って、絶縁要件を満たすのに必要な絶縁長さが、球状電極に要する絶縁長さと比較して短くなる。例えば、本発明の電極装置における2650kVの絶縁破壊耐電圧という要件を満たすには、全長6mのポスト碍子及び2.4mの台碍子が必要であることが実地試験によって示された。このことは本電極装置がバルブホールのフロア上8.4mの高さに位置することを意味し、これは有利な低さである。
【0014】
本発明の電極装置は、不均質な電場が「マッシュルーム」型構成の内部に隠されることができるように電場を低減し、これにより周辺の電気的環境が擬似的に均質な電場を経験する。換言すれば、電極が電場を滑らかにする。本発明のマッシュルーム型電極装置によって生成される等電位線は、楕円形状である。従って、電極の上部又は底部に位置する接地された物体の観点からは、有意な電場集中が存在せず、電場は均一に分布しているように受け取られる。本装置の完成品の水平軸の直径(この水平軸の直径が底部の直径と一致する)は、電場の集中を防止しコロナの開始又は絶縁破壊を回避するのに十分な大きさである。本装置の完成品の、側部の方への等電位線の形状は放物線状であり、コロナの開始及び/又は電気的絶縁破壊を発生させ得る電極の方への電場集中の生成を防止するのに十分な大きさの底部半径を有する。電極装置の底部と上部とは、接続具及び接合具の不規則性が電極装置内部に隠されて装置の形状によって発生する電場分布を攪乱しないような方式で、取り付けられる。
【0015】
本発明の電極装置は、当技術分野で既存のものよりも良好なスイッチングインパルス耐電圧をもたらし、バルブホールのクリアランス距離が低減される(即ち、壁及びフロアに対する必要な距離が縮まることによりバルブホールのサイズを削減できる)ので有利である。これにより、土地確保及びバルブホール建設において経済的なメリットが生じる。クリアランス距離が縮まることにより必要なポスト碍子の数が低減され、結果として、例えば、耐震等の観点からより安定した装置となり得るので更に有利である。
【0016】
ポスト碍子の数が減ることは、標準型のポスト碍子をより多く利用できるという更なる利点を有する。クリアランス距離が大きいためにポスト碍子の数が多い場合、電極装置に安定性をもたらすためにはポスト碍子もまたより大きい直径を有さねばならない。従って、クリアランス距離が増大すると市販のポスト碍子を使用できなくなる。
【0017】
更に、ポスト碍子の数が減るほど設置が容易となり設置時間も短縮できる。
【0018】
本発明の一実施形態で、高圧電極装置は更に、ドーナツ型底部に配置された円筒形部分を備え、当該円筒形部分は、ドーナツ型底部の内側に沿ってドーナツ型底部の周囲に接触している。従って、ドーナツ型底部は、バルブホールのフロア方向の電場を有利に均質化するために、且つ電極装置の中間部に存在する電気設備が接続された任意の接続具又は接合具を隠すために、その回転軸周囲にプレートを備える。円筒形部分/プレートは遮蔽機能を有し、ワイヤ及びその他のタイプの接続具を収容し且つ隠す。
【0019】
本発明の更なる実施形態によれば、当該高圧電極装置は、ドーム型上部の直径がドーナツ型底部の直径よりも大きく構成される。この構成により、有利には、マッシュルーム型電極装置の湾曲した端部において電場の集中点を有する可能性が低減される。
【0020】
本発明の更なる実施形態によれば、高圧電極装置は、楕円体型上部のx方向の直径が楕円体型上部のy方向の直径と実質的に等しいように更に構成される。従って、当該上部が、水平に切った場合に実質的に円形の断面を有する。
【0021】
本発明の更なる実施形態によれば、当該高圧電極装置は更に、楕円体型上部が、当該上部のドーナツ型底部の方を向く終端でx−y方向に平坦であるように構成される。
【0022】
本発明の更なる実施形態によれば、高圧電極装置は更に、ポスト碍子(一又は複数)及び台碍子も備える。
【0023】
本発明は、特許請求の範囲に記載されたすべての可能な特徴の組み合わせに関連することに留意されたい。添付の特許請求の範囲と下記の記載を精査することにより、本発明の更なる特徴及び利点は明らかとなる。本発明の種々の特徴を組み合わせて下記に記載した実施形態以外のものを作成することが可能であることを、当業者は認識するであろう。
【0024】
下記の添付図面を例示として参照し、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態による高圧電極装置の側面図である。
【
図2】絶縁体構造に取り付けられた本発明の一実施形態による高圧電極装置である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の幾つかの実施形態が示された添付図面を参照しつつ、本発明がより完全に説明される。しかしながら本発明は多くの異なる形態で実施されることができ、本明細書で説明される実装に限定されるものと解釈されるべきではなく、これらの実施形態はむしろ、本開示が包括的で完全となるように例示目的で提供されており、当業者に本開示の範囲を十分に伝えるためのものである。類似の番号は、全体を通して類似の要素を指す。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態による高圧電極装置の側面図を示す。本電極装置は、ドーム型上部10、ドーナツ型底部11、及び、上部10と底部11とを接続する中間部12を備え、中間部12は、接続される電気設備を受容するためのリードスルー13を備える。本電気設備は、コロナ絶縁破壊からの保護を必要とする任意の設備(例えば、サージアレスタ、ブッシング、バスバー、支持碍子、バルブへの変圧器など)を備え得る。
図1は、電極装置に取り付けられた幾つかのポスト碍子15も示す。
【0028】
先述したように、電極上部における電場ストレスがドーム型上部により有利に低減され、上部10において任意の不均質な電場が回避される。本発明の電極装置のドーム型上部10は、電極上部近傍に位置する任意の物体の方への等電位線を滑らかにし、これにより、上部10付近の物体による電場攪乱を回避する。更なる利点は、装置のドーム形状により、電極の上部10において電場集中が低減する。これは、電場が球の全周囲に等しく分布する従来技術による球状電極とは対照的である。一実施形態によれば、有利には、上部10が楕円体型である。更なる一実施形態によれば、楕円体型上部(10)のx方向の直径が、楕円体型上部(10)のy方向の直径と実質的に等しい。
【0029】
更なる利点は、底部11が、周辺設備(例えば、壁及び接地プレーン)に対して電場を滑らかにするのに十分な内径を有するドーナツ型であることにある。底部11は、装置からの電気力線が壁及び接地プレーンの方へと滑らかに落下するように設計される。本電極装置の等電位線は均一に分布し、電場の集中点を防止する。従って、電極の側部、底部、及び上部の方へのストレスがより均質となり、電極の静電挙動を妨害しない。一実施形態によれば、楕円体型上部は、当該上部のドーナツ型底部に面する終端で、x−y方向に平坦である。
【0030】
図2は、複数のポスト碍子15及び台支持体16の形態の絶縁構造装置に取り付けられた本発明の一実施形態による高圧電極装置を示す。実際には、例えば電極装置が用いられるバルブホール内の変圧器ブッシング(図示せず)に接続され得るバスバー17も示されている。従って、電極装置は、ドーム型上部10、ドーナツ型底部11、及び、上部10と底部11とを接続する中間部12を備え、中間部12は、接続される電気設備(この場合、変圧器ブッシングとバルブホールから壁ブッシング(図示せず)を通じてHVDCを出力するための更なる導体18とに接続されているバスバー17)を受容するためのリードスルー13を備える。
【0031】
本発明の電極装置は、不均質な電場が「マッシュルーム」型構成の内部に隠されることができるように電場を低減する。このことは、周辺の電気的環境が擬似的に均質な電場を経験するという効果を有する。換言すれば、電極が電場を滑らかにする。電極装置の底部11と上部10とは、接続具及び接合具の不規則性が電極装置の内部に隠されて当該装置の形状によって発生する電場分布を攪乱しないような方式で、取り付けられる。
【0032】
本発明の一実施形態で、高圧電極装置は更に、ドーナツ型底部に配置された円筒形部分を備え、当該円筒形部分は、ドーナツ型底部11の内側に沿ってドーナツ型底部の周囲に接触している。従って、バルブホールのフロア方向への電場を有利に均質化するために、及び、電極装置の中間部(ここで変圧器ブッシングからのバスバー17が壁ブッシングとの接続のために更なる導体18に接続されている)に存在する任意の接続具又は接合具を隠すために、ドーナツ型底部11はその回転軸周囲にプレートを備える。円筒形部分/プレートは遮蔽機能を有し、ワイヤ及びその他のタイプの接続具を収容し且つ隠す。一実施形態で、円筒形部分/プレートは、絶縁体15を受容するために開口部を中央に有するように構成される。
【0033】
図2は、複数のポスト碍子15及び台支持碍子16の形態の絶縁体構造物に取り付けられた本発明の一実施形態による高圧電極装置を示す。ドーム型上部10の直径d1は、ドーナツ型底部11の直径d2よりも大きい。これにより、電極の周囲で電場が集中し得る等しい長さの直径d1、d2と比較して、マッシュルーム型電極装置の湾曲した端部における電場集中点を有する可能性が低減されるので有利である。
【0034】
高電圧下の試験及び絶縁破壊シミュレーションの後、本発明の電極装置は、球状電極よりもはるかに高い耐電圧能力を有することが有利に示された。本電極装置は良好なスイッチングインパルス耐電圧能力をもたらす。従って、絶縁要件を満たすのに必要な絶縁長さが、球状電極に要する絶縁長さと比較して短くなる。例えば、本発明の電極装置における2650kVの絶縁破壊耐電圧という要件を満たすには、全長(Li)6mのポスト碍子及び長さ(Lp)2.4mの台支持体が必要であることが実地試験によって示された。このことは当該電極装置がバルブホールのフロア上8.4mの高さに位置することを意味し、これは有利な低さである。
【0035】
本発明の電極装置は、当技術分野で既存のものよりも良好なスイッチングインパルス耐電圧をもたらし、バルブホールのクリアランス距離が低減される(即ち、必要とされる、壁に対する距離(Lw)、天井に対する距離(Lc)、及びフロアに対する距離(Li+Lp)が縮まることによりバルブホールのサイズを削減できる)ので有利である。これにより、土地確保及びバルブホール建設において経済的なメリットが生じる。クリアランス距離が縮まることにより必要なポスト碍子の数が低減され、結果として設置がより容易且つ迅速となり、なお且つ、例えば耐震等の観点からより安定した装置となり得るので更に有利である。ポスト碍子の数が減ることは、標準型のポスト碍子をより多く利用できるという更なる利点を有する。クリアランス距離が大きいためにポスト碍子の数が多い場合、電極装置に安定性をもたらすためにはポスト碍子もまたより大きい直径を有さねばならない。従って、クリアランス距離が増大すると市販のポスト碍子を使用できなくなる。
【0036】
具体的且つ例示的な実施形態を参照して本発明を説明したが、様々な多くの変形形態、修正形態などが当業者には明らかであろう。従って、記載した実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを意図しない。