(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
液体内に気体を導入して保持する方法としては、散気管等を用いたバブリングにより気体を液体内に気泡として吹きだすことで、液体に気体を溶解させる気泡溶解法が一般的に採用されているが、液体内に放出された通常の気泡は急速に上昇して液体表面で破裂するので、気泡として液体内に放出された気体の大半が液体に溶解することなく大気中に放散してしまい、液体に気体を効率よく溶解させることができない。
【0003】
一方、発生時の直径を50μm以下まで微細化した気泡(以下、マイクロバブルという。)は、液体中での上昇速度が小さく、内部に含まれる気体を効率的に溶解させながら収縮していき、場合によっては、液体表面に届く前に消滅してしまうという特性を有している。
【0004】
このため、液体中でマイクロバブルを発生させる種々の方法が提案されており、具体的には、軽石状のガラクトースを水などに溶解したときに結晶の隙間から気泡が析出する現象を利用してマイクロバブルを生成する方法、圧力に比例して溶解する気体量が増加するという特性を利用してマイクロバブルを生成する方法(加圧溶解法)、液体と気体を攪拌することでマイクロバブルを生成する方法(気液2相流旋回法)等が挙げられる。
【0005】
しかしながら、一定温度、一定圧力下における液体に対する気体の溶解度は、気体及びその気体を溶解させる液体の組み合わせ毎に定まっているので、液体に気体を効率よく溶解させることができたとしても、溶解度を超えることはできず、マイクロバブルを利用した気体の溶解法には限界がある。
【0006】
ところで、液体中に発生させたマイクロバブルの一部は単純に消滅することなく、極微細化した状態で一時的に液体中に残存することが知られており、これらの気泡は、その直径が数百nmよりも小さく、ナノバブル(ウルトラファインバブル)と呼ばれている。従って、液体中に多量のナノバブルを安定した状態で生成することができれば、溶解度を超えて液体中に気体を溶存させることが可能となる。
【0007】
近年、液体中に生成したマイクロバブルに物理的刺激を加えることにより、マイクロバブルを急激に収縮させて圧壊を起こさせることによってナノバブルを発生させると共に、発生したナノバブルを保持するために液体中に電解質イオンを添加することでナノバブルを安定化させる方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したマイクロバブルの圧壊を利用したナノバブルの生成方法では、マイクロバブルの圧壊時に発生する急激な温度上昇と衝撃波とによって、液体中に一旦溶解した気体が気液面から自然放出されるので、液体内における気体の溶存量を増大させることは難しく、しかも、マイクロバブルの圧壊時に発生する衝撃波は連続的に増幅するため、その増幅された衝撃波によってナノバブル自体が圧壊してしまうので、生成されたナノバブルの保持すら難しいという問題がある。
【0010】
そこで、この発明の課題は、液体中における気体の溶存量を増大させることができる気体導入保持装置及び気体導入保持方法並びに気体導入保持装置に使用される気体放出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、液体内に気体を導入して保持する気体導入保持装置であって、液体に浸漬される、微細孔を有する気体放出ヘッドと、前記気体放出ヘッドに気体を供給する気体供給手段と、液体内に気体を放出している前記気体放出ヘッドに振動を連続的に印加する振動子とを備え、前記気体放出ヘッドの微細孔は、その孔径が2.5[μm]以下であり、前記振動子が前記気体放出ヘッドに印加する振動は、周波数が30000[Hz]以上、振幅が1[mm]以下であり、(1つの前記微細孔から放出される気体の放出量[μm
3/分])/(前記振動子の振動周波数[Hz])≦300となるように、前記気体放出ヘッドのへの気体の供給量が調整されていることを特徴とする気体導入保持装置を提供するものである。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の気体導入保持装置において、前記気体放出ヘッドは、少なくとも片面が気体放出面となる板状のヘッド本体を有し、前記振動子は、前記ヘッド本体の気体放出面に対してなす小さい方の角度が−15度〜15度の範囲内の方向に振動を付与することを特徴としている。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の気体導入保持装置に使用される気体放出ヘッドであって、孔径が2.5[μm]以下の多数の微細孔を有する多孔質体によって板状に形成されたヘッド本体を有し、前記ヘッド本体の内部には、前記ヘッド本体の表面に沿って異なる方向に延びる複数の気体供給路が形成されていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、液体内に気体を導入して保持する気体導入保持方法であって、液体に浸漬した、孔径が2.5[μm]以下の多数の微細孔を有する気体放出ヘッドに、周波数が30000[Hz]以上、振幅が1[mm]以下の振動を連続的に印加しながら、(1つの微細孔から放出される気体の放出量[μm
3/分])/(振動子の振動周波数[Hz])≦300となるように、気体放出ヘッドから気体を液体内に放出することを特徴としている。
【0015】
また、請求項5に係る発明は、請求項1に記載の気体導入保持方法において、液体に0.01重量%以上の過酸化水素を添加したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、請求項1に係る発明の気体導入保持装置及び請求項4に係る発明の気体導入保持方法では、(1つの微細孔から放出される気体の放出量[μm
3/分])/(振動子の振動周波数[Hz])≦300となるように、気体放出ヘッドの孔径が2.5[μm]以下の微細孔から放出される気体が、気体放出ヘッドに印加された周波数が30000[Hz]以上、振幅が1[mm]以下の振動によって微細気泡に分断されながら液体中に放出され、液体中の微細気泡はゆっくりと収縮しながらブラウン運動を起こすので、ナノサイズの微細気泡として液体中に保持することができる。
【0017】
このように、本発明の気体導入保持装置及び気体導入保持方法では、マイクロバブルを圧壊させることなくナノバブルを生成することができるので、マイクロバブルの圧壊を利用した従来のナノバブルの生成方法のように、圧壊時に発生する温度上昇によって液体中に一旦溶解した気体が気液面から自然放出したり、マイクロバブルの圧壊時に発生して連続的に増幅された衝撃波によって一旦生成されたナノバブルが圧壊したりすることもないので、液体中における気体の溶存量を確実に増大させることができる。
【0018】
また、請求項2に係る発明は、気体放出ヘッドは、少なくとも片面が気体放出面となる板状のヘッド本体を有し、振動子は、ヘッド本体の気体放出面に対してなす小さい方の角度が−15度〜15度の範囲内の方向に振動を付与するので、気体放出面から放出される気体を効率よく微細気泡に分断することができる。
【0019】
また、請求項3に係る発明の気体放出ヘッドは、孔径が2.5[μm]以下の多数の微細孔を有する多孔質体によって板状に形成されたヘッド本体の内部に、ヘッド本体の表面に沿って異なる方向に延びる複数の気体供給路が形成されているので、ヘッド本体に供給される気体が板状に形成されたヘッド本体の両面から略均等に放出され、しかも、板状のヘッド本体を完全な中空構造にする場合に比べて十分な強度を確保することができるという効果が得られる。
【0020】
特に、液体に0.01重量%以上の過酸化水素を添加した請求項5に係る発明の気体導入保持方法では、添加した過酸化水素が微細気泡の電荷によりOHラジカル化して微細気泡を包み込むので、ナノサイズの微細気泡が安定化し、液体中の存在時間を大幅に伸ばすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、この発明の気体導入保持装置の概略構成を示している。同図に示すように、この気体導入保持装置1は、液体を貯留する液体貯留槽10と、この液体貯留槽10に貯留された液体中に浸漬される気体放出ヘッド20と、この気体放出ヘッド20に気体を供給する気体供給手段30と、気体放出ヘッド20に振動を印加する振動印加手段40とを備えており、液体に浸漬した気体放出ヘッド20に振動を連続的に印加しながら気体放出ヘッド20から気体を液体内に放出するように構成されている。
【0023】
前記液体貯留槽10は、
図1及び
図2に示すように、合成樹脂板によって形成された角筒状の胴部11と、この胴部11の下端開口部を閉塞する、合成樹脂板によって形成された底部12とから構成されており、液体貯留槽10内に気体放出ヘッド20が収容保持されている。
【0024】
前記気体放出ヘッド20は、
図1及び
図2に示すように、例えば、セラミックス等によって形成された通気型の多孔質体からなる、先端が閉塞された中空棒状のヘッド本体21と、このヘッド本体21の基端部に取り付けられた、気体供給手段30を接続するための接続金具22とを備えており、ヘッド本体21は、その中空部分と外部とを連通する孔径が2.5μm以下の多数の微細孔を有している。従って、ヘッド本体21の中空部分に気体を供給すると、微細孔から外部に気体が放出されるようになっている。微細孔の孔径は小さい方がナノバブルを生成しやすくなるが、微細孔の孔径が小さすぎると気体の放出抵抗が大きくなるので、好ましくは、0.01μm〜2.5μm、より好ましくは、0.1μm〜1.0μmの範囲内で微細孔の孔径を設定しておくことが望ましい。また、2.5μm以下の微細孔の数は特に限定されないが、多ければ多いほど液体内への気体の導入量が増えるので好ましい。
【0025】
前記気体供給手段30は、
図1及び
図2に示すように、気体放出ヘッド20の接続金具22に接続される気体供給用のチューブ31と、このチューブ31に取り付けた流量調整弁32と、チューブ31を介して、気体を気体放出ヘッド20に供給するポンプ33とを備えており、流量調整弁32の開度やポンプ33の電圧を調整することによって、気体の供給量を調整するようになっている。
【0026】
前記振動印加手段40は、
図1及び
図2に示すように、液体貯留槽10の内部に収容される、防水処理が施された振動子41と、図示しない高周波変換回路とを備えており、振動子41としては、2つの金属ブロック41b、41cで2個の圧電素子41a、41aを挟持したランジュバン型振動子が採用されている。
【0027】
前記振動子41は、振動放射側の金属ブロック41bを上にした状態で、他方の金属ブロック41cが液体貯留槽10の底部12に固着されており、金属ブロック41bの振動放射面には、気体放出ヘッド20のヘッド本体21部分が接着固定されている。
【0028】
前記振動子41が気体放出ヘッド20のヘッド本体21に印加する振動は、周波数が30000Hz以上、振幅が1mm以下に設定されており、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される気体の放出量[μm
3/分])/(振動子の振動周波数[Hz])≦300となるように、気体放出ヘッド20のへの気体の供給量が調整されている。(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される気体の放出量[μm
3/分])/(振動子の振動周波数[Hz])は、小さい方がナノバブルを生成しやすいので、好ましくは200以下、より好ましくは100以下に設定しておくことが望ましい。
【0029】
このように、気体放出ヘッドに周波数が30000Hz以上、振幅が1mm以下の振動を印加しながら、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される気体の放出量μm
3/分)/(振動子の振動周波数Hz)≦300となるように、気体放出ヘッド20の孔径が2.5μm以下の微細孔から気体を放出すると、気体放出ヘッド20の微細孔から放出される気体が気体放出ヘッド20に印加された振動によって微細気泡に分断されながら液体中に放出され、液体中に放出された微細気泡はゆっくりと収縮しながらブラウン運動を起こすので、ナノサイズの微細気泡として液体中に保持されることになる。
【0030】
以下、上述した気体導入保持装置1を用いて純水に酸素ガスを導入保持する本発明の実施例1〜6及び比較例1〜4、さらに従来装置を用いて純水に酸素ガスを導入保持する従来例について、表1及び表2を参照しながら説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0031】
(実施例1)
表1に示すように、20℃の室内で、液体貯留槽10内に純水2lを導入し、ヘッド本体21が平均孔径1μmの微細孔を約300万個有する気体放出ヘッド20から濃度が99.7容量%以上の酸素ガスを4000mm
3/分で放出しながら、気体放出ヘッド20に周波数が40000Hz、振幅が0.5mmの振動を2分間連続的に印加し続けた。なお、この条件では、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される酸素ガスの放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)=33である。
【0032】
(実施例2)
表1に示すように、孔径が2.5μm、平均孔数が約48万個の微細孔を有するヘッド本体21を採用した点を除いて、実施例1と同様の方法で、純水に酸素ガスを導入した。なお、この条件では、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される酸素ガスの放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)=208である。
【0033】
(実施例3)
表1に示すように、周波数が30000Hz、振幅が0.5mmの振動を気体放出ヘッド20に印加した点を除いて、実施例1と同様の方法で、純水に酸素ガスを導入した。なお、この条件では、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される酸素ガスの放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)=44である。
【0034】
(実施例4)
表1に示すように、周波数が40000Hz、振幅が1mmの振動を気体放出ヘッド20に印加した点を除いて、実施例1と同様の方法で、純水に酸素ガスを導入した。なお、この条件では、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される酸素ガスの放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)=33である。
【0035】
(実施例5)
表1に示すように、気体放出ヘッド20からの酸素ガスの放出量が36000mm
3/分である点を除いて、実施例1と同様の方法で、純水に酸素ガスを導入した。なお、この条件では、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される酸素ガスの放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)=300である。
【0036】
(実施例6)
表1に示すように、液体貯留槽10内に導入した純水2lに0.01重量%の過酸化水素を添加した点を除いて、実施例1と同様の方法で、純水に酸素ガスを導入した。なお、この条件では、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される酸素ガスの放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)=33である。
【0037】
(比較例1)
表1に示すように、孔径が3μm、平均孔数が約30万個の微細孔を有するヘッド本体21を採用した点を除いて、実施例1と同様の方法で、純水に酸素ガスを導入した。なお、この条件では、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される酸素ガスの放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)=333である。
【0038】
(比較例2)
表1に示すように、周波数が25000Hz、振幅が0.5mmの振動を気体放出ヘッド20に印加した点を除いて、実施例1と同様の方法で、純水に酸素ガスを導入した。なお、この条件では、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される酸素ガスの放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)=53である。
【0039】
(比較例3)
表1に示すように、周波数が40000Hz、振幅が2mmの振動を気体放出ヘッド20に印加した点を除いて、実施例1と同様の方法で、純水に酸素ガスを導入した。なお、この条件では、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される酸素ガスの放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)=33である。
【0040】
(比較例4)
表1に示すように、気体放出ヘッド20からの酸素ガスの放出量が40000mm
3/分である点を除いて、実施例1と同様の方法で、純水に酸素ガスを導入した。なお、この条件では、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される酸素ガスの放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)=333である。
【0042】
(従来例)
従来装置としては、ポンプの吸引力により気体と液体とを同時に吸引して気液混合槽に供給し、この気液混合槽内の気液混合状態にある溶存液を、2以上の貫通小穴を有するノズルの外部からその貫通小穴を通して大気圧以上の圧力で噴射し、そのノズルの内部で衝突させることによって、マイクロ・ナノバブルを発生させるマイクロ・ナノバブル発生装置(シグマテクノロジー有限会社製 ΣPM−5)を使用した。
【0043】
従来装置の液吸込口と吐出口を別容器に貯留されている純水中に浸漬し、1l/分で循環させながら安定するまで10分間予備運転を行った後、液吸込口と吐出口とを液体貯留槽内に貯留されている2lの純水中に浸漬し、液体貯留槽内の純水を1l/分で2分間循環させた。
【0044】
上述した実施例1〜6、比較例1〜4及び従来例について、装置運転中における所定時間経過時点(運転開始時点、30秒経過時点、60秒経過時点、90秒経過時点、120秒経過時点)で、溶存酸素計(セントラル科学株式会社製 CGS−5型)を用いて酸素溶存量を測定し、その結果を表2及び
図3のグラフに示した。なお、
図3のグラフに示した、「溶解度(20℃において1atmの酸素が水1cm
3中に溶解するときの容積[cm
3]=0.031)に相当する酸素溶存量」は、0.031[l/l]/22.4[l/mol]×32[g/mol]×10
3=44.3[mg/l]とした。
【0046】
表2及び
図3から分かるように、気体導入保持装置1において、気体放出ヘッド20の微細孔の孔径が3μm(>2.5μm)である比較例1、振動子41が印加する振動の周波数が25000Hz(<30000Hz)である比較例2、振動子41が付与する振動の振幅が2mm(>1mm)である比較例3及び(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される気体の放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)が333(>300)である比較例4は、運転停止時点である2分経過後における酸素溶存量が、溶解度に相当する酸素溶存量を大きく下回っているが、気体放出ヘッド20の微細孔の孔径が2.5μm以下、振動子41が付与する振動の周波数が30000Hz以上、振動子41が印加する振動の振幅が1mm以下及び(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される気体の放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)≦300である実施例1〜5は、運転停止時点である2分経過後における酸素溶存量が、溶解度に相当する酸素溶存量(44.3mg/l)を上回っており、溶解度を超えて純水中に酸素を溶存させることができる。
【0047】
また、従来例においても、運転停止時点である2分経過後における酸素溶存量が45.2mg/lであり、溶解度に相当する酸素溶存量(44.3mg/l)を若干上回っているが、実施例1〜4については、2分経過後における酸素溶存量が58mg/l以上、特に、実施例1については、酸素溶存量が80mg/l以上で、溶解度に相当する酸素溶存量(44.3mg/l)を大きく上回っており、優れた酸素導入保持性能を有していることが分かる。
【0048】
また、気体放出ヘッド20の微細孔の孔径、振動子41が印加する振動の周波数、振幅のうち、気体放出ヘッド20の微細孔の孔径(孔数)だけが異なる実施例1と実施例2とを比較すると、気体放出ヘッド20の微細孔の孔径が1μmの実施例1は、気体放出ヘッド20の微細孔の孔径が2.5μmの実施例2に比べて2分経過後における酸素溶存量が20mg/l以上高いので、気体放出ヘッド20の微細孔の孔径は1μm以下に設定しておくことが望ましい。
【0049】
また、気体放出ヘッド20の微細孔の孔径、振動子41が印加する振動の周波数、振幅のうち、振動子41が印加する振動の周波数だけが異なる実施例1と実施例3とを比較すると、振動子41が印加する振動の周波数が40000Hzの実施例1は、振動子41が印加する振動の周波数が30000Hzの実施例3に比べて2分経過後における酸素溶存量が20mg/l以上高いので、振動子41が印加する振動の周波数は40000Hz以上に設定しておくことが望ましい。
【0050】
また、気体放出ヘッド20の微細孔の孔径、振動子41が印加する振動の周波数、振幅のうち、振動子41が印加する振動の振幅だけが異なる実施例1と実施例4とを比較すると、振動子41が印加する振動の振幅が0.5mmの実施例1は、振動子41が印加する振動の振幅が1mmの実施例4に比べて2分経過後における酸素溶存量が20mg/l以上高いので、振動子41が印加する振動の振幅は0.5mm以下に設定しておくことが望ましい。
【0051】
また、気体放出ヘッド20の微細孔の孔径、振動子41が印加する振動の周波数、振幅、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される気体の放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)のうち、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される気体の放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)だけが異なる実施例1と実施例5とを比較すると、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される気体の放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)=33の実施例1は、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される気体の放出量μm
3/分)/(振動子の振動周波数Hz)=300の実施例5に比べて2分経過後における酸素溶存量が30mg/l以上高いので、(ヘッド本体21の1つの微細孔から放出される気体の放出量μm
3/分)/(振動子41の振動周波数Hz)は200以下、より好ましくは100以下に設定しておくことが望ましい。
【0052】
また、純水に過酸化水素を添加した点だけが異なる実施例1と実施例6とを比較すると、純水に過酸化水素を0.01重量%添加した実施例6は、純水に過酸化水素を添加していない実施例1に比べて、装置の運転を停止した後の酸素溶存量の低下率が抑えられているので、酸素の溶存状態を長期間保持したい場合は、過酸化水素を0.01重量%以上添加しておくことが望ましい。
【0053】
なお、上述した各実施例では純水に酸素を導入しているが、これに限定されるものではなく、水道水、海水、温泉水、汚染水、油等の各種液体に、空気、オゾン、水素、炭酸ガス、窒素等の各種気体を導入して溶存させることができる。
【0054】
また、上述した実施形態では、液体貯留槽10の内部に振動子41を収容保持しているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図4及び
図5に示すように、液体貯留槽10Aを、液体を貯留する槽本体13と、この槽本体13を支持する角筒状の台座15とによって構成し、槽本体13の下側の台座15内に振動子41を配設することも可能である。
【0055】
具体的には、槽本体13の底部を金属板14によって構成し、この金属板14に形成されたボルト挿通孔に挿通したボルト42を振動子41の振動放出面にねじ込んで締め込むことによって振動子41を金属板14に固定すると共に、金属板14の上面に突出しているボルト42の頭部に気体放出ヘッド20のヘッド本体21を接着固定することで、槽本体13の底部を構成している金属板14を共振させながら、ボルト42を介して振動子41の振動をヘッド本体21に印加するようにしておくことが望ましい。
【0056】
また、上述した実施形態では、先端が閉塞された中空棒状のヘッド本体21を有する気体放出ヘッド20を使用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図6及び
図7に示すように、板状のヘッド本体21Aを有する気体放出ヘッド20Aを採用することも可能である。
【0057】
このような板状のヘッド本体21Aを採用する場合は、同図に示すように、気体供給手段30のチューブ31が接続されるチャンバ22Aをヘッド本体21Aの下端部に連設しておき、ヘッド本体21Aの内部には、チャンバ22Aに開放される、ヘッド本体21Aの表面に沿って上下方向に延びる複数の縦気体供給路21Aaと、これらの縦気体供給路21Aaに連通した状態でヘッド本体21Aの表面に沿って横方向に延びる複数の横気体供給路21Abとを形成しておくと、チャンバ22Aを介してヘッド本体21Aに供給される気体が板状に形成されたヘッド本体21Aの両面から略均等に放出され、しかも、板状のヘッド本体21Aを完全な中空構造にする場合に比べて十分な強度を確保することができる。
【0058】
また、こういった板状のヘッド本体21Aを採用する場合は、
図8に示すように、ヘッド本体21Aの気体放出面fに対してなす小さい方の角度αが−15度〜15度の範囲内の方向に振動が付与されるように、ヘッド本体21Aを振動子41(金属ブロック41b)の振動放射面に固定しておくと、気体放出面から放出される気体を効率よく微細気泡に分断することができる。特に、ヘッド本体21Aの気体放出面に対してなす角度が0度の方向、即ち、ヘッド本体21Aの気体放出面に沿う方向に振動を付与すると、気体の放出方向に対して直交する方向に振動が付与されるので、気体放出面から放出される気体を最も効率よく微細気泡に分断することができる。
【0059】
また、上述した各実施形態では、振動印加手段40の振動子41としてランジュバン型振動子を採用しているが、これに限定されるものではなく、種々の振動子を採用することができる。
【解決手段】液体を貯留する液体貯留槽10と、孔径が2.5μm以下の多数の微細孔を有する気体放出ヘッド20と、気体放出ヘッド20に気体を供給する気体供給手段30と、気体放出ヘッド20に振動を印加する振動子41を有する振動印加手段40とを備えており、液体に浸漬した気体放出ヘッド20に振動を連続的に印加しながら気体放出ヘッド20から気体を放出するようになっている。振動子41が気体放出ヘッド20に印加する振動は、周波数が30kHz以上、振幅が1mm以下に設定されており、(気体放出ヘッド20の1つの微細孔から放出される気体の放出量μm